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まちづくりに「障害のある作家のアート」が染み出すROADCASTプロジェクト、ヘラルボニーと東急が共創

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 近年、企業活動において社会的な要請への対応がより強く求められるようになりました。SDGsにまつわる環境や福祉、ダイバーシティへの理解と行動など、利益と企業価値の向上だけでは見えてこない「人間本…

写真左から:ヘラルボニー代表取締役の松田崇弥さん、東急のフューチャー・デザイン・ラボ事業創造担当の片山幹健さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

近年、企業活動において社会的な要請への対応がより強く求められるようになりました。SDGsにまつわる環境や福祉、ダイバーシティへの理解と行動など、利益と企業価値の向上だけでは見えてこない「人間本来の権利や生活に関わる取り組み」を企業は無視することができなくなりつつあります。

一方、こういった取り組みにはアイデアが必要です。今回ご紹介するヘラルボニーと東急の共創事例は、人と社会、企業それぞれが持っている課題を和らげつつ、持続可能な取り組みとしてまとめることに成功しています。街のビルボードをアートに変える取り組みについて、ヘラルボニー代表取締役の松田崇弥さんと東急のフューチャー・デザイン・ラボ事業創造担当の片山幹健さんにその裏側をお聞きしました。

まちづくりに「障害のある作家のアート」が染み出す

街の中に溢れる屋外広告のスペースを出稿したい広告主とマッチングするプラットフォーム、それが東急の展開する「ROADCAST」です。この広告スペースに出稿がない空き期間をアートで華やかに演出しようというのが、今回の「Wall Art MUSEUM STORE」プロジェクトになります。

一方、タッグを組んだヘラルボニーは知的障害のある作家とアートライセンス契約を結び、2,000点以上のアートデータを元に事業を展開するスタートアップです。今回の共創プロジェクトでは、東急の管理する壁面広告の「空き枠」にヘラルボニーが管理するアートを配置しよう、というものでした。

もう少し具体的に説明すると、通常、壁面広告には下地となる枠があります。ここは空いている期間に何も表示されないか、空き枠募集の電話番号などが記載されることが多くなります。当然ながら見た目は悪く、空いている期間が長いと人気がないような印象を持たれてしまいます。

「Wall Art MUSEUM STORE」作品

東急や壁面広告枠を提供する不動産事業者にとっては、広告出稿がない期間も壁面を華やかに演出できると同時に、福祉への取り組みに協力することもできます。また、ヘラルボニー側も預かる作家の作品を一人でも多くの人々に届けることができるようになる、というわけです。

アイデアなのはここで作家の作品を買えるような導線を作ったことです。

QRコードを掲載してそこからオンラインストアで、アート作品をプリントしたグッズなどを購入できる仕組みなのですが、松田さんのお話では直接ここからやってくると同時に、街中でヘラルボニーの作品を知った人たちが自然とサイトに集まるようになったとされていました。片山さんはプロジェクトの狙いをこう語ります。

「売上の一部はアーティストと福祉施設に還元され、福祉分野の経済的活性化につなげます。渋谷、原宿、表参道、虎ノ門、新宿、銀座など約40箇所から開始し、今後もウォールアートを増やしていく計画です。開始から約3か月で300件ほどのQRコード読込があり、そのうち約30%が商品の購入ページに遷移しています。

ROADCASTは、屋外広告という切り口で街のちょっとした空きスペースを活用して街の価値向上につなげていく事業です。景観を害するものとして街の嫌われ者だったり、効果測定が難しくただただコストのかかる広告媒体だった屋外広告の可能性を追求し、アート展示など街の賑わい形成につながるメディアとしての整備やDX推進による効果測定の仕組み化など、街にとっても広告主にとってもWin-Winな存在を目指したいです」(片山さん)。

東急アクセラレートプログラムでの出会い

壁面アートからグッズを購入できる(ヘラルボニーのECサイト)

両社の共創は、東急が実施するアクセラレートプログラムにヘラルボニーが参加したことで始まります。

「元々ROADCASTは、落書きに悩む壁を中心に街中の数十~百箇所で広告を同時展開し、街の賑わい形成や落書き抑止という街への貢献を意識して展開をしていました。一方で殺風景な壁に戻ってしまう広告未稼働時がもったいないと感じており、持続可能な形で街や社会に貢献できる活用方法を模索していたんです。そんな折、ヘラルボニーの全日本仮囲いアートミュージアムという取り組みをお伺いし、それを発展させる形で、街をまるごとミュージアムショップにできないかというアイデアをヘラルボニーさんと話し合いました。期間限定のイベント的にアートを展示して終わりではなく、持続性のある展開としてじわじわと街中にウォールアートを増やしつつ、ウォールアートからECへと誘導して物販収益につなげているのがポイントです」(片山さん)。

街全体をアートミュージアムにしよう、という方向性はすぐに固まるものの、屋外でヘラルボニーのアートを展示すると施工コストが大きくなってしまいます。福祉という観点ではよい取り組みも持続性がなければイベントで終わります。そこで出たアイデアが壁面設置の下地パネルそのものをアート作品に変える、というものだったのです。下地パネルの製作・施工コストもそこから生まれる物販収益から回収することにしました。

「知的障害のあるアーティストとの接点はまだまだ少ないため、街を通してアート作品を掲出することで繋がりを生み出せたことには大きな意義があったと考えています。両社にとってプラスになるような仕組みを整えるのに苦戦しましたが、QRコードから売れた分の売り上げをシェアする仕組みを構築したことで、ヘラルボニーは壁面で販売し、ROADCASTさんは未利用壁面を活用できる、両者にとって持続可能な方法ができたと思います。結果、街でアート作品を発見した、というSNS投稿が見られるようになりました。壁面から弊社について検索した人など、認知度の向上に繋がっているのではと考えています」(松田さん)。

片山さんによれば、壁面を貸している物件所有者の方からも好評をいただいているそうで、こういった形で少しずつ、SDGsなどの活動に寄与できるという点も評価されているのだとか。今後は時期ごとに企画を練ってWall Art MUSEUM STOREならではのアート展示やアートを落とし込んだプロダクトの取り扱いにも挑戦したいとお話されていました。

次回も国内の共創事例をお届けいたします。

伝統メディアを「デジタル化」させるキメラ、凸版印刷とタッグ

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 伝統的なメディア・パブリッシャーが抱える悩みのタネはビジネスモデルです。紙をデジタルにするだけでなく、ビジネスモデル・体制からコンテンツを作る考え方、読者との向き合い、あらゆる面で従来の手法を…

写真左から:凸版印刷の菅原健春氏、キメラ代表取締役の大東洋克氏、凸版印刷の内田多氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

伝統的なメディア・パブリッシャーが抱える悩みのタネはビジネスモデルです。紙をデジタルにするだけでなく、ビジネスモデル・体制からコンテンツを作る考え方、読者との向き合い、あらゆる面で従来の手法を見直さなければならないからです。この課題に取り組もうという共創が、凸版印刷とデジタルパブリッシャー支援を手がけるキメラの提携になります。2019年末には両社の資本を含めた業務提携の取り組みが公表されています。

そこで本稿では両社が手がけるパブリッシャーのデジタル化ソリューション「Ximera Ae」(キメラ・エーイー)を中心に、伝統的なメディアが抱える課題とその解決方法について両社のお話を伺いました。

デジタルメディアのグロース支援

キメラが提供するのは「読者ロイヤルティ」を中心に据えたデジタルメディア事業グロース支援事業で、各メディアが抱える複雑な課題を伴走のスタイルで解決しています。海外製ツールである記事コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat(チャートビート)」の日本総代理店としても、導入と分析ノウハウの支援でメディアと向き合っており、2019年1月以来、パブリッシャー19社・51媒体(2021年2月末時点)に向けてデジタルメディアの事業評価やグロース支援を手がけた実績を持ちます。

Ximera Aeサービスイメージ

また、こうやって積み上げたメディアへの読者エンゲージメント向上ノウハウを基に、メディアが制作するコンテンツの価値を訴求し、マネタイズするサブスクリプション管理プラットフォーム「Ximera Ae」を自社開発しています。同時に、共創・協業する凸版印刷とは、出版社などのメディア営業網を活用して「Ximera Ae」の販売連携をしています。

「キメラは『パブリッシャーの未来を共に創る』企業です。有益な情報を提供することで時代を動かし、⽂化を築いてきたパブリッシャーを深くリスペクトしています。既存のメディアビジネスが苦境にある中で、真摯にコンテンツに向き合う⽅々が報われる世界を作り、今⼀度インターネットの本来の価値を創造したいと考えています。2021年からは、初の自社開発プロダクトである、サブスクリプション管理プラットフォーム『Ximera Ae』を通じ、デジタルメディアのマネタイズ選択肢を広げていきたいです」。(大東さん)

伝統メディアの課題

これまでもパブリッシャーのデジタル化は「電子書籍」などでじわじわと進んできた経緯がありました。一方、ここ数年で一気に顕在化してきた課金・サブスクリプションモデルへの対応は、読者数を大きく稼ぐ必要のある広告モデルと相反する部分があります。また、考えるべきポイントも流入経路から読者ロイヤリティなど多岐に渡るため、パブリッシャーが抱える課題や悩みは更に複雑さを増します。大東さんは現状をこう分析します。

