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【Web3起業家シリーズ】ステーブルコイン「JPYC」の岡部氏に聞いた、日本のWeb3のゆくえ(後編)

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 MUGENLABO MAGAZINE では、ブロックチェーン技術をもとにした NFT や 仮想通貨をはじめとした、いわゆる Web3 ビジネスの起業家にシリーズで話を伺います。Web3 についてはまだバズワードな要素も含んでいるため、人によってはその定義や理解も微妙に異なりますが、敢えて、いろいろな方…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

MUGENLABO MAGAZINE では、ブロックチェーン技術をもとにした NFT や 仮想通貨をはじめとした、いわゆる Web3 ビジネスの起業家にシリーズで話を伺います。Web3 についてはまだバズワードな要素も含んでいるため、人によってはその定義や理解も微妙に異なりますが、敢えて、いろいろな方々の話を伺うことで、その輪郭を明らかにしていこうと考えました。

1回目を飾るのは、日本円と連動する日本初のステーブルコイン「JPYC」を発行・運営する JPYC の岡部典孝さんです。法律の制約から、日常的に使える暗号資産が実現するまでにはまだ少し時間がかりそうですが、金融庁や日銀などとも密に連携しながら、法制度の観点からも社会に受けられる暗号資産の開発に日夜奮闘されています。


前編からの続き)

Web3 における JPYC の役割と位置付け

Web3 の世界の中で、JPYCさんはどの部分の役割を担おうとされていますか?

岡部:JPYCの特徴としてはオープンプロトコルで、日本円と大体近い価値をキープしているっていうところが一番の特徴です。このオープンプロトコルっていうのが結構大事で、たとえばメタバースが大きくなって、日本人がメタバースで商売しようって言った時に、結局ドル建てで取引するとなると、やっぱりさっき言った税金計算の問題が生じます。で、円で取引しようと思っても、銀行口座がメタバースで使えるかどうか定かじゃない訳ですよ。たぶん極めて難しい。プロトコルが違うわけですから。

そういう時に、日本人はJPYCで商売しましょう、外国の人はUSDCで商売しましょう、みたいな世界観の中でUSDCとJPYCが大体の(法定通貨の)為替と近いレートで動いているので商売が成り立つっていう、そういう世界観をイメージしているんですよね。

だからやっぱりJPYCがないと日本のメタバースもNFTもうまくいかないと思っているんですけど、逆に言うとJPYCがちゃんとオープンプロトコルで社会的にその拡大に応じた規模まで大きくなっていれば、そこを担うことができて、そうすると銀行の代わりみたいなところまで大きくなると思うので、最終的にはJPYC銀行みたいな形までなれると成功かなと思いますね。

JPYC の Web サイト

中国では、暗号資産ではなく、中国人民銀行がデジタル通貨として「デジタル人民元(CBDC)を出していますね。日本の場合、日銀はまだデジタル日本円を出していませんが、JPYCはそれに近しいものを目指すのでしょうか?

岡部:基本的には別だと思ってます。CBDCということになるとより厳しいAML(マネーロンダリング対策)とかいろいろ求められて、たぶんパブリックチェーンでは出せないと思ってるんですよね。

一方やっぱりさっき言ったパーミッションレスの性質が強力なので、民間はどんどんUSDCみたいなパーミッションレス型のコインで商売をするっていう流れが出てくるんで、そうするとメタバースでもいいしスマートコントラクトでも何でもいいんですけど、パーミッションレスの進化の早い領域に関しては、全てCBDCではなくて、CBDCを一回JPYCのようなオープンプロトコルのコインに換えてそこで使うと。そうしないと自動販売機に入りませんし規格が違いますと。そういうことが起こると思ってるんで、別規格になると思います。

ただ唯一可能性があるとしたら、うちがあまりにうまくいっているので、日銀がM&Aしました、っていう(笑、それはもう笑い話で言ってるぐらいなのでそんな話は当然ないですね。日銀も結構しっかりやられてます、研究開発を。ただ、当然まだ実証実験をこの後でやっていこうという段階なので、中国よりはだいぶ遅れてますね。

第三者型のライセンスを取得された後には、JPYC で第三者間の取引ができるようになりますね。会計 SaaS などで、日本円の売上と JPYC の売上を並べて管理し、税金の計算まで一括してできるような時代がやってくるのでしょうか?

