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量産設計・プロトタイピングの識者と考える、スタートアップのものづくり〜第7回Monozukuri Hub Meetupから【ゲスト寄稿】

本稿は、「Monozukuri Hub Meetup」を主宰する Makers Boot Camp でマーケティングを担当する Sabrina Sasaki 氏とボランティアの照山貴子氏による寄稿を翻訳したものである。オリジナルはこちら。 Makers Boot Camp は京都を拠点とするハードウェアに特化したスタートアップアクセラレータである。 本稿における写真は、写真家の逢坂憲吾氏による撮影…

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Sabrina Sasaki 氏

本稿は、「Monozukuri Hub Meetup」を主宰する Makers Boot Camp でマーケティングを担当する Sabrina Sasaki 氏とボランティアの照山貴子氏による寄稿を翻訳したものである。オリジナルはこちら

Makers Boot Camp は京都を拠点とするハードウェアに特化したスタートアップアクセラレータである。

本稿における写真は、写真家の逢坂憲吾氏による撮影。


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Makers Boot Camp の月例イベント「Monozukuri Hub Meet up」の7回目が10月16日(水)MTRL 京都で開催された。今回の題目は「スタートアップのための量産化設計」だ。

Makers Boot Camp のマーケティング担当 Sabrina Sasaki はイベントの冒頭、量産化設計について簡単な紹介をした。彼女は、コンセプト作りに始まり、スタートアップがたどり着こうとする小売販売まで、製造プロセスの各ステージについて紐解き、Over Wall Manufacturing(一つのステージを終えてから、次のステージへ進む方法)という従来の製造方法について説明した。この方法では、各ステージの専門家は分かれて仕事しているため、どんなに素晴らしいプロダクトのアイデアを思いついても、次のステージに進むには、各プロセスに対応できる適任者を探し出す必要があり効率的でなく時間がかかってしまう。

文字通りステージとステージの間には壁が存在し、その各ステージの専門家の間には直接的な関係も生まれない。資金面でも人材面でも、リソースに限りのあるスタートアップにとって、これらの壁は妨げにになる。スタートアップは常に一から始めなければならないが、彼らは限られたリソースを最大限に生かすために、これらの壁をどのようにすれば乗り越えられるだろうか? そして、状況が難しい場合でも、一定の成果を得るまで、どうすればプロトタイピングを続けるられるだろうか? パリと京都をつなぎ、フランスのプロトタイピングの専門家チームとゲストスピーカーが、maker たちに洞察を共有してくれた。

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プレンプロジェクト CEO 赤澤夏郎氏

最初のスピーカーは、二足歩行ロボット「PLEN」を開発するプレンプロジェクトの CEO 赤澤夏郎氏だった。同社の「PLEN2」は、オープンソースで印刷可能なロボットとして、Kickstarter でクラウドファンディングを実施した。PLEN2 では、同社の 3D オープンソースデータを参照することで、世界中の誰もが自分のロボットを作ることができる。同社のビジネスモデルに話を移すと、PLEN2 はオープンソースであるため売上を生み出さないが、公開データを使ってロボットを組み立てた人々は、そのロボットを SNS でシェアしてくれるので、広告よりも効果的に認知を広めることができる。

お金を得ることはできないが、プレンプロジェクトは、ヒューマノイドの共創プラットフォームになることができた。そして最後に、赤沢氏は、中国の EMS(受託製造企業)である Goertek(歌尔)との合弁で昨年設立した新会社 PLENGoer Robotics について紹介した。プレンプロジェクトと Goertek は共同で、来年1月にお目見えする予定の新しいロボットを開発中だ。小さな町工場に生まれた赤澤氏だが、彼は今、これまでに経験したことがないほど大きな製造規模を擁する、巨大な国際プロジェクトに参加している。

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La French Tech Tokyo の Jean-Dominique Francois 氏

2番目のスピーカーを務めた La French Tech TokyoJean-Dominique Francois 氏は、フランス政府が設立した特別な機関について説明した。彼は、フランスと日本のスタートアップの橋渡しをすべく仕事している。我々は皆、その食べ物・ワイン・チーズ・美術でフランスのことが好きだが、Pepper にラテンダンスの動きを与えるソフトウェアのデベロッパに代表されるように、非常に評価の高い IoT のスタートアップが生まれる国でもある。

ヨーロッパと(日本を中心とする)アジアでの20年に及ぶ国際ビジネス開発の経験を通じて、Francois 氏はスタートアップやスタートアップ・エコシステムに関する、包括的な理解を深めることができた。ここ数年は、フランスの経済外交を担うメンバーの一人として、日本市場において、フランスのハイテクスタートアップや中小企業の発展を支援している。

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ダッソー・システムズ 田中昭彦氏

ダッソー・システムズのアカデミックプログラムのディレクターを務める田中昭彦氏は、よりよいプロジェクト管理に求められる、CAD システムやシステム管理ツールに関連した、同社の 3D Experience Lab でインキュベーション中のスタートアップについて話をした。これらはすべてクラウド上で動くサービスだ。トヨタやホンダなどが、スタートアップも利用できるこのプラットフォームを既に利用している。クライアントからもたらされる素晴らしい話とともに、バーチャルワールドを使って実現できる未来を想像してみよう。

同社のスタートアップ・インキュベーション・プロジェクトには、世界中からスタートアップが集められている。スタートアップは、都市、生活、ライフスタイル、IoT、アイディエーション、FabLabs の6つのカテゴリに応募することができる。選考にあたっての条件は、コラボレイティブ(共創的)か、プロダクトやサービスに破壊的なイノベーションがあるか、社会にとってポジティブなインパクトが与えられるかだ。

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crossEffect の Benjamin Davoult 氏

休憩の後、パネルディスカッションに先立ち、量産化設計の専門家らが、自らの会社や作品を紹介する機会を得た。

最初のパネリストは crossEffect のプロジェクトマネージャー Benjamin Davoult 氏で、彼は自らをフランス人ナードだとして紹介した。彼は工業デザインの修士課程を終えた後、crossEffect に就職して来日した。彼のプロダクトデザイナーとしての仕事には、真空成形やプロトタイプ・トライアルモデルを作るクリエイターのための、シリコーン型デザイナーなども含まれる。

