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499ドルMRグラスの衝撃ーーAR/MR時代が開くマップ市場とメディア広告の次「nreal light」が示唆する世界

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ピックアップ : Nreal’s AR sunglasses cost $499 and should ship in ‘limited quantities’ this year ニュースサマリー : 5月30日、カリフォルニア州で開催されたAR/VRイベント「AWE USA 2019」において、中国のMRグラス端末開発企業「nreal」がコンシュマー向け端末「nreal light」を発表。同…

ピックアップ : Nreal’s AR sunglasses cost $499 and should ship in ‘limited quantities’ this year

ニュースサマリー : 5月30日、カリフォルニア州で開催されたAR/VRイベント「AWE USA 2019」において、中国のMRグラス端末開発企業「nreal」がコンシュマー向け端末「nreal light」を発表。同端末は499ドルから2020年中に発売されるという。開発者向け端末は2019年中に1199ドルから発売される予定。

88グラムの軽さが売りとなっている。Microsoft Hololens同様のMRグラス端末で視野角は52度。USB Type-C及びAndroidスマホと連携して使用することができる。

具体的にどの程度機能するかは発売までわからないが、少なくともiPhoneより安い価格でMRグラスが開発される時代が到来する運びとなりそうだ。

話題のポイント : 本記事で触れる点はグラス端末普及後におけるマップ/ナビゲーション市場の変化です。

Appleは2020年に向けてグラス型端末を開発していると長い間噂されています。Googleはエンタープライズ向けにGoogle Glass第二世代のローンチを予定。MicrosoftはHololensのアップデートを着々と進めています。ハードウェアが市場ニーズに合う価格や手軽さに対応するのは時間の問題でしょう。

今回紹介したnreal lightに代表されるグラス型端末が低価格で普及した世界では、あらゆる人の視界上にバーチャル情報がAdd-onされる世界になるはずです。

現在のようにスマホを毎回取り出して情報をユーザーが取り出すUXが大きく変わるでしょう。そこで、UXが一変する時代においてマップ市場も一変することが予想されます。

記憶に新しいニュースではGoogle MapのARナビゲーション機能追加が挙げられます。アプリを通じて周りの景色を認識させれば、目的地への方向を矢印で表示してくれる便利な機能です。

他にもPockemo Goなどのエンタメサービスが位置情報を駆使したマップ市場で台頭していますが、この市場で再起をかけられる可能性があるのがメディアです。ビジネスモデル確立が非常に困難なメディア企業の新たな収益軸になるのが、グラス端末普及後のマップ市場です。

先述したGoogle MapはすでにGoogle上に落ちている汎用データを瞬時に視界上に表示させることが可能。しかしキュレート力はありません。メディアが狙えるのはこうした大手IT企業にはできないキュレートです

一例を挙げます。小さなお子さんを育てる親向けGoogle Map「Winnie」は、子供を連れ出すのに最適な遊び場や食事処だけをキュレートして情報を載せているマップサービス。2016年にサンフランシスコで創業し、累計調達額は650万ドルにも及びます。

Winnie最大の競合優勢性はGoogleが手の回らなかったキュレート情報の提供です。記載されている目的地情報はほぼ全てGoogleで検索できますが、親御さんユーザーからのオススメ度合いなどの一次情報を武器に圧倒的な支持を得ています。特定セグメントに特化し、コミュニティを確立することで急成長を遂げているのです。

メディアの強みはまさに先ほど指摘した、特定分野の情報においてGoogleを筆頭とする大手IT企業には負けない点にあります。各メディアが保有する独自情報をAR/MRグラスが2C向けに普及したマップ市場に最適化させることが肝要になるでしょう。

たとえばWinnieがグラス端末向けアプリを開発すれば、親御さんユーザーは街へ出掛けても今まで以上にどこへ行くか迷う必要がなくなるはずです。地元のレストラン情報だけを長年紹介し続けてきた雑誌メディアは、グラス端末向けアプリを開発することで提携レストランへより効率的な送客ができるかもしれません。

従来、メディアの収益軸は広告でした。この軸は変わらないにせよ、記事のインプレッション数や課金モデルなどとは違いグラス端末普及された世界では実際の送客効果が広告指標になる業態が登場するでしょう。広告出稿者が求めるターゲットユーザーを適切に誘導し、実際に来客してもらう「ナビゲーション広告」が一般化すると考えられます。

