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欧州フィンテックの新潮流「チャレンジャー・バンク」とオープン・バンキング規制改革「PSD2」を紐解く

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「Revolut」が5億ドルを調達、「Monzo」が1億5000万ドル、「N26」は3億ドル、「Starling bank」2億ドル。以上は2019年内に報じられた、欧州発のデジタル銀行スタートアップによる資金調達(※または調達見込み)です。上記企業らは全てローンチからわずか5年以下で、凄まじい勢いで成長する「チャレンジャー・バンク」と呼ばれる新しい銀行ビジネスです。 「チャレンジャー・バンク」と…

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Revolut」が5億ドルを調達、「Monzo」が1億5000万ドル、「N26」は3億ドル、「Starling bank」2億ドル。以上は2019年内に報じられた、欧州発のデジタル銀行スタートアップによる資金調達(※または調達見込み)です。上記企業らは全てローンチからわずか5年以下で、凄まじい勢いで成長する「チャレンジャー・バンク」と呼ばれる新しい銀行ビジネスです。

「チャレンジャー・バンク」とは何なのでしょうか。初めて聞くという人も多いと思います。そこで本記事では、チャレンジャー・バンクと呼ばれる新興スタートアップらの概要・動向を紹介します。またそれを軸に、欧州のオープン・バンキングの歴史・最前線の現況についても解説します。

日本でも最近、オンライン・バンキングや銀行APIの制度化が叫ばれており、欧州の先行事例は、国内の業界関係者は必ず知っておくべき内容でしょう。

チャレンジャー・バンクとは

さて、第一にチャレンジャー・バンクとは何でしょうか。チャレンジャー・バンクとは欧州を中心に台頭する、銀行免許を保持したデジタル銀行スタートアップのことを指します。欧州の銀行ライセンス取得の簡易化・銀行APIの解放、すなわち「オープン・バンキング」というコンセプトを基に急成長した巨大フィンテック企業のことを指します。

起源としては、2008年の金融危機に関連して、2010年以降より英国政府が国内の主要大手銀行の寡占状態に終止符を打とうと、新規参入者へ銀行免許の付与を開始したことが始まりです。そのため今でも、英国発のチャレンジャー・バンクらが欧州市場をリードしている状況です。

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Image Credit : Challenger Banks in Europe. 2019 Overview

チャレンジャー・バンクのサービスをより具体的に噛み砕くと、銀行免許を所持し、かつスマホ・アプリから手軽に口座開設・入出金・送金・両替(外貨・暗号通貨対応)融資・資産運用・保険など、ほぼ全ジャンルの金融サービスを利用できるモバイルバンキング・ビジネスを指します。

端的に言い換えれば、金融機関の業務の中でも個人や中小企業などの顧客を対象とした小口の業務を行う「リテール業務」を全てスマホアプリに移行したものだと捉えることができ、それに加えてVisaやMasterなどの国際ブランドと連携することでオンライン・実店舗での決済用カードの提供まで行なっています。

これらのアプリは、欧州圏の銀行が提供するリテールサービスが元々利用しづらかったこともあり、デジタル・サービスの利用に抵抗の少ない若者やテッキー(テクノロジーに長けている人)を中心に急拡大していきました。

少し事例を紹介すると、イギリス発の「Revolut」や「Monzo」、ドイツ発の「N26」は中でも特に有名で、各社とも既にユニコーン企業となっており、現在では欧州市圏外にも目を向けています。Revolutは日本市場参入を決定し、N26はすでに米国市場でサービスを展開しています。

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Image Credit : 14 Hottest Digital-First Challenger Banks by Country in Europe

その他にも欧州各地からチャレンジャー・バンクが登場し、現在では既存のオフライン銀行を圧倒する大きなムーブメントとなっています。その勢いは海外にまで波及し、今や米国や南アメリカにも、各地域から急成長するチャレンジャー・バンクビジネスが登場しています。

<参考記事>

ただし、欧州のチャレンジャー・バンクの成長の土壌となったのは、何も各国が銀行免許の認可数を増加させたからというだけではありません。近年、銀行免許を取得したオンライン銀行らの後押しをするように、銀行APIの解放とその標準化といった、新たな規制改革が欧州全体で行われています。

欧州のオープン・バンキング規制改革「PSD2(Payment Service Directive 2)」

PSD2(決済サービス指令2)という法制度をご存知でしょうか。PSD2は、欧州が世界に先駆けてオープン・バンキングを推進するため、そしてセキュリティ・市場競争・消費者保護などの向上を目指し、2016年にEEA(欧州経済領域)各国に向け発行された法的枠組みです。

※EEA=欧州28ヶ国に加え、ノルウェー・アイルランド・リヒテンシュタインの3カ国を加えた地域共同体で、人・物・金・サービスの移動の自由を促すことを目的とする。

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青・緑の地域がEEA加盟国 Image Credit : Wikipedia

2018年にはメンバー各国がPSD2に準拠する形で各々で法整備を整え、その後各銀行によりAPI解放が実施されました。ちなみに同制度は、2007年に誕生した欧州内の決済標準化を推進するための枠組み「PSD」のバージョン2に当たります。

PSD2の施行によって、欧州の各銀行のAPI解放と、フィンテック事業者との接続が義務化され、各国規制当局に認可を受けた事業者らは顧客の同意の下、リクエストに応じて銀行から顧客データを自由に取得したり、決済処理を行えるようになりました。

具体的には、PSD2でAISP(Account Information Service Provider)とPISP(Payment Initiation Service Provider)という2つの免許があります。前者AISP事業者は、ユーザーの口座情報を取得する権限を持ち、後者PISP事業者は、銀行の資金移動APIを活用する権限を持つため、ユーザーに対し決済サービスを直接提供することができます。

※参考:英国のPSD2取得企業リスト

これらを日本の改正銀行法と比べると、以下の図のようになります。日本の場合は銀行のAPI解放が努力義務に止まり、かつフィンテック事業者は各行と個別契約を結ばなくてはならないなど、力強さに欠ける印象があります。

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Image Credit : インフキュリオン

話をPSD2に戻すと、前者AISP業者は、資産マネジメントや家計簿アプリなどをイメージすると分かり易く、後者PISP業者は、ECや送金など、決済全般に関わるサービスを提供するアプリを思い浮かべると良いでしょう。ちなみに両方のライセンスを有し、活用しているサービスも沢山存在しています。

事実、同枠組みの施行によって、欧州チャレンジャー・バンクの顧客数増加にさらに拍車がかかっています。というのも、PSD2によって同企業らがオンライン・バンキングサービスを構築することが非常に簡単になったからです。また、PSD2を活用して成長した便利な金融サービスがチャレンジャー・バンクのアプリへと組み込まれるなど、様々な面でプラスの効果を生んでいます。

さらに「Solaris Bank」などの、部分的にバンキング・サービスを運営するテック企業向けに、PSD2による銀行APIを活用したインフラサービスを提供するビジネスモデルも登場しています。このようなモデルは「Banking as a Service」と呼ばれ、チャレンジャー・バンクと肩を並べ勢いを増す、フィンテックの潮流の一つです。

<参考記事>

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Image Credit : Pixabay

欧州フィンテックを知る意義と、さらなるデジタル化

日本のフィンテック業界の起業家・投資家のリサーチ対象といえば、米国のシリコンバレーや大手銀行のデジタル化もそうですが、今は絶対的に「Ant Financial(螞蟻金融)」や「Tencent(騰訊)」が牽引する中国のフィンテック・エコシステムだと思います。

<参考記事>

ですが、欧州の動向も決して無視できるものではなく、むしろ日本人としては注視すべきだと思います。なぜなら国内の規制改革の動向を見るに、日本の銀行法は英国・欧州の改革を大いに参考にしているからです。その他の国に比べると、より似た規制制度を持ち、かつ少し先行する欧州のエコシステムから学べることは、決して少なくありません。

銀行法がさらにPSD2に類似していき、オープン・バンキングが進行すると考えると、現在の欧州のトレンドに追随する形で、日本国内からもチャレンジャー・バンクやBanking as a Serviceに類似したビジネスモデルのスタートアップが登場してくると予想できます。

