BRIDGE

タグ グローバル・ブレイン

グローバル・ブレイン、2021年の経営戦略を発表——上海・バンガロール・NYにオフィス開設、国際展開をさらに加速へ

SHARE:

本稿は、Global Brain Alliance Forum 2020 の取材の一部。 グローバル・ブレインは4日、都内で年次イベント「Global Brain Alliance Forum 2020(以下、GBAF 2020 と略す)」を開催している(新型コロナウイルス感染対策のため、今回はオンライン開催)。このイベントの中で、代表取締役の百合本安彦氏は、同社の今後の経営戦略について発表した。…

本稿は、Global Brain Alliance Forum 2020 の取材の一部。

グローバル・ブレインは4日、都内で年次イベント「Global Brain Alliance Forum 2020(以下、GBAF 2020 と略す)」を開催している(新型コロナウイルス感染対策のため、今回はオンライン開催)。このイベントの中で、代表取締役の百合本安彦氏は、同社の今後の経営戦略について発表した。

2020年の振り返り——103社に151億円を投資実行、投資先4社がIPO、3社がM&Aでイグジット

グローバル・ブレインは、GBAF 2018 で組成を発表した7号ファンドから、これまでに48社(フォローオン出資を含め63件)109.5億円の投資を実行したことを明らかにした。投資先の4分の1以上をフィンテックが占めている。これらを含め、2020年にグローバル・ブレインが実施した出資は103社151億円に達し、逆に投資先がイグジットを果たした実績は IPO が4社、M&A が3社に達した(累積では20社、M&A は51社)。

IPO でイグジットを果たしたスタートアップには、BRIDGE でも報じた Creema、今月上場予定の WealthNavi、スマホ待受画面でニュースを見せる「CashSlide(캐시슬라이드)」を開発する韓国 NBT Partners、創薬バイオベンチャーのクリングルファーマなどが含まれる。

成長のカギは、三次元戦略と加速度モデル

百合本氏は、2021年のグローバル・ブレインを成長させるカギとして、三次元戦略と加速度モデルを披露した。ここでいう三次元とは、地域 × 領域 × 投資・支援・ステージを意味し、さまざまなスタートアップを網羅的に捉え投資活動を強化していこうとする同社の成長戦略を象徴するものだ。

百合本氏はまた、地政学が国際的な投資トレンドに与える影響についても言及した。これまで世界経済のリーダーだったアメリカがその立場を放棄し、米中間のディカップリングが加速。時代は新たな冷戦の時へと投入し、TikTok の禁止のほか、中国企業のアメリカの証券取引所からの上場撤退などのニュースが増えているのも既報の通りだ。

国際展開の強化

ヨーロッパ、東南アジア、アフリカなどで中国資本に対する警戒感が高まっており、インドでは中国からの投資がストップし、その空いた隙間に GAFA からの資金が流入している。百合本氏は、こういった変化はが結果的に日本の VC にとっての投資機会が増すきっかけになると説明し、投資活動を強化するため、インド・バンガロールと中国・上海に現地オフィスを開設することも明らかにした。

既設のロンドンオフィスについては、DACH 地域(ドイツ、オーストリア、スイス)への投資活動を強化するため、ドイツ語ネイティブの人員を増員する。また、脱炭素やサーキュラーエコノミー分野への投資を強化するため、これらのスタートアップのハブであるアメリカ東海岸をカバーするため、これまでのサンフランシスコに加え、ニューヨークにもオフィスを新設する計画だ。同社の拠点数は世界で9ヶ所(9都市)となる。

スタートアップ40社を集めたオンライン採用イベント、11月にグローバル・ブレインら開催

SHARE:

独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは10月22日、スタートアップの採用に特化したオンラインイベントを開催すると発表している。支援先スタートアップ約40社と有望な人材のマッチング機会を提供し、採用強化に繋げる狙い。開催日は11月21日で当日は「パラダイムシフトで世界が変わる」をテーマにグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏や、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏らのなどによ…

独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは10月22日、スタートアップの採用に特化したオンラインイベントを開催すると発表している。支援先スタートアップ約40社と有望な人材のマッチング機会を提供し、採用強化に繋げる狙い。開催日は11月21日で当日は「パラダイムシフトで世界が変わる」をテーマにグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏や、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏らのなどによるウェビナーコンテンツも提供される。なおイベント自体の主催は日経ビジネスで参加は無料。

オンラインマッチングに参加するスタートアップ一覧

また、当日はEventHubを活用したオンラインマッチング面談が実施される。当日出展を予定しているスタートアップ40社の採用担当者とオンラインでの面談ができるもので、各社の情報を参考に事前申込が必要。時間に余裕があれば当日の参加も可能となっている。グローバル・ブレインの百合本氏はイベントの開催にあたり「不確実性の時代といわれる今だからこそ、スタートアップにも転職希望者にもチャンスが到来している」と参加を呼び掛けた。

via PR TIMES

グローバル・ブレインが出資先グロースを支援「Value Up Team」を新設、元ピンタレスト定国氏ら牽引

SHARE:

ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは9月28日、支援先のグロースを目的とした支援チーム「Valu Up Team」の新設を伝えている。出資先の企業に対して、支援先のニーズに合わせる形で戦略立案・実行を手掛けるもの。テーマとしてはBiz Dev、HR、知財、PRなどの領域で支援する。支援チームには以前、ピンタレスト・ジャパンの代表取締役を努めた定国直樹氏や、メルカリでマーケティング戦略を手掛…

グローバル・ブレインが公表したValue Up Team

ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは9月28日、支援先のグロースを目的とした支援チーム「Valu Up Team」の新設を伝えている。出資先の企業に対して、支援先のニーズに合わせる形で戦略立案・実行を手掛けるもの。テーマとしてはBiz Dev、HR、知財、PRなどの領域で支援する。支援チームには以前、ピンタレスト・ジャパンの代表取締役を努めた定国直樹氏や、メルカリでマーケティング戦略を手掛けた伊藤暁央氏、三陽商会で執行役員として経営戦略に携わった慎正宗氏らが牽引する。

同社代表取締役の百合本安彦氏はコメントで、再現性のある成長支援への注力とスペシャリスト登用に力を入れると語っている。

「これまでもキャピタリストが個人の知見やネットワークを活用してサポートしてきた部分はありますが、キャピタリスト自身にも得意・不得意領域があり経験も異なるため、それぞれのスタートアップが持つ課題に対して的確なサポートが必要十分にしきれないケースもありました。グローバル・ブレインでは各領域の専門性と経験を持つスペシャリストを登用し、また必要に応じて外部パートナーを活用しチームとして支援先をサポートすることで、これまでのキャピタリスト個人の支援以上の成長支援ができるようになると考えています」。

属人的ではなくプロジェクトとしてハンズオン支援するモデル(画像:グローバル・ブレイン)

複数事業の立ち上げからその営業支援、デジタルマーケティング、採用、IPO戦略、法務、知財、ファイナンス、PR、バックオフィスなど、スタートアップの成長に必要なテーマを聞き出した上で伴走する。また、採用についてはGBHRという専門法人を立ち上げており、ここと連携して支援する。

具体的な支援ケースとして同社の出資先であるアクセルスペースがあり、同社が手掛ける衛星画像提供の展開可能性のある業界や企業の特定、拡販に向けたパートナー戦略立案から提携交渉、BtoB営業実行支援などが実行された。

ここ1、2年、ベンチャーキャピタル各社は個々のキャピタリストによる属人的なハンズオンから、チーム戦に移行を続けてきた。直近でもサイバーエージェント・キャピタルやYJキャピタルがそれぞれのグループ力を活かした支援の方向性を模索したり、協業促進させるイベントを開催するなどしているし、PKSHA Technology Capitalのように、自社が持つ技術に特化した支援を展開する例も出てきている。

グローバル・ブレインの現在の体制は70名ほどで、同社によれば、これらの支援体制強化をさらに進めるほか外部のパートナーとの連携も強化するという。

三井不動産「31 VENTURES」、85億円規模のCVC2号ファンド組成を発表——アーリー〜ミドル期出資注力へ

SHARE:

