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未来を創るCVCーー5Gは「移動」の概念を変える・Synamonの挑戦とKDDI∞Labo

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\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回・2回目・3回目・4回目・5回目・6回目) 2020年は間違いなく「5G元年」として振り返る年になるだろう。 各通信キャリアは高速大容量通信によって社会がどう変わるか、様々なケーススタディを交えた特設ページを揃って開設している。そ…

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\本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事を「POST」へ要約転載したもの。全文はこちらから(初回2回目3回目4回目5回目6回目

2020年は間違いなく「5G元年」として振り返る年になるだろう。

各通信キャリアは高速大容量通信によって社会がどう変わるか、様々なケーススタディを交えた特設ページを揃って開設している。そしてコンテンツとしては最高の東京オリンピックがやってくる。ここまでお膳立てが揃っているタイミングもそう多くない。

一方で5Gの活用はややスッキリしない。確かに大容量のモバイルデータ通信は、映像のようなリッチコンテンツを数秒で配信するといった体験の向上には役立つ。ロボットの遠隔操作もビジネスを変えてくれそうだ。しかし、それはあくまで有線や4Gの延長線上でも「想像」できる。

スマートフォンで発生したパラダイム・シフトの価値は、単なる通話しかできなかった「電話」をあらゆる生活サービスにアクセスできる「コンシェルジュ」に変化させたことにある。できれば5Gがダイナミックに生活を変える変化に直結して欲しい、と思うのはいささか期待し過ぎだろうか?

私にはひとつ、注目している体験がある。それが「移動」だ。

XR空間とテレビ電話会議は何が違う

「XR空間では、狭い会議室の中に3キロメートル×3キロメートルの広大な屋外空間を展開できるので、ここで例えば実寸大の橋や建物を関係者集めて確認することもできるんです」(Synamon武井勇樹氏)。

東京五反田の一角、スタートアップが集積している商業施設がある。その一室にスタジオを構えるのがSynamon(シナモン)だ。「XRコミュニケーション」を手掛ける彼らの技術はまさに移動体験を変えるものになる。

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「NEUTRANS BIZ」実物大の仮想空間でのミーティングを可能にする

例えばイベントの会場レイアウトを確認するとしよう。ミーティングルームに図面を持ち込んで計画するより、実際の会場に足を運んでみたほうがイメージが湧く。当然だが、実際の見学は様々な調整が付きまとう。

先ごろ公開された新バージョンの「NEUTRANS BIZ」は、目の前のXR空間に、巨大な空間や展示ホール、会議室のようなミーティングルームを出現させる。人々はどこにいてもよい。現実世界の会議室、協業するパートナーのオフィス、時差のある外国。時空を超えて人が集まり、実際のサイズの展示ホールで次のイベントのレイアウトを確かめることができる。

彼らが目指す先に感じるのは、人の発想を刺激する仕掛けづくりだ。図面をデータで共有してテレビ電話会議したとしても、おそらく会場を「感じる」ことはできない。ステージの微妙な位置やサイズ感、人を入れた時の熱気。人はそこから感じる何かでアイデアを生み出すことができる。

空間の移動に必要な5Gと「何か」

4年前に鬼才、イーロン・マスク氏が発言した「私たちはビデオゲームの中で生活できる」という世界観を思い出す。現実と仮想が曖昧になる時代。

仮想空間に存在するために私たちが議論すべき最大のポイントはここなんだ:40年前、私たちは「Pong(※簡単なゲーム)」を手に入れた。2つの長方形とドットだ。そして今、40年後に私たちは仮想的に数百万人が遊んでいる写実的な3Dを手に入れている。仮に全てにおいてある一定の改善割合を想定したとしよう。たとえその割合が今の状況から1000以下に落ちたとしたとしても、おそらくゲームは現実と区別がつかないものになる。

人がそこに「それがある」と感じるためには、8Kほどの高精細映像が必要になるそうだ。有線は当然ながら、5G通信はモバイル環境での8Kデータ転送を可能にする。より広範囲の環境で仮想と現実の境界線は曖昧になっていく。

このパラダイムを現実にするには何が必要なのだろうか。2007年に登場したiPhoneによってもたらされた「タッチパネル」体験は、3G、4G回線を手にしてシェア・オンデマンド経済を生み出すことになる。5Gを「手触りある体験」にする技術は何か?

「デバイスのポイントはデバイス、チップ、ネットワークと多様です。しかしそれ以上に必要なのがコンテンツを作るハードル。XR空間では2Dの情報を3Dに変換する必要があります。ここの商用化にはもう少し時間がかかる」(武井氏)。

デバイスの普及もまだ時間がかかる。ニールセンが公開した2018年の推計で本命と言われるFacebookのOculus Questは、2019年5月の発売後1年で173万台近くを出荷するとしていた。しかし、実際は2019年11月の決算で示された数字は40万台程度に留まる。

「特にビジネスでの利用は『なんちゃって』では普及しません。例えば昨年に実験した防衛医大との5G・VRを活用したトリアージ(救援重要度判定)などの取り組みでは、絶対に行けない場所でリアルタイムに作業ができる、といった確実なベネフィットが必要です。リアルでできないことができるようになってはじめて普及期が訪れる」(KDDIライフデザイン事業企画本部 ビジネスインキュベーション推進部長の中馬和彦氏)。

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2010年という転換点

スタートアップ乱立の今、国内の支援事例を振り返ると明らかに大きな転換点となるポイントがあった。2010年初頭、日本に「アクセラレーション・プログラム」のトレンドが流れ込み、独立系VCやCVCがこぞって「Y Combinatorモデル」を採用したあの時期のことだ。

デジタル・ガレージにサイバーエージェント、孫泰蔵氏率いるモビーダ、メルカリ投資で一斉を風びしたEastVenturesにインキュベイト・ファンド。この中にあって異色の顔ぶれがKDDIの「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」だった。投資ファンドでもなく、事業シナジーを成果とする事業投資ともやや異なる、純粋にスタートアップを育成する、言わば「独自の起業エコシステム」のような存在に当時、疑問符が多く付いたのを記憶している。

