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実は日本よりキャッシュレス後進国、滞在でみえた「お金体験アップデートのチャンス」とは

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2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。 ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。 今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば…

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Photo by Ingo Joseph on Pexels.com

2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。

ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。

今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば、日本のキャッシュレス決済比率は2015年時点で18.4%となっています。キャッシュレスの首位を独走する韓国が89.1%、その次を行く中国が60%と、日本社会のキャッシュレス比率が同じアジア圏でも大きく差が出ていることが分かります。

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キャッシュレスビジョン2019

ではドイツはというと、日本の更に下、キャッシュレス決済比率14.9%を記録し、現金至上主義な社会であることが示されています。

理由として、財務省のレポートにもあるように、同国の歴史的背景に由来する、キャッシュが持つ「匿名性」の影響が挙げられます。レポートでは、第二次世界大戦時に中央政府による市民の監視が影響しているのではと述べられています。

「ベルリンの壁が崩壊したのは1989年であり、30年余が経過したものの、東西分断の痕跡は現在のベルリンにも少なからず見て取れる。当然、都市を分断した「中央監視」に関連して刻まれた記憶と感情は消えておらず、匿名性の価値が、インターネットの時代に改めて想起されたとしても不思議ではないであろう」ー財務省発表、スウェーデンのキャッシュレス化・ドイツのキャッシュレス化(下)ドイツ編より引用

以上より、中央管理を避ける風潮が国民文化としてのキャッシュを好むカルチャーを作っている一つの大きな要因だと考えられます。例えばドイツ銀行が公開したデータのように、ドイツにおけるデビットカードの保有率が大変高い状態にあるのもその裏付けのひとつと言えます。

Captureさて、話をベルリン拠点のチャレンジャーバンク「N26」に戻しましょう。同社のユーザー数は2019年4月時点で約250万人(※)とBusiness Insider Intelligenceに報じられています。N26はドイツ拠点というだけで、EU圏の対応国に住所を持っていれば誰でも口座開設可能です。

※補足修正:記事初出時に25万人と誤記しておりました。正しくは250万人が引用元記事の情報です。ご指摘いただきありがとうございます。

ドイツの人口は2018年時点で約820万人。同社からユーザーの居住国は公開されていませんが、ドイツ人ユーザー数はそこまで多くないのではと感じています。というのも前述の通り、キャッシュを好む傾向から、キャッシュレス決済といったチャレンジャーバンクならではの価値提供が見込めないからです。

実際、筆者は昨年末にドイツ・フランクフルトに滞在していたのですが、到着するまではいくら現金を好むといえ、フランクフルトのような大都市であれば生活に困らない程度でクレジットカード決済可能だろう、そう思っていました。

しかし、たとえばローカルのコーヒーショップやレストランなどは基本入り口に大々的に「CASH ONLY」と貼られており、大通りを歩いていてもカード決済可能な店舗を探すのに一苦労といったレベルです。カード支払いがほとんどできない有様でした。

改めてドイツ銀行が公開したデータを見ると、2017年におけるドイツ人のキャッシュ利用率は全体の74.3%。次いでデビットカードが18.9%を占めており、クレジットカードはたったの1.6%しかありません。ここで着目すべきなのは2008年からの変動率の少なさでしょう。

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Payment behavior in Germany 2017

2008年においてキャッシュ利用率は全体の82.5%で、実際に年々下降してるとはいえ約10年間で8%ほどのみがキャッシュレスへ動くのみとなっており、これは非常に小さな割合だと言えます。つまり、ドイツにおいて「銀行」に求められているのは昔ながらといえる「お金の安全な保管」だけなのです。

極端な比較となりますが、UBSのデータによれば、中国では2010年時点での現金決済比率が全体の約65%を占めていたのが、2020年には約半分となる30%程度に収束するだろうといったレポートを算出しています。

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UBS

中国ではAlipayやWeChat PayなどのQR決済がこのトレンドの要因となっているのは明確です。ドイツでも多くのフィンテック・スタートアップが本拠地を置いてあることを考慮すれば、本来はキャッシュレスのムーブメントが起きていてもおかしくありません。しかし、現実はその逆でした。

キャッシュレスの壁「チップ文化」

ドイツが「匿名性」を理由にキャッシュを好んでいるのは事実でしょう。ただ、ドイツが国として世界のキャッシュレストレンドに感化されない要因は他にもありそうです。

ローカルカフェで働いている20代の男女バリスタに話を聞いてみたところ、揃って「金銭的に自立した職種として認められるためにキャッシュ(チップ)が必要なんだ」といった答えが返ってきました。ドイツ滞在で実際にカードで支払いをして気が付いたことは、クレジットカードのマシーンにそもそもチップを上乗せして会計するステップが用意されていません。

これはアメリカのようにクレジットカードを通したチップ付与であると店舗全体で総分配になる反面、キャッシュであればそのまま個人の収入へと繋がることを意味しています。

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こうした社会的問題とキャッシュレスを考えたとき、ふと思いついたのはコーヒースタートアップ「Bellwether Coffee」です。

<参考記事>

同スタートアップは、コーヒー購入者が直接コーヒー栽培農家に「投げ銭(チップと表現してもいいでしょう)」を送金できる焙煎機を開発し、途上国の違法児童労働問題の解消を目指しています。

