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スーパーの中に現れた、子供たちの集まるデジタルな公園とは——イトーヨーカドーとプレースホルダの挑戦

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業同士のケーススタディをお届けします。 スーパーマーケットでおもちゃを買ってもらうのが楽しみだった…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業同士のケーススタディをお届けします。

スーパーマーケットでおもちゃを買ってもらうのが楽しみだった体験は、多くの人にとって、子供の頃の懐かしい思い出です。しかし、おもちゃ売り場にも e コマースの波は押し寄せています。STEM やデジタルリテラシーの教育も求められるようになる中で、子供たちに提供するエンターテイメントのカタチや届け方も変化してきています。

全国にショッピングモールやスーパーマーケットを展開するイトーヨーカドーですが、流通・小売大手の中ではいち早くオムニチャネルの開拓に着手したセブン&アイグループの主軸企業ということもあってか、子供向けのエンターテイメントのあり方については、新しいアプローチを始めています。組んだ相手は、デジタル技術を使った次世代型テーマパーク「リトルプラネット」を運営するプレースホルダでした。

プレースホルダは2016年に設立された、プロジェクションマッピングや AR を使った体験型アトラクションを企画・開発するスタートアップです。これまでに、KDDI Open Innovation Fund のほか、TBS テレビを傘下に持つ東京放送ホールディングス、みずほキャピタル、インキュベイトファンド、映像大手 IMAGICA GROUP の OLM Ventures から資金を調達しています。

イトーヨーカドーは2021年4月、大和鶴間店(神奈川県大和市)で子供関連売り場をリニューアルし、コンセプトフロア「TOYLO PARK(トイロパーク)」を誕生させました。ここでは、プレースホルダが「リトルプラネット」で培ったノウハウを生かし、デジタルキッズパーク「TOYLO PARK powered by リトルプラネット」をおもちゃ売り場に融合させるという、新たな試みが行われています。。このプロジェクトに関わられた、イトーヨーカ堂の山幡耕司さんと、プレースホルダの鈴木匠太さんにお話を伺いました。

TOYLO PARK powered by リトルプラネット

目指したのは「公園に勝てる場」の創出

スーパーマーケットの子供向け商品と言えば、おもちゃ、ランドセル、文房具、などなどですが、e コマースの拡大に伴い、リアル店舗の商売は日に日に難しくなってきています。

物販に固執していては、マーケットから取り残されてしまう。そんな考えから、リアル店舗ならではの体験を子供たちに届けられないかと考えました。子供たちは遊ぶのが大好きですから、本来、子供関連売り場にとっての最大の競合は「公園」だと認識しています。その公園の魅力を取り入れ、公園に勝てる場を創り出すにはどうすればよいかを考え続けました。(イトーヨーカドー 山幡さん)

公園の他に、子供たちの大好きなものといえばおもちゃです。おもちゃと公園がある空間は、必然的に公園を超えるものになるはず。TOYLO PARK は、おもちゃ売り場と「リトルプラネット」を掛け合わせる形で誕生した、近未来のファミリー向けコンセプトフロアです。「モノ」だけでなく「コト」を提供することで、子供たちが体験のできる環境を用意。この体験の提供でマネタイズにも成功しています。

TOYLO PARK として、子供関連売場の面積を1.3倍拡大しましたが、それに対し売上は3倍へ伸長。オープン後は、業界関係者、特に同業者の視察が後を絶たない状態が続きました。お客様からは、「楽しい!!」「大人も楽しめる」といった声を非常に多くいただいています。(イトーヨーカドー 山幡さん)

ここで、山幡さんに聞いた興味深いエピソードをご紹介したいと思います。スーパーマーケットで親におもちゃを買ってもらった子供は、おもちゃを開封して遊びたい一心で、早く家に帰りたいと親にせがみます。一方、TOYLO PARK内のキッズパーク を体験した子供は、家に帰りたくないと言うそうです。滞留時間が延びれば、親は他の売り場で買い物を続けるかもしれません。子供が「また、TOYLO PARK へ行きたい」と言えば、その親子にとって、他のスーパーよりイトーヨーカドーに足を運ぶ、強いインセンティブになります。

共創から生まれた、「モノ(物販)」と「コト(体験)」の融合

イトーヨーカドーが TOYLO PARK の構想を具現化する中でプレースホルダが手を組むきっかけとなったのは、プレースホルダが全国8 ヶ所(2021年7月時点)に常設展開する「リトルプラネット」のキラーコンテンツ「SAND PARTY!」の存在です。「従来の公園を超える、未来の公園」を探していた山幡氏は、この AR を使った砂場を初めて紹介された時に「これだ」と確信を得たそうです。

プレースホルダは2019年から「リトルプラネット」のライセンスパートナーシップ(フランチャイズ)展開を始めており、各社と連携は経験していましたが、それらは大型ショッピングモールの中にテナントして出店する形式をとっていて、店舗の外観デザインや設計はプレースホルダが包括的に取りまとめるというものでした。

対照的に、TOYLO PARK はイトーヨーカドーが新たな事業形態を模索するコンセプトフロアで、すでに定められた空間の一部にパークとして設置するという初めてのモデルケースでした。直営パークでもライセンスパークでもない初の試みに、共創ならではの難しさと可能性を感じたと、プレースホルダの鈴木氏は昨年の出店準備を振り返ります。

TOYLO PARK のデザインやコンセプトを壊さずに、多くの関係各社とも連携しながら、リトルプラネットの魅力を来店者に伝えるという挑戦は難しいものでした。ただ、こうしたコンセプトフロアの中で自社のコンテンツを最大限に活かすという経験は滅多にできることではありません。設計やデザイン、運営面において貴重な経験になりました。(プレースホルダ 鈴木さん)

TOYLO PARK powered by リトルプラネット

プレースホルダにとっては、これまでのデジタル技術を使ったテーマパークというだけでなく、子供関連売り場の一部に併設という初めてのケースとなったことで、「コト(体験)」だけでなく「モノ(物販)」と「コト」を融合することで生まれる新たな可能性を確認することができました。物販と関連づけられることから、メーカーからの協力も得られやすくなっています。

