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熊本の震災でも活躍、福岡発の遭難や震災から命を守る探索機器「ヒトココ」と会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ」

福岡を拠点に活動する二人のメディア人、市來孝人と小松里紗による福岡現地取材シリーズ。“福岡のスタートアップ事情に興味のある人”に向けて、現地のキーパーソンの生の声をTHE BRIDGEを通して発信していきます。 今回、取材をしたのは福岡市西区に拠点を置くAUTHENTIC JAPAN。2011年に創業、山岳遭難や認知症サポート、子ども見守りなど、大切な命を守るために必要な機能を追求した探索機器「ヒ…

福岡を拠点に活動する二人のメディア人、市來孝人小松里紗による福岡現地取材シリーズ。“福岡のスタートアップ事情に興味のある人”に向けて、現地のキーパーソンの生の声をTHE BRIDGEを通して発信していきます。

AUTHENTIC JAPAN代表 久我 一総氏
AUTHENTIC JAPAN代表 久我 一総氏

今回、取材をしたのは福岡市西区に拠点を置くAUTHENTIC JAPAN。2011年に創業、山岳遭難や認知症サポート、子ども見守りなど、大切な命を守るために必要な機能を追求した探索機器「ヒトココ」などの開発を行っています。

実際の山岳救助の現場や、介護施設でもすでに導入されており、今後のサービス拡充にも期待が寄せられる同社。代表取締役の久我 一総さんに「ヒトココ」開発にあたっての想いと、久我さんが目指す“人の命を救う”妥協のない通信機器の今後の展開についてお聞きしました。

災害対策として命を守るために、しっかりと活用できるツールを

-「ヒトココ」開発の経緯についてお聞かせください。

久我:目指したのは、本気で人の命を救う探索機器を作ることでした。2012年に技術開発に取り組み、その1年後にプロトタイプを開発、そして現在の「ヒトココ」に辿り着きます。

-Bluetooth搭載のスマートフォンなど、探索機能を持ったスマートデバイスがあったにも関わらず「ヒトココ」の開発に取り組んだのは理由があったのでしょうか?

久我:子どもの見守りにBluetoothを活用していましたが、電波の飛距離が短くて現場では使えなかったのです。GPSは、広域で探すことはできても建物の中や地下では、大まかな位置情報しかわからず、役に立ちませんでした。子供をしっかりと見守ろうと思うと、広域からピンポイントで探索できるツールでなければ意味がありません。同様に、災害対策として命を守るためには、しっかりと活用できるツールでなければ、安全を担保することができません。だから本気で人の命を救うための探索機器「ヒトココ」の開発を始めました。

現場のプロに信頼してもらえる最高峰の機器で、人命救助の現場に革命を

「ヒトココ」が最初に導入されたのは山岳救助の現場。久我さんが日本山岳協会に持ち込んだプロトタイプをきっかけに導入へと繋がったそうです。

hitococo

-これまでの山岳救助での探索機器と比較して、具体的に異なるのはどういった機能でしょうか?

久我:従来使用されていた山岳救助機器よりも圧倒的に優れたパフォーマンスが特徴です。子機端末の重量はわずか20g、約1ヶ月間は充電なしで使用できる電池寿命、最大1km(使用環境による)の電波飛距離。さらに、GPSやBluetoothでは実現できなかったピンポイント捜索では、「3階トイレの2番目のドア」まで特定することができます。

-なぜ山岳救助の現場へプロトタイプを持ち込んだのですか?

久我:私たちのテーマは「人の命を救う」こと。災害山岳遭難救助の現場でプロが信頼して活用する探索機器なら、認知症サポート、子どもの見守りなど、一般での活用シーンも大きく広がると思ったからです。現在、1日平均約8名が全国で山岳遭難しています。そのうち約1割、昨年では311名の方が亡くなっており、その原因の6割は滑落や転倒といったアクシデント。それをヒトココで解決していきたいと考えました。

-現在では、「電子登山届け」にも「ヒトココ」のID記入欄が設けられていますね。

久我:自分が危険な状態にあることを発信できない場合でも、電子登山届けと連動していれば、ご家族に自動的に通知されるシステムです。ヒトココがあれば、通知後の捜索も人海戦術的にではなく、正確な位置情報を持って捜索することができるので、人の命を救える可能性が格段に高くなります。

-スマートフォンに機能を搭載する方が便利に見えますが、敢えて専用機器という形で開発したのはなぜでしょうか?