彼は、ラピッドプロトタイピングの手順について説明した。クライアントから 3D データを受け取り、新たなプロジェクト要望に基づいて、デザインの詳細をチェックし、それが物理的に作成可能であることを確認する。そして、3D プリンターや、液体樹脂の中に入れた金属プレートをレーザで軟化させるステレオリソグラフという巨大なデーザーマシンを使い、レーザを当て物体の新しい層を作ることを繰り返す。このプロセスは一晩(8〜10時間)かかるので、チームがモデルの作成にかかれるのは次の日からだ。3D モデルがクライアントから提供されることもあるが、いずれにせよ、マスターモデルを仕上げる必要がある。次に取り掛かるのは、シリコーンを内部に入れた型決め、そこから1日おいて、マスターモデルに樹脂を入れて行う真空成形の準備が整う。最終工程のために、ペインティングルームで真空成形機を開けると、プロトタイプは量産製品とほぼ同じ見栄えにまで仕上がっている。プロトタイプと量産製品を並べてみれば、どちらがプロトタイプかわからないだろう。

crossEffect は工業デザインを専門とする新しい部門を立ち上げており、その事業アイデアは、コンセプトづくりから 3D モデリング、3D プリンティング、真空成形へと広がりを見せている。

crossEffect のチームは、いかなるプロジェクトもコンセプトや手で描いた絵、プリント基盤のハードウェアからスタートすることができる。スピードが売りなので、一週間で多くの提案を出すことができる。提供する領域によって価格は異なるが、複数のサービスを提供することが可能だ。

彼はパナソニック、ローム、三洋電機、オムロンのようなブランド向けに crossEffect が最近作成した IoT 製品を見せてくれた。

Davoult 氏は、ものづくり、なかでも役に立つ新しい発明が好きで、家にいる間も 3D プリンタを使って、あらゆるデバイスやマシンを作ることに余暇の時間を充てている。

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最上インクスの Emery Delmotte 氏

1950年創業の最上インクスで販売スペシャリストを務める Emery Delmotte 氏はフランス生まれだ。彼は最上インクスで海外販売を担当し、同社のビジネス展開を支援してきた。現在、同社の主要顧客は、京セラ、オムロン、村田製作所、富士通、デンソー、日本電産などの日本の大企業で、薄い金属板やプラスチック樹脂からプロトタイプを作成、プレス加工・曲げ・切断・ダイセット作成などのサービスを提供している。

最上インクスの生産スピードは小さい物体に特化しており、誤差は0.03㎜で、大きさ2mm²以下の大きさ・薄さ0.05㎜のプロトタイプを作成することができる。生産に必要な時間は7日間。量産が同社売上の約45%を占めるのに対し、プロトタイプ作成は売上の46%、その他の売上を成型や引き伸ばし作業が占める。月に400以上のプロジェクトを扱っており、依頼を受ける分野も、医療製品、自動車、車載リレーやコネクター、工業製品、通信モジュール、電子部品、スイッチ、バッテリー、燃料電池、放熱器までさまざまだ。

最上インクスは京都試作ネットと協力して、開発からプロトタイピング、量産、迅速な商品の具現化、量産体制へのスムーズな移行、早期の市場投入、追加修正などを完璧なサポートを提供している。

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HILLTOP の Antoine Andrieu 氏

Antoine Andrieu 氏は、HILLTOP の開発部門で働いている。

Andrieu 氏が HILLTOP を紹介するにあたって見せてくれた工場内の写真には、作業者があまり多くは映っていなかった。新しくカスタマイズしたソフトウェアで、マシン制御の自動化に着手したからだ。Andrieu 氏は、HILLTOP でスマート工場プロジェクトのリーダーを務めており、IoT ・インダストリー4.0のコンセプトや技術を活用して、同社をファースト・プロトタイピングの新しい時代に対応させようとしている。

Andrieu 氏のチームワークは自動化に注力しており、同社には現在、IoT デバイスと家電製品の流行が訪れている。Andrieu 氏は、テストデバイス、自転車の安全灯、アロマディフューザー、運送ロボットなど、アイデア出しから顧客向けの開発ステップまで、彼の開発チームが社内で作成した B2B ソリューションの事例をいくつか見せてくれた。

HILLTOP は IoT 向けに、プロトタイピング、メカニカルデザイン、組立、量産までのサービスを提供している。

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これら専門家を交えた最後のセッションでは、京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab 特任准教授 Sushi Suzuki(鈴木篤史)氏がモデレーターを務めた。Suzuki 氏とパリとのつながりは、彼がフランス国立土木学校(École des Ponts ParisTech)Paris Est d.school を共同設立し、デザインイノベーションを教えていたことにさかのぼる。

パネルディスカッションでは、maker が抱える問題や、Makers Boot Camp の主な活動でもあるハードウェアスタートアップの支援を、京都試作ネットのメンバーをどのように実現できるかが議論された。

すべてのスピーカーのプレゼンテーション・デッキや詳細な情報は、ここから参照することができる。

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エアバス謹製の3Dプリントで出力された電動バイク、重さ35Kgで最高時速は80Km。でも価格はまさかの

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<ピックアップ> The world’s first 3D-printed motorcycle will cost you €50,000 ちょっとこれかっこいいんじゃないでしょうか。 欧州の航空会社エアバスの子会社、APWorks社が開発した電動バイク「Light Rider」が公開されたそうです。特殊なチタン配合のアルミ合金を使ったメッシュ・ボディで重量は35kg。特…

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<ピックアップ> The world’s first 3D-printed motorcycle will cost you €50,000

ちょっとこれかっこいいんじゃないでしょうか。

欧州の航空会社エアバスの子会社、APWorks社が開発した電動バイク「Light Rider」が公開されたそうです。特殊なチタン配合のアルミ合金を使ったメッシュ・ボディで重量は35kg。特徴的なのはこのボディを3Dプリンタで出力している点。