リトルプラネットでは昨年より三菱鉛筆様に公式サポーターとなっていただき、アトラクションで使用する色鉛筆「ポンキーペンシル」の物品協賛やアトラクション内コラボなどを行っています。こうしたメーカー様を巻き込んだ施策もさらに推進していきたいと考えています。例えば、おもちゃ売り場で販売する商品を実際にリトルプラネットで試遊できるなど、新たな子ども売り場作りに取り組んでいきたいです。(プレースホルダ 鈴木さん)

今後は、おもちゃ売り場とリトルプラネットのシナジー効果を高めていきたいとのことです。新型コロナウイルスが収束すれば、本格的な集客が可能になり、TOYLO PARKのキッズパークで体験をしたエンターテイメント関連のおもちゃを購入して家に持ち帰ったり、購入したおもちゃを使ってキッズパーク内で遊べたり、リアルとバーチャルの掛け合わせで、さらなる売上伸長に期待が持てます。

「TOYLO PARK powered by リトルプラネット」は、初拠点がオープンしてまだ数ヶ月であることやコロナ禍にあることなどから、イトーヨーカドーとプレースホルダ両社にとって事業的成果を評価をするには時期尚早です。うまくいけば、この構想は横展開され、日本中のイトーヨーカドーで、子供たちが「AR 砂場」に目を輝かせ歓声をあげている姿を目にできるようになるでしょう。

編集部では引き続き共創の取り組みをお伝えしていきます。

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Give Firstを徹底して世の中の価値総量を増やすーー電通ベンチャーズの100億円ファンド

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 電通グループは4月27日に同社のCVCである電通ベンチャーズの2号ファンド組成を公表しました。運用規模は2015年4月に組成した1号ファンドと同じく100億…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

電通グループは4月27日に同社のCVCである電通ベンチャーズの2号ファンド組成を公表しました。運用規模は2015年4月に組成した1号ファンドと同じく100億円で、これまでに合計200億円を運用していることになります。1号ファンドではミドルステージ以降の海外スタートアップを中心に約40社ほどに投資されたそうですが、2号では国内にも注力し、事業共創については社内のR&D統括組織である電通イノベーションイニシアチブ(DII)と連携した活動も推進されています。これまでの投資領域では、電通グループが主力とする事業とは直接関わりが薄いバイオやヘルスケアといった飛び地への出資も目立ちましたが、2号ファンドではマーケティングやセールス、リテール、メディアやコミュニティなど、より近い領域へのフォーカスを強めるという方針に変更されています。

本記事ではこの電通ベンチャーズにてマネージングパートナーを務める笹本康太郎さんに、スタートアップ投資の活動についてお伺いしました。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答は電通ベンチャーズの笹本康太郎さん)


今年4月に新ファンドを発表されましたね

笹本:電通ベンチャーズは海外のスタートアップへの投資をメインフォーカスに、100億円のサイズで2015年に設立された電通グループのCVCです。当初から財務リターンをしっかり出しながら飛び地での事業アセット構築を狙う方針で、ヘルスケアやEdtech、Foodtechなども含む幅広い領域に投資してきました。

一方、今年の4月に組成した100億円の2号ファンドでは今後、国内への投資も積極化していく予定です。2号ファンドの当初ターゲットは、より電通グループの現業に近い領域であるマーケティング・セールステクノロジー、コマース・リテール、メディア・コンテンツ・コミュニティ、XR、バーティカルDXなどとしています。これらは今後、継続的にアップデートしていく予定です。

改めてファンドの特徴や強みを教えてください

笹本:まずやはりグローバルの強みがあります。海外有力VCとのネットワークが強く、前述した通り投資先の9割以上が海外企業である点ですね。

次に幅広い事業支援です。電通グループの幅広い事業リソースを活用したサポートが可能なので、この点はスタートアップの成長にプラスになると考えています。それと顧客ネットワークです。ポートフォリオとのオープンイノベーションに関しては、電通とだけではなく、電通グループの顧客との連携にも力を入れています。

本体投資もある中でCVCとしてのポジショニングや役割をどのように考えていますか

笹本:全体としてはファンド投資、本体出資・連携、M&A等を有機的に組み合わせてオープンイノベーションを推進する方針です。

電通ベンチャーズはグループ全体のR&D統括組織である電通イノベーションイニシアティブ(DII)で管轄していますが、DIIには多くの実績を持つ事業開発部隊や、様々な外部機関と共に最先端領域の研究を進めるインテリジェンス部隊、Dentsu Internationalとのリソース連携を推進する専門部隊などがいます。

事業支援や事業共創を多面的にサポートすることが可能なので、取り組みの先にはより本格的な事業開発や資本業務提携、あるいは電通グループによる事業投資やM&Aの可能性も見据えています。現在はこれらのプロセス間の連携精緻化を進めているところです。

ファンドとして代表的な共創のケーススタディを教えてください

笹本:LiveLikeというスポーツ観戦の没入型ファンエンゲージメントプラットフォームを開発する米国のスタートアップです。放送事業者やIPホルダーに対してVR空間でスポーツ観戦等ができるプラットフォームを提供し、ユーザー同士のインタラクションやコマース展開の機能でエンゲージメントを向上させるようなサービスを提供しています。電通ベンチャーズとして彼らの日本進出をサポートしました。

例えばスポーツ領域でのビジネスに関しては権利保有者やスポンサー等とのパートナーシップ戦略が重要になります。そのコーディネーションやプロデュースを電通グループのリソースを活用して実施しています。

また一般消費者向けのサービスなので、ローカルユーザーのインサイトに基づいたUI/UX設計もポイントになるのですが、ここも電通のプランニングチームと連携して開発サポートを手掛けました。現在はVRに限らず、モバイルデバイスでのファンエンゲージメント機能の日本展開に関しても協業を進めています。

