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遠隔接客サービス「RURA(ルーラ)」運営、約1.8億円をシード調達——JAFCO、HIRAC FUND、VOYAGE Vから

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遠隔接客サービス「RURA(ルーラ)」を開発・運営するタイムリープは1日、シードラウンドで約1.8億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、ジャフコグループ(東証:8595)、HIRAC FUND、VOYAGE VENTURES。 タイムリープは2019年、ロボットドットインフォの創業メンバーで、同社を売却したロボットスタートで取締役兼メディア編集長を務めた望月亮輔氏により創業…

タイムリープのメンバー
Image credit: Timeleap

遠隔接客サービス「RURA(ルーラ)」を開発・運営するタイムリープは1日、シードラウンドで約1.8億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、ジャフコグループ(東証:8595)、HIRAC FUND、VOYAGE VENTURES。

タイムリープは2019年、ロボットドットインフォの創業メンバーで、同社を売却したロボットスタートで取締役兼メディア編集長を務めた望月亮輔氏により創業。ホテル・商業施設・シェアオフィス・小売業などの受付をオンライン化できる遠隔接客サービスを開発している。システムだけでなく、対応する人も合わせて提供可能で、複数拠点をまとめて少人数で対応できることが特徴だ。

例えば、ビジネスホテルのフロントなどでは省人化のために自動チェックイン機が導入されているが、結局、不慣れなユーザはホテルの人を呼ぶことになり、期待したほどの人件費圧縮には貢献しないことがある。RURA を通じて説明対応できる体制を整えれば、時間帯の繁閑にかかわらず複数拠点を少人数で見ることが可能になり、1拠点あたり時給換算で最安350円からカバーできるという。

RURA のメリットはコストだけではない。システム端末には動体検知機能が備わっているため、客から呼び出されるだけでなく、客が近づいてきたら、RURA 越しにオペレータから声をかける能動的なアプローチも可能だ。ホームセンターなどでは、個別の商品知識を持つ社員は限られることもあり、店頭に RURA を置くことで、複数店舗横断で顧客対応を可能にしている事例もあるという。

遠隔接客サービス「RURA」。昨秋には、ケイアイスター不動産(東証:3465)の無人モデルルームにも導入されることが明らかになっていた
Image credit: Timeleap

システムだけを提供するものとと、システムと遠隔スタッフをあわせて提供するものと、2つのメニューがある。システム単体での利用に関する問い合わせが多いのが現状だが、サービス開始から6ヶ月で、これまでに200社以上から問い合わせをもらっている。(望月氏)

世の中にコールセンターや BPO といった業態が生まれてから、おそらく50年程度が経過している。コールセンターの誕生は、後にテレマーケティングや通信販売をはじめとした、さらに多くの業態を生み出すことにつながったが、従来からの店頭でのやりとりを置き換えるものには繋がっていなかった。

タイムリープでは、ユーザ企業に代わって RURA での応対を代行するスタッフを擁しており、顧客のニーズに合わせて人材のアサインが可能だ。対応業態によって、ギグワーカーの活用も可能だろう。国内のみならず、カナダ、アメリカ、オーストラリアなどからタイムゾーンを超えて働いているスタッフもいるとのことで、新たな経済・雇用生態系を作り出しているのは興味深い。

この分野には、Draper Nexus と DEEPCORE が支援する UsideU といったスタートアップのほか、テレイグジスタンスに注力する全日空も、これまでに東急百貨店らと協力し遠隔でのショッピング体験を披露したことがある。タイムリープでは今後、RURA を自動精算機などとも連携できるようにすることで、店頭体験の多くを包括的に提供できる仕組みを構築したいとしている。

「拡張家族」の藤代氏、元Voyaginの高橋氏らが立ち上げたウェルビーイング・コミュニティ「Nesto(ネスト)」とは何か?

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人は一人では生きられない。社会的動物である以上、これは物理的にも精神的にもそうなのだろう。物心がついた時に最も身近にいる自分以外の誰かは両親であり、兄弟・姉妹であり、家族である。そこから次第に地域コミュニティ、国といった単位で、相手と持つ関係性がより緊密なものから緩慢なものへと変化していく。人間関係の緊密性は長きにわたり、遺伝的・地理的近接性に比例してきた。 「向こう三軒両隣」とか「遠くの親戚より…

左から:Nesto CEO の藤代健介氏、CFO の高橋理志氏、CXO の 横山詩歩氏
Image credit: Masaru Ikeda

人は一人では生きられない。社会的動物である以上、これは物理的にも精神的にもそうなのだろう。物心がついた時に最も身近にいる自分以外の誰かは両親であり、兄弟・姉妹であり、家族である。そこから次第に地域コミュニティ、国といった単位で、相手と持つ関係性がより緊密なものから緩慢なものへと変化していく。人間関係の緊密性は長きにわたり、遺伝的・地理的近接性に比例してきた。

「向こう三軒両隣」とか「遠くの親戚より近くの他人」といった表現は、まさに心理的近接性が地理的近接性に由来していることを物語ったものと言えるだろうが、ソーシャルネットワーク、テレカンファレンス、VR/AR などといったサービスの浸透によって、今までのそうした常識は覆えされようとしている。

「拡張家族」から「Distant Neighborhood」へ——壮大な社会実験をスタートアップの手で

アーティストで起業家の藤代健介氏は2017年、渋谷や京都などを拠点にクリエイターらが共同生活を送るプロジェクト「Cift」を立ち上げた。藤代氏自身もシェアハウスの住人でありながら、価値観を共有可能な「拡張家族」というコンセプトのもと、0歳から62歳まで約100人ぐらいのメンバーが同じ屋根の下(実際には数カ所の拠点)で暮らしを共にした。かくして、価値観を共有したり、助け合ったりする上で、必ずしも遺伝的近接性を頼りにしなくてもいいことが証明された。

そして、藤代氏が Cift の次に手がけることにしたのが昨年スタートした「Nesto」だ。Nesto を知るには、拡張家族をさらに発展させたコンセプト「Distant Neighborhood(物理的には離れているけれど、精神的には近所の人)」について理解しておく必要があるだろう。この新たな社会実験で証明できるのは、人は地理的近接性だけを頼りにしなくてもいいという仮説である。

以前インタビューした Dabel の井口尊仁氏もまた、人々がコロナで家族や友人に会えなくなり、アプリでニューフレンドを見つけるようになり、「結局、雑談の相手は誰でもよかった」ということが明らかになったのは、残酷な真実だったと語っていた。残酷かどうかは別として、寂しさを紛らわしたり、自分を理解してもらったりする相手は、もはや(地理的)近くの誰かである必要はないのだ。

