BRIDGE

タグ Brex

鍵は「屋外広告」一気に拡大したBrexの #スタートアップPR 戦略を紐解く

SHARE:

ピックアップ: AdQuick raises $6M to conquer an advertising market Google and Facebook won’t ニュースサマリー: OOH(Out-Of-Home)広告のマーケットプレイス「AdQuick」は2月14日、Initialized Capitalがリードを務めたシリーズAラウンド600万ドルの資金調達を行なったと発表した。Wn…

Screen Shot 2020-02-22 at 2.05.16 AM
Image Credit: Brex

ピックアップ: AdQuick raises $6M to conquer an advertising market Google and Facebook won’t

ニュースサマリー: OOH(Out-Of-Home)広告のマーケットプレイス「AdQuick」は2月14日、Initialized Capitalがリードを務めたシリーズAラウンド600万ドルの資金調達を行なったと発表した。WndrCo、Shrug Capital、Work Life Ventures、The Todd&Rahul Angel Fundらも参加した。累計調達額は940万ドルを達成した。

AdQuickは、自社が所有する屋外広告スペースをレンタルするビジネスではない。広告スペースの所有者と購入者を結び付け、購入の手数料を受け取るマーケットプレイスモデルを採用。また、従来のオンライン広告同様に、広告効果を測定できるツールを導入。AdQuickが活用しているターゲットは、昨年米国内で未使用になったと推定される全OOH広告スペースの30〜35%に当たる箇所だ。

昨今では不動産スタートアップ「ZeroDown」や、クレジットカードスタートアップ「Brex」が屋外広告キャンペーンを大々的に展開。大半の企業がGoogleやFacebook広告を展開する中、広告チャネルの差別化が一切図れなくなった。そこで再注目されている屋外広告に着目したのがAdQuickである。

man beside woman billboard
Photo by VisionPic .net on Pexels.com

話題のポイント: 屋外広告の価値の再評価が始まっています。

最たる例がAppleによる「Shot on an iPhone」キャンペーンでしょう。みなさんも駅構内の至る所で見かけたことがあるはずです。同社は多額のキャンペーン費用を支払っており、世界中の都市で展開。伝統的な屋外広告枠に独自のアプローチを採用しています。

2017年のAdWeekの調査によると、OOH広告市場における上位100利用企業の約25%はハイテク企業とのこと。Google、Facebook、Apple、Snapchat、Twitterが代表的です。自社プラットフォームでデジタル広告を展開できる企業らが、オフライン広告に多額の費用を支払っている点は皮肉なことかもしれませんね。

さて、OOH広告への投資は、スタートアップも積極的に行なっています。Venmo、Jet.com、Oscar、Casper、Percolateなどのハイテクスタートアップはすべて、ニューヨークを中心に広告展開をしています。

それではなぜ、テック企業らは屋外広告に注目するのでしょうか。

Peter Thielも投資したクレカスタートアップ「Brex」の事例

Screen Shot 2020-02-22 at 2.00.23 AM
Image Credit: Brex

スタートアップ事例ではBrexが昨今の代表ユースケース。同社は著名投資家Peter Thiel氏も投資するスタートアップ向けクレジットカードを提供する企業です。ここからはHow Brex Is Building the Startup Marketing Playbook (Beyond The Billboards)の記事を参考に、同社の広告戦略を紹介します。

Brexは当時22歳と23歳であったHenrique Dubugras氏とPedro Franceschi氏によって創業されます。Brexは非常にユニークかつ積極的なPR戦略でステークホルダー獲得に乗り出します。ローンチ前には潜在顧客獲得のために1,000人以上の外国人起業家にLinkedInにコンタクト、立ち上げ初期から投資家デックをプレスに提供、イベント登壇で情報発信、そして30万ドルの屋外広告展開をしかけています。

元々、Brexは初期顧客100名を獲得するまで1年間ステルスで活動。アイデア検証に時間コストをそれなりに費やしていたため、ローンチ直後に爆発的な獲得成長数を望んでいました。そのため、あらゆるインパクトあるマーケティング・プロモーション施策を打つ必要性があったのです。

