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「無人レストラン」導入による顧客体験と従業員満足度の向上ーー全自動サラダ・レストランEatsaにみる外食業界5つの新常識(後半)

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 前編では、「無人レストラン技術の外販」と「AIロボットの活用」に関してお伝えしました。ここからは残り3つの要点に関して考察していきたいと思います。 3. 従業員満足度の向上 大手フード・チェーンがオペレーションの自動化を進めている話を前編でしましたが、実際に アメリカにおける労働者人口の10%がレストラン業界に就いていることもあり、自動化が進めば8億職の外食産業に関わる仕事がロボットに代替され…

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Image by Eatsa

前編では、「無人レストラン技術の外販」と「AIロボットの活用」に関してお伝えしました。ここからは残り3つの要点に関して考察していきたいと思います。

3. 従業員満足度の向上

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Image by  Luca Vanzella

大手フード・チェーンがオペレーションの自動化を進めている話を前編でしましたが、実際に アメリカにおける労働者人口の10%がレストラン業界に就いていることもあり、自動化が進めば8億職の外食産業に関わる仕事がロボットに代替される可能性 があります。

一方、ロボットによるマニュアル職の代替がデメリットのみをもたらすとは限りません。必要最低限の従業員を雇うことで一人当たりの給与や福利厚生の向上を図ることが可能になるメリットがあります。

例えばロボットを活用したピザ・チェーン「 Zume Pizza 」は、ロボット利用による製造コストの削減と、利益率の向上を従業員手当に還元しています。 アメリカの調理場コックの平均時給は11.25ドル 。一方で「Zume Pizza」の 最低時給は15ドルからと同社CEOが述べています 。また、通常のフード・チェーン企業であれば提供されない福利厚生に関しても、従業員家族全員が眼科・歯科保険を適用できる仕組みを構築しています。ちなみにアメリカでは国民保険でも眼科・歯科保険はオプション扱いのため、かなりの高待遇といえるでしょう。

このように、「Eatsa」のシステム導入は単なる店舗数の急拡大に終わらず、各従業員に対して、よりレベルの高い生活を提供するきっかけにもなるわけです。

しかし、「Eatsa」や「Zume Pizza」の店舗に勤められるのは、例えばロボットの故障にその場で対応出来る高スキルのスタッフや、高いレベルで顧客対応が可能な店舗スタッフのみと言えるでしょう。この点、既存のマニュアル仕事しか身についていない人たちは、ロボット運用時代にどう職を探すのか、と疑問に残ります。

2016年に筆者はシリコンバレーで開催された「 日経イノベーションフォーラム 」に参加したのですが、中国企業「 Baidu(百度) 」のチーフサイエンティスト、アンドリュー・ヌグ氏がこの疑問に対して次のように話していました

「ロボットによる既存職業の代替が進んだ際、政府がAIやロボット技術を学べる教育システムを、セーフティーネットとして作っておくべき」。

アンドリュー氏の意見には賛同できます。無人レストランの普及によって、外食産業に人手が必要となくなる日も近いでしょう。各従業員の手当てや待遇は向上しますが、職を失った人たちへ、再雇用・就業教育の機会創出を真剣に社会問題として考える必要がいずれ出てくるでしょう。

同氏が指摘するように、セーフティーネットとしてAI教育システムを満遍なく行き渡らせる仕組み化が国に求められる必要性も納得がいきます。逆に、新たな教育市場の創出が、外食産業の未来から生まれるかもしれませんし、ここは教育スタートアップの参入する余地がありそうです。

4. リピート顧客に対してのパーソナライズ化

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Image by Eatsa

「Easta」では顧客データがクレジットカード情報及びメールアドレスと紐付いています。そして過去のデータからお気に入りのセットを提案したりすることができます。

「Eatsa」の大きな強みの1つがリピート顧客に対してのレコメンドにあります。筆者が実際に「Eatsa」を体験した際に最も感動した点が、カードを通して注文端末が起動した後に表示される「Welcome Back!」の一言でした。つまり「店舗側が自分のことを覚えていてくれた」という常連客が受け取る感覚を覚えたことに、新たな顧客体験の鍵があると感じたのです。

