大企業の「ライトパーソン」を探し出せるBeatrust(ビートラスト)8億円調達ーー開始1年、大手中心に1.5万人利用

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ニュースサマリ:タレントコラボレーションプラットフォームを展開するBeatrust(ビートラスト)は4月27日にシリーズAラウンドの増資を発表している。調達した資金は8億円で、引受先になったのはJAFCOをリードに、グローバル・ブレイン、MUFGキャピタル、SMBCベンチャーズの新規4社と、既存投資家として伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、One Capital、サイバーエージェント・キャピ タル、Delight Ventures、PKSHA SPARXアルゴリズム1号、みずほキャピタルの6社。また、Pinterestの初期投資家であるWilliam Lohse氏がエンジェル投資家として参加している。

Beatrustの創業は2020年。元Googleの久米雅人氏と原邦雄氏らが共同創業したスタートアップで、大手企業を中心に社員が自律的に行動し、イノベーションを生み出せる環境づくりを支援するプラットフォーム「Beatrust」シリーズを展開している。社内人材をスキルや経験値、過去の経歴などを可視化し、タグによって検索を簡易にしたタレントページ「Beatrust People」と、これらの社員同志をつなぐコラボレーション機能の「Beatrust Ask」が提供されている。リリースから1年の2022年3月時点でのユーザー数は1万5,000人。AGCやライオン、住友商事などの大手を中心に活用が進んでいる。

クローズドの社内SNS的な情報共有が利用の中心で、そこから独自のエンジンで投稿内容を解析し、自動的にキーワードを抽出してタグ化してくれるのが特徴。社内でプロジェクトに関わる「ライトパーソン」を探しやすくしてくれている。今回調達した資金で、開発・販売を進める。導入を検討する企業には利用が定着するまでのオンボーディングのプログラムも用意されている。

話題のポイント:創業から2年、ベテランスタートアップが順調にステージを次に進めてきました。Beatrustの原さん・久米さんたちの創業についてはこちらの記事で書いています。

正直、当時はまだステルス状態で、テスト的な導入は進んでいるものの全体像はよくわからなかったのですが、お聞きした感じだと非常にシンプルなプロダクトに仕上がっているようです。原さんたちがやりたいことは社内、特に数千人、万単位で人材を抱える大手企業中心にイノベーションのタネをつなぐことです。

こういったタレント検索みたいな仕組みはカオナビやタレントパレット、伝統的にはサイボウズあたりがずっと提供してきた価値観のひとつですが、イノベーション的「つながり」にフォーカスして社員同士のコミュニケーションを活性化させようとしている点が特徴的かもしれません。

というのも、多くのタレントマネジメントや社内SNSツールは、機能が多すぎたり、逆に汎用的すぎて何に使えばいいか分からない面もあり、使う側の目的を強く意識する必要があるからです。そういう意味で、Beatrustのフォーカスは使う側にとって理解がしやすいのでしょう。原さんや久米さんにお聞きしましたが、Slackなど社内コミュニケーションツールが溢れるなか、好評なのが自動のタグ付けなのだそうです。

タグ付は検索に重要な要素ですが、当然ながらめんどくさいです。ここを自動化することで、日常的な利用が自然と社員の可視化に繋がっていき、何か問題があった時に正しい人にたどり着けるようになっています。この辺りは元Googleっぽい体験なんだろうなと勝手に予想していますが。

ポッドキャストでは原さんに改めてお披露目になったBeatrustのプロダクトについてそのコンセプトや差別化ポイント、課題などをお話してもらいました。個人的にはSGI時代のテクノロジーイノベーション勃興期についても聞きたかったのですがそれはまたの機会ということで。

ポッドキャスト全文

BRIDGE編集部・ポッドキャストではテクノロジースタートアップや起業家に関する話題をお届けいたします。今回の取材ではタレントコラボレーションプラットフォーム「Beatrust」の原さんにお話を伺ってきました。

2020年創業のBeatrustは元Googleの原さんと久米さんたちが共同創業したベテランスタートアップです。シードながら3億円の資金を集めるなど投資家からの注目度も高く、今回、これまでステルスで開発・導入を進めていたプロダクトの一部がお披露目となりました。

社内人材の利活用は企業にとって重要なテーマですが、そこにGoogleで経験したオープンでイノベーティブな思想を反映させたのが、Beatrust PeopleとAskという二つのプロダクトです。大手中心に1万5000人が進んでおり、今回の調達資金でさらにその導入を加速させるというお話でした。ぜひ原さんの声をお聞きください。

ーー調達の概要からお話いただけますか?

