タグ Convertible Notes

私がノートよりもエクイティでの出資を好む理由【ゲスト寄稿】

本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。本稿は Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿) This…

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。本稿は Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Mark Bivens. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist. He is the Managing Partner of Shizen Capital (formerly known as Tachi.ai Ventures) in Japan. The original English article is available here on Bridge English edition.

Modified from a Pixabay image

私が過去に行った10件の投資のうち、2件を除いてすべてストレートエクイティの形をとっている。さらに、過去2年間に Shizen Capital がリードインベスターを務めた案件も、すべてエクイティラウンドに関するものだった。この記事では、私がアーリーステージのベンチャー投資において、コンバーチブルノートや SAFE ノートよりもエクイティラウンドを好む理由を説明する。

ここでは話わかりやすくするために、一定の条件に基づいて将来的にスタートアップの株式に転換可能な、あらゆる種類の非株式金融商品を包括する一般的な「ノート」という用語を使用する。これには、従来のコンバーチブルノートに加え、SAFE ノートや J-KISS ノートも含まれる(SAFE ノートや J-KISS ノートは、一般的に金利や満期がないという点で、負債というよりもワラントに近い挙動をする)。

私は、Shizen Capital が創業者とパートナーシップを組む際に大切にしている2つの原則、すなわち「整合性」と「透明性」に基づいて、ノートではなく株式での投資を希望している。

まず、なぜノートが株式投資よりも魅力的に見えるのか、その理由を再確認しよう。

  1. 法的な観点から見て、コストがかからず、実行しやすい。
  2. バリュエーションに関する難しい交渉を避けることができる
  3. 内部ラウンドの間、投資家の利益相反を回避できる。
  4. 資金調達において、投資家にオプション権と優先権を与えることができる。

では、これらの特徴を一つずつ説明していこう。

ノート契約は、投資家(ノートホルダー)とスタートアップという2つの当事者間の契約だ。将来のある時点で、契約書に定められた条件に基づいて、ノートが株式に変換されるか、または償還される。

ノートファイナンスでは株式が発行されないため、会社の手続きや法的届出は不要だ。定款の更新、株主間契約書の作成、正式な届出などは必要無い。投資家は、このような取引のために弁護士を雇う必要がないため、手数料を節約することができる(創業者も同様にこれを行うことができるが、個人的には創業者には少なくとも最低限の法律顧問を求めることをお勧めする)。しかし、将来的に希望するエクイティラウンドが実現すれば、前述の法的手続きがすべて必要になる。

SAFE ノートはスピード感があるが、それは投資家の動きが速い場合に限られる

理論的には、ノートを使った取引(ここでも SAFE や J-KISS の取引を含む)は、エクイティラウンドよりも迅速に実施できる。理論上は。手際よく処理すれば、簡単な株式投資は数週間で実行できる。対照的に、ノートは数日で実施することができる(特に SAFE や J-KISS は標準的なテンプレートに基づいているため早く進められる)。しかし、ノートを使った資金調達が数週間から数カ月も長引いていると嘆く創業者の声を聞くと、私は歯がゆい思いをする。科学的な分析をしたわけではないが、私の観察によれば、シリコンバレー以外の多くの地域では、数週間から数ヶ月に及ぶノートによる話し合いは珍しくないようだ。

気まずい会話の先送り

バリュエーションに関する難しい交渉を回避できることも、ノートによる資金調達の魅力だ。ノートによる資金調達では、取引時に会社の株式に価格を付けない。資金調達時に創業者と投資家が評価額で合意できない場合、ノートは価格に関する不快な会話を先送りしてくれる。

ここでは、コンバーチブルノートと SAFE ノートの違いが関係してくる。コンバーチブルノートでは評価額についての言及がないことが多いのだが、SAFE ノートではその構造上、評価額の上限が設定されているのが一般的だ。この評価額上限は、その時点での会社の評価を表すものではないが、当事者間の交渉による合意が必要であり、また、市場に対する将来のシグナリングの基礎となるものでもある。