ベンチャー共創事業「31 VENTURES」を展開する三井不動産(東証:8801)は16日、都内で戦略発表会を開催し、この席上、85億円規模となる新ファンド「CVC 2号」の組成を発表した。 2016年に発表した CVC 1号がシード〜アーリーステージを対象としていたのに対し、2号では—アーリー〜ミドルステージを対象とする。より成熟したスタートアップを対象とするため、必然的に1ショットのチケットサ…

左から:三井不動産 ベンチャー共創事業部 グループ長 小玉丈氏、三井不動産 執行役員ベンチャー共創事業部長 金谷篤実氏、ファンドを共同運用するグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏
Image credit: 31 Ventures

ベンチャー共創事業「31 VENTURES」を展開する三井不動産(東証:8801)は16日、都内で戦略発表会を開催し、この席上、85億円規模となる新ファンド「CVC 2号」の組成を発表した。

2016年に発表した CVC 1号がシード〜アーリーステージを対象としていたのに対し、2号では—アーリー〜ミドルステージを対象とする。より成熟したスタートアップを対象とするため、必然的に1ショットのチケットサイズも以前より大きくなる見込み。投資テーマは、Real Estate as a Service、デジタルトランスフォーメーション、スマートシティ、新事業領域のビジネスの発掘の4つで、三井不動産の本業との関係性をより意識したものに設定された。

Image credit: 31 Ventures

投資領域については、CVC 1号では不動産テック、IoT、サイバーセキュリティ、シェアリングエコノミー、E コマース、フィンテック、環境・エネルギー、ロボティクス、AI・ビッグデータ、ヘルスケアの10領域だったが、2号ではこれらに加え、モビリティ、宇宙商用化、食品、農業、エンターテイメントの5領域を追加。これまでの活動を通じて社内でもスタートアップとの共創に対する理解が高まり、ファンドを共同運用するグローバル・ブレインと国内外のネットワークを拡大できたと評価した。

(クリックして拡大)
Image credit: 31 Ventures

三井不動産では、これまでに CVC 1号から39社に対して投資を実行、また、2017年に運用を開始したミドル〜レイターステージのスタートアップを対象とした300億円規模のファンド「31 VENTURES-グローバル・ブレインーグロースI」からは2社に対して投資を実行していたことを明らかにした。うち、リビングスタイル、CrediFi、Enlighted、マテリアルコンセプト、ライフロボティクス、SiteWare の6社はイグジットしている。

(クリックして拡大)
Image credit: 31 Ventures

31 VENTURES が本格始動した2015年以降、三井不動産では東京・日比谷ミッドタウン「BASE Q」の展開、プロトスターとの「“E.A.S.T.”構想」の発表、起業家育成コミュニティ「Swing-By」の運用を通じて、起業家やスタートアップとの連携が深まってきたと強調。戦略発表会では、三井不動産が持つ不動産や顧客アセットを活用したスタートアップとの共創事例も紹介された。同社では今後、これまで以上に三井不動産の新事業を創出を加速し、スタートアップの事業ブーストも共に支援強化させていくとしている。

B向けKYCを提供するオーストリア発「kompany」、シリーズBラウンドでグローバル・ブレインなどから600万ユーロ(約7.5億円)を調達

SHARE:

<6日午前7時更新> 接続方式に Web スクレイピングは利用していないため該当箇所を削除。 B 向け KYC サービスを提供するオーストリアの RegTech スタートアップ kompany は5日、シリーズ B ラウンドで600万ユーロ(約7.5億円)を調達したと発表した。このラウンドはスイス拠点のマルチファミリーオフィス Fairway Global Investments がリードし、日本…

kompany の経営チーム。左から:創業者兼 CEO Russel Perry 氏、CPO Andrew Bunce 氏、COO Johanna Konrad 氏、創業者兼 CTO Peter Bainbridge-Clayton 氏
Image credit: kompany via BusinessWire

<6日午前7時更新> 接続方式に Web スクレイピングは利用していないため該当箇所を削除。

B 向け KYC サービスを提供するオーストリアの RegTech スタートアップ kompany は5日、シリーズ B ラウンドで600万ユーロ(約7.5億円)を調達したと発表した。このラウンドはスイス拠点のマルチファミリーオフィス Fairway Global Investments がリードし、日本のグローバル・ブレイン、European Super Angels Club、kompany 経営陣が参加した。kompany にとっては初の機関投資家からの調達ラウンドとなる。

European Super Angels Club と kompany 経営陣は kompany が昨年8月に実施した前回ラウンド(シリーズ A ラウンドと推定される)にも参加している。今回の調達を受けて kompany の累積調達額は1,400万ユーロ(約17.5億円)に達した。なお、今回の調達にあわせ、グローバル・プレインのパートナーである上前田直樹氏は、kompany の社外取締役に就任する。

(編注:オーストリアの会社法によると、会社には director board と supervisory board が存在する。上前田氏は今回 supervisory board member に就任するが、便宜上、社外取締役と訳した。なお、supervisory board を監査役会と訳す文献も存在する。)

KYC(know your customer)とは、アンチマネーロンダリング(AML)やテロ資金供与対策(CFT)などの観点から、銀行が新規口座開設を受け付ける際などに義務付けられている本人確認手順の総称だ。kompany が提供するのは、これの企業版であり、kompany 社内ではこれを KYB(know your customer for business)と呼んでいる。

B 向け KYC は主に、企業が銀行口座を開設したり、国内外の取引先へ送金したりするとき、対象企業が正しく登記された法人であるかどうかの確認が求められるというもの。会社登記を確認するには、各国の所轄官庁(日本では法務局)に照会する必要があるが、kompany は世界の200の所轄官庁(現在は主に、EU 加盟27ヵ国やアメリカ50州それぞれの所轄官庁など)と Web スクレイピングや API 連携で接続しており、ユーザは一気通貫で対象となる法人の情報をオンラインで確かめることができる。

kompany 上で「グローバル・ブレイン」を検索してみた。(クリックして拡大)
Image credit: kompany

日本についても最近カバーされ、国税庁法人番号公表サイトとの API 連携により法人情報が照会できるようになっているが、社名のアルファベット読み替えが一部でうまく動作していないようで改善の余地はある。また、法務局の法人登記情報を照会できるようにするのは今後の課題のようだ。

kompany CEO の Russell Perry 氏は、BRIDGE とのインタビューで、現在、B 向け KYC には2つのトレンドがあると語った。

1つは、AML や CFT といったコンプライアンス順守を求められるようになる中で、以前に増して KYC のプロセスに自動化が求められるようになっているということ。より速く、コストや労力をかけずに、対象となる法人の存在を確認する必要があるためだ。

もう一つは、登記簿謄本のハードコピーといったスタティックな(静的な)文書よりも、政府や所轄官庁からリアルタイムで、タイムスタンプの入ったダイナミックな(動的な)認証を求められるようになっている点だ。

法人の存在証明などに提示を求められる登記簿謄本の写しは、所轄官庁の発行日から一定期間内のものに限られることが多かった。紙や PDF ファイルの形式で登記情報をを受け取った金融機関などの機械システムは、OCR で読み込むなり、人の目によるチェックが求められるので、情報整理に時間・労力・コストを強いられる。

また、 オンラインマーケットプレイスやブロックチェーンの普及で B2B 取引が加速化していることで、従来の商習慣で必要とされた以上に新鮮な情報に基づいて法人の存在が確認される必要が増している。世界的に見ても、リアルタイムでダイナミックな情報を求められるようになるのは当然の流れだろう。

Image credit: kompany

kompany では既にヨーロッパや北米地域のほとんどをカバーできるようになったのを受け、今回調達した資金を使って、東南アジア、オセアニア、アフリカなどにも進出したい考え。特に昨年、kompany はシンガポール MAS(金融管理局)が開催したフィンテックアクセラレータに採択されたこともあり、シンガポールにビジネス開発とセールスデスクを設置しており、東南アジアでの市場拡大の足がかりにする。

kompany の顧客に日本の企業がいるかとの質問に対し、Perry 氏は日本の銀行のヨーロッパ支店で使っているところはあるとしながらも、どの銀行が使っているかなどの情報はセンシティブであり開示できないとした。ただ、最近では、グローバル・ブレインも出資している RailsbanksolarisBank といった BaaS(Banking as a Service)も kompany のパートナーとなっており、将来はコンプライアンスプラットフォームなど金融以外の他のプラットフォームも顧客のコアターゲットにしたい、とのことだった。