原:今回、シリーズA(ラウンド)で8億円の調達を先月末に完了しました。リードインベスターはジャフコで新規は3社、グローバル・ブレイン、三菱 UFJ キャピタル、SMBC ベンチャーズという 4社に新規投資いただきました。既存のJ-KISS で 2 年前にシードラウンド調達してまして、その内の6社に投資をしていただきました。1人だけ個人投資家でWilliam Lohse 氏という著名なエンジェルに入っていただいてます。

平野さんとはほぼ創業直後からお話してるので背景はご存じだと思うんですけども、元々、私がGoogleにいた時に、イノベーションが起きるGoogleあるいはMicrosoftのようなアメリカの最大手IT企業と日本の大企業の差分が何かと疑問持ちました。結局その差分は2つに帰結するという仮説からBeatrustが始まっています。

まず 1 つ目が風土です。シリコンバレー風のオープンでフラット、コラボレイティブで高い目標設定を称賛しながらみんなで挑んでくという風土・カルチャー、これがイノベーションを起こすためのバックボーンとして重要だなと思いました。

もう 1 個は風土を後押しするデジタルインフラの内製が整っていること。ここが決定的にどの大企業も遅れてるなと。優秀な人は多いし、パッションを持っているのになぜうまく回転しないのか、そこの原因がこの2つにあると思いました。もちろん風土や文化を変えるのは大変です。

特に日本の大企業の場合、100 年、200年の歴史を持っていますし、今までのバックグラウンドがあります。ただ、イノベーションが起きるように体制を変えなきゃいけないと思っている企業はいっぱいあるので、そのような企業にインフラを提供することは、変革の後押しをできるのではないかというのがBeatrustのコンセプトです。

では、どのようなインフラが社内にあるといいのか?

例えば私は Google で働いた時に一番感銘を受けたのは、人の可視化のエンジンがあったことです。イノベーションは、基本的に最初アイデアから始まります。このアイディアを誰と壁打ちするのが一番いいのか、ある程度固まったアイデアを具現化するためのタスクを組むために、経験ある人がどこに行けばリーチできるのか、社員同士で探しあえるエンジンがあったんです。

私も救われたことがありまして、人材の可視化が一番重要なんじゃないかなと。

可視化から始まってコラボレーションが生まれていくので、まず可視化のエンジンを作ろうと始めたのがBeatrustの最初のモジュール「Beatrust People」です。簡単に言うと各社員のプロフィールをホームページ風に作りまして、様々な情報を可視化していきます。特に我々はタグという機能を使いまして、スキルとか経験とか強みとか、あるいは趣味とか興味とかそういったものをタグに落として、自分が付けるだけじゃなくて、人からも送られるピアド・タグという機能もあります。

いわゆる他己紹介です。自分では気づいてない強みや、自分で付けにくい強みのタグが人から付与されて自分のプロファイルが主観的のみならず客観的にもリッチ化していく仕組みです。それに加えて情報の鮮度が重要なので、機械学習を使って自動的に自分たちが今やってる仕事の内容を反映したタグをリコメンドするオートタグ・エクストラクションという機能を追加で開発しました。自動的に構造化した自分たちの情報がアップデートされて、社員同士でサクサクと検索ができて社員同士が探しあえるというのが「Beatrust People」です。

ーー(以前の取材で)お聞きしたコンセプトが形になったものだと思うんですけれど、一番表現されてる部分はどこでしょうか

原:結局、自律的な協業するためには自分を可視化していかなきゃいけません。自分を可視化するということ、それから可視化した情報に対してみんなが直接フランクにリーチしたり、コミュニケーションし合うというプロセスの実現にBeatrustを使ってもらえるのかが一番のチャレンジでした。

ツールを入れるだけじゃなく、人の働き方、考え方とか仕事の仕方を変える手伝いをしないとツールは生きないのでここに一番注力しました。

社員の方のプロフィール可視化といった点は他のサービスでも提供されていますが、差別化のポイントそして、導入企業が評価している点を教えてください

原:我々もまだ試行錯誤中のところがあるので100% の解は見出せていませんが、一番大事なのはオープンでフラットでコラボレーティブ、そしてみんなが高い目標に挑んでいく文化・カルチャーに変えていきたいかどうかです。マネジメントの方々のコミットメントかあるかどうかが大事です。

トップダウンだけではなく、現場で働いてる方達が新しい働き方を求めているかどうか。それが合わさって初めて噛み合います。その会社がその組織を、どう変えていきたいのか、どういう風に社員の方が働く環境をしていきたいのか。またそれを働く側の方たちも求めているなのか、これを確認するのがとても大事です。

我々の場合は単にSaaSを提供するというよりも、文化をインストールするためのSaaSです。つまり機能とか生産性、これらはいろんなツールがありますが、文化をインストールしないとツールは生きない。本当にツールを使っても人々の働き方は変わりません。ここをやっていくのがとてもチャレンジングであり、我々の強みになるんじゃないかなと。

ーー導入のポイントになるオンボーディングはどのようにされていますか

原:オンボーディングのサポートは属人的でもありマニュアル的なものですけども、これとテクノロジーは両輪です。

どちらしかなくてもダメで、両方ハンド・イン・ハンドで初めて機能するなとこの2年間で体感しました。例えばオンボーディングの方に関しては単にツールを使っていただいて「はい、お願いします 」だけじゃなくて、8週間ぐらい綿密にマイルストーンを決めながら実際に使っていただくまでロードマップを作ります。その会社側にもあのタスクフォースを作ってもらい、キャッチボールする形になります。