バッテリーは一回の充電で60kmまで走行可能で、最高速度は時速80km出せるということですが、35キロの重量でその速度はやや怖い気がするのは私だけでしょうか。

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Image Credit : APWorks web site

価格を見るとプレオーダーで2000ユーロ。「今日のレートで約25万円か…買えるな…これは買う!」と思ったのもつかの間、これはあくまでデポジットの金額。本当の価格は5万ユーロ(約631万円)。しかも50台限定で一気に視界から消えていきました。

それもそのはず、これは限りなくコンセプトモデルに近いものみたいですね。航空宇宙のスペシャリストが未来の都市モビリティを考えるとどういうものができるのか、そういう視点に立って作ったものなのだとか。

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Image Credit : APWorks web site

例えば3Dプリントで筐体を出力できれば単純に現地での生産がフレキシブルになります。材料だけ現地で調達すれば、モビリティが必要な場所で素早く移動手段を提供することが可能になる、などなどです。

via The Verge

 

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文字ではない手紙を贈ろうーー声波長を3Dプリンターでリングにする、ものづくりサービス「Encode Ring」

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3Dプリンターを使って様々なものづくりが生まれる近年、今回は、声波長を可視化し、3Dプリンターを使ってリングにするサービスEncode Ringを紹介する。 Encode Ringでは、スマホで録音した3秒の音声データから声波長を形成し、3Dデータのリングをデザインする。その後3Dプリンターでリングの原型が製作され、研磨・着色加工を経て、申込みから約1ヶ月でユーザのもとへ届く。 リングの素材は14…

3Dプリンターを使って様々なものづくりが生まれる近年、今回は、声波長を可視化し、3Dプリンターを使ってリングにするサービスEncode Ringを紹介する。

Encode Ringでは、スマホで録音した3秒の音声データから声波長を形成し、3Dデータのリングをデザインする。その後3Dプリンターでリングの原型が製作され、研磨・着色加工を経て、申込みから約1ヶ月でユーザのもとへ届く。

リングの素材は14kゴールド・14kピンク・プレミアムシルバーの3種類、サイズは5~9号、価格は32,400円〜だ。

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Encode Ringを企画・製作する「X人の株式会社」は、2014設立当初から3Dプリンターを使ったデータ作成や受託制作を通して、3Dプリンターを用いたものづくりを行ってきた。

Encode Ringは、企画者であるX人の株式会社 3Dモデルディレクター・角村嘉信さんが、大切な人にギフトを渡す際、納得のいくプレゼントを見つけることができず、オリジナルで自分の想いを伝える方法を模索したことがサービス展開のきっかけだったという。

Encode Ringのコンセプトは、“文字ではない手紙”です。3秒以内のメッセージという制限は、言葉を削ることでユーザが本当に伝えたい言葉を見つけるという意図を込めています。ですので、ジュエリーだけではなく想いを伝えるツールすべてがべンチマークです。同じ言葉でもリングデザインは声によって変化し、同じものは存在しません。このオリジナル性を付加価値とし、市販物と差別化していきます。(角村さん)

また、角村さんは、Encode Ringをクリエイターの可能性を広げる1つの事例として形にしていきたいと言う。

クリエイターが活躍するフィールドは、未だ音楽や映像、デザインにITに限られる傾向があります。Encode Ringにより、アイディアをものづくりにできることを実現し、クリエイターが、より広い範囲での活躍の可能性に目を向けるきっかけにしたいです。(角村さん)

今後の展開については、結婚・婚約指輪のような高素材なリングを展開していく。さらに、リングに留まらず、より良いアイディアをものづくりに転換していきたいとのこと。

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X人の株式会社メンバー。右から2番目が角村氏。

3Dプリンターを使ったアクセサリーブランドはすでにいくつか存在しているが、声波長を使ったリング製作サービスはおそらく世界初だろう。大切な方のプレゼントに、ぜひ購入してみてはいかがだろうか。

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急展開中の3Dプリントシューズ、各スポーツブランドの開発状況は?

Filemon Schoffer氏はローカル3Dプリントサービスネットワーク3D Hubsのコミュニティ代表である。 Nike、Adidas、Under ArmourやNew Balanceといったスポーツシューズ企業は、デザインプロセスや新しいシューズデザインの試作品作りをスピードアップさせるため、3Dプリントに比重を置きつつある。さらに、これらの企業は徐々に3Dプリントを試作品から製品へと移行…

Filemon Schoffer氏はローカル3Dプリントサービスネットワーク3D Hubsのコミュニティ代表である。

Above: Under Armour's recently-announced UA Architech training shoe. Image Credit: www.underarmour.com
上: Under Armourが最近発表したトレーニングシューズ「UA Architech」
Image Credit: www.underarmour.com

Nike、Adidas、Under ArmourやNew Balanceといったスポーツシューズ企業は、デザインプロセスや新しいシューズデザインの試作品作りをスピードアップさせるため、3Dプリントに比重を置きつつある。さらに、これらの企業は徐々に3Dプリントを試作品から製品へと移行する計画を明かしている。

今週のボストンマラソンでは、New BalanceとUnder Armourの両社が初の3Dプリントシューズを発表し、この流れは早いスピードで進んでいるようだ(編集部注:原文掲載4月24日)。今回、3Dプリントシューズの分野で競い合っているプレイヤーと、なぜこのトレンドが重要かを簡単に説明しよう。

Nike

Nikeは2013年、限定的に業界初のVapor Lase Talonフットボールクリート用レーザー焼結(SLS)3Dプリントプレートを発表した。オレゴン州に本社を置く同社は、将来のフットウェアデザインにどのように3Dが使われるかについてあまり詳細を明らかにしてこなかった。とは言うものの、同社は付加的製造技術には積極的で、12万5000スクエアフィート(1万1612.88m²)の広さのAdvanced Product Creation Centerを建設している。2015年10月、COOのEric Sprunk氏は公の場で、未来について「消費者が自分のNike商品を自宅や店舗で作ることができる日もそう遠くありません」と語った

