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AIoTで、次の大きな波に乗ろうとする台湾スタートアップDT42

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スマートデバイスが生活のあらゆる側面に浸透する、インテリジェントなモノの時代が訪れようとしている。AI が進化を続け IoT デバイスが急増する中で、これら柔軟な2つのテクノロジーは融合し、AIoT(Artificial Intelligence of Things)と呼ばれるものを形成している。これを次世代のIoTと呼ぶ向きもある。 強引に思えるだろうか? そんなことはない。 家電製品、工場、ヘ…

Image credit: salman2 / 123RF

スマートデバイスが生活のあらゆる側面に浸透する、インテリジェントなモノの時代が訪れようとしている。AI が進化を続け IoT デバイスが急増する中で、これら柔軟な2つのテクノロジーは融合し、AIoT(Artificial Intelligence of Things)と呼ばれるものを形成している。これを次世代のIoTと呼ぶ向きもある。

強引に思えるだろうか? そんなことはない。

家電製品、工場、ヘルスケア機器、監視カメラ、スマートフォン、ドローン、自動運転車などはすべて、AIoT 技術の導入が始まっている。

例えばシャープは AIoT 対応キッチンの販売を開始した。購入者らはキッチンに向かって、調理時間やカロリーの設定などを話しかけたり相談したりすることができる。キッチンは以前に調理した際の記録や、季節と天候などをもとに、利用者に提案を行うことができる。また、その家族の食べ物の好みや食習慣などを自己学習する仕組みだ。

Gartner の予測では、2021年までに1時間に100万台の IoT デバイスが販売されるようになるという。お気付きの読者もいるかもしれないが、それらデバイスは人工知能を搭載し、自身の脳を使って学習し思考するオブジェクトのネットワークを形成するようになる。スタンドアロンのスマートデバイスから、互いにコラボレーションを行うインテリジェントなモノの複雑なネットワークへとシフトすることになるが、これこそが AI が必然的に引き起こす未来なのだ。

大手企業らは絶好の機会に備える

AIoT はまだ始まったばかりの段階だが、その用途は計り知れないビジネスチャンスをもたらすと見られている。中国の大手テック企業である Baidu(百度)、Alibaba(阿里巴巴)、Tencent(騰訊)=BAT などを始め、多くの国際企業らは、やがて来る AIoT 技術の発展に備え、重要な位置を占めるべく行動を起こし始めている

Xiaomi(小米)と Baidu は昨年11月、AIoT 市場への進出に向けた協業を発表した。北京で開催された AIoT サミットでのことで、AIoT 分野への展開の加速というコミットメントが表明された。

エッジコンピューティングの台頭

AI の時代を迎え、ますます多くのデータが発生し、また、多くの発生源から収集されるようになっている。発生源としては、スマートフォン、ドローン、センサー、ロボット、自動運転車などが挙げられる。クラウドコンピューティングは、これらのデバイスとアプリケーションからの処理ニーズが寄せられ、過負荷の状態になっている。エッジコンピューティングという新たなパラダイムが台頭しているのはこのためだ。エッジコンピューティングでは、データをデータセンターやクラウドに送信せず、発生源に近い所で処理が行われる。計算処理をネットワークの周辺部(エッジ)に移し、より多くの重要なデータの処理と解析をリアルタイムで行えるようにする。VR、IoT、自動運転車などの用途が広がっていく上で、こうした処置は必要不可欠だ。

データ処理を分散するこの手法は目新しいものではないが、近年、レイテンシーが問題となるにつれて需要が伸びてきている。

道を切り拓く台湾のスタートアップ

DT42 CEO Tammy Yang(楊琬晴)氏
Image credit: Zeroth.AI

AI を支えるコア技術であるディープラーニングが幅広い分野に適用されるようになった2015年、国立台湾大学の研究者グループは流行の裏に潜む問題点に気づいていた。

エンジニアリングの見識がある私たちにとって、機械学習のプライバシー面の懸念は最重要課題でした。ディープラーニングは計り知れないほどの量の計算能力とデータを必要とします。可視か不可視かを問わず、あらゆるデータがクラウドにアップロードされています。

台湾のディープラーニングのスタートアップである DT42 を共同設立した Tammy Yang(楊琬晴)氏は TechNode(動点科技)に語った。事実、クラウドコンピューティングでは、必然的にネットワークを通じてデータがクラウドに送信される。これはプライバシーとセキュリティ面での深刻な懸念を生む危険性がある。しかしながらエッジコンピューティングは困難で複雑なため、