「Yahoo!ニュースやSmartNewsなどのニュースプラットフォーム、TwitterやFacebookといったソーシャルメディア、はたまたnoteなどの個人によるコンテンツ発信モデルの台頭により、『マスメディア』と呼ばれていた新聞、雑誌、テレビが、インターネットを通じたコンテンツ発信および読者とのコミュニケーションにおいて、相対的に強みが発揮できない状況になりつつあります。

一方、コンテンツの発信手法や形態の多様化により、ユーザーが視聴・閲読できるコンテンツが膨大になっている状況下では、デジタルメディアは、ページビュー数に依存した広告収益(視聴・閲読は無料)モデルのみでは、従来のアナログの事業形態時の収益を補完・置換できる規模・成長性を見込むことが難しくなっているのも事実です」。(大東さん)

凸版印刷とキメラが特に注目しているのが、大手・中堅の伝統的なメディア企業だそうです。

特にビジネスモデルに直結するテーマでもあることから信頼関係は重要で、その点で凸版印刷の持つ関係性は大手出版社などとの取り組みをする上で大きくプラスに働いているというお話でした。一方、凸版印刷の菅原さんと内田さんはこういった提案先に対し、不足するSaaSプロダクトの営業ノウハウをキメラと協力して補完したことも明かしてくれました。

顧客とのすり合わせを重ねてソリューションを提供する受注産業・営業スタイルの凸版印刷内では、キメラのSaaS型プロダクトの営業経験・ノウハウが不足しており、キメラと凸版印刷、パブリッシャーの3者連携の実現・成果創出に結びつけることができなかったんです。そこでキメラチームの協力を得ながら、凸版印刷内でのセールスファネルの勉強会やヒアリングシートの整備・更新、受け渡し基準の明確化などを積み重ね、改善しながら連携していってます。

「パブリッシャーは、サブスクリプションモデルの構築に際し、技術的な開発仕様の検討で手一杯になり、サブスクリプションの事業計画や運用体制構築まで手が回らない状況も多くなりがちです。こうした問題に対して構造的な課題抽出と解決を実現し、メディアの本分としての価値ある情報発信に集中しやすい環境づくりが可能、とお伝えするようにしていますね」。(菅原さん・内田さん)

印刷を中心に出版社などのメディア企業と長らく関係を構築してきたのが凸版印刷です。エコシステム全体を考えた際、パブリッシャーのビジネスモデル、デジタル化を推進することは業界全体の下支えになるのは間違いありません。

両社は以前、本メディアでも取材したトッパンCVCのチームのアプローチをきっかけに協業・資本提携の話が始まったそうです。事業部等で協業検討を進め、黒子のようにメディアグロースを支えるという方向性が一致したことでその後の協業が加速したというお話でした。

次回も国内の共創事例をお届けいたします。

店舗とサイト「間」の購買体験を探せーーアイスタイルとKDDI「@cosme TOKYO -virtual store-」での共創

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 KDDIとアイスタイルは1月8日から、XRを活用したバーチャル店舗「@cosme TOKYO -virtual store-」を提供開始しています。利用者はスマートフォン向けアプリ「au XR …

写真左から:KDDI 藤倉皓平と下桐希、コスメネクスト(Flagship store事業部/@cosmeTOKYO)坂井亮介氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

KDDIとアイスタイルは1月8日から、XRを活用したバーチャル店舗「@cosme TOKYO -virtual store-」を提供開始しています。利用者はスマートフォン向けアプリ「au XR Door」内に設置された店舗へ仮想的に来店し、化粧品ブランドの購買体験を楽しめるというものです。

このバーチャル店舗では、花王の化粧品ブランド「KANEBO」「KATE」「SOFINA iP」の商品が販売されるほか、バーチャル空間で仮想的に商品を手に取ってテスターを利用したり、8K(5G推奨)の高画質できめ細やかに表現された店舗の内観や商品の色彩によって、実際に来店したような体験が可能になっています。KDDIとアイスタイルは今回のバーチャル店舗での取り組みを通じ、先端技術を活用したビジネスモデルの共同創出も狙うとしています。

アイスタイルでは2020年1月にJR原宿駅前に体験型のフラッグシップショップ「@cosme TOKYO」をオープンさせており、600ブランド2万アイテムを展開していました。両社は感染症拡大をきっかけにEC利用が拡大するなか、この店舗でのワクワクするような体験とXR・5Gを活用した完全非接触の購買を融合させた取り組みとして、今回のバーチャル店舗を開始しています。

本稿ではKDDI・アイスタイルの両社でこの共創案件を担当したアイスタイル坂井氏、KDDI下桐氏、藤倉氏のお二人に話を伺いました(文中の太字の質問は全てMUGENLABO Magazine編集部)。

スマホのみ「没入体験」への挑戦

バーチャル店舗「@cosme TOKYO -virtual store-」においてユーザーは「au XR Door」アプリを立ち上げてスマホをかざすと、360°画像としてバーチャル店舗を歩き回ることが可能になります。

また、商品棚の前で手に取った商品をタップすると@cosmeの公式通販「@cosme SHOPPING」へ遷移し、商品購入ができます。行きたい場所についてはフロアマップから直接移動することも可能で、花王の商品の一部については各ブランド棚や店舗内1Fに設置されたテスターバーにて、テスターを使ったような体験ができるようになっています。

KDDIは今回の協業で5G・XR技術の提供を実施し、アイスタイルは「@cosme TOKYO」で得たリモート接客などのノウハウや@cosmeとのクチコミデータベースとの連携を担う、という分担になっています。

スマホのみで没入体験を目指したバーチャル店舗(@cosmeブログより)

今回のバーチャル店舗設置の狙いについて教えてください

坂井:2020年1月にJR原宿駅前にオープンした新体験フラッグシップショップ「@cosme TOKYO」ではワクワクする空間やランキング売り場、手書きのポップ、カウンセリングなど店舗でしか体験できないお買い物の楽しさをお届けしており、600ブランド2万アイテム以上の幅広い品ぞろえとさまざまな楽しい仕掛けを用意しました。

今回の取り組みには『購買体験』をどうアップデートしていくのかというテーマがあります。これは@cosme視点ではあるのですが、「@cosme TOKYO」のような店舗によるリアル購買とeコマースによるオンライン購買があった時、この中間にあるような体験を作れないか、というのが狙いのひとつです。

なるほど「店舗とコマースの中間」の体験は新しい視点ですね

坂井:仮想空間に入るとワクワクしたようなコンテンツが溢れていて体験もできる。買いたい場合は買える。これは2次元のeコマースだけではなかなか表現しきれない部分です。一方、来店には物理的な移動や接触がハードルです。これをスマートフォンひとつで実現しようという、本当の最初の一歩がau XR Doorの取り組みなんです。

実際に使ってみると没入っぽい体験でありながらスマートフォンのみで利用できるので、手軽な反面、スペースを必要とするなど戸惑いもありました

KDDI:実は今回、「@cosme TOKYO -virtual store-」に使ったアプリ「au XR Door」はそもそもVRヘッドセットを利用してXRサービスを企画・開発しているチームが新たに提案したものなんです。

VRヘッドセットは特に女性が着用する際、髪型が崩れるなどの運用面の課題がありました。また、機材も必要になるので、一人で体験するにはややハードルが高かったんです。そこで没入体験でありながらスマートフォンだけでそれを実現できないか、そう考えた結果があの「どこでもドア」体験だったんです。実際に利用データを見てみると、仮想店舗に来店した人はポップをズームで見ていたりと実際の来店と同様のアプローチが優先される、ということが徐々に見えてきています。

一方、課題があることも認識していて、例えば歩き回るスペースがない場合にどうするのかとか、ユーザーからの定性的なフィードバックや、実際のデータから見えてくる「つまづき」を参考に今後のアップデートを議論しているところです。

まだ始まったばかりですが、この新しい購買体験のヒントは見えてきましたか?

坂井:コスメって本当に多くの種類があるので、それらを自宅にいながらにしていくつも試せる、例えば自分の顔に合った商品を見つける、といったこともできるようになるかもしれません。こういった魅力的なブランドとの出会いの方法をアップデートできるんじゃないかと考えています。

データの活用についてはいかがでしょう。来店した人の属性データなどから多様な商品のおすすめをする、といった流れは想像できそうです

坂井:データをAIで読み解いたりそれをマッチングに使うことはeコマースでも可能です。どちらかというと、それ以上にヒューマンタッチが重要で、つまり接客ですね。お客さんの肌にあったパーソナライズされた提案活動、これが化粧品には大切なんです。ここについてはもちろんテクノロジーも使いますが、オンラインカウンセリングのような人の力を組み合わせた、テックタッチ・ヒューマンタッチを融合させた空間づくりには挑戦していきます。

スマホのみで没入体験を目指したバーチャル店舗(@cosmeブログより)

少し話を変えて、コロナの影響と実際の利用ユーザーからの反応についても教えてください

KDDI:そもそもKDDIでは新型コロナウイルス感染症の影響で売上に悩んでいる化粧品メーカーや小売に対して、リアル店舗やECとは異なる新たな販路として、実店舗のVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)を再現し、在庫がなくても店舗体験をユーザーに提供できる低コストのバーチャルストアを企画していました。特にテスターを試すのが憚られる中、手に取ったかのような体験ができる機能やARのメイクアップ機能は実物がなくても商品確認ができる、という点で非常に重要と考えています。

