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拡張現実(AR)に活路見出すソーシャル、それは「SnapChat」

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ここ数年で「Snapchat」は世界で最も人気のある拡張現実(AR)ツールの1つとなり、顔や建物に特殊効果をリアルタイムで施す写真・動画フィルター機能を追加してきた。そして11月21日、親会社である「Snap」と米モバイル会社「Verizon」は、SnapchatのAR機能活用のために業務提携を結び、Verizonが手掛ける5Gのモバイルネットワークを積極的に利用していくと発表した。これはVeri…

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Above: The new version of Lens Studio includes 16 more Landmarker locations.
Image Credit: Snap

ここ数年で「Snapchat」は世界で最も人気のある拡張現実(AR)ツールの1つとなり、建物に特殊効果をリアルタイムで施す写真・動画フィルター機能を追加してきた。そして11月21日、親会社である「Snap」と米モバイル会社「Verizon」は、SnapchatのAR機能活用のために業務提携を結び、Verizonが手掛ける5Gのモバイルネットワークを積極的に利用していくと発表した。これはVerizonが語ったビジョンを実現するチャンスとなる。

この提携により、SnapはVerizonの「5Gオフィシャルイノベーションパートナー」となり、開発者はVerizonの5Gラボでテスト機器を駆使できるようになった。また、非常に高い帯域幅、低遅延、およびネットワークが提供する最先端コンピューティングリソースへのアクセスを有効活用し、次世代5G体験サービスの構築ができるようになる。加えて、Verizonが販売している5G対応のAndroidスマホにSnapchatが事前インストールされる予定だ。

Verizonは「Snapchatを通じてライブイベントをユーザーに体験させる新たな機会」に焦点を当てようとしているとのこと。これは、現実の特定箇所にデジタル効果を追加するAR機能「Landmarkerフィルター」を開発するSnapの最近の取り組みと合致している。

また、「コンサートの舞台裏にファンを招待したり、試合中に座席からユニークなスタジアム体験を観客に提供したりする」ために、新しいポータルレンズを開発する予定だという。Snapの最高戦略責任者であるJared Grusd氏は、次のように述べている。

高帯域体験における大きな進歩は、ARの未来をさらに加速させます。クリエイティブで革新的な5G体験の開発をSnapchat上で行うことで、業界を前進させることができるのはないかと非常に期待しています。

ユーザにとって、今回の提携で生まれる最も魅力的なメリットはSnapが開発するARグラス「Spectacles」となるだろう。今までSpectaclesは主に写真撮影に焦点を当てられていたが、Verizonとの提携により、FacebookAppleでまだ始まったばかりのARグラス開発の取り組みに匹敵する、より素晴らしいAR機能を搭載したウェアラブルデバイスになるかもしれない。5Gを備えたウェアラブルデバイスは、5G規格のアップデート5Gチップの小型化により、今後5年間で一大市場になると期待されている。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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Appleが秘密裏に進める領域は「AR」と「IoT」ーー2020年のAppleハードウェア戦略を紐解く

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ピックアップ: This screenshot might be the first implicit confirmation of Apple’s AR headset ニュースサマリー:AppleがARヘッドセットの開発プロジェクトを進めている噂は兼ねてからリーク記事として報じられてきた。過去数年、同社はAR技術の特許を取得し、アイデアを練ってきたのは各メディアの報道を見ると明らか。 事実、…

ピックアップ: This screenshot might be the first implicit confirmation of Apple’s AR headset

ニュースサマリー:AppleがARヘッドセットの開発プロジェクトを進めている噂は兼ねてからリーク記事として報じられてきた。過去数年、同社はAR技術の特許を取得し、アイデアを練ってきたのは各メディアの報道を見ると明らか。

事実、Tim CookはARをスマートフォンと同規模の非常に大きなイノベーティブなアイデアと考え、2017年には1,000人規模でエンジニアがこの技術に取り組んでいると報じられた

Bloomberg』や『CNET』は、Appleが2019年内に生産準備を整え、2020年には出荷できるような発表をするだろうと予測。先日の発表会を見ればこの予測は外れたことになったが、ARヘッドセット開発の確たる証拠リークが今回出回った。

iOSディベロッパーであるSteve Troughton-Smith氏(Twitter名)のつぶやきでは、開発途中のAR機材のテスト利用手順が載っているスクリーンショットが投稿されている。このつぶやきからApple社内でARヘッドセットの市場投入へ向けた開発が本格化していることが分かる。

 

https://twitter.com/stroughtonsmith/status/1171571825475825666?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1171571825475825666&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.theverge.com%2F2019%2F9%2F10%2F20860023%2Fapple-ar-headset-starboard-garta-luck-franc-holokit

ファイル名は「StarBoard」、プロジェクト名として「Garta」と名付けられている。iOS 13にビルドされており、もはや本格リリースの半ばに差し掛かっている状態だと言える。リークされたスクリーンショットからウェアラブル端末であることが想像できるという。

ARデバイスに加えて小型トラッキング端末の開発を思わせる証拠も見つかった。iOS 13のコードを調査している中で、「中央にAppleロゴのある小さな円形タグ」の画像が明らかになった。さらにFind Myアプリ内に、恐らくタグで物事を追跡するための新しい「アイテム」タブが発見されたとのこと。

こちらも兼ねてから噂をされているAppleの新製品だと思われる。Apple Storeで販売されている忘れ物防止トラッキングIoT「Tilt」を真似た製品であると予想されている。

「5G」と「サービス企業化」

話題のポイント: 「AR」と「IoT」の開発情報からAppleが描く2020年以降の製品ロードマップが垣間見れます。大きく2つ。

1つは5G時代での覇権。来年の秋には5G対応のiPhoneも市場投入するとされるApple。いよいよやってくる高速通信社会ではARやVRが遅延のストレスなく利用できる環境が整います。そこで新時代の覇権を握ろうとしているのがAppleです。まさしくAR端末は5G時代を代表するハードウェアになるでしょう。

Appleの常套手段なのが競合製品が投入されるのを分析してから後発で一気に巻き返す戦略。「AppleWatch」はFitbitを、「HomePod」ではAmazon Echoシリーズを追いかけるように市場参入しました。

それではARやMRグラス端末市場はどうでしょうか。Snapの「Spectacles」やMicrosoftの「Hololens」、「Magic Leap」、近々リリースされる「nReal」などが多数出揃っています。

各社とも絶対的な市場解を持っていない点は、時計型ウェアラブル端末や音響デバイスの市場創成期と似ています。まさにAppleが製品投入を考え始める時期です。

こうした市場環境を分析した上で、圧倒的に洗練したUXを提供する用意ができた時点で市場シェア獲得に走ると考えられます。この市場投入時期で最適なのが5G対応端末が登場する2020/2021年辺りであるとも考えられるでしょう。

2つ目はAppleのサービス企業化。つい先日、Appleの製品発表会が開催されました。ゲームサービス「Apple Arcade」や、動画ストリーミングサービス「Apple TV+」が発表されました。