そしてこうした視点を取っ払ったとしても、欧州のフィンテックの今後には大いに興味を惹かれます。というのも欧州連合、及びその周辺地域におけるPSD2や、その他の決済インフラの標準化政策は、世界でも前例のない超国家的な金融システムの構築を意味するためです。これは地球規模で考えて、地域・経済・通貨統合を検討する地域にとっての先行事例として、価値ある取り組みだと思います。

聞けば先日、ECB(欧州中央銀行)がステーブルコイン発行に向けた内部検討に着手したといいます。中国のデジタル通貨計画(DCEP)は、単一国家の法定通貨によるデジタル・マネーに過ぎませんが、ユーロ版ステーブルコインの場合は、ユーロが既に国家共同体による共通通貨であるため、アフリカ諸国などが検討する通貨統合と、そのデジタル化の先行事例にもなり得ます。

欧州連合を一つの国家だと捉えると、そのGDPは18兆ドルと、アメリカを超えて世界で2番目の規模になると言われています。英国の離脱問題やドイツ銀行の破綻危機などネガティブなニュースも絶えませんが、今後もグローバルな経済を牽引する存在としての役割は変わらないでしょう。

話が若干それてしまいましたが、最初はチャレンジャー・バンクというホットな切り口から、最後は出来るだけ視点を広げる形で欧州のフィンテック概況を解説しました。日本がさらなるオープン・バンキング改革を実施し、チャレンジャー・バンクやBanking as a Serviceなどのサービスが台頭する日は必ず来ると思います。そのために、いま現在で既存銀行やフィンテック事業者らにどんな対策ができるのかが問われています。

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思ったよりキャッシュレス化してなかったインドのフィンテック市場概観、実際に現地を訪れて感じたこと

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本記事では、前半にインドのフィンテック市場の急成長について、その背景とデータを基に概観し、後半は実際に3カ月インドのバンガロールに滞在した経験を通し感じたことについて書いてみたいと思います。 インドで何が起きているのか、どれくらいの成長規模・スピード感で、どんなスタートアップが存在しているのか、また現実的にローカル経済にどんな影響を及ぼしているのか、について知ってもらえたら嬉しいです。 インドとい…

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本記事では、前半にインドのフィンテック市場の急成長について、その背景とデータを基に概観し、後半は実際に3カ月インドのバンガロールに滞在した経験を通し感じたことについて書いてみたいと思います。

インドで何が起きているのか、どれくらいの成長規模・スピード感で、どんなスタートアップが存在しているのか、また現実的にローカル経済にどんな影響を及ぼしているのか、について知ってもらえたら嬉しいです。

インドという国と市場について

まずはインド市場の紹介から。インドは世界最後の超大国と言われる国家であり、その人口は数年内に中国を追い抜き世界トップに躍り出ると予測されています。2018年時点での人口は13億人で(日本の10倍以上)、2050年には17億人に達すると予測されています。

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Image Credit 世界経済のネタ帳

これまでのインドは、バンガロールが海外IT企業の開発拠点として大きく成長したり、インド工科大学の卒業生がGAFAMなどの巨大IT企業の役員になるといった実績から、IT業界から注目を集めてきました。

しかし現在はそれだけではなく、こうした成功で蓄積した資本・技術・人材の土壌を基に、スタートアップ支援や国家のさらなるIT化を推し進めており、凄まじい勢いでIT経済を成長させています。

インドのフィンテック市場概観

ここではデータを参考にしながらフィンテック市場の現況を概観していきます。MEDICI社のレポートによれば、フィンテック分野には2000社を超えるスタートアップが存在すると推定されています。分野ごとのスタートアップの数は下記画像が参考になりますが、ペイメントとレンディング、投資・資産運用領域が多くを占めています。

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Image Credit : Medici

下記のグラフは、2013年ー2018年のインド・フィンテック市場の投資動向を表しているものです。投資額・売却数は時期によりばらつきは見られますが、着実に上昇しており、前年の2018年は両指標共に最高実績をマークしていることが分かります。

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Image Credit : The Pulse of Fintech H’2

また、先日CB Insightが公開したリサーチ・レポート「Global Fintech Report Q3 2019」によれば、2019年第3四半期におけるインドのフィンテック市場の合計調達額は6億7,000万ドルであったのに対し、中国は6億6,000万ドルと、初めて調達額規模でインドが中国を追い越し話題になりました。

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Image Credit : CB Insight

「金融包摂」というスローガン

決済やレンディング市場、保険市場など含め、インドからは欧米に次ぐ勢いで、続々とユニコーン企業が誕生しています。ただ、インドと欧米のフィンテック・スタートアップの違いとして、インド発のサービスが「金融包摂(Financial Inclusion)」というスローガンを共有している特徴が挙げられます。

金融包摂とは、未だ金融サービスにアクセスすることができていない人々に対し、金融機会を提供することを意味します。銀行サービスを中心に金融インフラが整っていないインドでは、それらを補う形で、決済・融資・資産運用・保険系のスタートアップが登場しています。

銀行の代替・補完という意味では、特にレンディング領域での成長が顕著で、機械学習による与信審査を行い、銀行からの消費者・中小事業者向け融資を補助するようなスタートアップが数多く登場し、多額の資金調達を行なっています。

<参考記事>

実際、DCGのレポートによれば、デジタルレンディングは今後も急速に成長していくと予測されており、2018年に23%であったレンディング市場に占めるデジタル・レンディングの割合は、2023年には48%まで成長するとされています。

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Image Credit :DCG

実際に肌で感じたインドのフィンテック市場観

さて、ここまでは筆者自身がインドに行く前に既に調べていた内容でしたが、以下からは、実際にインドに訪れてから気付いたことをメインに書いていきます。ちなみに筆者が訪れたのは「インドのシリコンバレー」と呼ばれるIT都市バンガロールです。

思ったよりキャッシュレス化してはいない

まず第一に、「思ったよりキャッシュレス化していない」という印象を持ったことを覚えています。具体的にはキャッシュレスのことで、ショッピング・モールやチェーン展開してるレストランやカフェではカードやモバイルペイメントが使えても、現金を使う人は大勢いるし、ローカルな商店では、たとえばQRコードがあっても感覚的に9割以上が現金決済でした。

事前リサーチで、インド市場シェア1位のモバイル・ペイメント「PayTm」のユーザー数が4億人と聞いていて、その他にも中央銀行「UPI」による統一ペイメント・インフラについて大きく感銘を受けていたため、少し過剰に期待し過ぎてしまったかもしれません。ユーザーの母数も大きく普及スピードも早いので時間が解決する問題だとは思いますが、インドはまだまだ格差があり、貧困層ほど現金信仰が顕著であることが、ローカル経済が未だ現金主流である理由だと感じました。

格差に関してもう一つ言うと、インドの急成長しているフィンテック・サービスの中には、銀行口座がなかったり、クレジット・スコアが一定以下の人は利用ができないサービスがあったりします。金融包摂を標榜しているサービス中心とは言え、テクノロジーだけでは救えない格差や貧困があると、強く実感させられました。

<参考記事>

人口1000万人程度のバンガロールで上述のような状態であったため、それ以下の都市や地方経済では、さらにデジタル化率は低く、未だ現金中心の経済が残っているのだと予想できます。

デジタル決済市場は、既にGAFAと中国二大テック企業の寡占である

現地にいった後、インドの決済市場は既に世界最大のテックジャイアントの寡占なのだなと痛感するに至りました。まずGAFAと呼ばれるネットジャイアントのうち、Google Pay・Amazon Pay・WhatsApp Pay(他Libra)といったサービスが市場へ既に参入または参入予定しています。

<参考記事>

モバイル決済に関しては、先述した「PayTm」にはアリババ(及びアント・ファイナンシャル)がついており、その次に主流な「PhonePe」を運営するEコマース企業「Flipkart」にはテンセントの資本が入っています。