KDDIは1兆円の利益を稼ぎ出す日本有数のインフラ企業だ。スタートアップエコシステムが成熟してからの参入でも遅くはない。なぜ10年近くも前だったのか。

そこにはこの企業が辿ったオープンイノベーションに対する「歴の長さ」が関係していた。

通信企業における「非通信」事業への投資

KDDIの最新決算(2020年第3四半期)をみると注目すべきポイントが2つある。ひとつは非通信領域の躍進だ。ローソン・Pontaポイントとau Payの連携にみられる「非通信」領域の営業利益は年次で約26%増の1360億円となった。また、通信領域でもここ数年力を入れているIoT領域で契約回線数が1000万件を突破。利用領域もスマートメーターやテレマティクスなどの既定路線から、2017年にグループ入りしたソラコムのように、新たな利用シーンを提供するケースも積み上がっている。

本業(通信)が盤石な間に周辺領域を成長させる。ポートフォリオとして当たり前の戦略も体が大きくなればそう簡単なことではない。この布石はおよそ15年前に遡る。

「そもそも(現社長の高橋誠氏は)フィーチャーフォンの立ち上げからEzweb、グーグル検索の導入だったりLISMOのようなエンターテインメントコンテンツなど、非通信の領域を中心に手掛けていました。それが2003年とかその辺りですね。それを大企業や中小、ベンチャー問わず、パートナーシップによって成長させてきた、という経緯があるんです」(中馬氏)。

大きく状況が変わるのが2007年のiPhone登場、いわゆる「スマホシフト」だ。フィーチャーフォンアプリで独自の課金エコシステムを構築してきた国内通信キャリアは、その市場をAppleやGoogleといったグローバル・マーケットに奪われていくことになる。

「KDDI ∞ Laboって当初は『スマホのアプリを探そうプロジェクト』みたいな感じだったんです。ちょうど当時、高橋もネットベンチャーが生まれていく様相を見ながら、Y Combinatorみたいな仕組みがスマホの世界には必要なんじゃないかって考えていて」(中馬氏)。

こうしてKDDIのオープンイノベーションの取り組みは次のステージに向かうこととなる。

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∞ Laboが拠点とする「KDDI DIGITAL GATE」(写真提供:KDDI)

手探りで積み上げた独自のエコシステム

∞ Laboが輩出した事業で大きく成長したのは、昨年上場を果たしたギフティだろう。第一期生としてプログラムに参加したソーシャルギフトのアイデアは、最終的にエンタープライズ向けのモデルが大きく成長し、IPOを果たすこととなった。プログラムも順調にスタートアップを集め、2014年には企業パートナーを取り込んだオープンイノベーションの形をつくることになった。

一方、2011年に開始したプログラムに迷いがなかったかというとそうとは言い切れない。筆者も現場で取材に当たっていたが、スタートアップ、連携する企業にそれぞれの温度感は異なっていたように記憶している。

「当初はやはり30代の若手社員が入って一緒に事業を作るような感じもありました。ただ、スタートアップ、事業会社共に成熟してきた結果、局面は変わってきたと感じてます。事業づくりのフェーズは引き続きやりますが、それ以上にやはりグロースです。私たちができることはこの成長局面を支援する」(中馬氏)。

きっかけはやはり2020年を元年とする5Gの開始だ。これまでのインターネットテクノロジーでは、書店や小売にしてもあくまでインターネットの中で完結してしまっていた。5G時代は大きくそこからシフトする。「ビルから信号機からクルマ、あらゆるモノがフルに通信する時代」(中馬氏)に大企業の存在は無視できなくなる。

スタートアップがアイデアを出し、面を押さえている企業と組み合わさることで大きな利益を生む。ちなみにここで言うスタートアップはアイデアだけの零細企業のことではない。この10年で大きく成長したネット企業も対象になりうる。

つまり次に重要な視点は「事業」になるかどうか、というわけだ。次回はKDDI∞ Laboを支えたもうひとつのエンジン、KDDI Open Innovation Fundについてその立ち上げの経緯をまとめる。

ーーー

筆者:平野武士・・ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現・BRIDGE)を共同創業し、2018年4月に株式会社PR TIMESに事業譲渡。現在はBRIDGEにてシニアエディターとして取材・執筆を続ける傍ら、編集からPRを支援するOUTLINE(株)代表取締役も務める。

ロンドン発〝銀行版Stripe〟のRailsbank、シリーズA+ラウンドでグローバル・ブレインから資金調達——2020年4Qにも日本市場に参入へ

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ロンドンを拠点にオープンバンキング API などを提供する BaaS(Banking as a Service)スタートアップの Railsbank は7日、グローバル・ブレインから資金調達を受けたことを明らかにした。調達ステージはシリーズ A+ ラウンドで、昨年9月に1,000万米ドルを調達したシリーズ A ラウンドのエクステンションラウンドとなる。グローバル・ブレインからの調達額は明らかになっ…

Image credit: Railsbank

ロンドンを拠点にオープンバンキング API などを提供する BaaS(Banking as a Service)スタートアップの Railsbank は7日、グローバル・ブレインから資金調達を受けたことを明らかにした。調達ステージはシリーズ A+ ラウンドで、昨年9月に1,000万米ドルを調達したシリーズ A ラウンドのエクステンションラウンドとなる。グローバル・ブレインからの調達額は明らかになっていない。Crunchbase によれば、Railsbank の累積調達金額は1,440万米ドル。

Railsbank は、Nigel Verdon 氏(現 CEO)により2015年に設立。Verdon 氏は2008年に設立された国際送金 API を開発する Currencycloud の創業者で元 CEO だ(ちなみに、Verdon 氏は Railsbank の業務に集中すべく Currencycloud の CEO を2017年に退任した。Currencycloud は今年1月、シリーズ E ラウンドで日本の SBI や Visa から8,000万米ドルを調達している)。