岡部:1JPYCの売上と、1円の売上を同じように売上として計算し、1JPYCをうちに送って1円入ってくればいいんですよ。それで処理できるんで、すごく楽になりますよね。だからそこをやっぱり実現しないとスタートラインに立てないと思ってます。

本当にここ2〜3年が勝負だと思っていて、まず今年資金決済法の改正が予定されているので、ここ1〜2年でたぶん概要の規制が出来上がってくるんですよね。そこで躓いてしまうともうスタートラインに立てないってことになるんで、それをまずしっかり整備した上で、あとはうちが高速でその決済のインフラ的な機能を担えるところまで成長するっていう、この二つが両方とも実現した時に日本はスタートラインに立てると思ってます。

※自家型、第三者型・・・自家型は、資金決済法3条4項で定められた「自家型前払式支払手段」によるプリペイド決済のこと。発行体以外でも使うプリペイド決済は、資金決済法3条5項で定められた「第三者型前払式支払手段」となる。

社会実装への課題

暗号資産には、リアル取引で使う日本円の決済を代替できる部分もあり、それが起きると既存の金融機関は当然売上を減らすことになりますよね?

岡部:盛者必衰の理というのはありつつも、日本は銀行業の規制が極めて厳格なので、KDDIさんもauじぶん銀行とか作られてたぶんお分かりだと思うんですけど、非常に大変なんですよね。そもそも銀行が他社の主要株主になること自体、認可が必要みたいになってますので、現実的なラインとしては既存の金融機関と組むことになるでしょう。

それがauじぶん銀行さんなのか、大きな銀行さんなのかは分かりませんけれども。こういう世界観に共感するような金融機関も必ずあるわけですから、そういうところと組んでJPYC銀行みたいなものを作って社会実装するまであと数年ってとこじゃないですかね。

日本には ATM が多くあるので、モバイル決済が普及するのに時間がかかった。一方でアフリカなどは ATM は普及していないため、モバイル決済がすごく発達した。同じようなことは暗号資産の世界でも言えるでしょうか?

岡部:実際にキャッシュレスの普及率で言うとかなり遅れていますし、やっぱり人と人が会ってるから現金っていうのが使えるんですよね。

コロナが進んだりとかして人と人が会わなくなる、あるいはもっと地方に分散したりとか。そういう世界観になった時はそもそも現金を送るっていうのはすごいコストだし、それを電子的にやるのも為替取引といって結局金融ライセンスの取得費用その他いろいろ乗っかってきちゃうんで、もう割高になっちゃうのは避けられないので、じゃあもう現金以外の価値をやりとりしようっていうのがコストを避けるためには避けられなくて、その中で一番有力なのがやっぱり規制が緩やかな前払式支払手段ということで、たぶん前払式支払手段の時代はもうしばらく続くかなと思ってます。

PayPayさんなんかがまさに今上向いている訳ですけれども、前払式支払手段の進化系が日銀さんの言葉を借りると「ネオマネー」といって、マネーより便利になってきてるっていうのは当局も分かっていて、いくら現金が便利だからといって、マネーロンダリングに使われやすさとかでいったら現金は非常に使われてる訳なんですね。

<参考文献>

ネオマネーの登場がもたらす マネー・決済システムの構造変化
(日本銀行FinTechセンター長 副島豊氏)

じゃ高額紙幣は廃止しなきゃみたいなのが今世界的な流れなので、それ廃止にしてそれでも現金使いますかって言うと、やっぱり使いたくない人が多いと思うんですよね。

(法定通貨よりも暗号資産のシェアが大きくなるのは)もう数年先だと思ってますね。もう世界的な流れで言うと、暗号資産の方が成長スピードが速いんですね。やっぱり中抜きがない分いろいろ効率的だし、USDCでいうと毎年20倍で成長してるんですよね。2年で400倍、500倍っていうスピードで成長しているんで、JPYCがまだ8億円ぐらいなんですけど、2年後で400倍っていったら3,200億円でまあまあ大きいし、3年後って言ったら小さい銀行ぐらいのスピード感なので、変な規制が入らなかったら、たぶんもう数年でガラッと変わります。ただ当然既存の人たちは商売が上がったりになるんで抵抗はあると思います。

3月14日現在、USDC の流通量は524億米ドル、送金量は1.9兆米ドルを超えた。
(USDC 発行元 Circle の Web サイトから)

法定通貨はその国の中央銀行が価値を担保しています。JPYCの場合は、御社が担保するわけですか?