現地のオートリキシャー(小型タクシー)や商店の中には、上述の各モバイルペイメント・サービスのQRコードが沢山貼ってありました。

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Facebook傘下のWhatsAppは現在インド市場シェア1位のSNSで、WhatsApp Payのローンチを予定しており、FacebookのLibraは、実現可能性はさておき、インドを有力な市場と判断しています。

訪れるまでは、インドのフィンテック市場は未開拓地域(フロンティア)であるかのようなイメージを持っていました。しかし実際はそうではなく、世界のネットジャイアントらの市場競争が既に始まっていて、そのスピード感にはとても驚かされました。

さて、以上2つが最も印象に残ったことです。改めて振り返ると、インド市場には魅力的なフィンテック・サービスが多くあると感じています。

今回調べた範囲だけでは、気になる事例を全て書ききれないので、こちらの別記事(後日リリースの『途上国向けスタートアップ3つのまとめ』)にまとめましたのでぜひ読んでみてください。調べれば調べるほど興味深いモデルやスケールが桁違いのフィンテック・スタートアップを発見できます。インド×フィンテックに関心のある方は、ぜひ色々調べてみることをお勧めします。

日本国内にもインドのフィンテック市場に関心を持ち始めている投資家や起業家の方は少なくないと思います。そんな方がフィンテック市場を学ぶび始める最初の一歩として、何か当記事から学んでいただけることがあれば幸いです。これからも、インド市場の成長に注目していきたいと思います。

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【2019年大型調達】注目の国内フィンテック・スタートアップ10選

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2019年の国内フィンテック動向を振り返ると、キャッシュレス戦争の勃発という印象が強く残っている方は多いと思います。メルペイの立ち上げや同サービスのQRコード決済におけるLINE Payとの提携、PayPayの大規模な還元セール、これら運営企業であるLINEとヤフーの経営統合と言ったニュースも記憶に新しいと思います。 しかしこうした動向の裏で、着々とサービス拡大を行い、大幅な資金調達を成功させた魅…

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2019年の国内フィンテック動向を振り返ると、キャッシュレス戦争の勃発という印象が強く残っている方は多いと思います。メルペイの立ち上げや同サービスのQRコード決済におけるLINE Payとの提携、PayPayの大規模な還元セール、これら運営企業であるLINEとヤフーの経営統合と言ったニュースも記憶に新しいと思います。

しかしこうした動向の裏で、着々とサービス拡大を行い、大幅な資金調達を成功させた魅力的な国内フィンテック企業が複数存在しています。本記事では2019年に大規模な資金調達を成功させた国内の金融×テクノロジー企業を10つ紹介し、今年の国内市場を振りかえってみたいと思います。

1. Paidy(後払い決済)

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Image Credit : Paidy

今年フィンテック業界にとって最も大きなニュースの一つに、後払い決済「Paidy」による156億円の資金調達が挙げられます。理由は本調達の額が国内フィンテック・スタートアップの中で過去最高であるためです。

Paidyはカードなし・事前登録なしで使えるオンラインの後払い決済サービス。同サービスを決済方法として受け入れているECサイト・ショップを利用する際、ユーザーは自身のメールアドレスと電話番号を入力するだけで、支払いを翌月にまとめて行うことができます。

支払いは一ヶ月の購入分をまとめて、銀行振込かコンビニ店頭での支払い。その簡易性によってビジター顧客の購入率を上昇させています。今後もオンライン決済に注力し、加盟店の増加を図るとしています。先日、ついにAmazon JapanがPaidyの導入を開始しました。今後のさらなる躍進に期待が高まります。

調達額:156億円
調達日:11月1日
シリーズ:Cラウンド・エクステンション
投資家:第三者割り当て増資 = PayPal VenturesやSoros Capital Managementなど
、デットファイナンス = Goldman Sachs Japanやみずほ銀行など

<参考記事>
・2019/11/29:
スペースマーケットがPaidyと連携、クレカを持たないユーザーの翌月払いに対応
・2018/07/12:
カードレスオンライン決済のPaidy、シリーズCラウンドで5,500万ドルを調達——伊藤忠商事やゴールドマン・サックスが参加、対面決済に進出へ
・2017/07/16:
カードレスオンライン決済「Paidy」提供のExCo、三菱東京UFJ銀行と資本業務提携

2. PayPay(モバイル決済)

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Image Credit : PayPay

PayPay」はヤフーとソフトバンクの合弁会社として、2018年10月にサービスを開始しました。今年5月8日には、両企業の親会社ソフトバンク・グループにより460億円の追加出資が発表されました。

※大規模な金額であるにも関わらず、関係企業による出資であるため、スタートアップとして括ることは難しいですが、国内キャッシュレス・ブームを象徴する企業及びその調達ニュースだったため、本記事にリストしています。

@DIMEによれば、同サービスは2019年11月17日に登録ユーザー数が2000万人、加盟店数は170万カ所以上、サービス開始からの累計決済回数は3億回を突破しているとのこと。同様のモバイル決済競合のLINE PAYの登録者は約3000万人に上り、未だ1000万の差があることは事実ですが、サービス開始1年と考えると、そのスピード感の凄まじさが伺えます。

調達額:460億円
調達日:5月8日(※同日に決定、それ以降に実施)
投資家:ソフトバンク・グループ

<参考記事>
・11/07:インフキュリオンデジタル、2019年の決済カオスマップとQRコード決済やキャッシュレス決済に関する動向調査結果を公開

3. Kyash(カード決済)

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Image Credit : Kyash

送金・決済システムを開発する「Kyash」は、今年7月3日、シリーズ B ラウンドで約15億円の調達を実施しています。同時に、カード印刷や決済基盤を提供する凸版印刷、クレジットカード大手の三菱 UFJ ニコスと業務提携も発表しました。

そして同社の今年の躍進の中で最も特徴的だったのは、企業向けにオリジナルVISAカードの発行(イシュイング)・決済処理(プロセッシング)・運営管理(マネジメント)を代行する「Kyash Direct」を提供開始したことです。

同サービスは、国内においてはBaaS(Banking as a Service)モデルの先駆け的存在で、国内テック企業によるバンキング・サービス参入・運営を下支えする存在として、今後大きな重要性を持つと考えられます。今年10月4日には、経費精算アプリ「クラウド・キャスト」のプリペイド・カードローンチをサポートしています。

調達額:15億円
調達日:7月3日
シリーズ:Bラウンド
投資家:Goodwater Capital、三菱 UFJ キャピタルなど

<参考記事>
・2019/10/04:
経費精算アプリ開発のクラウドキャスト、カード即時発行スキーム「Kyash Direct」を使った経費精算用Visaプリペイドカードをローンチ
・2019/07/03:
Kyash、シリーズBラウンドで米Goodwater Capitalなどから約15億円を資金調達——累計調達額は約28億円に
・2019/04/25:
Kyash、企業が自社ブランドのVisaカードを即時発行できる「Kyash Direct」をローンチへ——Fintechファストトラックプログラムにも参加

4. CAMPFIRE(クラウド・ファンディング)

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Image Credit : CAMPFIRE

女優「のん」さんのテレビCMでも話題になったクラウド・ファンディング「CAMPFIRE」。今年5月に総額22億円の資金調達を完了し、同時に東南アジア地域でのサービスも開始しました。

さらに9月には融資型クラウド・ファンディングサービス「CAMPFIRE Owners」の提供を開始し、11月には「GoAngel(ゴーエンジェル)」を買収し株式型への参入も開始しています。大型調達で得た資金を土台に、積極的にテレビ広告や新サービスを開始。新市場への参入など、いくつもの挑戦が見られた2019年は同社にとって大きな変化の年だったのではないでしょうか。

また、同じく国内の競合クラウド・ファンディングサイトである「Ready For」は今年3月末に4.2億円の調達、そして「Makuake(マクアケ)」は今月東証マザーズ上場を実施しています。以上のニュースを含め考えると、今年はクラウド・ファンディング業界全体が大きく前進した年だったと言えます。