Brexのマーケティング戦略は、リターゲティング軸で展開されます。

Brexはオンライン広告を認知拡大と顧客獲得の場と位置付けています。まず、YouTube広告などでブランド広告を展開します。何度かテストを繰り返したのちにデモグラフィックデータを収集。その後、自社サイトでコンテンツを展開し、潜在顧客の自然流入を待ちます。最終的には訪問ユーザーをトラッキングして、有料広告でリターゲティングを展開します。顧客がサインアップしたら口コミに持っていくことで、低コストな顧客獲得を目指します。

「顧客データのサーチ」「コンテンツ展開」「有料広告」「顧客獲得」「口コミ」の5ステップの順で展開されたのがBrexのマーケティング戦略です。これをループのようにぐるぐる回して顧客獲得を目指しました。広告費用のペイバックピリオドは6カ月分以内(粗利益で回収する)と定めていたようです。

people walking near buildings during night time
Photo by Lukas Hartmann on Pexels.com

興味深いのが「コンテンツ展開」のステップ。スタートアップに資金はありません。そこで投資家デック公開からイベント出演に至るまで、オンラインのみならず、オフラインコンテンツの積極発信に至るのです。こうした接点から「Brex」「スタートアップ」「クレジットカード」など、どれか1つでもオンラインキーワード検索をして、引っかかった顧客を半年以内に引き抜いたのです。

調達額が増えてきた段階で、サンフランシスコ地域を中心に30万ドル規模の屋外広告キャンペーンを打ちます。起業家があふれる街であるため、屋外広告に載せるキーワードも自ずと限られてきます。オンライン広告で収集したデモグラフィックデータと組み合わせて最適な広告板をデザイン。先ほどと同じく特定キーワード検索を1つでもした潜在顧客獲得に走ります。

もちろん、屋外広告はブランド認知の側面も高いのですが、Brexの場合はROI(費用対効果)は非常にポジティブなもののようです。一貫したリターゲティング戦略で上手くオフライン展開が働いている証左でしょう。

全方位からコンテンツ展開を行い、スタートアップが持ち得る全ての「コンテンツ資産」を棚卸し、オンラインでのサインアップに持っていく流れがBrexの戦略。その一貫として屋外広告が活用され、ブランド認知から顧客獲得まで効率的に展開しています。

スタートアップPRの本質、「雰囲気作り」を最大化

pexels-photo-3153201
Photo by Canva Studio on Pexels.com

Brexのプロダクト自体がスタートアップに特化しているもののため、シリコンバレーのような起業家の集まる地域にターゲットを絞れます。そのため、地域性と相性の良い屋外広告には打ってつけです。ただ、最も見習うべき重要な点は、BRIDGEのスタートアップPRでも述べてきた、「雰囲気作り」だと感じます。

<参考記事>

筆者は昨年1月にサンフランシスコを訪れていた際、現地の起業家さん何人かと会いましたが、特に若手起業家であれば(特に昔から使っているカードがなければ)Brex一択という雰囲気を強く感じました。「起業家のクレカ = Brex」の流れができていたのです。

まさにバイラルができていたのがBrex。ここに至るまでに初期投資を戦略的かつ、ある程度のコストは惜しまずに展開したのが同社の実績です。

巧みな雰囲気醸成を行えた理由は3つ挙げられると考えます。1つはオンライン広告最適化。自社プロダクトがどこに一番刺さるのかをデータドリブンに探り、マーケティングの基軸となる層に向けて徹底的にアプローチします。世界中でスタートアップ × クレジットカードの文脈に興味のある地域を絞り込みます。

2つ目はナラティブ(語りかけ)です。イベントや投資デックから徹底的に直接ストーリーを投げかけます。顧客に近い場所へ趣き、プロダクトの有用性を解くことで、Brexカードを好きになり・積極的にレビューを発信してくれるインフルエンサー・コミュニティを着実に積み上げていきます。

この点は以前ご紹介したSuperhumanの戦略と似ています。インフルエンサーは自らの体験の語り部となる、スタートアップPRにおいては重要な媒体となりえます。ちなみに1つ目のオンラインデータから、イベント都市先の選定もしていたのかも知れません。

