鮮魚・食品流通の八面六臂、東京随一の水産物流通施設に本社を移転——首都圏でC向けECにも本格参入

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豊海流通センターの外観。
Image credit: Hachimenroppi

飲食店向けに鮮魚や食品の e コマースを展開する八面六臂は今週、東京・豊海の豊海流通センターに本社を移転したことを明らかにした。豊海流通センターは、水産卸大手の中央魚類(東証:8030)や水産物流通大手のホウスイ(東証:1352)らが中心となって、今月1日に竣工。東京の水産物市場が築地から豊洲に移転したことを機に、低温での水産物流通を効率的に扱える拠点として設置された。この種の拠点としては東京随一で、豊洲からも車で5分ほどと地の利が良いのが特徴だ。

豊海流通センターの内部。
Image credit: Hachimenroppi

豊洲市場は確かに大きいのだけれども、基本的には市場なので、市場機能以外の設備や装置を置いておくことができない。したがって、流通をやるにはそのための拠点が別に必要になる。

東京には低温の流通センターは比較的数多くあるが、水産物のような水モノを扱える施設は、それほど多くなかった。豊海流通センターに入居することで、八面六臂が取り扱える流通量や業務効率は格段に向上することになる。(八面六臂 代表取締役 松田雅也氏)

八面六臂は、2011年4月より1都3県の飲食店向け e コマース事業を展開。中央卸売市場経由の仕入れだけでなく、全国の産地市場や生産者から独自の仕入れを構築し、自社物流による店舗配送網によって中小規模の飲食店へ商品を提供している。現在取り扱う商品は、水産物のみならず、青果、精肉、加工品など。同社独自のアプリを使うことで、ドライバは一筆書きのように迅速かつ効率的に飲食店を巡って配達することが可能で、環状の国道16号線の中に翌日配達網を構築することに成功した。

国道16号線の地図。
Via Wikimedia. Used under the Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0 International license.

松田氏によれば、国道16号線で囲まれるエリアには、日本にある飲食店の半分以上が存在するという。首都圏に日本の人口の3分の1以上が住んでいることを考慮すれば、この飲食店の密集状態にも合点がいく。言い換えれば、国道16号線の中の飲食店市場を制することができれば、日本のこの分野ではドミナントプレーヤーだ。国道16号線の中であれば、毎日のように何かしらの商品を届ける八面六臂のトラックが走っている。松田氏はこの配送網を使って、一般消費者向けにも鮮魚や食品 EC を本格的に始めることを明らかにした。

豊海流通センターの前で写真におさまる八面六臂の松田氏と御子息。
Image credit: Hachimenroppi

水産物は言うまでもなく、野菜は鮮度を考えれば毎日買う需要があるし、ついでに油も…みたいなお客さんは多い。B 向けと C 向けのサービスの境目はだんだんと曖昧になってきているし、うちはすでに B2B のメッシュネットワークがあったので、昨年秋から B2C サービスを始めた。キュウリ1本のオーダーであっても、商品を注文を受けた次の日には届けられるのが、うちの強みだ。

生鮮食料品の EC は、大手の EC サイトやネットスーパーですら苦戦している。鮮度管理や在庫リスクの問題から、他の商品と同じようなロジのネットワークは組みにくいからだ。生産者からの直送サービスもいくつか出てきるが、ラストマイル配送のコストが高いなどの事情もあり、利益が出ていないプロバイダも多いと聞く。(松田氏)

ピッキング作業する八面六臂の社員。
Image credit: Hachimenroppi

八面六臂の配達ドライバは、八面六臂とする契約する運送会社などから派遣されている。毎日の飲食店(そして、今後は一般消費者も加わることになる)からの調達に応じて、どの時刻にどこにどの商品を届けるかはアプリを通じて指示される。松田氏によれば、商品をトラックに積み込むまでのピッキングとドライバの配送システムの構築に、事業開始から10年を費やしたという。一時は会社迷走とも揶揄されたが、生鮮食料品流通で無双の力を手にした今、同社は再び IPO に向けて前進を始めたようだ。

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