コロナの感染拡大は、人々のマインドセットの変化に拍車をかけた。多くの企業でテレワークが許されるようになり、人々の通勤の手間は減ったが、自宅では頭が仕事モードに切り替わらず十分に集中できないとか、生産性が上がらないといった悩みも数多く報告されている。人間とは贅沢な生き物で、自由になればなった分、また何らかの拘束や規則性を求めてしまうのかもしれない。

世の中には自由だから逆効果、合理的すぎるから逆効果だということもあるだろう。これからパラダイムが変わるだろうと予想しており、そのパラダイムシフトが起きた世界を自分の手で表現しようとしているのが Nesto だ。(中略)

Cift から発展して、経済というレイヤー、市場というレイヤーに受け入れられるプラットフォームにしたい思いから、近代経済主義のフォーマットの一つである、スタートアップという形を取ることにした。(藤代氏)

<参考文献>

コロナ禍で世界一周は取りやめ、出資先に自らプレイヤーとして参画

Image credit: Nesto

アクティビティ予約サービス「Voyagin」について、BRIDGE では創業まもない2012年から買収を迎えた2015年まで追いかけてきた(当初のサービス名は「FindJPN」、社名はエンターテイメントキック)。昨年6月、創業者の高橋理志氏は買収から5年に及んだキーマンクローズ期間を経て Voyagin を卒業。次の事業構想を練るべく、世界一周の旅に出ようとしていた。

ちなみに、高橋氏は以前からエンジェル投資家として活動しており、これまでに近藤麻理恵氏関連コンテンツ事業を営む KonMari Media(2019年に楽天が買収)や、外国人向け求人一括検索サイト運営の JapanWork(2019年にエン・ジャパンが買収)へ出資し、起業家としても投資家としてもイグジットを経験している。未来を創る事業に関わるべく Nesto へも同様に出資していた。

Voyagin の PMI をやり切り、パスした感はある。そして、次に何をするか。誰でもそうだと思うが、長年スタートアップをやると、少し疲れてバーンアウトしてしまう部分があるので、心と身体を回復させたいと思っていた。働く量ではなく質でパフォーマンスを上げたい。マインドフルネスで、量でカバーしてきたのと同じくらいのパフォーマンスを出せるようになるんじゃないかなと。(中略)

(Voyagin で事業を一回やりきり)もう一回何か新たな事業をやるとき、とにかく儲かりそうなビジネスを探して、それをやるのは自分である必要はないかな、と考えるようになった。むしろ、世の中に必要とされるもの、共感されるものを世に出すところで貢献できればいいかな、と思った。(高橋氏)

当初は出資者としてのみ関わり、自らプレーヤーとして参画する予定はなかった髙橋氏だが、コロナの感染拡大で世界一周の旅に出る計画は延期を余儀なくされ、他方、藤代氏から上がってきた事業計画書には、創業メンバーの役割担当の欄に「高橋さんのような人を抜擢したい」と書かれてあったことから、それならと CFO を引き受けることを決心したという。

怠惰と孤独というのが、コロナ禍で生まれた新しい生活様式から 特に Nesto で言及したい文脈だ。メリハリがつかなくなったり、寂しさを感じるようになったりした人は多い。自分も含めて、ガツガツ仕事をやってきた人たちを癒してあげたい、健康にしてあげたい、という思いから Nesto に関わることを決めた。(高橋氏)

ウェルビーイング、でも、社会からかけ離れたものにしないために

Image credit: Nesto

Nesto とは、同じ価値観を共有可能な会員同士が時間を合わせて集う共同体だ。オンラインで行われるため場所は選ばないが、他の人々と時間と意識を合わせることで、ユーザはバーチャルに空間を共有している体験が得られる。ホストと呼ばれるリーダーを中心に、骨逆立ち禅、TANDEN 瞑想、チベット体操など、7つのプログラム(Nesto では「リズム」と呼んでいる)が定期開催されている。

空間は共有していないものの集合時間を固定することで、会ったことのない人同士でも仲良くなれる。決まった時間に決まったことをすることで(=リズム)、自分が整うサービスだよ、みんなと会えるサービスだよ、という位置付け。ホストは集まった人々をリードする存在だが、講師と生徒という関係性ではない。同じ体験を共有する人同士が相互補完しあっている。(CXO=Chief Experience Officer 横山詩歩氏)

すべてのリズムには、瞑想や体操などのメイン活動以外に全体の25%の時間が雑談タイムとして組み込まれている。サービス開始から4ヶ月で会員は約100名に達したが、急拡大がコミュニティを崩壊させるとの懸念から、月に最大1.25倍ずつしか増やしていない(原則的に会員からの紹介でしか入会できないが、以前から無料提供されてきた外部コミュニティを、Nesto が運営を請け負う形で引き継いだものもある)。

ホストは Nesto から各リズムに参加した会員からの会費(総売上)の30%を受け取れる。それだけで生計が立つわけではないが、講師としてコンテンツを用意し教えるのは面倒だが、持っているナレッジや日常をシェアしたい、と考える人たちによって支えられている。講義であれば参加回が進むごとに内容がレベルアップしていくことが重要だが、Nesto ではいつ参加しても毎回変わらない内容が提供されていることが重要で、ホストに対しては「マントラのように毎回同じことを唱えてほしい」と促しているという。

マントラという言葉まで聞いてしまうと、宗教ではないかと思われる読者もいるかもしれない。確かにそうかもしれない、と藤代氏は続ける。

宗教自体は悪いものでないし、みんなで時間を守って同じ何かをするという、ある意味でプチ出家サービスみたいなもの。自分で決めた時間だけ、みんなと30分間(編注:一部のリズムは45分間提供)何かをやるということで、見えない価値観でつながることができる。(藤代氏)

この価値観の共有を宗教ではなく、プラットフォームビジネスにしようという発想は、ひょっとすると、高橋氏が出資していた KonMari Media からヒントを得たのかもしれない。近藤麻理恵氏を慕い「Joy Spark」を声高らかに唱えていた主婦たちは「こんまり信者」と呼ばれるが、彼女が成功したのは宗教家としてではなくビジネスパーソンとしてだ。Martha Stewart 氏も然り。

藤代氏が Nesto を NPO でもなければ、ましてや宗教団体でもなく、スタートアップとして立ち上げたのには、この辺りに理由があるのだろう。

ウェルビーイングだけの人々は彼らで閉じていたり、ビジネスの人はビジネスの人で独立してしまったりしている。そこを分断したくない。投資のリターンもあるけれど、世の中にとっていい影響を与える「鎌倉投信」みたいな会社もあるように。自分達も金銭的なリターンを担保しつつ、ウェルビーイングとビジネスを分断されないようにやりたい。(藤代氏)