<参考記事>

advertisements architecture billboards broadway
Photo by Marcus Herzberg on Pexels.com

ここまでで顧客獲得導線と口コミバイラルが完成しているように思えますが、最終的に主要都市に丸ごと「Brexを利用しよう!」という雰囲気作りに動きました。それが3つ目の屋外広告なのです。

無意識のうちに、いつでも目に飛び込んでくるプロダクトメッセージ。日常の中に溶け込むように、各都市の風土に最適化されたキーワードを訴求することで、オンライン広告や口コミの社会的信用性を向上させるのが屋外広告です。口コミ紹介をされた際、「これ見たことあるよね」のような話の流れに持っていくことができるのは屋外広告の最大の強みでしょう。

また、広告の内容もいわゆる宣伝っぽいものではなく、「配車サービスを使えばリワードが7倍」のような利用体験であったり、「3カ月でスタートアップへのキャッシュバック総額1億ドル」といったコミュニティ感を訴求しています。なるべくターゲット顧客の日常行動に変化をもたらしたり、同じ起業家層が使っているから見逃せないといった良い意味での焦りを生み出しています。

スタートアップPRでは単純なプロダクト内容を宣伝しても効果は薄い印象です。顧客に行動変化を起こしたり、自分が所属するコミュニティで使われている雰囲気作りが大切になります。Brexはこうした点で優れたPR思考を持ち合わせ、オンラインとオフラインの両軸を上手く回すオムニチャネル的な戦略展開に秀でていたと感じます。

今では配車サービスに屋外広告を出稿できるプラットフォーム「Firefly」なども登場。街中で屋外広告を多く見受けられる機会が増えました。事実、OOH市場は堅調に伸びており、Statistaのデータによると2020年の世界市場規模は約400億ドル。よりマクロ視点からターゲット顧客にサインアップを促す大きな力を持っており、プロダクト購買に迷っている人の背中を押す屋外広告の重要性は徐々に上がってきそうです。

創業2年で評価は26億ドル(2800億円)ーースタートアップ限定法人カード「Brex」の差別化要因はどこに

SHARE:

ピックアップ:Two-Year Old Startup Brex Now Has A $2.6 Billion Valuation ニュースサマリー:サンフランシスコ発フィンテック・スタートアップ「Brex」は11日、新たにシリーズCにて1億ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はKleiner Perkins Growth Fundが務める。その他にもY Combinator Cont…

Capture.PNG

ピックアップTwo-Year Old Startup Brex Now Has A $2.6 Billion Valuation

ニュースサマリー:サンフランシスコ発フィンテック・スタートアップ「Brex」は11日、新たにシリーズCにて1億ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はKleiner Perkins Growth Fundが務める。その他にもY Combinator Continuity、Ribbit Capital、DST Global、Greenoaks Capital、IVPが参加した。

同社はスタートアップ向けに独自のリワードプログラムや、クレジットスコアを必要としない独自の審査方法にて法人向けクレジットカードを運用するスタートアップ。今年4月にも、同社は1億ドルの資金をBarclay Investment Bankから調達していた。今回のラウンドにて、同社のバリュエーションは26億ドルと報じられている。

話題のポイント:1週間ほど前から噂されていた、BrexのシリーズCにおける資金調達がようやく公開に至りました。同社がなぜ単なるフィンテック企業ではなくここまで注目され、またYCにも選出されているのかは以前の調達時にお伝えしました。

<参考記事>

同社はクレジットスコアがなく、クレジットカードを発行出来ないスタートアップの課題を解決しようとしています。

同社のサイトに記載されている説明によれば、通常米国では、スタートアップが法人カードを作る際個人のクレジットスコアやSSN(Social Security Number)が求められるそうです。2017年にFRBが公開したデータによれば、全米の87%の経営者は、個人のクレジットスコアを利用した資金の調達を実施していると報じています

一方で同社のライバルには、独自の発行判断を元にスタートアップを支援しているアメックスやBento for Business、Divvyなどがいます。しかし、Brexはその中でもスタートアップに特化したリワードプログラムを導入し、そのブランド力を底上げしているのが特徴です。

もう少し掘り下げてみましょう。なぜ彼らが大手を出し抜けたのでしょうか?

