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2020年・エコシステムはどう変わる(2)激変するオフィスと働き方

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私たちはどうやら簡単には元のオフィスには戻れないらしい。 We have often been in large open spaces at technology companies filled with people using laptops at standing desks while wearing headphones to tune out background noise… i…

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私たちはどうやら簡単には元のオフィスには戻れないらしい。

We have often been in large open spaces at technology companies filled with people using laptops at standing desks while wearing headphones to tune out background noise… is there a better win-win arrangement?(テクノロジー企業の多くはオープンスペースで、スタンディングデスクを使って、ノートパソコンにずっと目を向け、周りの雑音を取り除くためヘッドフォンを取り付け黙々と作業する人で埋め尽くされるだけです…なぜそうした状況が生まれてしまったのでしょう?)。

元Kleiner Perkinsのパートナーであり、毎年発行される「Internet Trend」でお馴染みの著名投資家、メアリー・ミーカー女史が発行した「Coronavirus Trends Report」にある一節だ。

感染症拡大による最も大きな変化は「人との接触を極力減らす」生活スタイルにある。特に日本の首都圏で働いているテック系スタートアップであれば、ここの満員電車だったり、足の踏み場のないオフィス環境を経験したことがあるかもしれない。緊急事態宣言が解除された今もまだ、無自覚のまま他人を感染させてしまうという恐怖もある。

元に戻れない、というのはあながち大袈裟でもないのだ。

この状況を比較的リモートワークに対応しやすい国内テック大手はどう見ているのか。感染症拡大を前に、いち早く動いたのがGMOグループだ。1月末で早々に全社リモートワークへの切り替えを実行に移し、週の1〜3日を目安に在宅勤務とする指針を公表している。

またサイバーエージェントのように、会って仕事をすることのカルチャーを重要視している企業もあるが、それでも社内会議についてはZoomを使ったミーティングを推奨するなど、接触と同時に時間の無駄を排除する動きを進めている。生産に装置を必要とする業務や、セキュリティの関係で場所に縛られるケースなど、全てが「Work From Home」に移行できるわけではないが、それでもこれを機に効率化を見直す動きはさらに進むだろう。

これだけ大きな変化だ。ビジネスチャンスがないわけがない。

変わる働き方を投資サイドはどう見る

では、投資サイドはこの状況をどう見ているのだろうか。

まだしばらくソーシャルディスタンスが必要とされることで加速しそうなのがxRと5G技術だ。KDDIの中馬和彦氏は今回の件で、仮想と現実の境界線を「融合する」ソリューションに注目するとコメントしてくれている。

「コロナ以前の注力領域は『バーチャル世界のリアル化を加速するもの』(xR等)と『リアル社会のインターネット化に寄与するもの』(AI&IoT等)でしたが、コロナ後はこれに加えて『バーチャルとリアルの融合(パラレルワールド化)を実現するソリューション』に注目していきたい」(KDDI経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部長/中馬和彦氏)。

また、ソニーフィナンシャルベンチャーズで投資を担当する中村順司氏もまた、ソーシャルディスタンシングの継続で変化が訪れるとした一人だ。リモートワークが加速する中で徐々に視点はできることから品質へと移り関連する技術に注目が集まると指摘した。

「多くの分野で自宅でも仕事はできるということが確認される中、リモートコミュニケーションの品質が問われ始めていて、ここに高い品質と付加価値を実感できるソリューションの登場には注目しています。また『非接触』に対するニーズは多様化し、コスト効率の観点とともに評価の対象軸になると考えています。具体的にはセンシング技術、画像認識技術、セキュリティ、オンライン営業・業務支援ツール、エッジコンピューティング、デジタルヘルスなどがそれです」(ソニーフィナンシャルベンチャーズ取締役 投資業務部長/中村順司氏)。

ここでひとつ実例を挙げよう。米Microsoft Researchが発表しているソリューションにVROOMというものがある。職場に等身大のロボットを配置し、リモート環境からヘッドマウントディスプレイを付けたユーザーが「アバター」として遠隔のオフィスに参加する、という代物だ(詳しくはこのビデオを見て欲しい)。

まだ研究段階のものでとても実用には程遠い体験のように感じられるが、これこそ現時点で想像できるリアルとバーチャルの融合パターンと言えるだろう。使われている技術もソフトウェアのみならず、ハード、センシング、通信と幅広い。

仮想空間についてはこれまでもスタートアップによる開発が進んできた。国内で言えば、エンターテインメント文脈でのVirtural YouTuber(VTuber)開発企業の資金調達が相次いでいたし、VR空間についても、例えばClusterのようなプレーヤーがイベント空間の提供で先行しつつある。

確かにZoomやMicrosoft Teamsのような「オンライン・ミーティング」は便利で、現時点でのベストソリューションかもしれないが、「実際に会ったような体験」とまでは言いづらい。ソーシャルディスタンシングの制約が解除されるのがもう少し先であることを考えると、時間と空間の制約も飛び越える、xR空間での体験、特に中馬氏が指摘する「リアルとバーチャルが融合した」ソリューションはこれからも出てくるはずだ。

どうなる「地方での起業」

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THE SEEDは京都にインキュベーション施設をオープンさせている

ここ数年、スタートアップの現場で語られてきたテーマのひとつに「地方起業」というものがある。東京以外にも関西や福岡などが活動を活発化させており、それぞれ投資ファンドや独立系ベンチャーキャピタル、学生起業家といったローカルプレーヤーが根付き始めているのが今だ。

その代表的な一社である福岡拠点のF Ventures、両角将太氏は今回の件を地方起業拡大の契機と考えている。

「東京のビジネス上のメリットである人の密集が、今回ばかりは逆効果となってしまいました。コロナは容易に根絶できるわけではなく、共存していかなければならなくなる可能性は高いと思います。withコロナ時代では、地方で起業する人たちにとってチャンスが拡がるのではないでしょうか。

地方であれば家賃も安価に抑えられる分、コストを採用に回すことができます。また、オンラインで完結できるようになり、地方ではこれまでできなかった人材獲得ができるようになるのではと考えています。また、そのほかリモートで完結できる業務も増えると予想できるため、地方でのチャンスがより広がってくると思っています」(F Ventures代表パートナーの両角将太氏 )。

彼が指摘するように、地方の分かりやすいメリットは首都圏に比較して圧倒的なコストの安さにある。そもそもテック系スタートアップの多くは「持たざる経営」で競争力を高めてきた。首都圏に集まる理由は主要な投資家や事業会社、そして何より優秀な開発者たちが多く集結していたからに他ならない。しかし、今回の件で距離という制約がゼロにはならないにしても、大きく緩和されれば可能性が出てくる。

例えば海外では国境を超えたチームワークという概念がある。

37Signals(現在のBasecamp)は2010年台半ばにオフィスを持たない、新しい働き方について提唱をしていた。ここ最近のスタートアップでもAndreessen Horowitzが出資した「Deel」のように国境を超えたチームのバックオフィスを効率化する、そんなスタートアップまで出現してきている。

オフィスはオンラインにあり、働く人たちは同じ国ですらないというパターンだ。日本でも今回の件を契機に、本社機能は福岡、働く人たちは東京、アジア、欧米と分散するようなケースが出てきてもおかしくない。

次回は大きな注目が集まる企業のデジタルシフト、デジタル化する経済「DX」大航海時代についてケーススタディを掘り起こしてみたいと思う。

参考記事:2020年・エコシステムはどう変わる(1)スタートアップの投資判断

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2020年・エコシステムはどう変わる(1)スタートアップの投資判断

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まるで5年、いや10年という時を飛び越したかのような気持ちになる。 今年のはじめ、私は2030年までの10年間を占うために幾つかの記事を公開した。投資家たちの言葉に耳を傾けた「次の『10年パラダイムシフト』を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030」がそれだ。 この中で語られるデジタルシフト、働き方の変革、お金の概念、ロボットたちとの共存。テクノロジーが私たちの世界を徐々に浸透し、10年た…

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まるで5年、いや10年という時を飛び越したかのような気持ちになる。

今年のはじめ、私は2030年までの10年間を占うために幾つかの記事を公開した。投資家たちの言葉に耳を傾けた「次の『10年パラダイムシフト』を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030」がそれだ。

この中で語られるデジタルシフト、働き方の変革、お金の概念、ロボットたちとの共存。テクノロジーが私たちの世界を徐々に浸透し、10年たった2030年に「さて、実際はどうなったのか」と答え合わせをするはずだった。

しかし全ての予定は変わってしまった。いや、まさかと思ったが、世界の方から変化を求めて「やってくる」とは思っていなかった。

感染症はもちろん怖い。自分の大切な人を奪っていくからだ。疲弊している人たちもいる。だから手放しに喜ぶことではない。けど、それでも変わる世界に、希望を持って進んでいくのがスタートアップの使命だ。

一方で本当に世界は変わるのか?一時的な混乱で元に戻るのでは?と思う自分も確かに存在する。何が変わって何が変わらないのか、何がじわじわと変化するのか。

そこで本稿では年初にまとめた「次の10年パラダイムシフト」の補足版として、スタートアップ世界に何がこれから起ころうとしているのか、改めて彼らの声に耳を傾けて次の4項目にまとめてみることにした。

  • (1)スタートアップの投資判断
  • (2)激変するオフィスと働き方
  • (3)デジタル化する経済「DX」大航海時代
  • (4)エンターテインメントの未来

変わらないスタートアップの投資判断

まずなにより大切なのは「今を生きる」投資家や起業家たちの生の言葉だ。例えば企業のほぼすべてが投資をストップする、という調査結果を掲載している報道もある。本当にそこまで極端な状況なのだろうか?