Nesto では、書き物、犬の散歩、楽器演奏、常備菜づくりなど、さまざまなリズムを今後増やしていく計画だ。ただ、ホストが一方的にレシピを作って料理方法を伝授するような体験ではなく、あくまで同じ日常的価値観を共有できる共同体の形を死守するという。分断された世の中で、人々は IT を駆使して心で繋がり続けられるか? これはアフターコロナ時代の新業態の幕開けかもしれない。

<参考文献>

クラフトビール業界に風穴を開ける「Best Beer Japan」、醸造所の業務効率化狙いERP事業に参入——追加で資金調達も

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都市部は依然として緊急事態宣言下にあり、飲食業とその関連業種への経済的打撃は大きい。大手ブランドビールと違って中間流通が整備されていないクラフトビール業界に、ビール樽レンタルサービス「レン樽」で乗り込んだ Best Beer Japan(以下、BBJ)への影響も計り知れない。ブランドビールの売上には家飲み需要が貢献するが、クラフトビールの多くは飲食店で消費されるからだ。 クラフトビール専門店と醸造…

Best Beer Japan のオンライン飲み会に参加した醸造所の皆さん。左下が Best Beer Japan CEO の Peter Rothenberg 氏。
Image credit: Best Beer Japan

都市部は依然として緊急事態宣言下にあり、飲食業とその関連業種への経済的打撃は大きい。大手ブランドビールと違って中間流通が整備されていないクラフトビール業界に、ビール樽レンタルサービス「レン樽」で乗り込んだ Best Beer Japan(以下、BBJ)への影響も計り知れない。ブランドビールの売上には家飲み需要が貢献するが、クラフトビールの多くは飲食店で消費されるからだ。

クラフトビール専門店と醸造所の両方と間近で付き合ってきた BBJ 創業者兼 CEO Peter Rothenberg 氏は、コロナ禍のクラフトビール業界の状況を次のように語る。

醸造所は、昨年に比べると売上が3〜4割になっているところも少なくない。コロナになって売上を補填しようと、7割くらいが D2C に変わってきている。しかし、主に業務用の卸で売っていた醸造所が小売を始めるのも簡単ではない。これまで樽で売っていたのに、コストの高い瓶や王冠を用意する必要があるし、煩雑な作業がさらに増えることになる。

クラフトビールの醸造所の経営規模は決して大きくない。日本の醸造所の約半数(48.1%)が年間売上1億円未満で72.2%が従業員10人未満(帝国データバンク2018年8月資料)と、現代版の「家内制手工業」と言ってもいいだろう。経営規模が小さいので売上が業務の効率化に再投資されるというポジティブなスパイラルが生まれにくく、業界全体に影響を与えられやすい中間流通から革新を起こそうと BBJ が考えたのが前述のレン樽だった。

しかし、コロナ禍でクラフトビールの流通は激減している。レン樽だけでは今、クラフトビール業界に大きな影響を与えることはできないし、それどころか業界存続の危機かもしれない。論より証拠、1996年に広島・呉でクラフトビール「海軍さんの麦酒(当初の商品名はクレール)」の生産・販売を始めた呉ビールは、コロナ禍の需要減・売上減を理由に先月解散を発表している

クラフトビール業界にとっても、そして、おそらく BBJ にとってもこの苦しい状況にあって、BBJ はどのように風穴を開けるのだろうか。BRIDGE の取材に対し、同社は醸造所向けの ERP の開発に着手することを明らかにした。レン樽で既に空樽を飲食店から回収するシステムは構築済だったが、今回は店舗〜醸造所でビール受発注をオンライン化することから始める。

ピボットなのかと聞かれるが、ピボットではない。ただ、やるべきことの順番を変えただけだ。(Rothernberg 氏)

EC サイトと BBJ アプリの連携(B2C 受注機能は開発中)
Image credit: Best Beer Japan

確かに創業時のインタビューでも、Rothenberg 氏は、クラフトビールの物流効率化スタートアップになろうというわけではない、と語っていた。クラフトビール業界全体を革新させ、より強いものにしていくには、さまざまなツールや仕組みづくりが必要になるので、それらを一つ一つ構築していくプロセスにあって、優先順位を入れ替えただけと言うわけだ。

これまでは、(クラフトビールを自動車に例え)自動車ばかり作っていて、道路がまだ無かった状態。いつかは自動車を作りたいけど、まずは道路を整備する。BBJ はスタートアップなので、使える資源は限られている中で、物流よりもシステム(=ERP)を構築する順番を先に持ってきた。(Rothernberg 氏)

醸造所はビールの醸造以外に樽詰や発送業務はもとより、納品書や請求書の作成、納めるべき酒税の計算といった煩雑な事務作業に忙しい。醸造所にもホリゾンタル SaaS を導入してはどうかと考えるが、業界特有のプロセス(特に酒税計算が重いらしい)やそもそも少人数経営であるため業務効率化に繋がりにくい。BBJ は受発注のオンライン化(B2B マーケットプレイス)を入口に、醸造所の作業全体の効率化を狙う。

醸造所がビールづくりに集中できるようにするのが我々のミッション。彼らがビールづくり以外で、一番時間や労力を費やしているところから着手することにした。飲食店やバーからは B2B マーケットプレイス、醸造所にとっては受注や業務を効率化できる ERP という見え方になる。(Rothenberg 氏)

BBJ は ERP 事業の参入に向け、追加で資金調達したことも明らかにした。2018年7月の調達に参加した個人投資家のうち7人がフォローオン参加し、and factory(東証:7035)創業者の小原崇幹氏が設立したファンド「BREW」からも出資を受けた(ビールのスタートアップが BREW という名のファンドから調達するのは、偶然にしては話が出来すぎている)。ちなみに BREW は今月、パーソナライズ入浴剤 D2C ブランド「DAY TWO」を開発する FLATBOYS にも出資したことが明らかになっている

この分野のスタートアップを見てみると、アメリカでは、醸造所管理ソフトウェアを開発する Ekos が2019年、シリーズ A ラウンドで800万米ドルを調達、昨年には e コマースや POS との連携を目的として Arryved や Square と提携した

B2B EC のミックスパック機能
Image credit: Best Beer Japan

コロナ禍ということを除けば、クラフトビール業界にとっては追い風もある。昨年9月からビールの酒税は段階的に下げられ、2026年10月にはビール・発泡酒・新ジャンルの酒税が統一される。税額に由来する価格差だけで飲む酒を選ぶ理由はなくなり、全体効率化で飲食店で供されるクラフトビールの提供価格は競争力を持ったものになるかもしれない。

