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黎明期のオンライン診療「ピル処方」スマルナはどう立ち上がったーーネクイノ・石井健一さん×ANOBAKA・萩谷聡さん【Monthly Pitch ポッドキャスト】

本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイトに掲載された記事からの転載 起業家と投資家の関係はこの10年で随分と変化しました。スマートフォンシフトといったトレンドの変化、Y Combinatorなどの登場でシード投資のハードルが一気に下がり、投資サイド・起業家サイド共に大きく数が増えたことが大きな要因です。特にシード期から志を共にするような場合、その関係は十数年に及…

本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイトに掲載された記事からの転載

起業家と投資家の関係はこの10年で随分と変化しました。スマートフォンシフトといったトレンドの変化、Y Combinatorなどの登場でシード投資のハードルが一気に下がり、投資サイド・起業家サイド共に大きく数が増えたことが大きな要因です。特にシード期から志を共にするような場合、その関係は十数年に及ぶこともあります。事業における最愛のパートナーたちはどのようにして出会い、成長し、そしてその後の関係はどのようなものになるのでしょうか。

シード投資を長年に渡って手がけてきたサイバーエージェント・キャピタル(CAC)では、この「投資家と起業家」の関係に注目した連載を開始します。毎月開催される「Monthly Pitch」にこれまで参加してくれたキャピタリストと創業者のお二人をお招きし、出会いのきっかけや乗り越えたハードル、関係構築のポイントなど、ここだけでしか聞けない裏話を語っていただきます。

最終回となる今回、登場いただくのは2018年6月にリリースされたオンライン診療でピルを処方するアプリ「スマルナ」を提供するネクイノ代表取締役の石井健一さんと、創業期から二人三脚で事業成長を見守ったANOBAKAの萩谷聡さんです。ご自身も薬剤師である石井さんは医療におけるコミュニケーションをテクノロジーで改善し、医療空間と体験を変えるべく2016年にネクイノ(旧社名はネクストイノベーション)を創業します。

ビジネスコンテストをきっかけに萩谷さんたち投資家と出会い、オンライン診療黎明期の市場で果敢にチャレンジを繰り返します。本命と考えていたスマルナがリリースされる前後は、会社が持つかどうかギリギリの状況でしたが、この状況を見事乗り越え現在、若い世代を中心にピル処方のスタンダード・ソリューションに成長しています。立ち上がり期の市場をどう乗り越えたのか、お二人にお話を伺いました。(ポッドキャスト収録の一部をお送りします。太字の質問はMonthly Pitch編集部)

ースマルナが大きく躍進した時のこと少し振り返っていただいてもよろしいですか?

石井:ビジネスモデルが分かりづらい、業界が分かりづらい、勝ち筋が分かりづらいという状態でしょう?かつシード期で自信満々で入った花粉症のトラクションが上がらないという状態だったので、2018年の夏に入って下さった投資家の方々には、シード期の方々と同じように、「よくぞ会ってくださいました!」っていうのが正直なところですね。ただ、これってスマルナが動いていた直後なんですよ。そのスマルナの手応えがとてつもなく良くて、もう絶対にこれは何とかなるなと思って動かしていたのを覚えています。

ー萩谷さんにとって、その信頼度は全く揺るがないものだったんですか?

萩谷:そうです。花粉症や他の疾患についても、なかなかな刺さり具合だなと思ってるタイミングで、「スマルナ」という女性向けサービスを出した瞬間の足元のニーズが凄くて。もう、これは本当にPMFというか、ツイッターでもいい口コミがいきなりガーンと流れているし、やっぱり違うなと。でも、その時トラクションとしてはまだまだだったんですけど、ここに絞れば行けるかなと、僕らもフォロー投資して、他の投資家も紹介しやすくなったという感じでしたね。

ー企業家のギリギリのストーリーってよく聞きますけれど、通帳残高50万円はなかなかしびれますね

石井:そんな中、5月に3人採用してるんですけどね(笑)。その内の一人が出てるので、皆様、ぜひネクイノのウォンテッドリーを覗いていただければと思います。開発の柱になっているメンバーがその時期に入ってくれています。

ー社員数はいま何人ですか?

石井:全員で90人ぐらいですね。

ー2018年8月は奇跡のステージだったと思います。そこからスマルナはダウンロード数を積み上げていって、その翌々年には20万ダウンロードとなり、昨年12月には累計調達額20億円。ここまでの道のりで成長痛などありませんでしたか?