グローバル・ブレインが実施した調査「 αTrackesアンケート」(事業会社・CVC21社が匿名で回答)と、独立系ベンチャーキャピタルCoral Capitalが実施した「JAPAN STARTUP LANDSCAPE(2020年版・4月〜5月に83人の起業家・18人の投資家が匿名で回答)」、そして私が5月に実施した主要なスタートアップ投資を手がけるVC・CVCアンケート(13社が記名でコメント回答)の結果を合わせて整理してみた。

投資サイドの考え方はどうだろうか。

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Image Credit : Global Brain Corporation

αTrackesのアンケートで「投資を控える」としたのは10%未満、私が実施したアンケートでも全員が基本的な投資スタンスはこれまでと変わらない、と回答していた。

一方で、今の混乱がおさまって落ち着いて投資ができるようになるには1年後、来年の春以降と考えている人も多い。また、JAPAN STARTUP LANDSCAPEの設問「資金調達環境は悪くなるか」で投資サイド全員(18社)が「悪くなる」と回答している。

投資スタンスは変えないが資金調達環境は悪く、状況が回復するまでに時間を要する。

ーーこの一見矛盾するような状況はなぜ起こるのか。私が実施したアンケートのコメントを一部紹介したい。まずはスタートアップに積極的な投資を続ける専業の独立系VCの見方だ。

「投資スタンスは基本不変ですが、B2Bではインターネットがより既存産業の根幹に入っていくことが予想されますし、B2Cではよりオンラインとオフラインのシームレスなサービス設計が重要になっていくので、これらをなし得るより強いチームへ投資していきます」(ジェネシア・ベンチャーズ代表取締役/General Partnerの田島聡一氏)。

「投資判断への影響はネガティブ、ポジティブ両方あります。まず、ネガティブな面から。シードファンドとしては起業家そのものに投資をさせていただくという側面が強いため、その起業家と直接会うことなしに投資判断をするのは難しいと感じています。今でもやはり最終的には会って、お互いの相性を含めて判断したいため(そのほうが起業家にとってもよいと思います)、その点で投資判断が以前より遅れがちな部分があります。ポジティブな面としては、オンラインで全国津々浦々、どんどん起業家の皆さんの話を聞けるようになった点です」(IDATEN Venturesの足立健太氏)。

一方、独立系VCとはややスタンスが異なるCVC各社もほぼ同様だ。ネガティブ要因として直接、出資先候補に会えない点を挙げている投資家は他にもいた。しかし、彼らも投資方針は別に変えていない。

「コロナ禍までは予測できませんでしたが、経済状況の変化は想定していたのでこのタイミングでCVCを設立しています。今回の件によってスタンスを変えることなく、攻めの姿勢は変わりません。今後、積極的に価値のあるスタートアップには投資していきます」(ヤマトホールディングス専務執行役員の牧浦真司氏)。

「31VENTURESとしては、特に新規および追加投資方針そのものには変化はありません。ただし、運転資金をどれだけ確保できているか、ならびに『Post COVID-19』を見据えて起業家がどのように自らの事業を捉えているのかについては、これまで以上に厳しく問うことになると思います。また、下降局面において起業家側に経営存続を求める以上、CVC側もその運営を継続するために一層の努力を行う必要があるとも考えています」(31VENTURESのグループ長、小玉丈氏)。

つまり各社「何も変わらない」と言ってるわけではない。

特にややバブル気味だった2010年代後半の資金調達環境に対して、筋肉質な経営を求める声は多かったのも事実だ。例に挙げるまでもないが、WeWorkとソフトバンク・ビジョン・ファンドの顛末はその象徴として語られることになるだろう。また事業についても、アップデートされた社会に対応したものが求められるのは言うまでもない。

筋肉質な経営を求められるスタートアップ環境

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Image Credit : Coral Capital

では、スタートアップ側の状況も見てみよう。JAPAN STARTUP LANDSCAPEによると、昨年、8割近くが「起業のタイミングとして適している」としていた回答が、ややトーンダウンしており、7割近くが起業すべしとする投資サイドとの食い違いを見せた。また、以降の調達ラウンドが厳しくなるか、という問いに対しては7割以上が「厳しくなる」と回答している。

つまり、市況の変化だけでなくコロナ禍によって大きく社会に変化が生まれ、このギャップにビジネスチャンスは見出せるものの、投資環境についてはここ数年のようなやや緩い状況はなく、また、数が増える分競争環境が厳しくなる、という見方が浮かび上がってくる。

少しエピソードをご紹介しよう。

YJキャピタルの堀新一郎氏とポッドキャストで公開取材した際、今回の混乱で出資先の動きが大きく分かれたと教えてくれた。不要なオフィスの解約判断、人材についてもランク分類をした上で、いつまでにこの状況が改善されなければ休職や解雇の経営判断をするなど、迅速に動いた経営者とそうでない人で1カ月ほどのタイムラグがあったそうだ。

特に人材のカットは非常に重い。しかしスタートアップ経営は本来、厳しい環境にあるもので、ここに対する考え方や準備ができていたかどうか、今回の件が期せずしてそういったリトマス試験紙になったのは注目に値することだと思う。

恐らくこれから起こることとして、シード期についてはよりチーム、創業者の経験や総合的な「能力」は問われることになるだろう。シリーズAというハードルについては、ビジネスモデルの確かさ、ユニットエコノミクスの正確性、市場規模とスケーリング、そして何より、今のこの新しい世界観・トレンドの風を捉えたものから先に選ばれることになるはずだ。

また、CVCや事業会社の投資であればシナジーや本業への貢献はより正確に見積られることになるのではないだろうか。

次回は大きく変わった働き方、オフィスの考え方についてまとめてみたい。

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次の「10年パラダイムシフト」を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030(4:シンギュラリティ)

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。 各業界でこまやかにデジタル化が進んだ社会では、人とAIが役割の分担を明確にする。より個性や多様性を尊重する時代になり、人種や性別・障がい、地方といったギャップを超えるためのテクノロジーの必要性が高まる。伴って資本の考え方も変化し、一見すると経済合理性に乏しい社会的な貢献事業にも新たな道が開かれる。 最終回となる本稿では「人の次」について言及したキャピタリス…

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。

各業界でこまやかにデジタル化が進んだ社会では、人とAIが役割の分担を明確にする。より個性や多様性を尊重する時代になり、人種や性別・障がい、地方といったギャップを超えるためのテクノロジーの必要性が高まる。伴って資本の考え方も変化し、一見すると経済合理性に乏しい社会的な貢献事業にも新たな道が開かれる。

最終回となる本稿では「人の次」について言及したキャピタリストたちの声に耳を傾け、探る旅の締めくくりとしたい。

シンギュラリティがやってくる

2005年に記されたレイ・カーツワイル氏の著書「THE SINGULARITY IS NEAR: When Humans Transcend Biology(邦題:シンギュラリティは近い・ポストヒューマン誕生/NHK出版)」はテクノロジー信奉者にとってある意味「預言書」と言うべき一冊だ。著書の中でカーツワイル氏は2030年をこう表現している。

VRの世界では、われわれはひとつの人格に縛られなくなる。外見を変えて事実上他の人間になれるからだ。肉体(現実世界の)を変えることなく、三次元のヴァーチャル環境に投影される体を簡単に変えられる。複数の相手向けに、同時に複数の異なる体を選ぶこともできる。だから、両親から見るあなたと、ガールフレンドがにが複接するあなたが別人ということもありうる。(中略)恋愛中の二人はなりたい姿になれるし、相手になることもで きる。こうした決定はすべて簡単に変えられるのだ(引用:シンギュラリティは近い・ポストヒューマン誕生)

YJキャピタルの堀新一郎氏もこの世界観の到来を心待ちにしている一人のようだ。

2014年に上映された映画「トランセンデンス」で注目を浴びるようになったシンギュラリティ。シンギュラリティ(Singularity)とは、未来学上の概念であり、人工知能自身の「自己フィードバックで改良、高度化した技術や知能」が、「人類に代わって文明の進歩の主役」になる時点(Wikipedia抜粋)のことです。