4.99ドルという価格や、Appleハードウェア製品を購入すると1年間無料で使えるApple TV+の顧客獲得戦略は、Appleがサービス企業へと変貌を遂げている証拠と言えます。

他市場ですが自動車製造の限界を早々に予測し、サービス戦略を基軸にしたFordと同様、Appleもハードウェアからサービス企業へと変貌を遂げていると言える発表でした。

AR端末のような新時代の全く新しい領域ではない限り、競合企業にすぐにハードウェア開発技術はすぐにキャッチアップされてしまいます。そこで既存市場で戦い抜くために多数のサービスから収益化を目指しているのがAppleです。

さて、ここでIoTの話に戻りましょう。筆者も使っている忘れ物トラッキングIoT「Tile」は1個20ドル程度の低価格IoTで、1年で利用電力がなくなるため買い換える必要があり、サブスクIoTとも呼べる代物です。ちなみに累計調達額が1億ドルを超える大型スタートアップです。

Appleが開発中であるとされるIoTも同様の仕様になると考えられます。低価格で販売可能なため、前述したApple TV+の1年無料サービスと同様のキャンペーンを通じて大量に市場に流通させることもできるでしょう。

iPhone、iPad、Macbookを購入すれば無料で付いてくる「忘れ物防止サービス」という謳い文句で小型IoTを配布することが想像できます。サービス企業としてのAppleにとって、最適な端末カテゴリーであると言えます。もはやIoTではなくサービス事業の一貫としての利用価値が非常に高いのです。

このように「5G」と「サービス企業化」の2つが、Appleが考える2020年以降のロードマップの中心思考になることは間違いないと感じます。

Image Credit: Laineemaloca

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“AR時代の任天堂を目指す” ーー ARエンタメ「Graffity」が新作シューティングゲーム「HoloBreak」を期間限定公開

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8月26日、ARエンタメスタートアップ「Graffity」が新サービス「HoloBreak」を発表した。同ゲームは2対2で戦うARシューティングバトル。8m × 5mのフィールドをリアルに動き回りながら、相手プレイヤー及びチームのタワー拠点を撃ち倒すゲームだ。 今回は9月7日と8日の2日間に渡り、横浜駅直通の複合型体験エンターテインメントビル「アソビル」の3Fにて体験会ができる、期間限定の立ち上げ…

8月26日、ARエンタメスタートアップ「Graffity」が新サービス「HoloBreak」を発表した。同ゲームは2対2で戦うARシューティングバトル。8m × 5mのフィールドをリアルに動き回りながら、相手プレイヤー及びチームのタワー拠点を撃ち倒すゲームだ。

今回は9月7日と8日の2日間に渡り、横浜駅直通の複合型体験エンターテインメントビル「アソビル」の3Fにて体験会ができる、期間限定の立ち上げとなる。

Graffityは高校生をターゲットにして作ったARシューティングアプリ「ペチャバト」を開発しているスタートアップ。本記事をリリースしているタイミングで1,000件以上のレビュー、4.5以上の星評価がApple Storeに上がっている人気アプリ。

2018年4月に8,000万円の資金調達を行なっており、それ以降では2作目のサービス立ち上げとなる。公式リリースは来年以降を想定しているという。

最近ではGraffityのように、ARシューティングを切り口にしたゲームアプリが多数登場してきている。具体的には位置情報を使った戦略ゲームが数登場してきている印象だ。サービス事例を2つ挙げたい。

1つは「Atlas Empires」。28日に175万ドルの調達を発表したばかりのゲーム。Pokemon GoとClash of Clansを掛け合わせたような陣取りゲームとなっている。

自宅近くに基地を作り、大きく成長させて強くしていく内容だ。近所の人たちと仲良くなったり、戦いながら進めていく。Pokemon GoやHarry Potter 魔法同盟で体験できる現実世界にキャラクターを投影させるAR効果はないが、位置情報と連携させた陣取り合戦が売り。

投資家のメンツは非常に豪華。米国版2チャンネル「Reddit」のCOOや、TikTokのCBO(Chief Business Officer)が名を連ねる。

こうしたAR戦略ゲームは今後も増えてくると予想されるが、今回リリースされたHoloBreakでは具体的にどのような点にこだわり作り込んだのか。同社代表取締役の森本俊亨氏に聞いた。

(森本氏)ペチャバトを通して得られた学びから、ARマルチプレイ体験は「動く」と「コミュニケーション」が重要であることがわかりました。

HoloBreakでも動くことが試合においてキーポイントになるように体験設計をしています。また、各プレイヤーの武器や役割が違う仕様のチーム戦であるため、コミュニケーションを取りながら連携しないと勝てない設計も施しています。

ペチャバトリリース以降、プロトタイプを何個も作り、ユーザーヒアリングを通した検証を繰り返しきて、ようやくコンセプトを実現する良いものに仕上がってきたという感覚があります。

HoloBreakはペチャパトで得られた知見を基に開発されたアプリ。現実世界でユーザーを動かし、スポーツ体験にも似たチームコミュニケーション重視の感覚を大切にした設計だという。

先述したAtlas Empiresのように「頭を働かせる」ものではなく、「身体を動かす」軸に振っている点で差別化が巧みにできている印象だ。こうしたユーザー自身を楽しみながら動かすインセンティブ設計は定量だけでなく、定性データに基づいた直感的な楽しさを追求しなければいけない。この点、他社が参入してきても容易に真似できない優位性要素をGraffityは多く抱えていると感じる。

もう1つは「Holoscape」。コンセプトはまさにHoloBreakと似ている。チームに分かれて街中でARシューティングを楽しめるゲームだ。公式リリース日は未だ明かされていない模様。

開発会社は3Dマップを生成するクラウドシステムを作る「Scape Technologies」。2016年にロンドンで創業し、累計800万ドルを調達しているARスタートアップだ。

同社は2D画像から3D情報を作り出す技術を保有している。現実世界の情報に基づいた3Dマッピングデータをクラウド上に保存する技術「ARクラウド」の確立を目指す。現在ロンドンとサンフランシスコの2都市に展開済みだが、今後世界100都市の3Dマッピング化を図る予定だという。

ARクラウドは、ユーザーの位置情報を踏まえて作るARコンテンツ開発には欠かせない技術であると言われている。なかでもScape Technologiesはセンチメートル単位の精度でユーザーの位置情報を把握する「Visual Positioning Service(VPS)」の開発に強みを持つ。

実際、今回発表されたHoloscapeにもVPSは適用されている。ユーザー同士の位置情報を把握しながらAR上のオブジェクトを表示する。つまりユーザーは自分のいる都市環境に合わせて最適化された形でゲームを楽しめる。加えて、プレイヤー同士の動きと位置情報を連動させるシステムを利用させていることから、特定多数のユーザー参加を可能とする「Massively Multiplayer Online(MMO)」を確立させた。

Scape Technologiesのように、ARクラウドという巨大なプラットフォーム事業に注力するスタートアップが、自社でARゲームを発表してきたら技術精度で大きく引き離され脅威になることは間違いない。たとえばゲームの場所に応じて適切なAR広告オブジェクトを表示させるような展開もできるだろう。