グローバル・ブレインのデューデリなどを含む今回の調達に至るまでのプロセスは大変プロフェッショナルで組織化されていて、投資家として迎えるまで何度も我々のいるヨーロッパ、彼らのサンフランシスコ、東京オフィスなどと議論を重ねた。

我々が取り組むのは、2025年に必要となる未来のインフラ。世界のペイメントの生産性を高めるために何が必要かという共通の理解に基づいている。(Perry 氏)

kompany は今後、事業成長を加速するため AI を使った株主(実質的支配者)分析ツール「UBO discovery」と分散型台帳技術を使った監査証跡ソリューション「KYC onchain」の開発を強化する。

kompany は2017年と2019年、フィンテック特化投資銀行 FinTech Global らによる「世界の RegTech スタートアップ 100社」に選ばれた。

銀行機能をモジュール化、BaaS企業「solarisBank」が大型調達ーーグローバル・ブレインらも支援

SHARE:

ピックアップ:Banking platform solarisBank raises $67.5 million at $360 million valuation ニュースサマリー:ドイツ・ベルリン発のBanking as a Service(BaaS)企業「solarisBank」がシリーズCで6,750万ドルを調達した。投資家はHV Holtzbrinck Venturesをリードに、Sto…

Screenshot 2020-06-30 at 10.13.17 AM
Image Credit : solarisBank

ピックアップBanking platform solarisBank raises $67.5 million at $360 million valuation

ニュースサマリー:ドイツ・ベルリン発のBanking as a Service(BaaS)企業「solarisBank」がシリーズCで6,750万ドルを調達した。投資家はHV Holtzbrinck Venturesをリードに、Storm Ventures、Samsung Catalyst Fund、Yabeo Capital、Vulcan Capitalの5つが参加している。既存投資家にはグローバル・ブレインやSBI Groupなどの日本企業も名を連ねている。

solarisBankがエンタープライズ向けに提供するBaaSとは、銀行サービスをオンデマンドで機能別に提供するビジネスモデル。同社は主に欧州圏のフィンテック企業に対し、決済や送金、KYC、カード、レンディングなどの銀行機能をモジュール化し提供している。

当初、solarisBankは4,000万ドル程度の資金調達を予定していたそうだが、投資家サイドからの需要が予想を上回り、結果6,750万ドルという大型の資金を手にする形となった。本資金は、さらなる機能拡張に使われていくという。

Screenshot 2020-06-30 at 10.15.37 AM
Image Credit : solarisBank

話題のポイント:BaaSは現在のフィンテック業界では比較的大きなムーブメントとして認識されています。米国のVCであるa16zも、BaaSの充実によって「全ての企業はフィンテック企業になる」とアピールしています。

世の中には様々なタイプのBaaS企業が存在していますが、solarisBankはその代名詞と言っても過言ではありません。以下は同社が提供するモジュールリストですが、全ての銀行サービスを網羅していることが分かります。

Screenshot 2020-06-30 at 9.46.10 AM
Image Credit : solarisBank

さて、具体的にsolarisBankが提供している商品は何なのでしょうか。それは「ライセンス」と「APIモジュール」の2つです。

まず同社自体が銀行免許を保有しているため、solarisBankをインフラにするクライアント企業は銀行ライセンスを取得する必要がありません。加えて、上図にリストされている銀行機能(モジュール)に簡易的にアクセスできるAPIのおかげで、クライアント企業は開発コストを格段に下げることができます。

solarisBankは現在70以上のクライアント企業を抱えており、そのほとんどは欧州ないしドイツのフィンテック企業です。例えば、チャレンジャーバンクの「Tomorrow」や「Insha」、ビジネスバンキングを提供する「Penta」や「Kontist」、株式トレードアプリ「Trade Republic」、暗号資産アプリ「Bison」や「Bitwala」などが挙げられます。

欧州地域は日本同様に、現在でも未だ人々の外出をする要請及び規制が敷かれています。現在、筆者が在住しているドイツでも銀行支店やショッピングモールのオープン時間は制限されており、人々がオンラインの銀行アプリ及びEコマース(オンライン決済)にアクセスする機会は増加しています。

<参考記事>

以上の背景を踏まえると、solarisBankのクライアント企業のほとんどが急成長中であり、増益を記録していると考えることができます。したがって、それらのクライアント企業のサービスの機能拡張に伴う同社のAPIへの需要増加や、クライアント企業数の増加は容易に想像/期待できるでしょう。

solarisBankの収益は、モジュールへのアクセスや決済/送金から徴収される手数料から成り立っています。つまり、同社のビジネス自体も現在大きな成長を見せているはずで、投資家が目を光らせるのも当然です。

最近、同社はAmerican Expressと連携しSplitpayという分割払いサービスの提供を始めました。このモジュールを組み込むことで、ドイツのEコマースプラットフォームは、American Expressで買い物を行うユーザーに簡単に分割払いオプションを提供できるようになりました。

ドイツ国内及び欧州のいくつかの地域では、solarisBankの存在感は既に非常に大きいものです。ですが今後数年で、BaaS企業として実績を積んでいくことで、欧州全土及び世界全体へ拡大していくシナリオも考えられるのではないでしょうか。

コロナ「対応時」スタートアップはどう動く?インキュ、GB、Plug and Play支援先130社動向まとめ

SHARE:

ニュースサマリ:パンデミックによる社会変化に対し、スタートアップも動きを活発化させている。本誌取材に対し、Plug and Play Japan、グローバル・ブレイン、インキュベイトファンドの各社は支援先の活動をまとめ、情報提供してくれた。 話題のポイント:緊急事態宣言前後、傷ついた支援先の救済に奔走していた投資サイドも徐々に落ち着きを取り戻しているようで、情報が少しずつ戻ってきています。私たちも…

firefighters-training-live-fire-37543
Photo by Pixabay on Pexels.com

ニュースサマリ:パンデミックによる社会変化に対し、スタートアップも動きを活発化させている。本誌取材に対し、Plug and Play Japan、グローバル・ブレイン、インキュベイトファンドの各社は支援先の活動をまとめ、情報提供してくれた。

話題のポイント:緊急事態宣言前後、傷ついた支援先の救済に奔走していた投資サイドも徐々に落ち着きを取り戻しているようで、情報が少しずつ戻ってきています。私たちもこの後がどうなるのか、連日、海外含めて考察やニュースをお届けしているわけなのですが、情報を集めれば集めるほど、一筋縄ではいかないのだろうなという思いを強くしています。

例えば今、大きく打撃を受けているレストラン事業ですが、確かにデリバリーやキャッシュレスが躍進するようなシーンをイメージし、オンデマンド・ビジネスの新たな局面を期待する内容を伝えたりしています。

<参考記事>

しかし現実は厳しく、Uberは5月6日時点で全体の14%にあたる3700人のレイオフを発表しています。中核事業の配車サービスが移動自粛で激減したため、純粋に足下のコストカットが目的です。一方、同じくオンデマンド配車の中国Didi(滴滴)はコロナ収束をもって業績を回復させている、という報道もあります。

当然ですが、社会が元に戻るのであれば中核事業をこの規模でピボットするのはナンセンスです。また、韓国の事件にもありましたが、2次流行という恐怖とも背中合わせです。つまり今は、対コロナという緊急避難的な状況下で新たなアイデアを試しているフェーズ、とも言えます。社会が戻れば元に戻すかもしれないし、先に進む・変化すればそれに合わせたサービスにピボットするかもしれない。

私は4月の終わりにこのような記事を出しました。

当時は対コロナ真っ盛りであり、緊急対応的なリリースも多くありましたが、時間がやや進むと各社、テストとは言いませんが、実験的な動きを見せるところも出てきています。このタイミングで活動を前進させている企業の取り組みを観察すると、その先にある市場のニーズが透けて見えることがあります。そういう意味で下記のリストはこれからの市場動向を考えるヒントになるかもしれません。

pnp
Plag and Play Japanが公開するe-book

詳細情報:Plug and Playは新型コロナに対峙する100社の支援先を分類したe-bookを公開している。テーマは(1)行動記録(2)顧客体験(3)医療機器(4)人流調査(5)在宅勤務(6)自己診断(7)遠隔医療の7項目。e-bookはこちらのページから簡単な情報登録で入手できるほか、ブログにてまとめも公開している。

