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クラフトビール業界に風穴を開ける「Best Beer Japan」が正式サービス開始、ビア樽回収の現場密着から見えてきた次なる事業フェーズへの道筋

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会社設立と資金調達を報じてから約1年、先月にはその最初のフェーズとなる、ビア樽回収サービス「レン樽」の正式サービスを開始した Best Beer Japan。その動向を確かめるべく、同社のビール樽回収業務に密着してみた。 まず、Best Beer Japan がどういうビジネスをしているかを説明しておこう。クラフトビールをお店で飲んだりすると、残念ながら、大手ブランドのビールに比べると値段の高いも…

Best Beer Japan 共同創業者 Peter Rothenberg 氏
Image credit: Masaru Ikeda

会社設立と資金調達を報じてから約1年、先月にはその最初のフェーズとなる、ビア樽回収サービス「レン樽」の正式サービスを開始した Best Beer Japan。その動向を確かめるべく、同社のビール樽回収業務に密着してみた。

まず、Best Beer Japan がどういうビジネスをしているかを説明しておこう。クラフトビールをお店で飲んだりすると、残念ながら、大手ブランドのビールに比べると値段の高いものになってしまう。理由は大きく2つあって、一つは大量生産ではない点と、もう一つは物流が確立されていない点。

「現場を知らないとね」と自らレン樽の回収に向かう Peter Rothenberg 氏
Image credit: Masaru Ikeda

クラフトビールの世界では卸業者など大手ブランドビールのようなの中間流通ネットワークが存在しない。クラフトビールを提供する飲食店はクラフトビールの醸造所に直接オーダーを入れ、低温配送などの宅配便などで直送してもらっている。使用後の空になったビア樽は、ブランドビールのように卸業者が回収してくれるしくみは無いため、飲食店は宅配便を使って醸造所に返却している。

Best Beer Japan は、このビア樽を醸造所相乗りのレンタル形式のものに標準化し、空になったビア樽を回収することで店舗の業務を効率化しビア樽回収のコストや手間を極少化。このユーザバリデーションのフェイズを通じて、お客はクラフトビールが飲みやすくなるか、お店はクラフトビールを提供しやすくなるか、など、ビヘイビアが変化するかどうかを見極めることが狙いだ。

大田区にある Best Beer Japan の倉庫にて。ここに回収され、多くのレン樽が次の出番を待っている。
Image credit: Best Beer Japan

Best Beer Japan にとっての直接の顧客は醸造所で、醸造所から届けられたビールが飲食店で消費されて樽が空になると、店員は樽表面に貼付された QR コードをスマートフォンでスキャン。これだけで5営業日以内に Best Beer Japan が樽を回収に来てくれる。Best Beer Japan の担当者は、樽回収時に QR コードのスキャンだけで回収管理できるので、いわゆるギグワーカーでも対応できる。8月上旬現在、6社の醸造所がレン樽を採用しているそうだ。

以前にも書いたが Best Beer Japan が目指すのは、クラフトビールの物流スタートアップではなく、クラフトビールの D2C モデルだ。その構想はまだ一歩目を踏み出し始めたばかりだが、クラフトビールを扱う飲食店舗からの反応は上々で、飲食店舗からの醸造所へのボトムアップと醸造所オーナーへのトップセールスを通じて、今後、ビジネスのスケールアップを拡大していく計画だ。

この日1軒目の回収先は、表参道にあるログキャビン風のビアバー「BEER BRAIN」。「醸造所に伝えたいことがあれば伝えますよ」とユーザヒアリングに余念のない Peter Rothenberg 氏。アメリカ人にして、〝現代の三河屋さん〟っぽい。
Image credit: Masaru Ikeda


樽回収時はバーコードをスキャンするだけ。充填、出荷、回収、洗浄など、樽に関わる全てのステイタスを QR コードスキャンによりクラウド上で管理している。(Image credit: Masaru Ikeda)