現状ほとんどのAI適用例ではデータの処理と解析をクラウドコンピューティングに依存しています。しかし、これは変える必要があると私たちは認識していました。

埋まらないギャップを認識した DT42 は、AI 技術をローカルなデバイスと装置に適用・展開するプロセスを簡素化する決断をした。これにより、より多くの企業が採用しやすくなる。しかしどうやって?もうお分かりだろう。そう、エッジコンピューティングだ。簡単に言うと、ディープラーニングの計算モデルをエッジデバイスに押し込み、AI を簡素かつ安価にした。これによりクラウドとエッジコンピューティングは協業し、負荷を分担し合うことができる。したがってネットワークレイテンシーは低減し、データの管理コストは抑えられ、潜在的なセキュリティリスクも最小化される。同社はすでにアジア初の AI アクセラレータである Zeroth.AI からも2016年に評価されている

アジアの競争優位

過去2年、AIoT は特に台湾においてホットな話題であった。これには理由がある。世界のハードウェア製造ハブであるアジアに位置するため、台湾は AIoT の推進に適した環境なのだ。

事実、ハードウェア製造に関するアジアの卓越した技能は、AI 革命においてもユニークな競争優位となっている。DT42 が台湾でチームを結成しようと決めたのも、AIの将来の重要な部分を担うエッジコンピューティングの大部分が、AI のハードウェアとソフトウェアの組み合わせに左右されるからだ。

アジア、特に中国と台湾はハードとソフトの統合に特化しています。

Yang氏は述べる。ハードウェアの生産工場の多くは中国と台湾地域に位置している。

台湾に本社を構える理由は、地域で需要が高まっていることだけではありません。才能ある人材と適切なハードウェアのパートナー企業を見つけやすくなるという意味でも、自然と利点がもたらされるのです。

台湾に拠点を置く同社は、中国、香港、日本など、似たようなビジネスの機会があると同社が考える他のマーケットにも進出しようとしている。

波に一番乗り

AIoT の採用は様々な業界で見られるようになってきたが、一部には早くもディスラプションを迎えている業界もある。DT42 は、監視と製造という2つの業界からの需要を認識している。これら2つは、おびただしい量のデータを生んでいる業界だ。

数多くの AIスタートアップが監視分野にフォーカスしている。監視カメラやモーションセンサーなどから収集されたデータを通じ、監視システムや顔認識技術、そしてデータ分析能力の機能を向上する上で、AI が大きな可能性を持っているためだ。

カメラとセンサーが広く導入されている製造業界は、ファクトリーオートメーションの分野で AIoT に期待している。最近では Andrew Ng(吳恩達)氏の Landing.ai が Foxconn(鴻海/富士康)との提携を発表し、製造業に AI を導入することとなった。

Foxconn(鴻海/富士康)の Terry Gou(郭台銘)氏と、Landing.ai の Andrew Ng(吳恩達)氏
Andrew Ng 氏の Medium から

波の行く先は一体どこなのか?

これまで相当の期間に渡り、AIoT の時代が到来する予兆があった。しかしまだ来ていないのはなぜだろう? Yang 氏は、AIoT の発展を阻害する3つの要因を指摘する。

  1. データ収集には時間が必要。一例を挙げるなら、農業分野で利用されるIoT技術とセンサー類は、最低でも四季それぞれのデータを収集する必要がある。さらに具体的で有意義なデータを採集するには、追加で何年分ものデータが必要だ。膨大な量のデータを収集する時間は短縮することが不可能だ。
  2. AIoT が収集するデータは巨大。このデータを読み取り、分析し、理解する技術が求められる。様々な利用方法が登場してきており、クラウドコンピューティングもその一つだ。しかし現状では、技術でできることには限界がある
  3. 目下利用可能なデータ解析のツールは、AIoT を全速力で推進できるほどにはまだ成熟していない。

IoT はエッジコンピューティングを推進する上で重要な要素だが、エッジコンピューティングが AIoT の展開に欠かせないのもまた事実だ。

技術的な視点から言えば、AI 開発の大きな飛躍が起きることでしょう。

Yang 氏は言う。

私たちは至極楽観的です。AIoT の利用は3年から5年で成熟期を迎えるでしょう。適用例は顕著に増加するはずです。

変化を受け入れて

AIoT とエッジコンピューティングは依然として登場したばかりの段階に思えるかもしれないが、状況は変わりつつある。

初期の段階では、エッジ AI の概念を理解してもらうことは困難でした。当時、考え方と重要性が広く認知されていなかったのです。

今日のクラウドコンピューティング技術には限界があり、増加するAIの利用ニーズに対応することができないことが業界に徐々に認知されるにつれ、新たな技術のトレンドが理解されるようになった。

幸運にも、最も困難な段階は通り過ぎました。Nvidia、Intel、Qualcomm といった大手テック企業らは揃ってこのコンセプトを推進しています。エッジ AI への反応が顕著に変化したのは2017年後半のことです。それ以来、政府、顧客、投資家などへの説明は非常に容易になりました。

AIoT は、台湾、中国、そしてアジアのその他の製造ハブにとって重要な意味を持つ。ハードウェアセンサーや処理ユニットなどの大きな需要を生み出すであろう。新たな需要を喚起することはほぼ間違いなく、製造業に加え、台湾の中小のハードウェア製造企業らの成長の原動力となるだろう。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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