イギリス・スコットランドのクラフトビールメーカー Brewdog は、ファンを株主にすることに成功し世界的に注目を集めている。同社は昨年9月から先月まで投資クラウドファンディングスキーム「Equity Punks for Tomorrow」で資金調達。先ごろ、バリュエーション1億米ドルを死守することを明らかにしている

今回の BBJ の動きは、コロナ禍の間に着々とできることを進め、アフターコロナの需要回復や酒税変更後の競争力強化に備える意図がある。需要が回復すれば、物流効率化のテコ入れや、醸造所〜飲食店の商流をさらに最適化する別の事業に参入するのかもしれない。Rothenberg 氏は次のように語り、話を締め括った。

自分たちはまだビールを作っていない。今はまず、クラフトビール業界が生き残れるよう道を作り続けていきたい。(Rothenberg 氏)

<参考文献>

<関連記事>

民泊→マンスリー転換でコロナ禍対応加速、matsuri technologiesがシリーズB+で約5億円を調達

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民泊やマンスリーマンションのための宿泊運営管理システム「m2m Systems」などを展開する matsuri technologies は26日、シリーズ B ラウンドのエクステンションラウンドで約5億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加した投資家は、オールアバウト(東証:2454)、地域創生ソリューション(ALL-JAPAN 観光立国ファンド)、坂野敦氏(Aspex Manage…

Image credit: matsuri technologies

民泊やマンスリーマンションのための宿泊運営管理システム「m2m Systems」などを展開する matsuri technologies は26日、シリーズ B ラウンドのエクステンションラウンドで約5億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加した投資家は、オールアバウト(東証:2454)、地域創生ソリューション(ALL-JAPAN 観光立国ファンド)、坂野敦氏(Aspex Management のパートナー)、および既存投資家4社。なお調達額には金融機関からのデットファイナンスが含まれる。

今回の調達は、matsuri technologies が2019年10月に実施したシリーズ B ラウンド(5.8億円を調達)のエクステンションラウンドだ。matsuri technologies が創業した2016年以来の累積調達額は約14億円に達した。

民泊運営管理のシステムプロバイダとしてスタートした matsuri technologies だが、2017年4月に実施された Open Network Lab 第14期のデモデイでは、「民泊新法」に対応して民泊物件を民泊以外の用途に転用できる仕組みづくりに着手したことを明らかにしていた。これは新型コロナが感染拡大する前の話だったが、結果として、この時の動きが事業継続につながった可能性は高い。

コロナ禍でインバウンド需要が9割以上失われる中、民泊物件をマンスリーマンションに転換・運用支援する事業は吉と出た。テレワーク需要の拡大や、ワーケーション・ステイケーションという新たな住まいのあり方が求められるように、マンスリーマンションの需要も確実に伸びている。matsuri technologies では、都内を中心に「Sumyca」というブランドでサービスを提供している。

Sumyca は一言で言うと、OYO LIFE のようなサービス。スマホで契約が可能で、家具も備え付けなので、その日から入居し生活できる。入居者の与信チェック、反社チェックも当社で行い、一般的な賃貸で求められる重要事項説明の必要もない。(創業者で代表取締役の吉田圭汰氏)

Image credit: matsuri technologies

時代の変化への適応力という点で、matsuri technologies のそれは、サービスの見せ方も中身も目を見張るものがある。カップル向けの「おためし同棲」のほか、「一時帰国.com」や「自主隔離.com」というドメインを立ち上げた。これらはいずれも、Sumyca のサブドメインとして運用されている。

アフターコロナの社会を見据え、matsuri technologies はさらにサービスのラインアップを増やす。一つは、前述した民泊のマンスリーマンション転換で事業再構築を一貫して支援するプラン。もう一つは、ホテル民泊などの経営権売買、地方別荘を使った民泊事業の開業支援だ。

先日 BRIDGE では「NOT A HOTEL」を取り上げたが、matsuri technologies でも同様にコロナ禍の地方移転需要を見越し、普段使われていない別荘などを日本人向けの民泊として開発した「S villa」というブランドを運営している。

matsuri technologies では、インバウンド需要が消滅したことから流通件数は一時期1万件未満にまで激減したが、マンスリーマンションをはじめ利用形態の多様化が功を奏し、先月には7〜8万件にまで回復を見せているという。

一般的に考えると、旅系のスタートアップにとってはコロナ後の方が有利なバリュエーションを設定しやすいと思われるが、同社では資金繰りが一番厳しい時期に自らがクッションとなることで、外部の投資家含め、逆張りの新規参入の投資家を迎え、業界全体の軟着陸を促したいとしている。

スコアリングと可視化で不動産投資を最適化「StockFormer」運営、デジタルベースCとトグルHDから5,000万円を調達

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  不動産投資スコアリングサービス「StockFormer(ストックフォーマー)」を開発・運営する ZIRITZ(ジリッツ)は26日、シードラウンドで5,000万円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、PropTech 特化 ファンドのデジタルベースキャピタルとトグルホールディングス。トグルホールディングスは、イタンジ創業者の伊藤嘉盛氏率いるトグルなどを傘下に置く持株会社。 …

「StockFormer」
Image credit: Ziritz

 

不動産投資スコアリングサービス「StockFormer(ストックフォーマー)」を開発・運営する ZIRITZ(ジリッツ)は26日、シードラウンドで5,000万円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、PropTech 特化 ファンドのデジタルベースキャピタルとトグルホールディングス。トグルホールディングスは、イタンジ創業者の伊藤嘉盛氏率いるトグルなどを傘下に置く持株会社。

ZIRITZ は、大和総研、大和証券グループ本社、ベイカレント・コンサルティング出身の島﨑怜平氏により2019年設立。島崎氏は投資家の資産形成支援に携わる一方で自らも不動産の投資や運用を行ってきた経験から、投資家と不動産仲介業者の間の情報の非対称性という課題を認識するようになったという。そこで生まれたのが StockFormer だ。

StockFormer を使えば、ユーザである投資家は投資家同士で不動産の売買や融資の経験をシェアすることで(誰の取引かは匿名化されている)、資産レベルの近い投資家の経験を指標に、高度で正確な投資判断が可能になる。また、資産スコアで個人の信用度・信頼度が可視化されるため、不動産仲介業者から、より有益でパーソナライズされた物件提案を受けることができるようになる。

StockFormer ではハイクラス投資家向けのデータバンクを作っている。投資家は、自分と同じような投資家がどういった物件をどのように買っているか知る由もなかったが、似たスコアの投資家の情報が匿名化された状態でシェアされるため、取引の参考にすることができる。