クレジットカードの決済の分野で言えば、Stripe が導入した RESTful API を使った決済インターフェイスにより、この分野の事業形態がかなり民主化されたと言える。モバイルアプリや Web アプリの中にクレジットカード決済の仕組みを包含できるようになったからだ。Railsbank が実現しようとしているのはバンキング(銀行業務)におけるそれであり、さまざまなアプリに Railsbank の API が連携されることで、ユーザは銀行アプリや銀行や銀行インターフェイスを介さずに、送金・入金・出金などが可能になる。

新型コロナウイルスの影響でフランス国内に足止めを食らっているという Verdon 氏は、BRIDGE のインタビューに対し、具体的なユースケースを次のように教えてくれた。

銀行サービスは銀行から離れていき(銀行サービスのアンバンドル化)、一方で、(スーパーアプリをはじめとする)テック企業が金融プラットフォームやブランドへと移行するだろう、というビジョンを持っている。

ユースケースとしては、ギグエコノミー(ギグワーカーへのアプリ経由の報酬支払など)、フィンテック企業、それに、スーパーマーケットが自社ブランドで銀行サービスを提供するような事例に用いられるようになるだろう。(Verdon 氏)

創業メンバー。前列右が CEO Nigel Verdon 氏、前列中央が COO Clive Mitchell 氏。
Image credit: Railsbank

Railsbank はこれまでヨーロッパを中心に展開してきたが、昨秋、Visa とのパートナーシップを発表、シンガポールをはじめとする東南アジア市場への進出を果たした。今後、日本とオーストラリアへの進出を目論でおり、今回のグローバル・ブレインからの資金調達はそれを念頭に置いたものだ。Verdon 氏はグローバル・ブレインの知見を得て適切なパートナーを獲得し、今年第4四半期に Railsbank 日本市場進出を目指したいと語った。

Verdon 氏が語った Railsbank のユーザとなり得るフィンテック企業にはチャレンジャーバンクが含まれる。日本では、先頃シリーズ C ラウンドで47億円を調達した Kyash や、元ベリトランス沖田貴史氏を迎えた WED がチャレンジャーバンクに参入することを表明している。東南アジアでは、SingTel と Grab、LazerSea などがシンガポールのデジタルバンク免許を申請した。

一方 BaaS の分野では、アメリカでは Green Dot や Plaid、イギリスでは Dozens、ドイツでは SBI も出資する solarisBank といったスタートアップが頭角を表しているほか、Standard & Chartered Bank も先月、「nexus」という BaaS プラットフォームをインドネシア向けにローンチした。日本ではインフキュリオン・グループが先月、新生銀行グループの「BANKIT」に BaaS プラットフォームの提供を明らかにしている

<関連記事>

セイコーエプソンが50億円ファンドでスタートアップとの協業加速、グローバル・ブレインと共同で設立

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グローバル・ブレイン(以下、GB)は4月1日、セイコーエプソン子会社で事業投資を手掛けるエプソンクロスインベストメントと共同で、投資ファンド「EP–GB投資事業有限責任組合(略称:EP–GB)」の設立を伝えている。運用総額は50億円でエプソンクロスインベストメントが99%、GBが1%を出資し、GBが無限責任組合員として運用にあたる。 エプソングループでは2019年3月にグループ長期ビジョン「Eps…

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セイコーエプソンが掲げるオープンイノベーション領域

グローバル・ブレイン(以下、GB)は4月1日、セイコーエプソン子会社で事業投資を手掛けるエプソンクロスインベストメントと共同で、投資ファンド「EP–GB投資事業有限責任組合(略称:EP–GB)」の設立を伝えている。運用総額は50億円でエプソンクロスインベストメントが99%、GBが1%を出資し、GBが無限責任組合員として運用にあたる。

エプソングループでは2019年3月にグループ長期ビジョン「Epson 25」に向けた中期経営計画を公表している。この中で同社は、グループが持つインクジェット技術を中心とした経営資源を最大活用するための協業・オープンイノベーション戦略を打ち出している。今回のファンドもこの計画に沿ったものとなる。

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長期ビジョン Epson 25 各領域

GBにファンドの方向性を確認したところ、今回のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)設立は、これまで対外的に積極的なPRを実施してこなかったエプソンが、投資戦略を前進させるための体制として整えたものだそうだ。セイコーエプソン本体としての事業投資とCVCを分けることで、スピード感を求められるケースに対応できるとしている。

また投資範囲についてはGBから次のようなコメントを得られた。

「ベンチャーと共に社会課題の解決を起点とするような新規事業の創出に取り組みたい。地球規模で持続可能な社会の実現に対する大企業への期待が高まる中で、当社の資源や技術をオープンイノベーションを通じてより大きな価値を生み出す活動へと進化させていきたい」。

なお、グローバル・ブレインは3月31日にヤマトホールディングスと共同で50億円のファンド組成を公表したばかりだ。

<参考記事>

「50億円は手始め」ヤマトが仕掛ける物流“運創”ファンド公開、グローバル・ブレインと共同で設立

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ニュースサマリ:独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレイン(以下、GB)は3月31日、ヤマトホールディングス(以下、ヤマト)と共同で新たなファンドの設立を公表した。名称は「KURONEKO Innovation Fund(YMT-GB 投資事業有限責任組合)」で、運用総額は50億円。ヤマトが有限責任組合員として大部分を出資し、運用期間は10年間。無限責任組合員としてGBが共同運営にあたる。 …

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写真左から:グローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏、ヤマトホールディングス代表取締役社長の長尾裕氏

ニュースサマリ:独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレイン(以下、GB)は3月31日、ヤマトホールディングス(以下、ヤマト)と共同で新たなファンドの設立を公表した。名称は「KURONEKO Innovation Fund(YMT-GB 投資事業有限責任組合)」で、運用総額は50億円。ヤマトが有限責任組合員として大部分を出資し、運用期間は10年間。無限責任組合員としてGBが共同運営にあたる。