調達額:22億円
調達日:5月6日
シリーズ:Cラウンド
投資家:KDDI Open Innovation Fund、グローバル・ブレイン、伊藤忠商事など

<参考記事>
・2019/10/28:
CM効果でCAMPFIREの累計流通額が150億円突破、100億円突破から8カ月で達成
・2019/11/06:
CAMPFIREが株式型クラウドファンディングに参入ーー「GoAngel」を買収
・2019/05/06:
22億円調達のCAMPFIRE、クラウドファンディングを「超える」次の何かへ

5. 五常・アンド・カンパニー(途上国向けローン)

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Image Credit : 五常・アンド・カンパニー

10月17日、途上国向けのマイクロファイナンス事業を展開する「五常・アンド・カンパニー」は、シリーズCラウンドにて、総額42.2億円の資金調達を完了しました。

同社の展開するサービスは、インドやカンボジア、ミャンマー、スリランカなどの途上国地域におけるマイクロ・ファイナンス事業。各地域において、新会社の設立又は既存の事業者の買収を通し、持ち株会社としてグループ事業を統括し運営しています。

同社は途上国を対象にして事業を展開する企業であるため、日本国内のユーザーからの知名度は低い印象がありますが、「民間版の世界銀行」という壮大なビジョンを掲げ、2014年当初から質の高いマイクロ・クレジットサービスを提供し続けている国内有数のフィンテック・スタートアップの一つです。

調達額:42.2億円
調達日:10月17日
シリーズ:Cラウンド
投資家:第一生命保険株式会社、SBIインベストメント株式会社など

<参考記事>
・2019/10/17:
民間版の世界銀行を目指す五常・アンド・カンパニー、42.2億円のシリーズC資金調達を完了

6. WealthNavi(ロボアドバイザー資産運用)

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Image Credit : WealthNavi

ロボアドバイザー「WealthNavi」を提供するウェルスナビは11月7日、金融機関関連ファンドを中心とした投資家らから、総額約41億円の資金調達を実施しています。累計調達額は148億円と、国内のフィンテック・スタートアップの中では、頭一つ抜けている数字です。

同社が提供するのは、「長期・積立・分散」の資産運用を全自動で行うサービスで、2016年7月の正式リリースから約3年5カ月で申込件数24万口座、預かり資産1,900億円を達成しています。高度な金融知識や手間をかけずに国際分散投資が行える利便性や、ロボ・アドバイザーによるポートフォリオ作成などのツールが人気となっています。

調達額:41億円
調達日:11月7日
シリーズ:Dラウンド
投資家:みずほキャピタル、東京大学協創プラットフォーム開発、SMBCベンチャーキャピタルなど

<参考記事>
・2019/11/07:
No.1ロボアドバイザー「WealthNavi」を提供するウェルスナビが約41億円の資金を調達
・2017/05/02:
預かり資産100億円を9カ月で突破、WealthNaviの成長を牽引した要因とは

7.トラノコ(お釣り投資・資産運用)

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Image Credit : トラノコ

Wealthnavi以外にも、資産運用アプリとして大きな注目を集め、今年20億円規模の資金調達に成功したスタートアップがあります。それがおつり投資サービス「トラノコ」を展開するTORANOTEC。同社は1月31日、セブン銀行と資本提携を発表すると同時に、同銀行から20億円の調達を実施しました。

トラノコが提供するのは、クレジットカードやAmazon・楽天のECアカウントを登録しておくだけで、カード・電子マネー決済で生じたおつりを投資運用に回すことができ、ユーザーの資産運用をサポートするサービスです。スマホアプリから操作可能で、投資ファンドは安定・バランス・リターン重視の3つから選ぶことができます。

調達額:20億円
調達日:1月31日
投資家:セブン銀行

<参考記事>
・2019/12/11:
おつりで投資「トラノコ」、友達紹介プログラムを開始
・2019/01/31:
おつり投資アプリ「トラノコ」がセブン銀行から20億円を調達、事業拡大に向けて協業加速へ

8. OLTA(ファクタリング)

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Image Credit : OLTA

OLTA」が提供するサービスは、オンライン完結型のファクタリング(請求書買取)「クラウド・ファクタリング」。同社は今年6月に25億円を、そして11月末には追加で2億円の資金調達を実施しました。

同社のクラウドファクタリングは、企業の請求書を買い取ることで、短期の運転資金需要に応えるもの。約20万社のデータに基づくAI(スコアリングモデル)を開発したことで、従来必要だった面接や書類提出などの手間を効率化したのが特徴です。創業からわずか2年半という短期間で、既に150億円以上の申請総額を達成しています。

近年はクラウド・ファンディングなどのムーブメントを中心に、中小事業者でも比較的簡単に資金調達を行える環境が整いつつあります。OLTAのクラウド・ファクタリングも、同様のオルタナティブな資金調達方法の一つとして、特に製造・建設業界のサプライチェーンやIT・ソフトウェア領域において、今後重要なポジションを担っていくことが期待されています。

調達額:1度目:25億円、2度目:2億円
調達日:1度目:6月24日、2度目:11月27日
シリーズ:A
投資家:1度目:SBIインベストメント、ジャフコ、新生銀行など
2度目:日本郵政キャピタル

<参考記事>
・2019/12/05:
半年弱で50億円積み上げたOLTA、クラウドファクタリング「3兆円市場」目指してChatworkと連携
・2019/11/28:
「クラウドファクタリング」のOLTA、日本郵政キャピタルから2億円を資金調達
・2019/6/24:
創業2年で申込100億円超「クラウドファクタリング」の衝撃ーー請求買取のOLTAが25億円調達【創業者インタビュー】

9. DeCurret(暗号通貨)

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Image Credit : DeCurret

DeCurret(ディーカレット)」は、今年3月末に開業・仮想通貨交換業者の登録を行なった、デジタル通貨の交換プラットホームです。そして7月に、第三者割当増資にて合計34億円の資金調達を実施しました。

同社は、第一に既存の暗号通貨取引所のような現物・レバレッジ取引などのサービスを提供しています。そして第二に、大きな特徴として、暗号通貨を既存の電子マネーと交換するサービスの提供を行なっています。

現時点で、暗号通貨をau wallet・楽天Edy・nanacoなどの対象ブランドのポイントへと交換できるサービスを提供しており、将来的にはSuicaへのチャージなども実施する予定だとされています。同社のサービスは、現在投機的用途に限定されている暗号通貨に、外部サービスでの利用可能性を提供し、その価値を向上させる取り組みとして、大きな期待と注目が集まっています。

調達額:34億円
調達日:7月11日
投資家:株式会社インターネットイニシアティブ、KDDI株式会社、コナミホールディングス株式会社、住友生命保険相互会社など

<参考記事>
・2019/08/21:
デジタル通貨のメインバンクDeCurret(ディーカレット) 国内初、仮想通貨から複数の電子マネーへチャージ
・2019/07/11:
デジタル通貨のメインバンクDeCurret(ディーカレット) 総額34億円の第三者割当増資による資金調達を実施
・2019/03/25:
デジタル通貨のメインバンクDeCurret仮想通貨交換業者登録と開業に関するお知らせ

10. justInCase(インシュア・テック)

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Image Credit : justInCase

12月に入って、インシュア・テック企業である「justInCase(ジャスト・イン・ケース)」による10億円の資金調達が実施されました。「新スマホ保険」やシェアリングエコノミーの概念を保険に応用したP2Pモデルのサービス「わりかん保険」を提供します。

同社は顧客チャネルを持つ企業との提携により、B2B2Cモデルを駆使しサービスを拡大を図ります。なお、本調達資金は、大企業とのパートナーシップ強化のためのインフラ構築や人材採用の拡大、新規事業開発の加速を中心に使うとされています。

日本は国内の既存保険大手がデジタル化を内製する動きが強いこともあり、インシュアテックに分類されるスタートアップが比較的少ないとされています。その意味で、日本国内のインシュア・テックエコシステムの活性化のためにも、今後の同社の躍進には大きな注目が集まっています。