こうした「技術基盤」と「コンテンツ」の両方を携えたスタートアップが登場している中、どのような市場ポジションをGraffityは長期的に目指しているのかを伺った。

(森本氏) 「AR時代の任天堂」を目指しています。

実はGraffityもかなりVPSの技術に精通しており、技術確立のチャレンジをしていましたが、現在のスマホのスペックでは実現が非常に難しいという考えに至りました。そこでVPS以外の技術でサービスを実現するべきという結論になったわけです。

事実、ペチャバトではScape Technologiesが開発するARクラウドのような最先端な技術を使わずにARマルチプレイを実現しています。

こうした汎用性の高い技術を用いて、誰もが使えるサービスにまで落とし込んでいるのが私たちの強みです。ユーザーが普段から使っている身近な体験を組み合わせることで、サービスを理解しやすい形にしています。

どんな人でも手軽に楽しめるARコンテンツを制作する一大企業にまで成長したいと考えています。

また、新しいインターフェイスが登場すると必ず新しい体験とIPが誕生すると考えています。そのためGraffityはARエンタメコンテンツを作り続けるだけでなく、独自のIPも創出する企業になれるよう戦略を描いています。

Graffityがリリースしたアプリには課金ポイントを設けられていないため、ビジネスモデル確立に向けて邁進しているのが現状。次のステップとして、有料プランを提供したり広告事業を展開する必要がある。

このように、市場では収益化をようやく始められるまでに成長したARスタートアップがわずかにいる程度。先に紹介した海外スタートアップを含めてAR市場で2C向けアプリを開発した企業が安定した収益化に成功した事例は皆無。こうした市場黎明期でGraffityがどのような成長を遂げるのかに引き続き注目していきたい。

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【詳細レポ】短時間でサービスデザイン思考を体験する方法ーーAR業界特化コミュニティ「AWE Nite Tokyo」がワークショップ開催

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8月29日、「AWE Nite Tokyo」主催によるARサービスデザイン・ワークショップが都内で開催された。「AWE Nite Tokyo」とはAR関連イベントを世界中で開催する団体「AWE Nite」の東京支部である。AWE Nite Tokyoは日本のARスタートアップ「Graffity」「MESON」「ENDROLL」の3社によって運営されている。 今回のワークショップはARユースケース開…

8月29日、「AWE Nite Tokyo」主催によるARサービスデザイン・ワークショップが都内で開催された。「AWE Nite Tokyo」とはAR関連イベントを世界中で開催する団体「AWE Nite」の東京支部である。AWE Nite Tokyoは日本のARスタートアップ「Graffity」「MESON」「ENDROLL」の3社によって運営されている。

今回のワークショップはARユースケース開発企業「MESON」代表の梶谷健人氏のモデレートで進行し、同氏のグロースハッカーとしての知見も活かした、AR時代特有のサービスデザイン設計を共有する場となった。本記事ではイベントの様子をなるべく細かく伝えていき、AR界隈のみならず、あらゆる業界のスタートアップが利用できる新規事業アイデア設計手法を共有していきたい。

今回、5つのチームに分かれて空間的な情報操作・閲覧を可能にするAR・MRグラスが普及した「Spatial時代」における主要サービスをお題にサービスデザインを約2時間ほど行った。

空間情報を操作するデバイス「Spatial Computing」が切り拓く未来についての考察に興味があれば「Mirror WorldとSpatial Computingの時代」の記事を読むことを勧める。

まず最初に行われたのがチーム間の緊張を解くための自己紹介だ。ブレストをしながら短時間でサービスフローを考える上では柔軟な姿勢・思考が必須となってくる。しかし、人となりの知らないメンバーといきなりワークショップに移るのは難しい。

そこで最初にチームで取り組んだのがスマイルボールを使った自己紹介。黄色いボールを持った人が、過去1ヶ月以内にあったハッピーだったできことを1分ほどプレゼンをしてボールを回す。

ブレストでは主に「他人の意見を暖かく受け入れる」「コンパクトに発言する」「否定をしない」の3点が重要となってくる。この点、最初のワークでチームの雰囲気を盛り上げつつ、ブレストへ向かうための意識を自然な形でインストールする儀式のようなものがスマイルボール。

この手法は毎月、もしくは四半期毎に行う少しフォーマルなアイデア会議の場で非常に有効な手段であると感じる。スタートアップに限らず、あらゆる規模の企業がチーム全員合宿などで長期戦略のアイデアを練る際、アイデア促進を会議冒頭で促す有効手段だ。

さて、早速デザインワークショップに入っていくのだが、ARサービスデザインは基本的にWeb/アプリ開発の手法を基に進んでいく。具体的には「Garrettの5レイヤー」を用いる。「Spatial時代のサービスデザイン」と聞くと、思わず全く新しいデザイン手法があると勘違いするかもしれないがそうではない。

一番下の戦略レイヤーからアイデアの解像度を上げていく。順番としては「ユーザーゴール」「機能とコンテンツ」「ユーザーインタラクション」「各種機能の配置及びナビゲーション」「見た目や感じ方などのユーザー体験」でデザインをしていく。本ワークショップでは最後のユーザー体験デザイン以外のステップをこなしていった。

ここで既存手法と唯一違ってくるのが3つ目の「ユーザーインタラクション」と4つ目の「配置及びナビゲーション」のデザインである。私たちが使っているパソコンやスマートフォンは閉じられた世界、平面でのデザインをする必要しかなかった。しかしSpatial時代では空間すべてを利用する。

空間デザインを巧みに行うための専用のデザインツールを使う必要がある。そこで利用するのが「Reality Sequence」と「Reality Sketch」の2つのフレームワークだ。

Reality Sequenceはユーザーがサービスを利用する各シーン毎に体験を定義するデザインツール。

シーン別にユーザーがどのような情報に触れ、次のシーンにどのようなインタラクションをして進むのかを明示する。1つ1つのシーンをつなぎ合わせることでSpatialサービス体験が初めて定義される。今回のワークショップのゴールは、このReality Sequenceを作り終えて発表することであった。

時間の都合上触れることはなかったが、最終的にReality Sequenceに落とし込んだユーザー体験が、第三者視点でどのような空間で発生しているのかを書き出すのがReality Sketchである(詳細は「ARサービスにおけるワイヤーフレームのつくり方」や、「4つのキーワードから考えるARサービスのデザイン」の記事をご一読いただきたい)。

先述した2つのツールはSpatial時代のユーザーフロー設計をチームで共有することが大きな目的で作られたもの。Spatial時代であると限定されているが、小売やモビリティーを中心としたいわゆる「リアルビジネス」を行うスタートアップは十分に活用できるツールであると感じる。

Airbnbではユーザーストーリーをシーン毎に描き、その中で最もユーザーが感動するシーン「Moment of Truth」を定義している。このメソッドに通用するデザイン手法であると感じた。ちなみにAirbnbはユーザーがホスト宅の玄関扉を開けた瞬間の出迎えシーンをユーザー体験のピークであるとしている。