物流業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する狙いで、物流やサプライチェーンなどをテーマに、これらを変革する技術やビジネスモデルを持った国内外のスタートアップに投資する。出資の規模は5000万円から数億円程度で、資金だけでなくヤマトやグループ各社が保有する経営資源を活用した協業も視野に入れている。

話題のポイント:物流やサプライチェーンは社会経済の基盤であり、今回の新型コロナウィルスの一件でもよく理解できましたが、国境が封鎖されるという事態に陥るとそのインパクトは凄まじいものになります。逆に言えば、このテーマでイノベーションが起こると、社会全体が変わる可能性が高いということでもあります。

ヤマトはロジスティクスという点で、特にEC系スタートアップの大切なパートナー的存在になっています。例えばメルカリは2015年にヤマトと提携し、送料決済をアプリ内で完結させるシステム連携を開始しました。

メルカリは当時、創業2年・売上ゼロの「ザ・スタートアップ」でしたが、B2C文脈を増やすという方針で合致したこともあって提携を実現させています。創業年数で門前払いにせず、しっかりとロジックを持っている相手とは手を組む姿勢が伺えるエピソードです。

今回のファンドはこのようなスタートアップとの連携をより加速させるための仕掛け、ということになります。

今回、取材でヤマト側のファンド責任者を務める専務執行役員の牧浦真司さんにお話を伺いましたが、ファンドの特性としては協業が中心となる本体投資と切り分けて、ファイナンシャルリターンもしっかりと視野に入れたCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を目指すということです。協業の可能性がある企業へ投資し、IPOまで支援するパターンと、より本体事業とのシナジーが見出せれば直接(本体)投資も検討する、というスタンスですね。

一方で、物流は範囲が相当に広いです。サプライチェーン全体で考えれば、資材などのB2B物流、製造拠点、在庫管理、製品の個宅配送など、毛細血管一本ずつに事業機会が潜んでいます。

また、2010年前後から始まったシェア・オンデマンド経済は、UberEatsやInstacartなど、デリバリそのものの仕組みを変えてしまいました。こういったバーティカルな業界毎のサプライチェーン特性(例:食品ロスは流通の過程でも発生するといった業界事情など)と、新たなビジネスモデルとの組み合わせになるため、どこまでが投資対象になるのかなかなか掴み所が難しいわけです。

前出の牧浦さんも、2020年代の大きなテーマとなる5Gやスマートシティ、チャレンジャーバンクなど全ての分野において投資の可能性がある、というかなり幅広い門戸を認識されていました。例えばフィンテックは物流と切り離せない「代引き」というサービスがあります。現時点で私もまだ玄関口で現金を手渡ししている状況が続いていますから、この体験の変革にはインパクトがありそうです。

物流データは宝の山

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ヤマトHDが今年1月に公表した経営構造改革プロジェクト「YAMATO NEXT100」より

もう一つ、彼らの投資戦略を紐解く上で重要な情報が、今年1月に発表された経営構造改革プランの存在です。「YAMATO NEXT100」と題された計画で、中計などのさらに上の概念になります。

ここで彼らは3つの事業・基盤構造改革を打ち出しているのですが、中でも注目したいのが物流データへの着目です。現在ヤマトでは年間18億個もの配送を手掛けており、ここにまつわるビッグデータには様々な可能性が隠れています。例えばモノフルやスマートドライブといった移動データを扱うスタートアップたちは、「A地点からB地点」への移動をデータで可視化・効率化することで、様々な事業を生み出しました。

この宝の山のような物流・移動データが集中しているのがヤマトです。大きなテーマとして「宅急便」のDX、ECエコシステムの確立、法人向け物流事業の強化を掲げていますが、この周辺領域に強い技術やアイデアを持ったスタートアップにはチャンスがある、というわけです。また、これらを実現するために、2021年に300人規模のデジタル組織を立ち上げ、データドリブンな経営・意思決定プロセスを構築するそうです。

ヤマトは構造改革プランで「運送から運創」というコピーを用意しています。牧浦さんも取材の中で「50億円のファンドは手始め」とされていましたが、こうやって全体像を俯瞰すると、資金運用を主目的としたコーポレートベンチャーキャピタルというよりは、本体事業の構造改革を背景とした仕組みの一部が今回の「KURONEKO Innovation Fund」の本質と言えそうです。

グローバル・ブレイン、年次イベントで2020年の経営戦略を発表——インドネシアや中国に進出、知財やデザイン面でのスタートアップ支援も強化

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本稿は、Global Brain Alliance Forum 2019 の取材の一部。 グローバル・ブレインは6日、都内で年次イベント「Global Brain Alliance Forum 2019(以下、GBAF 2019 と略す)」を開催している。このイベントの中で、代表取締役の百合本安彦氏は、同社の今後の経営戦略について発表した。 2019年の振り返り——投資先3社がIPO、5社がM&a…

百合本安彦氏(グローバル・ブレイン 代表取締役)
Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、Global Brain Alliance Forum 2019 の取材の一部。

グローバル・ブレインは6日、都内で年次イベント「Global Brain Alliance Forum 2019(以下、GBAF 2019 と略す)」を開催している。このイベントの中で、代表取締役の百合本安彦氏は、同社の今後の経営戦略について発表した。

2019年の振り返り——投資先3社がIPO、5社がM&Aでイグジット

Image credit: Masaru Ikeda

グローバル・ブレインは、昨年の GBAF 2018 で組成を発表した7号ファンドの組み入れを完了しつつあり、過去のファンドを含めた運用総額は1,300億円に達している。2019年にグローバル・ブレインが実施した出資は63社123億円に達し、逆に投資先がイグジットを果たした実績は IPO が3社、M&A が5社に達した(累積では、IPO は16社、M&Aは48社)。

IPO でイグジットを果たしたスタートアップには、BRIDGE でも報じた BASEgiftee、来週上場予定のメドレー、M&A でイグジットを果たしたスタートアップには、先月マネーフォワードにグループ入りしたスマートキャンプや、今年初めウォルマートに買収されたイスラエルのスタートアップ Aspectiva などが含まれる。