もうひとつ、コマース関連でNarvarのケースもあります。

彼らはオンライン購入後の配送や返品にフォーカスし、顧客体験を向上させるサービスを提供しています。自社ECを展開するブランドに活用いただいており、配送業者とも連携した配達タイミングの通知やシームレスな返品対応等のサポートを通して、顧客の購入コンバージョンやLTV向上を実現しています。私たちは彼らの日本拠点設立のお手伝いをしました。日本マーケットのフィージビリティ分析やサイト構築、人材採用等において全面的にサポートし、現在も引き続きサービスの拡販及び日本向けの独自機能やサービス開発で協業を推進しています。

Narvarサービスイメージ

出資における意思決定で重要視しているのはどのようなポイントですか

笹本:戦略リターン、財務リターンの双方をしっかり見て投資検討をしています。戦略面に関しては長期的・大局的な価値創造を目標に、投資先と長期的な共創関係を築けるかがやはり重要です。領域によっては電通グループが見据える将来的なエコシステムに関する戦略仮説を持っているところもあるので、相性が重要になるケースもありますね。

財務リターンに関しては恐らく他のCVCと比較しても厳しい基準で見ていますので、取り組みを継続していくためにも必要な財務リターンをしっかり追求していく方針です。

出資プロセスはどのようなものでしょうか

笹本:海外スタートアップを対象にしていたこともあって、検討プロセスは必要に応じて最短2週間〜1カ月程度で進められるよう、機動力のある体制を組んでいます。

ただし、当然時間があれば電通グループ内の関連部署と協業ポテンシャルをより深掘りして分析ができるため検討の精度は上がりますね。その方が投資先と長期的なwin-winの関係を築けるようになることも多く、その辺りのマッチングの質とスピードのバランスを意識しながら投資検討をしています。

Give Firstを徹底し、世の中の価値の総量を増やす「Value Creation」に全力を注ぐことで、スタートアップと大企業の共創関係を進化させ、起業家がより良い未来を作り出していくことを徹底的にサポートできればと考えています。

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テレビ東京コミュニケーションズとSpotify、両社のタッグで見出すポッドキャストビジネスの未来とは

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業同士のケーススタディをお届けします。 かつて放送業界は、受信機によって市場が完全に分かれていまし…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業同士のケーススタディをお届けします。

かつて放送業界は、受信機によって市場が完全に分かれていました。そして、テレビやラジオで目や耳にした話題は、全国の職場や学校で格好のネタになっていたものです。今では、テレビ局が OTT(インターネット配信系サービス)に進出したり、ラジオ局が映像配信を手掛けてみたり、もはやメディアミックスやクロスメディアという範疇を超えて、さまざまな形で我々の日常に入り込んでくるようになりました。

これは、さまざまな下剋上が生み出される好機とも言えます。コンテンツや体験を届ける手段に制約がなくなりつつある中で、地方の小さなラジオ局が全国にファンを持つライブ番組を制作したり、OTT が地上波のゴールデンタイムを凌駕するドラマシリーズを生み出したりするようになり、ビジネスモデルやオーディエンスのターゲティングもこれまでと違ってきます。時はまさに、放送・エンタメ業界の第二創成期と見ることができるでしょう。

テレ東コミュニケーションズは、テレビ東京グループのデジタル事業を担う戦略会社です。今年4月、「ウラトウ」という音声コンテンツレーベルをスタートさせました。グループ内に既に全国ネット地上波・衛星波・OTT と、映像放送・配信というリッチメディアのフルラインナップを持ちながら、映像の無い音声コンテンツの分野に進出してきたことで注目を集めました。業界のエポックメイキング的なこの動きに、オーディオストリーミング世界最大手の Spotify は配信プラットフォームの提供という形で参加しました。

両社がどうして手を組んだのか、そして、期待する未来展望などについて、テレビ東京コミュニケーションズでウラトウのプロデューサーを務める井上陽介さんと、スポティファイジャパンでテレ東コミュニケーションズとの事業共創を含めた音声コンテンツの事業戦略を担当する西ちえこさんに話を聞きました。

テレビ東京グループが音声配信を始めた理由

ポッドキャスト番組『ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision』

テレビ東京コミュニケーションズの井上さんによれば、テレビ東京グループにとって、配信分野の事業拡大は、かねてから喫緊のテーマに上がっているそうです。そんな中、地上波でドキュメンタリー番組兼グルメ番組として人気の高い「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の企画演出を担当する上出遼平さんから井上さんに、ポッドキャスト立ち上げの提案がありました。

日々、動画配信に関する試行錯誤が生まれる中、上出ディレクターから、〝映像を捨てた〟音声コンテンツの構想を聞き、新鮮に感じました。デジタル音声広告の市場もこれから育っていくのではという期待感もあり、テレビや動画の「画面」の外にいるユーザーに向けたコミュニケーションとして事業をスタートさせました。(テレビ東京コミュニケーションズ 井上さん)

「ハイパーハードボイルドグルメリポート」は、「食べる=生きる」をコンセプトに、ギャング・兵士・難民・出所者・貧困層などの世界各地の危険な場所・危険な仕事をして生きる人物のもとへディレクターが赴いて密着取材を行う番組です。テレビ番組では、彼らがどんな食事をして生きているかを伝えていますが、ポッドキャストでは、ディレクターが食事を共にしながらインタビューします。

ポッドキャストの浸透は、ライフスタイルの違いなどから、欧米に比べ日本は少し出遅れた感はあります。しかし、今年に入って、Voicy や Radiotalk など音声系スタートアップの台頭、冷めることのない Clubhouse 人気、「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」の資金調達など、音声メディアや音声 SNS は、これまでに無かった盛り上がりを見せています。

ただ、地上波放送や OTT と違って、ポッドキャストにはまだマネタイズができそうな明確なビジネスモデルは存在しません。放送局にとって、この分野へ先陣を切って挑むのは企業にとっては投資であり、他方、制作者の眼には、放送のような時間尺や内容に制約のない、全く真っ白なところからデザインできる魅力的なキャンバスと映るのかもしれません。