Reality Sequenceを作るために最初に行うのが「ユーザー課題」と「解決策」、「最終的にユーザーがどうなったのかを表すハッピーな状態」の3点。いきなり解決策は想像しづらいため、まずは課題とハッピーな状態を先に書き出してから、解決策を2ステップに分けて描く。合計4つのシーンに沿ってアイデアの土台を作る。

全員が1分ほどで自分のアイデアを発表したのち、「課題が明確」「解決策およびユーザーメリットが妥当である」という基準でシーン毎に投票していく。最終的に高い得点のシーンをつなぎ合わせてユーザー体験のシナリオを作っていく。

筆者のいたチームは「Spatial時代のSpotify」をお題にした。課題感として孤独を感じている人などのシーンが挙げられ、音楽を通じて家にいながらホログラム化した他者と交流・コラボレーションして心を満たすといったシチュエーション・アイデアが共有された。とにかく他人のアイデアを否定せず、量を出して発散させることが重要であったため、様々なアイデアが飛び交った。

一通り各メンバーによる発表が終わってから投票が始まる。投票結果を参考にしつつ、4つのシーンを暫定的に定義する。この際、シーンの流れがバラバラであっても構わない。とりあえずユーザー像をうっすらと決めてしまう。

スタートアップを始めたい人で、最初のユーザーを探し当てるためにアイデアをいろんな人に聞きながら探っている手法をとっている人を見かける。もちろん間違いではないだろうが、短時間にユーザーを定義してしまってからユーザー探索に出かけるほうが効率的かもしれないと感じたワークであった。

次のワークでは、一旦定義した4つのシーンに基づいて必須機能を洗い出す。ここで重要となるのが「ユーザーは〇〇ができる」というように、ユーザー主語で機能をブレストしていくことにある。機能を考えていくと、どうしても技術的な視点で考えてアイデアが限定されてしまい、突飛なアイデアが出づらくなってしまう場合もあるので、ユーザーメリットを軸に機能を考えていく。

このワークでも最終的に投票で機能を絞り込んでいく。ここまで来るとサービスの全体像がうっすらと見えてくる。どのシーンでどんな機能を提供して、ユーザーはどのようなことができるのかがチーム全員で理解できる段階にやってくる。

今回はラフな機能定義で終わったが、本来はシーン毎に「ユーザー心理/欲求」「具体的な行動」の2つを定義。それに基づいて機能アイデアを出し合い、優先度をつけてアップデートする度に高い優先度の機能から実装していく手法を採る。

 

ここまで約90分ほどの時間を費やして「ユーザーゴール」「機能とコンテンツ」の定義づけが終わった。最後は前述したReality Sequenceを描いていく。各メンバーが1つのシーンを描き、一つにつなぎ合わせて空間上で行われるユーザーインタラクションの意識を合わせていく。

描写をする際に最も難しい点が具体的なシチュエーションを選び出すところだ。ざっくりとしたユーザー課題や解決策、必要な機能を洗い出したが、どのような現実のシチュエーションで使うかは詰めきれていない。ここを各メンバーが思い浮かべながら行うことになる。

実際にスタートアップの現場で同じ手法を試す場合は、ここでいくつかのUsed Caseをブレスト形式で複数作り上げ、最も利用頻度の高いシナリオに沿ってサービスデザインを昇華させていくことになるだろう。

筆者のチームでは「1. AR/MRグラス越しに生活情報を自動で解析」「2. ユーザーの今の気分がオーラ色として体を覆うように表示される」「3. 色に応じた音楽プレイリスト空間を選択」「4. 選択したARソーシャル空間に没入しながらARアバターとして登場する他人と一緒に音楽を楽しめる」といったSpatial時代のSpotifyアイデアを突貫で作り切った。ターゲットは仕事場で疲れて帰ってきて、自宅で誰かと音楽を楽しみたいサラリーマンと暫定で定義した。

選ばれた班の発表が終わると同時にワークショップはラップアップへ。最後にモデレーターの梶谷氏からSpatial時代におけるデザイン思考の重要性が語られた。

Spatial時代はこれからやってくる5〜10年後の世界であることは間違いない。だからといって、現在使われているデザインフレームワークが使えないというわけでは全くない。空間体験をデザインしきるには様々なアプローチが必要。そこで適切なデザインメソッドを使いながら具体化させていく必要性を共有された。こうした考えを総じて「Spatial Experience Design」と呼ぶとのこと。

プレゼンはここまでで終わったが、梶谷氏が執筆した各ブログ記事の要素はサービスデザインにおいて大切なので付け加えておきたい。

ワークショップを通じて1つのアイデアを形作ったが、事業に落とし込む際にはさらに2つの基準でアイデアを選択・磨き上げる必要が出てくるという。それはサービス自体の価値を示す「意義」と、ARである必要性を問う「意味」である。この点は「ARサービスのコンセプトデザイン | 意義と意味のデザインについて」の記事に詳しく載っている。

意義の有無を確かめるには従来のサービス開発の手法とさほど変わらない。ユーザー課題と、それに対する適切なソリューションの提供、ビジネスモデルとして成立するかなどの基本要素を満たせるかが評価要素となる。

基本的にビジネスモデルを成り立たせるためのUnit Economicsなどの指標はユーザーが集まってからでないと測れないため、立ち上げ当初はユーザー課題探索がメインとなるだろう。この点は関連記事「ARサービスを0から企画・開発していく際のチェックシート」が役立つため参考にすると良いだろう。

意味に関しては、ARだからこそできる要素に注目すると良い。具体的には5つの「超越」と梶谷氏は定義する。「O/Oの超越」「知覚の超越」「距離の超越」「 時間の超越」「規模の超越」が挙げられる。

平たく言えば空間とのインタラクションができるようになった世界で、既存の概念がどのように変わるかを考えると意味の有無を確認できるだろう。各定義の詳細や考え方は「スマホの次の波であるARの本質的インパクト」や「未来から逆算するアイデア」の記事に書かれている。

ここまでARサービスデザインのフローを説明してきた。個人的には荒削りながらもサービスアイデアを短時間で完成させるまでに至るまでのメソッドを知れて非常に満足のいくイベントであった。核となるサービスデザイン思考はAR市場以外のスタートアップも十分に取り入れるだろうとも感じた。チームの士気を上げ、効率的に、かつ前向きにサービス開発を行っていく雰囲気をここまで説明したやり方をなぞれば再現できるはずなので、ぜひ挑戦してもらいたいと思う。

本ワークショップのスライドはこちらに、ARサービスデザイン手法をより網羅的に知りたい方は「ARにおけるサービスデザイン完全解説」の記事を参考にしていただきたい。

※情報開示:筆者は登壇者である梶谷氏のスタートアップ「MESON」と業務において契約関係にあります。なお、本記事執筆にあたり一切の金銭授与はありません。

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誰もが3Dで情報発信・収集できるAR時代のインフラを目指す「Cynack」、NOWから数千万円の資金調達とARブラウザ「Sphere」を発表