岡部:そうですね。JPYCに関しては、今はプリペイドに過ぎないので、うちが潰れた場合は法務局に入れている、供託金からお金が戻されます。だからその分しかうちと隔離されている部分はないんですね。

だから今のままだと、たとえば1兆円発行しちゃったら法務局に5,000億円しか入ってないんで倒産したら誰かが5,000億円損するってことが起こり得る訳ですから、それはやっぱり大きくなる上では不安なので、銀行から保証を受けて、仮にうちが潰れても100%返ってくるように信用補完しましょうかみたいなそういう話をしていかないといけないですね。

価値の担保については、今電子決済手段という名前で、資金決済法上ステーブルコインを位置づけようという流れがあるので、銀行が発行体になる可能性があると思っています。銀行は基本的に潰れないように厳しく監督されているので、原則潰れないという元のところをやるか、もしくはその銀行から補償を受けたり、法務局に供託したりして倒産隔離を100%担保しなさいというのがありそうな未来ですね。それであればみんな安心して使えると思うんです。

Web3 で変化する社会

Web3 時代に突入していく中で、GAFAのような巨大テック企業はどのように変化していくでしょうか?

岡部:まさに今、独禁法上の問題が非常に大きくなってきています。GAFAのような非常に大きな会社がもう国家以上の権力を持ってしまって、国家以上の情報を持つということが起こっている。基本的に、財閥解体じゃないですけど力を持ちすぎた場合、国家権力によって解体されるっていうのが世の常なんですよね。

彼らも散り散りになってそのまま解散ではなくて、Web3に入り込んでくるんだと思うんですよ、GAFAで雇われていた人たちがノウハウを持ってWeb3コミュニティを、もしかしたら主導するかもしれない。なので、一個一個はそんなに大きくない、ただの集まりですよと。

なんだろう、町内会みたいなもんなんで、DAOとかっていうのは。町内会みたいなところだけど、なんかやたらお金があるなぁみたいなのがゴロゴロ出てくる気がします。そうなると、規制される恐れもあんまりない訳です。何も独占してない訳ですから。

そういうところの人がたぶんどんどんメタバースを作っていくようになるかもしれないし、その人たちと、じゃあ Web3 ネイティブみたいな今の若い起業家みたいな人たちが時々対立し、時々力を合わせて、政府の検閲に対抗するみたいな未来が予想されます。

岡部さんが考える理想的な Web3 の世界は、どのようなものですか?

岡部:Web3の中であれば自由に経済が行き来できるみたいな、楽市楽座的なメタバース、Web3みたいなものがあれば非常に強いと思います。生産性も高いので。もちろんそれはタックスヘイブンじゃないかとかなんかいろいろ言われるんでしょうけれども、そういうところがあればメタバース経済みたいなのが大きく発展して、そこから次の有力な組織や会社じゃないかもしれないけど有力なDAOとかがどんどん生まれてくると思うので、実験的な特区みたいなのができて、その中では結構自由にできるとか、そういうのができるとすごくいいなと思っています。

あとは、みんなが体力とか住んでるところとか年齢とかにあんまり関係なく、割と平等に世界と勝負できるっていう、そういう世界観をやっぱり実現できると、日本ってやっぱり日本語を喋ってる人が一億人ちょっとしかいないっていう時点でちょっとハンディなのでですね、その辺は全部技術で解決して生き残れるんじゃないかなということに一縷の望みをかけてます。

JPYCのユーザも今のところ大部分は日本人だと思いますが、もっと色々な国の人に使ってもらえるような存在を目指すのですか?