従来の店舗では、店員さんが何度も通ってくれる顧客の顔を覚えることで、初めてリピート顧客の認識ができます。しかし「Eatsa」の仕組みを使えば、リピート顧客に対して差別化させた高いサービス内容の提供も自動化できるわけです。

加えて、ビックデータを活用することで、例えば「今日の天気は雪のため、温かいこの料理はいかがでしょうか?」といった提案や、「過去の注文履歴から、新商品のこちらを試してみてはいかがでしょうか?」といった具合に、各顧客の趣向に合わせて新商品のリアクションテストも実現できるでしょう。

「顧客体験のパーソナライズ化」がより重要視される小売市場において、無人レストランの強みがさらに増すことは必至です。特に ミレニアム世代の78%が金額以上に、より良い体験を重視すると答えている点 からも、パーソナライズ体験の強化は急務と言えます。

5. 万引き防止・クレジットスコアーの監視

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Image by  CafeCredit.com

最後はファイナンスに関してです。この点は「Eatsa」では実際には行われていないため、筆者が飛躍させた持論になります。

アメリカでは今月から一般公開される「 Amazon Go 」に代表されるように、レジを経由することなく、商品を持ったまま出店・チェックアウトできるシステムが開発されました。入り口で入店用バーコードをかざすことで顧客のIDを特定。各顧客を店内の機械学習を使ったコンピュータ・ビジョン・カメラの活用を通じ、何を購入したのかをトラッキングする仕組みです。

中国の無人コンビニ「 BingoBox 」も同様に画像認識カメラの活用によって運用されています。両社とも、決済に使う個人情報の把握と、高精度のカメラを活用を通じて顧客を特定することで、万引き防止に努めています。

ここで注目すべきは海外ではおなじみのバックグラウンドチェック及びクレジットスコアーです。

海外では配車サービス「Uber」やお買い物代行「Instacart」のように、クラウドソーシングを軸にしたサービスが台頭しています。各企業がサービス提供者を雇う際に活用するのがバックグラウンドチェックです。

バックグラウンドチェックでは、犯罪履歴やクレジットスコアーのレベルを確認して、怪しい経歴がないのかを調べます。Yコンビネータ出身の「 Checkr 」はバックグラウンドチェック市場において代表的な存在で、「Uber」のようなクラウドソーシングサービス企業に応募してくる人たちのバックグラウンドチェック・プロセスを自動で簡単に行えるSaaSを開発しています。

話を戻しますと、「Amazon Go」では入店時に顧客情報を掴んでいます。仮に銀行残高より高い商品を勝手に持ち帰ったとしても、個人情報が特定されているため、銀行口座の凍結やアマゾン・アカウントの永久利用停止のような処置を行えます。「BingoBox」においても、決済に「WeChat」を利用する人が多い背景を踏まれば、万引きや高価商品の持逃げが発生した後に、盗人の「 WeChat 」アカウントを永久停止する対抗策を打てます。

このようなアカウント凍結などは当然、バックグラウンドチェックの際に響き、例えばクレジットカードの利用や海外旅行の入国審査にも響いてくる可能性がありますし、「Uber」や「Instacart」で小金を稼ぎながら生活することもできなくなります。

つまりサービス体験の中に、顧客のアカウントを獲得する仕組みを作り、店舗内のAIカメラで誰がどんな不審行動をしたのかさえ把握できれば、犯罪行為を行った際にクレジットスコアーへ自動的に大幅なペナルティーを課すシステムを構築できるわけです。万引き狙いの盗人も、自分のバックグラウンド及びクレジットスコアーに大きく響いてるくるリスクを考えれば、盗品率も減ることが予想されます。

このように、店舗の無人化が進むにつれて、バックグラウンドチェック及びクレジット・スコアー市場の需要が高まると考えられます。現金文化の日本ではなかなか親しみずらい仕組みでしょうが、海外の消費者がモバイルアプリやクレジットカードしか使わない購買行動を基に考えると、「無人レストラン・コンビニの運用」と「顧客情報・クレジットスコア監視」の2つを重視したサービス設計は必須項目になりえるでしょう。

ここまで無人レストラン技術の外販を開始した「Eatsa」のビジネスを軸に外食トレンドを5つお話してきましたがいかがでしたでしょうか?