坂井:これはコロナ感染拡大の以前からですが、小売りのDXや店舗体験の可視化・価値化はテーマにありました。やはり化粧品はリアル店舗にお越しいただいてから始まるUXが多かったんです。そうこうしている内に感染症が拡大し、店舗としての魅力である「巡ること=出会うこと」「試すこと=手にとること」「相談すること」ができなくなってしまったんですね。

なるほど

坂井:今回のケースでは、こういった本来提供できるUXの価値が下がっている状況をバーチャル体験で補う、というのが目標にありました。そこでオンライン/バーチャル上での出会いの場である店舗を立ち上げ、店舗やオンライン上から仮想的に商品を手に取ったり、テスターを使ったような体験と「公式通販」から商品の購入ができる、というところまで用意した、というのがここまでの取り組みですね。

協業のスピード感はどのような流れだったのでしょうか

坂井:とあるメーカーさんにお繋ぎいただいたのがキッカケです。目指す方向やイメージはお互いすぐにリンクしていたと思っておりまして、この仲間たちなら絶対に新しい価値が見出せると思ったことを覚えています。実施に至るまでのハードルは時間と環境ですかね。

KDDI:私たちもオンラインとオフラインを融合させた顧客体験をXR Doorを通じて実現できると感じたため、ご紹介いただいた後、KDDI側からも協業をお願いしました。

坂井:ただ、とにかく時間もなくて、9月中旬に初めてKDDIさんとお会いしてから4社を跨ぐ横断プロジェクトが生まれ、毎週のように打ち合わせを重ね、12月にはデモを出すというところまでもっていったのは素晴らしいスピード感でしたね。今回はずっとコロナ感染拡大との闘いでもあり、本当はお披露目を@cosmeTOKYO1周年のリアルイベントでさせていただきたかったですが、緊急事態宣言により延期となったのは心残りです。

反響はいかがですか

坂井:リアルな店舗とECのオムニチャネル化・OMOという発想自体はお持ちの人が多いですが、我々は店舗”体験”のオンライン化にこだわりました。また他企業がすでに展開しているブラウザ用の表面的なバーチャルサイトではまだまだ表現が難しいです。その点において、将来を見越したチャレンジであり「らしさ」があると化粧品業界の関係者から注目をいただいています。

KDDI:@cosmeブログでは「@cosme TOKYO -virtual store-」の記事が約50万閲覧を超え、XR Doorの新規ユーザー数も増えています。多くのユーザーにバーチャルストアの可能性を感じていただけているのではないかと思う一方、緊急事態宣言が発令された結果、リアル店舗と連携した取り組みがまだ実現できていないのが課題です。この件についてはアフターコロナに向けて準備しております。

ありがとうございました

エンターテインメント領域で新たな産業創出をーーテレビ東京コミュニケーションズの投資活動

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けしたヤマトHDのスタートアップ投資に続いてお届けするのは、テレビ東京コミュニケーションズのスタートアップ投資活動です。 テレビ東京のグループはテレビ東京ホールディングスをトップに、中核となる地上波とBS放送のテレビ東京とBSテレビ東京、テレビ通販やEC…

テレビ東京コミュニケーションズ メディア事業開発本部 ビジネスデザイン部 遠藤哲也氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けしたヤマトHDのスタートアップ投資に続いてお届けするのは、テレビ東京コミュニケーションズのスタートアップ投資活動です。

テレビ東京のグループはテレビ東京ホールディングスをトップに、中核となる地上波とBS放送のテレビ東京とBSテレビ東京、テレビ通販やEC、コンテンツなどの周辺事業を手がける連結子会社12社、そしてコミュニケーション領域として動画配信事業などを手がけるテレビ東京コミュニケーションズが集まって構成されています。

テレビ東京ホールディングスが昨年に公表した中期経営計画では、コロナ禍における厳しい広告収入を前提としており、放送収益の落ち込みを最小限に抑えつつ、アニメ・コンテンツ事業やイベント、通販といった放送外・周辺領域の事業展開を強化するとしています。

本記事ではその中にあってクロスメディアや動画配信、IP事業などを手がけるテレビ東京コミュニケーションズが窓口となって推進する、スタートアップ投資の活動についてお伺いしました。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答はテレビ東京コミュニケーションズBusiness Producerの遠藤哲也さん)

事業本体からの投資活動ということですが、どのようなフォーカスで出資されていますか
遠藤:スタートアップとの事業シナジーを目的に出資をはじめました。投資領域は日本国内オンリーで、エンターテインメント領域に出資をしております。CVC形態ではなくプリンシパル投資のみです。出資した企業との事業連携により、実益をスタートアップと創出できるよう意識しております。出資後、すぐに現場に実装できるよう、密なコミュニケーションを取らせて頂き、各部署にスタートアップサービスの紹介、連携推進をしております。またメディア戦略や事業戦略のアドバイスも行っており、積極的な企業グロースのバックアップをさせて頂いております。

かなり明確な投資方針でわかりやすいですね。具体的なケーススタディはどのようなものがありますか
遠藤:出資先のZeppyとはデジタル経済番組の共同制作を実施しています。Zeppyは投資領域に特化したYouTubeコンテンツ制作を手がけていて、「投資をもっと普通のことに」をミッションに、投資の大衆化を目指し活動している企業です。株式投資専門チャンネルとしては国内最大級で、このZeppyに所属するYouTuberと連携することで、幅広い属性の個人投資家やYouTubeを日常的に視聴する一般層へのリーチを目的とした取り組みをしています。

また、同様に出資先のSEPALとは保有IPを活用したグッズ販売を実施しています。LINEと連動したECシステムで、若年層へシームレスなグッズセールスを目的とした取り組みです。彼らのECサービス「Live self order」はイベント事業者を中心に一気に活用が広がっています。

マーケットを変革するためにも、スタートアップは文字通りスタートしたら「アップ」し続けるべきだと思っています。世の中のニーズを捉え、経済の牽引役となる新たな産業を創出するべきです。私自身、スタートアップでマーケットへチャレンジしてきた経験もあり、現職でもそういった果敢にチャレンジするスタートアップを本気でバックアップしたいと思っています。

具体的な出資のポリシーや意思決定のフローはどのようになっていますか
遠藤:マイノリティ出資、リードを取ってのマジョリティ出資など、出資先企業毎に違います。出資時の重要な判断軸は、(1)経営者、(2)事業シナジー含めてのマーケットの成長性、(3)優位性です。

初面談から出資までのスケジュールとして、おおよそ3〜4カ月は頂いております。現場担当がスタートアップと面談し、その後、私に案件の報告があります。マーケットとビジネスモデルが弊社の事業拡張領域とフィットするのであれば、私の方で改めて面談のお時間を頂いております。更にビジネスゲインやキャピタルゲイン、共に見込めるようであればDD(デューデリジェンス)に進んで出資計画書を作成します。その後、役員に提案して細かい部分でのフィードバック、最終チェックを経て出資委員会での決議、出資という流れになります。

新たなアイデアや技術、ビジネスモデルに挑戦する方々と一緒に共創し、新たな産業創出にチャレンジしていきたいですね。

ありがとうございました。
ということでテレビ東京コミュニケーションズのスタートアップ投資活動についてお届けしました。次回もお楽しみに。

激動の松竹と共創:問われる「松竹ID」の可能性 Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 前半では感染症拡大で歌舞伎が受けた影響と、そこから大きく開いたデジタル化への扉について松竹取締役、船越直人さんにお話を伺いました。後半はさらに具体的なアクションについて同じく取締役兼松竹芸能会長の井上貴弘さんにお話しいただきます。 松竹には歌舞伎の他にも映画や、テレビタレントなどを擁する松竹芸能といっ…

松竹 取締役 事業開発副本部長 イノベーション推進部門担当・井上貴弘氏(松竹芸能 会長)

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

前半では感染症拡大で歌舞伎が受けた影響と、そこから大きく開いたデジタル化への扉について松竹取締役、船越直人さんにお話を伺いました。後半はさらに具体的なアクションについて同じく取締役兼松竹芸能会長の井上貴弘さんにお話しいただきます。

松竹には歌舞伎の他にも映画や、テレビタレントなどを擁する松竹芸能といったグループ企業が存在しています。特にタレントマネジメントについては2017年にUUUMと提携するなど、デジタル化を見据えた新たな人材育成にも力を入れています。また、これまでの資産として松竹を取り巻くファンの存在も重要です。昨年LINEとの提携発表では巨大なユーザーベースをID化して活用する「松竹ID」の構想にも触れられていました。具体的な松竹のデジタル化はどのように進むのでしょうか(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、文中敬称略) 。

配信の力学がタレントビジネスを変える

ここからは井上さんにお聞きします。エンターテインメントを考える上で、タレントの存在は言わずもがな重要ですが、ここ最近はYouTuberに代表される新たな「アマ以上のプロ」の存在が目立ってきています。改めてプロダクションとしてのポジションはどのように変化するとお考えでしょうか