透明性

さらに、ここで透明性の原則が登場する。不快なバリュエーションの会話を先延ばしにすることは、単に問題を先送りすることになる。最終的には、この会話は行われなければならず、将来は今日よりもはるかに高いリスクを伴うことになるだろう。さらに、このような方法では、多くの予期せぬ結果が生じる可能性がある。私は長年にわたり、多くの企業でこのような状況を目の当たりにしたが、多くの場合、創業者に不利益をもたらしてきたため、透明性の精神に基づき、私が目撃したことを創業者に警告する義務があると考えている(注:この問題については、以前書いた記事で詳細に警鐘を鳴らしている)。

内部ラウンド

ほとんどのプロの VC ファンドにとって、内部ラウンドは適切に行われなければコンプライアンス上の問題を引き起こす可能性がある。誤解のないように言っておくと、内部ラウンドとは、外部の重要な関係者が投資していないスタートアップの将来の資金調達ラウンドを意味する。外部の市場参加者がいない既存の投資先企業の1社をリファイナンスする VC ファンドは、新しいラウンドが株式で価格設定された場合、その後の評価を正当化する必要があり、本質的な利益相反を反映している。コンバーチブルノート(このような場合、コンバーチブルブリッジローンとして構成されることが多い)を採用することで、この問題を克服することができる。

ミスアライメントのリスク

最後に、ノートによる資金調達は、当然ながら投資家に追加のオプション権を与え、資金調達における優先権をもたせる可能性がある。

まず、優先権の概念から始めよう(この仕組みは、SAFE や J-KISS ノートよりもコンバーチブルノートの方が顕著だ)。投資家の観点からすると、投資先企業の全株主よりも上位に位置することで、両方のメリットを享受することができる。そのメリットとは、うまくいった場合には転換してアップサイドを享受し、うまくいかなかった場合には、企業が財務的に窮地に陥ったとしても、償還してお金と利息を得ることができるというものだ。したがって、コンバーチブルノートの契約条件は重要だ。コンバーチブルノートを発行する前に、その内容を確認する必要がある。

オプション権という概念は、もう少し微妙なものだ。ベンチャーキャピタリストとして、私はオプション権を歓迎しており、実際、健全なポートフォリオ管理のために積極的にオプション権を求めている。しかし、私が投資した創業者には、ノートの意味を十分に理解してもらいたいと思っている。

例えば、VC がシードラウンドで5,000万円を20%の割引と4億円のバリュエーションキャップを含む SAFE ノートで投資する場合を考えてみよう。シリーズ A の時期になると、投資家と創業者のそれぞれの利益は、わずかなずれのために発散する。創業者の直近のインセンティブは、シリーズ A の評価額を高くすることであり、できれば割引を相殺するのに十分な高さ、つまり5億円以上にしたいと考えている。

一方、投資家のインセンティブは、シリーズ A の評価額が低ければ低いほど、投資家のノートが転換される株式数が多くなるため、評価額を低くすることにある。もし、シードラウンドがノートではなく、評価額が確定したエクイティラウンドとして調達されていたら、創業者と投資家の両者は、将来のシリーズ A で直面する希薄化問題にについて意見を一致していただろう。

私はノートで投資することにイデオロギー的に反対しているわけではない。Shizen Capital では、すべての有望な投資を長期的な関係としてとらえている。したがって、私たちが支援する創業者とインセンティブを調整し、透明性を持って行動することができれば、両者間の共同パートナーシップはより健全で実りあるものになると信じている。

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録


シリコンバレーで主流になっている「Convertible Notes」(転換社債)とは?

SHARE:

「Y-Combinator」を運営するPaul Grahamが過去に以下をツィートしたことがある。 “Convertible notesが勝った。今期Y-Comから出てきたスタートアップはConvertible noteで投資された。” もはや、シリコンバレーではConvertible note(転換社債)で出資することが主流になっています。 投資家または投資家グループから…

「Y-Combinator」を運営するPaul Grahamが過去に以下をツィートしたことがある。

“Convertible notesが勝った。今期Y-Comから出てきたスタートアップはConvertible noteで投資された。”

もはや、シリコンバレーではConvertible note(転換社債)で出資することが主流になっています。

投資家または投資家グループから企業が受けた借入金を、当事者たる当該の企業および投資家または投資家グループが、後日、双方の同意によって株式に転換しようとするとき、これをConvertible Note(転換社債)と呼びます。