ある意味では、キャッシュレスだからこそスムーズにエコシステムが形成されていると言えます。直接的に従業員へ現金をチップしたいという気持ちがあるならば、それをそのままデジタライズさせることも可能と考えます。

ということでドイツ滞在からみえた「キャッシュレス途上国」の課題を考えてみました。

現金で成り立っているチップ文化をわざわざ壊してまでデジタライズさせるためには、さらにクリティカルな価値提供が求められることは間違いありません。そういった意味でN26のようなフィンテック企業が、チップのような細かい体験を各国の文化に合わせてアップデートしていけば面白いことになるのではないでしょうか。

こういったキャッシュ至上主義国家におけるチャンレンジャーバンクには、お金にまつわる体験をアップデートする役割も期待されます。

今後もN26を始めとして欧州発のチャレンジャーバンクが勢力を増し、グローバルになっていくと思います。こうした流れを理解したうえで、フィンテック・ソリューションを開発できれば、日本でもお金に対する文化を根本的にアップデートしていけるのではないかなと思います。

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悪化する違法児童労働への一手は「投げ銭珈琲焙煎マシーン」コーヒー農家向け「Bellwether Coffee」が4,000万ドル調達

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ピックアップ:Bellwether Coffee Raises $40M To Sell Its Coffee Roasting Tech Globally  ニュースサマリー:コーヒースタートアップの「Bellwether Coffee」は4日、シリーズBにて4,000万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはDBL Partners、Lyndon、Peter Riveが名を連ねる。…

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ピックアップ:Bellwether Coffee Raises $40M To Sell Its Coffee Roasting Tech Globally 

ニュースサマリー:コーヒースタートアップの「Bellwether Coffee」は4日、シリーズBにて4,000万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家にはDBL Partners、Lyndon、Peter Riveが名を連ねる。加えてFusionX、Congruent Ventures、Coffee Bell、Tandem Capital、Spindrift Equities、XN Ventures、Balius Partners、Hardware lubらが同ラウンドに参加している。

Bellwether Coffeeは冷蔵庫型の自動コーヒー焙煎マシーンを開発し、珈琲ショップ向けにリース販売している。同社によれば、米国において大規模なコーヒー焙煎機を取り扱うためには認可を取る必要があり、焙煎のステップは比較的大規模な施設で実施するのが一般的だった。

Bellwether Coffeeは「焙煎」と「販売」が分離されていることで生じる運搬コストなどを課題に設定し、コーヒーの新鮮さに加えコスト面における効率化を同時に目指す。

話題のポイント:2019年はコーヒーとテクノロジーを絡め合わせたスタートアップが数多く誕生しました。以前取り上げたように、2018年における「コーヒースタートアップ」の総調達額は計10億ドルと2017年との比較だけでも4倍にも拡大しています。これは感覚値ですが、2019年も昨年と比較し数倍の調達額になるのではないでしょうか。

<参考記事>

さて、「Bellwether Coffee」の主要サービスは、比較的安価で場所にも困らないコーヒー焙煎機を製造・販売することです。たとえば個人経営の小さなコーヒーショップであっても、焙煎と販売を同時に行い新鮮なコーヒーを提供できる世界を目指しています。また、運搬作業がなくなるため、消費者に届くまでのコスト削減も可能とさせます。

特に着目すべきなのは、焙煎機に付属しているソフトウェアには、販売するコーヒーの生豆を生産・販売しているコーヒー農家にチップを直接送れるシステムが搭載されている点です。

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近年オーガニック食材の販売棚に、生産している方の顔写真が載っているお店が増えていますが、この点を完全にオンライン化。コーヒーを買いに来た人が生豆からその日のコーヒーを選択し投げ銭(チップ)を送ることを実現させました。

コーヒー農家は比較的発展途上国を拠点にしている傾向にあり、賃金を抑えるために未成年の子供や女性が低賃金で労働を強いられる環境にあります。

以下は、アメリカ合衆国労働省が発表した国際規約に違反し労働を強いられている子供が問題となっている地域です。カリビアンや南米、アフリカ大陸などコーヒー豆の生産地として著名な個所が挙げられていることがわかります。

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アメリカ合衆国労働省

この問題を実際に現地に赴いて実情を調べ上げたドキュメンタリーでは、大人の労働者が農家運営者に対し「少しでもお金を得るため子供も働かせて欲しい。でなければ、我々は働かない」と述べています。これにより、運営側も労力として子供を迎え入れなければならない負の連鎖が起きているといえます。

結局元をたどれば「貧困」に行きつくこの問題。これは、今まで生産者のコーヒー農家と消費者の私たちが繋がるきっかけがなかったことも一つの大きな理由かもしれません。

Bellwether Coffeeの焙煎マシーンを利用すれば、インターネットを通し、物理的距離を超えた解決策を提供できる可能性を秘めています。

特に欧米諸国ではチップ文化は一般的。最終消費者と生産者がお互いに支えあうエコノミー形成を、焙煎マシーンを通して提供できるはずです。世界規模の新たな「経済圏」が生まれることになるでしょう。

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