調達額:10億円
調達日:12月9日
シリーズ: Aラウンド
投資家:伊藤忠商事、グローバル・ブレイン、ディー・エヌ・エーなど

<参考記事>
・2019/12/09:
インシュアテックのjustInCase、シリーズAラウンドで約10億円を資金調達——B2B2Cでの顧客獲得を狙い、事業会社連携を強化
・2018/06/29:
インシュアテックのjustInCase、少額短期保険業者登録を受けローンチへ——500 Startups Japan、GCP、LINE Venturesらから1.5億円を調達

さて、以上10のテック企業らは、大型調達をしたという点で共通だとはいえ、企業の存続年数も調達ラウンドも異なります。

今年既に市場に大きな影響を及ぼし、確かな実績を残した企業、たとえばPaidyやPayPay、OLTAなどは、既に確立した成長モデルを軸にさらなる躍進が期待できます。

一方で、CAMPFIREやDeccuret(ディー・カレット)、Kyashなどのような、新サービス・ローンチに関連した大型調達を行なった企業らには、今後の成長やビジネスモデル確立に大きな期待が集まります。

今回紹介した10の企業は、決済(Payment)・融資(Loan)・資金調達(Funding)・資産運用(Wealth Managment)・暗号通貨(Cryptocurrency)・保険(InsurTech)と、現在のフィンテック市場に存在するほぼ全ての領域を網羅しています。

こうして振り返ると2019年は、各分野で様々なイノベーション・ビジネスの成長が生まれていることが分かり、改めてフィンテックの面白さや、国内フィンテックの躍進を再確認できるような年だったのではないでしょうか。来年以降の動向にも、とても期待が高まります。

※上記10の企業の選考基準に関して:リサーチ範囲内で作成した2019年資金調達額ランキング上位に位置し、最低でも10億円以上の資金調達を実施した企業の中から、フィンテックに分類されるビジネス・ジャンルをできる限りカバーするように作成してあります

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ついにフィンテックでインドが中国に追いつく【CBIレポート】

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ピックアップ:Global Fintech Report Q3 2019 ニュースサマリー:CB Insightが、四半期毎にフィンテック・スタートアップ市場についてデータ分析するレポート『Global Fintech Report Q3 2019』を公開した。当該レポートではインド市場におけるスタートアップ総調達額がついに中国を上回ったことが判明している。 具体的には、2019年第3四半期におけ…

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ピックアップGlobal Fintech Report Q3 2019

ニュースサマリー:CB Insightが、四半期毎にフィンテック・スタートアップ市場についてデータ分析するレポート『Global Fintech Report Q3 2019』を公開した。当該レポートではインド市場におけるスタートアップ総調達額がついに中国を上回ったことが判明している。

具体的には、2019年第3四半期におけるインドのフィンテック市場の調達額は6億7,000万ドルであったのに対し、中国は6億6,000万ドルと僅差でインドが中国を追い抜かしている。一方、大型調達ディールの回数では、インドは33回であるのに対し、中国は55回と、こちらは中国が強さを見せている。

話題のポイント:今や中国とインドがアジアのフィンテックをリードする存在だということは周知の事実となりました。CB Insightによれば、2019年第3四半期のアジア圏(東南アジア地域を除く)のフィンテック・スタートアップによる資金調達は、総額18億ドルに到達し、その数は152回に及ぶといいます。ちなみに同期における欧州の調達額とディール数はそれぞれ17億ドルと182回、北米は43億ドルと90回でした。

このインドが6億7,000万ドル、中国が6億6,000万ドルであるという数値を踏まえると、すなわち両国だけでアジアのフィンテック市場の調達総額の3分の2を占めているということが分かります。以下のグラフを見ると、インドが中国を調達額で上回るのは直近1年で初めてのことであり、また中国の調達額が2019年に入り落ち込んでいることが分かります。

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Image Credit : CB Insight

インドの調達総額を押し上げたのは、クレジットカード・リワードアプリ「Cred」の1億2000万ドル調達やインシュアテック「Policy Bazzar」の1億3,000万ドル調達などの超大型ディールです。

<参考記事>

・創業9カ月で1.5億ドルを調達したインドのクレジットカード・リワード「Cred」とは?

また、実施投資回数を見るとインドが33回、中国が55回。合わせて88回(57%)と半分以上を占めていることが分かります。下図では2019年第2四半期において、インドが一度中国の投資回数を上回ってはいるものの、これは中国の調達数激減による勝ち越しだといえるでしょう。

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Image Credit : CB Insight

ここ数年のアジアのフィンテック市場でインドが徐々に中国の背中を捉え、調達額やディール数にて勝ち越すケースが生じていることが分かります。

Alibaba(阿里巴巴)関連企業のAnt Financial(螞蟻金融)やTencent(騰訊)が中心となり、先んじて巨大なフィンテック・エコシステムを構築する中国ではありますが、インドも決済サービス「PayTm」を筆頭にレンディングや保険領域でもユニコーン企業を輩出、その勢いは止まることを知りません。

ただ、PaytmはAnt FinancialとAlibabaからバックアップを受け大成したことから、資本戦略的に利害関係を共にするインドと中国の企業が多くいることも事実。そのため対立構造的な見方は今後薄れていくともいえるでしょう。

両国は共に人口が13億人と巨大な市場を持つ一方、既存金融の発達度合いも先進国に比べれば低いため、新しいサービスが急激に広まるリープフロッグ現象が起きやすい環境であるという共通性を持っています。そのため、今後もその勢いは止まることなく、アジアのフィンテックをリードし続けていくと予想されます。

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Googleがついに銀行業参入ーー激化するGAFA勢の争い、勝ち筋はどこに

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ピックアップ: Google Pay to offer checking accounts through Citi, Stanford Federal ニュースサマリー:Googleの親会社「Alphabet」が銀行業に参入する。 米国の大手銀行系列「Citigroup」とスタンフォード大学が有する小規模信用組合と提携して、Google Payを通じて利用できる個人向け当座預金口座を提供するもの…

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ピックアップ: Google Pay to offer checking accounts through Citi, Stanford Federal

ニュースサマリー:Googleの親会社「Alphabet」が銀行業に参入する。

米国の大手銀行系列「Citigroup」とスタンフォード大学が有する小規模信用組合と提携して、Google Payを通じて利用できる個人向け当座預金口座を提供するもので、Reutersが11月13日に報じた。同プロジェクト名は「Cache」と称される。サービス立ち上げ時期は伝えられていないが、詳報は数カ月以内にリリースされるという。

今回の動きはGAFA内の競合であるFacebook決済サービス「Facebook Pay」立ち上げや、Appleがゴールドマンサックスと提携して発行するクレジットカード「Apple Card」に対抗したものと思われる。オンライン決済から銀行口座開設、金融ローンに至る幅広いフィンテック領域に参入し、ユーザーとの新たな関係を構築したい意向だ。

一方、米国の規制当局は非常に厳しい視線でCacheを見ているとのこと。膨大なユーザーデータが正しく扱われているのかという点を中心に、プライバシーに対して大きな影響を持つGoogleに懸念を表明している。

事実、こうした当局の監視があることも一因として、Facebookが主導する仮想通貨プロジェクト「Libra」のパートナーは次々と計画から撤退。また、Appleも性別によってApple Cardの与信限度額を設定していると批判されている。

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話題のポイント: この数カ月、GAFA勢が立て続けにフィンテック市場に殴り込みをかけています。しかし、プライバシー問題を発端に市場の向かい風にあっているのが現状。なかでも欧米市場ではなかなかサービス展開ができずにいます。

こうした厳しい市場情勢の中、Googleが銀行業参入の果てに狙うのは何か?答えはインド市場にあると感じられます。

こちらの記事によると、Google Payの最大の成功はインド市場にあるとのこと。食料品やUberを筆頭とする輸送サービス、その他取引のデジタル決済にGoogle Payが積極的に利用され、月間ユーザー数が6,700万を超えているそうです。

インド市場にも競合は多数いますが、Google Payの人気は米国や日本市場を凌ぐといいます。ちなみに「eMarketer」のデータによれば米国全土のモバイル決済ユーザー数は6,100万超。Google Payのインドユーザー数はすでに米国全土の利用ユーザー数より多いと推測されます。