ストリーミングの雄Spotifyが、放送局と組んだ理由

2021年6月に実施したSpotifyポッドキャスト戦略記者説明会のスライド

Spotify の名前を聞くと、音楽のストリーミング配信を連想します。確かに、2008年10月のサービス開始以来、長きにわたって Spotify は音楽のストリーミング配信に特化してきましたが、ポッドキャスト配信ツールの Anchor、それにポッドキャスト制作の Gimlet Media や Parcast を買収した2019年あたりから、ポッドキャスト配信に力を入れ始めました。

ポッドキャスト自体はマネタイズの方法を持っていなかった中で、Spotify はいち早くデジタル音声広告の可能性に着目しました。日本でも先月、スタートアップのオトナルが国内初となるポッドキャスト向けのデジタル音声広告のアドネットワーク(オトナル)を立ち上げるなど、ビジネスとしてポッドキャストに取り組むことができる素地が徐々に整ってきたように思います。

そんな中、Spotify が「ウラトウ」の展開でテレビ東京コミュニケーションズと組むことになったのは例外ではありません。これもまた、ポッドキャストを積極的に事業の柱にしていこうとする Spotify の世界戦略の一つであり、良質なコンテンツ供給の素地をさまざまな事業者と取り組んで作っていこうとする動きと捉えることができます。

昨年の秋に、テレビ東京が音声コンテンツを作っているとの情報をキャッチし、テレビ局が映像を使わずどんなことを実現しようとしているのか知りたくて、コンタクトをとり詳細をヒアリングしました。直接お話しをしたら、音声でしかできないストーリーテリングを、とても真剣に考えていることが伝わってきたので、ぜひご一緒したいと思いました。

Spotifyは、さまざまな分野のクリエイターと連携し、オリジナルのポッドキャスト番組を展開してきました。常に新しいパートナーとの次なる連携を模索している中で、映像が専門領域であるテレビ局と連携することで、音声コンテンツの表現の可能性の幅を広げる新しいチャレンジができるのではないかと考えました。(スポティファイジャパン 西さん)

折しも Spotify は先月末、世界各国で展開しているポッドキャストクリエイター育成プログラム「Sound Up」の日本上陸を発表しました。このプログラムは、応募者の中から選抜された10名のクリエイターに、ポッドキャスト番組に必要な機材の提供に加え、企画・制作・配信のためのトレーニングといった人的支援を行い、良質なコンテンツの発掘につなげるというものです。

放送業界には、構成作家、演出家、ディレクター、芸能人など、ポッドキャストのクリエイター候補になりそうな人材が多く存在します。彼らにポッドキャストの可能性を訴求し、彼らの創り出すポッドキャストからオーディエンスが増えれば、需要と供給の上向きのスパイラルが生まれるかもしれません。テレ東コミュニケーションズとの事例を試金石として、放送各社への横展開も可能でしょう。

共創を通じて得られたもの

プロジェクトが始まってまだ数ヶ月ですが、テレビ東京コミュニケーションズと Spotify の両社はすでに、この共創を通じて得られた成果は、当初の想定以上だったと評価しています。

ローンチしてまだ日も浅いですが、コンテンツについて SNS でリスナーの方から様々な反応をいただいたり、聴取データからも離脱率が低く、聴取時間が長い傾向があり、好評いただいているとわかりました。社外からも問い合わせをいただき、これから事業をどう展開していくべきかの気づきを得られました。またチームの中でぼんやりとイメージしていた「テレビ局ならではの音声コンテンツ」というものも言語化/具体化できつつあると感じています。(テレビ東京コミュニケーションズ 井上さん)

パートナーシップを発表した後の反応は、これまでとは別次元のものでした。「まさかテレビと組むとは」と驚きをもってコメントを送ってくださる方が多く、またさまざまな分野の方々からコンテンツ制作に関連するアプローチを直接受けることも増えました。既存IPのプロモーションとしてポッドキャストを活用することのみならず、表現方法の一つとして新たな「作品」を生み出すことを考えていただける、一種の起爆剤になったのではないかと実感しています。(スポティファイジャパン 西さん)

ポッドキャストを届けているオーディエンスからの反応だけでなく、両社共に、これまでに無かった取り合わせについて社内からも評価が高かったことを強調していました。一人のオーディエンスとしては、今回のテレビ東京コミュニケーションズと Spotify の取り組みに刺激を受けた放送業界から、バラエティに富んだポッドキャストが多数生まれてくることを願わずにはいられません。

編集部では引き続き国内の共創事例をお届けいたします。

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オープンイノベーションの現在地と可能性

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コロナ禍に端を発した社会環境の変化が新しいパラダイムへの扉を開こうとしています。ここ最近、国内スタートアップにおける幾つかの特徴的な動きがありました。 令和トラベルはシードながら22.5億円を集めた NOT A HOTELの「まだない」物件に数千人が殺到した BASEやSTORES、食べチョクなどが生産者と消費者を直接繋ぎ出した クラウドファンディングが市民権を得て、数百億円の流通を作っている ピ…

PexelsBruno Scramgnonによる写真

コロナ禍に端を発した社会環境の変化が新しいパラダイムへの扉を開こうとしています。ここ最近、国内スタートアップにおける幾つかの特徴的な動きがありました。

ピーター・ティール氏の名著「ZERO to ONE(ゼロトゥワン・君はゼロから何を生み出せるか/NHK出版)」に示されている通り、イノベーションの創出がなければ未来はありません。また彼が「ほとんどの人はグローバリゼーションが世界の未来を左右すると思っているけれど、実はテクノロジーの方がはるかに重要だ」と語るように、何もない場所からの価値・体験創出にはテクノロジーの力が必要不可欠です。

昨年5月にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構)がまとめたオープンイノベーション白書(第三版)には、国内におけるイノベーション、共創の状況が示されています。白書ではイノベーション大きく「発明牽引型、普及・発展型、21世紀型」の三類に分けており、インスタントラーメンやウォークマン、発光ダイオードやトヨタ生産方式といった「かつての日本」を支えた発明牽引型のテクノロジー・イノベーションは影を潜め、GAFAMやBATの台頭に見られるような海外勢の新たなイノベーションの創出に苦戦している様子を浮き彫りにしています。