Nike

Adidas

Adidasは自社Futurecraftシリーズ用に2015年10月ローンチした素晴らしいYouTube動画シリーズで、3Dプリントシューズがどのように作られるかを紹介し、視聴者からも期待が寄せられている。2番目に大きいフットウェア企業である同社は、3Dプリントシューズの生産に対して多大な努力をしてきたが、実際リリースがいつになるのかはまだ明らかにされていない。

Above: Still shot from Adidas YouTube channel Image Credit: Adidas
Above: Adidas YouTubeチャンネルからのスクリーンショット
Image Credit: Adidas

New Balance

New Balanceは、NikeやAdidasよりもフル3Dプリントミッドソールの発売に向けて大きく前進している。Nervous Systemおよび3D Systemsとのコラボレーションを通じ、同社は初の3Dプリントミッドソール付きシューズをボストンマラソンでお披露目した。新しく開発されたエラストマーパウダーで作られたミッドソールは、シューズに最適なバランスの柔軟性、強度、重さと耐久性の実現が可能だという。興味のある人は自分の目で確かめてみてはいかがだろうか。

New Balance
上: New BalanceのYouTubeチャンネルからのスクリーンショット

Under Armour

グループで最も若く機敏な会社であるUnder Armourが最近発表したUA Architechは、実際に市場で販売された初のシューズである(記事最上部画像参照)。しかし、300米ドルのこのモデルは96個しか生産されておらず(同社は1996年設立)、3Dプリントシューズ初の小売販売にこぎつけたにもかかわらず大衆が手に入れられる初の3Dプリントシューズにはほど遠い。

3Dプリントシューズが未来にもたらす変化

初の3Dプリントシューズレースにおける技術的な疑問のひとつに、3Dプリントシューズの定義は何かという点がある。ある試作品をもって定義するのか、ブランドが完全に改良され、革命的サプライチェーンが可能となった商品のことを指すのか?ミッドソールの一部だけでも3Dプリントシューズとして認められるのか、それともシューズ全体が3Dプリントでなければならないのか?

いずれにせよ、これらの企業は3Dプリントを使った大量生産商品という全く新しいカテゴリーを作ろうとしている。足をさっと3Dスキャンすると、色だけではなく足の形にぴったり合わせて形もカスタマイズすることが可能となる。これは、アスリートにとっての運動能力向上だけでなく、健康問題を抱える消費者の助けにもなり、シンプルに新しいレベルの「スタイル」をもたらしてくれるものだ。

現代の3Dプリンタは一般的な小売りの現場や自宅にでも設置できるので、購入してほぼ即時にカスタムシューズを印刷できるのは既存のサプライチェーンにとって革命的だ。遠くで同じものを大量生産し、販売できる場所に発送する製造モデルから、デジタルで販売し、必要なものだけを作り、地元でオンデマンドで24時間以内に配達される製造モデルに突如移行するのだ。

結果的に、個人のニーズに合わせた特注シューズという全く新しい強力な商品カテゴリーが生まれる。男性が何世紀にもわたって手作りのカスタムメイドスーツをオーダーしていたのとたいして変わらない。フットウェア会社は特定の場所で生産し、(おそらく非倫理的といえる)低時給国の労働を削減し、送料を最低限に抑えて生産廃棄リスクを回避することができる。

そういった明らかな利点があるため、運動用フットウェアは多くの人が待ち望む素晴らしい3Dプリントの活用法だと考えるのもうなずける。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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調達額は目標の20倍超、金属製高品質3Dプリンター「Trinus」のKickstarterが残り期間わずか

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現在市場に出回る500ドル以下のDIY型3Dプリンターには、悔しい思いをさせられた人は少なくないのではないでしょうか。パーツが揃っているのかを確認できないくらい大量の部品を組み立てなければいけなかったり、やっと使えたと思ったら廃棄プラスチックでノズル部分が詰まってしまったり。また、そもそも3Dプリンターそのものが軽量すぎて高速プリントに対応できないなど、トラブルが尽きません。 そんな残念をなくして…

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現在市場に出回る500ドル以下のDIY型3Dプリンターには、悔しい思いをさせられた人は少なくないのではないでしょうか。パーツが揃っているのかを確認できないくらい大量の部品を組み立てなければいけなかったり、やっと使えたと思ったら廃棄プラスチックでノズル部分が詰まってしまったり。また、そもそも3Dプリンターそのものが軽量すぎて高速プリントに対応できないなど、トラブルが尽きません。

そんな残念をなくしてくれる3Dプリンターが、Kickstarterでプロジェクトを展開中の「Trinus」です。プロジェクト終了が間近に迫る中、これまでに2,170名を超える支援者から100万ドル以上を集めています(2016年4月25日時点)。これは、目標調達額5万ドルの約20倍。既に完売してしまいましたが、超アーリーバードなら一台199ドル、現在支援できるプランは299ドル〜Trinusを購入することができます。

安定性、正確性、耐久性に優れた「Trinus」

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Trinusのインダストリアルデザイナーである Bojan Smiljanicさん自身も、過去に3Dプリンターの組み立てに何時間と費やした結果、結局あきらめてしまったことがありました。2,000〜5,000ドルを支払えば、この苦労はなくなるわけですが、試してみるのには余りにも高額です。

Trinusは、高額3Dプリンターと同レベルの性能を持ちながら、価格は圧倒的にリーズナブル。フレームから内部の部品に至るまでプレミアムな金属パーツで出来ているため、頑丈です。もちろん、内部にも金属パーツが使われているため、使うたびに点検する手間はありません。また、産業機器に見られる単軸スライドを使った安定構造で、1秒70mm、最速1秒150mmの印刷スピードで走ります。

またTrinusの3Dプリントヘッドを取り外すことで、レーザーエングレーバーに早変わり。2016年末までに3つのヘッドの発売を目指しており、現在はデュアルエクストルーダー(複数のフィラメントの混合用)、ペーストエクストルーダー(チョコレートのような粘りけのある物質でのプリント用)、CNCルーター(木材や金属の切削用)の設計中です。