また、公開されていない物件情報も多く、そのような物件に接するには、投資家は物件を紹介してくれる業者と知り合う必要がある。これまでそういった不動産事業者に知り合うのは完全クチコミベースだったが、それがデジタル化できるのも StockFormer の強み。(島﨑氏)

StockFormer「不動産事業者プロフィール」の画面
Image credit: Ziritz

不動産仲介業者の担当者も、どのような投資家から支持されているかも ZIRITZ 上で可視化されている。これらの徹底的な情報可視化というメリットに加え、投資家には StockFormer を通じて不動産を購入した場合に仲介手数料の10%をキャッシュバックし、中抜き取引されることを防いでいる。銀行や税理士などが顧客を紹介してくれたとき、不動産仲介業者が支払う紹介料の商慣習を応用したものだ。

StockFormer のマネタイズポイントは大きく2つ。StockFormer は投資家にフリーミアムでサービス提供されるが、有料会員にならないと前述の他の投資家との売買や融資の経験を共有できない。月額5,000円なので StockFormer 経由で契約が一件でも成約すれば、キャッシュバックで回収できてしまう。

もう一つは不動産業者からの成果報酬型手数料だ。ZIRITZ では商慣習にならってこの手数料を取引価格の3%と定めており、こうして受け取った手数料の10%を投資家へのキャッシュバックに充当している。すなわち、取引価格全体の2.7%が ZIRITZ の純利益となる計算だ。

StockFormer「ローン投資動向」の画面
Image credit: Ziritz

StockFormer には現在1,800人ほどのユーザがいて、彼らの平均年収は1,900万円、平均純資産は5,400万円。サラリーマンの税金対策をターゲットにしたワンルームマンションの投資などとは客層が異なり、一定以上の可処分所得があって、投資物件もワンルームなどではなく一棟ものを流通させている人が多いという。他方、不動産仲介業者は120〜130社ほどが利用しているそうだ。

この種のサービスを提供する競合を国内で見つけることは難しいが、今週ファンド組成を公にした DRG Fund の投資先である Propally は、オーナー向け投資用不動産管理プラットフォーム「Propally for Owners」を今春ローンチすることを明らかにしている。StockFormer も Propally も、不動産に投資してきた起業家自身が身近なところにサービスのニーズを見出している点は興味深い。

<参考文献>

SaaS管理プラットフォーム「NiceCloud」開発、シードラウンドで約1億円を調達——Coral、ANOBAKAなどから

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SaaS 管理プラットフォーム「NiceCloud」を運営する LBV は25日、シードラウンドで約1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、Coral Capital、ANOBAKAと名前非開示の個人投資家。なお、調達額には、金融機関からのデットファイナンスが含まれる。 LBV は 「オートーク」開発の Regulus Technologies の創業者である伊藤翼氏が20…

「NiceCloud」
Image credit: LBV

SaaS 管理プラットフォーム「NiceCloud」を運営する LBV は25日、シードラウンドで約1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、Coral Capital、ANOBAKAと名前非開示の個人投資家。なお、調達額には、金融機関からのデットファイナンスが含まれる。

LBV は 「オートーク」開発の Regulus Technologies の創業者である伊藤翼氏が2020年12月に創業。なお、Regulus Technologies は2018年10月、ツナグ・ソリューションズ(東証:6551)に買収されイグジットしている。伊藤氏はキーマンクローズ期間を経て、今回、新たな事業の設立に至ったとみられる。

NiceCloud は、企業の SaaS アカウントや請求情報を一元管理できる SaaS 管理プラットフォームだ。どの従業員がどの SaaSを利用しているかわからない、アカウントの発行や削除が面倒といった課題が発生する中で、状況をダッシュボード上で把握し、アカウントの発行や削除等の面倒な業務を自動化できる。先月のαローンチ以降、数十社から事前登録を獲得しており、今年夏のβ版をリリースを目指す。

一部機能において、NiceCloud はこれまでに BRIDGE でも紹介している「Anyflow」や「YESOD(イエソド)」 、そのほか「Hexalink Hexabase」などにも似たものになるかもしれない。しかし、Anyflow はその名の通り、複数の SaaS を連携することでワークフローの効率化に力点を置いており、また、YESOD は情報ガバナンスを求められる会社がシステマティックにそれを実現することを狙っており、対して、NiceCloud は短期的には請求状況の可視化が強みになるだろう、というのが伊藤氏の説明だった。

LBV は当面、5〜10以上 SaaS を使い、50〜100人以上社員がいる企業をターゲットに置く。SaaS 管理の一元化・可視化によって効果を享受するには一定の規模が必要になるからだが、中長期的にはエンタープライズ利用も視野に入れる。また、さまざまな SaaS が乱立する中、将来は、それらを比較検討し SaaS プロバイダへ送客できるサービスを提供する可能性もあるとしている。

インキュベイトF出身・日下部竜氏の「DRG Fund」、〝プロフェッショナル系〟3スタートアップへの出資が明らかに

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インキュベイトファンドに入社したアソシエイトたちが、5年以内には独立し自らファンドを立ち上げることを促されるのは、日本のスタートアップ界では意外と知られた話である。プライマル・キャピタルの佐々木浩史氏を皮切りに、これまでにライフタイムベンチャーズの木村亮介氏、Full Commit Partners の山田優大氏らが羽ばたいていった。 彼らはそれぞれのバックグラウンドを強みに伴走すべきスタートアッ…

日下部竜氏は、一昨年の Incubate Camp 12th で統括を務めた。
Image credit: Incubate Fund

インキュベイトファンドに入社したアソシエイトたちが、5年以内には独立し自らファンドを立ち上げることを促されるのは、日本のスタートアップ界では意外と知られた話である。プライマル・キャピタルの佐々木浩史氏を皮切りに、これまでにライフタイムベンチャーズの木村亮介氏、Full Commit Partners の山田優大氏らが羽ばたいていった。

彼らはそれぞれのバックグラウンドを強みに伴走すべきスタートアップを探し出し、若い世代から新たな起業家が生まれるエコシステムの原動力になっている。トラックレコードが少ない分、どんな投資家にとっても最初のファンドを組成するのは大変な苦労を伴うが、古巣であるインキュベイトファンドが Fund of Funds(FOF)形式で、呼び水的に出資するスタイルは定着してきた。

今回明らかになったのは、2017年からアソシエイトとしてインキュベイトファンドに参画していた日下部竜氏のファンドだ。おそらく、イーサリアムトークンの DRG とは直接的な関係は無さそうだが、自身のファーストネームに由来する dragon から DRG Fund と名付けられた新ファンドは組成から1年弱が経過し、スタートアップ3社への投資が実行済であることが明らかになった。