岡部:そうですね。メタバースとかあるいはスマートコントラクト上の標準通貨になった場合は日本人がUSDCを使っているような形でですね、たとえば東南アジアの方が日本円のJPYCを使ってるなんてことはあり得ると思います。

ただやっぱり、結局税務会計がネックになってるんで、Libra※じゃないですけれども世界統一通貨的なものがもしできればだいぶ楽になるとは思います。少なくともそれでの会計税務を認めるとかに各国なればすごくいいので、その中のバスケットの一つにJPYCが入ったりすると最高ですね。

※Libra:米メタ(旧フェイスブック)が2019年に構想を発表したデジタル通貨「ディエム(旧リブラ)」、金融当局などの懸念が強く今後も同意が得られないと判断し、2022年に発行を断念。

最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

岡部:今まさに資金決済法改正で今後どうなるか、特にパブリックチェーンを認めるのか認めないのかっていうのは、国会でも議論されるようなテーマになっています。この辺りの道を誤ると本当に鎖国してしまって世界から取り残されることになります。

その瀬戸際なんだっていうのはたぶんあんまり気づいてる人はいないんですけれども、Web3とかを考えてる人はそういうところのアンテナが立っていると思うので、是非自分なりに将来どういう風になればいいんだろうかっていうことを考えていただけるといいなと思います。

私は絶対、パブリックチェーンのオープンプロトコルの方が強いし、イノベーションが起こせると信じて今頑張ってますので応援よろしくお願いします。

そして、大企業の皆さんには、まさに今、本当にここ数年で全て決まっちゃうような大変革の時なので、我々はやはり将来的には大企業さんとかと一緒に、最終的には銀行みたいな形になっていくと思うので、その際に、銀行主要株主になれるような大企業さんもたぶん62社の中には多いと思うので、是非ご協力いただけると大変ありがたいです。

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【Web3起業家シリーズ】ステーブルコイン「JPYC」の岡部氏に聞いた、日本のWeb3のゆくえ(前編)

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 MUGENLABO MAGAZINE では、ブロックチェーン技術をもとにした NFT や 仮想通貨をはじめとした、いわゆる Web3 ビジネスの起業家にシリーズで話を伺います。Web3 についてはまだバズワードな要素も含んでいるため、人によってはその定義や理解も微妙に異なりますが、敢えて、いろいろな方…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

MUGENLABO MAGAZINE では、ブロックチェーン技術をもとにした NFT や 仮想通貨をはじめとした、いわゆる Web3 ビジネスの起業家にシリーズで話を伺います。Web3 についてはまだバズワードな要素も含んでいるため、人によってはその定義や理解も微妙に異なりますが、敢えて、いろいろな方々の話を伺うことで、その輪郭を明らかにしていこうと考えました。1回目を飾るのは、日本円と連動する日本初のステーブルコイン「JPYC」を発行・運営する JPYC の岡部典孝さんです。法律の制約から、日常的に使える暗号資産が実現するまでにはまだ少し時間がかりそうですが、金融庁や日銀などとも密に連携しながら、法制度の観点からも社会に受けられる暗号資産の開発に日夜奮闘されています。


日本円ステーブルコイン「JPYC」とは

まず、JPYC さんの事業について教えていただけますか。日本円と連動するステーブルコイン(※)の発行体という認識で良いでしょうか?

岡部:はい、そうです。弊社はどんどん発行してシェアを取っていって、日本だと最大手だと思うんですけれども、VCから出資を得てシェアを伸ばして、どんどんキャッシュリッチになっていくので、そのキャッシュを使って利益が上がる事業をしていくっていうのが基本線になっています。なので、デパートと同じようなモデルですよね。デパートがプリペイド発行して商品仕入れて、売れたら利益っていう感じですね。

※ステーブルコイン・・・価格の安定性を実現するように設計された法定通貨担保型の暗号資産。一般的な暗号資産は価格の変動が激しい(ボラティリティが高い)ため、実用性を高めるために設計された。米ドルの価格に連動する USDC(USD Coin)などが有名。JPYC(JPY Coin)は、日本円の価格に連動するステーブルコインである。

ERC-20(Ethereum Request for Comments:イーサリアムの技術提案)を使ったステーブルコインという、クリプト全般の世界で言うと若干ユニークな存在だと思いますが、ステーブルコイン、特に日本円と連携する部分はどのような背景からそのようにされたのでしょうか?