モバイル、IoTがデータのタッチポイントを増やし、クラウドコンピューティングがデータの格納に革命を起こしました。溜まったデータを解析・学習し、最適解を出すAI Techが2019年はメジャーになりました。これからの10年はAIの先に求められるサービスが主役になると思います。

シンギュラリティ時代に求められるのは仕事と遊びの再定義でしょうか。 仕事はオフィスに行かなくてもどこでも出来るようになります。小売店舗の店員はほとんどがロボット化され、デリバリーもドローンやロボットがやってくれるようになります。

オフィスは物理的空間からバーチャル空間に移行し、リモートワークはもっと加速していきます。チャットボットに代表される自動応答は2019年現在は無機質ですが、ユーモアを言ったりしてもっと人間味が出てくるようになるでしょう。ANRIが出資する「株式会社わたしは」は、そういった時代を見据えた言語処理を先んじて開発しています。

エンターテイメントも2018年に上映された「レディ・プレイヤー・ワン」のように、仮想空間で人々が交流する流れが一気に加速します。弊社の出資先でもあるミラティブのように、スマホの中でゲームやカラオケといったリッチコンテンツを楽しむ世界がより加速しします。gumiの出資先の「よむネコ」はVR空間の対戦ゲームを開発しており、ゲーム内アイテムをブロックチェーンで取引する世界観を目指していると聞いています。

グローバルの視点では、オンラインにおける米中戦争が加速化していくと予想しています。つまり、これからの戦いはFacebookやWeChat・Tiktokといったアプリケーションレイヤーにとどまらず、LibraやFusion Bankといった仮想銀行・仮想通貨の覇権争いが本格化するわけです。こういった戦いに対して、日本の政府や企業がどういった姿勢で対抗・調和を図っていくのかとても注目しています。そういった背景から、ゴールドラッシュ時代のツルハシ屋・ジーンズ屋に大きなビジネスチャンスがあると思います。

2000年に登場した3Gから約20年、2020年に5G元年を迎えます。ハイレゾのコンテンツがリアルタイムで飛び交い、仮想空間はVR・ARといった技術でさらなる進化を遂げる。スマホの次のデバイス、オンライン上で資産を管理するためにブロックチェーンが重要な役割を果たしていく。全てが自動化していく中で、人間らしさやアート、ユーモア、幸せといったものの価値が重要となってくるのでしょうか。思いっきり夢想しながら、全ての領域を見逃さずウォッチしていきます(笑)。

これからの10年も忙しくなりそうです【シンギュラリティ時代の到来に向けて】

(動画:Mirrativはアバターを纏って第三空間に居場所を作ることができる)

カーツワイル氏の著書で語られるポスト・ヒューマン論の興味深い点は、端末的なデバイス、コンピューティングの進化だけでなく、これらを極めて高い次元で人体と融合させようと試みていることだろう。

あなたが本物の現実世界を体験したいと思うときには、ナノボットは今いる場所(毛細血管の中)を動かずなにもしない。VRの世界に入りたいと思えば、ナノボットは五感をとおして入ってくる現実世界の情報をすべて抑制し、ヴァーチャル環境に適した信号に置き換える。脳はこれらの信号をその肉体が体験したものであるかのように捉える。(中略)そのようなヴァーチャルな場所を訪れ、 シミュレートされた人間ばかりでなく、本物の人間(もちろん、突きつめれば、両者に明確な違いはない)を相手に、ビジネスの交渉から官能的な出会いまで、さまざまな関わりをもつことができる(引用:シンギュラリティは近い・ポストヒューマン誕生)。

STRIVEの堤達生氏は、2020年代がこの「トランスヒューマン時代」に向けた準備の10年になると考えている。

10年前の2010年から今日まで、新しいものは実はそれほど多くは出ていないのではないかと思います。2000年代の10年間の方がスマホとソーシャルとクラウドが生まれ、変化という意味でのインパクトは大きかったです。2010年代は2000年代に生まれたものが進化と深化をし、そして拡張した10年でした。

では、2020年代の10年間はどんな時代になるのか。一言で表現すると「トランスヒューマンの時代に向けた10年間になる」。

AIやブロックチェーン、MR等の進化に加えて生命科学の発展に伴い、テクノロジー的には、従来の人間を大幅にアップデートする、すなわち「トランスヒューマン」の誕生の時代になるのではないか思っています。

つまり2020年代の10年間は、人間の記憶、判断、予測というものをテクノロジーがサポートしていくのはこれまで通りの流れだが、身体的にも古いパーツは取り換えて、よりバージョンアップしていくようになります。従来なら病気やケガで諦めていたものを新しいパーツに取り換えて、コンプレックスに感じていたものを自分の理想に近づけるようにこれまた取り換えていく。

こういうことが、時間をかけながら抵抗感なく受け入れられる、そういう時代に向けての10年間になるのではないでしょうか。

この時代感をベースに、投資家としてはこれまで以上に生命科学の領域におけるコアになるテクノロジーやそれに基づく、健康・美容系のサービスに加え、逆に人間の精神性は急には変らないため、それらをサポートするようなコーチングやマインドフルなサービスにも着目しています【2020年代の幕開け】

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C2C領域はさらにバーティカルが進む(月次流通は50%成長に拡大、スニーカー売買のモノカブがXTech Venturesなどから2.2億円を調達

W venturesの東明宏氏もまた人体の拡張について注目するとしていた。

人生の多様化を支援/促進するサービスについては、そもそも人間の寿命を長くする(永続化させる)技術、人間の身体を拡張する技術/世界観等、根元の部分(技術)から、余暇を楽しくするサービスまで、幅広く注目していきたいと思っています。XR領域の離陸による新たなコミュニケーション/エンターテイメントのイノベーションにはW venturesとしても積極的に投資し、一緒に未来を作っていきたいです。

人々の多様な価値観に対応したサービスとしては、趣味性の高い領域でスニーカーのC2C「モノカブ」、ヘルスケア領域で美容医療の口コミサイトの「トリビュー」、食領域でおやつのサブスクリプション「snaq.me」、スポーツ領域でランニングのバーティカルコミュニティ「Runtrip」等の投資先が伸びています。また、人々の価値観の変容に、既存の巨大コミュニケーションサービスが応えきれなくなってきているなとも感じており、でっかいコミュニケーションサービスの新たな出現にも期待しています【リアル世界の分散とバーチャル世界の融合、マルチアイデンティティ時代の本格到来】

この世界観は決してSci-Fiの中だけではない、ということはみなさんもご存知のはずだ。Googleが「量子超越性」の実証に成功した、という話題はムーアの法則には続きがあることを示唆しているし、イーロン・マスク氏は脳とマシンを実際につなげるプロジェクト「Neuralink」を公表している。

やや広い範囲で発生する「人類の拡張」が最初のステップになるとしたのは、伊藤忠テクノロジーベンチャーズの小川剛氏。

2020年から2030年にかけてロボットやAIがビジネスの実装の段階に入り、人間の仕事を奪うのではなくアシストし、人間の能力と仕事が広い意味で様々に拡張していることが「実感」できるサービスを提供出来る会社が注目されるでしょう。単にARで視覚が拡張しているという単純な世界観ではなく、実際に仕事が劇的に効率化したり早くなる「あー俺って拡張してる(笑」って凄さを提供できる感じですね。ロボットもAIも各ビジネスに実装して使えてナンボの世界になるかと思います。

R2-D2的にサポートしてくれるものから、広義で考えてソフトウェアで超効率化的なSuperhuman, PathAIなどもAugmentationの範疇に入る現時点の注目企業かと思います。2030年までに量子コンピュータが実装されると化学計算など特定用途は異次元で早くなり超効率化するのではないでしょうか【「Augmentation 」が継続して起こる】

ポスト・ヒューマン論は尽きることないが、その一方で距離感が掴みづらいのも確かだろう。そこで最後にもう少し距離の近い視点を2つほど紹介したい。まずはセキュリティだ。今回、実は意外にもあまりこのテーマを挙げた投資家が多くなかった。しかし、社会の多くがデータ化される時代、プライバシーの問題は更に注目を集めることになる。

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隠れた黒船・ピーターティール氏のPalantir社

これについて指摘したのがANRIの鮫島昌弘氏だ。

日本の大企業は従来オンプレミスな環境で閉じた環境下でしたが、今後はDX化やSaaSの活用に伴いサイバー攻撃によるセキュリティインシデントが急増し、セキュリティーへのニーズが高まると予想します。実際に、現在の日本でのサイバーセキュリテイーのインシデント一位は電子メール、FAX等の誤送信・誤発送等のヒューマンエラーが1位ですが、米国ではDos/DDoS攻撃やwebアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃が上位に挙がっています(NRIセキュアテクノロジーズ社の調査結果等)

具体的には、クライアント企業のインターネットに接続している全ての機器やクラウドベンダーを一元的に管理するExpanse社(FoundersFund、ピーター・ティール氏も出資)、IoT機器の増加に伴うネットワーク拡大に対応する形でのボットネット対策を行うPerimeterX社やクラウド型WAFを提供するSignal Sciences社等をベンチマークとして、日本でサイバーセキュリティーのスタートアップに1000社投資したいと考えてます。