独立系VCのグローバル・ブレインは、支援先の企業で取り組みを公表しているケースをまとめた。

エンブレース :医療・介護従事者間の連携及び医療・患者連携のプラットフォームであるメディカルケアステーションを運営

セーフィー:クラウド録画サービス。頻繁な患者の状態確認が必要な医療機関や、リモートワーク対策に追われる法人全般で導入事例多数。

CAMPFIRE:新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、イベント中止・自粛を発表したアーティストやイベント事業者、予約キャンセルが相次ぎ来店客数が著しく減少した飲食店舗・宿泊施設などをはじめ、経営に大幅な支障をきたした事業者を対象に、クラウドファンディングを通じたサポートプログラムを開始。影響を受けた事業者を対象に、クラウドファンディングを通じた支援を届けるとともに、オンラインでの収益機会を提供

Schoo:手軽な学びの場となるオンライン生放送授業配信プラットフォーム「Schoo」を提供

JX通信社:報道機関の大半が導入する情報SaaS「FASTALERT」の提供元。その情報力を活かし、コロナ関連情報も提供。統計情報や、感染確認場所などの情報を最速で配信。感染事例が報告された場所マップは不動産などにも活用されている

Patra:韓国アパレル&化粧品の発注から販売サポートサービス「OWNERS BY PATRA」を提供。コロナで仕入れ不可となった企業を優先して対応中

Idein:高度な認識・検知エンジンを備えたAIカメラを安価にする「Actcast」提供。新たにウイルス感染拡大防止エッジAIアプリケーションの開発に着手し、それらを当社が開発したエッジAIプラットフォームActcastで利用可能とすることで、有事の際に機動的に対応が可能な次世代AI/IoTシステムの構築を可能にすることを発表

ベースフード:完全栄養食(ヌードル、パン)の開発・販売。コロナによりコロナ太りが騒がられる中、ダイエットしながらしっかりと栄養が取れるベースフードセットをお得に購入できるプログラムを開始

CADDi:COVID-19対策医療物資支援室を立ち上げ、新型コロナウィルスに関連する物資および、製造装置の部品供給支援を開始。人工呼吸器や空気清浄機等の医療機器および、マスクや消毒液・防護服などの医療用製品の製造装置に関する、金属・樹脂加工部品の製作・品質保証・納品、(機械メーカーと連携した)組立・製造を支援

プレースホルダー:ファミリーや店舗・組織のチームメンバーなど、小規模なグループ内で体温を手軽に記録・共有したい方に向けて提供するアプリ「たいおんログ」を提供。スワイプ操作で体温を入力するとグラフで毎日の体温変化が表示されるほか、ひとりひとりの体温を一覧で確認することができる。検温忘れを防止するため、特定の時間でプッシュ通知を設定することも可能

JustinCase:少額短期保険業者としてテクノロジーで保険業を変革することを目指し、インシュアテック事業「わりかん保険」を展開

ユーフォリア:アスリートのコンディション管理、ケガ予防のためのSaaS型データマネジメントシステム「ONE TAP SPORTS」を開発・提供するスポーツテック企業。新型コロナの感染拡大を受けて、体調管理機能の一部を無償で開放する。家族など同居する人の発熱や症状も集約可能にした

一方のインキュベイトファンドは「COVID-19によって生じる社会課題と市場機会」と題したブログを公開し、現状の「コロナ対応期」から「コロナ共存期」、そして「コロナ終息期」においてどのような市場の変化があるか考察を公表している。また、彼らも支援先の対応リストを本誌に共有してくれている。

d38525-24-142018-0-640x335
インキュベイトファンドが支援するグラファーのプロジェクト

Carstay(クルマ版Airbnb)キャンピングカーを医療現場へ無償で貸出し、病床不足の解消や、医療関係者の方の休憩所設置を支援するクラウドファンディングを実施

ドクターメイト(介護施設スタッフ専用の医療質問チャットサービス)緊急事態宣言に伴いオンライン医療相談サービスを7都府県の介護施設を対象に無償提供(5/6まで)

リンクウェル(ネットを活用した次世代型医療機関の運用ソフトウェア開発及び経営支援事業)クリニックフォアグループの医師とともに、「新型コロナLINE相談アカウント」を開設

ベルフェイス(オンライン商談システム「bellFace」の提供)新型コロナ対策として2020年5月31日まで無償提供

BearTail(経費精算サービス「Dr.経費精算」の提供)新型コロナ対策として「Dr.経費精算」を2020年12月末まで無償提供

グラファー(クラウド行政サービス事業)企業の新型コロナ融資・助成金手続き支援として「脱・窓口混雑プロジェクト」を開始

フューチャースタンダード(クラウド映像解析プラットフォーム事業)新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた赤外線サーモグラフィカメラのレンタルサービスを開始

Creww(事業会社の課題をスタートアップとの協業で解決)「コロナ対策支援特別プラン」を4月23日から提供開始

リフカム(リファラル採用)ツナグ、リフカムが共同でリファラル採用支援サービスの無償提供を開始/コロナ禍で社会を支えるエッセンシャルワーカーの採用を支援

SQUEEZE(バケーションレンタルソリューション事業のSuitebookとアセットマネジメント事業のMinnを展開)新型コロナで苦しむ宿泊事業者にシステムを無料提供、6月30日までの3カ月間

センセイプレイス(独学にコーチをつける「オンライン独学コーチング」を提供)ネット自習室の企画。毎朝8時45分から11時の間にZoomを活用したネット自習室に集まり、1日の目標を定め学習を開始。学習終了後には1日の振り返りを行うという学習リズムを植え付ける

プレースホルダ(ARを活用したテーマパーク事業)休校期間も自宅で遊べる「ARぬりえ」全27種を無料公開

PoliPoli(『政治家に直接声を届けられる』政治プラットフォーム)国会議員の新型コロナウイルス対策の政策へ、直接意見を届けられる特設サイトをリリース

アイカサ(傘シェア)街中にある一部のアイカサスポットでアルコール手指消毒による感染予防が可能に。不要不急の外出自粛支援としてアイカサ利用2日目以降の追加料金0円に

メイクラフト(クラフトビール受発注)国内約350社の地ビールメーカーに販売するとともに、各メーカーが製造する様々な樽生クラフトビールを飲食店向けに受発注するプラットフォームの形成を目指す。ビールイベントでの約800杯分のクラフトビールを廃棄から救うためクラウドファンディング実施

TERASS(高級不動産売買ブローカレッジプラットフォームの運営)【新型コロナウイルス感染拡大防止】無料の「住宅購入マンツーマン・オンラインレッスン」を開始

ユアマイスター(サービスECプラットフォームの開発・運営)新型コロナウイルス等のウイルス感染拡大防止へ向け一般家庭・大型施設・オフィス・テナントの室内除菌・消毒サービスを開始

ジョイズ(AI英会話サービス事業)AI英会話アプリ「TerraTalk」新型コロナウィルス感染拡大を受け、期間限定で無償提供を開始

ClipLine(動画を用いたサービスマネジメントツール「ClipLine」の開発・運営事業)コロナに負けるな!フリーランス支援プロジェクト。映像クリエイター最大1,000名大募集

KOMPEITO(オフィス向け生鮮野菜定期配送サービス「OFFICE DE YASAI」運営事業)新型コロナウィルス感染拡大の影響により全国で外出自粛・在宅勤務が進められる中、個人宅での“手軽で健康的な食事”への需要の高まりを受け、この度個人宅向けにサラダの定期宅配サービスを開始

エニタイムズ(日常のちょっとした用事を依頼したい人と、空き時間で仕事をしたい人をつなげるスキルシェアアプリ『ANYTIMES (エニタイムズ) 』を運営)ご近所助け合いコミュニティサービス「エニタイムズ」、新型コロナウイルス感染拡大・緊急事態宣言発令に伴い、2020年5月6日までシステム利用料の無料提供開始