岡部:元々、前職(編注:リアルワールドゲームス)で「アルクコイン」っていう、歩いてもらえる健康コインみたいな企画をしていたんですけれども、それでお茶が飲めたりスニーカーが買えたりするっていう世界を実現したかったんですね。ただやっぱり日本円と紐付いたコインがないと、実際に受け取る側もリスクですし、税金計算とかは価格が変動するコインでやっちゃうと、もうめちゃくちゃ面倒くさくなる訳です。

日本円で最終的に納税・会計をやんなきゃいけないので、実情、企業とかは受け取ろうっていう時に結局日本円と連動してないと無理だっていう結論に達しました。誰かがまとめて日本円でステーブルコインみたいなのを作ってくれないかなと思ってたんですけど、誰も作らないので、自分が作るべきだろうと。そういうことで今やってます。

JPYC の Web サイト

ERC20でステーブルできるというのはどのようなロジックなのでしょうか?

岡部:一般的なステーブルコインと JPYC のロジックってちょっと違っていて、一般的なステーブルコインはあくまで日本円からステーブルコインにすると、ステーブルコインを受け取ってまた日本円に戻せるみたいな、相互の交換ができるっていうことをもって価値を担保しているのが通常です。

JPYCは前払式支払手段といって、プリペイドのライセンスでやってるので、JPYCをうちに持ってきてもらっても、商品は売れるけれども日本円には戻せないという性質があるんです。1円をそのままキープするっていうのは実は今のライセンスのままだと相当難易度が高いので、あんまり考えてないんですよ。

ただ大体1円に近いところでは二次流通も含めて価値が認められますよねと思っていて、金券ショップで VISA の商品券が99%で売られてますみたいな、そういう世界観は十分実現できると思うし、日常の取引だったらそれで十分だろうっていう風にも思ってるんで、今の法律上できる最大限がそこだってことですね。今後ステーブルコイン用の法律ができると思うんですけれども、その時に正式に1円がキープできればいいなと思ってます。

そうすると、実社会でモノを売買したりサービスを買ったりする部分で、法定通貨の日本円の代替にできる世界が実現できるのでしょうか。他の暗号資産との交換はできますか?

岡部:まずビットコインとかイーサリアムからJPYCっていう、JPYCを買う方向は今の法律でもできるので、弊社で承ってます。時価のビットコイン、1万円分のビットコインを受け取って1万分のJPYCを渡すってことは弊社でやっています。

逆は今の法律だとちょっと厳しいと思っていまして、うちの会社ではやってないんですね。ただ共通規格のERC20ですので、二次流通でP2Pとかユーザー間で換えるっていうこと自体は技術上は特に制限がない状態です。

基本的に今の事業者はほとんどJPYCを受け取ってないはずなんですね。今JPYCを受け取ってるのはうちの会社だけのはずで、当社が自家型というライセンス(※)でやっているので、まぁ、たまたま受け取ってる方がいるかもしれないけど、基本的には個人が投げ銭でもらったりとか、そういうぐらいの受け取り方だと思っています。

なので基本的には、受け取ったのが仮に法人の方であっても、結局うちでVプリカギフトとかgiftee Boxに換えて買い物をしたり、個人の方であったら今は松屋銀座さんでも使えますので、そこの代理購入でプラダのバッグとか、そういうのを買う。そのぐらいですかね、使い方としては。

ゆくゆくは、加盟店を募集してそちらで使ってもらうために第三者型という金融庁の登録ライセンス(※)が必要になるんで、今はそこの取得を目指してます。それが済んだら他の加盟店さんでJPYCが使えるようになって、加盟店さんはうちにJPYCを送ったら、お金が精算されるという仕組みになってます。

※自家型、第三者型・・・自家型は、資金決済法3条4項で定められた「自家型前払式支払手段」によるプリペイド決済のこと。発行体以外でも使うプリペイド決済は、資金決済法3条5項で定められた「第三者型前払式支払手段」となる。

「JPYC代理購入」の開始を伝える松屋銀座のWebサイト。2022年11月までの実験的なものだ。

岡部氏が考える Web3 の可能性

Web3は、なぜ今こんなに話題になっているのでしょうか? また、Web3が浸透することで新たに実現可能なビジネスはどのようなものだと考えられますか?