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社名は3Dプリンターの父 小玉秀男氏に由来

Trinusの開発会社である「Kodama」。Kodamaという社名は、1981年に世界で初めて3Dプリンターの実用プロトタイプを開発した日本人研究者 小玉秀男氏に由来しています。また3Dプリンターで物が少しずつ造形されていくことと、木が空高く伸びていく様子を重ねて「木霊」という意味も込められています。

「私たちは、高品質なパーツ、良質なプリントクオリティー、そして簡単にセットアップできる3Dプリンターを作ろうと立ち上がりました。Trinusを受け取った人は、それを40分以内に組み立てることができます」。(Bojan Smiljanicさん)

Kickstarterのプロジェクトが終了した後、Trinusを製造するのは世界でも最大規模の製造メーカー「Flextronics」です。完成したTrinusが支援者のもとに届くのは、2016年8月。Trinusのような高性能で実用性が高い3Dプリンターの登場で、今後、私たちの生活は大きく変わっていくはず。

「3Dプリンティング技術のスピードはどんどん高まっています。将来、今日の製造工程の多くが3Dプリンティングに取って代わっていると思います。低速で高額なツールを使って射出成形金型したり、時間がかかるプロトタイピング技術は減っていき、いずれ消滅するでしょう。消費者が持つ特定のパーツや製品ニーズに、ものの数分で完成されたもので応えられるような時代になるはずです。今後、この技術の進化が楽しみです」。

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3Dプリンタで作れるヒト型ロボット「PLEN2」が、成都で開催された #ChinaBang 2016で注目を集める

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本稿は、中国四川省成都市で、3月30〜31日に TechNode(動点科技)が主催した ChinaBang Awards 2016 の取材の一部である。 今年の ChinaBang Awards でファイナリストに選ばれた日本発の PLEN2 は、スケートボードからサッカーまで何でもこなす完全オープンソースの小型2足歩行ロボットである。 「私は子供の時、ロボットアニメが大好きでした」と語るのは、プ…

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本稿は、中国四川省成都市で、3月30〜31日に TechNode(動点科技)が主催した ChinaBang Awards 2016 の取材の一部である。

今年の ChinaBang Awards でファイナリストに選ばれた日本発の PLEN2 は、スケートボードからサッカーまで何でもこなす完全オープンソースの小型2足歩行ロボットである。

「私は子供の時、ロボットアニメが大好きでした」と語るのは、プレンプロジェクトの代表取締役で設立者の赤澤夏郎氏だ。赤澤氏は日本のスキーリゾートで育ち、そこで働き始めた。ロボット会社を始めた転機は、同氏の父が小さな機械工場を息子に譲り渡したいと思ったことであった。

私はその工場を継ぐ気はありませんでしたので、代わりに、子供の頃からずっと大好きだった「ロボット」でビジネスを始めたいと思いました。子供たちのためのロボットを作りたかったんです(赤澤氏)

赤澤氏は2004年に同社を設立し、その2年後に PLEN1 ロボットをローンチしたが、小規模のハードウェア会社を操業し続けることは困難であった。

弊社には次のロボットを製作するための十分な資金がありませんでした。そこで、学校や大学などのロボティックのコミュニティに接触したのです。(赤澤氏)

その上、2008年の金融危機がロボティクスに対する消費者の意欲に悪影響を与え、5年もの間、このプロジェクトを完全に脇へ追いやる結果を招いてしまった、と同氏は述べる。

2012年、成長著しいメーカームーブメントの影響がやっと大阪にも及び、オープンソース開発者の豊かな研究分野と3Dプリント性能によって、ついに低コストのロボティクスが実現可能となり、PLEN2 ロボットが誕生した。

以前は、製品を製造するには工場に依頼する必要があり、それには多くの費用と時間がかかりました。しかし、メーカームーブメントのおかげで、今では3Dプリンターを使い、昼夜を問わずオフィスに居ながら手頃な価格で新しい試作品を作ることができるのです。(赤澤氏)

プレンプロジェクトは大学向けの教育プログラム、ハードウェア、ソフトウェアアプリ、そしてビジュアルプログラミングツールで構成されている、同社ロボットの包括的なカリキュラムの販売でマネタイズしている。しかし、そのプロジェクトは依然として、開発者ら自らが自宅でロボットを3Dプリンターで出力し、かわいい2足歩行ロボットのプログラミングをすることが可能な完全オープンソースである。

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キット一式の購入を希望する人向けには、コントロールボード、サーボモーター及びその他付属品を含む PLEN2キット も販売している。必要なのはドライバー一本だけで、ロボットのハードウェアを組み立てるのに専門知識や特別な工具は必要ない。このロボットは人間の動作を真似することができるため「ミラーロボット」とも呼ばれている。値段の一番安いキットは550米ドルで販売されている。

また、将来はロボットの小型化を目指しており、利用者はどこへ行くにもロボットを携帯することが可能になるだろう。

小型ロボットはスマートフォンに取って代わることになり、ボイスコマンド機能は強化されるでしょう。(赤澤氏)

赤澤氏は、それには2つの理由があると言う。まず、このロボットはオープンソースなので開発者を引き付けることができること。そして次に、ロボットのインターフェースが、利用者のカメラやセンサーデバイスによって製品とさらにつながりを持てることだ。

同社は木曜(3月31日)、中国の家電メーカー Goertek(歌尔声学)とのジョイントベンチャーをローンチした。PLEN Goer Robotics(本社・大阪)の経営は赤澤氏が行う。赤澤氏は、中国企業との協力により今年の生産コストは低くなるだろうと予測している。

<関連記事>

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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上海の文化遺産をバーチャル・リアリティで救うことはできるか?