また、日本進出を発表した、ピーター・ティール氏率いるPalantir社の動向には引き続き注目しています【日本の大企業のDX化に伴うサイバーセキュリティベンチャーの勃興】

もう一つが「クラウドの次」になる。計算と容量というシンプルなネットワークは徐々に性格を帯び始め、人類にとって役立つサービスを提供する労働力となる。IDATEN Venturesの足立健太氏はその世界がさらに重層化すると予想した。

人類はこれまで多種多様な自動化を実現してきました。

古くは、牛や馬といった「動物の力による自動化」(農作業や運搬など)、水や風といった「天然に存在する自然の力による自動化」(何人がかりでやるような重労働など)、さらに「蒸気・電気・磁気といった自然の力を増幅・制御することによる自動化」(産業革命)です。家庭レベル(家電など)から国家レベル(発電所など)に至るまで、実に様々です。

そして人類は、自動化されて浮いた時間を持て余すことなく、その時間を使って研究開発を続け、新たな技術を生み出し続けています。その最たる例が、20世紀末から一気に台頭してきたIT技術でしょう。IT技術により、人類はこれまでの肉体労働中心の自動化から、知識労働の自動化へも足を踏み出しました。

IT技術が登場した当初は、主に情報のやり取りを自動化する領域(ウェブブラウザや電子メールなど)が中心でしたが、IT技術の恩恵を顕在化させる情報処理端末がメインフレームからデスクトップPC、ラップトップPC、そしてスマートフォンへと、どんどんエンドユーザー(情報発信源)に近づき、両者の接触が常態化することで自動的に情報のやり取りが可能な範囲が拡がり、日常生活の多くがIT技術によって自動化・ディスラプトされてきました。

ただ、もちろん、まだまだ自動化され切っていない領域は残されています。2020年代は、そういった「残された自動化の金脈探し」をする人類の旅が続くと予想しています。

自動運転からRPAまで、実に様々な自動化の概念が顕在化した2010年代後半ですが、例えばIoTや脳チップといった概念を筆頭に、まだまだ情報の処理端末と発信源の接触拡大が続いており、そこから発生する自動化の可能性にいち早く気づき、事業化した企業が今後数年は、そのポジションをリードすることになるでしょう。

正直、現時点でどの企業がどの分野でリードするか分かりませんが、こういう時にあって注目している企業群の一つが、大量のデータ処理を容易に行えるようにする技術を展開している企業です。例えるなら、ゴールドラッシュの時代のツルハシ屋さんやジーンズ屋さんです。

IDATEN Venturesの出資先でいいますと、ニュージーランドのNyriadや、日本の情報システム総研、シマントがこれにあたります。

さて2020年代後半ともなると、リアル世界・サイバー世界を問わず、上記の流れを受けて、多くの自動化を実現するツール、いわばロボットが誕生していることでしょう。すると、そういったロボットを自由に使いこなすロボマス(ロボットマスター)による起業が本格化してくると予想します。

AWSのようなクラウドサービスがIT技術による起業ハードルを著しく下げたアナロジーで、上記のロボットは事業推進ハードルを著しく下げます。なぜなら、そうしたロボットを複数組み合わせ、駆使することで、24時間休むことなく非常に早いスピードでPDCAを回し続けることができるようになるからです。結果、超速で成長するスタートアップがいくつも誕生してくるでしょう。これが「ロボマス起業家によるスタートアップの超速化」です。

ロボマス起業家に求められるのは、多種多様なロボットを駆使する能力はもちろん、人々が思いもよらないようなアイデアを描く想像力、そしてそれを真っ先に実行に移す行動力になると思います。起業コスト・事業推進コストが低下し、そこで差別化がはかられにくくなってくるため、勝負の大きなポイントは、起業前のアイデア段階に移ってくるでしょう。

もしかしたら、人間の社員が0人で、いわゆるユニコーン企業を創り出す起業家も現れるかもしれません。VCとしても、特にシードVCにおいては、投資タイミングがどんどん前倒しされてくると思います。

2000年代、2010年代はIT技術を駆使できるITマスターが世界をリードしてきた側面がありますが、2020年代は、自動化を実現する各種ロボットを生み出す起業家と、それらロボットを駆使して事業を推進するロボマス起業家に着目です【『残された自動化の金脈探し」と「ロボマス起業家によるスタートアップの超速化」】

探る旅の終わりに

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4回に渡ってお届けした次のパラダイムシフトを探る旅、いかがだっただろうか。もちろん年末の企画ということも加味してリップサービス的なコメントや、ポジショントークもあったと思う。けど、ここで挙げた25名の投資家たちは数え切れないほどの起業家と対面し、自身も研鑽を積んだ人物ばかりだ。その言葉に嘘はない。

全体を通じて感じるのは「ポストiPhone」のようなエポックメイキングを求める声が少なくなったことだ。分かりやすいデバイス、スティーブ・ジョブズ氏のようなカリスマはメディアとしても言語化が容易だ。しかし今の時代、事はそこまでシンプルでなくなっている。

一人、今回の企画にあたってこんな声を寄せてくれた投資家がいた。

10年後の2030年、正直ここでまとめられることの7割は当たらないと思っています。たとえば今から約10年前の日本iPhone上陸の際、おそらく業界でも多くの人たちがここまでの普及を予想してなかったのではないでしょうか。なので、起業家(とそれを支援する私達投資家)は自分が信じる未来を作っていくことを意識し、こういう質問には10年後に絶対くる(ではなく来させる、が正解かもしれない)とポジショントークを続けていただければな、と思います。

弊社も僕も投資先が多いのでたくさん語りたい、語るべき未来がありますが、多すぎてスペースに入らないので省略します。個人的にはスタートアップ的には「人工知能搭載型人型ロボ『ヒューマギア』が様々な仕事をサポートする新時代 AIテクノロジー企業の若き社長が、人々の夢を守るため…今飛び立つ!」みたいなストーリーがあったらいいなと思っています。震える手抑え書きなぐる未来予想図でした!(TLMの木暮圭佑氏)

奇しくもスマホシフトが起こした情報化の波は、ステレオタイプな「右向け右」をダサいこととしてしまった。だからこそ彼が言うように、次に起こるパラダイムの波はとても曖昧で、でもいつの間にか世界を支配している、そういうものになるような気がしている。

この連載が次のスタートアップのヒントになれば幸いだ。

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次の「10年パラダイムシフト」を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030(3:多様性とポスト資本主義)

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。 個人と体験の時代、社会はデジタル化がさらに進み、各業界でトランスフォーメーションが発生する。人工知能が単純作業を代替し、効率化された時代において人は「人生の時間の使い方」を新たに考えることになる。では、引き続き次のパラダイムシフトを探る旅に出たいと思う。(これまでの連載) 少子高齢化とダイバーシティ パーソル総合研究所と中央大学が公表した調査「労働市場の未…

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。

個人と体験の時代、社会はデジタル化がさらに進み、各業界でトランスフォーメーションが発生する。人工知能が単純作業を代替し、効率化された時代において人は「人生の時間の使い方」を新たに考えることになる。では、引き続き次のパラダイムシフトを探る旅に出たいと思う。(これまでの連載)

少子高齢化とダイバーシティ

パーソル総合研究所と中央大学が公表した調査「労働市場の未来推計2030」によれば、高い確率で日本はこの10年、減少する人口との戦いを繰り広げることになる。この中で私たちが認識を新たにすべきキーワードが「多様性」だ。性別、国籍、年齢、個性。あらゆる多様性に対して偏見を最小限にし、そのギャップをテクノロジーで解決する。

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パーソル総合研究所と中央大学「労働市場の未来推計2030」

特に元気なシニア層の活躍はもう待ったなしの状態だ。伊藤忠テクノロジーベンチャーズの戸祭陽介氏は少子高齢化先進国としての取り組みの必要性を指摘する。

これまで高齢者向けのITサービスは(1)シニアのIT化が進まない、(2)サービス運営者の年齢が若くシニア市場を理解していない、という理由から発展していないと推察しています。一方、これらの問題は時間の経過とともに解消され、高齢化先進国である日本独自のサービスが展開されると予想しています。今後、これらのビジネスが海外に進出し、日本の新たな強みになるのではないでしょうか。

一方、少子化対策としての外国人移民や、国際的に安価な技術者を求めた海外企業の進出等により、オリンピック以降、日本在住の外国人は増加すると予想しています。新大久保のような街がたくさんできるイメージですね。その生活をサポートするためのインフラとして、外国人に特化したサービスの増加も予想されます【少子高齢化先進国として、シニアIT化と在日外国人向けのサービスの発展】