融資が行われるときは、どのような方法で借入金を株式に転換するかが指定しておかれるのが一般的です。場合によっては、割引やワラントの形で補償されることがありますし、そのような補償が与えられない場合もあります。また、借入金の転換にあたって査定額に上限が設けられる場合もありますし、設けられない場合もあります。

投資家と融資を受ける企業の双方、またはいずれかが、直接株式を発行する代わりにまず債務契約を結び、後日、改めて借入金を株式に転換しようとするには、いろいろな理由があります。企業にとっての理由は明らかです。

自社の株式の価値が将来高まると判断している会社にとっては、まず融資を受けて、それを後日、株式に転換することで借入金の価値を小さく目減りさせることができるからです。同時に、借入と株式の発行手続きを比較した場合、この方法を取った方が取引コスト、特に法的手数料を小さく抑えられるのも事実です。

一方、投資家の側から見ると、株式より借入金を選ぶ理由はそれほど明確ではありません。時として、投資家達は企業への投資機会が得られること自体を重要視するあまり、資本を転換社債に変え、次のラウンドで自分達が価格決定権を握ろうとする場合があります。

このような場合の投資家は、現時点での価格決定に固執すると、自分が投資しようとしている資金を当該の企業が単に受け取ってくれなくなるのではないかと危惧しているのです。また別の場合には、ワラントや割引の形で付く補償に十分な価値があると判断し、これが株式より借入金を選んだ場合のオフセットとなると考えることもあります。

最後に、株式より借入金の方が清算してもらいやすく、企業から株式を購入するより企業への借入金の形を取った方が、いくぶん安全になるという利点もあります。ただし、起業初期のスタートアップ企業にとっては、これはたいして価値のないことです。起業に失敗すれば、清算価値がほとんどなくなってしまうからです。

ワラントも形を変えたオプションです。ワラントとオプションとは非常によく似通っています。一般的な転換社債では、次のラウンドに何らかの担保が売却される場合にワラントがオプションとなります。転換社債を発行する際の補償は、多くの場合、ワラントまたは割引の形にします。

ワラントは「ワラント・カバレッジ率」で表現される場合が一番多いようです。たとえば、「ワラント・カバレッジ率20%」となっている場合には、転換社債の規模に応じて、たとえば100万ドルであれば、それに20%をかけたもの、つまり20万ドルとなり、次のラウンドにはワラントのおかげで20万ドル分多く安全に保持することができるという意味になります。この例を締め括るには、次のラウンドは400万ドルだとしましょう。

すると、次のラウンドの総額は520万ドルになる訳です(新規の400万ドルに100万ドル分の転換社債を加え、さらに20万ドル分のワラントを追加した額)。転換社債の総コスト120万ドルは、次のラウンドでは現金にして100万ドルの価値に希薄化されます。

割引はもっと分かりやすい概念ですが、その実行はより複雑です。割引も百分率で示されますが、最も一般的な割引率は20%から25%です。割引は転換社債の債権者が次のラウンドで転換する際に受ける価格割引の量を示しています。前の例と同じく、ここでも割合は20%であったとしましょう。

融資を受けた企業が新しく現金400万ドルの収入を得たとすると、転換社債の債権者は100万ドル分の借入金を転換することで、そのラウンドでは125万ドル相当の株式を手にすることができます(100万ドルを80%で割ると125万ドルになります)。見方を変えると、これは100万ドルが125万ドルから20%を割引した値だということもできます。

転換社債には、転換する際の査定に上限を設けるのが一般的です。典型的な上限の設定法は現在の査定額どおり(これはあまり一般的ではありません)からその数倍の間で任意の値を定めるというものです。最近では、上限を設けない転換社債も出始めています。これらの債券には転換する際の査定上限がありません。

スタートアップ企業は、よく起業初期に転換社債を通じて資本を獲得する方法を検討します。スタートアップ企業は速い動きが身上で、取り引きコストを小さく抑えようとすると同時に、概ね天使のような投資家達と取り引きしているため、シードラウンドやシリーズAラウンドよりも転換社債の方が次のラウンドへと進みやすいものです。

BRIDGE Members

BRIDGEが運営するメンバー向けイベント「Tokyo Meetup」では新サービスの紹介やノウハウ共有などを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。メンバー登録は無料です。
  • BRIDGE Canvasの購読
  • メンバー向けDiscordご招待
  • BRIDGE Tokyoなどイベントご招待
無料メンバー登録