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Lewei Huang 氏が育った石庫門(Shikumen)界隈には、彼が半年前に作ったデジタルレプリカの面影がほとんど見られない。れんが壁や西洋と中国の建築が融合した上海特有の20世紀の石庫門建造物はブルドーザーに押し潰され、一帯の各地区は瓦礫と化した。 「中国の歴史が深く刻まれた場所の多くは、きちんと記録に残されていません」と上海ニューヨーク大学(NYU Shanghai)3年生の Huang…

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Lewei Huang 氏が育った石庫門(Shikumen)界隈には、彼が半年前に作ったデジタルレプリカの面影がほとんど見られない。れんが壁や西洋と中国の建築が融合した上海特有の20世紀の石庫門建造物はブルドーザーに押し潰され、一帯の各地区は瓦礫と化した。

「中国の歴史が深く刻まれた場所の多くは、きちんと記録に残されていません」と上海ニューヨーク大学(NYU Shanghai)3年生の Huang 氏は語る。「それどころか、再開発されたり取り壊されたりしているのです」。

このプロジェクトは一種の保護活動です。古い記憶を保護するのです。(Huang氏)

Huang 氏による「Cardboard Shikumen」プロジェクトは、昨年取り壊しが決まった彼にとって親しみ深い地域のデジタルコピーである。同プロジェクトは、開発者がウェブブラウザでバーチャル・リアリティ・アプリケーションを作成するのに利用できる試行版 API、WebVRを用いて構築された。これはつまり、VR ヘッドセットや特別な機器を用いることなく、「Cardboard Shikumen」を Chrome で直接起動し閲覧できるということだ。

「[このプロジェクトは]技術的な専門知識や運用予算をほとんど必要としない、バーチャル・リアリティ・プレゼンテーションソフトのテクニカル・プロトタイプです」と Huang 氏は説明する。同氏は、バーチャル・リアリティ・コンテンツを作成し利用するためのコストを下げることで、より多くの人がバーチャル・リアリティ・プラットフォームに関わることができるようになると言う。

A screenshot of “Cardboard Shikumen.”
Cardboard Shikumen のスクリーンショット

「Cardboard Shikumen」の使用感は Google Street View と似ているが、より没入型だという点が異なる。動き回るには、視聴者は一帯に設置された矢印をクリックしなくてはならない。各フレームの視界は360度で、スマートフォンを動かしたり、マウスをクリックしたりドラッグしたりすることで回転できる。同プロジェクトは、木製の腰掛けでひと休みしている老婦人、雑談する住民たち、日に干されている洗濯物など、彼が慣れ親しんだ石庫門界隈の日常的な光景をとらえている。

VR、とりわけ WebVR は、現在開発中です。一から始めなくてはならないことがたくさんあります。従うべき確立したプロセスや一連の手順といったものがないのです。(Huang氏)

「Cardboard Shikumen」内のシーンを作成するため、Huang 氏は6つの Xiaomi Yi カメラ(小蟻運動相機)と3D プリントしたケースを使い、360度の視野をもつカメラを自ら装備した。彼は一帯を歩き回り、考案したカスタムメイドの機器を使って様々な場所を撮影した。その後、Autopano を使って写真をつないでパノラマにしたものが「Cardboard Shikumen」のコンテンツとして使用されている。

Huang 氏は、2015年5月から7月にかけて断続的にプロジェクトに取り組み、約2か月かけて「Cardboard Shikumen」のベータ版を作成した。一帯が完全に取り壊された後、彼は同じ道筋をもう一度記録するつもりである。そうすることで、「Cardboard Shikumen」の視聴者は石庫門取り壊しの前と後を体験できる。

One of the panoramas Mr. Huang stitched together for “Cardboard Shikumen.”
Huang 氏が Cardboard Shikumen 用につなぎあわせて作ったパノラマの一つ

上海市の City Archives(市の保存記録)によると、1949年から1990年代後半にかけ、徐匯区の石庫門一帯だけでも、268万平方メートルから25万平方メートルへと縮小した。北京でも、伝統的な胡同地帯が何千も破壊され、新規不動産が建設された。昨年3月、ISIS(イスラム国)によって破壊された古代遺物を保護する目的でローンチされた Project Mosul などの中国国外のイニシアチブと同様、バーチャル・リアリティと3Dモデリング技術がこうした文化遺物を救う手段となるかもしれない。

それでもなお、バーチャル・リアリティは文化遺産を保護する上で完璧な解決策とは言えない。「写真をいくら撮ろうと、モデルが視覚的にどんなに忠実であろうと、現物とは違います」と Huang 氏は語る。

このプロジェクトは、消えつつあるこうした建築物の「埋め合わせをする」方法でしかないと感じています。本当に保護するには、こういったプロジェクトを行うだけでなく、現物を保護する必要があります。(Huang氏)

Huang 氏が慣れ親しんだ石庫門一帯が分岐する主要道路では、まだ取り壊しの兆しは見えない。露天商が歩道に真っ青な防水シートを広げて新鮮な魚の山を売りさばき、別の商人はカゴに生きたハトを入れて売り歩いている。店頭に老婦人が集まり、早口の上海語でにぎやかにおしゃべりをしている。

これが上海の通りの一般的な生活、Huang 氏がバーチャル・リアリティで守ろうとしている「日々の暮らし」である。

Lewei Huang’s custom panoramic camera
Lewei Huang 氏がカスタマイズして作ったパノラマカメラ

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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米国発の会員制DIY工房「TechShop」が日本上陸!2月赤坂にプレオープン予定の施設の様子をレポート

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アメリカで現在8店舗展開する会員制オープンアクセス型DIY工房「TechShop」が、富士通と提携して、日本に上陸。2016年2月18日より東京・赤坂のアーク森ビルにて、プレオープンする。 TechShopは、レーザーカッターや3Dプリンター、裁縫用ミシン、木材や金属の加工機器などの本格的な工作機器を備えることにより、アイデアをカタチにすること(プロトタイピング)を容易にし、米国におけるメイカーム…

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アメリカで現在8店舗展開する会員制オープンアクセス型DIY工房「TechShop」が、富士通と提携して、日本に上陸。2016年2月18日より東京・赤坂のアーク森ビルにて、プレオープンする。

TechShopは、レーザーカッターや3Dプリンター、裁縫用ミシン、木材や金属の加工機器などの本格的な工作機器を備えることにより、アイデアをカタチにすること(プロトタイピング)を容易にし、米国におけるメイカームーブメントの潮流を創った。