ナビゲーション広告は単なるオンライン広告とは違いエンゲージメント率が非常に高く、実際の送客につながるため1広告当たりの出稿料や単価は高くなるはずです。一方、メディア側も送客数がうまく行かないとブランド力がないと見なされてしまうため、よりシビアに評価されてしまうでしょう。この点、改めてキュレート力が求められると予想されます。

さて、図らずも「オールドメディア」と呼ばれつつある紙やTVメディアは、視覚情報が圧倒的に優位になる今後2-3年の生活体験の変化を予測し、業態変化への対応をすべきタイミングかもしれません。マップ市場が変われば広告市場だけでなく、関連するモビリティやエンタメ体験への進出も検討できるでしょう。今回のnreal lightの発表は世界中のあらゆる企業にそんなメッセージを発したと感じられました。

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ミレニアル向け動画ニュース「Cheddar」が2億ドルで買収へーー2018年度の収益は1800万ドル、クラシルにも通じる「脱SNS」の戦略を考える

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ピックアップ: Altice USA buys digital news network  Cheddar for $200M ニュースサマリー : 20〜30代を中心にするミレニアル世代向け経済動画ニュースメディア「Cheddar」がAltice USAによって2億ドルで買収されたと報じられた。同社は「ポストケーブルTV」がコンセプトのライブ動画ニュースサービス。 経済・金融ニュースに特化した「…

ピックアップ: Altice USA buys digital news network  Cheddar for $200M

ニュースサマリー : 20〜30代を中心にするミレニアル世代向け経済動画ニュースメディア「Cheddar」がAltice USAによって2億ドルで買収されたと報じられた。同社は「ポストケーブルTV」がコンセプトのライブ動画ニュースサービス。

経済・金融ニュースに特化した「Cheddar Business」、世界中のトップニュースをハイライトで伝える「Cheddar News」、学生向けに特化した「CheddarU」の3つのチャネルを展開する。

FacebookやTwitter、Snapchatに代表されるSNSだけでなく、HuluやSiling TVのようなストリーミング配信サイトで視聴もできる。あらゆる視聴環境に対応する「オーバー・ザ・トップ(OTT)」を事業軸にしたライブ動画メディアである。月間合計視聴数は4億視聴を誇る。

Cheddarの直近のラウンドにおける企業評価価値は1.6億ドルであったため、今回の買収は25%のプレミア価値がついた。

話題のポイント : Cheddarが登場した2016年は動画元年でした。1〜2分ほどに編集した短尺動画を配信するメディア「NowThis」を筆頭に、SNSのタイムラインは動画で溢れかえっていました。

自社ウェブサイトを持たず、視聴者が望むプラットフォーム上(主にSNS)で動画視聴できるUXを重視したメディアを「分散型メディア」と呼び注目されていました。そんな中、ニューヨーク証券取引所から経済ニュースをライブ配信するCheddarを少し異質に見ていたのが筆者の率直な感想です。

確かにライブ動画の重要性は語られていましたが、短尺動画のように大量生産をして視聴数を稼げるほどの費用対効果は見込めないと踏んでいました。

短尺動画では食や美容分野を中心にノウハウ系コンテンツを出せば、1コンテンツだけで軽く100万視聴以上を稼げます。加えて、アーカイブ性を持つことから一回配信したとしても何度もリピートして活用することができます。

一方、ライブ動画は1日経ってしまえば情報価値は廃れてしまいます。また、後日見返したとしても1〜2時間の尺の動画を再生して観る人はあまりいないでしょう。そんなライブ動画にどうしてビジネス軸を振るのか不思議で仕方なかったことを覚えています。

しかしライブ動画の強みはコンテンツ性です。NetflixやHuluのようなストリーミング配信サービスはオリジナル番組を欲しており、長尺ライブコンテンツはリビングでくつろぎながらスマートTV経由で動画視聴する利用シーンにぴったりだったのです。特集ニュースをアプリだけで視聴できる脱SNSの魅力も持ちえていました。

この「脱SNS」の戦略が命運を分けます。

Cheddarは創業当初、月額サブスクモデルで収益化を目指しました。自社アプリの集客に力を入れて独自ユーザーコミュニティ形成へ動いたのです。最終的にこの収益戦略は失敗に終わってしまい、ネイティブ広告からの収益化に軸を振ります。