井上:これからは芸能プロダクションという存在は、クリエイターたちにきちんと価値を提供していかないと存在意義が問われると思います。

私たちのグループに松竹芸能というプロダクションがあります。そこのケースで言えば、松竹芸能にとって、主戦場はやはり地上波のゴールデン番組だったのです。極端な例では、少し前の「放送局によって優劣が顕著だった時代」に、どのような番組に出演することがタレントの現在と将来にとってベストかの判断の前に、とにかく影響力のある放送局のゴールデン番組の方が、力の無い放送局の深夜番組よりも良い、みたいな感覚があったと思います。本来は、そのタレントが深夜番組で司会をやった方が将来につながるにも関わらず、とにかくゴールデン番組でひな壇に座らせた方が良いということです。

昭和から平成にかけての黄金期ですね

井上:今の芸能プロダクションの幹部の方々はこういった「テレビ中心」に育ってきた人が多いです。意識を変えようとしているけど、まだ「地上波全盛時代」の感覚が残っている。その中でも、この時代に、どうすれば自分達のタレントを発信できるかに気付いた人達が、「地上波だけじゃないんだ」という結論にたどり着き、新しいメディアに積極的に取り組みながら、地上波とのバランスを取り、素晴らしいタレント育成をされています。

他の事務所の芸人さんや、過去にゴールデンで活躍したタレント、引退したスポーツ選手などオンライン配信で活躍する「プロ」が一気に増えました

井上:YouTube等の新しいメディアで自分を発信し始めていますよね。プロダクションとしてはこういった個人の潜在的な価値を見極めて、この人の場合はYouTubeを上手く使っていこうとか、本当の意味でプロデュースする力がないとダメになってくると思います。

これまでも地上波を中心に「どうやってこの人を売り出していこうか」ということをやってきているので、YouTube等の新しいメディアにおいても、人を育てるという点においては同じです。ただ、過去の地上波の成功体験に縛られてしまうと、新しいメディアの可能性への切り替えが上手くいかない。ここの切り替えのスピードをどうやって上げるかというのが重要ですね。

問われる「松竹ID」の可能性

舞台やテレビ・映画といった媒体を通じて関わってきた顧客との接点が変わる

井上:お客さんが求めている情報を届けることをやりたいと思っています。そして、集まったデータからどういう映画や舞台を作るべきかを、逆算で導き出すこともやってみたいですね。映画と伝統芸能である歌舞伎を持っている会社は他にはありません。データ数は多くないかもしれませんが、価値のあるデータが取れると考えています。

なるほど、顧客との関わりだけでなく、作るものにも確かに影響が与えられそうですね

井上:現在、MR(複合現実:Mixed Reality)を活用した歌舞伎を作っています。今後、技術が進化してデバイスが軽量化すると、例えば地方の巡業の際、低コストで、舞台に仮想的な演出をすることが可能になると思います。また、単純に360°カメラで映像を撮るということだけではなく身体データも取って、デバイス上で舞台の興奮を伝えるようなこともできると思っています。

去年の中頃から、事業共創については積極的に取組んでいます。コロナ禍で当社の業績は大きな打撃を受けており、そのスピードがやや遅くなっていることは事実ですが、しっかりと取り組みたいと考えています。特に、オープンイノベーションに関わる若手社員を育てることは、今後のパートナーシップの戦略を考える上でも、最も重要であり、全力で取り組んでいきます。

スタートアップやベンチャーキャピタルの方々で、「松竹とはこういうことができないのか」という話があれば聞かせていただきたいと考えています。

ありがとうございました

物流・サプライチェーンを変革するーーヤマトホールディングスの「KURONEKO Innovation Fund」

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、大日本印刷のスタートアップ投資活動に続いてお届けするのは、ヤマトホールディングス株式会社(以下、ヤマトHD)の「KURONEKO Innovation Fund(YMT-GB 投資事業有限責任組合)」です。 ヤマトHDは昨年4月にグローバル・ブレインと共同で50…

ヤマトホールディングス・オープンイノベーション推進機能の森憲司さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、大日本印刷のスタートアップ投資活動に続いてお届けするのは、ヤマトホールディングス株式会社(以下、ヤマトHD)の「KURONEKO Innovation Fund(YMT-GB 投資事業有限責任組合)」です。

ヤマトHDは昨年4月にグローバル・ブレインと共同で50億円のファンドを立ち上げました。また同社はファンドの立ち上げに先立ち、中計などの上位概念として経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を公表しています。

この中で3つの構造改革として宅急便のデジタルトランスフォーメーション(DX)、ECエコシステムの確立、法人向け物流事業の強化が強調されており、それにまつわるデータプラットフォームやラストマイルデリバリーなどの構築を目指すとしています。KURONEKO Innovation Fundもこの構想の一環として設立された経緯から、出資の範囲も自然とこの計画に沿っています。

物流やサプライチェーンなどをテーマに幅広い技術やビジネスモデルを持ったスタートアップに5,000万円から数億円の規模で投資を予定しています。またこの窓口を活用し、資金だけでなくヤマト運輸やグループ各社が保有する経営資源を活用する協業も視野に入れた、本格的な協業体制が始まろうとしています。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答はヤマトHD オープンイノベーション推進機能の森憲司さん)

共創・出資のケーススタディと狙い

物流やサプライチェーンと一言で表現してもその範囲は相当に広くなります。ヤマトHDと言えば宅急便ですが、サプライチェーン全体で考えると資材(B2B)物流に在庫管理、個宅配送などのモビリティに関する分野、代引きに代表されるフィンテック分野、全てのデータを解析・活用するAIやマーケティング分野などかなり幅広いテーマが対象になります。

こういった可能性に対して出資や協業含め、さまざまな共創パターンに対応しようという意欲的なファンド構成になっている、というお話でした。その中で、昨年12月に注目の第一号案件が発表されました。本命のラストマイルデリバリーに関連する自動運転技術への出資です。

昨年12月に第一号案件の公表がありましたね。どういったスタートアップなのでしょうか

森:はい、昨年の12月に中国の自動配送ロボット開発企業Yours Technologies(以下、Yours)への出資を決定しました。同社は2018年の創業と若いスタートアップですが、開発するコンピュータービジョンの自動運転技術を活用し、次世代物流及び小売店向けにラストワンマイル配送のロボットソリューションを提供しています。

労働人口の減少やEC荷物の増加、感染症に対応した配送ニーズの高まりなどを背景に今後、ラストワンマイルにおける配送業務の効率化が必要となってきます。上記実現に向けて同社との技術交流を図り、日本国内における自動配送ロボットの活用に向けて検討を進めていきます。

自動運転宅配は各国で技術競争がある中、中国のスタートアップを選んだ理由は何ですか

森:まず前提として、どこかの国に特化することは無く、グローバルにおいて最も優れた技術を持つスタートアップの方にリーチし、一緒に取り組んでいきたいと思っています。
その前提において、本件は、中国で素晴らしい技術を持っているスタートアップの方と巡り会えた事案となります。

ただし、本件を通じて中国国内スタートアップから当ファンドの認知を得るとともに、同国市場での投資活動の活性化に繋げたいという狙いはありますね。

ーー少し補足しておくと、自動配送ロボットにはAmazonのScoutやStarshipTechnologies、国内はZMPや楽天が中国EC大手の京東集団と共同でテスト運用を開始するなどの動きがあり、技術的にも実用化の一歩手前まできている感があります。その中で彼らがYoursを選んだ理由は「コスト」と「実運用の実績」だったそうです。

自動運転には通常、LiDARというセンサーが必要になるのですがこれは大変高額で、盗難や破損の危険性のある自動配達への利用にはハードルがあったそうです。また、規制の関係から日本国内では課題の残る実社会での運用についても、その点が寛容な中国市場での実績がプラスに働いた、というお話でした。

質問に戻ります。

自動配送はわかりやすい出資ケースですが、ここに特化するわけではないですよね

森:そうですね、あくまで最初の公表ケースだったということで、それよりも前に一件、英国ロンドン拠点のDoddle Parcel Services Ltd(以下、Doddle)との共創が始まっています。彼らが提供する「Click & Collectシステム」を導入したもので、ヤマト運輸と契約していただいた特定のECサイトで購入した商品を、お客さまの生活導線上の店舗で受け取ることができる、というものです。全国のスーパーやドラッグストアなど600店舗から申込をいただいて昨年11月から開始しています。

ECで購入した商品を宅配ではなく提携している店舗で受け取れるということですね

森:はい、特定のECサイトで商品を購入した後に、ヤマト運輸から届くメールにて受け取り店舗が選べるようになります。お客さまが受け取り店舗を選ぶと、そこに商品が届きますので、来店時に二次元バーコードを提示していただき荷物を受け取る、という流れですね。生活導線上にある店舗で受け取れることで、お客さまの利便性を拡大するだけでなく、受け取り店舗は新規顧客の集客効果や、クーポン発行による購買促進効果が見込める、といった具合です。

彼らとの共創を考えた狙いはどこにあるのでしょうか

森:消費者の生活が多様化している中で、受け取り方法も多様化させていく必要があると考えていました。Doddleの開発するプラットフォームを利用することで従来の荷物の受け取り方法を拡大させることができると考え、EC事業者向けソリューションを開発する事業部と共同で渉外を行ったのがきっかけです。

彼らとのディスカッションの中で、Doddleが市場をよく理解してソリューションを開発していることがわかり、パートナーとして日本でのサービスを一緒に開発していきたいと思い、サービスローンチに至りました。