東京オリンピックがやってくるのもよいきっかけだ。2020年は海外からの来客ももちろん、特にパラリンピックに代表される、「障がい」を人の「個性」として考える時間は増えることになるだろう。今の社会的な認知と、実際の彼・彼女たちの状況をしっかりと理解すれば、そこに生まれているギャップはチャンスになりうる。朝日メディアラボベンチャーズの白石健太郎氏もまた、この多様性に注目すべきとしていた。

世界の支援テクノロジー市場には2024年までに260億ドル規模になる(Coherent Market Insights)という予測があり、国内でも障害者テクノロジーの分野に参入するスタートアップが増えてくると考えています。

もちろん課題もあります。高性能な車椅子や補聴器などを目にすることはありますが、価格帯がネックとなって普及率が上がっていません。一方、導入が比較的簡単な無料アプリであっても、途中から有料化になってしまうなどの問題があり、ユーザーが離脱してしまう問題も起きています。

そんな中、世界中の視覚障害者のボランティアとロービジョンの方を結びつけて、毎日の作業を支援するアプリ「Be My Eyes」というデンマークのサービスがあります。このアプリが秀逸なのはコスト負担をユーザーに負わせるのではなく、ユーザーがMicrosoftやGoogleなどの大企業に支援を求めることで継続利用できる仕組みとなっている点です。

今後このようなコスト負担をユーザーに求めない新たな形のサービスが増えてくるのではないでしょうか。日本ではまだまだ普及に時間がかかりそうですが、この領域では元セカイカメラの開発者である井口尊仁氏が開発している無料音声SNSアプリ「Dabel」を個人的に注目しています【The Rise of startups for Disabled people(障害者向けスタートアップの躍進)】

年齢も多様化が進む。特にスタートアップする年齢はここ数年でも若年化が進んでおり、幅広い人たちがチャレンジする世の中になりつつあると思う。自身も20代で独立系ベンチャーキャピタルを立ち上げたTHE SEEDの廣澤太紀氏は、実感を持ってこれを感じている一人だろう。

優秀な高校生の進路選択において、日本の大学だけでなく海外の有名大学を目指すというケースが加速していると感じています。日本国内だけでなく、若くして海外での生活を経験した優秀な日本人が急増すると思います。また、デバイスや通信環境の変化が起こると考えています。

スマートフォンの普及のように、カメラなどのセンサーが増加し、視覚情報などのデータ化や共有はより進むのではないでしょうか。この10年間で、デバイスなどの変化によるC向けプロダクト参入チャンスと、海外経験をもった若手がより多く登場し、創業期から「グローバルC向けプロダクト」を作る若手起業家たちがより活躍すると思います【「グローバルC向けプロダクト」を作る若手起業家の増加】

多様性は何も人だけに限った視点ではない。日本はやや東京に一極集中しすぎた感がある。この反動からか、これまでにも地方から声を上げようという動きはあった。これからの10年はそれが更に加速するのではないだろうか。福岡拠点のベンチャーキャピタル、F Venturesの両角将太氏はその波が「モビリティ」から始まると予想する。

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福岡で実証実験を続けるモビリティサービス

自動運転や空飛ぶクルマの普及により、ヒトの移動、モノの移動においてパラダイムシフトが起きると予想します。自動運転技術のオープンソース化も可能性があると思っていて、例えば「mobby」のような電動キックボードや「メルチャリ」のようなシェアリングサイクルを放置していても、自動で回収してくれるモビリティ事業等をスタートアップが展開できるようになってくると思います。また、モビリティのパラダイムシフトに伴い、東京一極集中だった社会も変わり、地方都市のあり方も変わってくるはずです。

まず、ヒトの移動に革新が起きると、移動することと住むことの境目がなくなり融合していくと思います。東京に住居を構えなくても各都市にいながら交流人口が増加するでしょう。また、スマートシティ化が進み、生体認証などによりあらゆる個人の行動データが取得可能になります。

キャッシュレスもより高いレベルで実現され、モビリティ×ARによる広告配信によって、買い物もよりシームレスになるでしょう。暗号通貨による決済も当たり前になり、グローバルな送金もしやすくなります。一方、モノの移動に革新が起きると、自動運転やドローン配送などにより新たな物流網が構築され、都心にいなくても快適なコマース体験が実現されると思います。さらには、災害時の物資搬送や医療なども迅速に届けられるようになりそうです【モビリティによるパラダイムシフトで東京一極集中から地方分散社会へ

ポスト資本主義の輪郭

日本でも徐々に進むあらゆるモノのデータ化、ブロックチェーンによる資産の自律管理、個人と多様性の時代。モノが貨幣を経ないでモノと交換ができる、その世界観はフリマアプリで実現された。ゆるやかに輪郭がぼやけつつある経済はどうなるのか。グロービス・キャピタル・パートナーズの今野穣氏もキャッシュレス確立をきっかけに、人々のカネの考え方や動きに変化があらわれるとした。

貨幣のデジタル化という意味での「狭義のキャッシュレス」が2020年代前半のうちに確立します。現状の「銀行口座」がどういった位置付けに進化・転換するのかマイルストーンとなるのではないでしょうか。それに付随して信用スコアなどデータと貨幣の融合が図られることになるでしょう。また、ESGやSDGsなどの流れ、二次流通やシェア経済の進展に伴い、実体経済のスピードを大きく超過する過度な金融経済に揺り戻しが起きる。言い換えれば、時としてキャッシュを介さない、既存の金融経済の外側での経済活動が生まれてくると思います。

金融経済の外側での動きは前述の通り、個人間売買のプラットフォームでもう始まっている。このパラダイムの中において重要になるのはやはりデータだ。今野氏はこう続ける。

AIの社会実装という不可逆な流れの中で、キャッシュ(現金)よりもデータの重要性が増す。データそのものが経済活動における最も価値のある資産となり得るし、データそのものの価値交換も行われていくと思われます。また、仮想通貨を含めた多様な個別経済圏の確立も予想しています。デジタライズされた既存通貨や仮想通貨の普及に伴い、かつ場合によっては貨幣を介さない形で、新たにコミュニティ毎の独自経済圏が発展していくのではないでしょうか。同時に非労働時間の可処分時間に増加による、コミュニティ活動自体が活発になることも予想しています【多角的「キャッシュレス」時代の到来】

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想像の遥か上をいくFacebook仮想通貨「Libra」のスゴさを解説するーーいきなり米国議員から開発停止要求も

こうしたデータによる「金融の拡張」は資本の考え方にも影響を及ぼす。ジェネシア・ベンチャーズの田島聡一氏はそれによって、スタートアップする事業の範囲が社会的な活動にまで広がる可能性を指摘した。

2030年に向けた時代の大きな変化の一つは、いわゆるスタートアップと社会起業家がより一段とシームレスになっていくことだと考えています。このように考える背景としては、環境破壊の進行やSDGsに対する意識の高まりなどによって、スタートアップにはその事業内容により大きな社会的インパクトが求められ、社会起業家にはより強いビジネスモデルが求められるようになる(社会起業家にも事業としての持続性が求められるようになる)からです。

スタートアップと社会起業家がよりシームレスになる。この変化に合わせて、資金調達手段が更に多様化すると考えています。現在は、従来からの資金調達手段であったエクイティファイナンス、デッドファイナンス以外に(株式投資型を含む)クラウドファンディングがようやく普及してきましたが、SIB(Social Impact Bond)のような仕組みが進化し、民間にまで拡がるのではと考えています。社会的インパクトを推し進める起業家の後押しがより一層進むのではないでしょうか【スタートアップと社会起業家がよりシームレスになり、資金調達手段がより多様化する】

朝日メディアラボベンチャーズの山田正美氏も、金融システムがアップデートされ、通貨や貨幣に変化が起こるとした。ただ、この変化は国境を曖昧にするという点で「Libra」のように脅威とされることもある。

ブロックチェーンを活用して、既存の金融システムをアップデートするような国をまたいで利用されるサービスの可能性に注目しています。通貨や決済という概念が、物理的なモノや行為と紐付かなくても、信用やスコアリングといった形で可視化されるようになります。2020年代は、新しい信用と金融の時代が来ると考えています。そういう意味で、facebookの「Libra」のチャレンジには注目しています。

まだ見ぬ新しいテクノロジーが世界を席巻するというよりは、2010年代に研究が進んだAI・ブロックチェーン・AR/VRといったテクノロジーが、次の10年に本格的に花を咲かせると考えています。AIは現在のインターネットのようにあたりまえになり、多くのことは自動化されていきます。5Gやデバイスの進化がAR/VRの本格普及を後押しして、スマホのスクリーンに加えて、新しいUXが発明され、その上でコンテンツやサービスを展開する新しいプレイヤーが現れると思います【2020年代は、新しい信用と金融の時代】

では次回は最終回、シンギュラリティの到来について語ってくれた投資家の言葉でこの探るたびの締めくくりとしたい。

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次の「10年パラダイムシフト」を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030(2:DX・デジタルトランスフォーメーション)

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。 オンラインやオフライン、リアルやバーチャルといった境界線は曖昧となり、より「体験」が重視される時代。ブロックチェーンによる自律分散型の情報管理は「個人」という考え方を強調する、という世界観について識者と共にお伝えした。 では、新しい世界を探る旅の続きを始めよう。 DX全盛の時代 「これまでの発明上位100件と同じだけの発明が登場する可能性は小さくなるばかり…

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。

オンラインやオフライン、リアルやバーチャルといった境界線は曖昧となり、より「体験」が重視される時代。ブロックチェーンによる自律分散型の情報管理は「個人」という考え方を強調する、という世界観について識者と共にお伝えした。

では、新しい世界を探る旅の続きを始めよう。

DX全盛の時代

「これまでの発明上位100件と同じだけの発明が登場する可能性は小さくなるばかり。イノベーションはもはや、限りある資源、だ」(イーロン・マスク未来を創る男/アシュリー・バンス著/2015年、講談社)

現代のイノベーター、イーロン・マスク氏を記した著作の中でアシュリー・バンス氏が引用した一節だ。米国防総省で物理学者だったジョナサン・ヒューブナー氏は2005年の論文で未来をこう予想し、ドットコム・バブル崩壊後のイノベーションを「名ばかり」と一蹴している。

それから約15年。実際はどうなったのだろうか?