2軒目の回収先は、クラフトビアバル IBREW 新橋駅前店。
Image credit: Masaru Ikeda
30種類ものクラフトビールを扱う IBREW では、空になったビア樽の返却時に醸造所毎に異なる運送業者の伝票を書く作業が一苦労。「レン樽」なら、醸造所に関係なく QR コードをスキャンするだけで Best Beer Japan が回収に来てくれる、と店員さんからは好評。
Image credit: Masaru Ikeda
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元TIAのピーター・ローゼンバーグ氏ら、クラフトビール業界に風穴を開ける「Best Beer Japan」を始動——著名投資家15人から1,500万円を調達

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起業家というのは破天荒であることが多いし、むしろ、それは賞賛に値する称号みたいなものかもしれないが、世界的に見ても彼ほど枠にはまらない男は珍しいだろう。Peter Rotheberg 氏は UCLA を卒業後、ICU への留学のため2007年に来日。2014年には MOVIDA Japan 第5期から輩出された英語学習サービス「Eigooo!」を続けるかと思いきや、東京・浅草で人力車を引き始め、ス…

Best Beer Japan 創業者:CEO Peter Rothenberg 氏、Chief Beer Officer Eldad Bribrom 氏

起業家というのは破天荒であることが多いし、むしろ、それは賞賛に値する称号みたいなものかもしれないが、世界的に見ても彼ほど枠にはまらない男は珍しいだろう。Peter Rotheberg 氏は UCLA を卒業後、ICU への留学のため2007年に来日。2014年には MOVIDA Japan 第5期から輩出された英語学習サービス「Eigooo!」を続けるかと思いきや、東京・浅草で人力車を引き始め、スタートアップメディア「Tech in Asia(TiA)」の日本版編集長に就任した。

昨年夏くらいから、Rothenberg 氏の記事を目にすることが少なくなり、六本木にある East Ventures のオフィスで何かしらの準備をしているのは見聞きしていたのだが、その準備していた彼の新しい事業がいよいよ日の目を見ることになった。起業家を追う立場から、再び起業家の土俵へと戻ってきた彼に「おかえりなさい」と言いたい。

Peter Rothenberg 氏は、クラフトビールを主業とするスタートアップ「Best Beer Japan」を設立し、エンジェルラウンドで総額1,500万円を調達した。このラウンドに参加したのは、次の15のベンチャーキャピタルおよび個人投資家だ。数が多いので箇条書きにする。

  • NOW(家入一真氏が先月ローンチしたファンド
  • 高野真氏(Forbes JAPAN CEO 兼編集長、D4V CEO、MTパートナーズ 代表取締役)
  • 谷家衛氏(D4V、あすかアセットマネジメント 代表取締役)
  • 小川淳氏(チームボックス取締役、ピクシィダストテクノロジーズ・マネージングダイレクター
  • 山田浩司氏(boundary spanner 代表取締役)
  • 松平典宏氏(Hoops Partners Chief Investment Officer)
  • 小原聖誉氏(StartPoint 代表取締役)
  • 綿谷浩明氏(AS-ACCELERATOR 代表取締役)
  • 高橋寿瑞氏(Miz Partners)
  • 曽我健氏(SGcapital)
  • 大賀康史氏(フライヤー代表取締役)
  • 山田尚貴氏(エニドア代表取締役)
  • 伊藤健吾氏(D4V)
  • 名前非開示の個人投資家2名
Best Beer Japan のロゴ
Image credit: Best Beer Japan

THE BRIDGE の読者の中にもクラフトビールのファンは少なくないと思うが(そして、今回のラウンドに参加した投資家の多くもまた、クラフトビールのファンだと思われる)、お店で飲んだりすると、残念ながら、大手ブランドビールに比べると値段の高いものになってしまう。理由は大きく2つあって、一つは大量生産ではない点と、もう一つは物流が確立されていない点。前者ついては、消費者との需要に依存するので端的に解決できることではないが、特に驚かされるのは後者の理由の方だ。

大手ブランドビールの場合は、大手ビール会社の工場で生産されたビールがが卸業者に配送され、そこから小売業者や市中の酒店を介して供給される。飲食店などでは、ビア樽がサーバに接続されて提供されているのは、よく見受けられる光景だ。一方、クラフトビールの世界では、卸業者などの中間流通ネットワークが存在しない。クラフトビールを提供する飲食店などでは、クラフトビールの醸造所に直接オーダーを入れ、低温配送などの宅配便などで直送してもらっている。使用後の空になったビア樽は、ブランドビールのように卸業者が回収してくれるしくみは無いため、飲食店は宅配便を使って醸造所に返却している。