未来を創るCVCーーエコシステムの拡大、仮想化に挑戦したKDDI∞Laboの「今」

SHARE:

\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回・2回目・3回目・4回目・5回目・6回目) ソラコムの買収 3年前の夏、朝一番にあるニュースが飛び込んできた。KDDIによるソラコムの子会社化だ。発行済み株式の過半数を取得するため、KDDIが支払った金額は約200億円。2010年…

soracom
ソラコム代表取締役の玉川憲氏(2017年・筆写撮影)

\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回2回目3回目4回目5回目6回目

ソラコムの買収

3年前の夏、朝一番にあるニュースが飛び込んできた。KDDIによるソラコムの子会社化だ。発行済み株式の過半数を取得するため、KDDIが支払った金額は約200億円。2010年以降のインターネット系企業の買収案件としてはポケラボ(グリー、2012年・138億円)とチケットキャンプを運営するフンザ(ミクシィ、2015年3月・115億円)を大きく超える評価となった。

まさに、2010年以降の国内スタートアップシーンで最大規模となる買収劇は当時、多くの関係者を驚かせた。

KDDIのオープンイノベーション戦略でこれまで紐解いてきたKDDI∞LaboやKDDI Open Innovation Fund(以下、KOIF)はいずれも主なターゲットを「非通信事業」、つまりKDDI本体の主力事業とは異なる分野をターゲットにしていた。当たり前だが年間数千億円規模の利益を稼ぎ出す「本業」は鉄板であり、そこを補完するベンチャーなどそう簡単には出てこない。

しかしソラコムは全く違うアプローチで新たな市場にチャレンジしていた。それがInternet of Things(通称:IoT・モノのインターネット)分野だったからだ。彼らは通信キャリアから回線を借受けるMVNOの方式で独自のSIMカードを発行し、さらにモバイル通信をまるでクラウドサーバーのように必要なだけ利用できる「SORACOMプラットフォーム」を構築した。

KDDIとの協業は買収の約1年前、2016年10月に遡る。KDDIにソラコムの保有するコア部分を開放し、「KDDI IoT コネクトAir」の提供を開始したのが始まりだ。元々Amazon Web Serviceの日本開発担当だったチームが手掛けたサービスなだけに技術的な信頼度も高い。結果、法人向けの利用を中心に7000件もの利用社(2017年8月の買収時点)を獲得するまでに成長し、グループ入りを果たすことになる。その後も利用社はさらに拡大し(2020年3月時点で1.5万社)紛れもない国内IoTのトッププラットフォームとなった。

買収「後」から始まるオープンイノベーションとエコシステムの拡大

koif
KOIF3号のスキーム

そしてKDDIとソラコムはもうひとつの注目すべき仕掛けを用意していた。それが「ソラコムファンド」の存在だ。

2018年4月に発表された「KDDI Open Innovation Fund 3号」には特徴的なテーマが設定されていた。それが5G時代に向けた共創戦略である。これまでの1号・2号の4倍となる200億円の組成となった3号ファンドにはAI(ARISE analytics AI Fund Program)、IoT(SORACOM IoT Fund Program)、マーケティング(Supership DataMarketing Fund Program)が明確なテーマとして組み込まれた。

買収したソラコムは事業拡大だけでなく、IoT分野で5Gプラットフォームを活用したアイデアを共創する、新たなパートナーを探し出すための「顔役」にもなったのだ。同社は早速6月にIoTデバイスソフトウェアマネジメントプラットフォーム「Resin.io」や、8月にはシンガポールや台湾でsigfox通信ネットワークを提供するUnaBizへの出資を決め、ソラコムとの戦略的業務提携を実現させている。

KOIFの始まりは初代ラボ長、塚田俊文氏(現・KDDI理事)のある提案からだったそうだ。ファンド組成のきっかけをグローバル・ブレイン(以下、GB)の熊倉次郎氏はこう振り返る。

「2005年あたりですかね、当時、私たちはニフティさんと一緒にファンドの運営をしていて、その支援先の協業提案でKDDIさんにも出入りをしていたんです。そこで出会ったのが塚田さんでした。ちょうど、KDDIでコーポレートベンチャーキャピタルの新たな組成が話題として上がっていた頃です」。

それから10年。インキュベーションの企画として始まったKDDI∞Laboは、年数を重ねてKDDIがスタートアップのみならず、他業種の企業と協業・共創するプラットフォームに成長した。50億円で始まったKOIFは運用総額を300億円にまで拡大し、AI、IoT、マーケティングまでもテーマとした戦略敵投資ファンドとして存在感を発揮している。

KDDI∞LaboとKOIFが狙う協業とファイナンシャル・リターンのバランス、そしてそこから生まれる新たな事業チャンスとの出会い。その可能性はグループ全体の戦略にも影響を与えつつある。

kddilabo-640x337
バーチャルイベント「MUGENLABO DAY 2020」に登壇する高橋誠社長

ウィルスとの戦いで幕を開けた2020年

今、この原稿を執筆している2020年3月というタイミングは、あらゆる常識を疑う日々に包まれているように思う。突如として現れた「COVID-19」というウィルスが、人々を社会から完全に隔離してしまったからだ。

一方、こういった社会の否応のない変化は、新たな価値・体験のきっかけにもなる。先の不況を引き起こしたリーマンショックは、シェアやオンデマンド、クラウドのような「持たざる」新しい経済インフラ、テクノロジーを促進させることに繋がった。

KDDI∞Laboも例外ではない。3月24日、例年であれば大型のカンファレンス・ホールで1000名規模を集めて開催されるはずだったイベント「MUGENLABO DAY 2020」は、人との接触を防ぐため異例のオンライン開催を余儀なくされる。しかし転んでもタダでは起きないのがこのプログラム。単なる無観客イベントをストリーミング放送するのではなく、空間自体を仮想化するという道を選んだのだ。

バーチャル・リアリティ空間での大型カンファレンス

クラスターがスタートアップしたのは2015年7月。α版などの提供を経て、約2年後にバーチャル・リアリティ(VR)空間を自由に生み出せるソーシャルネットワーク「Cluster」を正式公開した。Cluster上には現実とは異なるオルタナティブ世界が広がり、ユーザーはそこでもう一人の自分としてアバターをまとい、様々な活動を楽しむ。

当然ながらこの世界にはウィルスは無関係だ。KDDIはリアル世界での開催が難しいと判断するや否や、Clusterを新たな会場に指定した。クラスターにKDDIが投資したのは2018年9月。シリーズBラウンド(総額4億円)で出資をした後、今年1月のシリーズCラウンド(総額8.3億円)にも続いて参加している。現在、KDDI∞Laboのラボ長を務める中馬和彦氏も社外取締役として経営に参加している。

VRならではの体験といえば一人称視点と没入感だ。OculusなどのVRヘッドセットを装着すれば、まるでそこにいるかのような体験も可能になる。ライブストリーミングだけでは不可能と言われる、リアルイベントならではのネットワーキングについても可能性が見えてくる。ただ今回は残念ながら取材という仕事があるため断念した。どうしてもヘッドマウントディスプレイを付けながら現実世界のキーボードを叩くのは難しい。

私の都合でリアルカンファレンスの体験を完全に再現するまでには至らなかったが、十分未来を感じることのできる取り組みだった。

披露された4つの事業共創プログラム

では、2011年の開始から10年目を迎えることとなった共創のプログラムはどのようなものになっているのだろうか。大枠として走るのは、5GをテーマにKDDI ∞ Laboがネットワークするパートナー連合46社とスタートアップが協業を目指す「5G for Startups」と、より具体的なテーマを盛り込んだ共創プログラムの「∞の翼」の二つだ。

共にPoC(実証実験)ではなく、企業に予算がついた事業にスタートアップの技術・アイデアが加わることで、具体的な事業化を目指すものになっている。「5G for Startups」は通年での応募が可能で、「∞の翼」については第一弾となる取り組み内容と参加スタートアップを含むチームが公開された。

p_index_02b-640x379
KDDI ∞ Labo パートナー連合46社:リリースより引用

例えばスタジアムと5Gをテーマにした共創プロジェクトには、KDDIとサッカーチーム、名古屋グランパスエイトがタッグを組んだ。利用可能なアセットとして名古屋グランパスのホーム「豊田スタジアム」が利用可能で、5G時代における新たなスポーツ観戦の体験を生み出すのが狙いだ。ここに採択されたのが2017年創業の「ENDROLL」。昨年には東京急行電鉄と協力し、渋谷の街を謎解きゲームの舞台にした「渋谷パラレルパラドックス」を発表するなど、現実世界をテクノロジーで拡張する新進気鋭のAR(拡張現実)スタートアップだ。