「ConstructionTechの出現で、100年変化がないと言われてきた建設現場でのイノベーションが起きつつあるように、未だにデジタル対応できていない領域がどんどんなくなり、リアルで発生する情報が全てデジタル化され、ネットに繋がっていく世界が拡大すると考えています」。

世界的な情勢をこのように俯瞰するのはサイバーエージェント・キャピタルの面々だ。日本、中国、北米の市場で活動する彼らが目にしているのは、見栄えのよい「イノベーション」ではなく、じわじわと広がる破壊的創造の環境なのだという。代表の近藤裕文、中国の北川伸明、北米の南出 大介が連名で送ってくれたコメントには、各国で現在進行する「アナログからデジタル」への、こまやかな変化が記されていた。

5GやAIチップなどのインフラの発展、Edge computingやBlockchainによるコンピューティングアーキテクチャの転換、小型・長時間稼働のバッテリー・常時無線給電など、アナログからデジタル変換の基盤を支える技術が進化します。そして、AIはより精度・適応範囲を求めさらに競争が激化していきます。

その中で、人間の果たす役割がよりクリエイティブな活動にシフトし、コラボレーションの重要性が増すと考えています。例えば今年上場したzoomなどは、オンラインでのコミュニケーションに変化をもたらしました。

米国の投資先であるInsiteVRはVR空間でコラボレーションが可能となるプラットフォームを提供しています。特に建築・建設分野において顧客・設計士・現場などの関係者が仮想の建物の中にいながら議論ができるような仕組みですね。

また、中国の投資先であるiTutorGroupは、オンライン教育サービスを提供していて、学習する場所や時間を問わないというシンプルなオンラインサービスの特徴に加え、個々のユーザの能力、習熟度や学習目的に応じた、最適な講座内容、テキストを自動でシステム側で選択するなど、教育産業のデジタル化を推進しています。

最後に日本の投資先であるCinnamonは、事務作業におけるペイパーワークをOCR/AIのアプローチで代替できるレベルに達しています。例えば、保険契約の複雑な書類を正確に読み込み、データ化する、といった作業です。単純作業を代替することで、ヒトがよりクリエイティブな活動に集中できる世界がもう到来しているのです【アナログからデジタル変換の適応領域の拡大と人の役割のシフト】

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InsiteVRはVR空間でのコラボレーションを可能にする

デジタルトランスフォーメーション(DX)。

今、まさに発生しているこのトレンドを「ひとつの側面」で語ることは難しい。既存業界の変化は、まるでアゲハ蝶が羽化するかのようにゆっくりと、しかし確実に進行している。アプリコット・ベンチャーズの白川智樹氏もその進行の鍵として「5G×AI」を挙げる。

2010年代においては、4G×スマートフォンでメディア・広告・ECに大きな変化があったように、2030年に向けた10年という中長期でみると、5G×AIが基盤となる企業や社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)に注目しています。

インフラ・交通・行政・防犯・工場・建設・介護施設・医療・小売現場などの都市にデバイスやロボット(協働ロボットやテレイグジスタンス)が浸透し、サービス型のビジネスモデルに転換、社会の生産性向上や労働力不足の解決に貢献していくと思います。そういった点では、通信事業者や各産業の大手企業が中心となり、PKSHAさんなどをはじめとしたスタートアップとの連携により上記のイノベーションが多数生まれるのではないでしょうか【5G×AIが基盤となるデジタルトランスフォーメーション】

ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロ氏もそれに続く意見を持った一人だ。彼の視点では、DXによって生まれた時間が人を更に進化させるとしている。

ここ数年、AIを取り入れたSaaSスタートアップが多数出現しています。日本企業のSaaS普及率が50%超えて、もはやSaaSを活用しない企業の方がマイノリティーになってきていると同時に、AIを取り入れたSaaSの普及率も上がってきています。

これによってAIの力を使った生産性が異常に高い従業員や職種が実現されると予想しています。例えば1人の従業員がAIのサポートによって3人分の生産性が発揮できるようになる、といった例です。

具体的な事例では、カスタマーサポートやコールセンターの世界でKARAKURIがAIを使った生産性アップのサービスを提供していたり、MiiTelはより効果的なインサイドセールスを生み出すSaaSを提供しています。今後も経理、税務、監査、人事でAIは強化されていくでしょう【AIに強化されたハイパー生産性職種の出現】

ところで、シンプルなデジタルシフトにおける効率化自体はこれまでにも語られてきた文脈だ。エンタープライズの使者としてSansanを皮切りに、SmartHRやfreeeなど数多くのスタートアップが貢献してきた。ではここで彼らが語る「次に期待されるDX」とはどういうものなのか?iSGSインベストメントワークスの五嶋一人氏は、領域の拡大に注目する。

製造業をはじめとする様々な企業活動における作業の効率化において、急速な浸透を見せている「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」は、第一次産業〜第三次産業、第四次産業まで浸透し、この結果人々の生活や体験に大きな変革が起きると考えています。

明確に成長が可視化される市場となっていますが、これに続くのは「衣・食・住」の領域におけるDXであり、スタートアップとベンチャーキャピタルにとっての「次の10年」の主戦場の一つになると考えています。

最終消費者の購入体験はもとより、「衣」であれば各種材料の生産・仕入れからデザイン・製造・流通・小売、さらにリサイクルまで、「食」であれば、生産者にはじまり、流通・小売・飲食店・廃棄の削減まで、「住」であれば不動産の開発から販売、運用、売却まで、あらゆる場面でテクノロジーを活用してビジネスモデルを変革できる機会があるのです【「衣・食・住」に関わるあらゆる領域のデジタル・トランスフォーメーションとライブ・エンターテイメントには、スタートアップに大きなチャンス】

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化粧品EC「NOIN」開始1年で累計流通額8億円を突破ーー夜はメイクよりスキンケア、行動データでマッチング精度高める

前回のテーマでもある体験(UX)とDXの関係性について語ってくれたのがSTRIVEの根岸奈津美さんだ。

中国で先進しているOMO(Online Merges Offline)をテーマとしたサービスが日本でも拡大すると思います。小売りやメーカー主導の売り切りのモデルや単純なECモデルに代わり、オンラインとオフラインの顧客接点を多く持つ企業による、購入前後も価値提供するリカーリングモデルや、オンラインの行動データを基にしたリアルサービスをエンパワーするサービスなどが台頭してくると思います。

先進企業として中国の保険会社である平安保険や、Alipay(支付宝)やWechat上に載るデリバリーや交通サービス、Alibaba(阿里巴巴)の提供するB2BプラットフォームLST、などに注目しています。日本においては、コスメの購買に関してOMOデータを提供する「ノイン」に注目しています。ノインではオンライン上の購入者データに、オフライン店舗のデータを統合することで、より実態に即した効果の高いデータソリューションを提供しています【DX(デジタル・トランスフォーメーション)の台頭によるUX】

デジタル化した社会では、ノインの事例のように人が「どこで買うか」という感覚を曖昧にする。だからこそ、企業は「データ」に着目し、それを足がかりに選んでもらうための「体験」を創造しなければならない。商品での差別化が難しくなった今だからこその戦略だ。

世代による体験も重要なキーワードになる。五島氏もこのように言及する。

また、ミレニアル世代・Z世代が完全に消費の中心となることもあり、「体験」を商品とするライブ・エンターテイメント産業は「次の10年」も一層の拡大を続けていくでしょう。これはリアルなイベントはもとより、インターネット上での繋がりにより発生するイベントや、AR・VRを活用したものも当然含まれます。また広義には美容やDoスポーツ領域といった個人に素晴らしい体験を提供する事業を含んでもよいのではないでしょうか。