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キャピタルゲインについては、メルカリやラクスルの上場が貢献した2018年の348億円に比べると、2019年は112億円で最終的に着地する見込みと説明。市況的にスタートアップのバリュエーションが高止まりする傾向にあったことから、2019年はバリュエーションの高いスタートアップへの出資を抑制するよう努めたことも明らかにした。

知財管理やデザイン面でのサポートも強化

左から:福原寛重氏(ソニー クリエイティブセンター チーフアートディレクター)、百合本安彦氏(グローバル・ブレイン 代表取締役)、内田誠氏(iCraft 法律事務所・弁護士)
Image credit: Masaru Ikeda

スタートアップ向け採用支援の「GBHR」、オウンドメディアの「GB Universe」、CVC 支援と事業会社連携の「α TRACKERS」、VC やエンジェル投資家コミュニティの「Startup Investor Track(SIT)」など、投資活動以外にもスタートアップシーンの醸成に多くの支援策を提供するグローバル・ブレインだが、GBAF 2019 では新たに知財管理とデザイン面での戦略も発表した。

知財管理においては、グローバル・ブレインの法務部に所属する社内弁護士2名に加え、特許庁のスタートアップ支援施策「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」の知財メンターである iCraft 法律事務所の弁護士である内田誠氏と専属契約を締結したことを明らかにした。デザイン面においては、ソニークリエイティブセンターの協力を得る。

2020年にはインドネシアへの進出が決定、高確率で北京か上海への進出も言明

Image credit: Masaru Ikeda

グローバル・ブレインは東京の本社に加え、シリコンバレー、シンガポール、ロンドン、ソウルの4拠点にオフィスを持ち、日本はもとより、アメリカ東海岸・西海岸、ヨーロッパ、イスラエル、カナダ、東南アジア、オセアニアをカバーしているが、2020年1月にはインドネシアにオフィスを開設し、同国で本格的な投資活動を開始することも明らかにした。

中国については進出は未決定であるものの、中国市場がダウンサイジングのトレンドにあり、中国の VC が減ってきていること、中国にはディープテックにフォーカスした VC が少ないこと、日本企業との事業協創に高い期待があることから、「おそらく進出することになるだろう(百合本氏)」として、北京か上海へのオフィス開設を示唆した。

インドについても目下、進出を検討する市場調査の段階にあるという。

プロフェッショナルは世界を変えることができる

こんにちは。グローバル・ブレインの百合本安彦です。 グローバル・ブレインでは投資したスタートアップを徹底的に支援するため、30名のキャピタリストを含む多様な人材を採用し、50名以上の体制で現在も組織を拡大中です。そして私はこのチームが国内VCとして、最も手厚くハンズオン支援できる体制であると自負しております。 結果として、私たちはメルカリやラクスル、ギフティ、BASE等、日本を代表するスタートアッ…

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こんにちは。グローバル・ブレインの百合本安彦です。 グローバル・ブレインでは投資したスタートアップを徹底的に支援するため、30名のキャピタリストを含む多様な人材を採用し、50名以上の体制で現在も組織を拡大中です。そして私はこのチームが国内VCとして、最も手厚くハンズオン支援できる体制であると自負しております。

結果として、私たちはメルカリやラクスル、ギフティ、BASE等、日本を代表するスタートアップへの投資、及び育成を通じて彼らと共にIPOにまでこぎつけることができました。しかしその一方で、グローバルに活躍できるスタートアップを十分に輩出できているかと問えば、まだまだ十分とは言えません。

この使命を果たすためには、弊社として再度支援体制を見直す必要があると考えています。

例えば、私がベンチマークしているUSのVC、Andreessen Horowitzは、事業を成長させる上でのペインポイントだった採用、マーケティング、事業開発等に特化した人材を揃えています。

ハンズオンで投資先に関わるスタイルを確立し、15人のGPと32人の投資プロフェショナルに加えて、Market Development, Executive Talent, People Practices & Technical Talent, Marketing, Corporate Development, Operationsにおいて110人以上のプロフェッショナルが投資先企業を支援しています。

Andreessen Horowitzのこの支援体制は大きな金額を投資し、ハンズオフで短期間に売り抜けることでキャピタルゲインを稼ぐ、現在のシリコンバレーの潮流のアンチテーゼとして提唱されていると思います。

私もまた、彼らのような中長期的な視点でスタートアップの事業創出・成長に徹底的にコミットしていく新しいVCの在り方・チャレンジに大きな共感を感じています。また、このスタイルは結果的に大きなリターンを得ることができるとも考えています。

ではこのようなスタイルを国内でも実現し、グローバルで真に成功するスタートアップを支援するためにはどのような「How」が必要なのでしょうか?

グローバル・ブレインはそのひとつの答えに「プロフェッショナル」の存在があると考えています。ご存知の通り、スタートアップを成功たらしめる大きな要因に市場の選択があります。このモメンタムとの出会いはある意味「運」であり、その時、その場所で、そのチャンスを掴んだ起業家にのみ手渡されるチケットのような存在です。

一方、この幸運のチケットを手にした起業家を待っているのが「壁」です

ビジネスモデルの検証、プロダクトの磨き込み、組織のスケール、資金調達のノウハウ。国内でスタートアップという起業のモデルが生まれてから約10年。競争の激化はこれらの壁をより高く、より険しいものにしてしまいました。運に恵まれても、実力がなければ壁は超えられないのです。

しかしプロは違います。それぞれの立場で、その壁をクリアする術を知っているのです。

メルカリは競合に大手オークションサービスがありながら「スマホアプリの体験」で一気に新たな市場を顕在化させました。ラクスルはアナログだったスモールビジネス向けのマーケティングをインターネットの力でより身近な、誰もが使いやすい「クラウドサービス」にして成長しています。これらは全て、起業家の下に集まった「プロ」の積み上げの結果なのです。