KDDIの持つ5Gインフラと技術、グランパスの持つファンベースとスタジアム、ENDROLLが仕掛けるARエンターテインメント・テクノロジー。これらを掛け合わせることで、来場するサッカーファンたちにゲームだけでない、新たなテーマパーク的体験を提供するのが狙いだそうだ。3社はこれから年末の本格導入に向けて開発・テストを開始する。その他にもコミュニケーションや商業施設、テレビの合計4つの共創テーマが発表され、それぞれ取り組みを開始している。

企業のオープンイノベーションに必要とされるもの

これまで6回に渡ってKDDIのオープンイノベーション戦略を紐解いてきた。戦後復興の昭和に始まった成長神話は絶頂バブルを生み、ゆるやかに下り坂に入った平成を経て令和の今、企業には自前主義ではなし得ない新たな成長戦略が求められるようになった。その焦燥感にも似たうねりが、2010年から始まった企業によるスタートアップ投資や協業・オープンイノベーションという文脈なのだろうと思う。

各社は先行する企業を見様見真似でファンドを立ち上げ、筆者も数多くの取り組みを取材してきた。しかしそこには残ったものと消えたものという、明確な差が生まれたのも事実だ。何が異なっていたのか。

ひとつ明確に言えることはリーダーシップと覚悟だ。

成長戦略におけるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)やアクセラレーション・プログラムは、手段であって目的にはなり得ない。さらにその変数の多い道のりには不確定な協業シナジーと、必要に迫られるファイナンシャル・リターンが待ち受ける。実施をすれば矛盾も起こる。企業トップが明確に「変わらねば」という意思表示しなければ、現場はこの矛盾と葛藤に飲み込まれてしまう。

KDDI∞LaboやKOIFのようなエコシステムは他の企業にも生まれるのか。先行き不透明感が増す中、次の10年が終わったあとの振り返りを楽しみにしたい。(了)

ーーー

筆者:平野武士・・ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現・BRIDGE)を共同創業し、2018年4月に株式会社PR TIMESに事業譲渡。現在はBRIDGEにてシニアエディターとして取材・執筆を続ける傍ら、編集からPRを支援するOUTLINE(株)代表取締役も務める。

未来を創るCVCーー3世代で紡ぐオープンイノベーションの礎と「トップの覚悟」

\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回・2回目・3回目・4回目・5回目・6回目) オープンイノベーションのDNA 主力事業である通信とは異なる周辺の「非通信」事業でいかに未来を描くか。そのために自社だけでなく、積極的な協業の戦略を打ったのが2000年代のKDDIだった…

gifty
KDDI∞Labo一期生のギフティは2019年にマザーズ上場を果たした

\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回2回目3回目4回目5回目6回目

オープンイノベーションのDNA

主力事業である通信とは異なる周辺の「非通信」事業でいかに未来を描くか。そのために自社だけでなく、積極的な協業の戦略を打ったのが2000年代のKDDIだった。Googleとは検索で手を組み、グリー、コロプラとはエンターテインメント領域でサービスを展開した。2012年にレコチョクと共同で開発した音楽サービス「LISMO」は、モバイルストリーミング音楽サービスの先駆け的存在となった。

異なる分野を拡大させることで事業成長を促すーー協業の可能性のある新興企業に出資して株式公開を支援するプログラム、本体で大きくシェアを取ってグループ化するプラン、そして多くの可能性を引き寄せるオープンな場所を作り出す、という「三段重ねの舞台装置」がそれだ。

遅れてやってきたKDDI Open Innovation Fund

「KDDI Open Innovation Fund(通称:KOIF)の組成は2012年ですね。評価額1億円のスタートアップに1000万円出資するため、年間で数千億円の利益を出す企業の役員たちがずらりと並んで、本格的なデューデリジェンスしてました。現場はすごい緊張感でしたよ(笑」。

当時をそう振り返るのはファンド組成を裏方として支えたグローバル・ブレインの熊倉次郎氏。KOIFが最初に立ち上がったのは2012年2月、KDDI∞Laboが開始された2011年8月から約半年遅れのスタートだった。グローバル・ブレインがKDDIと共同で企画したファンドで、記念すべき第一号出資案件はKDDI∞Laboの一期生ギフティだった(※正確にはタイミングが合わず、一時的にKDDI本体からの出資を後に株式交換している)。

シード期のインキュベーションに出資を一体化し、3カ月という極めて短期の期間にスタートアップさせるスタイルは当時のモデルケースとして多くのコピーが生まれた。ところがKDDIはやや違っていた。なんと、アクセラレーションプログラムに採択されても出資はしない、としたのだ。ではなぜファンドを作ったのか。ここに彼らのオープンイノベーション・プログラムの妙味というか、大企業ならではの理由が隠されている。

2つの取り組みに求められた「成果」

kddi-mugen-labo-6th-demoday-featuredimage
KDDI∞Labo第6期デモデイの発表会

協業を軸とした成長戦略を考えるにあたり、KDDI∞LaboとOpen Innovation Fundにはそれぞれ目的が設定されていた。2012年からKDDI∞Laboの責任者「ラボ長」として、プログラムの立ち上げを支えた江幡智広氏(現・mediba代表取締役)はこう振り返る。

「いわゆる目標設定をするわけなんですが、ほぼ毎年、同じように書いていたのが『ベンチャーから一番信頼される相談相手になる』という項目です。一方、ファンドはもう少しミッションが具体的で、『次世代のベンチャーと一緒に新しい事業創造する』と『ベンチャーとの関わりを通じて彼らの事業を加速成長させる』というものでした」。

オープンイノベーションを企業が掲げる場合、各社が最初に遭遇する課題が「窓口問題」だ。つまり「KDDI∞Labo」というプログラムはそれ自体がこの最初の課題をクリアするための答えでもあったのだ。当然ながら窓口の扉は叩きやすいことに越したことはない。江幡氏がラボ長のバトンを次に渡す最後の年、経済産業省が主催する調査ランキング「イノベーティブ大企業ランキング」でKDDIはトップを取ることになる。

一方、ファンドは「リターン」という唯一無二の結果が伴う。目標にあるベンチャーの成長を加速させる、という意味は「買った株価が上がること」に他ならない。窓口としてのKDDI∞Labo、結果としてのKOIF。一見すると補完性のあるこの2つの取り組みは、なぜ一体化されなかったのか。そこにはある、大企業ならではのコンフリクトが存在していた。

幅広い可能性とリターンという矛盾

当時、彼らがモデルにしたY Combinatorのスタイルは、おおよそ3カ月のプログラムで日本円にして数百万円を出資し、市場に受け入れられるかどうかギリギリのラインのプロダクトを世に問う、というスタイルだった。

Y Combinatorは多産多死の戦略で正解だった。決済のStripe、バケーションレンタルのAirbnb、オンデマンドデリバリのDoorDash。彼らが掲げるトップ100社の合計価値は1550億ドル、5万人以上の雇用を生み出した(※2019年時点)。しかしこれは逆に言えば「不確実性の塊」とも言える。

明日潰れるかもしれないし数年後大きく羽ばたくかもしれない。KDDI∞Laboで集めていた若き起業家たちもご多分にもれずそういった顔ぶれだった。当然だが、ここにファンドとしてのKOIFに求められる「リターン」とは完全には一致しない。

IMG_1709-640x480
mediba代表取締役の江幡智広氏(筆写撮影)

三段重ねの舞台装置

KDDIのオープンイノベーションを語る上で注目すべき出来事が3つほどある。ひとつはKOIFが出資したカジュアルギフトを提要する「ギフティ」の上場、もうひとつがIoTプラットフォーム「ソラコム」の本体買収、そして最後のひとつが前述した「イノベーティブ大企業ランキング」でトップを獲ったことだ。