岡部:今までは株式会社のような形で、会社が資本を調達し、働いた人に給料払うっていう、そういうモデルだったわけですけれども、これがWeb3の世界観ですと、プロジェクト、場合によっては DAO(分散型自立組織)だったり会社だったりするんですけど、そのプロジェクトがトークンを発行して、そのトークンを貢献した人に配ったりしてですね、株式会社だったらストックオプションっていうと役職者とか一部の人じゃないともらえなかったんですけれども、たとえば初期に貢献してくれたファンの方とか、そういう多くの方を巻き込んでスタートできる。これはパーミッションレスっていうブロックチェーンの性質と合わさって、非常にスピードが出るっていうのが分かってきたんですね。資本主義の前提である株式会社というのを、数百年ぶりにアップデートするかもしれないっていう仕組みで、最近期待感が出ています。

やっぱり普通に働いていても、なかなか資本家以上に収益を上げて稼ぐっていうのは労働していたら無理なわけですね。ほぼほぼ夢がない訳ですよね。でも、このDAOとかWeb3の世界観が当たり前になってくると、初期の貢献者が、たとえばだけど、ただゲームをプレイしていただけで一攫千金とか、そういうこともあり得るような世界観。これは非常に将来性を感じるなっていう人たちがアーリーアダプターとして今非常に飛びついていて、それに対して日本も、やっぱり世界的にそういう競争になってきてるからそこに乗り遅れないようにしなきゃねとか言って、国会でもやっとお話が出たっていう、そういうフェーズですね。

将来的にどういう世界観になるのかっていうことなんですけども、基本的に元々人間と人間はずっと取引してたんですよね。最近やっとECとかが普及してきて、人間と機械が取引するようになりました。まあ自動販売機もそうなんですけれども。さらに先の世界で言うと、今証券とかで行われているように機械と機械が取引する。マシン・ツー・マシンで取引するみたいになってきて、そうすると人間のお仕事っていうのは見守ることみたいになる訳ですね。そうなってきた時に、じゃあ人間は一体何して暮らすんだっけっていう話に遅かれ早かれぶつかります。今もそうなりかけてますね。

雇用を維持するって言っても、商品を作ろうとしても売れないと雇用が成立しない訳です。かと言って何もしないと犯罪率とか上がってしまうといけないというところで、今非常に注目されている一つが、本人からしたらゲーム感覚で楽しんでいるんだけれども、それが他のコミュニティとかの発達・発展には貢献していて、一種の労働ではないけれども労働的な形でトークンがもらえたりする。もしそのプロジェクトがうまくいったら、貢献して良かったなって思えるぐらいの金銭的なリターンもあるっていう循環があり、それがうまく発達すると今まではその資本主義的にはなかなか採算が合わなかったようなものが実現できるようになるかもしれません。

一例を挙げると障害者の雇用とかですね、そういう、今までだったら採算合わなかったよみたいなのが、ゲームをプレイするぐらいだったら結構できるので、その辺の社会福祉にも結構役立つんじゃないかということで、今までの経済的な解決ができなかったことを、トークンのインセンティブで解決できるような可能性があるんじゃないかみたいなところにすごく発展性を感じています。

「Axie Infinity」のように、ゲームをプレイして稼げるようなサービスが日本からもそのうち出てきて、フィリピンなどでは当たり前になりつつある広がり方が日本でも起きてくるのでしょうか?

岡部:それはAxie Infinityだからすごい新しい感じがするんですけど、ちょっと前の日本でも、たとえば遊戯王カードとかって売買で結構儲けてる人なんかがいてですね。古物商なんかも取り扱ってた訳ですよ。古物商は仕事としてやってるけど、普通のプレイヤーはただのプレイヤーみたいな感じでお金を吸い取られる側になっていた訳ですけれども、その境界が緩やかになっていくわけです。今後は消費者と事業者が、売る人と買う人みたいなのが両方、消費者でもあり事業者でもあるみたいな、そういう構造にどんどんなっていくと思ってます。

その際に今までの法律とか今までの通貨だと、たぶん対応しきれないんですよね。新しいものとしてやっぱりステーブルコインとかも出てきてるし、Web3の発達によってたぶん必須のものなんだろうなと思ってます。

結局、税金計算とかはしなきゃいけない訳ですよ。税法とかは何も変わらないので。半分消費者だけど半分商売やってますって言ったら、その商売やってる方は納税しなさいっていうのが今の法律なので、じゃあ会計は日本円でやってねってなるんで(笑。途端に「じゃAxie Infinityでなんか分かんないけどコインもらったんだけど、これいくらだっけ」ってなった時に、納税できないよってなっちゃうので、その辺が今の課題かなって感じです。

「ゲームプレイでお金が稼げることで(Play-to-Earn)、アジアを一世風靡するメタバース「Axie Infinity」

Web3 で日本はどう変わるか? どう変わるべきか?

