巨大量子系シミュレーション用の量子回路設計法を構築

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-物性・材料・化学計算への効率的・高精度な大規模量子計算を加速-

理化学研究所(理研)量子コンピュータ研究センター量子計算理論研究チームの水田郁基礎科学特別研究員、藤井啓祐チームリーダー(大阪大学大学院基礎工学研究科教授)、株式会社QunaSysの中川裕也リードサイエンティスト、大阪大学大学院基礎工学研究科の御手洗光祐助教らの共同研究グループは、「大規模な量子系のダイナミクス[1]」を高精度に計算する量子回路の効率の良い設計法を構築しました。
 本研究成果は、広範な量子系に対して効率的かつ高精度な大規模量子計算を可能にする手法として、物性・材料・化学分野への実用的問題への量子コンピュータ[2]の応用を加速するものと期待できます。
 大規模な量子系のダイナミクスのシミュレーションは従来(古典)コンピュータでは実行困難であることから、量子コンピュータの最も重要なアプリケーションとして特に注目されています。しかし、このようなダイナミクスを高精度にシミュレートするには複雑な量子回路が必要であり、現在実現している規模の量子コンピュータでは実行できないという問題がありました。
 「Lieb-Robinson限界[3]」は情報が伝播する速度限界を与える理論であり、幅広い量子系で普遍的に成立します。今回、共同研究グループはLieb-Robinson限界を用いることで、小規模量子コンピュータや古典コンピュータでも大規模な量子系のダイナミクスをコンパクトかつ高精度に計算する量子回路を設計できることを証明し、その具体的なアルゴリズムの提案と数値検証を行いました。
 本研究は、オンライン科学雑誌『PRX Quantum』(10月5日付:日本時間10月6日)に掲載されます。

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