久我:本気で人の命を守るためには、本当に必要なスペックだけを残して徹底してパフォーマンスを向上させることが必要です。スマートフォンとの連動やBluetoothの搭載は可能ですが、電池寿命は短く、重量は増えてしまいます。“人の命”を救う商品としてのバランスが崩れてしまうのです。目指すのは“便利”なツールではなく人の命を守るために“必要”なツール。どんな状況でも、絶対に通信できる機器でなければなりませんでした。

最短30分。会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ」で素早く捜索

同社は、山岳遭難救助隊をサポートするためのサービスとして会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ」もスタートさせました。そのサービス内容と、サポート体制についても伺いました。

- 「ココヘリ」の具体的なサービス内容について教えてください。

久我:「ココヘリ」は電話1本・無料で呼べる、会員制捜索ヘリサービスです。発信機となる「ヒトココ」が本サービスの会員証になります。民間の捜索ヘリで会員証(発信機)を探索し、警察・消防などの救助組織への救助要請、位置情報連絡、救出されるまでの救助物資の提供を行います。

- 本サービスが従来の救助活動にもたらす利点とは何でしょうか?

久我:最大の利点は、遭難発生から救助・搬送までの時間を大幅に短縮できる点です。現状の捜索・救助活動では、登山届け未提出のために該当山域の特定が難しいことや、人海戦術とヘリからの目視による捜索活動に膨大な時間と費用がかかっています。私たちが提供するのは「捜索活動」に特化し、人命救助のタイムリミットと言われる72時間の壁を打ち破るサービスです。専用の発信機と捜索ヘリの統合サービスで会員を早期発見し、「捜索しながらの救助」ではなく、「救助活動」のみに専念できるようサポートします。さらに提携しているオンライン登山届け「コンパス」を併用することで、自分で外部に遭難を伝えられない状況でもご家族や知人に通知・警告が届き、救助活動をスタートさせることが可能です。

目指す先は”便利”ではなく命を守るために”必要”なツール

-今後の「ヒトココ」や「ココヘリ」の展開についてお聞かせください。

久我:私たちが新しく取り組んでいるのは、山岳遭難救助の現場でのより強力なサポート体制の構築です。「ココヘリ」で救助隊員が現場に到着する前に、「ヒトココ(会員証)」で遭難位置を把握、ヘリコプターで必要物資を投下できれば、人の命を救う第1歩になることは間違いありません。現在、静岡県警が富士山での導入を検討してくれているように、警察消防関係との提携も進めています。そんな中、「ヒトココ」は活用シーンの1つ、介護の現場において厚生労働省が認める福祉用具に認定されました。今後もプロ領域に認められる最高峰の探索機器として、活用シーンを広げていきたいです。

「ヒトココ」で二次災害を防ぐ。熊本地震に向かう救助隊を支援

2011年3月11日に発生した東日本大震災。取材時、久我さんは「震災があった際、もっと早くヒトココがあれば」と話していました。その取材後、今年4月に熊本地震が発生。震災のニュースと同時に頭によぎったのは同ツールでした。後日、今回の震災時における「ヒトココ」で実現した支援についても、お聞きしました。

久我:震災直後、とある消防組織より救助隊の二次災害を防ぐ目的で「ヒトココ」を導入したいと相談を受けました。震災が発生した後、私たちにできることは命をかけて現場に向かう救助隊の支援ですから。その後、現場へ向かう救助隊に子機93台と親機25台が夏以降に導入されることが決まりました。東日本大震災のときにはできなかった支援を実現できたことは大きな1歩です。

今後は、社内体制や雇用についても拡大していくことを予定しており、プロの領域から一般的な活用シーンまで、「ヒトココ」の普及を図っていくと話す久我さん。本気で「人の命」を救うことをテーマに開発に取り組むAUTHENTIC JAPAN株式会社。彼らが人命救助の現場に革命をもたらす将来は、そう遠くないかもしれません。

聞き手・執筆:小松里紗、構成:市來孝人、写真:松山タカヨシ

プロフィール

13231181_1053790794692763_798708717_n小松里紗:「ad:tech tokyo 2012」に「Club売れるネット広告つくーる」のキャストとして参加したことがきっかけでWEB業界へ。福岡のITベンチャー・株式会社エニセンスを経て、WEBメディアの立ち上げや運用に携わりながら福岡で会員制バー「Bar Sumica」を経営。WEBや飲食業にとどまらず、MCやライターとしてもマルチに活動。
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hiro市來孝人:メディアプランナー/プロデューサー。PR会社勤務の後独立し「ラジオを通し地域を盛り上がる試みをしたい」と考え、「福岡移住計画ラジオ」を企画し自ら出演(〜2015年9月)。ラジオをきっかけに繋がった福岡の方々の声を、さらにWEBを通し広く・定期的に伝えていくべく当連載を企画。「SENSORS」「AdGang」等でも編集・執筆を担当。
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