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8月20日、AR専用ブラウザ・サービスと3D情報向けマークアップ言語を開発する「Cynack」が数千万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先となったのはNOWである。 Cynackは3D情報が当たり前にやり取りされるAR時代のインフラ企業を目指す。「スマホの次」と言われるグラス型端末が普及した未来に向けて、「3Dを、人類のあらたな言語に」というフレーズをビジョンに掲げるARスタートアップだ。…

8月20日、AR専用ブラウザ・サービスと3D情報向けマークアップ言語を開発する「Cynack」が数千万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先となったのはNOWである。

Cynackは3D情報が当たり前にやり取りされるAR時代のインフラ企業を目指す。「スマホの次」と言われるグラス型端末が普及した未来に向けて、「3Dを、人類のあらたな言語に」というフレーズをビジョンに掲げるARスタートアップだ。

プロダクトは2つ。1つは「OML(Object Markup Language)」。ARコンテンツ作成に特化したプログラミング言語である。もう1つがAR専用ブラウザ「Sphere」。事前に設定しておいた特定情報を表示するための位置指定の標識「マーカー」を読み取り、ARコンテンツを表示させるアプリケーション。

今回の資金調達に伴い、ロゴを含めたコーポレートブランドデザインのフルリニューアルも実施。デザインに関わったのはスタートアップのブランディング・サポートを行うPARK社

Cynackが目指すのはAR時代のインフラ。エンドユーザーが利用するブラウザ側と、開発者が扱うプログラミング言語の両方を抑えることで、ARコンテンツ制作からリリースまでを手軽に行える次世代のプラットフォームの市場ポジションを目指している。

8月26日から市場投入されたOMLは可読性の高い言語というメリットを活かして、ARコンテンツ開発者のARコンテンツ開発ハードル及び制作プロセス短縮に重きを置いている。これまでのコンテンツ制作では「Unity」や「ARKit」を用いて0から表示情報を作り上げる必要があった。

しかしOMLを用いれば積み木を組み合わせる感覚で手軽に3D図形を簡単に描画できる。球や立方体などの基本的な6種類の立体とユーザーが用意した3Dモデルなどを用いて、大きさや位置座標、色指定をするだけ。FBXの読み込みにも対応しているため、3Dアニメーション再生も可能。

簡単な広告向け情報コンテンツであれば短期間で制作可能となった。「Sphere」との連携ができるため、スムーズにリリースまで漕ぎ着けるようになった。

新たにお披露目となったAR専用ブラウザ「Sphere」は主に企業の広告コンテンツを表示するARアプリケーション。まずは大型商材などを扱う企業の営業資料として 3D デモンストレーションなどの社内ツールとしても利用される2B向けユースケースを想定する。

両サービスとも2B向けではあるが、エンドユーザーと開発者の両者にメリットを提供できる座組を作ることでインフラビジョンへの一歩を踏み出した。そこで今後の展望について代表の吉村氏は次のように語る。

現状のARコンテンツ制作サービスは、料金が不透明であったり個人利用に向いていなかったりするものがほとんどです。

Cynackが目指すのは誰もが3Dで情報発信と収集ができるインフラをツール提供者という立場から支えること。今回リリースしたブラウザ「Sphere」はコンテンツを作るためのエディタからブラウジングに至るまで一貫して提供するサービス群のほんの一部です。

今後は企業の内部利用を想定したプロジェクトを行い、OMLの表現力向上を中心とした改良と、エディタ等の一般消費者向けのSaaSの開発を並行して取り組んで参ります

本日までに2種類のサービスを市場投入しているが、それもまだ長期戦略のたった一部とのこと。2B向けに既存サービスを提供をしつつ、AR時代のインフラを目指して2C向け新規サービス開発も想定しているようだ。未だAR市場のプラットフォームの座を握った企業は現れていない。日本のCynackがこの座を勝ち取るかに注目が集まる。

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新たな小売の潮流「ARショールーミング」ーー ARユースケース開発企業「MESON」が新サービス「PORTAL」提供開始

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8月23日、ARユースケース開発企業「MESON」が大手アパレル企業「オンワード樫山」と協業し、GINZA SIXと東京ミッドタウンでARファッションショー「PORTAL BY JOSEPH」の提供を開始した。 PORTAL BY JOSEPHとは、壁面に設置されたポスターにiPadをかざすことで現れるランウェイを通じて、新しい服やコーディネートに出会うことのできるARファッションショー。アパレル…

8月23日、ARユースケース開発企業「MESON」が大手アパレル企業「オンワード樫山」と協業し、GINZA SIXと東京ミッドタウンでARファッションショー「PORTAL BY JOSEPH」の提供を開始した。

PORTAL BY JOSEPHとは、壁面に設置されたポスターにiPadをかざすことで現れるランウェイを通じて、新しい服やコーディネートに出会うことのできるARファッションショー。アパレルブランド「JOSEPH」の商品を楽しめる。

起点となったコンセプトはブランド体験の向上。店舗が商品を販売する場所から体験する場所へと変わっていく中で、どのようなARソリューションを提供できるかを考えた上でたどり着いた1つの小売ユースケースが今回のPORTAL BY JOSEPHとなる。

JOSEPH GINZA SIX店では9月23日までの1ヶ月間、東京ミッドタウン店では9月16日までショーを体験できる。

店舗のショールーミング化はARで新たな形へ

PORTAL BY JOSEPHの登場背景として、小売市場におけるショールーミング・トレンドが挙げられる。

どの小売ブランドもEC店舗を持つようになってから、誰もが自宅から手軽に各商品情報へアクセスできるようになった。この点、店舗に大量の商品を並べて各商品を認知してもらい、販売実績で事業拡大を目指す従来の出店手法を見直す必要が出てきた。単調な商品認知に重きを置く店舗に顧客が価値を見出せなくなったのだ。

店舗が商品を認知する場所として機能しなくなってきている。1つ1つの商品を陳列棚に並べても顧客は満足しない時代になってきた。そこで顧客が店舗に求めるのは今までにはなかった発見と体験。

たとえば世界的小売企業「Walmart」傘下のアパレルブランド「Bonobos」が好例。店員と対話をしながら最適なコーディネートを顧客と一緒に探すガイドショップの機能を店舗に持たせたのだ。筆者がサンフランシスコ店を訪れた際は、小一時間ほど2人の店員が付きっ切りでアドバイスをくれた。

同社は店員の接客にリソースを割く代わりに店舗に在庫を一切持たない。購入品は後日の自宅配送されるため、店舗は売り場から体験の場になった。店舗を顧客に合ったコーディネート発見やブランド・接客体験に特化した場所として位置付け、割り切った戦略を描いたのだ。

他事例では眼鏡D2Cブランド「WarbyParker」が挙げられる。著書『サブスクリプション』によると、同社は来店客の85%が事前に商品を調べてきていると結論づけ、店舗に全商品を隙間なく並べるような従来の出店手法を捨てた。