法人カードを個人のクレジットスコアで作成する理論は一見、誰にでもフェアに対応しているように見えますが実はそこに大きな落とし穴が潜んでいます。下図は、Brexが指摘している既存システムの問題点。法人カード作成の際の契約書に、小さい文字で「Jointly and Severally Liable(連帯責任)」が記載されており、これはカード発行時点で個人資産が担保になされていることを意味しています。

Capture.JPG
American Express Terms & Conditions

Brexによれば、この条項により60%ほどのスタートアップ創業者がクレジットカードの借金により最大5万1000ドルに相当する個人資産を差し押さえられる結末を迎えていると公表しています。

その面Brexでは個人ではなく、企業のキャッシュフローや従業員の詳細、銀行状態をベースに独自の手法で発行判断をすることで差別化を果たしました。

同じ信用情報であってもスタートアップというのは不安定な状態が続きがちです。つまり、より実態に即した形で資金提供をするというスタンスが彼らをしてここまで急成長させた、ともいえそうです。期待値が大きいだけに今後、どのような伸びを示すのか注目したいと思います。

ライドシェアはリワード7倍、スタートアップ特化型クレジットカード「Brex」が1億ドルをデット調達ーー2017年のYC卒業生

SHARE:

ピックアップ:Brex, the credit card for startups, raises $100M debt round ニュースサマリー:サンフランシスコ拠点のフィンテック企業「Brex」が4月16日、1億ドルの資金調達を発表した。Barclay Investment Bankからのデットによる調達。同社はスタートアップに特化した法人クレジットカードを提供。スタートアップ向けのリワー…

Capture

ピックアップBrex, the credit card for startups, raises $100M debt round

ニュースサマリー:サンフランシスコ拠点のフィンテック企業「Brex」が4月16日、1億ドルの資金調達を発表した。Barclay Investment Bankからのデットによる調達。同社はスタートアップに特化した法人クレジットカードを提供。スタートアップ向けのリワードプログラムや、クレジットスコアを必要としない審査基準などが特徴。

2017年にY Combinatorのアクセラレータープログラムを卒業している。また、先月にはYCアクセラレータープログラムに参加していたブロックチェーン企業の「Elph」をDemoDayの1週間前に買収するなどしている。

話題のポイント:スタートアップにとっての鬼門が法人クレジットカードの作成です。例えば国内では時間もさることながら、創業間もない企業には審査が通らないなどの問題がよくありました。Brexが提供するクレジットカードは、個人のクレジットスコアーやデポジットを必要としないため、スピーディーに利用を開始することが出来ます。また、認証後には即バーチャルカードの利用が可能となり、3〜5日の間にカードが届くそうです。

ただこの程度のサービスでスタートアップ向けというだけでは差別化はできません。彼らの特徴は特出したリワードプログラムにあります。

Capture.PNG

例えばライドシェアサービスでは通常獲得できるポイントから7倍、旅行では4倍、レストランでは3倍、サブスクサービス利用で2倍獲得できる設計になっています。まさに、スタートアップ特有のエリアにおける利用を想定したエコシステム設計といえます。

また、スタートアップ企業が利用する頻度の高い企業とのパートナーシップを進めており、一例を挙げるとAWS, WeWork, Google Ads, Zendesk, DoorDashなどで決済を利用することで割引を受けることが可能です。WeWorkの場合であれば、6か月間15%オフで入居することもできます。

また、頻繁に発生するビジネストリップについては、プラットフォーム内にBrex Travelといった旅行に関わる全てをひとまとめに予約・管理できるサービスを組み込み、圧倒的なシームレスな体験を提供しています。

同社のポイントもそのまま利用できるため利便性も高そうです。リワードの倍率による「お得感」はもちろんですが、こういう導線設計ひとつで差別化要因になるという事例ではないでしょうか。