出資と共創の両面でケーススタディをお話しいただきましたが、意思決定のプロセス、特に出資についてはどのようなフローになっていますか

森:パートナーのグローバル・ブレイン様とソーシングから投資検討まで二人三脚で行い、スタートアップ企業様の時間軸と同じスピード感で投資実行できるような設計としています。役割的には、グローバル・ブレイン様が主にファイナンス面、弊社が協業やビジネス面を検討し共同で投資検討をする形です。さらに弊社内での議論についても、社長はじめ主要役員へクイックに情報を連携できる仕組みを構築し、早期に検討結果を出せる体制をとっています。

M&Aや本体出資も選択肢として用意した上で、CVCの役割をどのように設定されましたか

森:CVCの役割は数年先の世界を変える有望なスタートアップに投資し、物流業界のデジタルトランスフォーメーションを推進する革新的な技術・ビジネス、そして熱い想いを持った「パートナー」に、ヤマトグループの経営資源、資金、協業創出の場を提供することで共に成長を目指すことが狙いです。中長期的な役割がCVCで、スタートアップの成長のために資金のみでなくヤマトグループのリソースを提供することで、共に成長できるエコシステムを構築したいと考えています。

ヤマトグループの事業には非常に裾野が広い分野が関係してくると考えているため、幅広い分野のスタートアップの方と会話をさせていただき、共に新しい運ぶを創り出すという「運創」の実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。

ありがとうございました。

ということでヤマトHDのCVC活動についてお届けしました。次回はテレビ東京コミュニケーションズの取り組みにバトンをお渡ししてお送りします。

激動の松竹と共創:コロナ禍で見えた歌舞伎のデジタル化とチャンス Vol.1

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回は歌舞伎・舞台芸術のデジタル化に向けた取り組みを推進する松竹の話題です。 感染症拡大で歌舞伎・舞台芸術に大きな影響がある中、昨年9月にLINEと提携して積極的なデジタル化の方針を打ち出したのが松竹です。「松竹DX(デジタルトラ…

松竹株式会社 船越 直人 取締役 演劇興行部門担当

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回は歌舞伎・舞台芸術のデジタル化に向けた取り組みを推進する松竹の話題です。

感染症拡大で歌舞伎・舞台芸術に大きな影響がある中、昨年9月にLINEと提携して積極的なデジタル化の方針を打ち出したのが松竹です。「松竹DX(デジタルトランスフォーメーション)コンソーシアム」を基盤に、興行のあり方や、歌舞伎俳優・タレントとの関係性、そしてコンテンツの未来を大きく変えようとする動きが活発化しています。

松竹の考えるエンターテインメントの近未来像はどのように変化するのでしょうか?

インタビューでは前半に歌舞伎を中心とした舞台芸術の今と未来について、松竹取締役として歌舞伎を中心に事業推進・製作を担当されている船越直人さんにお話しいただきます。後半では松竹が進めるデジタル化について、同じく取締役として同社のイノベーション推進を担当されている井上貴弘さんにお話を伺いました(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、文中の敬称は略させていただきます) 。

コロナで大きく動いた舞台芸術

松竹の事業共創活動についてお聞きする前に、大きな影響を受けた歌舞伎・舞台について状況を教えていただけますか

船越:松竹のみならず演劇界が受けた影響は計り知れないものがあります。野田秀樹さん等が声掛けをして、大小さまざまな興行会社、劇団、舞台製作会社など、「演劇に関わっている」という一点で二、三百ほどの会社が横に繋がった「緊急事態舞台芸術ネットワーク」という組織体も立ち上がりました。共同で何かの運動をしようというよりは、演劇現場の実態を纏めた声として、行政サイドに伝えることを目的としています。松竹はその中で、演劇の一ジャンルとして歌舞伎の現状や、劇場の運営がどうなっているのかを伝えていく役割を担っています。

どこの劇場もそうですが、すっかり客足が遠のいてしまったのが状況です。不要不急というワードが頻りに繰り返されますが、ライブエンターテイメント自体、その最たるものじゃないかと指摘されかねないムードの中で「我々の生業は不要なのだろうか?」という自問から始まりました。

素人考えで「舞台にいけないならテレビやインターネット配信で」というアイデアを思い付いてしまうのですが

船越:これまで歌舞伎は、映像として例えばテレビ中継などでお茶の間に届けられることに対して抵抗感がある俳優さんも少なくありませんでした。「生のライブを見てもらって初めてわかってもらえる、評価される。映像ではその希少価値が十分に伝わらない。」と思い込んでいる傾向は強かったかもしれません。映像として記録に残ることに賛成でない人もいましたし、ましてやインターネット配信なんて・・・夢のまた夢でした。

映像技術の進歩は必ずしも演劇にとって良いことばかりではなく、例えば4Kや8Kの時代となると、鬘と地肌の境目や、女形を務める俳優さんの髭剃り跡など、余計なものまで見えるかもしれない・・・そうなると台無しだと。

でも、結局はコロナを機に、そういう抵抗感がほぼ意味を成さなくなった。リアルのコミュニケーションを封じられる中で、演劇は本当に存在意義があるのか、日本の伝統芸術だと言われてきたが、ダイレクトな表現以外の方法を使っても評価され続けるのだろうか?と。

かなりの危機感ですね

船越:このコロナは長引くかもしれないと思い始めたのがアクセルになったと思います。去年の3月は全ての公演が中止になりましたし、折角作ったものが全く世に出ないのは本当に残念無念という俳優さんの気持ちを受けて、無料で配信という形に進みました。長らくその是非の議論が続いていた課題が、わずか数カ月で一気に前進へと転じたのです。

こういう状況であったとしても、以前の考え方を守りたいという人も一定数いらっしゃるんじゃないでしょうか
船越:ある程度いると思います。ただ、伝統的な手法を重んじる一方で、若い世代の俳優さんを中心に表現の手段の一つとして配信をうまく活用しようという流れも徐々に始まっています。リアルとデジタルのコラボレーションという意味では、中村獅童という歌舞伎俳優と、初音ミクという仮想空間上のアイドルが共演した「超歌舞伎」はその先駆けかもしれません。以前からこういうチャレンジもありましたが、コロナ禍をきっかけに一気にその模索が加速することになった感じですね。

歌舞伎のデジタル化と新たなビジネスチャンス

少し話を変えて、具体的な「歌舞伎のデジタル化」について教えてください。いろいろ手をつけるべきことがあると思うのですがどこから着手されていますか

船越:まずこれまでなかった「配信室」というものを設置して、松竹内部の体制をきちんと整えようとしています。

これまで歌舞伎はある意味「密」という空間が楽しみを生み出していました。コロナ禍が世の中を覆い、「密」ではない「疎」の空間を求められている中で、「密」で得ていたものに近い体験をいかにして届けるかが重要となると思っています。これは私見ですが、例えば舞台中継などは今までもテレビ放送やDVDという手段で提供していたわけで、インターネット・ライブ配信というチャンネルに代わっただけでは大きな変化にはならないし、魅力的な体験にはならないのではないか、というのが私の印象です。

まさに歌舞伎俳優のみなさんが懸念とされていた点ですよね

船越:例えば「超歌舞伎」は、リアルな俳優とデジタル空間のアバターが共演するという、多くの人たちがある程度予想していたことを実現したわけです。今までになかった試みですが、予想はできた。それ以外に何が衝撃的だったのかというと、生放送中に視聴者から色んなコメントが画面上にテロップ表記されるんですよね。クライマックスになると、実際の舞台で大向こう(掛け声)が掛かって拍手が鳴り止まない時のように、画面上に文字が溢れて演者が見えないほどでした。これも私見に過ぎませんが、演劇を提供する側にとって一番ショッキングだったのはむしろそっちの現象でした。俳優の顔にコメントを被せる、顔が隠れるなんてことはあってはならないことでしたし、謂わばご法度行為だったのです。

なるほど、言われれば確かに

船越:演者の顔が隠れるぐらいのコメントの洪水は視聴者の高揚感の表れであり、参加している感が体現されていて、視聴者が望んでいたのはむしろこの体験なんじゃないのかなと思いました。一方通行ではなくて、今進行している実演を共有しているという同時体験が大切なんだと思います。

私が支配人として歌舞伎座の新開場に臨んだ時、祖母、娘、孫娘の3世代で歌舞伎座に来られた方がいらっしゃったんですね。「3世代揃って歌舞伎座に行くことが夢でした」とおっしゃっていました。7、8年前ですので、車椅子に乗っておられたおばあさんは、今はもしかしたら、外出すら難しい状態かもしれない。極論ですが、もう出歩けないけど、「歌舞伎座に行くのが楽しみだった」という方にVRやARでそれに近い疑似体験を提供できれば、そういう技術進歩は4K、8Kの高精細画像よりも演劇にとっては大きな意味を持つかもしれません。

映像を配信するにしても、例えば視聴者側に視点の切り替えをする機能をお渡しすれば、劇場へ足を運んでも味わえない、配信ならではの特別な体験が可能になるかもしれません。指定席を離れ、場面によっていろんな客席に座って、違うアングルから歌舞伎を見るという、新しい需要の掘り起こしができるかもしれません。