Image credit: kjekol / 123RF

ここまで見てきてわかる通り、クラフトビールの物流は非常に非効率だ。仮に、店舗で1パイント1,000円〜1,500円くらいで販売されるクラフトビールの場合で原価は650円程度、その原価のうち2〜3割は物流コストが占めている。物流を効率化しコストを圧縮できれば、飲食店は今より安い価格でクラフトビールを提供できるようになり、ひいてはクラフトビールの消費意欲を高めることができるのではないか、というのが Rothenberg 氏の狙いだ。需要が増えれば醸造所は生産量を増やすことができるので、前述した2つの理由のうち前者についても解決に近づけることができる。

クラフトビールのビア樽は標準化されているわけではないが、醸造所はビア樽で商品をブランディングしているわけではない。言い換えれば、外面ではなく中身で勝負をしているので、このビア樽を異なる醸造所の間でもシェアリングし、相乗りして流通の効率を上げようというのが Best Beer Japan の当面の構想だ。同社では、この構想に参加する醸造所と、東京を中心としたクラフトビールを提供する飲食店の協力を得て、ビア樽の回収サービスを始める。これはいわゆる、アーリースタートアップにとってのユーザバリデーションのフェイズで、Rotherberg 氏によれば、ビア樽の回収サービスを提供することで、飲食店のビヘイビアが変化するかどうかを見極めることが、最大の目的だという。

物流会社になるわけではない。21世紀のビール会社を目指して…。

オーダーメイドビールのレシピイメージ
Image credit: Best Beer Japan

ビア樽の回収サービスから事業を始める Best Beer Japan は、クラフトビールの物流効率化スタートアップになろうというわけではない。ここで得られた市場データや知見をもとに、数ヶ月から1年後にはクラフトビールの E コマースや、オーダーメイドのビールを自ら醸造することもにらんでいる。ビア樽の回収サービスと並行して酒造免許や酒販免許の取得準備を始めれば、この事業を準備するための時間も無駄にはならない。既存の醸造所の中には生産能力に余剰があるところも少なくないので、印刷工場をネットワークして成功したラクスルと同じようなモデルが、ビールの世界でも実現できるのではないかと Rothenberg 氏は期待している。

クラフトビールの販売には、デジタルツールも役立つだろう。クラフトビールはファン層が厚いので、基本的にはリピーター商売だ。一定のマーケティング努力とブランド戦略が必要ではあるが、大手ブランドビールのような熾烈なシェアの食い合いからは一定の距離を置いて、圧倒的に低いユーザ獲得コストでファンを獲得していくことができる。この分野には、今年2月に事業買収された「ビール女子」のようなウェブメディアが存在するが、ストーリーテリングなコンテンツを取り入れたオンラインマーケティングは、クラフトビールとも非常に相性がよいと言える。

スタートアップという文脈では、無人コンビニの「600」などとの連携もあり得るかもしれない。WeWork ではアフターアワーになると無料でビールが供されているのは有名な話だが、同様に、労働環境を重視するスタートアップのオフィスで、600 の冷蔵庫からクラフトビールが提供されるカルチャーが生まれてくることは、あってもいい話だ。データドリブンな販売戦略をもとに、売れ筋のクラフトビールを最適な物流サイクルで届けることも可能だろう。

醸造所、物流、販売チャネルを一通り手に入れることができれば、クラフトビールの D2C モデルができあがることになる。ビール産業は歴史がある分、既存のビール会社にとっては新しい経営方法を取り入れる上で一定のハードルがある。Best Beer Japan では将来、レシピをデジタル化するなどして醸造プロセスにも力を入れ、日常的にクラフトビールが飲めるような環境を作り上げたいとしている。同社のタグラインである「ビールで人生にフレーバーを」には、そんな Rothenberg 氏の思いが込められている。

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