その代わり1平方フィート当たり$3,000ドルのコストをかけて店舗建設を行い、ゆったりと商品を見回せて世界観を知れるブランド体験を提供。このコスト感は高級ジュエリーブランド「Tiffany & Co.」の1平方フィート当たりの費用に匹敵する豪華さだという。

こうした事例から紐解けるショールーミング化の本質とはオンラインで手軽に閲覧できる「2次情報」ではなく、オフラインでしか手に入らない自分だけの商品体験、つまり「1次情報」を提供することにあると考えられる。

今回、MESONが展開するPORTAL BY JOSEPHもまさにこうした体験を提供することをコンセプトに開発が進められてきた。MESON代表の梶谷 健人氏は次のように語る。

MESONがPORTALを通じて提供するのは、「出会い: 新しいアイテムや着こなし方の発見」「学び: ブランド世界観の体感」「つながり: 店員やブランドとのコミュニケーション」の3つ。

近年、店舗が単にモノを買う場所ではなく「体験」を提供する場へと大きく役割が変化している中で、「今回届けるべき体験は何か」からチームで議論し、この3つに定めました。

AR技術を活用することで、従来の店舗で体験できなかった没入感の高い体験を提供しつつも、ブランドや店舗、季節ごとにカスタマイズして展開することが可能になります。

3つの体験を抑えるPORTAL


MESONではPORTALを、ウェブ検索ではたどり着けない新たな商品発見がある「出会い」、ブランド世界観に浸れる「学び」、顧客が店員と双方向のコミュニケーションを行える「つながり」が発生するAR体験プラットフォームとして機能させる狙いがあるとのこと。

たとえば読者の方々がデパートへ行った際、店員か皆さんのどちらかがぎこちなく声を掛けるところからブランドとの対話が始まるはずだろう。先述した3つの要素全てが上手く働くとは考えづらいシチュエーションだ。

しかしMESONはPORTALという一種の「仕掛け」を店頭に設置しておくことで先述した3つの要素を効率的に体験させる仕掛けを作った。圧倒的な没入感が売りのARショールーミングでは、新しい商品コーデ発見・ブランド認知・店員とのコミュニケーションを一気通貫で行えるようにしたのだ。

ここで他社の動きを見てみたい。大手ブランドもARサービスをいくつか展開済みだが、PORTAL BY JOSEPHにおけるショールーミングの流れを捉えた体験には追いついていない印象である。

GUCCI」は自宅試着向けARアプリをローンチしているが、こうしたサービスはネット情報に多少の付加価値があるものでブランド世界観の認知までには至らない。「ZARA」も同様にARアプリを発表。PORTAL同様に動きのあるモデルが登場するが、世界観の再現・認知を目指したクオリティには達していない。

ARとファッションを組み合わせた事例は、世界でいくつか登場し始めていますがどれもまだ実験的な段階に過ぎません。

PORTALも非常にチャレンジ要素が多数ありましたが、他社ファッションARサービスと比較して、「登場するモデル/コーデ数」「リアルな買い物体験との繋がり」「演出完成度」などの面において、世界最高レベルのものが作れたと自負しています。

ARは都市出店戦略の最適なソリューション

ショールーミング化を支えるにはそれなりの店舗規模が必要となる。1つのブランドがリッチな店舗体験を提供するには建設や内装コストがかかるもの。

しかしARショールーミングであれば体験価値を損ねずにバーチャル空間に店舗空間を持てるようになる。加えて、先述した梶谷氏のコメントにあったように、店舗側にメリットが発生する購買導線をしっかりと引いているのが大手競合他社との差別化ポイントと言えよう。単なるコーデ参照や、試着サービスなどの域には留まらない設計がなされている。

ARコンテンツの制作費だけで店舗面積の拡大を図ることができる。坪単価に依らない商品展示スペースの確保が可能となるだろう。かつ、顧客はバーチャル空間を含めた広大な売り場の中でリッチな商品ブランド体験を通じて、その場で購買が発生する。

MESONが提供する価値はまさにこうした小売体験と店舗出店における不動産価格問題のソリューションの2点だと言える。この点、PORTALは店舗事業者に向けて、ARが小売 × 不動産市場を見据えた最適なソリューションであることを指し示していると言えよう。

銀座や青山、渋谷などの都市部へ店舗出店するには多大なコストが発生する。店舗面積も限られてしまい、商品数を多くして隙間なく並べてしまえばブランド世界観を損ねる危険性も。

そこでAR空間に店舗空間を延長する考えを取り入れば、「店舗面積確保」と「新たな商品コーデ発見」「ブランド世界観」「店員とのコミュニケーション」の全てを満足させることができる。

今後市場原理が働き、3D撮影機材が出回ればコンテンツ制作コストも下がるはず。そうなればなおさら圧倒的な出店コストダウンに繋がる考えというわけだ。

このようにPORTALは「購買体験」と「都市部への出店費用対効果」を最大化する高いメリットを持つ。小売不動産系スタートアップのトレンドにも乗っている戦略的なサービスとも言える。

「ライブ感」がARファッションシューの鍵に

一点気になるのはファッションショーの本質である「ライブ感」を再現しきれるのかどうか。

従来のファッションショーは広大なスペースを必要としたが、PORTALではポスター1枚と顧客がコンテンツを眺められる数坪のスペースさえあれば十分。

だが、決定的に欠けてしまうのが「ライブ感」。たとえば東京ガールズコレクションなどのショーでは、好みのモデルが着けている洋服が即座に売れていく。モデルへの熱い憧れが販売に直結する導線ができているからだ。

静かな店内でガールズコレクションのような雰囲気作りや人数を集めるのは無理があるが、仮にPORTALの優れた小売戦略に基づいてライブ感を演出できれば、AR時代の本格ファッションショーを展開できるとも想像できる。この点を踏まえ、将来的なPORTALの展開などの長期戦略を聞いた。

今後のサービス発展の方向性としては2つ挙げられます。「没入感・ライブ感の進化」と「複数ブランドを巻き込んだプラットフォーム化」を考えています。

前者に関してはメガネ型デバイス「Magic Leap」や「Nreal」などが複数出てきていることを踏まえ、こうした最先端デバイスを用いたより没入感の高い空間演出を考えています。

また、モデルを3D化する際に動きの機微までキャプチャすることで本当に目の前でランウェイが展開されてるかのようなライブ感を引き続き提供していきます。

後者に関しては、PORTALをプラットフォーム化して複数のブランド毎に広く展開。ブランドが季節ごとに従来のルックブックを作る代わりにPORTALを更新して顧客に実際に体験を提供していく世界を作っていきたいと考えています。

今後1-2年、AR/MR市場では新たな端末が次々と投入される予定だ。こういったデバイスがどの程度利用価値があるのかは未だわからない。しかし、デバイス数が増えれば低価格化も早まる。スマートフォン市場も同様の流れだったかと感じる。

こうした未来を見据えれば、たとえば有名モデルが7PMに渋谷新パルコ前の巨大ARポスター越しのPORTALに登場。若い女性たちが街中でデバイス越しにモデルが着る洋服を飛ぶように買っていくなどの現象が起きるかも知れない。