また白書では対GDPにおける国内企業の研究・開発にかける費用や研究者の数、論文・特許数が他国に比較して高い水準にあるとしつつ、スタートアップ創出のエコシステムや、大手企業における取り組みはまだまだ改善の余地があるとしていました。

一方、ここ10年でスタートアップした企業で時価総額1,000億円以上(7月1日時点・マザーズのみ)の企業はメルカリを始めフリー、ビジョナル、弁護士ドットコム、BASE、ウェルスナビ、メドレー、ユーザベース、プレイドなど厚みが増してきています。東証一部への鞍替え上場を果たした企業も少なくありません。エコシステムの成長も着実に進んでおり、冒頭に示した通りシリアル起業家がプロダクト公開前にも関わらず20億円以上の大型調達を果たすケースも出てきています。これらは市場やタイミングもありますが、起業家・投資家の間の信頼関係が成熟してきている証拠とも言えます。

では、大手側はどうでしょうか。ここ数年、大手のイノベーション創出の仕組みとして、外部との協業・共創を狙ったオープンイノベーションの取り組みを採用する企業が徐々に増えてきています。先ほどの白書には8割近くの欧米企業が共創活動を取り入れているのに対し、国内企業も半数ほどが取り組みを開始していると回答しています。ただ、そこに対して割いている人員、予算についても欧米に比較して低い水準に留まっているので、まだ手探りの状態であることは間違いなさそうです。

共創に重要な大手の中長期ビジョン

ZERO to ONEには基礎的な考え方としての「独占」が示されており、将来生み出す価値の重要性を指摘しています。

「答えはキャッシュフローだ。こう言うと、ニューヨークタイムズは黒字でツイッターは赤字なのに変じゃないかと思うかもしれない。でも、偉大な企業かどうかは、将来のキャッシュフローを創出する能力で決まる。投資家はツイッターがこれからの一〇年間に独占利益を取り込むことができると予想し、新聞の独占は終わったと考えている」(ZERO to ONEより引用)。

もちろん大手企業も優秀な経営層が中長期のビジョンを掲げてこの将来価値を目指すわけですが、やはりイノベーションのジレンマ、組織肥大に伴うスピードの鈍化など課題を抱える場面がどうしても出てきてしまいます。そこで役立つのがスタートアップとの共創、というわけです。逆に言えば、スタートアップ側が大きなイノベーションを目指して大手と連携する場合は足元のキャッシュフローではなく、この将来価値を見据えた話をする必要がある、とも言えます。

おなじみとなったらくらくメルカリ便

例えばメルカリは創業からわずか2年後の2015年に売上ゼロの状態でヤマト運輸と業務提携を結ぶのですが、この際、当時の小泉文明さんは交渉の裏側をこのように説明していました。

「日本で勝ち切るために優先順位を考えた。フリマアプリはバリューチェーンの中にロジスティクスが含まれるので、ここを損なうと体験がよくなくなる。だから1年以上かけてヤマト運輸に提案をしていた。(中略)また、会うだけじゃダメで、私は当時のヤマト運輸の決算説明会資料を読み込んで、彼らのストラテジーをまず理解した。その上で『B2Cを増やす』という文脈があったので、それに対してメルカリがどう役に立つのかを説明したんです」(小泉さん)

あれから6年。両社の取り組みはらくらくメルカリ便などとして定着し、また、ヤマトホールディングスの2021年3月期(通期)の連結業績はYoYで6.7%の約1.7兆円、利益は108%伸長の921億円と大きく伸びています。決算資料の総括に「消費行動の変化による『全産業のEC化』に対して最適解を追求」とある通り、当時の協業提案の方向性が間違ってなかったことを示しています。

メルカリの例はスタートアップ側からのアプローチでしたが、中長期の新たな価値創造に向けて大手側も動いています。KDDIが推進する共創プラットフォーム事業「KDDI ∞ Labo」では、大手各社と連携したパートナー連合のネットワークを構築しており、各社の共創の取り組みを「#スタートアップに会いたい!」というリレー形式で公開しています。

TRIBUSで募集している社会課題

この中でリコーはスタートアップとの共創プログラム「TRIBUS(トライバス)」を通じてと新たな社会の選択肢を実装しようというメッセージを伝えています。例えば「次世代太陽電池で作る『充電のない世界』」というテーマでは、独自に開発した太陽電池に関するテクノロジーをアセットに「充電しなくてもよい生活体験」を共に創造できるスタートアップを募集していました。

複数企業が乗り合いになるオープンイノベーションでは特にビジョンやパーパス(存在意義)と時間軸が重要になります。メルカリとヤマトHDのように、テクノロジーによる全産業EC化という大義名分に向かって数年以内に「見える」結果が出せるのがベストケースと言えそうです。

大手アセットとスタートアップのテクノロジー融合

ティール氏は独占的な企業の特徴として「プロプライエタリ・テクノロジー、ネットワーク効果、規模の経済、そしてブランド」とまとめています。中でもプロプライエタリ・テクノロジーは他社と自社を差別化する大きな要因になるものです。例としてGoogleの検索アルゴリズムやPayPalの決済体験が挙げられています。

国内でプロプライエタリ・テクノロジーを共創で実現したひとつのスタートアップがIoTプラットフォームのソラコムです。モバイル通信をクラウド化するというアイデアで、創業わずか3年ながら200億円という破格の価格でKDDIグループ入りしました。そして売却するだけでなく、両社は協業を重ね、そこから3年で8万件しかなかった回線契約数を300万件にまで拡大させています。

ソラコムはグループ入りした当時、プラットフォーマーとして多種多様なキャリアと契約する必要があり、5Gの新規格となるNB-IoTへの取り組みについてまた新たな交渉を必要としていました。当時のインタビューでソラコム代表の玉川憲さんはこう言及しています。

「今後の展開でひとつハードルがあったんです。それがこれから始まるであろう5Gへの取り組みでした。現在、セルラー網とLPWAでネットワークを提供していますが、新規格となるNB-IoTへの取り組みはまた新たにキャリアと交渉が必要だったんです。自分たちがMNNOでいる限りいずれかのキャリアと契約しなければならず、これがボトルネックでした。さらにキャリアはこういった新しい規格をすぐにMVNOみたいに開放するとは限りません」(KDDI買収時の玉川さんインタビューより)。