日下部氏はインキュベイトファンドに関わる前は、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券で投資銀行業務に従事。ファイナンスの知識やディールの経験を得た後、生涯通じて VC の仕事をしたいとの思いからインキュベイトファンドの門をくぐったそうだ。新ファンドでは、将来有望な若手ビジネスパーソン(プロフェッショナルファーム・大企業社員等)によるシードスタートアップを対象にする。

起業を考えていても、なかなか踏み切れない。その理由は、創業メンバーだったり、お金の面だったり、その段階では VC もコミットしづらい。

プロフェッショナル系の人たちは、一見すると、スタートアップから最も離れたところにいるように見えるが、起業に興味を持っている層。彼らに対して、スタートアップへの門戸を広げたいという思いから、新ファンドを立ち上げた。(日下部氏)

ここまで何度かプロフェッショナル系という言葉を使ってきたが、具体的にどのような事業モデルや起業家を指しているかは、DRG Fund の出資先を見るとわかりやすい。

野村証券や野村キャピタル・パートナーズで企業リサーチアナリストを務めた平賀洋輔氏が率いる AccuWealth は、企業向け競合・ベンチマーク企業リサーチサービス「アキュウェルス IQ」を開発。Propally は、共同創業者の2人がそれぞれ自ら投資用不動産を保有しながら、収支管理の煩雑さや不動産価格の不明瞭さといった課題を解決しようと、オーナー向け投資用不動産管理プラットフォーム「Propally for Owners」を開発している。3社の出資先のうち、残る1社はステルスで将来明らかになる見込みだ。

DRG Fund の組成規模は5億円で、1ショットのチケットサイズは1,500〜2,500万円。シードラウンドのスタートアップ約10社から15社に出資することを想定している。最大額×最大社数をしても5億円に届かないことから推測できるように、一度出資したスタートアップの事業成長性が確認できた際には、既投資先にフォローオン出資することも想定に入れているようだ。

DRG Fund のメンバーは今のところ日下部氏のみだが、採用・開発・マーケティング等で投資先スタートアップへの支援や、将来はファンド運営に関わることに興味のあるサポーターを募集する。若手ビジネスパーソンからのキャリア相談オフィスアワー、事業構想→会社設立→チーム組成→投資実行までを1〜3ヶ月で完了するプログラム「Boot Camp Program」への参加も募集を開始した。

XTech Ventures、最大100億円規模となる2号ファンドを組成——1号は出資開始から2年半で、すでに3社がイグジット

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西條晋一氏と手嶋浩己氏の2人が共同創業した XTech Ventures(クロステック・ベンチャーズ) が、2号ファンドを組成したことが明らかになった。2号ファンドからは既に組成が開始されている模様で、1月のファーストクローズ段階で53億円が集まっているとのこと。最終的な調達金額は100億円規模を目指す。 1号ファンドの振り返り 組成時には50億円規模を目指していた1号ファンドは、最終的にオーバー…

左から:古川慧氏(アソシエイト)、安岡浩太氏(シニアアソシエイト)、西條晋一氏(代表パートナー)、手嶋浩己氏(代表パートナー)、今野大輝氏(アカウンタント)
Image credit: Chihiro Inoue, Ecrowd

西條晋一氏と手嶋浩己氏の2人が共同創業した XTech Ventures(クロステック・ベンチャーズ) が、2号ファンドを組成したことが明らかになった。2号ファンドからは既に組成が開始されている模様で、1月のファーストクローズ段階で53億円が集まっているとのこと。最終的な調達金額は100億円規模を目指す。

1号ファンドの振り返り

組成時には50億円規模を目指していた1号ファンドは、最終的にオーバーサブスクライブして53億円を調達し着地した。既報の採用管理「SONAR ATS」展開の Thinkings が1号ファンドからの最後の出資となり、Thinkings を含め1号ファンドからの出資は合計39社となった。

BRIDGE とのインタビューで、手嶋氏は 最初のファンドとして「ほぼ予定通りかそれ以上の投資を実行できた」と振り返った。

40社 × 1億円というのが当初の目標だったので、規模的にも件数的にも予定通りだった。(デューデリが及びきらない)宇宙とかは避けたものの、広くいろんな領域に出資するつもりだったが、結果的に D2C のスタートアップへの出資が多かった。D2C の第一の波から投資できたのはよかった。数年内に IPO するところが出てくることを期待している。

一方で、SaaS スタートアップはここ数年盛況だが、サイズも大きくないので、そこにコインベストというだけで XTech が参加することはあまりなかった。若手の起業家にも出資したが、出資先スタートアップの創業者の年齢を見ると40代がボリュームゾーン。全案件のうち79%がリード投資だった。(手嶋氏)

1号ファンドからは既に3つのイグジットが明らかになっている。美容ケア D2C 「FUJIMI(フジミ)」運営のトリコは今月、ポーラ・オルビスホールディングス(東証:4927)が買収、スペースマーケット(東証:4487)は2018年の出資から1年後に東証マザーズへ上場プレシリーズ A で出資参加した無添加ペットフードのサブスク D2C「レガリエ」を運営するオネストフードは先月トレードセールでイグジットを果たした(イグジット先は非開示だが、同時期にオネストフードは前澤ファンドからの資金調達を明らかにしている)。

1号ファンドからの投資先
Image credit: XTech Ventures

2号ファンドに入り、チームビルティングも増強へ

最大100億円規模となる2号ファンドでは、チケットサイズ1.5〜2億円程度で40〜50社への出資を目指す。この規模であれば、それなりのパフォーマンスが出ているスタートアップの7〜8億円程度のシリーズ A ラウンドでもリードを取れる可能性がある。共に事業経験を持つ西條氏と手嶋氏の強みを生かし、プレシリーズ A やシリーズ A ラウンドでの出資即決が可能なファンドになれる。

(西條氏も手嶋氏も)事業経験があるので、暗黙知と経験値で投資判断をしてきた。2号ファンドからはチームビルディングを強化していく。エキサイトからの転籍組(編注:2018年、西條氏がエキサイトの代表取締役社長に就任し、XTech がエキサイトを TOB したため、エキサイトと XTech の間には人材交流がある。トップ写真の安岡氏と古川氏はエキサイト出身。)もいるが、パートナーなども増やしたい。

ちゃんと投資できるよう、バッターボックスに立ってもらえるよう、積極的にパートナーを育てたい。事業会社の出身者で固めて行ってもいいし、多種多様な業界から人に入ってもらっても、その人の価値を高められるのでいいのかな、と考えている。(手嶋氏)