ここでポイントとなるのは広告費用対効果の戦略図式です。短尺動画メディアはSNSページに大量のフォロワー数を抱えていることから一定数以上の視聴数が見込めます。

しかし、ソーシャル広告運用の経験のある方はわかるかもしれませんが、非常に多くの視聴者データをプラットフォームに抜き取られていることがわかります。この結果、広告主へデータを返すことができないのです。結果として残せるのは数字だけですが、これだけでは中抜き状態と言っても過言ではありません。

また、SNSアルゴリズム変更によって、過去の数字から保証されていた最低予測視聴数が突然崩れるリスクも抱えています。たとえばミレニアル向け動画メディア「Mic」は2017年のFacebookアルゴリズム変更の影響で業績を低迷させ一度サービス閉鎖に追い込まれています。

広告主は大きく費用対効果が変動するSNS投稿が主体のメディアへの出稿にどうしても消極的にならざるをえません。

この点、Cheddarは広告動画データを共有してくれるメディアプラットフォームと提携しているため、広告主へ数字だけでなくターゲット視聴者データも返すことができます。SNSアルゴリズム変更の煽りも最小限に減らせるOTTを軸にする拡大戦略も取っているため、リスクヘッジに成功しながらコンテンツ展開できていると言えるでしょう。

The WallStreet Journalの記事によると、収益の95%を広告が占めており、2018年度の収益は1,800万ドルを計上。2017年の1,130万ドルから着実な成長を見せています。

確かに現在でもSNSへの動画投稿を続けていますが、あくまでもCheddarは自社プラットフォームを持つ提携企業が視聴者集客するための呼び水としてオリジナル番組を提供する市場ポジションを取ったのです。

根こそぎデータを囲い込んでしまうプラットフォーマーに嫌気が差している企業は少なくありません。こうした企業が視聴者をSNSから引き離して自社に流れ込ませるニーズを巧みに汲み取り、オリジナル性の高いコンテンツを売り込んだのがCheddarの戦略であったというわけです。

日本では料理動画メディア「クラシル」がCheddarと同様の戦略を採っている事例として挙げられるかもしれません。

自社アプリに動画コンテンツを集約させることで「料理辞書」としてのサービス切り口をうまく提案しています。当初はSNSでの動画視聴数の伸びに頼っていたように思えましたが、今ではアプリを通じた膨大なユーザーデータ獲得に成功。Facebookのようなプラットフォーマーに頼る必要性を徐々になくす戦略に打って出ています。

ちなみにクラシルは自社アプリとコンテンツの両方を持つことからCheddarとは違い、非常に大きなプラットフォームを独自で作り上げようとしているメディアと言えます。アプリコンテンツ検索性の高さから、Cheddarが失敗した月額サブスクモデルでも成功する兆しが見えていると感じます。

さて、ここまで述べてきた脱SNS・脱プラットフォーマーの戦略は他業界でも顕著になってくるでしょう。たとえば小売業界ではAmazonで同じような流れが生まれてくるかもしれません。データを獲得して出店企業の競合製品を作る強引なやり方はいつか崩壊するでしょう。

今回のCheddar買収の一件はプラットフォーマーに左右されないビジネス戦略で生き残った一つの象徴的な事例と考えています。

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“垂直統合型ECメディア”の戦略とは? ーー DIYコンテンツサイト「Hometalk」が1500万ドルの資金調達

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ピックアップ: Hometalk raises $15M to grow its DIY community ニュースサマリー: 4月4日、DIY(日曜大工)コンテンツを扱うウェブメディア『Hometalk』が1,500万ドルの資金調達を行ったと発表。今回の資金調達は「Lyft」「DoorDash」「Path」への投資実績を持つファンド「NFX」がリードした。 Hometalkはユーザーが投稿した…

ピックアップ: Hometalk raises $15M to grow its DIY community

ニュースサマリー: 4月4日、DIY(日曜大工)コンテンツを扱うウェブメディア『Hometalk』が1,500万ドルの資金調達を行ったと発表。今回の資金調達は「Lyft」「DoorDash」「Path」への投資実績を持つファンド「NFX」がリードした。

Hometalkはユーザーが投稿したDIYプロジェクトを、画像・動画と詳細なガイドラインテキストに沿って参考にすることができるメディア。14万件以上のチュートリアルが投稿されているという。

『TechCrunch』の記事によると合計登録ユーザー数は1,700万、月間1,000万ユーザー及び2,100万閲覧数を誇り、2018年末までの累計閲覧数は25億回を数える。