私たちはこの成長の方程式を、できるだけ多くの可能性に提供したい。

しかしその一方、超級のプロフェッショナルな人材はどこにでもいるわけではありません。全ての企業にあらゆるプロを配置することは現実的ではないのです。であれば、こういったスペシャリストたちをグローバル・ブレインという仕組みの中に集め、その知見をチームとして組織すれば各社にノウハウが提供できる。その力をそれぞれが血肉とし、次の大きな成長に向かう力に変えることができるかもしれない。

グローバル・ブレインではこの構想に賛同し、集まってくれるプロフェッショナルを探しています。この10年、メルカリやラクスルはゼロから世の中を変える事業を作り上げました。そして今、私たちの支援先にはその可能性を秘めたスタートアップたちが「次の世界」を見据えてしのぎを削っています。

オールドエコノミーの改善だけでは決して生み出せない、革新的な新規事業の創出と、未知の社会の創造を目指して。ぜひ彼らにみなさんの知見を共有し、共に「世の中を変える側」となっていただければ幸いです。ご興味ある方はこちらのコンタクト情報をご覧ください。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル「グローバル・ブレイン」代表取締役の百合本安彦氏による寄稿転載。同氏のTwitterアカウントは@YYurimoto

適切な紹介料で人材紹介、採用ノウハウ提供もーーグローバル・ブレインが採用支援子会社「GBHR」設立【百合本氏インタビュー】

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ニュースサマリ:ブランド刷新に続き、独立系VCのグローバル・ブレインがスタートアップの人材採用支援に乗り出す。同社は8月9日、スタートアップの人材採用に特化した子会社GBHRを設立したことを公表した。 投資先への人材紹介を中心に、ダイレクトリクルーティングやリファラルといった採用サービスの運用代行も手がける。紹介料は市場で設定されている年収の35%前後よりも低い料率に設定される見込み。本件について…

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スタートアップの採用支援会社設立にあたり電話取材に対応してくれた百合本氏(写真は昨年末の年次カンファレンス登壇時/Image Credit Masaru Ikeda)

ニュースサマリ:ブランド刷新に続き、独立系VCのグローバル・ブレインがスタートアップの人材採用支援に乗り出す。同社は8月9日、スタートアップの人材採用に特化した子会社GBHRを設立したことを公表した。

投資先への人材紹介を中心に、ダイレクトリクルーティングやリファラルといった採用サービスの運用代行も手がける。紹介料は市場で設定されている年収の35%前後よりも低い料率に設定される見込み。本件について、同社代表の百合本安彦氏にその詳細を伺った(太字の質問は全て筆者、回答は百合本氏)。

ベンチャーキャピタルが出資先の採用やバックオフィスなどをチームで支援するスタイルが国内でも広がっているが、それでも外部エージェントなどとの連携が中心になっている。法人まで設立して完全に内製とした理由は

百合本:スタートアップへの投資額は年々増加し現在年間約4000億円と言われていますが、企業が調達した資金はおおよそマーケティング費用か人材採用に活用されます。このことから、エコシステムの中で人材採用に係わる機能が重要であることは間違いありません。

私は2001年からスタートアップへの投資をしていますが、スタートアップに対する人材紹介市場は大きくなりました。他方でエージェント経由で入社した人材が数日で辞めるような事例もあります。

若いスタートアップのカルチャーフィットが原因とよく聞く

百合本:それもあると思いますが、それ以上に新規参入者が増えすぎた、というのが私の仮説です。大切な投資先企業にはホンモノのHRサービスを提供し成長してもらいたい。それがエコシステムの正常化でもあり、ひいてはGBとしての成長戦略のひとつとなります。

百合本さんが考えるスタートアップにとっての「ホンモノのHRサービス」とは

百合本:まず、人材紹介の世界では「年収の35%」が紹介フィーという基本的なルールがあります。勿論、大手企業の利益の中で、そういったビジネスが成立するのは良いかと思います。

ですが、スタートアップとしてはどうでしょうか?まだサービスが軌道に乗る前であり、毎月赤字な中でVCから調達した資金が数億、数十億円とあるからといっても、PLが赤なのだから削れるものなら削りたいはずです。

具体的にどのような効率化を提供する

百合本:原則、候補者獲得にかかった原価分のみを対価とする考え方です。例えば幹部クラスを年収1000万円で採用した場合、先ほどのルールであれば350万円の紹介フィーが発生しますが、GBHRの場合は30万円で済むはずです。

求職者のスカウト媒体の利用料金並みに引き下げる

百合本:価格だけではありません。スタートアップ自身が採用力をつける、という視点も重要です。

メルカリなどリファラルによる組織的な採用カルチャーを育てている事例も多くなってきた

百合本:残念ながらエージェント活用に頼り切っている会社の場合、自社に求職者をアトラクトするノウハウや候補者プールも溜まっていきません。ノウハウもプールもエージェント会社に集約されてしまうのです。そのため、自社採用方針や、ビズリーチ・Wantedlyといった採用サービスの運用代行なども当初は無料で提供する予定です。

即効性のある紹介とリファラルや採用プールなどの運用代行を組み合わせる

百合本:実はこれが一番即効性が高く、運用代行サービスの試用期間でひと月に30名以上もの優秀人材と面談設定できた実績もあります。これはGB本体でも試しましたが、比較的採用ハードルが高い弊社でも半年で既に3名採用決定が出ました。

エージェント会社の視点からいくと、スタートアップのような顧客に対して30名以上の人材を推薦できる会社はほとんどなく、仮にできたとしてもごく一部の企業に対してのみだと思います。紹介も質を求めれば量まではカバーできません。そこで、採用媒体の運用代行も必要なのです。

こういった紹介や採用媒体の運用代行のようなサービスは支援先以外にも提供する?