法整備ですが、そもそも日本政府は対応しきれるのでしょうか?

岡部:結局、進化が早すぎるんですよね。さっき言ったパーミッションレスっていう性質がたぶん世の中の人が思う以上に圧倒的な進化スピードを生むので、後から法律でどうにかしようって言っても、たぶん追い付けないスピードで進化していると思います。

実際、1年前はNFTはまだまだだったわけですけど、今はこんなに、気付いたら流行りみたいになっています。たぶん法律の後追いでは、ずっと追いつけない状態が続くと思っています。そういう中で日本がどういう風に向き合っていくかは、なかなか難しい舵取りが迫られると思います。

日本人がNFTを普通に使えるようになるのはどれぐらい先になりそうですか?

岡部:実はもう、JPYCが普及した段階で、ほぼそこはクリアになりそうです。実は今でも知識のある人は何とかなるんですね。やっぱりみんな使うようになるっていうには、まだメタバースもそんなに発展してないですし、結局コロナがこの後どうなるか次第で、場合によってはずっとくすぶり続けて、外出できなくて家でずっとやってるみたいになる可能性があって、そうするとまあ一時期のフィリピンみたいに大量に失業した人が出て、このままじゃどうしようってなって、そうするとそこで皆さんメタバースで仕事でもするか、ってなった時に、日本にちゃんと仕事ができる環境が用意されているのか、それとももう日本じゃ駄目なんで国外脱出しましょうってなるのか。今が瀬戸際って感じですね。

そうなると日本国内で、貧富の差がどんどん開いていくようなイメージですか?

岡部:Web3は基本的には貧富の差を縮める方向なんです。今までは資本主義なわけですから、それがいい悪いは別にして、最初に会社って株主のものですよね。だから従業員の満足度とかよりも株主にちゃんと歓迎されることが重要であるっていう話なわけです。

岸田さんも今ようやく新しい資本主義とか言い出してますけれども、Web3の世界観になると、プレイヤーとか、それが従業員かどうかすら分からないような人でも、ある意味主役になって一気に、今までは資本家が吸い上げるって言うとちょっと語弊があるんですけど、資本家が当然受け取るべくして受け取っていたお金がそもそも違う組織な訳ですから、熱心なプレイヤーとか初期の貢献したコミュニティマネージャーとかに分配されるということになります。

どっちかって言うと貧富の差は縮まる方向だと思いますが、また新しい、資本家3.0みたいな人が出てくるかも(笑

Web3の波に乗れない大企業が今後衰退する可能性も出てくるのでしょうか?

岡部:もう既に時価総額ベースで言うと日本の企業って世界ではほとんど上位にいなくて、トヨタがかろうじて残ってるかどうか、それすらどうかっていうところになってますんで、今のやり方だと全く話にならないというのは分かっている。かといって日本から会社が全部出て行っちゃうと、それもまた空洞化して結局雇用がないということになってしまうので、どの道ほぼほぼ詰んでいるという状態なので(笑

少しでも良くするためには方向性が二つあって、一つは既得権益をもう規制で守りまくる。少しでも今の利益を守るという規制を作りまくるっていう方法と、開国して、Web3とかの新しい主義を受け入れて、それに対応していたところは残るけど他は死んでいく。まあどちらでも選べるとは思うんですけれども、それはやっぱりどちらかを選ばざるを得なくて、どちらにとっても既存の大きな組織にとっては極めて厳しい戦いになると思います。

もう一つ方法としてあるのは、そういう新しいことを大企業さんとしてはいろいろな壁があってできないと思うんですけど、そういったことをやっている会社に対して、たとえば出資して、そして見守っていくというのも選択肢としてあると思います。タイミングが来た時にそこの会社との関係をより強めて実際に動き出すとか。それが実際にNFTの事例ですと、ナイキやアディダスはそのような動きをしていますね。

ナイキは2021年12月、NFT スタートアップ RTFKT の買収を発表した。(ナイキの Web サイト)
アディダスのNFT情報サイト「Into the Metaverse」では、gmoney、PUNKS Comic、Bored Ape Yacht Club といった NFT スタートアップとの提携・協業が発表されている。

後編に続く)

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