KDDIは、IoTの回線契約数において弱かったわけではありません。当時からテレマティクスを中心に圧倒的な数字を持っていました。しかし、ライフスタイルへ通信を融合させるという将来価値を考えた際、ソラコムの世界的にも例を見ないプロプライエタリ・テクノロジーは必要不可欠だった、というわけです。

先にご紹介した「#スタートアップに会いたい!」というリレー形式のコーナーでも、大手各社は自社で共有できるアセットを紹介しています。例えば第一三共ヘルスケアグループでは、幅広い製剤研究(固形製剤、半固形製剤、液剤等)や開発ノウハウの提供をするとしていますし、日本郵便では日々蓄積されている多種多様なサプライチェーンデータや全国約18万本のポストを活用できるとしています。

これらの公開されているアセットを把握しておけば、ソラコムのように自社だけでブレイクスルーするのに時間がかかる市場を、いち早く攻略できるようになるかもしれません。

(※情報開示:BRIDGEでは一部のコンテンツについてKDDIが運営するMUGENLABO Magazineと連携し、転載掲載を実施しています)

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全てのビジネスがフィンテック化する4つのフェーズ【業界解説・クラウドリアルティ鬼頭氏】

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 全産業デジタル化の流れが不可避として認識される中、大きな構造の変化がいろいろな場所で発生しています。単なるデジタルツール・インターネットへの置き換えではなく…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

全産業デジタル化の流れが不可避として認識される中、大きな構造の変化がいろいろな場所で発生しています。単なるデジタルツール・インターネットへの置き換えではなく、業界構造自体が変わり、認識の変化に追いつけないプレーヤーは否応なく淘汰されてしまいます。

一方、デジタル化・業界構造の変化は一言で語れるほど簡単なものでないのも事実です。先人たちが築き上げた構造は堅牢なものが多く、ゲームチェンジャーたちは想像もつかない方法で攻めてくるからです。

MUGENLABO Magazine編集部では、このダイナミックな変化を業界のゲームチェンジャーたちの解説と共に紐解くシリーズを開始することにしました。初回はEmbedded Financeというワードが話題になり始めている金融業界の変化について、クラウドリアルティ代表取締役、鬼頭武嗣さんにお話しいただきます。

著名VCのAndreessen Horowitzが「Every Company Will Be a Fintech Company(あらゆる企業はフィンテック化する)」と論じたのが2019年の年末でした。あれから2年、パンデミックの影響もあり、この流れは加速しているように感じます。

では、具体的にこの構造変化はどのように起こり、そしてどうなっていくのか。鬼頭さんの解説に耳を傾けてみましょう。

MUGENLABO
鬼頭さんの原稿や最近書かれているnoteなんかもそうですが、なかなかすぐに理解はできない内容ですね。
鬼頭
確かに難しいと思います。
MUGENLABO
考えるべき要素が凄く多いからどうしても頭がこんがらがるというか。Andreessen Horowitz(a16z)があらゆるスタートアップはフィンテック企業になっていくという考え方を提唱していますが、特にBaaS(Banking as a Service)が国内でもそろそろ動きが出てきそうな感じですよね。
鬼頭
そうですね、日本でもモジュール化された金融機能をAPIで提供する企業が増えているんですが、本格的な社会実装はまさにこれからっていうところかなと思いますね。
MUGENLABO
ということで本題に入る前にちょっと前提の整理をしたいと思います。あらゆる企業がフィンテック化していくという考え方って、金融というこれまで複雑な仕組みをアンバンドリングしてそのピースをAPIで繋いでいく感じなんですよね?つまりバラバラにして提供するスタートアップが出てきたことで生まれたわけじゃないですか。誰でもAPIを叩けば金融サービスを自分たちのものとして提供できる、という。

一方でこれって従来、例えば決済代行だったりこれまでにもサービスはあったわけです。今、この提唱されている内容って以前と比較して何が違ってて、どのような未来になっていくのか、そのあたりがまだ私の中でもやもやとしているんですね。

鬼頭
やっぱり金融業界って「縦」に閉じた構造だったんです。それがここにきて金融の機能自体が「水平」に、かつ業界を超えて広がっており、やはり大きな転換点に来ているかなと思っています。
MUGENLABO
それが横に展開していく、と。なるほど、分かったような分からないような。あと、技術とは別に規制や構造のお話もありますよね。省庁から出されている規制や法令に加えて業界構造の商習慣とか。
鬼頭
そうですね、焦らずゆっくりと紐解いていきましょう。
MUGENLABO
はい。先走りました。
鬼頭
ただこの辺りを理解したい場合、金融というものを抽象化して捉えることが本質的な理解につながると思いますよ。例えば銀行って言われた時、多くの人は銀行業を営む企業としての銀行のイメージを持つと思うんです。ではその企業としての銀行はどういう機能や価値を顧客に提供しているのか、というところまで掘り下げて整理する。信用創造だったり決済、送金などですよね。金融って結局、形がない産業ですので基本的に扱っているものが概念だけだって気づくはずです。金融の様々な提供価値の本質を抽象化して理解できていると、アナロジーとして”金融”が使えるようになります。
MUGENLABO
確かに。モノはひとつもないですね。これはこれで哲学的な・・・

鬼頭
話を戻しましょう(笑。これまでの「縦」構造だった金融では、例えば銀行を例に挙げると、昔は残高確認にしろ振込みにしろユーザーが店頭まで行かなければならなかったじゃないですか。これがウェブやモバイルでできるようになった。
MUGENLABO
モバイルシフトが特に大きかったですよね。
鬼頭
これって顧客接点がユーザーに近いところに移ってきた、という変化と考えることができるんです。例えばこれまでだったら、各銀行がそれぞれ立派な店舗を構えないといけなかったのが、物理的なユーザー接点はモバイル一つで済むようになったわけです。

別の言い方をすると、これまでは顧客接点と銀行機能が一対一で対応していたものが、一つのモバイルと複数の銀行が提供する金融機能という一対Nの関係になった。これがまず金融における第一段階のアーキテクチャの変化です。