もちろん組織の課題とかペイン、これが企業によって違うので明確にさせていただいた上である程度の定性、定量的なKPI、KGIも設けながらタスクフォースの方達と8週間どういう風に社員の方が使い倒していただいて、実際に何らかの成果がでるのかということを綿密に一緒に8週間伴走します。

そして、これが我々の売りになってます。その中にワークショップみたいな、トラストラボと呼んでいますが、具体的にプロダクトがなぜ生まれたのかとか、これによってどういう風に会社の課題を変えようとしてるのかを明確にみなさんにお伝えしています。

さっきの話に戻りますが、可視化が重要です。なかなか日本大企業の方は自分のスキルを可視化した経験がないので、どういう風に可視化するのか分からない。それはワークショップ中にコーチングをしています。また、可視化していろいろんな情報をお互いに見て検索して、探し合えても直接リーチできないことがあります。

同じ会社でも10コ上の先輩に直接話しかけるの失礼じゃないかと、忖度が働いちゃうんですよ。これがオープンでフラットなコミュニケーションを妨げています。今最近流行ってますけど、心理的安全性をどのように醸成していくか。ワークショップでは全然知らない人にプラスワンという、タグにいいねが押せるボタン機能があるのですが、例えば自分がビートルズ好きだったとして、その方もビートルズ のタグがあればプラスワンしてみるとか。

一緒に仕事したけど、そんなに話したことない人に素晴らしいと思うスキル、例えばウェブマーケティングというタグを送ってあげたりとか。あとマネジメントの方が色々な社員の方にプラスワンをしたり、タグを送っていただく。このようなことをワークショップでやってもらいます。

ーーオンボーディングのゴールの設計は?

原:企業ごとに違うんですけども。大枠で 3 つぐらいのゴールがあります。

1 つ目がアクティブレート。実際社員の方がツールを面白がって使っていただかないと意味がないのでウィークリーでどのくらいの人が使ったか。どのぐらいの検索があったか、タグがついたか、そういった計量化でるものをKPI設定に使用しています。

2 つ目が定性的ですけど社員の満足度です。特にコロナでみなさん、非常にオフラインのコミュニケーションが減っているので、働き方に対してはフラストレーションを持っています。中途の社員の方とか新人の方も入ってくる中で自分をアピールする場もないし、社内にどういう人がいるのか分からないというフラストレーションがたまって疎外感があるケースが多いんです。

そういう方達に対してもツールを使ってもらうことで、自分たちの働き方が変わるか、あるいは変わる可能性が高いと思うか、満足するかみたいなことをアンケートで取って差分を見てもらいます。

最後が一番大事なんですけども、事例です。初めて全く知らない社員同士が繋がって、何か新しいことが起きた。どんな小さなことでもいいんですがイノベーションのアイディアが膨らんで、他の方のアイディアと混合して1つのプロジェクトのネタができたみたいな話しでも良いですし、具体的にお客さんに対して課題を解決したい時に、知見を持っている全く知らない人から、営業のスキル経験を伝授してもらって課題が解けましたとかです。

そのような事例を我々はヒーローケースと呼んでいます。このようなケースを1つでも2つでも作っていきましょうと。会社にとってもインパクトが明確になるので、大きくこの3つをKPI、KGI設定しています。

ーーAskについて教えてください。具体的にはどのようにしてライトパーソンに疑問が聞けるのでしょうか

原:Askはpeopleで基本的にスキル・経験プロファイルが可視化して検索できるもので、社内のQ&Aサイトみたいなものです。Askの方は社員の方のプロフィールがわかっているので、質問に一番合った人をマッチングしてくれます。

タグベースになるんですけども。Askの投稿の内容をAIが分析して、タグに直します。そのタグを持って人を裏でマッチングかけまして、その方にターゲティングして質問が飛んでいく仕組みです。

ーー導入にあたって企業が課題としている点を教えてください

原:弊社のウェブページで公開している情報ですとAGC、住友商事、ライオン、コニカミノルタなどいわゆる日本を代表する大企業に導入してもらっています。課題やペインはちょっとづつ違いますが、大きく3つぐらいになると思っています。

研究開発本部で使っていただいているケースです。AGCが典型的な例です。

研究組織がサイロ化されていることで、違う技術を研究している人たちとの科学反応が起きにくい状況がありました。これに対して課題を感じていたAGCのトップの方達が、Beatrustを使って解決できないかと。まずは緩い繋がりを研究者の緩い繋がりをデジタルを使ってやっていくが1つ目のパターンです。

あとは新規事業開発とか、あるいはDX本部。社内横断的なコミュニケーション・コラボレーションが必須なので、現場のナレッジにテクノロジーを組み合わせるとどのようなことができるのかドライブしてるような部署がオーナになって進めているのが2つ目のパターンです。これはライオン、住友商事が例になります。

最後は営業です。現場でお客さんの課題に直面している中で、自分だけで解決できない知見、経験、リレーションあります。オフラインで皆さんと会う機械がない中でBeatrustのテクノロジーを使って知見の共有してもらい、お客様の課題解決に直接結び付ける。この3つのパターンから入ってもらうのが多いです。

どうもありがとうございました。