BRIDGE

タグ HR Tech World

テック人材の需給ギャップ、職場のストレス対策…人事の課題に挑むHRテック、海外の最新トレンドは?

著者のDaniel Bodonyi氏は、心理学とAIをベースに従業員のリテンションに関するソリューションを開発するベルリンのスタートアップFLOWのディレクターを務める。 人口構成とテクノロジーのトレンドの変化によって、高スキル人材の供給の不足が緊急の課題になっている。10月末にパリで開催されたHR Tech World Congressで示されたHRテクノロジーの例は、その解決策を考える上で参考…

著者のDaniel Bodonyi氏は、心理学とAIをベースに従業員のリテンションに関するソリューションを開発するベルリンのスタートアップFLOWのディレクターを務める。

10月にパリで開催されたHR テックカンファレンス、HR Tech World Congressにて。
10月にパリで開催されたHR テックカンファレンス、HR Tech World Congressにて。Bersin by DeloitteのJosh Bersin氏が登壇。

人口構成とテクノロジーのトレンドの変化によって、高スキル人材の供給の不足が緊急の課題になっている。10月末にパリで開催されたHR Tech World Congressで示されたHRテクノロジーの例は、その解決策を考える上で参考になるかもしれない。

OECDの予測によれば、2030年までに20歳から64歳までの労働人口が、人口動態の変化によってドイツは現在よりも約550万人、日本は700万人以上が減少するという。EU全体では1200万、中国では3500万人以上が減少する。

テクノロジーが仕事の自動化を促進する一方で、それによって新しい仕事が生まれる。多くの国の教育システムが、デベロッパー、データサイエンティスト、UI/UXデザイナー、デジタルマーケターの供給に追いつこうと必死になっている。ボストンコンサルティンググループの調査によれば、高スキルの職業に関しては、テクノロジーのトレンドによって労働力の需給ギャップは今後も軽減するどころか増加するという。

つまり、多様なグローバルな人材を獲得すること、生産性を上げることに関して、世界中の社会や企業に対するプレッシャーは今後強くなる。HRは根本的な変化を迫られ、今よりもずっと戦略的になる必要がある。ここ10年でマーケティングにより分析力やテクノロジーに関する専門性が求められるようになったのと同様に。

実際、世界のトップテック企業を多くがHRについて、コンプラインスに基づいた管理的な機能ではなく、社員の経験を重視した人材の配置と人に関する分析をする機能とみなすようになっている。GoogleのPeople Operationsの元シニアバイスプレジデントのLaszlo Bockは、分析に基づいてより良い職場をつくることについて、すばらしい本を上梓している。

MicrosoftはHRビジネスインサイトという部署を設けていて、人に関する分析に取組んでいる。その部署のジェネラルマネージャーのDawn Klinghofferは、パリで開催されたHR Tech World Congresで同社の人に関する分析について発表をした。

HR Tech Worldは、新しい分野として注目が集まっているHRテクノロジーに特化して世界的なイベントだ。CB Insightsによれば、HRテックへの注目度、そしてVCからの調達額は増しており、2015年にはHRテック領域のスタートアップに24億ドルが投資されたという。500 Startupsや Andreessen Horowitzも、そうした投資を牽引している投資家だ。

今回のHR Tech Worldの展示を見れば、容易にその理由が理解できる。disruptHRというステージで取り上げられたスタートアップの多くが、日本を含めて世界中の多くの企業を悩ます問題に対するソリューションを提供していた。

過労死を防ぐためのテクノロジー

たとえば、従業員の健康と幸せについて。日本では従業員に優しい職場づくりについて政府がキャンペーンを展開し、ロイターによれば過半数の日本企業が労働時間や残業に関するルールを見直している。

HR Tech Worldに登壇したスタートアップの一つ、Soma Analyticsは最近EUの助成金180万ユーロを調達したが、職場におけるストレスを軽減し、生産性を改善するためのスマホアプリを開発している。同社いわく、特許取得済みのアルゴリズムをベースに、ユーザーの声からストレスを検知し、身体の動きや睡眠パターンをモニターして、メンタルストレスのリスクが高い社員をたったの1ヶ月以内に70パーセント減らすことができるという。

就活のプロセスを見直す時がきた?

そして、新卒採用について。過去の成績を元に応募者を選抜することは、その後の仕事のパフォーマンスを予測する上で役に立たないという証左が増える中で、EYのような大手企業が入社基準に学業の資格を入れないという実例もでてきている。

それでは、新卒レベルの候補者を評価する際に、どのような基準を用いればいいのだろうか。HR Tech Worldのスタートアップコンテストで受賞したチームの一つであるHeadstartのCEO・コーファウンダーのNick Shekerdemianによれば、その答えはさまざまなデータポイントを見ることと、それを理解するための革新的なアルゴリズムを使うことにあるという。「私たちのクライアントは、Headstartのマッチングアルゴリズムによって、候補者を評価する時間が大幅に減り、それによって高スキルの応募者を見極めるためのリソースを増やすことができたといいます。これは、より良く、多様な人材を得ることにつながるのです」とNickは言う。

ダイバーシティは、解決策の一つ

ダイバーシティに関して言えば、HR Tech Worldでは女性起業家が目立っていたことも、新鮮な点だった。いくつかの調査によれば、VCとVCによる調達を受けているスタートアップの経営層において、女性比率が著しく低いという結果が出ている。だが、HRテックはこの傾向を変えることができるかもしれない。おそらく、多くのファウンダーが心理学やHRといった、女性が比較的多い領域の出身だからだろう。

ポーランドのスタートアップ313Cのコーファウンダー、Marianna Królは科学的な裏付けがありながら、同時に楽しく、ゲームの要素も含んだ人材評価ソリューションを提供することで、採用を変革しようとしている。

彼女は言う。「革新的な採用テクノロジー企業のコーファウンダーと経営者であり、男性のビジネスパートナーと100%平等な立場にある者として、私は自分が特権のあるポジションにあると分かりましたし、同じような機会を世界中の女性に与えるには、やるべきことはまだまだ多くあると思います」。

人材不足の状況が差し迫る中で、今まさに企業は動き出さなければならない!

著者について:
著者のDaniel Bodonyi氏は、心理学とAIをベースに従業員のリテンションに関するソリューションを開発するベルリンのスタートアップFLOWのディレクターを務める。FLOWの親会社は、東京に本社を構える革新的なテック人材採用企業のWahl & Case

(翻訳:佐藤ゆき)