がん診療におけるリアルワールドデータ収集に関する多施設共同研究(CONNECT)を開始

SHARE:

~多数の医療機関のリアルワールドデータを収集・解析して利活用する新たな医療情報基盤を構築~

 京都大学医学部附属病院(所在地:京都市、病院長:宮本 享、以下、京大病院)は、「がん診療におけるリアルワールドデータ収集に関する多施設共同研究(CONNECT)UMIN ID:R000049137」(研究代表者:武藤 学 京都大学医学部附属病院 腫瘍内科 教授、以下、本研究)を開始します。新医療リアルワールドデータ研究機構株式会社(本社:京都市、代表取締役社長:是川 幸士、以下、PRiME-R)は、技術サポートにより、本研究を支援します。
 本研究は、電子カルテデータ等のリアルワールドデータ※1(以下、RWD)を標準化/構造化して管理・統合するCyberOncology(R)※2(以下、本システム)を各医療機関へ導入し、RWDを収集・解析して利活用することで、医療安全や医療技術の向上に貢献する新たな医療情報基盤の実現可能性を研究します。

※1 医療現場から得られる電子カルテデータ、検査データ、治療データ等の臨床情報
※2 電子カルテ等の入力支援システム「CyberOncology(R)」の本格提供開始について(2020年9月28日):https://prime-r.inc/newsrelease/125/

1.本研究の背景
 現在の医療において、それぞれの医療がどのように実践され、どのような課題があるかを迅速かつ正確に把握することは困難であり、臨床試験などで時間と労力をかけてデータを蓄積・分析してはじめてわかる事象がたくさんあります。しかし、臨床試験では、背景の似ている限られた患者さんでの評価が多く、様々な背景をもつ患者さんを診療している実際の医療現場とのギャップがしばしば存在します。また、医療の進歩はめざましく、医療技術や医療情報も高度化・複雑化し、今後、医療の実態を迅速に把握することがますます難しくなると予想されます。
 安全かつ最適な医療を提供するためには、実際の医療現場で得られたRWDを迅速に分析し、医療の現場に還元することが必要です。特に、がんの領域では病状の進行も早く、有害事象などの患者さんの症状を迅速に把握することが困難なため、少しでも早くその変化に気づくことが課題となっています。
 以上のような課題を解決し、患者さんが安心して医療を受けられる環境を提供するために、RWDを可視化し、医療従事者間の情報共有ができる基盤整備を進めることが重要です。
 このような背景のもと、国立大学法人京都大学と日本電信電話株式会社は、「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業(2016-2019)」※3において進めてきた研究成果を基に、2020年2月3日にPRiME-Rを設立※4し、RWDを活用した全く新しい産学連携の取り組みを進めています。
 京大病院とPRiME-Rは、電子カルテにおけるがん薬物治療に関するデータを標準化/構造化してデータベース化する本システムを開発・発展させるとともに、多くの医療機関と協力し我が国におけるRWDを迅速かつ効果的に利活用することができる新たな医療情報基盤を構築するため、本研究に賛同する医療機関を募ってまいりました。
 この度、多くの医療機関より本研究への賛同をいただいたことから、各医療機関に本システムを導入することで、効率的にがんの治療成績および有害事象情報等を収集・解析し、統計データとして利活用することが可能になる新たな医療情報基盤の実現可能性を研究します。

※3 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」:https://www.amed.go.jp/program/list/14/01/006.html
※4 新会社PRiME-R設立について:https://www.ntt.co.jp/news2020/2002/200203a.html

2.本研究の概要・意義
(1)本研究の概要
 本システムを本研究に参加する各医療機関へ導入し、医師等が電子カルテに記載するのと同じように臨床情報を本システムに入力することで、構造化されたデータベースを構築します。各医療機関の構造化データベースからエッジコンピューティング技術※5を駆使し、各医療機関内において患者さん個人を特定できないよう統計処理した上で、高セキュアなネットワークを通じて、統計データをPRiME-Rにより全体集計し、各医療機関へ提供します。

※5 利用者や端末と物理的に近い場所に処理装置を分散配置して、データ処理を行う技術の総称

(2) 本研究の意義
 1. 自医療機関内の治療成績や有害事象情報等の閲覧・分析が可能
 ・治療成績の可視化により、臨床現場における医療実態を把握できます。
 ・有害事象情報の可視化により、医療安全の向上を支援します。
 2. 参加医療機関全体の治療成績や有害事象情報等のデータの参照・分析が可能
 ・自医療機関および参加医療機関全体の統計データを参照・分析することで、より最適な治療方針の立案が可能です。
 ・参加医療機関全体の有害事象情報の可視化により、医療安全の向上を支援します。
 ・製薬企業との治験等の機会を創出することができます。

                        研究のイメージ

PR TIMESで本文を見る