日本でも 「ローソン」の無人レジ や、 「ファミマ」が注力する自販機コンビニ の流れから、コンビニの自動化が進んでいます。一方、レストランの自動化に関してのニュースはあまり見受けられない気がします。この点、前述したように「Eatsa」のような無人レストラン技術をパッケージとして販売する企業が、黒船として日本で急展開する可能性は十分にありえるでしょう。

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誰もが「無人レストラン」を出店できる時代へーー全自動サラダ・レストランEatsaにみる外食業界5つの新常識(前半)

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2018年は、「無人レストラン元年」となるかもしれません。 大手ハンバーガー・チェーン店の「McDonald’s」は、 2,500店舗にデジタル・キオスクを設置して、数千人規模に及ぶレジ業務の自動化に成功 しています。同様に、大手フード・チェーン店の「Pizza Hut」や「TacoBell」、「KCF(ケンタッキー・フライド・チキン)」もオペレーションの自動化を推進しています。 フード・チェーン…

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Image by  Eatsa

2018年は、「無人レストラン元年」となるかもしれません。

大手ハンバーガー・チェーン店の「McDonald’s」は、 2,500店舗にデジタル・キオスクを設置して、数千人規模に及ぶレジ業務の自動化に成功 しています。同様に、大手フード・チェーン店の「Pizza Hut」や「TacoBell」、「KCF(ケンタッキー・フライド・チキン)」もオペレーションの自動化を推進しています。

フード・チェーン店の自動化の流れに乗り、2015年に創業され、サンフランシスコに拠点を持つサラダ・レストラン「 Eatsa 」は、他社に先駆けてレストランのほぼ全てのオペレーションを自動化させたスタートアップです。

コンセプトは「超速サービス」(サービスフローの詳細イメージは こちらの動画 から)。店内に入ると注文用のタブレット端末が並んでおり、クレジットカードを通すことで起動します。カードの名義イニシャルが自動で取られ(筆者の場合 T.F )、新規顧客はメールアドレスを入れて、カード情報と連絡先を連携させます。こうして顧客のログイン情報を獲得します。

顧客は今日の気分や、食べ物の好き嫌いに関する幾つかの質問に答えることで、「Eatsa」側が提案してきたサラダ・ボールから好きなものを選ぶことができます。もちろん自分で食材を選んで、サラダ・ボールのカスタマイズをすることも可能です。リピート顧客に関しては、以前来店した際に利用したカードを使えば自動で過去のオーダー・データが出てきて、自分好みのセットを再度注文できる仕組みです。

注文後は、天井のモニターに表示されるオーダー表を見ながら、リアルタイムで自分の注文がどの順番で来るのかをトラッキングできます。準備が整ったら、日本でいうカプセルホテルのような見た目の、ブロック状に積み上げられたフード取り出し口から注文品を受け取れる仕組みです(タイトル画像右側参照)。

オーダーからサーブまで顧客から見える部分は全て機械化されており、店内には顧客が注文に迷った際や、タブレット端末に問題が起きた場合にすぐに対応できるサポートスタッフ数名がいるだけ。調理室も、その大半がロボット運用されています。

非常に効率性の高いオペレーションと、秀逸なサービス・デザインがウケて、 1時間当りの顧客数は300-400人ほど だそうです。オフィス街に店舗を構えていることもあり、筆者が来店したランチタイムには常に20〜30人の行列が並んでいました。

しかし、店舗拠点をサンフランシスコからニューヨークへと拡大していた矢先の2017年10月、 同社は全米7店舗中、ニューヨークとバークレー(カリフォルニア州)にある5つの店舗を閉じると発表 。この舞台裏にはどのような意図が隠されていたのでしょうか?