石井:毎日が成長痛ですかね。一つ言えるのは、僕、あちこちでよく喋らせていただくんですけど、やっぱり仕事するのって何をするかじゃなく、誰とするかのほうが大事だと思ってるんですよ。ネクイノを作る前に一緒に仕事をしていたり、知り合いだったメンバーがネクイノの1周目のメンバーなんですよ。彼らのほとんどが今も会社に残ってくれていて、今まさに役員として柱となってくれているんです。よく、スタートアップのシリーズA前後で、さぁ右腕どうする?左腕どうする?みたいな議論ってあるじゃないですか。そこは完全にパスで来ました。

ーそれはいいですね

石井:ただ、これ、一方で最初はめちゃくちゃバーンが高いんですよ。バーンが高いので、よくぞ萩谷さんが飲んでくれたと思っています。

萩谷:起業家みたいな方が最初からチームメンバーにいて、切れ者の方も多かったので、その辺りは任せられるっていう感じでしたね。一発目のラウンドもすごく少額という感じではなく、ニッセイとうちで7,500万ぐらいの出資だったので、しっかり集められたというところが良かったかもしれないですね。

ーーーポッドキャストではそのほかのエピソードも語っていただいています。シード期の起業家が投資家とどのようにコミュニケーションしたのか、ぜひお聞きください。

ピルのオンライン処方「スマルナ」、ネクイノが累計20億円の調達を公表

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ニュースサマリ:ピルのオンライン処方アプリ「スマルナ」を運営するネクイノ(旧:ネクストイノベーション)は12月14日、ジャフコを引受先とする第三者割当増資の実施を公表した。今回ラウンドをリードしたのはジャフコで、それ以外の出資企業については非公開。 ジャフコは同社の2019年9月に実施したシリーズAラウンドでもリードを務めており、そこからの累計調達額は融資も含めて20億円となる。また、同社は社名を…

スマルナを開発・提供するネクイノ(ウェブサイトより)

ニュースサマリ:ピルのオンライン処方アプリ「スマルナ」を運営するネクイノ(旧:ネクストイノベーション)は12月14日、ジャフコを引受先とする第三者割当増資の実施を公表した。今回ラウンドをリードしたのはジャフコで、それ以外の出資企業については非公開。

ジャフコは同社の2019年9月に実施したシリーズAラウンドでもリードを務めており、そこからの累計調達額は融資も含めて20億円となる。また、同社は社名を「ネクストイノベーション株式会社」から「株式会社ネクイノ」に変更したことも合わせて発表した。調達した資金は、スマルナをはじめとした医療関連のデジタル化に向けた事業基盤の強化に活用される予定。

スマルナは生理や性の悩みを抱える女性ユーザーと医師をオンライン上で直接つなぎ、ピルを処方するオンライン診察アプリ。2018年6月のリリース以降、10代〜30代の女性を中心に利用され、約2年半で累計39万件ダウンロードを超えている。さらに昨今の感染症拡大は受療行動に大きな影響を与え、緊急事態宣言下の2020年4月と5月におけるスマルナでのオンライン月別ピル処方数は、同年1と2月に比べ倍増している

話題のポイント:コロナ禍で注目が高まるオンライン診察のネクイノが大型調達を発表しました。同タイミングで社名変更にも踏み切った理由について、同社代表取締役の石井健一さんは医療現場でのデジタル化が大きなきっかけとその理由を教えてくれました。

「創業以来、世界中の医療空間と体験の『Re▷design(サイテイギ)』というミッションのもと邁進して参りましたが、2020年の世界規模での新型コロナウイルス感染症の流行拡大もあり、より医療のデジタル化の重要性が増しています。コロナ前までのフェーズでは医療のデジタル化は主に世界的には医療データ収集と構築のためのインフラとしての視点、国内では僻地などの医療インフラが整っていない地域への支援、対面診療の補完が中心の文脈でしたが、withコロナ時代において日本国内でも『非接触下』の診察として、対面診療、在宅医療に続く3つ目の診療スタイルとしての重要性を増しています。こういった外部環境の中、弊社は社内外でも略称である『ネクイノ』の名称で呼んでいただけることが増え、新しい自分達の旗を立てるべくこのタイミングで社名変更をしよう、ということになりました」(石井さん)。

ネクイノは2016年の創業以来、インターネットを⽤いた遠隔医療サービスなどを展開していますが、同社の中心事業となっているのはいわゆるフェムテックで女性向け医療を提供する「スマルナ」です。婦人科に注力している理由としては「決してこの領域だけをやりたいと言うわけではありませんが、デジタル化を進めていく上で、最も市場のニーズと医療供給のギャップが起きている分野の一つ」であることを挙げられていました。

スマルナ

また、医療領域におけるデジタル化をどのように推進するか、という疑問について石井さんは次のステップをこのように考えているそうです。

「弊社は、創業時からPHR(Personal Health Record:個人に紐づいた健康データベース)の構築を1丁目1番地に据えておりましたが、withコロナ時代において必要とされるデジタルな医療空間での体験を構築するためのプラットフォームの提供フェーズに入ってきた、と考えています。今まではスマルナを中心とした自社サービス内でのプラットフォーム化を推し進めて参りましたが、今後は対面診療をふくめ他の診療プラットフォームの接続や蓄積してきた知見の共有による社会全体のDX化の推進フェーズが『次のステップ』だと考えています」(石井さん)。

もう一点、遠隔診療において課題となる「なりすまし問題」に関しては、同社も「診察を行う医師/受ける患者側がそれぞれ本人であるかの証明は、根本的な部分でクリアしなければいけない課題」(石井氏)としたうえで、AIによる本人確認システムを導入することを2020年9月に発表しています。米国では、女性向けオンラインヘルスケアを提供するNurx2020年8月に2250万ドルの調達を発表し、女性に症状が多いとされる偏頭痛に対する薬の配送サービスも新たに開始しています。

執筆:平理沙子(Risako Taira)/編集:平野武士