先進国から急成長を続ける発展途上国に目を向けるメリットは大きく2つ挙げられます。1つは当局の監視が緩くなる点。国ごとに審査基準が変わるため、新興企業に寛容な国であればサービス立ち上げスピードを上げられます。

もう1点はデータ活用ができる点です。ここで説明の一環として、いくつか発展途上国でデータ解析技術を活用したフィンテックスタートアップ事例を過去記事から紹介します。

<参考記事>

パキスタン発のAIマイクロファイナンス企業「TEZ FINANCIAL SERVICES」は、スマホを通じたインターネット活動を分析して貸し倒れリスクを予測。スコリング化して一定額のお金を貸し出します。また、アフリカ発の金融スコアリングサービス「Jumo」は通信キャリアが保有する膨大な決済記録を解析して与信を取り、各種金融サービスを展開。携帯電話の支払状況、SNS及びショッピング活動履歴に代表される実生活のデータを元にスコアリングを行う「Colendi」はブロックチェーン上でデータを安全に管理し、世界中の提携金融機関へ情報提供します。

このように、銀行口座を開けない人が大勢いる一方、スマホの普及が急速に進んでいる市場環境のギャップに目をつけたスタートアップが登場。ユーザーのインターネット利用状況にAI解析を組み込んで与信を取るサービス展開をして急成長を遂げています。

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Googleが狙うのはまさにこうしたAIスコアリングを駆使したレンディング市場かと感じます。もちろん新興国でサービス展開をするには新たなパートナー先を探す必要がありますが、米国でのローンチは単なる試験的な位置付けと捉え、早々に参入市場国を変更した方が長期的なベネフィットを大きく上げられるでしょう。

すでにGoogle Payの普及が進んだインド市場であれば消費者の利用データは膨大に蓄積されています。ビックデータ分析をかませることで、利用者の貸し倒れ率や口座利用状況の予測に繋がります。よりクレジットの高い人をターゲットに、より良い口座およびGoogle Pay利用特典を与えたり、提携銀行のサービスを紹介。そして最終的に行き着くのは信用データからレンディングビジネスへの拡大、というシナリオが浮かび上がってきます。

高いキャッシュバックや高金利などを用いてユーザー数を増やす戦術に打って出ることは直近で予想できます。一方、総Google決済額が増えれば新たな収益源になりますが、Googleにとって大口収益源にはならないと感じます。そこで真に狙うのはレンディング事業だと考えます。

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Googleが握るユーザー信用データをテコ入れして利益を最大限する仕組みの答えはレンディング。提携銀行の融資事業に絡み、利子をシェアするようなモデルになると想像しています。長期的に見て、1顧客あたりの生涯収益額を上げるには少額のショッピング利用頻度数を向上させて手数料を徴収するより、既存銀行の主軸事業である融資を使わせる点にあるでしょう。ここにGoogleが新たに仕掛ける銀行業の着地点があると考えます。

さて、ここまでGoogleの銀行業の行方を手短に予想してみました。昨今のGAFAに対する社会的な風向きなどを考慮した上で、市場の警戒心が強くなった欧米市場に積極的に入れ込むのはあまり得策でないと思います。この点、ポテンシャル獲得ユーザー数や市場規模、経済成長率のどれを取ってもGAFAが次に向かう先はインドやアフリカ、南米などの新興市場でしょう。

なかでもアジアで注目されるインド市場は、中国のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)が仕掛ける先でもあります。いずれはGAFA内だけではなく、BATも絡めたフィンテック市場の対立が熱を帯びてくると睨みます。

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シンガポールにおける「フィンテック+AI」市場カオスマップ

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Tech in Asia では、有料購読サービスを提供。有料記事の閲読、全記事への回数無制限閲読、5万社を超える企業データベースへの無制限アクセス、カンファレンスへの限定割引などの特典があります。詳しくはこちらから。 東南アジアにおいてシンガポールはフィンテックハブとなっている。また、近年ビックデータを駆使して金融業界で大きな変革が起きている。 Vertex Ventures はシンガポールの「フ…

Tech in Asia では、有料購読サービスを提供。有料記事の閲読、全記事への回数無制限閲読、5万社を超える企業データベースへの無制限アクセス、カンファレンスへの限定割引などの特典があります。詳しくはこちらから


東南アジアにおいてシンガポールはフィンテックハブとなっている。また、近年ビックデータを駆使して金融業界で大きな変革が起きている。

Vertex Ventures はシンガポールの「フィンテック + AI」領域が東南アジア地域のスタートアップ業界の成長エンジンとして働き、シンガポールのスタートアップをさらに成長させると信じている。

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Photo credit: Lenny K Photography

フィンテック + AIの定義

フィンテック + AI スタートアップの境界を定義することは容易ではない。分布図として見た場合、両端にはスタートアップの2つのタイプがある。一方にはAI特化型スタートアップがあり、金融機関(FI)がAI企業へと変わることを手助けすべく、技術やサービスを提供することに注力している。反対の非AI特化型スタートアップはAIの力とビジネスモデルのイノベーションを組み合わせ、伝統的なFIと正面から競合している。

私たちはAIはどのようにFIの手助けができるのか、どのようにFIと競合しているスタートアップの力になれるのかを理解するために分布図全体を見てきた。一般的にスタートアップはいくつかのカテゴリに分類することができる。

  1. 「アルファ(群のリーダー)」の地位を達成しようと注力する者(市場平均以上の利益を求める企業)
  2. レンディングサービス企業(アルファ達成と似ているが、レンディング分野におけるもの)
  3. 「ベータ(群の2番手)」の地位を達成しようとする者(少なくとも市場の平均的な利益を獲得し、パーソナライゼーションを手助けする一般的な企業)
  4. リスク管理を行う企業(規制やコンプライアンス関連のスタートアップ)
  5. 上記企業を手助けすることができる一般的なテックスタートアップ
  6. 顧客管理やマーケティング支援を行う分野(これら企業の定義は抽象的であるため最後にまとめた)

シンガポールにおけるフィンテック + AI の概観

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Photo credit: Vertex Ventures

これまでの私たちのリサーチに基づくと、AI特化型企業からそうでない企業まで、およそ40社のフィンテック+AIスタートアップが存在する。分かりやすくするために、これらの企業は以下の分野にカテゴリ分けすることができる。

  • パーソナルファイナンス:特にロボアドバイザーのカテゴリは、最も成長性のある分野として最初に挙げられる。これは東南アジア地域のフィンテックハブであり世界でトップクラスの金融センターでもあるというシンガポールのポジションに関連している。これは発展したシンガポール市場にとってチャンスであるが、多くの新興市場では人々が資産管理という概念を理解するのには時間がかかるため、サービス受け入れは未だ初期段階にとどまっている。適切な市場啓蒙の方法を見出し、新興市場の大衆を巻き込めれば、非常に大きなチャンスが訪れるだろう。
  • 規制、コンプライアンス、詐欺検知:これは2番目に活発なカテゴリとして挙げられる。規制へのコンプライアンス、特にマネーロンダリングに関するものは、シンガポールにおいて常にトップの懸念事項であるためだ。AIを活用して正確性を向上させると同時にコンプライアンスのコストを下げるということは、当然ながら優先順位が高くなる。今後は金融機関によって異なるニーズに合わせたカスタマイズに対処することが主要課題となる。
  • 予測分析:一般的なカテゴリとして、この分野が3番目に挙げられる。シンガポールは強力なテック人材の宝庫であり、金融機関やその他の産業分野の役に立つ潜在的に大きなチャンスがあるということを反映している。
  • クレジットスコアリング・貸付:中小企業への貸付けは2016年からシンガポールで大きな注目を集めているが、消費者金融は未だ急成長を見せていない。この分野は他のASEAN諸国では狂騒的な様相を呈しており、特にインドネシアでは2018年のレンディングのプレイヤー数が数百社を超えている。しかしシンガポールでは銀行業や貸付業のシステムが確立されていることや、強力な規制があることを考えれば、これが小さなカテゴリに留まっていることも不思議ではない。多くの人はシンガポールで消費者金融を規制しているのが財務省ではなく法務省であることにも気づいていないだろう。この分野の規制が緩和されたのはつい最近のことであり、これからの成長が期待される。
  • アセットマネジメント:直接的なリターンを生み出すという点で、おそらく多くの人にとって最も興味深い分野だと思われるが、(ウォールストリートの企業が数十億ドルを投資していることからも見て取れるように)最も理解が難しい分野でもある。現地のデータへアクセスするという点でこの地域のスタートアップには分があるため、民間の資産分野は興味深い領域だと私は考えている。