一見するとバラバラのこれら活動、実はゆるく根底でつながっていた。熊倉氏はこう明かす。

「連携のシナリオは立ち上げ当初からありましたよ。(KOIFは)事業をつくるのを目的にしたファンドだったので、事業に寄与する独占的な買収、協業の可能性を残した上でのIPO。この組み合わせがいいよねって。実際、上場したギフティさんも恐らく、auからやってきたユーザーさんが多いはずです。協業連携がどこよりも強いファンドを作るぞと、こういう状況下で株式公開を支援するし、独占した方がよいケースであればファンドではなく、本体として買収を仕掛ける。一番広い窓口としてKDDI∞Laboがあって、ちょっと斜め上にKOIF、そして(当時の)企業戦略部での本体投資がある。そういう三段重ねの構造だったんです」。

面白いのはこの構造がキレイに三段重なっていない点だ。つまり、KDDI∞Laboを第一関門、その次にKOIFからの出資、最後はKDDIの買収、というようなファネルがあれば、当然、スタートアップ側は買収をゴール設定にしてしまう。

もちろん、そういう期待や結果がなかったわけではないが、KDDI∞LaboをKOIFと切り離すこと(出資を前提としない)ことで、ここの舞台には数多くのアイデアが集まることになった。

KDDI∞Laboにのしかかったプレッシャー

理想的な役割分担とシナリオが見えてきたKDDIのオープンイノベーション戦略。しかし一点、外から見ても大きくストレスがかかっているのではないかと心配する部分があった。それが「KDDI∞Laboとしての結果」だ。アクセラレーションプログラムは通常、育成した企業がその後成長してくれれば結果となる。なぜなら出資がセットになっているからだ。

しかしKDDIは前述した背景からそれを切り離してしまった。当時の苦悩と葛藤を江幡氏はこう振り返る。

「高橋(誠氏・現社長)とは結構やり合いましたね(笑。お前は流暢な理屈で意義のある活動だって言うけど、じゃあ実際いくら売上・利益をつくったんだってね。当然企業として最終的な垂れ流しはありえないわけで、立ち上げ当初の11年や12年はよりそれが強かった。ただ、彼は現場に来てくれるし、支援先とも直接話をしてくれる。絵空事、とは言わないまでも、大きなビジョンに向かうことと短期的な実際の利益は噛み合わないし、大企業の事業計画やIRとはワケが違う。この辺りは高橋も理解してくれていたのではないですかね。ゆるいというか足が長いことを。2015年あたりからかな、もう少し先を見通した投資でもいいよ、という雰囲気が徐々に作られていきました」。

確かに第一期生のギフティや、出資にまで繋がって、その後売却したソーシャルランチのように経済的な結果をもたらすケースもあったが、1兆円規模の利益を生み出すKDDIグループ全体から言えばやはりインパクトは薄い。

そんな状況を変えたのが日本全体における「オープンイノベーション」文脈の盛り上がりだった。大企業がスタートアップなど他の企業と手を組んで新たなイノベーションを興すこの仕組みは、経済産業省の「第4次産業革命」や、内閣府の「Society5.0」といったイノベーション指針を実現するための手法として注目を集めることになる。

結果、KDDI∞Laboは「共創」というキーワードの下、スタートアップだけでなく、他の大企業を含めた企業連合という考え方をスタートさせた。それまでの「スタートアップとKDDI」という構造を「スタートアップと企業、それを支えるKDDI」という図式に描き直したのだ。そしてこの流れは更に進み、KDDI∞Laboの上で企業同士がつながり、5Gという新たなインフラでビジネスを生み出そうというプラットフォームに進化している。

トップの覚悟

2011年の終わりに始まって、2020年の今もなお、成長を続けているKDDI∞LaboとKOIF。

オープンイノベーションの取り組みとしては理想的だ。これまで積み上げてきたネットワークもあるので、VC各社が投資する質の高いスタートアップや、ケースによってはマザーズ上場レベルの企業と手を組むこともあるだろう。

しかし、ここまで書いてきた通り、道のりは決して楽なものとは言えなかった。辞めようという選択肢はなかったのだろうか。この点について江幡氏、熊倉氏の二人とも口を揃えたことがある。それがリーダーシップ、トップの決意というものだった。

「(プログラムを辞める話は)なかったと思いますよ。やり切るというか、高橋もちゃんとこの事業を見てくれてるという安心感はありました。そんなにすぐ投げることはないだろうという。テスト的にピッチイベントやってすぐ終わる、そういう他社のケースも情報としては耳に入れていました。そういう話が増えれば参加するベンチャーも心配になるだろうし、時間はかかるけど長くやることに価値がある、とね」(江幡氏)。

一方、∞Laboと異なり確実な「リターン」という成果を求められるKOIF。ファンド組成にあたり、KDDIチームと密に連携していた熊倉氏は当時のリーダーシップをこう表現していた。

「(当時社長の)田中(孝司氏・現会長)さん、高橋さんラインがこのプロジェクトのオーナーシップだったのですが、圧倒的に高橋さんのコミット、リーダーシップが強かったですね。その他にも専務・役員クラスの方々がいらっしゃってそれぞれの役割においてチャンピオンが必ず決まってる。そしてそれらをしっかりと連携させているのが印象的でした。KDDI∞LaboもKOIFも舞台装置です。特にこの上で踊る人たちは本体事業と違ってボラティリティが遥かに大きい。だからこそ最初に決めたことをやり切る体制、全体を仕切るリーダーシップが重要だったんです」(熊倉氏)。

次回はKDDI∞Labo、KOIFと並んでKDDIオープンイノベーション戦略を語る上で重要なソラコム買収とグループ間連携について紐解く

ーーー

筆者:平野武士・・ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現・BRIDGE)を共同創業し、2018年4月に株式会社PR TIMESに事業譲渡。現在はBRIDGEにてシニアエディターとして取材・執筆を続ける傍ら、編集からPRを支援するOUTLINE(株)代表取締役も務める。

未来を創るCVCーー5Gは「移動」の概念を変える・Synamonの挑戦とKDDI∞Labo

SHARE:

\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回・2回目・3回目・4回目・5回目・6回目) 2020年は間違いなく「5G元年」として振り返る年になるだろう。 各通信キャリアは高速大容量通信によって社会がどう変わるか、様々なケーススタディを交えた特設ページを揃って開設している。そ…

pexels-photo-3635300
Photo by TruShotz on Pexels.com

\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回2回目3回目4回目5回目6回目

2020年は間違いなく「5G元年」として振り返る年になるだろう。

各通信キャリアは高速大容量通信によって社会がどう変わるか、様々なケーススタディを交えた特設ページを揃って開設している。そしてコンテンツとしては最高の東京オリンピックがやってくる。ここまでお膳立てが揃っているタイミングもそう多くない。

一方で5Gの活用はややスッキリしない。確かに大容量のモバイルデータ通信は、映像のようなリッチコンテンツを数秒で配信するといった体験の向上には役立つ。ロボットの遠隔操作もビジネスを変えてくれそうだ。しかし、それはあくまで有線や4Gの延長線上でも「想像」できる。

スマートフォンで発生したパラダイム・シフトの価値は、単なる通話しかできなかった「電話」をあらゆる生活サービスにアクセスできる「コンシェルジュ」に変化させたことにある。できれば5Gがダイナミックに生活を変える変化に直結して欲しい、と思うのはいささか期待し過ぎだろうか?

