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21世紀のITは「リアル」を考えること−−ITジャーナリスト林信行氏が語る「ネットの未来と私たちの生活におけるイノベーション」

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日本のインターネットが誕生して20年以上がたち、ネットは私たちの身近な生活を変える一つのツールとなってきた。21世紀のITを考えることは、これからの新しいサービスを作るために必要な思考回路だ。 ITジャーナリストの林信行氏は、インターネット黎明期から取材や執筆活動を行ない、AppleやGoogleなどの企業動向の分析、SNSなどの最新トレンドを追いかけている人物だ。 同氏がMOVIDA SCHOO…

日本のインターネットが誕生して20年以上がたち、ネットは私たちの身近な生活を変える一つのツールとなってきた。21世紀のITを考えることは、これからの新しいサービスを作るために必要な思考回路だ。

ITジャーナリストの林信行氏は、インターネット黎明期から取材や執筆活動を行ない、AppleやGoogleなどの企業動向の分析、SNSなどの最新トレンドを追いかけている人物だ。

同氏がMOVIDA SCHOOLで語った「ネットの未来と私たちの生活におけるイノベーション」についてまとめた。

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イノベーションとは、後戻りできない変化

モーターが発明されたことで冷蔵庫やエアコンが誕生し、もはやモーターがない時代に私たちは戻ることができなくなった。それと同様の現象が、スマートフォンの誕生によって起きている。生活のさまざまなところに浸透し利用されているスマートフォン。もはや私たちは、スマートフォン前提の社会の中で生活し、ビジネスを考えていかなければいけない。イノベーションとは、後戻りできない変化のことだ。スマートフォンの登場は、まさに大きなイノベーションをもたらした。

21世紀に起きている3つの産業革命

スマートフォンの登場は、スマートテックと呼ばれる21世紀の産業革命の一つと言える。他にも、新しい産業革命が起きようとしている。二つ目は、ソーシャルメディアの普及によるソーシャルテック、三つ目は3Dプリンタなどの登場による3Dテックと呼べるものづくりの変化だ。こうした3つの出来事が、いままさに同時に起きているのだ。

ソーシャルテックは社会を変えるきっかけ

ソーシャルテックは、ソーシャルメディアの普及による新しい社会のあり方を作り始めた。アラブの春などの市民による社会的な動きだけではなく、ホワイトハウスのWe the Peopleという署名サイトに代表されるように、行政と市民とのコミュニケーションもインターネットを通じて起きてきた。クラウドファンディングサービスの誕生によって、個人の思いが周囲の人を動かし、新しい取り組みへのチャレンジが生まれやすくなった。世界的な動きとなりつつあるオープンデータの取り組みによって、交通情報や公共サービスのイノベーションも起き始めている。ソーシャルテックは、リアルな社会や生活、仕事を変えるきっかけを作り始めている。

3Dテックで物質社会が変わる

3Dプリンタが2010年代から大きく広がり、いまやファッション業界でも3Dプリンタを使った服を作る動きが起きている。実寸台のデジタルスキャナや、マルチマテリアルプリンタなどの高度な技術も発達している。デルタ航空では、ドアの修復に3Dプリンタを活用し、格納庫の現場で備品の修復を行っている。将来、人類が宇宙に行くときも大きな機材を運搬することなく、データをもとに宇宙ステーションの現場で補修を行う時代がくるかもしれない。再生医療にも3Dプリンタを活用する研究がされているなど、さまざまな分野に広がりをみせている。3Dテックは、身の回りの物質を変える大きな動きとなってくるだろう。

21世紀のITは「リアル」を考えること

スマートテック、ソーシャルテック、3Dテック。これら3つの共通点は「リアル」だ。デジタルテクノロジーが、オンラインのみならずリアルの社会に進出してきているのだ。21世紀のIT革命は、人間が外に出かけるきっかけをつくり、人間らしい生活を取り戻すことが軸になる時代なのではないだろうか。

さまざまな業界で、ITを活用してリアルの生活や社会を変えるイノベーションが起き始めている現代において、スタートアップは短期の売上による成功か、それとも長期にわたって人々の生活に影響を及ぼす成功のどちらを目指すべきだろうか。

Think Simple

私が長年取材してきたスティーブ・ジョブズ氏が他のIT業界の有名人を隔てるのは、CMにもなった「Push the human race forward(人類を前進させる)」道具をつくることを意識した人物だったからだ。ジョブズ氏は、シンプルさは複雑さよりも難しいと語っていた。物事をシンプルにするためには、懸命に努力して思考を明確にしなければならない。製品開発においていかに顧客ファーストであるかを追求しつづけた結果、ハードウェアからソフトウェアまですべてを網羅した現在のAppleを作り上げたのだ。

プラスではなく、いかにマイナスにするか

いかにシンプルにするか。会議をやるとついつい色々なものを追加しがちだ。一個ボタンを増やせば複雑になりユーザにとって誤解が生じやすくなる。ものを追加するのは簡単だが、減らすことは難しい。シンプルにするということは、プラスするのではなくいかにマイナスにしていくかを考えなければいけない。エンジニアはプラス型思考になりがちで、優秀なデザイナーは逆にマイナスを目指す。自分がエンジニア気質が強いと思ったら、価値観の合う優秀なデザイナーを見つけて手を組むことが大事。

情報を増やす時代から情報を減らす時代へのシフト

情報爆発時代と言われている現代において、これまでのインターネットは情報を集めてくることばかりをしてきた。これからは、情報を増やすよりも減らすことを考えなければいけない。情報を減らす方法として、物質化と非言語化の二つが鍵となってくる。言葉で伝えきれない世界観をいかに伝えるか。エンジニアリングだけではなく、エンジニアリングとデザインをどう掛け合わせ、シンプルな情報でいかに相手に伝わるものをデザインするかを考えなければいけない。

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