音楽・スポーツの他、多人数が同時参加する各種イベント等の事業も、DXの浸透によりデータの利活用が一層進み、インターネット上のサービスやコミュニティとの連携をより一層深化させていきます。結果、エンターテイメントに対する嗜好性の細分化も一層進み、細分化されたファンとその嗜好性に応えるべく、新たなオンラインコンテンツの開発、新たな課金モデルや物販モデルが生まれ続けると期待しています【「衣・食・住」に関わるあらゆる領域のデジタル・トランスフォーメーションとライブ・エンターテイメントには、スタートアップに大きなチャンス】

※動画:BizteXの提供するRPAサービス

一方でエンタープライズ方面の変革には「既存システム」という巨大なハードルが立ちはだかる。ここでいうシステムとはテクノロジー的なシステムはもちろん、業界や人的なカルチャー、意思決定メカニズムなども含める総合的な「仕組み」のことだ。

この点についてジェネシア・ベンチャーズの田島聡一氏は、だからこそ業界でも汎用的に使うことのできるインフラにチャンスが芽生えると指摘していた。

産業構造の進化については、SaaSなどのソフトウェアやIoTデバイスの導入によってサプライ/バリューチェーンのデジタル化や多層取引構造の破壊プロセスがより一層進行するでしょう。同時に、これらのプロセスを通じて得られる多次元なデジタルデータを、様々な産業における生産性の最大化に充分に活かすべく、企業の内外を繋ぐデータマネジメント環境の整備や構築が進むと考えています。

そういった動きと並行して基幹システムやオンプレ、SaaSの垣根が融解し、これらを繋ぎ込む手段としてのiPaaS(integration Platform-as-a-service)の普及がより一層進むと思っています。支援先で言えば、建設業界のDXを目指す助太刀やフォトラクション、企業の内外を繋ぐデジタルアセット管理サービスAPIを提供しているZerobillbank、RPAやiPaaSの展開を推し進めるBizteXなどがあります【産業のDXと並行して、基幹システムやオンプレ、SaaSの垣根が融解し、iPaaSの普及が進む】

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食べチョクは一次産業のデジタル化を推進する

iPaaSのようにある程度汎用的に利用が可能なシステム・インフラが躍進するのはある意味、技術が普及期に入っている証拠とも言える。五島氏はそれに加え、効率化を進める業界のテーマとしても、産業全体を覆うような物流や移動といったダイナミックな視点が必要と語る。

技術的な観点では、ブロックチェーン・IoT・AI・ビッグデータ・ロボットといったテクノロジーが本格普及段階に入り、より安価より簡単に利用できる「枯れた」技術になり、いい意味でただの「道具」としてこれらのテクノロジーを使いこなし、新たな価値を提供できるスタートアップに大きなチャンスがやってくると考えています。

iSGSは「Be a LifeStyle Changer(生活の革新者であれ)」を投資ポリシーの中心に据えて投資活動をしていますが、上記の文脈からの投資先の例として、あらゆる産業の根幹となる物流(倉庫)の最適化を担うsouco、一次産業の生産者と消費者を直接繋ぎ、生産者が生み出す付加価値を可視化して消費者に届ける「食べチョク」、バスを活用して人々の移動を最適化するワンダートランスポートテクノロジーズなどがあります。

同じく飲食店の業務を効率化し飲食店と顧客の関係に革新をもたらすサービスとして、モバイルオーダー&ペイサービス「PICKS」、飲食店予約において全く新しい収益モデルに挑戦しているBespoがあり、エンターテイメント領域ではVRゲーム「東京クロノス」に期待しています。さらに、あらゆる新産業の根幹となるAI技術の開発のみならず自らAI を活用した新産業の創造に挑み続けるエクサウィザーズも挙げたいと思います。

これら例示した投資先は、いずれも「次の10年」を担う事業の中では相対的に立ち上がりが早いと考えられる領域をターゲットとし、更にすべて現業に留まらない大きなビジョンを有するスタートアップとして期待を寄せています【「衣・食・住」に関わるあらゆる領域のデジタル・トランスフォーメーションとライブ・エンターテイメントには、スタートアップに大きなチャンス】

長くなってしまったので、少子高齢化とダイバーシティは次回にまわし、ポスト資本主義の輪郭と合わせてお届けする。

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次の「10年パラダイムシフト」を探る旅、投資家たちが語るスタートアップ・2030(1:体験と個人)

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。 2010年代の大きな潮流として「モバイル・インターネット」、つまりスマホシフトに異論を唱える人はいないだろう。シェア(Airbnb)やオンデマンド(Uber)、ギグワークといった新たな経済のあり方は「アプリ経済圏」というテクノロジーの潮流と合流し、そこから生み出された波に乗ったスタートアップが大きく成長するきっかけとなった。 パラダイムシフトを考える時、例…

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次のパラダイムシフトはどこに起こるのか。

2010年代の大きな潮流として「モバイル・インターネット」、つまりスマホシフトに異論を唱える人はいないだろう。シェア(Airbnb)やオンデマンド(Uber)、ギグワークといった新たな経済のあり方は「アプリ経済圏」というテクノロジーの潮流と合流し、そこから生み出された波に乗ったスタートアップが大きく成長するきっかけとなった。

パラダイムシフトを考える時、例えばMary Meeker女史の「インターネットトレンド(全アーカイブはここに!)」やガートナーの「ハイプカーブ」を手がかりに、数年後の「波」を予想する人たちも多いと思う。一方でグローバルで発生する波が日本に届くまでに、ややタイムラグが発生する。

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ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表

例えば2012年に創業したオンデマンド・デリバリー「Instacart」。このモデルを約2年後に輸入したdelyはその後のピボットを余儀なくされた。今のUberEatsなどをみても提供する体験に間違いはなかったが、参入するタイミングや市場を間違えると波に飲まれてしまう。

波を知りたければ、波のことを24時間365日考えている人たちに聞けばいい。それは投資家だ。彼らは資本主義経済の波乗りであり、潮流を見極める能力が著しく高い。そこで本稿では2030年に向け、オリンピックイヤーからSDGsの目標年に至る10年で何がシフトするのか、知見豊富な識者のみなさまから意見を集め、それらと共に探る旅に出てみることにした。私が彼らにたずねたのは次の3点だ。

  • 次のパラダイムシフトで注目しているトレンドを一言で
  • どのテクノロジーや社会変容が注目されることになるのか
  • 具体的にスタートアップで注目している企業

結果、彼らの意見は大きく次の項目にまとめることができた。それぞれに沿って、今日から3回に渡りお届けする。

  • 境界線の曖昧な世界で体験はどう変わる(1)
  • ブロックチェーンと個人の時代(1)
  • DX全盛の時代(2)
  • 少子高齢化とダイバーシティ(2)
  • シンギュラリティがやってくる(3)
  • ポスト資本主義の輪郭(3)

境界線の曖昧な世界で体験はどう変わる

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ジェネシア・ベンチャーズの鈴木隆宏氏は次の10年を「境界線が曖昧な世の中」と表現した。ヒトと機械、アナログとデジタル、オンラインとオフライン。これまで「AかBか」のような境界線があった部分が不明瞭になる。

この10年で最もインパクトが大きかった出来事として、東南アジア含めた新興国でスマートフォンが普及し、誰もがインターネットにアクセス出来る状況になったことがあります。結果として、すでにオフラインとオンラインの境界線が融合し始めています。

またそれだけではなく大企業やスタートアップの連携によるデジタルトランスフォーメーションの加速、米国・欧州・インド・中国・韓国といった多国籍な起業家が東南アジア/新興国でスタートアップを創業する流れが加速し始めました。これらスタートアップで働く人たちや投資家の顔触れも多国籍になりつつあります。

次の10年は、様々な境界線が曖昧な世の中になっていくと感じています。

数年前から言い続けていますが、個人的には広義の意味で「“あるデータ”が一定閾値を超えると、 加速度的に価値が高まる。そんなデータを収集&活用出来るプラットフォーム」をあらゆる産業分野で注目しています【様々な境界線が曖昧な世の中に】

例えばリアルとバーチャル(仮想)の境界線は分かりやすい例だろう。VR(仮想現実)AR(拡張現実)MR(複合現実)は細かな分類すらなくなりXRと総称されるようになった。没入空間から現実世界まで自由に往来できてこそ、ポケモンを「本当に」感じることができる。

D4Vの永瀬史章氏もこの点を挙げる。

2020年代のテクノロジーで注目すべきは「VR/AR、IoT」です。VR/AR、及び広い意味でのIoTはゲームやスマートスピーカー等の簡易的なアプリケーションからさらに拡大をみせます。初期のスマホアプリがそうだったように、簡単なゲームからユーザーが拡大し、その後SNSや他サービスへと事業が広がるイメージですね。