私にはひとつ、注目している体験がある。それが「移動」だ。

XR空間とテレビ電話会議は何が違う

「XR空間では、狭い会議室の中に3キロメートル×3キロメートルの広大な屋外空間を展開できるので、ここで例えば実寸大の橋や建物を関係者集めて確認することもできるんです」(Synamon武井勇樹氏)。

東京五反田の一角、スタートアップが集積している商業施設がある。その一室にスタジオを構えるのがSynamon(シナモン)だ。「XRコミュニケーション」を手掛ける彼らの技術はまさに移動体験を変えるものになる。

NEUTRANS-BIZ_001.png
「NEUTRANS BIZ」実物大の仮想空間でのミーティングを可能にする

例えばイベントの会場レイアウトを確認するとしよう。ミーティングルームに図面を持ち込んで計画するより、実際の会場に足を運んでみたほうがイメージが湧く。当然だが、実際の見学は様々な調整が付きまとう。

先ごろ公開された新バージョンの「NEUTRANS BIZ」は、目の前のXR空間に、巨大な空間や展示ホール、会議室のようなミーティングルームを出現させる。人々はどこにいてもよい。現実世界の会議室、協業するパートナーのオフィス、時差のある外国。時空を超えて人が集まり、実際のサイズの展示ホールで次のイベントのレイアウトを確かめることができる。

彼らが目指す先に感じるのは、人の発想を刺激する仕掛けづくりだ。図面をデータで共有してテレビ電話会議したとしても、おそらく会場を「感じる」ことはできない。ステージの微妙な位置やサイズ感、人を入れた時の熱気。人はそこから感じる何かでアイデアを生み出すことができる。

空間の移動に必要な5Gと「何か」

4年前に鬼才、イーロン・マスク氏が発言した「私たちはビデオゲームの中で生活できる」という世界観を思い出す。現実と仮想が曖昧になる時代。

仮想空間に存在するために私たちが議論すべき最大のポイントはここなんだ:40年前、私たちは「Pong(※簡単なゲーム)」を手に入れた。2つの長方形とドットだ。そして今、40年後に私たちは仮想的に数百万人が遊んでいる写実的な3Dを手に入れている。仮に全てにおいてある一定の改善割合を想定したとしよう。たとえその割合が今の状況から1000以下に落ちたとしたとしても、おそらくゲームは現実と区別がつかないものになる。

人がそこに「それがある」と感じるためには、8Kほどの高精細映像が必要になるそうだ。有線は当然ながら、5G通信はモバイル環境での8Kデータ転送を可能にする。より広範囲の環境で仮想と現実の境界線は曖昧になっていく。

このパラダイムを現実にするには何が必要なのだろうか。2007年に登場したiPhoneによってもたらされた「タッチパネル」体験は、3G、4G回線を手にしてシェア・オンデマンド経済を生み出すことになる。5Gを「手触りある体験」にする技術は何か?

「デバイスのポイントはデバイス、チップ、ネットワークと多様です。しかしそれ以上に必要なのがコンテンツを作るハードル。XR空間では2Dの情報を3Dに変換する必要があります。ここの商用化にはもう少し時間がかかる」(武井氏)。

デバイスの普及もまだ時間がかかる。ニールセンが公開した2018年の推計で本命と言われるFacebookのOculus Questは、2019年5月の発売後1年で173万台近くを出荷するとしていた。しかし、実際は2019年11月の決算で示された数字は40万台程度に留まる。

「特にビジネスでの利用は『なんちゃって』では普及しません。例えば昨年に実験した防衛医大との5G・VRを活用したトリアージ(救援重要度判定)などの取り組みでは、絶対に行けない場所でリアルタイムに作業ができる、といった確実なベネフィットが必要です。リアルでできないことができるようになってはじめて普及期が訪れる」(KDDIライフデザイン事業企画本部 ビジネスインキュベーション推進部長の中馬和彦氏)。

pexels-photo-196652
Photo by picjumbo.com on Pexels.com

2010年という転換点

スタートアップ乱立の今、国内の支援事例を振り返ると明らかに大きな転換点となるポイントがあった。2010年初頭、日本に「アクセラレーション・プログラム」のトレンドが流れ込み、独立系VCやCVCがこぞって「Y Combinatorモデル」を採用したあの時期のことだ。

デジタル・ガレージにサイバーエージェント、孫泰蔵氏率いるモビーダ、メルカリ投資で一斉を風びしたEastVenturesにインキュベイト・ファンド。この中にあって異色の顔ぶれがKDDIの「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」だった。投資ファンドでもなく、事業シナジーを成果とする事業投資ともやや異なる、純粋にスタートアップを育成する、言わば「独自の起業エコシステム」のような存在に当時、疑問符が多く付いたのを記憶している。

KDDIは1兆円の利益を稼ぎ出す日本有数のインフラ企業だ。スタートアップエコシステムが成熟してからの参入でも遅くはない。なぜ10年近くも前だったのか。

そこにはこの企業が辿ったオープンイノベーションに対する「歴の長さ」が関係していた。

通信企業における「非通信」事業への投資

KDDIの最新決算(2020年第3四半期)をみると注目すべきポイントが2つある。ひとつは非通信領域の躍進だ。ローソン・Pontaポイントとau Payの連携にみられる「非通信」領域の営業利益は年次で約26%増の1360億円となった。また、通信領域でもここ数年力を入れているIoT領域で契約回線数が1000万件を突破。利用領域もスマートメーターやテレマティクスなどの既定路線から、2017年にグループ入りしたソラコムのように、新たな利用シーンを提供するケースも積み上がっている。

本業(通信)が盤石な間に周辺領域を成長させる。ポートフォリオとして当たり前の戦略も体が大きくなればそう簡単なことではない。この布石はおよそ15年前に遡る。

「そもそも(現社長の高橋誠氏は)フィーチャーフォンの立ち上げからEzweb、グーグル検索の導入だったりLISMOのようなエンターテインメントコンテンツなど、非通信の領域を中心に手掛けていました。それが2003年とかその辺りですね。それを大企業や中小、ベンチャー問わず、パートナーシップによって成長させてきた、という経緯があるんです」(中馬氏)。

大きく状況が変わるのが2007年のiPhone登場、いわゆる「スマホシフト」だ。フィーチャーフォンアプリで独自の課金エコシステムを構築してきた国内通信キャリアは、その市場をAppleやGoogleといったグローバル・マーケットに奪われていくことになる。

「KDDI ∞ Laboって当初は『スマホのアプリを探そうプロジェクト』みたいな感じだったんです。ちょうど当時、高橋もネットベンチャーが生まれていく様相を見ながら、Y Combinatorみたいな仕組みがスマホの世界には必要なんじゃないかって考えていて」(中馬氏)。

こうしてKDDIのオープンイノベーションの取り組みは次のステージに向かうこととなる。

digitalgate_08
∞ Laboが拠点とする「KDDI DIGITAL GATE」(写真提供:KDDI)

手探りで積み上げた独自のエコシステム

∞ Laboが輩出した事業で大きく成長したのは、昨年上場を果たしたギフティだろう。第一期生としてプログラムに参加したソーシャルギフトのアイデアは、最終的にエンタープライズ向けのモデルが大きく成長し、IPOを果たすこととなった。プログラムも順調にスタートアップを集め、2014年には企業パートナーを取り込んだオープンイノベーションの形をつくることになった。

一方、2011年に開始したプログラムに迷いがなかったかというとそうとは言い切れない。筆者も現場で取材に当たっていたが、スタートアップ、連携する企業にそれぞれの温度感は異なっていたように記憶している。

「当初はやはり30代の若手社員が入って一緒に事業を作るような感じもありました。ただ、スタートアップ、事業会社共に成熟してきた結果、局面は変わってきたと感じてます。事業づくりのフェーズは引き続きやりますが、それ以上にやはりグロースです。私たちができることはこの成長局面を支援する」(中馬氏)。

きっかけはやはり2020年を元年とする5Gの開始だ。これまでのインターネットテクノロジーでは、書店や小売にしてもあくまでインターネットの中で完結してしまっていた。5G時代は大きくそこからシフトする。「ビルから信号機からクルマ、あらゆるモノがフルに通信する時代」(中馬氏)に大企業の存在は無視できなくなる。

スタートアップがアイデアを出し、面を押さえている企業と組み合わさることで大きな利益を生む。ちなみにここで言うスタートアップはアイデアだけの零細企業のことではない。この10年で大きく成長したネット企業も対象になりうる。

つまり次に重要な視点は「事業」になるかどうか、というわけだ。次回はKDDI∞ Laboを支えたもうひとつのエンジン、KDDI Open Innovation Fundについてその立ち上げの経緯をまとめる。

ーーー

筆者:平野武士・・ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現・BRIDGE)を共同創業し、2018年4月に株式会社PR TIMESに事業譲渡。現在はBRIDGEにてシニアエディターとして取材・執筆を続ける傍ら、編集からPRを支援するOUTLINE(株)代表取締役も務める。