デジタル化と一言で言っても技術は幅広いわけです。どのあたりから取り組まれるのでしょうか

船越:やはり舞台があること、アナログであることに魅力があるのは確かです。デジタルへの挑戦は大切ですが、まずは遠いものから埋めていくのが正しいと思っています。例えばチケット販売についてもデジタル化は進んでいますし、そういう利便性を上げるというところから進めるべきではないでしょうか。

弊社は昨年から「歌舞伎オンデマンド」という配信サービスをスタートさせていますが、今のところ、これは国内向けです。本来であれば、海外も含めた展開をするべきで、その需要もあると思っています。実は歌舞伎は100年近く、海外公演という歴史を紡いできた経緯があります。「KABUKI」の認知度が高いのもそういう先人たちの努力の賜物であると思っています。配信は実際の舞台へアクセスできない人へ届ける手段としては画期的ですから、海外在住のファンに届けるのは最善の使い方だなと思っています。

確かに新たなビジネスのチャンスとして海外市場への視点は面白いですね

船越:ただ、安易に歌舞伎のコンテンツをデジタル化する、という入り方をすると、本質的な価値を見失うことになりかねません。現在は直接熱量を感じてもらうことそのものがネガティブ要素になっているので、どうにもなりませんが、これでしか伝わらないものもあります。俳優をはじめとする表現者達は、その価値をまず認識し、絶対無二のものに高めること、それを体現するため技量を研ぎ澄ますことに専念しなければなりません。他で代替できない価値でなければ「不要」のカテゴリーに分類されても仕方ないのです。興行を担う人も、歌舞伎自体を作り上げる人も、何が魅力なのか、今本当に魅力的なのかを真剣に考えることが大切ですね。

(後半につづく)

コロナ禍で進んだ共創のオンライン化ーー主要4社が語る「オープンイノベーションのリアル」座談会 Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 前半では日本国内におけるオープンイノベーション、協業・共創の10年を専業プレーヤーとして現場に取り組んできたAUBA、Creww、01Booster、KDDI ∞ Laboのみなさんに振り返っていただきました。後半は2020年に世界的な社会問題となったパンデミックの影響をお聞きします。 企業と企業が結…

写真左から:eiicon company 代表/founder/中村 亜由子さん、01Booster(ゼロワンブースター)代表取締役CEO/鈴木 規文さん、Creww 代表取締役CEO/伊地知 天さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

前半では日本国内におけるオープンイノベーション、協業・共創の10年を専業プレーヤーとして現場に取り組んできたAUBA、Creww、01Booster、KDDI ∞ Laboのみなさんに振り返っていただきました。後半は2020年に世界的な社会問題となったパンデミックの影響をお聞きします。

企業と企業が結びつく際、創業者・代表者の意思疎通は何よりも大切です。コミュニケーションの基本である「対面」が奪われた時、共創の現場には何が起こったのでしょうか。オープンイノベーションの現場にもたらされたオンライン化はどのように働いたのか、各社が模索した企業共創のフレームワークや失敗談についても多いに語っていただきました。(文中太字の質問は全てMUGENLABO Magazine編集部、回答は以下の方々です・敬称略)

座談会参加者
eiicon company代表・founder/中村亜由子さん
01Booster(ゼロワンブースター)代表取締役CEO/鈴木規文さん
Creww代表取締役CEO/伊地知天さん
KDDI ∞ Labo(KDDI)/石井亮平さん

コロナ禍によるトレンドの変化

コロナ禍による影響についてお聞きしたいです。共創・協業の現場は会ってナンボ、というリアル重視でしたが、みなさんどのような対応や検討をされていますか

中村:弊社のプラットフォームはもともと地の利に関係なく企業同士が出会えるように設計されたオンラインプラットフォームであるため、コロナ禍においては活用されるケースがかなり増えましたね。イベントの相次ぐ中止で、リアルの場で出会いを担保されていた企業がオンラインに移行された結果です。面談の実現率は4月以降、コロナウイルス発生前の約1.5倍になっていて、7割の企業様が面談自体もオンラインで実施しています。
公開できるケースとしてWEB上にも多数事例を掲載していますが、例えば森創さんはオンラインでのマッチングへシフトされた一社で、パチンコ部品開発製造のノウハウから、新市場領域進出を検討しており、オンライン面談から共同開発が決定しています。

石井:私たちはこれまで実際に合わないと共創は始まらないという「リアル最強説」を唱えてきたのですが、オンラインにシフトしたことで新しい発見もありました。特に共創は決裁権を持っているキーマンの理解が大切なのですが、リアルなイベントだとどうしても時間が合わないなどで参加ができないケースがあったんですね。それがオンラインになったことで参加の敷居が低くなり、事業部への説明や協業に繋がりやすい環境ができた、というのはあります。

オンラインの課題をどう見ていますか

中村:リアルで会えないからオンラインでやるしかない、という企業の意識の変化は私も感じていますし実際、数字にも出ています。オフラインであった偶発的な出会いをどう演出するのか、という点は大切ですね。

昨年12月にバーチャルコワーキングスペース「SHABERUBA(シャベルバ)」を開始して、アイコンが近づくとオンラインで会話できるような仕組みを提供することにしました。今月開催する「Japan Open Innovation Fes(JOIF)」でも同様の偶発的な出会いを演出できるように、参加者の方々の名札アイコンに近づいて話しかけると商談できるようにしています。オンラインであってもオフライン同様の体験ができるようなイベントが理想です。

鈴木:コロナ禍で大手企業のDX化への取り組みが待ったなしで進みましたよね。2020年度のオープンイノベーション活動の大半はオンラインで行われました。ミーティング、ピッチコンテストでも、メンタリングでも、デモデイでもほとんどがオンラインでした。各社がオンラインコミュニケーションに慣れ、オンラインでもいろいろできることを認識できたということはとてもポジティブな効果だと思います。

逆にオフラインでしかできない価値も浮き彫りにしたということかと思います。細かいことですが、スタートアップとのコミュニケーションでSlack等のオンラインツールがよく使われますが、まだ使えない大手企業は多いです。このコロナ禍においてSlack等のアプリケーションが解禁される企業が増えたということも特徴です。

Crewwはオンライン化を以前から実施されていましたよね

伊地知:そうですねコロナ禍の前からCrewwが開催するアクセラレータープログラムのほとんどがオンライン上で行われていました。事業化に向けた最後のプレゼンテーションなど要所要所では対面もありましたが、基本は日本全国のスタートアップが参加するのでオンラインコミュニケーションが多かったです。ですので、プログラム自体には大きな変化ではないという印象ですが、先にもお話したように、特に地方の中堅企業からのお問い合わせが急速に増え続けています。これは、デジタル化に対する危機感という部分も大きいのかと思います。

産業創出の仕組みとケーススタディ

KDDIはインキュベーションとファンドという形でスタートし、現在は共創プラットフォームへと仕組みを進化させています。大きな産業を創出する上で重要なポイントをどう考えていますか

石井:共創を積極的に仕掛ける「∞の翼」や大手のアセットとスタートアップを繋げる「支援プログラム」などを通じてライトな協業ぐらいは仕組み化できるようになりました。しかし、新しい産業を生み出すような大きな規模の協業はやはりキーマンをしっかり繋げることが大切です。例えばJR東日本さんとKDDIで共同発表した品川開発「空間自在プロジェクト」のケースもやはり両社の中心人物が繋がった結果、実現しています。ただ、こういった重要人物は普段あまりイベントには出てこられなかったりなので、発掘することから始めないといけません。これを仕組み化して、どこまでこういったキーマンが乗ってきてくれるのか、そこが私たちの腕の見せ所なのかなと思っています。

またこれまでの反省としてマッチングして「後よろしく」、ではダメですね。確かにリソースにも限りはありますが、KDDIもしっかり入って2社間ではなく3社共創を目指すことが必要です。今年は実はKDDI ∞ Laboとして10年目のメモリアルイヤーなんです。2020年から始まった大きな危機とチャンスに溢れた中、5Gというインフラも開始しました。企業にとっては産業同士が混じり合って構造を大きく変え、デジタル化を一気に進める最後の機会だと考えていますので、一緒に挑戦したいですね。

企業をどんどん登録してデータベース型のマッチングを目指したのがAUBAだったと思います。ソーシングやマッチングはなんとかなりそうなのですが、具体的なハンズオンはどのように考えておられますか

中村:これまでに登録していただいている企業数は1.7万社で、昨年1年で5000社以上の企業さまに新規でご登録いただいています。共創が発生したケースは750件になりました。確かに継続的にコンタクトを実施される企業さんが増えていて、雪国まいたけさんのように1年以上活用いただいて共同研究に進まれる例もありますし、医療機器のファイテンさんのケースでは3カ月という短い期間に21社とコンタクトしていくつかの共創を並行進行させる、という事例もあります。

自律自走が可能なプラットフォームとして展開をしていますが、一方でハンズオンは必要だと考えています。そのため、私たちも実はしっかりハンズオンの支援をしているというのが現状です。プラットフォームユーザーに対してはオンラインでコンサルタントがつき、Enterpriseのお客様には対面も含めしっかり張り付きの形でコンサルタントがサポートしています。

プラットフォームに蓄積されてきたデータを活用しノウハウ化しており、共創のプロである自負はありますが、大手の進める事業化や社会実装については、我々単体で支援するというより、専業のプレーヤーと共にご支援させていただく方が様々な角度からの強固な支援ができるのではないかとも考えており、今後はコンソーシアム型で役割を分担できるような仕組みがあればよいのではないかと思っています。