MUGENLABO
金融にとって顧客接点の変化って大きなポイントなんですね。
鬼頭
日本での象徴的な出来事としてはとしてはやはり、マネーフォワードだったりfreeeのようなフィンテック企業が登場し、銀行とのAPI連携を基に顧客接点と金融機能を分離したことが挙げられると思います。そしてこの変化を支えたのがスマートフォンというデバイスです。
MUGENLABO
確かに銀行もウェブ化はもっと前からやってましたからね。
鬼頭
そうです。スマホの普及があったからこそ変化が加速した格好です。ガラケーってあれ自体がインフラ提供者による垂直統合の思想で作られていて縦の構造だったんです。一方のスマホはインフラとアプリケーションが水平分業されている世界観なんですよね。このデバイスやソフトウェア産業のアーキテクチャが少なからず金融業界の構造変化にも影響を与えていると思っていますよ。
MUGENLABO
ということは2000年頃からじわじわと金融の構造変化、アンバンドリング化は起こってきたと。実際、フィンテックっていう言葉自体が出てきたのもその頃ですよね。

鬼頭
ごく初期のタイミングですね。その頃は銀行のみなさんが自分たちの銀行のウェブ化を推進していた頃だと思います。2007年にiPhoneが発表されて、2011年から14年ぐらいですかね、いわゆるアプリ経済圏というものが大きくなりました。初期はゲームでしたが、徐々に生活サービスに広がっていき、家計簿アプリなどが登場してくるわけです。
MUGENLABO
金融変化の第一段階では、結果として顧客接点が窓口からウェブ・スマホに移っていったんですよね。鬼頭さんのお話では、その後、サービスのAPI化が進んでいくわけですが、ここのフェーズでは何が起こったんですか。
鬼頭
まず日本の状況からお話しますね。大きな動きがあったのは去年なんですが、金融商品販売法の法改正があって、金融サービス仲介業という枠組みが創設されて2020年6月に公布されました。

これは何かというと、これまで金融業界の仲介業というのは銀行であれば銀行代理業者、証券であれば金融商品取引法における金融商品仲介業者、保険であれば保険業法における保険募集人や保険仲立人などがバラバラにあってそれぞれに規制の枠組みが存在していたんです。これがワンストップで「金融サービス仲介業」っていうライセンスにまとめられ、仲介事業者は銀行・証券・保険の全てのサービスを提供することができるようになりました。

MUGENLABO
なるほど。便利。
鬼頭
これまでの仲介業というのは金融機関の代理人というポジションでした。しかし金融サービス仲介業は逆で、ユーザーの視点に立った代理人としてのふるまいを期待されているんです。個人的にはこのポジションの変化が大きいかなと思っています。
MUGENLABO
顧客接点が銀行窓口からスマホに移り、その次にサービス提供側のポジションが事業者側から利用側に移った、という感じですね。このライセンスを持った事業者の方が増えると具体的に世界観はどのように変化するんですか。
鬼頭
そうですね、例えば今まで保険のサービスを提供していた仲介業の方々は当然保険は提供できているわけですが、同時にそのお客さんに資産運用の相談をされても積み立ての保険ぐらいしか提案できるものがなかったんです。ただ、このライセンスを持っていれば投資信託や上場株式など別のものを提案できる。これは顧客接点がユーザー側に移ったのと同じぐらい大きな変化になると考えています。
MUGENLABO
確かにこういう制度があると、各社サービスを業種またいで提供する必要が出てきますね。ユーザーはスマホアプリひとつでお金も下ろせるし株も買えるし、保険も申し込むことができると。
鬼頭
そうなんです。ここでAPIの有用性が高まるわけです。様々な金融サービスを組み合わせて提供するためにはAPIで各種金融機関と繋がることが重要になってくるんです。
MUGENLABO
確かに全部スクラッチで作っていったら大変です。既存でサービス出している事業者はAPI用意して仲介業の方に提供すれば新しいビジネスにもなりますしね。ちなみに海外ではPLAIDがこういったAPIの集合体として有名ですが、国内にはまだ各種APIを束ねるような事業者は出てきていないんですか。
鬼頭
国内はまだですね。海外ですとAPIエクスチェンジと呼ばれる、いわばマーケットプレイスのような存在もあります。海外では日本の金融庁的な機関が関わっている、公的な団体がこれらを提供するケースもあって、例えば一番有名なのはシンガポールです。ASEAN Financial Innovation Networkが現地の金融規制当局と連携してAPIエクスチェンジを提供しています。
MUGENLABO
じゃあ私がシンガポールで保険や銀行、証券なんかを混ぜたサービスを作ろうと思えば、API叩くだけでできちゃう?
鬼頭
今はまだそこまで簡単じゃないですけど(笑。提供されているサンドボックス環境で色々なAPIを試せるので、企業はそういった公開されているAPIを検証しながら自社のプロダクトに組み込むことができるようになっています。
MUGENLABO
ということはいわゆる金融外の一般的な事業者の方々で新たに金融分野に事業を広げようという方が出てきている?
鬼頭
まさに「Embedded Finance」という言葉がそれで、海外中心にどんどん出てきていますよ。