その日本拠点のプレオープンに先立ち、1月26日から30日まで内覧会を開催、その様子の一部を紹介する。

TechShop Tokyoの敷地面積は1200m、最大天井高は8mという巨大な空間に米TechShopと同等の50種類(3Dプリンタ、レーザーカッター、マシニングセンタ、溶接、CNC、ワイヤーカッター、基板加工機、ミシン、UVプリンタ、ペイントなど)もの工作機器を設置する。

スペース内には、金属加工、溶接、木工、樹脂加工、テキスタイル、カラーリングなどのエリアが設けられている。

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合計5台のレーザーカッター(トロテック/Speedy300とSpeedy400)を備える。レーザーカッターは最も利用率が高いマシンのうちのひとつだ。

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ローランドDGのUVプリンター(LEF-20)が一台。立体物にもプリントできるUV硬化インク使用のダイレクトインクジェットプリンター。木材、アクリル、金属など、さまざまな素材への印刷が可能。

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3Dプリンターは全部で4台設置(ストラタシス Replicator、マイクロボード H800 AFINIA)され、はんだこても完備。

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金属に彫刻ができるメタル彫刻機。(ローランドディージー MPX-90)

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テキスタイルエリアには、勝て用から工業用のミシン、刺繍用ミシン、キルトマシン、編み機などが揃う。

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布など、様々な素材に印刷できる大判プリンター(武蔵工業 VJ1617)。

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ブラザーの刺繍ミシン(PR1000e)。

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とにかく広いワークスペースも用意されている。

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木工エリアには、大きなCNCマシン(ShopBot)、マシニングセンタ(木工用)、CNC木工旋盤、ボール盤、バンドソーなどが備えられている。その気になれば本格的な家具も制作できる。

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複雑な3次元加工を実現するCNCターニングマシン(旭川機械工業製)で、複雑な木工小物も制作できる。

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金属加工エリア。フライス盤、旋盤、マシニングセンタ(金属用・樹脂用)、ボール盤、バンドソー、ワイヤーカット、ベンダー、グラインダー、メタル彫刻、定盤を備える。

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道具や素材などを収納できるロッカーも完備。製作中の作品などを置いておける(有料)。個人会員だと、月間利用で18500円(年間198000円)、1日利用で4500円。

その他入会手数料(3000円)や、工作機器の基礎トレーニング受講料(4000円)などが設定、法人会員コースもある。営業時間は10時〜23時。

2016年2月18日より東京・赤坂のアーク森ビルにて、プレオープン。グランドオープンは4月1日を予定している。

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グローバルFABアワード「YouFab 2015」の結果が発表、グランプリは3Dプリントワンピース

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デジタルファブリケーション領域の優れた挑戦を表彰するグローバルクリエイティブアワード「YouFab Global Creative Awards 2015(YouFab)」の受賞作品が発表された。 YouFab は、デジタルファブリケーション領域の価値向上と活性化をクリエイティブという側面から推進しているアワードで、主催はFabCafeグローバル、今回が4回目の開催となる。 26カ国から152作品…

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デジタルファブリケーション領域の優れた挑戦を表彰するグローバルクリエイティブアワード「YouFab Global Creative Awards 2015(YouFab)」の受賞作品が発表された。

YouFab は、デジタルファブリケーション領域の価値向上と活性化をクリエイティブという側面から推進しているアワードで、主催はFabCafeグローバル、今回が4回目の開催となる。

26カ国から152作品が集まり、受賞はグランプリ、準グランプリが各1作品、ファイナリストが23作品となった。

今年はファッション分野の多様化が顕著で、3Dプリントによるワンピース、自動化された編み機からカスタムできるジュエリー、アクセサリーのハックまで、デザイン、技術、ファッションを融合しようとするアイデアが多く見られた。

また、アルゴリズムを用いる5軸CNCマシンや、ソニーの「MESH」、3Dプリンターなど、マシン分野からも、テクノロジー的にもアイデア的にも秀でた作品が数多く選出されている。

グランプリは、米国のデザインスタジオnervous systemによる、3Dプリンティングで作成した「Kinematics Dress」だ。

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何千もの異なる形の三角形のパネルが蝶つがいによって繋がれ、一つ一つのパネルが繋がった状態でプリントされるため、組み立てる必要はない。これまでの布地とは異なり、堅さ、ドレープ、柔軟性、多孔性、パターンを様々に変化させることができ、着る人のサイズにぴったり合うドレスがプリントされるという作品。

また準グランプリには、チリのDiego Pinochet氏による「Making Gestures: A personal Design and Fabrication system」が選ばれた。

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学習アルゴリズムを使い制御する5軸CNCマシンで、ユーザーの動きに合わせて、リアルタイムでデザインや製作を行える人工頭脳学的システムを備える。ジェスチャーを使用し、頭脳や身体と、デザインツールのリアルタイムなインタラクションを目指している。

今回審査を行ったのは、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏、クリエイティヴキュレーターの四方幸子氏、ライゾマティクス 代表取締役社長の齋藤精一氏、ArchitectkiddプリンシパルのLuke Yeung氏、プロダクトデザイナーのLuki Huber氏、Zeczec共同設立者のQuake Hsu氏の6人。

グランプリ作品1点、準グランプリ作品1点、ファイナリスト作品23点(日本からの作品11点)を選出した。全受賞作品は公式サイトから見ることができる。

受賞作品は、2016年1月23日から2月8日までの間、東京渋谷のFabCafe Tokyoで展示される。また、1月22日には授賞式と展示会オープニングレセプションが開催される予定だ。

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パーソナライズ医療の分野で次に来るのは「3Dプリント薬」

Hitesh Badgujar氏は、Aranca社に所属するテクノロジーおよび特許専門調査分析アナリストである。 この10年間、3Dプリント技術は想像と製作の境界をあいまいにしてきた。 マサチューセッツ工科大学(MIT)で開発されたコンピューターによる3Dプリント技術により、オーダーメイド医療における新たな刺激的かつ画期的な可能性が見えてきた。 MITが様々な分野における3Dプリント特許技術の使用…

Hitesh Badgujar氏は、Aranca社に所属するテクノロジーおよび特許専門調査分析アナリストである。

via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “e-Magine Art“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

