夢の別荘は近場でーーPacasoが採用した少人数・共同所有モデル(2/2)

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Image Credit:Outsite co

(前回からのつづき)米国には約3,000万戸の別荘が存在しているそうです。しかし利用期間は年間で4〜6週間。言い換えれば11カ月ほどが使われずにいます。しかもこうした物件に飽きて、不動産を売買したいとなると未だに煩雑なプロセスが伴います。ここに共同所有の考えを用いたのがPacasoです。

まず同社は顧客需要が高そうな物件を代表して購入します。その物件を欲しい購入希望者は物件シェアの1/8(12.5%)〜50%を保有する必要があります。残ったシェアはPacasoが保有し続け、他の購入者を探すまで持ち続けます。最低シェアが1/8であることから、物件は最大8名の間で共有される計算となります。

Pacasoは共同所有を実現させるため、代表して購入した物件の売却開始と同時にLLC(有限責任会社)を設立します。つまり、1つの物件を1つの会社で運営できる体制を整えるのです。シェア率に関わらず、常に会社の経営はPacasoが担うため、メンテナンス、資金調達(物件購入のローン)、法務などの面倒な作業を顧客が考える必要はありません。収益源として、1オーナー当たり10〜15%の利ざや(手数料)を求めます。加えて購入価格の1%に当たる年間運営費用を徴収することで、定期収入も獲得しています。

一見、タイムシェアモデルと似ていると感じるかもしれませんが、冒頭で紹介したように都市部から2時間ほどの移動圏内にある物件に特化し、リゾート地ではなく、アットホームな住宅体験の提供に絞っているのが特徴です。

また、よくあるタイムシェアの物件は1年以内に購入期間を利用しなければならず、かつ物件価値は徐々に下がっていく傾向にあります。1部屋に対し50人が以上が利用予約するケースもあるため期間変更も難しくなります。この点、Pacasoは最大で8名の所有者がいるのみなので利用期間の予約が取りやすく、住宅価値も上昇する可能性が残っています。

競合には大手バケーションレンタル企業「Vacasa」がいます。別荘を民泊化するため、オーナー不在でも鍵の受け渡しや物件管理などのフルサービスを提供しています。同社の収入は10億ドルほどだそうで、十分なベンチマークと言える事業規模です。別荘購入を民主化させるPacasoがどの程度市場を切り開けるのかに期待が集まります。

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