以上はシンガポールにおけるフィンテック + AI の概観に当たるものである。市場を完璧に表したものではなく、欠けているスタートアップについての提言やコメントは歓迎したい。

東南アジア地域のフィンテック+AIのリーダーとしてのシンガポール

シンガポールにはフィンテック + AI の発展において有利なものとなる点が多数ある。金融分野の重要性、ディープフィンテック人材の数、そして AI クオリティ向上とクラスタを作り上げようとする重大な取り組みである。

さらに、シンガポールの監督官庁であるシンガポール金融管理局(MAS)は、業界の発展を進めるという点で非常にオープンな意識を持ち、積極的なアプローチをとっている。同局はイノベーションを進んで受け入れ、金融機関が様々なテクノロジーのパイロット版を試すことができるようファンドを立ち上げ、リスクを取るという意識を奨励している。

MASはリスクが高すぎると見なした場合にのみ介入する。同局は特定の重要な AI 研究を進める取り組みも行っており、金融業界が自身のインフラを開放するよう奨励しているが、この点はまだ重要課題として残っている。

Vertex Ventures はこの分野におけるスタートアップの質と多様性に非常に感銘を受けている。オープンバンキングの発展と来るべき新たなデジタルバンクのライセンス発行が合わさり、シンガポールはフィンテック + AI のイノベーションの世界的なリーダーの一角となる途上にあると考えている。

本稿は当初Mediumで発表された記事を編集したものである。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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人種や性差別要素を除外、新興国向け少額融資 Talaが1億1000万ドルを調達ーービジョン・ファンド投資家やPayPalらが出資

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ピックアップ:Microloan Startup Tala Raises $110 Million In New Funding ニュースサマリー:8月21日、新興市場にて消費者・零細事業者に対する少額ローンを提供する「Tala」が、シリーズDラウンドにてRPS VenturesやPayPalを含む8つの投資家から合計1億1000万ドルを調達した。 リード投資家となったRPS Venturesは、…

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ピックアップMicroloan Startup Tala Raises $110 Million In New Funding

ニュースサマリー:8月21日、新興市場にて消費者・零細事業者に対する少額ローンを提供する「Tala」が、シリーズDラウンドにてRPS VenturesやPayPalを含む8つの投資家から合計1億1000万ドルを調達した。

リード投資家となったRPS Venturesは、元Softbank Vision Fundのマネージメント・パートナーKabir Misra氏によって創設された新興ファンドである。

同ファンドは未だ5件の出資しか実施していないが、先日インドのソーシャルコマース「Messho」の巨額調達にも参加している。

<参考記事>

Talaは新興市場のクレジット・スコアを持たない零細業者をターゲットにした少額ローンの提供を行う。特徴的なのはクレジット・スコアを活用できない分、アンドロイド端末の使用履歴や支払い履歴を参照し、リスク審査を実施する点である。

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ローンの金額は$10〜$500(約1100円〜53,000円)で、現在は以下5カ所の新興国(ケニア・タンザニア・フィリピン・メキシコ・インド)でサービス展開をしている。

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Inc42によれば、同社は今回の調達資金をインド市場でのサービス拡大・新プロダクトの開発に投じるとしている。Kabir Misra氏が取締役に就任したこともその戦略の一貫だと言える。

Kabir氏はSBVF以外にもSoftbankのインド・中国支部代表として活動した過去を持つため、急成長するインド市場に本腰を入れて参入する強力な後押しとなるだろう。

話題のポイント:Talaの特徴としてサービスの特徴はアンドロイド端末の使用履歴や支払い履歴の参照である点を挙げましたが、もう一つ性差別要素の除外があります。同社ウェブサイトの「データ倫理」ページには、とても興味深い言葉が記されています。

Talaはジェンダー・人種・民族・宗教・国籍または性的指向に基づいた差別を回避し、公正な融資に取り組むことを恐れません。

性別は信用実績と相関性があると言われています。これは賃金や雇用条件などの重要な要素と深く関わっているためです。より精度の高いリスク審査を実施するのであれば、男女か否かというデータは含まれるべきでしょう。しかしTalaはあえてそのようなデータを除外した状態でリスク審査を実施しているとのこと。

このようなポリシーはTalaのCSR(企業の社会的責任)の一貫として意識されているものだと推測できます。インドを中心とした新興国で発生する性差別をなくすサービス設計により、競合他社との差別化を図りユーザー獲得に繋げたい考えだと思われます。

世界には25億人のクレジットスコアを持たない人々がいると言われています。それらの人々は銀行口座や社会保証番号も保有していないケースがほとんど。銀行や既存金融機関は当然ですが、現在流行しているデジタル・ローン系サービスですら、それらのクレジット・データがない人々にはローンを実施してはくれません。

しかし上述したように、Talaはアンドロイド端末のデータさえあれば与信調査を実施することができます。今後は上記5カ国以外にも展開し、上述したあらゆる人が手軽に使えるサービスメリットを活かすことで、さらなるサービス拡大を進めていくと予想できます。

ちなみに、データ規定に関しては、各地域で規定されたスタンダードに遵守し安全に管理されていると公式ウェブサイトに記述されています。

同社代表Shivani Siroya氏のTED講演(2016年)

Image Credit:Tala

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インドで拡大する「デジタル・ローン」市場に潜む投資リスクーー「Lendingkart」が新たに3000万ドルを追加調達

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ピックアップ:India’s Lendingkart raises $30M to help small businesses access working capital ニュースサマリー:8月9日、インド全土で中小企業向けにデジタル・ローンを提供する「Lendingkart」がシリーズDラウンドにて既存投資家である「Bertelsmann India Investments」「Fu…

ピックアップIndia’s Lendingkart raises $30M to help small businesses access working capital

ニュースサマリー:8月9日、インド全土で中小企業向けにデジタル・ローンを提供する「Lendingkart」がシリーズDラウンドにて既存投資家である「Bertelsmann India Investments」「Fullerton Financial Holdings」「India Quotient」らから計3000万ドルの資金調達を行った。

同社の累計調達額は約2億ドル規模に達しており、創業5年のスタートアップとして驚異的なスピードで拡大を続けている。6月17日の1100万ドルを調達したばかりの同社だが、今回はデットではなくエクイティでの調達になる。

・インドで爆伸びする零細向ローン「Lendingkart」ーー5年で累計調達額が1.7億ドル(180億円)に

話題のポイント:Lendingkartの特徴はビッグデータ解析とAI機械学習による与信審査です。事業者の財政状況や競合他社・市場のパフォーマンス・社会的責任・コンプライアンスなどのデータをもとに独自評価プロセスで事業者の信用を評価します。

これらの仕組みが功を奏しており、YourStoryによれば2018年の収益は3倍にまで上昇したといいます。一方、赤字も拡大していることは事実とのことですが、それを許容した上で一刻も早くマーケットから一定規模のシェアを確保しようとしています。事実インドのデジタル・レンディング市場の加熱は凄まじく、競合プレイヤーの調達ニュースもあとを絶ちません。

<参考記事>

ただし、金貸しというビジネスは借り手の信用を担保に利益が出るのを未来に先送りするモデル。そのため借り手が実際にローンを返済するまでは利益が出ている(成功している)とは言えません。

初期の投資家は返済率や貸し倒れ率などのエビデンス・データが不十分にも関わらず投資を実行しなくてはならないため、起業家やエンジニアの主張する「AI」や「アルゴリズム」、「ビッグデータ」という言葉が頼りです。