結果、現実のIoTと繋がる中でよりリアルと仮想世界の差がなくなります。ベースになるのはOculus等のハードの爆発的な普及とキャズム超えです。国内プレーヤーとして期待しているのは、ハードであるOculus、AppleやAmazon、Googleのスマートホーム規格「Connected Home Over IP」に乗るようなコンテンツを出していける企業になります【VR/AR、IoTがリアルと仮想を一つにする】

もう一つの境界線がオンラインとオフラインだ。OMO(オンラインとオフラインの融合)というトレンドも「境界線が曖昧になった」ケーススタディのひとつだろう。これまでのO2Oマーケティングでは「オンラインはオフラインへの誘導ツール」だった。しかし、中国で強烈な成長を見せた「ラッキン・コーヒー(瑞幸咖啡)」はその概念を「融合」に変える。

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ラッキン・コーヒー(瑞幸咖啡)

コーヒーの注文・決済はスマホで完結し、店舗はあくまで受け取りのための拠点でしかない。重要視されるのは「どうやって気持ちよくコーヒーにありつけるか」という体験なのだ。ジェネシア・ベンチャーズの田島聡一氏もこの「融合」に言及する。

2030年に向けて注目している事業領域の一つがOMO領域です。中国の平安保険やラッキン・コーヒーなどがまさにその一例ですが、ジェネシアでは未公表先も含めて、日本・東南アジアの両方において、OMOベースでの教育スタートアップや飲食・小売スタートアップに積極的に投資しています。

既存のビジネスプロセスのDXではなく、ゼロベースでオンラインからビジネスモデルを構築することで、そのサプライチェーンやカスタマージャーニーを180度変え得るOMOスタートアップがデジタルネイティブの生活スタイルを大きく塗り替えると考えています【OMOスタートアップがデジタルネイティブの生活スタイルを大きく塗り替える】

体験の話で「時間」という視点を挙げていたのがEast Venturesの村上雄也氏だ。スーパーインスタント化という「体験時間が細切れになる」アイデアは確かにここ数年で加速した感がある。Amazon Primeのように「昨日頼んで今日届く」から「今すぐ」の傾向は強まるばかりだ。

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単発バイトアプリを運営するタイミー(同社ウェブサイトより)

以前から存在する流れなので、シフトというよりもより一層ギアが入るという具合ですが、インスタント化がより浸透すると感じます。

国内の流れでいえば即席で働ける「タイミー」や即席でお金を借りられる「バンドルカードのポチッとチャージ」、先日α版がローンチされたたった1カ月で本格アプリがリリースできる「Appify」等は最たる例でしょう。YouTubeにも教養動画やマンガ動画、本の要約のコンテンツが増えていますが、これもインスタントに情報を摂取したい欲求と解釈できます。

海外に目を向けても、即席で承認欲求が満たせたり、ほんのスキマ時間で手軽にコンテンツを楽しめるショート動画「TikTok」は今年15億DLされたモンスター級のアプリです。

また爆発的に伸びているソーシャルECの「Pinduoduo(拼多多)」は共同購入やゲーミフィケーションも特徴ですが、SNSのように最適化されたフィード上に商品が並んでいるのも大きな特徴です。多くのユーザーはフィードから欲しい商品を見つけるなど、検索すらも面倒になり始めています。

こうした各種サービスを見ると、とにかく欲望までのリードタイムの短縮化が顕著で、人が待てなくなっているのが分かります。恐らくスマホと機械学習がもたらした副次作用ですが、そのスマホ的な感覚に最適化させたサービスやコンテンツがさらに生まれる余地が大きいと思います。

この文脈で最近の海外スタートアップだと今年のYCに出ていた、1時間単位で部屋を貸し借りできる「Globe」があります。また先日「Solve」というSnapchatやInstagram向けのショートドラマ制作会社がLightspeed等から調達するなど、コンテンツ面でも生まれてきています。

以上のように、スマホ脳にフィットするスーパーインスタント化はくると予測します。

しかし、パーソナルコンピュータの父であるアラン・ケイ氏も「未来を予測する最善の方法は、自らそれを創り出すことである」と語っているように、East Venturesは自らパラダイムシフトを起こすあらゆる起業家を支援し続けたいと思っています【スーパーインスタント化】

ブロックチェーンと個人の時代

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Image Credit : LayerX

2017年の仮想通貨バブルで社会的にも顕在化した、ブロックチェーン技術による「自律分散型」の考え方は今後の個人を占う上で大きな変換点になりうる。個人に紐づく資産や仕事、評価、あらゆるデータが自律的に執行される世の中を実現できるからだ。

一方でその世界観は「ゆるやかに」進行する。D4Vの永瀬氏も「2030年」の10年視点が必要と指摘していた。

2020年代を牽引するテクノロジーで最有力はブロックチェーンです。ビットコイン等の通貨としての普及ももちろん進みますが、ブロックチェーンは技術として、保守コストの低減及びインセンティブ革命に本質があります。

企業でいえば、巨大すぎて手をつけられていなかった金融、不動産関係のシステムのブロックチェーン化(ScalarやLayerX)、個人でいえば、個性を生かしたSNS、コミュニティ(FiNANCiEやgaudiy)が面白いと感じてます。後者に関しては、個の時代という2010年代後半の流れも引き継ぎながらさらなる次の時代の礎となるのではないでしょうか【ブロックチェーン革命が既存システムを塗り替え、さらには個の時代のインフラとなる】

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パッション・エコノミーのMOSH(同社ウェブサイトより)

では、具体的にこのようなデータを自律分散化するインフラが整ったとして、個人はどのような変化を迎えるのだろうか。再び登場する田島氏は「多様性」と「信用」に着目する。

個人の興味や関心の多様化、及び働き方や生き方の多様化がより一層進むと同時に、日本の経済活動を支える存在としての外国人材がより一段と注目されると考えています。このような変化に伴い、フリーランスや副業活動をアシストするクラウドソーシングやギグエコノミーといった経済圏の拡大はもちろんのこと、YouTuberなどのインフルエンサーやE-Sportsなど、かつては成立しなかった職業が新たに生まれています。

同時に、こういった生き方を支えるインフラ、例えば保険や福利厚生、金融機能などを提供するスタートアップが大きく事業を拡大すると考えています。支援先で言えば、好きなこと、得意なことで生きる人々の活動を応援するプラットフォームを提供しているMOSH、すべてのLGBTが自分らしく働ける社会の創造を目指すJobRainbow、外国人財と日本の架け橋となり、より多様性と包容力溢れる社会の実現を目指すLincなどがあります。

また信用についても、外国人材がより活躍するフリーランスや起業家などに向けた家賃保証の提供を通じて信用創造への変革を目指すリース、消費者金融のアップデートを目指すCrezitなどが上げられます【個人のエンパワーメントと信用創造の進化】

これまでの単一民族国家と異なり、日本は多様性を受け入れる時代に入る。日本語でのみ通用したあらゆる「ローカル基準」のものさしは通用せず、絶対的な信用スコアリングが重要視されるようになる。

一方で、新しい世界は冷たく固い数値のみが人間の「優劣」を決める単一指標になるわけではない。今、世界で起こりつつある「パッション」を重要視した個性ある個人のあり方も、同時に注視しなければならない。W venturesの東明宏氏も同じく、こういった多様性の中に生まれるギャップこそがチャンスになると指摘する。

これからの10年、世界中で益々成熟化が進み、人々がそれぞれの豊かさを求めて人生の多様化が進むと考えています。日本国内では、フリーランス、ギグワーカー、副業等は当たり前となり、働き方が本格的に変わっていくのはもちろんのこと、暇になった時間を何に使うか、でその人らしさが強く形成されていくようになるのではないでしょうか。

人々は他の人とは違う、自分ならではの人生をより強く追求するようになり、人生は画一的なものではなく、それぞれに分かれたものとなっていく。人々はそれぞれの興味/関心などを軸にますます多く、自らの世界を持っていく。

また、現実世界のほかに、XR技術の進化・浸透とともに、バーチャル世界がリアル世界と融合し、リアルとバーチャルの境界は意味をなさないものとなります。リアルとバーチャルが融合された世界の中で、人々はそれぞれの世界毎にアイデンティティを保有する、マルチアイデンティティ時代が本格的に到来すると考えています。

この流れの中で、国内では働き方の多様化を促進するサービスについては、周辺サービスも含めて引き続き注目していきたいと思います。投資先のGO TODAY SHAiRE SALONなど、スペシャリティをもった人々の働き方の多様化、その周辺には特に注目をしています【リアル世界の分散とバーチャル世界の融合、マルチアイデンティティ時代の本格到来】

個人が最大化される時代ーー。学生から社会人、個人や会社という「昭和的な」境界線はさらに曖昧となり、それぞれ個々を特定するデータが細やかに自律管理される世界。個人はデータを懐に、あらゆる人種、個性と繋がりながら人生を形成していく。世界はオンラインもオフライン、リアルも仮想もなく、全ての価値は体験で決まる。

次回はデジタルトランスフォーメーション(DX全盛の時代)、少子高齢化とダイバーシティについて識者の意見を綴る。

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