これまで広告事業のみでの収益化を行っていた。しかし今後は「マーケットプレイス」「サブスクリプション」「ブランドコンテンツ」の3つの収益軸を確立していくとのこと。

話題のポイント: Hometalkのビジネスモデルを話す上で重要なポイントとなるのは「垂直統合型のECメディア」です。この記事では、特定分野にコンテンツを絞り、チュートリアルから物販まで一連のコンテンツ消費サイクル全てを抑えるメディアを指します。

たとえば編み物市場に特化したメディア『Lovecrafts』が挙げられます。YouTube動画とウェブテキスト記事を中心にコンテンツを展開。各コンテンツで紹介されている編み物に必要な素材販売益から収益化をしています。2017年には3,300万ドルの大型調達を果たしています。

HometalkもLovecraftsも一点特化型の事業戦略を張ることで高い競合優勢を保っています。1つの分野を徹底的に独占するメディア手法が垂直統合型と呼べるでしょう。往々にしてこのようなメディアはECもしくは広告事業を収益軸としています。Hometalkの事例では、これまで広告事業を軸に展開してきましたが十分にユーザー獲得を行えていることからEC事業の強化へ走ることが予想されます。

さて、Hometalkが参入するDIY市場には競合メディアが多くいます。ここからは同メディアがどのように競合差別化を図っているのかを簡単に紐解いていこうと思います。キーワードは「媒体の違い」「ターゲット属性の違い」の2つです。

DIY市場規模は右肩上がり。「Statistic」のデータによると、米国のDIY市場は2012年の300億ドルから2025年には4倍の1,200億ドルにまで成長すると見込まれています。

市場成長の背景にはSNS上で配信される短尺動画ブームが挙げられます。たとえば2016年、大手メディア『BuzzFeed』は専門チャンネル『Nifty』を開設。Facebookページで3,000万人以上の登録者を獲得。小難しいDIYプロジェクトの手順を1-2分のコンパクトな動画にまとめて、”一口サイズ”に配信する形式が視聴者にウケました。

しかし動画やテキスト記事を通じて手軽にDIY情報を仕入れられたとしても、実際に作ってみると案外うまくいかないもの。材料の調達から本当に正しいプロセスで完成したのか疑問に思うところもあるでしょう。DIYの元語である“Do It Yourself(一人でやれ)”の意味が裏目に出てしまった具合です。

昨今登場した動画メディアは確かに消費されやすいですが、詳細がわかりづらいデメリットを抱えています。そこで登場したのがHometalk。

先述したように、既存の大手SNSメディアが提供するDIY情報だけではチュートリアルを再現するのに限界があります。1-2分で読み切れるコンパクトにまとめられた短尺動画では細かい点はカバーしきれませんし、必要機材・材料を検索して買い出しに行かなければなりません。

HomeTalkはこの課題を解決するため、「チュートリアル/Q&Aサイト」、「Eコマース(アフィリエイト)」の2つを軸にサービスを展開。良質なコンテンツ提供から必要備品の購入までを1つのプラットフォーム上で完結できるように環境を整えたのです。

こうした巨大なメディアを構築できた垂直統合型の事業モデルを指す“One-Stop-Platform”という言葉は重要なコンセプトと言えるでしょう。

一方、ウェブメディアに目を向けるとユニコーン入りを果たしている住宅のコミュニティサイト『Houzz』が立ちはだかります。彼らとの違いは「何を買える」かではなく「何を作れるか」といった消費者心理を追求している点にあります。

DIYコミュニティユーザーが独自に持つ「自分で作りたい」というモチベーションを軸に市場セグメント化しサービスを提供しているのです。この点、Houzzはどちらかというと素敵な内装を業者に依頼してアウトソーシングしたい時短ニーズを持つ人たちをターゲットにしていると感じられます。

このように他社メディアとのアプローチの違いや、ユーザー心理/モチベーションをしっかりと定義することで競合性を強く保ち、一点集中型で成長するのが”垂直統合型ECメディア”だと言えます。

日本では一時期キュレートサイトが乱立し、広告事業を軸に成長軌道に乗っていましたが今後は良質なコンテンツを配信するEnd-to-Endなメディアかもしれません。

本記事で紹介したHometalkやLovecraftsのコンセプトは他分野への応用も十分可能なはずです。漫画やアニメ制作に代表されるアート分野や洋服やシューズ作りなどのアパレル事業に応用展開できるかもしれません。

サムネイル画像クレジット: Hans Gerhard Meier

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