はたしてどのくらいの投資家達が、彼らのアルゴリズムが技術的に優れているのか否かを本当の意味で理解できているでしょうか。

もし信用評価プロセスに大きな欠陥があった場合や、後々サービス拡大に伴い返済能力の乏しいユーザーが増加したケース、返済率が低下していった際には赤字が回収できなくなるリスクが発生します。

一方、投資家はしばしば 「貸し出し件数は増え続けている」という成長の本質的なエビデンスとは言い難いデータを根拠に投資を継続する可能性があります。投資実行だけが先ばしっているという状況です。

既存投資家に関しては一度投資している点を加味して、新たにお金を投入したがる可能性も存在します。

貸し出し件数をさらに増加させるためにターゲットのスコープを拡大すると、それに伴い収集すべきデータやアルゴリズムも少しずつ変化させる必要があります。しかしその調整に失敗し、返済能力のない借り手に貸し出しをし始めてしまうと状況はさらに悪化します。

危うさを感じる上記のようなサイクルは、上手くいけばいち早くマーケット・シェアをとり、赤字を後々で解消するという一般的な戦略として成立します。ところが逆のケースに陥る可能性も0ではないでしょう。激化する競争市場において、ユーザー数増加のための焦った成長戦略を描くと陥る罠だと言えます。

中国でP2Pレンディングがブームになった際、多くの業者が返済能力のない借り手に貸し出しをし続け、多くの大量の焦げ付きを抱えた業者が廃業して社会問題となりました。

大半のインドのレンディング業者に言えることですが、短期間で多額の資金調達を行い、多数の貸し出しを実施しているLendingkartであっても今後何が起こるかはわかりません。

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急成長の秘密は「審査方法」にアリーーインドの中小企業向けローン「Indifi」が2000万ドルを調達

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ピックアップ:India’s Indifi raises $21M to expand its online lending platform ニュースサマリー:7月26日、インドのグルガオンに拠点をレンディングスタートアップ「Indifi」は、シリーズCラウンドにて、CDC Grupeなど計5つのファンドから約2000万ドルの資金調達を行なった。2015年に創業した同社の累計調達額は3000万ド…

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ピックアップIndia’s Indifi raises $21M to expand its online lending platform

ニュースサマリー:7月26日、インドのグルガオンに拠点をレンディングスタートアップ「Indifi」は、シリーズCラウンドにて、CDC Grupeなど計5つのファンドから約2000万ドルの資金調達を行なった。2015年に創業した同社の累計調達額は3000万ドルに到達した。

Indifiは中小事業者向けに小〜中程度の額のローン実施することに加えて、銀行やローン企業と中小事業者を繋ぐプラットホーム・サービスも運営している。前者は一般的な銀行と同じ間接金融的なスキームだが、後者はP2Pレンディングのような直接金融的な仲介業と言える。

ちなみに以前本誌で紹介したLendingkartというインドのレンディング領域のユニコーンスタートアップは、Indifiの仲介機能を利用してローンを実施している。

話題のポイント:本誌ではインドのレンディング市場と、急成長するスタートアップに関して過去にも複数記事を執筆してきましたが、Indifiの編み出したスキームは一般的なデジタル・ローンとは一味違います。

Indifiはローンを実施する際に、その中小事業者が位置する業界のトップに位置するプラットホームと協同して調査をしています。例えば、フードデリバリー市場であるレストランに対するローンを検討する場合は、インド屈指のフードデリバリースタートアップであるZomatoやSwiggyと協同してリサーチを実施し、レストランの評判や売れ行きを分析することで、リスク審査をする、といった具合です。

他にはホテルならOYOやMakeMyTrip、小売ならFlipkartといったパートナーが存在します。一般的なローン提供事業者は、その特定の企業に対し単独で信用スコアリングを実施するケースが多いとされていますが、巨大プラットホームのデータを参照して実施するスコアリングの精度はさぞ強力なのでしょう。

プラットホームと協同することは一般的なスコアリングよりも時間的コストがかかることは確かです。しかしIndifi共同創業者のMittal氏によれば、同社はこのスキームによって50%超えのリターンを出しているそうです。この数字は銀行やその他ローン事業者の約10%という数字を大きく上回っています。

またMittai氏曰く、Indifiはこれまで1万5000社を超える顧客に対して出資を実施しており、かつ昨年の2.5倍の成長を達成しているといいます。そして調達資金は新規顧客及びパートナーの獲得、そして未開拓の業界進出のための調査などに用いる見込みだと発言しています。

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FB傘下・WhatsAppによるインドでのペイメント拡大戦略ーーLibraとの棲み分けはどうなるのか

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ピックアップ:WhatsApp To Focus On Digital And Financial Inclusion In India: Abhijit Bose ニュースサマリー:インド経済のデジタル化及び金融包摂はメッセージングアプリで大きく変わるかもしれないーーWhatsAppインド代表のAbhijit Bose氏がInc42の取材に答えたもので、同社はインドでのペイメントサービスの提供を…

2019-07-13 14.16.58

ピックアップWhatsApp To Focus On Digital And Financial Inclusion In India: Abhijit Bose

ニュースサマリー:インド経済のデジタル化及び金融包摂はメッセージングアプリで大きく変わるかもしれないーーWhatsAppインド代表のAbhijit Bose氏がInc42の取材に答えたもので、同社はインドでのペイメントサービスの提供を見込んでいるようだ。

”WhatsAppは既にインド人の家族が、インドのどこにいても、または世界中であっても繋がれるという事実を証明しています。そして現在、私たちはそのプラットホームを活用することで、地域や社会、国にプラスの影響を与える事業者のサポートを行なっていきたいと考えています。”

さらに、WhatsAppは医療やAIなど、インドの5つのスタートアップに対し出資も行なっている。このような動きも、将来的にはこれらの企業にWhatsAppのペイメントを導入してもらい、さらなるサービスの拡大をサポートし、インドでの金融包摂を実現するためである。

しかし当のWhatsAppは、現在RBIに対しペイメントライセンスを取得を交渉している最中であり、サービスインできずに立ち往生してしまっているのが現状だという。

話題のポイント:Facebookを中心とする世界的な金融事業の動きに注目が集まっています。本記事ではFacebookとWhatsAppの今後について考察してみたいと思います。

Facebookは6月18日、ステーブルコインLibraと、CalibraというLibra(ステーブルコイン)を扱うウォレットを発表し、またそのウォレットを開発する子会社(Calibra)を設立しました。現時点でWhatsAppとCalibra(ないしLibra)がどのように用途を棲み分けしていくのかは分かりかねますが、長期的にはどんな形であれ、FacebookはWhatsAppに決済機能を導入しようと試みているようです。

<参考記事>

ちなみに、WhatsAppですら現在RBIには非常に嫌われており、なかなかライセンスを与えてもらえない状況ですし、その上をいく仮想通貨という高リスクなサービスCalibaが、一段飛び越えてRBIの認可を受けるという可能性はとても低いと考えられます。したがって現時点で考えるに、Facebookの将来的なビジョンには暗雲が立ち込めている状況とみて間違いないと思います。

<参考記事>

一方、Facebookはコーポレート・ラウンドにてインドのメルカリに類似したスタートアップ「Messho」に出資を行なっており、パートナーシップ関係を築いています。その具体的な内容としては、MesshoがWhatsAppを活用して、ユーザーが商品の売買を簡易化できるように促すためのものでした。

<参考記事>

このケースでは、WhatsAppは単にメッセージング用途でしか利用されていませんが、長期的にはペイメントツール機能の一つとしても、WhatsAppが使われるようになるのを見越した提携だと考えられます。冒頭で記述したWhatsAppによる”金融包摂”というビジョンですが、これはFacebookのLibraのビジョンの一つでもあります。

このように全体を俯瞰してみてみると、Facebookは買収や子会社の設立、新プロジェクトの発足を足がかりに、インド市場で大きな視点のエコシステムを構築しようとしていることがわかります。メッセージングという日々のコミュニケーションからサービス、ペイメントまでまさに入口から出口まで全部、です。

現在は規制によって二の足を踏む状況ですが、5年後にどのような変貌を遂げているのか、注視が必要です。

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