百合本:はい、GBの投資先を含め、すべてのスタートアップの人材採用支援の一環として展開していきます。

国内企業全体の人材流通を考えると既存ビジネスも重要だが、スタートアップに限って言えば、別のエコシステムがあった方が望ましいと

百合本:そこがポイントです。私たちは日本のスタートアップの人材採用力の底上げをしたい。勿論優秀な採用担当者がいる会社が多いですが、やはり業界全体としてまだまだ足りていません。

また、VCとしてお金以外の価値をどう出していくか、これも大きなテーマです。その一つのソリューションとしてHRを軸にしました。上質な人材紹介ビジネスを提供すると共に、更に入り込んで採用媒体の運用代行も提供する。

そもそも米国にはSequoiaやa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)のように人材採用に注力するしているVCが存在します。そのため、日本国内でも投資×HRというのはここ数年VC業界でひとつのテーマだったものの、様々な理由でそれは実現できずにいました。それを今回GBHRで実現し、日本のエコシステムに貢献できればと思います。

ありがとうございました。

話題のポイント:今年に入ってスタートアップの支援をする独立系VCの動きがいくつかありました。私も各社取材させていただいたのですが、取り組みの重要ポイントとしてみなさんが挙げていたのが「支援先の採用強化」です。

それぞれ専門のリクルーターやチームを揃えるだけでなく、一定レベルの人材については採用面接などにキャピタリスト自身も入ってカルチャーフィットを求めるなど、相当解像度の高い手法をそれぞれ編み出している印象でした。

百合本さんも言及していましたが、紹介そのものはもちろん、それ以上に「採用ノウハウのインストール」こそ、スタートアップ側が血肉にできる最高の支援なのかもしれません。

一方で、外部の人材エージェントを使ってしまうと、どうしようもなくなってしまうのが手数料の料率です。特に限られたリソースで優秀な人材を採用することが至上命題となるスタートアップにとって、高額な手数料は色々なものを圧迫しますからこの手法は確かに明快です。

国内のVCもスタートアップ同様、ものすごいスピードでアップデートがかかっているので、さらに差別化が進みそうです。

攻めの支援体制は50名以上にーーグローバル・ブレインがブランド刷新、新プラットフォーム「GB Universe」公開

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ニュースサマリ:国内独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは8月8日、デジタルメディアプラットフォーム「GB Universe」を公開した。スタートアップを志望する起業家や事業会社の新規事業担当者などを対象にした情報メディアで、業界最新動向や専門家による起業ノウハウ、支援先のインタビューなどの掲載が予定されている。 今年6月末にはブランドも刷新。昨年の年末に公表した通り、現在の支援体制は…

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グローバル・ブレインが公開したGB Univers

ニュースサマリ:国内独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは8月8日、デジタルメディアプラットフォーム「GB Universe」を公開した。スタートアップを志望する起業家や事業会社の新規事業担当者などを対象にした情報メディアで、業界最新動向や専門家による起業ノウハウ、支援先のインタビューなどの掲載が予定されている。

今年6月末にはブランドも刷新。昨年の年末に公表した通り、現在の支援体制は50名以上に拡大している。今回公表されたGB Universeをはじめ、起業家向けの勉強会やコミュニティグループ、若手投資家などを集めた新たなイベントなどを準備中で、国内における新たな起業エコシステムの構築を推進する。

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昨年末の年次イベント「GBAF」で発表された体制強化

話題のポイント:運用総額1500億円、メルカリやラクスルを筆頭にIPO14社、M&A 45社のトラック・レコードを積み上げてきたのが国内独立系VC最古参のグローバル・ブレインです。昨年末の年次イベント「GBAF」で公表していた通り、支援体制強化やブランド刷新、新たなコミュニティ活動など、ここにきていよいよ新しい動きが顕在化してきました。今日、公表されたのはその第一弾、というわけです。

<参考記事>

これまでのグローバル・ブレインの強みはどちらかというとエスタブリッシュなスタイルで、特徴的なスキームとして大企業と連携するCVC支援がありました。KDDIと共同で立ち上げた「KDDI Open Innovation Fund」は現在3号まで運用が継続しており、2011年から運営された支援プログラム「KDDI ∞ Labo」と連動して日本国内のオープンイノベーションを牽引してきた実績があります。

結果的に「縁の下の力持ち」的な印象が強く、創業者の百合本安彦さんはじめ、パートナーの方々が積極的に露出することは少なかったように思います。そういう意味で、今回、彼らが打ち出してきた「積極支援」の戦略は大きな転換点です。

比較的オープンな戦略としては、前述したGB Universeというオウンドメディアを中心に情報を集め、独自の起業家コミュニティや勉強会、オープンオフィスなどの企画を展開する。もちろんこれらは目新しい手法ではありませんが、これまで積み上げてきた支援先のネットワークや事業会社との連携で、結構早い段階での濃密かつセミクローズドなコミュニティが立ち上がるのではないかなと想像します。

また50名体制で実施するハンズオンのテーマについても、事業開発、海外展開、採用、マーケティング、PR、バックオフィスと多岐に渡ります。これらの具体的な支援内容については今後、順次情報が公開されるということなので、またその際に共有したいと思います。

国内でも非製造業のスタートアップで100億円規模の増資が出てくるなど、起業支援を取り巻く環境はまだまだ勢いが感じられる状況です。新たな起業家や独立系VCが生まれ続ける中、グローバル・ブレインがどのようなポジショニングに変化するのか楽しみになってきました。

自動運転向けに、歩行者の動きを予測する技術を開発——英Humanising Autonomy、グローバル・ブレインなどから530万米ドルをシード調達

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ロンドンを拠点とするコンピュータビジョン(映像分析)スタートアップ Humanising Autonomy は20日、シードラウンドで530万米ドルを調達したと発表した。このラウンドのリードインベスターは、イギリスのフィンテック・インシュアテック特化 VC である Anthemis Group。日本のグローバル・ブレイン、ドイツの Amplifier、シリコンバレーのデータサイエンス特化 VC で…

