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過熱する「投げ銭」ビジネスに乗り遅れるな!ーーLogitechがライブ配信者向けツール「StreamLabs」を買収した理由

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ピックアップ:Logitech + Streamlabs = Awesome ニュースサマリ:9月26日、ライブストリーミング配信者向けソフトウェアを開発する「SteamLabs」がLogitechに買収されたことを発表した。Logitechは日本ではLogicoolとして知られているデバイスメーカー。買収額は約8,900万ドルで、収益成長目標の達成を条件として追加の買収額約2,900万ドルが発生…

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ピックアップ:Logitech + Streamlabs = Awesome

ニュースサマリ:9月26日、ライブストリーミング配信者向けソフトウェアを開発する「SteamLabs」がLogitechに買収されたことを発表した。Logitechは日本ではLogicoolとして知られているデバイスメーカー。買収額は約8,900万ドルで、収益成長目標の達成を条件として追加の買収額約2,900万ドルが発生する。

SteamLabsはゲームストリーミング・視聴者との交流・投げ銭機能を備えたツールを配信者に提供する。2018年1月のベータ版リリースから1,500万人の配信者が利用している。SteamLabsの買収後も、ツールは無料で継続利用できる。

話題のポイント:今回はLogitechがなぜStreamLabsを買収したのかを考察していきます。

LogitechはPC周辺機器の開発を行うメーカーでハードウェアを扱っています。これまでファームウェアの開発は行っていたものの、消費者向けソフトウェアの製品を取り扱っていませんでした。今回のStreamLabsの買収で、Logitechは本格的にソフトウェア開発に乗り出す姿勢を明確にしたといえるでしょう。

一方、StreamLabsは配信者向けにライブストリーミング配信中に視聴者とリアルタイムでコミュニケーションを行うサポートをするツールを無料で提供。主要配信プラットフォーム(AmazonのTwitch、GoogleのYoutube Gaming Live、MicrosoftのMixer、Facebook Live)の全てに対応しており、各プラットフォームを機能拡張することで一定の市場ポジションを勝ち得たといえます。

2018年第4四半期には約70%の配信者がTwitchで配信行っており、そのうち約41%の配信者がStreamLabsのサービスを利用していました。同年第1四半期のシェア率が約15%だったことを考えると成長スピードの早さが顕著です。

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引用:SteamLabs, “Live Streaming Q4’18 Report”

背景として、ライブストリーミング市場が盛り上がりを見せた点が挙げられます。ここで、ライブ配信中に発生した「投げ銭額」を時系列別で比較し、ライブストリーミング市場の成長度合いを確認してみましょう。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、投げ銭を行うのは全視聴者のたった8.1%程度。しかしSteamLabsの業界レポートでは、主要配信プラットフォームでSteamLabsのサービスを通して行われた「投げ銭」の年間合計が2015年の4,360万ドルから2018年の1億4,100万ドルへ323%の成長を達成したと報告されています。

投げ銭総額が3倍も増加した理由には「新規視聴者数が増えた」点と、まさにライブストリーミング市場に注目が集まったタイミングにStreamLabsが提供する「気軽に無料で始められて稼げる環境」が配信者の増加を後押した点が挙げられます。市場成長する絶妙なタイミングでStreamLabsが参入を果たし、市場シェアを急速に広めていったのです。

ストリーミング市場の成長はStreamLabsに大きな成長をもたらしましたが、Logitechにとっては競合他社数を増やす結果になりました。事実、マウスだけ見ても2016年から2018年にかけてメーカー数が1.5倍以上になり、Logitechのシェア率と業界順位を下げています。

ここにLogitechの課題がありました。類似機能を備えた製品が乱立し、差別化が難しくなる中でユーザーに選ばれる理由を作る必要がなくなっていたのです。

そこでLogitechが目指した戦略が「PC周辺機器メーカー」から「クラウド周辺機器メーカー」への進化です。ハードウェアのラインナップを単に増やす時代から、最新のクラウド環境に対応したハードウェアとソフトウェア両方の提供価値を実現しようとしたのです。

実際、2017年9月からキーボードのハイエンドモデル「CRAFT」では、搭載するコントロールホイールを使ってAdobeのクリエイティブ系アプリやMicrosoft Officeアプリのキーツールに素早くアクセスできる機能をクリエータ向けに販売しています。

また、Video CollaborationソリューションのLogitech Syncではビデオ会議デバイスのモニタリングに役立つ最新のクラウドベース・プラットフォームを提供しており、この分野はYoY 25%と高成長を叩き出しています。

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Logitechはこれからもクラウドをベースにハードウェアとソフトウェア環境の統合を図り、UI/UX向上を戦略として強化していくでしょう。その延長線上にSteamLabs買収があります。

両社の共通戦略は配信者に選ばれるハードウェアと配信ツールになることです。SteamLabsの「気軽に無料で始められて稼げる環境」には視聴者を配信者に変えるほどの魅力があります。この競合優位性を武器に、市場シェア拡大における大事なKPI「配信者数」と「配信時間」を高めている考えです。明らかになっていせんが、買収額の追加支払いの達成を条件として、配信者数の増加率が含まれている可能性は高いと思います。

加えて、配信者へのコメントとして、使用している周辺機器関連の質問がよく見られます。乱立するデバイスの使用感を確認し、失敗のない環境を整えることができるのです。つまり配信者が使っていることが購入動機となり得るということです。

配信者向けのサポートソフトウェアとLogitechが提供するハードウェアポートフォリオの環境統合が行われれば、配信者が自然と購入導線を拡散する流れを期待できます。この点もいち早く買収に至った理由だと考えられます。

どの企業もライブストリーミング市場の成長に乗り遅れまいと躍起になっています。Logitechの配信者ニーズを抑える戦略性が一致することで実現したと思われる今回の買収。プラットフォームをサポートする支える企業であり続けるLogitechが今後どのような製品を世に出すのかとても楽しみです。

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