XTech Ventures ではパートナーを始め人材強化を念頭に、今週金曜日にはオンラインイベントを開催する予定だ。投資サイドのみならず起業家の育成にも余念がない。西條氏や手嶋氏のほかイグジット経験者などを招き、定期的に「XTech Ventures Bootcamp」という合宿プログラムを起業家向けに開催している。創業から数年経過してもスケールしていないということがないよう、起業家に視座を上げてもらい、具体的な未来目標を持ってもらうことが狙いだという。

食品流通DXのクロスマート、シリーズAで2.7億円を調達——デジタル販促で、メーカー・卸業者・飲食店・消費者の〝四方よし〟を目指す

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飲食店とサプライヤーをマッチングする「クロスマート」や受発注プラットフォーム「クロスオーダー( サプライヤー向け / 飲食店向け )を運営するクロスマートは、シリーズ A ラウンドで2.7億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、ギフティ(東証:4449)、SBI インベストメント、みずほキャピタル、SMBC ベンチャーキャピタル。クロスマートにとっては、2019年9月に実施し…

クロスマートのチームメンバー。前列左から2人目が代表取締役の寺田佳史氏。
Image credit: Xmart

飲食店とサプライヤーをマッチングする「クロスマート」や受発注プラットフォーム「クロスオーダー( サプライヤー向け 飲食店向け )を運営するクロスマートは、シリーズ A ラウンドで2.7億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、ギフティ(東証:4449)、SBI インベストメント、みずほキャピタル、SMBC ベンチャーキャピタル。クロスマートにとっては、2019年9月に実施したシードラウンドに続くものだ。

今回の調達を受けて、クロスオーダーの営業強化、各種採用を強化する。ギフティとは、食品メーカーが飲食店にオンライン営業できる「クロスオーダー販促」をローンチする予定。また、今回の調達とあわせて、ギフティ代表取締役の鈴木達哉氏がクロスマートの社外取締役に就任する。

納品伝票のデータ蓄積から始めたクロスマートだったが、データの分析の結果、青果物は他の食材と比べて FAX による注文比率が高く頻度も多く、さまざまな規模の卸業者が青果物を取り扱っているため、受発注プロセスに課題を感じている卸業者が多いことが判明。飲食店が LINE で発注し、サプライヤーがデータの形で注文情報を受け取れるクロスオーダーをローンチした

2019年11月のクロスオーダーのローンチから1年あまり、受発注処理件数はすでに7万件を突破した。国内では都市部を中心に、飲食店がコロナ禍の緊急事態宣言下で時短営業を余儀なくされる中、飲食店の活動低下はクロスマートにとってマイナスに働くかと思いきや、数ある業種の中で最も進みにくいとされた飲食業の DX に追い風となり、クロスオーダーのユーザ増に寄与しているという。

昨年実施された最初の緊急事態宣言の時の落ち込みは、飲食店の営業自粛に比例して大きなものだったが、今回(現在実施されている緊急事態宣言)はそのときほどではない状態。飲食店は、1.補助金や助成金の申請(資金繰り)をし、2. 間接コストを見直し、3. 売り上げを補填するため EC 展開する、という方向へ動いている。

現在、多くの飲食店は 2. をやっている最中。食材や賃料を極端に下げることはできない。でも、仕組みを改善することで、受発注のスタッフの人件費を下げましょう、というのがトレンドになっている。まさにそれができるのがクロスオーダーで、PMF(プロダクトマーケットフィット)できたと考え、シリーズ A 調達に踏み切った。(代表取締役 寺田佳史氏)

Image credit: Xmart

クロスオーダーは青果物の受発注プラットフォームだが、どの飲食店が何をどの程度購入しているかがわかるので、飲食店に対して、昨年の同時期に買っていたものを今年お勧めしてみたり、親和性があるかもしれない別商品を併売してみたり、といったアプローチが可能になる。メーカーはこれまで飲食店を訪れて営業していたが、データドリブンなオンライン販促に転換できることになる。これがクロスオーダー販促だ。

メーカーにはマーケティング予算を使って、クロスオーダーのデータをもとに自社商品をマーケティングしてもらえる。その商品の発注は卸業者に行くため、卸業者も儲かる。飲食店、卸業者、メーカーの「三方よし」の状況が作れそうだ。卸業者にメリットがあるスキームにしたいので、メーカーからの予算の一部が、卸業者にもシェアできるようにしたいと考えている。(寺田氏)

今回ギフティが出資しているが、消費者向けサービスが強い同社の力を活用して、クロスマートは B2B2B2C(メーカー→卸業者→飲食店→消費者)がつながる、消費者を巻き込んだマーケティングプラットフォームを形成したい考えだ。前述の三方よしが「四方よし」になるかもしれない。ギフティにとっては、従来のコンビニやスーパー以外に、飲食店にもネットワークを広げられる可能性がある。

SBI インベストメントの親会社である SBI ホールディングス(東証:8473)は、全国各地の地方銀行と提携や連携関係にあるため、クロスマートでは今回の出資を受けて、地銀各行と契約関係がある地場の卸業者を紹介してもらうことを期待しているという。

コロナ禍でデジタル化の先頭を走るエストニアから、日本のDXを考える〜福岡「ASCENSION 2020」から

福岡市は、2020年11月27日にスタートアップに特化した国際交流オンラインイベント「ASCENSION 2020」をオンライン開催した。 本稿は、ASCENSION 2020 で行われた、「GLOBAL STAGE」のエストニアセッションについてまとめた。GLOBAL STAGE では、福岡市がパートナーシップを結ぶ世界各地域の最新のスタートアップやテクノロジーの情報や海外展開に関する最新動向が…

左上から時計回り: Ait Oliver 氏(駐日エストニア大使館)、宗原智策氏(NordicNinja)、日下光氏(xID)、斎藤アレックス剛太氏(SetGo)

福岡市は、2020年11月27日にスタートアップに特化した国際交流オンラインイベント「ASCENSION 2020」をオンライン開催した。

本稿は、ASCENSION 2020 で行われた、「GLOBAL STAGE」のエストニアセッションについてまとめた。GLOBAL STAGE では、福岡市がパートナーシップを結ぶ世界各地域の最新のスタートアップやテクノロジーの情報や海外展開に関する最新動向が語られた。

本セッションは、駐日エストニア大使館商務官の Ait Oliver 氏、行政の DX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行う xID(クロスアイディ) CEO の日下光氏、NordicNinja のベンチャーキャピタリスト宗原智策氏をパネリストに迎え、xID や日本企業のエストニア進出支援を行う SetGo の斎藤アレックス剛太氏がモデレーターを務めた。

(文:馬本寛子、編集:池田将)