Image credit: Humanising Autonomy

ロンドンを拠点とするコンピュータビジョン(映像分析)スタートアップ Humanising Autonomy は20日、シードラウンドで530万米ドルを調達したと発表した。このラウンドのリードインベスターは、イギリスのフィンテック・インシュアテック特化 VC である Anthemis Group。日本のグローバル・ブレイン、ドイツの Amplifier、シリコンバレーのデータサイエンス特化 VC である Synapse Partners が参加した。

それぞれの地域から1社ずつ VC が投資していることには意味があり、今回の調達を受けて、Humanising Autonomy はこれまでのイギリスに加え、日本、ドイツ、アメリカへの市場参入を始める。

Humanising Autonomy は2017年、Imperial College of London の学内プロジェクトからスピンアウトする形で設立されたスタートアップ。同大学の4人の卒業生を中心となり、行動心理学と人工知能(AI)を融合することで、人間の行動・コンテキストを認識・予測するコンピュータビジョン技術の開発を行っている。ユビキタスな映像カメラのデータを活用することで、自動運転技術の普及、人々の自動運転技術への信頼性向上、都市における人間にとっての安全性向上を狙う。

Humanising Autonomy のチーム(一部)。右から5番目が CEO の Maya Pindeus 氏
Image credit: Humanising Autonomy

Humanising Autonomy が顧客とするのは、スマートシティをリードするパブリックセクターのほか、自動運転車との連携を念頭に置いた自動車メーカー、OEM プレーヤーなど。有名どころでは、ダイムラー、ロンドン市交通局、エアバス、イギリス政府の交通研究所(TRL)が設立した Smart Mobility Living Lab など。CEO の Maya Pindeus 氏によれば、これ以外にもあらゆる自動車メーカーや半導体メーカーなども潜在的顧客に含まれる。THE BRIDGE の取材に対し、多くの自動車メーカーが存在することも、日本は非常に魅力的な市場である理由の一つであると同氏は語った。

グローバル・ブレインは自動運転やそれを支援する技術を開発するスタートアップにも、積極的に投資している。昨年末の Global Brain Alliance Forum 2018(GBAF 2018)では、グローバル・ブレインが出資する韓国/アメリカスタートアップの StradVision が優勝している。

Humanising Autonomy は2017年、オーストリア・リンツで毎年開催される世界有数のアートイベント「Ars Electronica」で、欧州委員会 Horizon 2020 が選抜する「STARTS Program」で表彰された

映像からユーザの感情を読み取る技術を開発する英Realeyes、NTTドコモVやGBらから1,240万米ドルを調達——日本市場に進出へ

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ロンドンを拠点とする AI スタートアップ Realeyes は6日、シリーズ B ラウンドで1,240万米ドルを調達したことを明らかにした。このラウンドのリードインベスターは、欧州のテクノロジー VC である Draper Esprit(ロンドン証取:GROW)と NTT ドコモベンチャーズが務めた。 グローバル・ブレインのほか、Realeyes の既存投資家である Karma Ventures…

Image credit: Realeyes

ロンドンを拠点とする AI スタートアップ Realeyes は6日、シリーズ B ラウンドで1,240万米ドルを調達したことを明らかにした。このラウンドのリードインベスターは、欧州のテクノロジー VC である Draper Esprit(ロンドン証取:GROW)と NTT ドコモベンチャーズが務めた。

グローバル・ブレインのほか、Realeyes の既存投資家である Karma Ventures と The Entrepreneurs Fund も参加した。Realeyes はこれまでに EU 中小企業支援機構からの助成金シリーズ A ラウンドなどを通じて2,140万米ドルを調達しており、今回のラウンドを含めた累積調達額は3,380万米ドルとなる。

筆者とのインタビューで、同社の技術をデモしてくれた Realeyes CEO の Mihkel Jäätma 氏

Realeyes は Mihkel Jäätma 氏(CEO)、Martin Salo 氏(CPO)、Elnar Hajiyev 氏(CTO)の3人が、共にオックスフォード大学在学中だった2007年に共同設立。ウェブカメラなどの映像から視線をトラッキングする技術によって感情を読み取り、対象人物の感情を評価・分析することができる Realeyes を開発している。

Jäätma 氏によれば、同社はこれまで10年以上の開発経験を通じて4億5,000万以上の表情データセット(顔と顔の部位、動きなどのパターン)を集めており、このデータ量の多さが競合に負けないアドバンテージの一つ。データセットの多くは欧米人種のものだが、全体の14%程度は東アジア人種のものであり、日本人の感情検出にも十分なデータ量を有しているという。

ダッシュボード
Image credit: Realeyes

Realeyes の顧客の三本柱はブランド、エージェンシー、メディアプラットフォームで、彼らに対して Realeyes を使った、よりコスト効率の高いマーケティングや広告キャンペーンの方法を実施するための判断材料を提供するのが特徴。AT&T、Hershey’s、コカコーラ、フランスのメディア大手 Publicis など、世界的な有名企業を顧客に抱える。

今回の調達を受けて Realeyes は日本市場に進出するが、日本で最初の顧客になるのは NTT グループの企業になるだろう。最初の具体的なユースケースは、NTT 各社がより効果的な動画広告を展開するために、Realeyes を使った意思決定材料を提供することになるようだ。

ブダペスト拠点にいるチームメンバー
Image credit: Realeyes

NTT グループへの導入後、Realeyes が日本でどの事業領域(バーティカル)の企業を攻めるかといった優先順位づけについては、現在、日本でマーケティングコンサルティング会社が調査を実施しており、そのフィードバックを持って具体的な方針を決め、今年後半以降で具体的なアクションにつなげたい(Jäätma 氏)、とのことだった。

Realeyes は、ロンドン、ニューヨーク、ブダペスト(ハンガリー)にオフィスを置き、3拠点を合わせた従業員の数は80名程度(国籍は15カ国)。技術会社らしくエンジニアが多くを占め、その大部分はブダペストで開発に従事しているという。ロンドンとニューヨークはビジネス開発拠点で、日本市場向けのビジネス開発拠点として東京にオフィスが開設される可能性もある。