この10年間、3Dプリント技術は想像と製作の境界をあいまいにしてきた。

マサチューセッツ工科大学(MIT)で開発されたコンピューターによる3Dプリント技術により、オーダーメイド医療における新たな刺激的かつ画期的な可能性が見えてきた。

MITが様々な分野における3Dプリント特許技術の使用を認可する中、米国に拠点を置くAprecia Pharmaceuticals社は2007年、製薬目的で使用する3Dプリント技術の独占権を獲得した。

Aprecia社は同技術の実用化に成功し、てんかん患者の発作を治療する薬品である、世界初の3DプリントSpritam(化学名:Levetiracetam)を開発した。パウダー状にした同薬品を液状物質で挟み、光顕レベルで結合させることで作られるこれらのプリント錠剤は、非常に多孔質で液体に触れると素早く溶解する。これがまさに他に類のない特性であり、突然の発作への対処という主要な目的に対して著しい効果を示す特性でもある。

高用量で速く消散する錠剤の製造が3Dプリントで可能となり、医者は信頼のおける薬剤のカスタマイズを提供できるように、また投薬の即効性と強度を完全に管理できるようになった。

複雑な形状のプリントを通して錠剤の表面を変更することで、放出される投薬の強度だけでなく放出時間も調整できるようになった。これは投薬の安全性を高めるだけでなく、効果を大幅に上げるのにもおおいに役立つ。

製造業者はまた、カスタマイズされた用量強度、錠剤の大きさ、味、色などを選択することで、個人の選択に合うよう製品を変更することもできる。医薬品をパウダー形状で簡単に入手できると仮定した場合、患者は扱いづらい錠剤、カプセル、あるいは液剤をやめ、摂取がずっと容易な薬を選ぶことが可能である。また幼児や身体障害者など、嚥下が困難な患者用の投薬を調合する場合、カスタマイズ性は特に役立つ。

オーダーメイド医療と患者の状況に応じた治療が’求められるこの時代において、3Dプリントは重要な突破口を象徴する技術だ。

またこの画期的技術により、製造者は製造および流通プロセスをより顧客に合わせることができる。設計や操作上の効率性が常に向上する中、様々な大きさや性能のプリンターを患者にとって都合の良い適切な場所に展開することができる。病院や薬局は施設内で処方薬を作り、大量のジェネリック医薬品を仕入れる必要もなくなる。また特殊な調剤や普段はあまり処方されない調剤を施設内で製造することができ、患者の待ち時間も大幅に減るだけでなく、時間的制約のある危機的状況においてより多くの生命を救うことすらできるかもしれない。サプライチェーンがこのような柔軟性および拡張性を手に入れることで、供給者と消費者は共に、運用の効率化がもたらす低コスト・低価格の恩恵を受けることができる。

3Dプリントが当たり前になり、患者が自分用の薬を自宅でプリントすることすらできるようになるという予測もある。

理論上は、同技術を用いることで使用者はすべての大きさ、形状、用量の薬品を簡単にプリントできるようになる。必要となるのはダウンロード可能な処方箋(レシピ)だけであり、これは基本的には、プリンターが読み込みその通りに動作するための一連の指示書である。自宅のプリンターに必要な主剤が補充されている限り、使用者は必要な全ての製剤を合成できる。料理本のレシピを使うのと同じようなもので、仕事量が半分程度だという点だけが異なる。

たとえば、初めてのクッキーを焼くのに必要なプロセスは次のようなものだ。

  1. 好みのレシピを探す
  2. コピーをダウンロードする
  3. プリントする
  4. レシピ通りに作業する
  5. 焼く
  6. 後片付けをする

一方で、初めての調剤処方箋を1回分作るには、次のプロセスを踏む。

  1. 好みの処方箋(レシピ)を探す
  2. コピーをダウンロードする
  3. プリントする

クッキーを1焼き分作るよりも薬を1回分作る方が簡単となると、首をかしげてしまうのも仕方ないだろう。

現在の医薬品製造プロセスでは不正を働く余地がほとんどないが、3Dプリント技法を導入した場合は、その可能性に対する懸念がいくらかある。また改変されたプリンターで偽造薬品が作られたり、違法薬物を合法薬品として偽装するために使われたりする可能性もある。

このような技術は影響を及ぼす範囲が広く、またグローバルな性質をもつため、責任の境界線もあいまいである。

製薬会社は、自社製品の処方箋や規制基準が順守されていることを確実にする必要がある。人的ミスや妨害行為から保護できる、確実なプリントプロセスを確保しなくてはならない。また、悪徳団体が有標製品に対してリバース・エンジニアリングを試みた場合に備え、装置の安全性を十分に確保する必要もある。医薬品規制当局もまた、大量に出回る3Dプリント薬品向けに、先例のない承認ガイドラインを制定する必要が出てくるだろう。

さらに重要なのは、技術的なミスや誤動作の結果、調剤が不正確にプリントされ、患者に被害が生じたり、死亡したりした場合は誰の責任になるのかということだ。

責任は処方箋を作成した製薬会社にあるのか、処方箋をプリントした患者にあるのか、あるいは薬の製造会社やプリンターの管理会社といった仲介者にあるのか。

3D医薬品プリント技術が一般化する前に対処しなくてはならない重要な課題はいくつかあるが、利益を考えると対処する価値は十分あると言える。

これは医薬品製造業界に革命をもたらす技術であり、サイエンス・フィクションさながらの可能性を秘めている。薬の混合剤を一定間隔で放出するような錠剤が登場すれば、丸1日分の用量を、簡単に飲み込める1粒の錠剤にまとめることができるかもしれない。あの古い錠剤ケースを捨てるよう、おじいちゃんに伝えよう。必要なすべての成分を1粒の錠剤で、手間も飲み忘れもなく摂取できるのだ。また珍しい病気の治療に役立つ特別な錠剤の可能性も想像してみてほしい。現在のコストのほんの一部で、処方箋と個人の好みに合うように調整された錠剤の開発と製造が可能になるのだ。

もしかすると、何にでも適用できる錠剤がいつの日か登場するかもしれない。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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