場所にとらわれず、しかし巨大なステージで起きるようなライブ感を失わせない体験が世界中に広がる可能性を秘めている。この需要をプラットフォーマーとして汲み取るのがPORTALというわけだ。

昨今の小売市場のトレンドを理解しつつ、次なる市場を見据えたMESONの展開に注目したい。

Image Credit: Alexis LamsterRachelH_, Zengame

情報開示:筆者はMESONのメンバーとしてPORTALプロジェクトの一部に参画していました

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「AR時代のエンタメUXデザイン企業へ」 ーープレシリーズA調達を終えたARエンタメ企業「ENDROLL」の企業戦略を紐解く

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7月17日、ARエンターテイメントコンテンツの企画/開発を行う「ENDROLL」がプレシリーズAラウンドにて総額数千万円規模の資金調達を実施したことを発表した。 引き受け先となったのはスマートニュースの堅田航平氏、メドレー 執行役員の加藤恭輔氏、ペルソナイズ CSOの山本幸央氏。加えて鈴木陽貴氏、清木昌氏、他数名の個人投資家が名を連ねる。 ENDROLLは2017年12月に創業されたARスタートア…

7月17日、ARエンターテイメントコンテンツの企画/開発を行う「ENDROLL」がプレシリーズAラウンドにて総額数千万円規模の資金調達を実施したことを発表した。

引き受け先となったのはスマートニュースの堅田航平氏、メドレー 執行役員の加藤恭輔氏、ペルソナイズ CSOの山本幸央氏。加えて鈴木陽貴氏、清木昌氏、他数名の個人投資家が名を連ねる。

ENDROLLは2017年12月に創業されたARスタートアップ。2018年はスマホ向けAR謎解き脱出ゲーム「ノンフィクション・レポート」をリリース。現在は体験型ARコンテンツ開発に積極的に動いている。

2019年5月には東京急行電鉄と提携して渋谷の街を舞台にしたARリアル謎解きゲーム「渋谷パラレルパラドックス」を発表。7月にはアカツキライブエンターテインメントと協力して横浜駅直通の複合型体験エンターテインメントビル「アソビル」を舞台にしたARゲーム「アソビルパーティ ~とびだせ!アソビルモンスター~」を展開している。

ENDROLLのコンセプトに関してCEOの前元氏は次のように述べる。

私たちはARというテクノロジーを『妄想を具現化するもの』と捉えています。そしてその力で今までシュミレーションという形で人々に感動を与えて来た『ゲームの力』を解放し、誰しもが物語の主人公になれる世界を実現するという想いを持ってENDROLLを創業しました。

まずは日本各地の商業施設と提携してAR時代の新たな収益源や集客ソリューションを提供しています。街のあらゆる箇所にエンタメ要素を追加することで、ARクラウド時代のエンターテイメントのあり方を世に投げかけています。

さて、ENDROLLはプレシリーズAの調達資金をARクラウド時代のエンタメUX研究に投下すると語る。

ARクラウドとはクラウド上に置かれている現実世界を投影した3Dマップデータ。X・Y・Z軸によって判定される位置や付随情報を含む点群データがクラウド上に保管され、いつでも引き出させるシステムを指す。

ARクラウドが実現すれば、ユーザーの周辺環境データとクラウド上の3Dマップデータが瞬時に照合され、特定箇所に紐づいたデータが引き出される。たとえば「セカイカメラ」が実現させたような、特定店舗の情報をARグラスを通じて即座に参照可能となる。

最も重要な点は、その場にいる複数ユーザーが同時にその場の情報をクラウドから引き出せる機能を通じて新たなコラボレーション体験が生まれることだ。日本のAR企業でのユースケースとして、MESONが取り組んだ「AR City in Kobe」が挙げられるだろう。

ではENDROLLが目指すARクラウド時代のエンタメUX研究とはいったい何を指すのか。前元氏は次のように考える。

AR分野はまだ世界的にも成功事例が少なく、実利が見えにくい側面が否めません。そのため高いビジネスメリットのあるロケーションベースのARサービス開発へ資本を使っていきます。

従来、商業施設は不動産資産の内観を大幅に変えるプロモーションを打ちづらいという課題を抱えていました。多額の資金を獲得するために意思決定に非常に長い時間がかかっていました。

そこでARエンタメを通じて低コストかつ施設内観を変更することなくサービス導入可能な事例を増やす考えです。施設運営者、ユーザーの両方がWin-WinとなるAR時代のUXを課題解決のアプローチで提案していく戦略です。

2019年時点でARクラウドの考えは一般的ではない。その上、技術確立に未だ至っていない。巷ではARクラウド・プラットフォームになれば確実にユニコーン入りは確実と言われるほど商機と技術課題が横たわる領域。

市場理解がまだ進んでいないなかでENDROLLは大手企業の課題感をしっかりと理解しながら提携へと漕ぎ着けている。

たしかに記事冒頭で紹介した2019年のENDROLLのプロダクトラインナップをみると、ARクラウド時代に一般化するであろう屋外コラボレーション体験のUsed Case作りに動いている印象だ。

商業施設や街開発に積極的な大手企業と組んで体験型コンテンツ開発にリソースを割いているのがその証左であろう。

ENDROLLはこうしたARクラウド時代のエンタメUXを作っていく会社として舵を取っていく戦略だ。具体的には複数人でコミュニケーションを取りながら商業施設で楽しめる体験コンテンツを作っていく意向とのこと。

米国ではNianticを代表とする世界的なARエンタメ企業が登場。ポケモンGoでは店舗と組んで集客ツールとしてゲームを提供する。これも立派な屋外体験型コンテンツと呼べるだろう。

日本人起業家の深澤氏が創業したTyffonは体験型のVRテーマパークを次々とオープンさせている。AR・VR・MRの総称を指すXR時代のディズニーを目指す。

有名レーベルを携えて展開したり、テーマパーク型コンテンツの世界展開を目指すスタートアップが活躍するXRエンタメ業界でENDROLLはどのように生き残り、成長戦略を描こうとしているのだろうか。

前元氏によると日本のXR市場は創成期であるという。未だビジネススキームの構築に挑戦する企業が登場し始めたばかり。Nianticなどの大手スタートアップも同様だ。

そこで現在は「競争」より「共創」を意識しながらスタートアップ同士で市場を成長させている最中であり、XR時代のコンテンツビジネスの形にいち早く到達し、世界を牽引することが日本発のXRエンタメ企業の宿命だと感じていると語る。

2023年までに、LBE(Location Based Entertainment)市場は2019年現在の10倍近く、1.2~1.3兆円程度の規模にまで成長するという。

Nianticのようなコンテンツ重視の巨大企業にはすぐには追いつけない。また、コンテンツだけでは飽きがきてしまう。Tyffonのようにテーマパークを建てることは多額のコストを費やす必要があり、かつ集客数が予想より下回る可能性があるなど施設側にとってのリスクが伴う。