一方のゼロワンさんはややコンサルティング的なアプローチですよね

鈴木:オープンイノベーションは社内外の壁を越えた資源の最適再配分手続きで、画一的なモデルはありません。オープンイノベーションは、比較優位性があるものだけ自社に取り込み、ないものは社外に貢献する雰囲気を推進させました。

傾向的にスタートアップは大手の販売チャネルが魅力的なのでマーケティング領域が多くなりますが、プロダクトがある場合は品質保証や仕入れのノウハウが求められる場合もありますし、人材をスタートアップに送り込む「ベンチャー留学」のような取り組みもあります。スタートアップのグロースに必要な資源をいかに特定し、社内から調達することが柔軟にできなければなりませんが、多くの大手企業はまだ試行錯誤されています。そのために、人材の交流や移動が重要で、人材の流動が進めば、資源の再配分の効率化がさらに進むと期待しています。

こういった仕組み化の結果としてのケーススタディとして特徴的な例などありますか

伊地知:技術との掛け算などは増えてきていますね。具体的な事例としては、大手企業とスタートアップが協業してウェアラブルデバイスを開発していたり、地方のネジを製造する企業がAIスタートアップと協業をした事例もあります。実際にいくつか事例もありますが、大学や企業に眠る特許などの知財をビジネス化していくハブとしてスタートアップが注目されるというのも今後は増えていくと思います。

手法については本当に増えてきたと思います。新規事業創出やオープンイノベーション活動の手段・手法としてアクセラレーターやCVCやビジネスマッチングやスタジオなどはあると思いますが、開催側のリテラシーやニーズによって何が適切な方法かというのは変わっていきます。多くの企業がイノベーション活動に本腰を入れてきているなか、必要とされる手段手法も多様化してきているというのが現状かと思います。

鈴木:アクセラレータープログラムもどれ一つとして同じ型のものはないですし、CVC、プログラマティックM&A、スタートアップスタジオ、EIR、ベンチー留学等いろいろな活動があり、これらはオープンイノベーションのパラダイムの中の手続きに過ぎません。綺麗な解はないので、最初は「型」を学び、一部の企業が自社にあったオープンイノベーションを模索し始めました。大手企業が事業ポートフォリオを変えるとき、大規模なM&Aや協業案件でなければ合理性はありません。スタートアップへのマイナー投資を繰り返しても、目的には相当遠いでしょう。ただし、一発必中で大型のM&Aや提携を成功させるのは難易度が高いので、プログラマティックなオープンイノベーション活動を繰り返し、小さな失敗から学び、体制・文化を整えたところが、結果としてイノベーション能力を高めるのは当然なことだと思います。

伊地知:地域やテーマに絞って複数の企業が参加をして開催するイノベーションプログラムのニーズは近年高まってきたと思いますし、慣れている企業ですと、自社のリソースや人材を外に出してスタートアップスタジオ型のプログラムに参画などもされています。Crewwのスタジオプログラムでは、大手企業の社員など本業がある人たちが集まりゼロイチプロダクトを作るという事をやっていて、登録者数は既に約1,700人になっています。今後は、イノベーション人材の育成という観点で、このような課外活動への参加や、大手企業からスタートアップに人を出向させるようなニーズも増えていくかと思います。

ありがとうございました

加速し始めた地方企業の共創ーー主要4社が語る「オープンイノベーションのリアル」座談会 Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 ここ10年の企業のオープンイノベーションや協業・共創環境を語る時、特徴的なポジションとして「専業プレーヤー」の存在が挙げられます。戦略コンサルティング・ファームやベンチャーキャピタルによる支援先の売却支援のような個別企業の取り組みを支援するものではなく、より幅広いプラットフォーム的な役割を担うものです…

写真左から:eiicon company 代表/founder/中村 亜由子さん、01Booster(ゼロワンブースター)代表取締役CEO/鈴木 規文さん、Creww 代表取締役CEO/伊地知 天さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

ここ10年の企業のオープンイノベーションや協業・共創環境を語る時、特徴的なポジションとして「専業プレーヤー」の存在が挙げられます。戦略コンサルティング・ファームやベンチャーキャピタルによる支援先の売却支援のような個別企業の取り組みを支援するものではなく、より幅広いプラットフォーム的な役割を担うものです。

大きくは協業・出資先を探し出すソーシングの機能を持ったデータベースと、より事業そのものにフォーカスしたハンズオンのものに分かれます。前者にはCrunchBaseやAngelListがあり、後者にはTechStarsや Y Combinatorなどが立ち上げたアクセラレーション方式がありました。特に後者はファンドでもありながら、その後のラウンドで企業との結びつきをより強くイメージした企業協賛型のプログラムが生まれており、これが日本国内でも数多く取り組まれたのはご存知の通りです。一方で主導する企業側には高度なスタートアップ投資への知識・理解、そしてなにより社内での体制が必要となり、各社が本格的に取り組みを本格化させるには数年の時間が必要でした。

このように、日本国内で新しい形でのオープンイノベーションへの取り組みが始まって10年が経過します。各社の取り組み姿勢や状況はどのように変化したのでしょうか?本稿では国内でいち早く、このオープンイノベーションに関わる専業プレーヤーとして独自の取り組みを続けた4社に集まっていただき、国内における共創の現在地について語っていただきました。(文中太字の質問は全てMUGENLABO Magazine編集部、回答は以下の方々・敬称略)

座談会参加者
eiicon company代表・founder/中村亜由子さん
01Booster(ゼロワンブースター)代表取締役CEO/鈴木規文さん
Creww代表取締役CEO/伊地知天さん
KDDI ∞ Labo(KDDI)/石井亮平さん

オープンイノベーションは10年でどう変わった

オープンイノベーション、企業協業を支援する立場で取り組んできた4社のみなさんに集まっていただきましたが、まず、この5年から10年の市場環境の変化について聞きたいと思います。KDDI ∞ Laboは2011年開始なので中でも最も古いプレーヤーになりました

石井:そうですね、KDDI ∞ Laboは今年でちょうど10年を迎えますが、開始当時はフィーチャーフォンからスマートフォンに代わるタイミングでした。いわゆる『ガラケービジネス』が崩れていくという中で、スマホのビジネスをどう作るのかという明確な課題があったんです。通信キャリアもアプリで差別化が必要と考え、新しいスタートアップと一緒に協業するのがよいだろうというのが出発点でした。ただ、これが2010年代半ばになると、アプリビジネスにおいて勝敗がはっきりしてきて、スタートアップがリアルとかIoTに主戦場を移し始めてきたんですね。

KDDIはウェブ上だけであれば送客などで力を発揮できたかもしれませんが、ビジネスが「リアル」になってくると勝手が変わってきます。そこでリアルなアセットを持つ大企業の力を借りてみんなでスタートアップとの協業・共創に挑戦しようと発展したのが、現在も続くパートナー連合の考え方です。ただ、まだまだ自主的にこういった共創活動を推進しようというのはごく一部の企業に留まっている印象はありますね。

Crewwは2012年から開始していますが傾向に変化はありますか

伊地知:2012年にオープンイノベーションプログラムの提供を開始をしてから首都圏では多数のプログラムが開催されていましたが、首都圏以外での取り組みは限定されていました。ここ数年、地方の中堅企業とスタートアップの共創がCrewwのプラットフォーム上で多数開催されるようになりましたね。総じてシード期のスタートアップと地方の中堅企業との相性は非常に良いと感じています。例えば、プロダクトがある程度検証できていてあとは拡販だという時は、スタートアップは大手企業と組むことをイメージしやすいと思います。一方で、プロトタイプを検証していくフェーズではそれほど大きな顧客基盤が必要ではありません。むしろ規模より検証までのスピードをあげることの方がプライオリティが高いケースがよくあります。

なるほど地方の中小企業にも協業や共創の考え方が広がりつつあると。AUBAは2017年から開始していますが同じような状況でしょうか

中村:私たちはあらゆる企業のオープンイノベーション実践をフツウゴト化するため、2017年に立ち上がったのですが地方の中小企業さんなどは当初、無料でも使ってもらえなかったりしましたね。オープンイノベーションって首都圏の話でしょ?という感覚はあったと思います。

ただそれが徐々に変化してきて、19年に前政権下で各自治体がイノベーション予算を使えるようになり、地域に企業を誘致・支援する機運が高まったのがひとつのきっかけになったと思います。最初はスタートアップに会える、会えないという課題感でしたが、現在は協業した上で社会実装をどうするかとか、事業化をどのようにすればよいか、といったフェーズに移っています。

伊地知:地方の中堅企業ですとオーナー社長の場合も多く、フットワークが軽いのでスピーディーに協業や検証に進むことができます。スタートアップもフェーズによって組むべき相手が本来違うはずなので、「地方中堅企業xスタートアップ」というのは本質的にWin-Winになりやすいモデルなんです。地方には技術に優れている企業も沢山いらっしゃるので技術とのコラボレーション事例というのも今後どんどん増えていくと思います。また、日本企業と海外スタートアップのようなクロスボーダーの取り組みも今後はニーズとして高まっていくと思いますので、ぜひこういった仕掛けもしていきたいですね。