本記事では「Eatsa」の事例を中心に据えながら、今後の無人レストラン事業の業態変化に関して5つの切り口から迫っていきたいと思います。

1. 無人レストラン技術外販の開始

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Image by  Eatsa

さて、「Eatsa」が実店舗ビジネスの縮小を選んだ理由には、無人レストラン技術の外部販売への戦略変更が挙げられます。

実際、2017年12月にはアジアン・フードチェーン「 Wow Bao 」が、「Eatsa」の無人レストラン技術を使った店舗展開をシカゴで開始。オペレーションプロセスは前述したものと全く同じ。シカゴ店の運用から2か月ほどしか経っていませんが、 顧客の待ち時間が50秒以内に短縮された とのトラクションデータも上がってきています。 待ち時間の業界平均が5分と言われている ため、6分の1に滞在時間を短縮させた結果になります。

「Wow Bao」は全米5都市に展開しており、シカゴ市内には6店舗を構えています。今後12か月以内に「Eatsa」の無人レストラン技術の活用によって、 市内店舗数を2倍の12店舗に拡大する意向を示しています

また、来店して注文するのではなく、 モバイルアプリを使った注文比率を40〜50%にまで向上させる ことも目標に掲げています。モバイルオーダーを利用すれば、顧客の店内滞在時間は50秒よりさらに短くなり、利便性が上がるのは自明です。ちなみに 「Eatsa」サンフランシスコ店でのモバイル・オーダー率が40%である ことから、現実的な数値とみていいでしょう。加えて、「Wow Bao」は、モバイルアプリ施策のために10ドルのクーポンを発行しており、単純計算で1顧客の獲得単価が10ドル前後になるはずです。

「Wow Bao」の事例にみられるように、無人レストラン技術の外販事業は、既存フード・チェーンが店舗数の急拡大へ戦略転換・加速させる大きなきっかけとなります。自社で0からオペレーションを作るより、はるかに低コストで済むことでしょう。

また、自動化することで顧客の利便性が上がったり、モバイルアプリの活用加速に拍車をかけるきっかけ作りにもなります。オペレーションの自動化から顧客のデジタル体験向上まで、一貫したサービスレベルの向上が見込まれるわけです。

外販は始まったばかりですが、技術に国境はありません。「Eatsa」のモデルが黒船として日本を席巻する可能性も十分にあります。

2. AIロボットの活用

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Image by  Miso Robotics

顧客からのオーダーは様々です。「McDonald’s」のように、セット販売されているわけではないので、調理場のロボットにも複雑なオペレーションが課せられます。

「Eatsa」で、具体的にどのようなロボットを開発・利用しているのか公表されていないため、あくまでも推測でしかありませんが、「自動で野菜の種類を見分け、各サラダ・ボールに適切量を詰める専用のロボット」を運用していると考えられます。「Eatsa」で使われているであろうロボットを仮定した上で、他社の類似事例を挙げます。

カリフォルニア州パサデナに拠点を構える「 Miso Robotics 」は調理プロセスの自動化を行うロボットです。2018年から、世界展開しているバーガー・チェーン「 CaliBurger 」と提携してロボット導入を開始する予定です。

「Miso Robotics」はディープ・ラーニングを使ったコンピュータ・ビジョンシステムを用いて、各種食材・調理段階を的確に見分けます。例えば「CaliBurger」で導入された場合、ハンバーガー用の肉が焼けているのかどうか、肉の上に置かれたチーズの焼け具合はどうなのか、他のチキンやハンバーガーに使う食パンの焼け具合は適切かどうかを、それぞれ正確に認識する具合です(活用事例の動画は こちら )。

「Easta」の無人レストラン・システムにも、「Miso Robotics」同様にコンピュータ・ビジョン及びAI技術が搭載されたロボットが活用されている点は、リテール市場のトレンドから見て間違いないといえるでしょう。

加えて、「Eatsa」の強みは、AIロボットの開発から顧客体験の向上までを綺麗にまとめあげている点です。一つ一つの技術やサービス・プロセス開発に特化した企業は数多ありますが、2015年の段階で全てをパッケージ化している点は高く評価されるべきですし、自社店舗ビジネスの展開に限界を感じた時点で、パッケージ外販に舵を切った理由にも納得できます。

後編はこちらから

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