そこで商業施設が導入しやすいAdd-onツールの文脈から「GaaS(Game as a Service)」という言葉を用いてARサービスを提案していくのがENDROLLのアプローチだ。加えて、先述した課題解決に基づいたデザイン戦略を用いて差別化を図るとのこと。

単なるARゲーム開発企業に終始するわけでも、受託やコンサルに終始するわけでもない。ARクラウド時代のUXを提案するデザイン企業として市場ポジションを確立する考えだ。

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スマホかざせば「リアル案内板表示」Google MapsのAR機能が一部ユーザーに公開

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ピックアップ:It’s the Real World—With Google Maps Layered on Top ニュースサマリー:Google MapsにARを用いたナビゲーション機能が追加されたようだ。10日、Wall Street Journalが報じている。現段階では「ローカルガイド」に認定されているユーザーへの限定公開だが、順次全ユーザー利用可能となる。ローカルガイドはGoogle …

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Image Credit : Wall Street Journal VIDEO

ピックアップIt’s the Real World—With Google Maps Layered on Top

ニュースサマリー:Google MapsにARを用いたナビゲーション機能が追加されたようだ。10日、Wall Street Journalが報じている。現段階では「ローカルガイド」に認定されているユーザーへの限定公開だが、順次全ユーザー利用可能となる。ローカルガイドはGoogle Mapsにおけるアクティブユーザー、言い換えるとコメントやレビューを多用しているユーザーを指す。

AR機能は安全第一に設計されているといい、ARをオンにしてGoogle Mapsを目の前に掲げ続けていると自動的に画面が消える。Googleは本当の意味でARを最大活用するにはウェアラブル端末が最適としながらも、GPSが上手く作動しない高層ビルが立ち並ぶ主要都市や複雑な交差点などで同機能は役立つだろうとしている。

話題のポイント:Google MapsへのAR追加は兼ねてより噂されており、昨年5月に開催された開発者向けイベント「Google I/O 2018」にてその詳細が明かされていました。

Googleは、近年Google Mapsの機能強化に取り組んでいて、今年最初にはドライバー向けに車両の制限速度表示への対応や速度メーターの場所を表示する機能など多岐にわたりアップデートを続けています。

さて、ここで気になるのが2013年にGoogleが買収した同マップアプリのWazeです。WazeはGoogle Mapsとほぼ同様のナビゲーション機能を提供する一方、昨年10月には「Waze Carpool」と呼ばれるカーシェアリング機能を付け加えるなど、独自の進化を続けています。

一方のGoogle Mapsはマップ機能の強化に絞ってアップデートを進めています。ただ、両者のユーザー層が完全に被らないかといわれるとそうではなく、双方がアップデートを進めれば進めるほど限りなく近いものになる可能性も高いのではないかと感じます。

Google MapsがGoogleの直属アプリケーションであることを考慮すると、これからも力を入れて成長させていくアプリなことは予期できます。その中で、Wazeがどのベクトルに向かって、Google Mapsと差別化を図っていくのか、または図らないのか、どちらにしろ興味深い動向なことに変わりありません。

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バイザー部分に必要な情報をARで表示する次世代ヘルメット「Smart Helmet」

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必要な情報を眼前に表示するAR技術が最も必要な現場はどこか…と考えた時、工事現場はまっさきに思いつくシチュエーションのひとつだろう。米Daqri社の発表した「Smart Helmet」は、ヘルメットのバイザー部分に必要な情報を表示できる次世代の安全装備だ。 このヘルメット最大の特徴は、AndroidベースのOSをコアに、360度をトラッキングしつつづけるカメラの存在だろう。このカメラから得られた映…


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必要な情報を眼前に表示するAR技術が最も必要な現場はどこか…と考えた時、工事現場はまっさきに思いつくシチュエーションのひとつだろう。米Daqri社の発表した「Smart Helmet」は、ヘルメットのバイザー部分に必要な情報を表示できる次世代の安全装備だ。

このヘルメット最大の特徴は、AndroidベースのOSをコアに、360度をトラッキングしつつづけるカメラの存在だろう。このカメラから得られた映像を「Intellitrack」と呼ばれる解析エンジンにかけることで、状況を理解し、バイザーに都度必要な情報を表示する。

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このカメラにはHDビデオの撮影、静止画撮影、3Dマッピング、英数字のキャプチャなどが機能として備えられているそう。これにより、看板やメーターなどをヘルメットが読み、理解する仕組みになっているとのことだ。発表されている内容を見る限りではスタンドアロンでの稼働が前提に思え、必要なデータなどは事前にヘルメット側にインストールする必要がありそうだ。

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他にもスマートウォッチなどと組みあわせることにより、豊富で柔軟な情報提供ができるとのこと。まだコンセプトモデルではあるようだが、これが実現すれば作業の効率化および安全性に寄与できそうな印象を受ける。

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個人的には、これが出来るならバイクなどのフルフェイス型ヘルメットにも応用が利くのでは無いかと考えてしまう。これからの数年で、このARの世界はどこまで進むのだろうか。

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ジェスチャーで操作できるめがね型スマートフォン「mirama」が開発中

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スマートデバイスの開発等を手がけるブリリアントサービスが、同社が「めがね型スマートフォン」と呼ぶ「mirama」というスマートグラスを開発している。 miramaは同社が独自に開発したウェアラブルコンピューター向けのOSだ。メガネ型のディスプレイと画像認識技術を応用し、画面に情報を表示するだけでなく、ジェスチャーによる操作を可能としている点が特徴的なスマートグラス。 miramaを装着すると、目の…


mirama
スマートデバイスの開発等を手がけるブリリアントサービスが、同社が「めがね型スマートフォン」と呼ぶ「mirama」というスマートグラスを開発している。

miramaは同社が独自に開発したウェアラブルコンピューター向けのOSだ。メガネ型のディスプレイと画像認識技術を応用し、画面に情報を表示するだけでなく、ジェスチャーによる操作を可能としている点が特徴的なスマートグラス。

mirama

miramaを装着すると、目の前に広がる画面上に、各種アプリケーションが表示される。顔の前でジェスチャーをすると、その動きを赤外線センサーが感知して、メールを送信したり、カメラのシャッターを切ったりしたりといった操作を行うことができる。マイクも付属しており、スマートフォンのように通話も可能だ。

この他にも以下のようなことが可能になるとmiramaのサイトで紹介されている。

mirama

交通機関や他の車の情報を表示したりと、車の運転をサポートする情報を表示。

mirama

知らない言語を翻訳したり、詳しくない分野でも情報をリアルタイム表示。

mirama
レストランの看板を見ながらジェスチャーで”チェックイン”や”Like”をする。

同社のロードマップによると、2016年には一般向けの「mirama One」を発売、2010年代には最終目標の「mirama unity」を完成させたいとしている。

現在は、開発者向けにプロトタイプが受注生産で販売されており、価格は、パッケージによるが20万円~300万円で納期は6ヶ月。

このmirama prototypeについては、2014年6月11日〜13日のInterop Tokyo 2014にて展示されており、engadgetのレポートでもその様子を確認できる。

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