具体的な事例にはどういったものがありますか

中村:例えば宮崎県の近海かつお漁業を生業とする浅野水産と大手町のAIスタートアップFACTORIUM(ファクトリアム)の事例では、漁労長の勘をAI化するという「ベテランのAI化」を目指し、水産業の高齢化に対する解決策を共創により模索されるケースがありますね。

現在は様々なセクターのデジタル化が叫ばれるようになりましたが、特に地方創生、一次産業のデジタル化やAIの活用はまだ社会実装が進んでいない状況です。一方これまでは都心部に数の多いスタートアップと地方の事業者が繋がることはほぼなかったのですが、プラットフォームができたことでAUBAの利用が進んでいる状況です。

ゼロワンブースターさんも2012年開始で多数の共創プログラムを手がけられたと思いますが、企業のオープンイノベーションに対する考え方はどのように変わったと感じられてますか

鈴木:オープンイノベーションのブームがピークを越え、結果の不透明さが浮き彫りになったことにより、社内コンセンサスを得る難易度が増しましたね。コロナ禍において、イノベーションの必要性は高まっていますが、不透明な結果に対して合理的な意思決定がしにくくなるため追加投資を慎重になっているケースが増えている印象です。

ただ、中長期的にはイノベーション活動が活発な企業の方が収益性が高いというのが統計上出ているわけで、ここに短期業績主義のジレンマがあります。ゆえにプラットフォーマーは、時間軸と企業単位の壁を超え、データや事例を示し続け、意思決定のサポートをしなければなりません。また、イノベーション活動は大抵、組織ではなく「特定の個人」の思いによりドライブされています。その「個」を援護するのも我々の役割で、弊社「イノベーション担当者コミュニティ」はご担当者を支える大変意義深い場になっています。

失敗したケース

新規事業というのは失敗の連続、特に非連続な成長を求めるパターンでは、慣れないことも多く、必然的に成功確率は下がると思います。スタートアップや他の企業との協業・共創でミスが発生するケースはどういうものがありましたか

中村:契約を結ぶ前に進むケースは危険ですね。法的な拘束力を持たない進め方、特に口約束でNDAも結ばないまま進行させる中小のケースは度々目にしました。NDAの中にNDAとは関係のない内容が入っていて、締結した後に知財をロックされた、なんていう事例もあります。特許庁がオープンイノベーションに関するガイドラインを作っているのでそういうものを参考にするとミスは減ると思います。

鈴木:そうですね、オープンイノベーションは相互の活動ですし、大手企業にも、スタートアップにも文化があります。どちらか片方の当事者のお行儀を責めてはなりません。大手企業の方が傾向的に変化への対応が鈍いのも事実です。下請けを選ぶことに慣れている会社はどうしてもスタートアップを下請け扱いし、イコールパートナーシップが成り立たないケースはありました。

大手企業の人事異動もスタートアップにとっての組みづらさに繋がります。熱量のある大手企業側の担当者が異動してしまえば、揺り戻しがきて、スタートアップへの協力姿勢は低下します。それだけであればいいのですが、大抵前任者否定的な体制になることが多いため、施策の連続性が保てないのです。そのためには、社内全体の文化や風土をオープンイノベーションマインドに変える必要があり、相当の時間がかかってでも取り組まざるを得なくなっていると思います。

伊地知:10年近くこの分野で多くの企業と一緒にやってきた結果、上手くいくパターンと上手くいかないパターンが見えてきました。上手くいっている企業はオープンイノベーションのゴールを「継続的にイノベーションを生み出せる組織づくり」とし、その過程での新規事業創出の手法(ビジネスマッチング、CVC、アクセラレーター)はあくまでゴールに行き着くまでの途中経過であると考えている場合が多いです。もちろん各社全力でそれぞれの新規事業の創出に取り組むのですが、この一連の取り組み・経験を通じて、毎年自社のイノベーションのステージが上がっていっていることを定性的・定量的にKPIとして計っていますね。

新規事業における時間軸・視点の置き方は確かに難しいですよね

伊地知:上手くいかないパターンとしては、ビジネスマッチングやアクセラレーターを単発で実施して、どれくらいの規模のビジネスが生まれたかを評価にしている場合です。これですと、いきなり大きな売上を生むビジネスが生まれない限り、翌年の継続はなかなか難しくなります。仮に初回から大きなビジネスが生まれたとしても次回以降の再現性はありませんし、ノウハウを積み上げて人や組織を進化させていく中長期の活動がオープンイノベーションの本質的な価値をつくり上げていくと思います。

実際に全くスタートアップとの関わりがなかった建築・土木分野の企業でも、アクセラレータープログラムでスタートアップとの協業を経て、出資に至り次のイノベーション創出の取り組みを探されていたりします。また、金融系企業のケースですと、最初はベンチャーキャピタルへのLP出資から始まり、スタートアップとの協業、出資、専門部署の立ち上げ、海外企業の探索、海外企業との協業・出資など4年間ほどでかなりイノベーティブな取り組みを自走されるようになっています。企業がオープンイノベーションをどのように評価するかというKPIの設定を間違えると継続性がなくなり、その設定を上手くやれば年々イノベーティブな組織になっていくという現象を何度も目の当たりにしています。

後半につづく

企業とスポーツの新しい関係を模索ーーookamiと第一生命の共創 Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディーをお届けします。 前半では、スポーツエンターテインメント事業Player!を運営するookamiと第一生命保険の取り組みについて、スタートアップサイドからこのプロジェクトの狙いをお伝えしました。後半では第一生命…

第一生命保険・イノベーション推進部の野村直矢さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディーをお届けします。

前半では、スポーツエンターテインメント事業Player!を運営するookamiと第一生命保険の取り組みについて、スタートアップサイドからこのプロジェクトの狙いをお伝えしました。後半では第一生命サイドで本プロジェクトを企画・推進する同社イノベーション推進部の野村直矢さんにお話を伺います。

同社がスポーツエンターテインメント事業に参戦する意義や目指すゴールについて語っていただきました。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答は第一生命イノベーション推進部の野村さん)

企業がスポーツチームを「応援」する課題

共創に至った経緯について教えてください

野村:実は第一生命では約1年前から、寄付機能がついたスポーツ応援プラットフォーム構築のプロジェクトが動いていました。これは本来東京オリンピック前のローンチを見据えていたのですが、コロナ禍でオリンピックも延期になりその想定が崩れた経緯があります。

なるほど、オリンピックはスポーツに注目の集まる格好のタイミングでしたよね

野村:そんな中、ステイホームを余儀なくされるアスリート自身が、YouTubeの動画投稿やクラウドファンディングを実施するトレンドが生まれましたよね。つまり自前で新たにプラットフォームを構築する意義が薄れてしまったんです。

その中で、自分たちがやろうとしていたことに近しいプラットフォームを運営するookami社と出会い、第一生命からコラボできないかと打診しました。

なぜスポーツエンターテインメント事業が持ち上がっていたのでしょうか

野村:第一生命はQOL向上や頑張る人の応援をする・寄り添うことを理念に掲げています。そこで今回は、ookami社との共創という形で「Cheerding」(Cheerdingは”Cheer up”+”Funding”をかけ合わせた造語)プロジェクトを立ち上げ、マイナースポーツのアスリートやそのファンを切り口に、動画コンテンツでスポーツのことを知ってもらいつつ、寄付機能でファンの想いを届ける仕組みを考えました。

コロナ等も影響し、スタートアップとの共創となりましたが、協業することで得られたフィードバックなどはありますか?

野村:スポーツチームやアスリートをエンタープライズが応援する形として、まず協賛金が求められる点に違和感を感じていたんです。実際、今回のプロジェクトでもフォーカスしたいスポーツ団体から「まずは協賛金を」と求められたりしました。

そこで今回は第一生命として協賛金を出すことなく、ファンと選手が想いをカタチにし、繋がれることにこだわりました。ookami社がコネクションを有する大学スポーツチームを軸に交渉し、大手企業として協賛金無しでスポーツのプロジェクトにかかわることができたことは、私たちだけではできなかったことだと思います。

協賛金ありきではなく、別の関係性を模索した

野村:はい、第一生命が保険のお客さまとしてあまり接点を持たない若い世代の反応を見ることも今回のプロジェクトの目的にありました。結果、社外の関係先や保険のお客さまからも、この「Cheerding」プロジェクトに参画したいという声がかかり、想定していたよりも影響の広がりが大きくありましたね。テレビ局からもお声がけがあり、関連する番組を放映し、番組に連動させる形でCAMPFIREのプロジェクトを展開しています。

協業によって新しい関係が見えたり、具体的な反響があるのはよいですね

野村:社内からは、このような新しい取組に関心がなさそうな部署や社員からも連絡があり、「実はこういうの好きだった」とか「寄付したよ」などポジティブな反応を多くもらいました。こうした波及の価値をしっかり分析し、若い世代に今回のプロジェクトだけでなく、第一生命のファンになってもらえるような仕掛けを両社で検討していきたいです。

「Cheerding」プロジェクトに少しでも興味を持っていただいた方には、ぜひPlayer!のwebやアプリに触れたり、テレビ番組を見たり、CAMPFIREのプロジェクトに参加したり、自分にあった方法で共感をカタチにしてもらえたら嬉しいです!

ありがとうございました