繋がりの強い小さなコミュニティの「強み」

エストニア・タリンの街並み
Image credit: scanrail / 123RF

エストニアで xID を創業した日下氏は、「コミュニティは小規模だが、中の人同士の繋がりが強い」と話す。

国内市場が小さく、多くのスタートアップは海外展開を前提に事業を立ち上げるため、様々な国の市場について情報を共有する環境があるのではないか。(日下氏)

また、エストニア政府の一員でもある Ait 氏は、政府と民間の距離が近く、包括的なスタートアップエコシステムがつくられていると特徴を述べた。ICT 教育を強化し、小学校教育から、プログラミングを教えるなどの取り組みが行われていることからも、政府の熱量がうかがえる。それらの特徴に加え、資金調達やメンタリングシステム、ネットワーキングを行う環境は、比較的整備されていると話した。

宗原氏は、エストニアスタートアップエコシステムの雰囲気について触れた。

日本人である私はエストニアでは「外国人」という立場だが、スタートアップシーンをつくりあげていく一員として、(エコシステムに)所属していると実感できる。国外からも参加しやすい、居心地の良いコミュニティだ。(宗原氏)

パネリストの全員が、官民連携の強さやコミュニティが小規模ながら繋がりの強さを指摘した。2011年にマイクロソフトに買収された「Skype」の創業や経営に携わっていたメンバー(Skype マフィア)や、ユニコーンをつくりあげた起業家が身近にいることから、良いメンターに巡り合える可能性も高いと言える。

コロナ禍で浸透が進んだデジタル化

Image credit: Government of Estonia

「コロナ禍における、エストニアのビジネスシーンが受けた影響」について、Ait 氏は、行政面とスタートアップ面のそれぞれの変化について話した。

エストニアでは、2001年頃から政府のデジタル改革が進められており、コロナ禍において、これらの取り組みは功を奏した。国民一人ひとりにデジタル ID が与えられ、インターネット投票なども行われている。デジタル化に伴う、法的整備も進んでいたことから、法的文書のデジタル署名なども問題なく進められた。

コロナ禍以前にもデジタル署名は使用できたが、コロナ時代に突入してから、デジタル署名の使用率は5割上昇した。また、サイバーセキュリティや IT サービスを取り扱ったスタートアップなどが多いことから、多くの企業が売上も良好で、コロナ禍でも資金調達のニュースが多かったという。

さまざまなエストニアスタートアップの投資に関わる宗原氏は、コロナ禍で成長した投資先企業として AI を利用したオンライン ID 認証システムを提供する Veriff、配車サービスの Bolt、オンデマンドデリバリの ZITICITY の3社を挙げた。

例えば、これまで配車サービスに注力していた Bolt は、コロナ禍で電動スクーターや電動バイクなどのマイクロモビリティ事業が成長し、公共交通システムに変わるサービスになりつつあるという。乗降車のオペレーションシステムが評価され成長が加速しているそうだ。

DX の鍵を握る「データマネジメント」

DX の局面で発生するトラブルやそれらの解決方法については、データマネジメントが DX の鍵を握る。アナログデータからデジタルデータに移行することをデジタル化の定義とし、データ活用事例とデータを取り巻く現在の課題についても議論がなされた。

デジタルデータは収集が容易であり、集めたデータを分析することでユーザー理解を深め、マーケティング戦略の構築に活用できるが、課題もある。UberEats やDoordash などのフードデリバリサービスのようなプラットフォーマーに顧客データの詳細が集中するため、実際に食べ物を提供する飲食店などのサプライヤーに情報が届かなくなり、商品開発にデータを活かせないという課題が浮上する。

近年、欧米では Cookie でのデータ取得が難しくなりつつある状況も踏まえ、今後はデータをどのように収集し、取り扱っていくかというデータマネジメント上の課題の解決方法が鍵となるだろう。

政府のデジタル化を進めた3つのポイント

エストニアの電子 ID システム
Photo credit: e-Estonia Showroom / CC BY 2.0

2001年からデジタル化に乗り出したエストニアが、政府の電子化を実現した背景について Ait 氏は、3つのポイントを挙げた。

1. デジタル化を進めるために、政府は具体的な目標を掲げた。

エストニアの政府戦略は、明確な目標が設定されており、具体的な目標数値、KPI、目標のために実行されることが国民に対しても明示されている。

2. デジタル化を進めるためのツールがしっかりと用意された。

デジタルIDの取得はエストニア国民の義務とされているため、全ての国民がデジタルIDやIDカードなどを保有している。これらの「義務化」は重要な役割を果たした。

3. 導入されることによって、政府・企業・国民のそれぞれが便利になり、国民の理解が進みやすいサービスからデジタル化が進められた。

一番はじめに、税金関連の仕組みからデジタル化が進められた。もし、投票システムを足掛かりにはじめていたら、デジタル化はここまでスムーズに進まなかっただろう。

モデレータの斎藤氏は Ait 氏が挙げたこれらのポイントに加え、、エストニア政府の透明性について触れ、「政府も、スタートアップ的な視点で行政を執り行っていると感じる」と話した。

日本のスタートアップに必要な視点「BLT」

加賀市とxID(当時、blockhive)が連携協定を締結(2019年12月)
Image credit: xID

石川県加賀市や茨城県つくば市と行政のデジタル化に取り組む日下氏は、日本国内におけるデジタル化を取り巻く課題について話した。

日本国内のスタートアップの多くは、法的な課題にぶつかる。日本でスタートアップとして新しい事業を行っていくには、BLT(ビジネス・リーガル・テクノロジー)の3つの全てをバランスよく理解せねばならない。

そのような問題を解決する方法のひとつとして、大企業との協業という選択肢を挙げた(編注:xID は加賀市のプロジェクトで、トラストバンクと連携)。協業先と共に法務的な面からサービスを考えたり、力を借りたrしながら法規制に働きかけるなどして、問題解決に取り組める可能性を示唆した。

また、国と地方自治体では、規制や法律が大きく異なることについても指摘した。実際に xID では加賀市で、デジタルIDアプリとマイナンバーカードの連携を行い、行政のデジタル化を進めているが、これらの導入においては、日下氏らが加賀市に1ヶ月間滞在し、ワークショップなどを行ったという。

パネリストは日本の行政などの DX 化に向けて必要なことを挙げ、本セッションは締めくくられた。

このチャンスを活用することで、誰もが便利で意味のある仕組みが作れるのではないか。コロナ禍の今こそ、大きく前進するチャンスだ。(Ait 氏)

若い世代に対してデジタル化による恩恵について伝え、エンパワーメントしていくことが必要だ。(宗原氏)

デジタルIDは、行政のデジタル化において重要な役割を果たすと思う。デジタルIDを浸透させるためには、国民を安心させるほどの透明性の確保が重要だ。(日下氏)

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