MUGENLABO
なるほど、ただ、鬼頭さんはAPI化とEmbedded Financeをフェーズとしては分けてますよね?API叩くのも、サービスを貼り付けるっていうんですかね、組み合わせるのも考え方としては同じに思えるんですが?何が違うんですか?
鬼頭
第三のフェーズですが、まさに様々な業界やユーザーのライフサイクルの中で体験があると思うのですが、その中に金融機能をサービスとして埋め込んでいく段階になります。多分一番わかりやすい例がeコマースだと思うのですが、当然、モノを買えば決済の必要が出てきますよね。そのサイトに決済の金融機能を埋め込んでいくのがよくあるパターンかなと思っています。で、この決済が終わった後です。買ったモノに少額の保険を組み合わせた体験を提供したり、例えば少し購入金額に足りない場合は少額融資の提案をする、なんてことができるようになるわけです。
MUGENLABO
なるほど、今までは買えるだけだったけど、それに加えて金融サービスが加わると購買体験も変化しますね。
鬼頭
さらにビジネス向けであれば、サプライチェーンファイナンスのような形も出てくると思います。
MUGENLABO
なるほど、これまでのものと何が異なるんですか?例えば、eコマースを提供する事業者が年間にこれだけ売上があるからお金貸しても大丈夫だろう、という与信を取ってじゃああなたには10万円は貸しますよっていうのがサプライチェーンファイナンスの例ですよね。
鬼頭
そうですね、例えば事業者を階層に分けて考えるといいかもしれません。商品のサプライヤーがメーカー、卸、コマースプラットフォーム、小売と分かれているとします。先ほどお話されたのはコマースプラットフォームと小売の間のデータでのみ与信を取っていますよね。けど、メーカーから小売までデータやサービスが繋がっている世界では、消費者が小売に支払った段階で、メーカーにまで売掛が支払われることが分かるわけです。

これまではこの一つのサプライヤー単位でしかデータを見ていなかったかもしれませんが、APIで全体が繋がった世界では、全体の商流が見えてくるようになるので、金融機関も全体像を把握しながら融資や与信判断できるようになるわけです。リアルタイムかつ広範囲にデータを取得し、それを最適化できるようになるのがこのフェーズです。マルチティアとかディープティア・サプライチェーンファイナンスと言われるものです。

MUGENLABO
金融業界がAPIを使って銀行や証券・保険といったサービスを横断して使えるようになるのが第二フェーズ。そこから非金融事業者にもその範囲が広がって、データも全体像が把握できるようになることで、与信判断など別の信用が生まれるのがその次のフェーズ。
鬼頭
ということになりますね。
MUGENLABO
さらにその先の第四フェーズっていうのがあるんですよね。もう第三で十分な気がするんですが・・・・。
鬼頭
また第四フェーズでは色合いが変わってくるんです。第三フェーズでは金融以外の取引と組み合わされることで、例えば先ほどのサプライチェーンファイナンスの与信判断のように金融取引のために使えるデータも格段に増えるのですが、その次になると手段と目的が入れ替わるんです。
MUGENLABO
???????
鬼頭
頭の使い方で混乱しますよね(笑。金融取引にデータを使うのではなく、データ取引に金融のアナロジーを使う、という世界観です。
MUGENLABO
いいですよ。続けてください(※混乱中
鬼頭
情報銀行ってご存知ですか?
MUGENLABO
うっすらと。情報を銀行のように集めて、例えば人の信用情報を異なる企業間でも「引き出して」使えるようにするという考え方ですよね。ブロックチェーンまわりで話題になっていました。
鬼頭
情報銀行ってお金を扱うわけじゃないんですが、銀行って付いていることからも分かる通り、やはり金融のアナロジーを使っているんですね。例えばフィットネスサービスがあるとします。運営する事業者の方はここに生命保険を付けることで事業の拡大が狙えるわけです。
MUGENLABO
これは第三フェーズの話ですよね。API叩けば保険が付けられる。
鬼頭
ただ販売するだけでは何をおすすめしてよいかわからないので、フィットネスですからバイタルデータを取得して活用することができますよね。
MUGENLABO
ああ、なるほど。年齢や性別などの情報も保険には必要ですもんね。
鬼頭
もしこの個人が持っているデータをどこかに預けて事業者の方が利用しやすくしたらどうなるでしょうか。
MUGENLABO
ああ、なるほど、個人に紐づいた健康情報がどこかから引き出せるのであれば、フィットネス事業に関係なく、健康状態に基づいた保険商品を販売できますね。

鬼頭
そうです。第四のフェーズでは、このように個人や企業に紐づいた色々なデータを取引しやすくするため一度、銀行のような機関に集約していくような形になると考えています。そして事業者は必要に応じてその情報を引き出すことで得られた対価を、情報銀行を通じてそのデータの権利者に還元してくことになります。これは銀行が預金者から預かったお金を企業に貸し付けて、そこから得られた金利収入で預金者に利息を支払う流れと全く同じですよね。
MUGENLABO
第三フェーズではサプライチェーンのように繋がっている人たちで相互に情報のやりとりを俯瞰できるようになっていましたが、第四フェーズでは一旦そのデータ自体をどこかに集約して必要に応じて利用できるようになるという。
鬼頭
そういうことです。金融取引のためにデータを使うのではなく、データやそれに紐づく権利などが取引される世界観というのがそれです。先ほどは間接金融のアナロジーを用いた情報銀行を例に挙げましたが、当然直接金融のアナロジーを用いたデータ取引所という考え方もありますし、デリバティブのような概念も存在します。既に海外ではデータのバリュエーションをどう行うか、といった議論もされています。
MUGENLABO
ダイナミックな変化ですね。おさらいすると、第一フェーズでは金融取引の顧客接点が金融機関から消費者に移り、1対1だったシンプルなコミュニケーションが1対Nに広がりました。消費者の利便性を高めるためにオンライン化とスマホへの顧客接点の集約が進み、複数の金融機関の口座情報が一つのスマホで確認できるようになった。その次に銀行・証券・保険といった全ての業態の金融機関の機能がそれぞれAPI化され、サービスとして使いたいモノだけを自由に組み合わせて利用できるようになった。第三フェーズでは、そうやって開放された様々な金融機能がAPIで非金融分野の様々なサービスと繋がり、生活や企業活動の中に金融が溶け込んでいく。

そして最後はこういった個々に生まれた情報が、金融商品のような取引対象として扱われ、情報銀行のような機関を通じて、必要な事業者が必要なタイミングで取得したりその対価を支払ったりするようになる、と。鬼頭さん、こういった理解って各金融機関の方々も研究されていると思うのですが、どうして日本ではAPI化、第二フェーズあたりで足踏みをしているのでしょうか。

鬼頭
金融機関のAPIによっても参照系と更新系があって、例えば参照系は口座情報の確認とかですよね。これは進んでます。ただオープンにするまでにはなかなか至っていないのが現状です。例えばマネーフォワードさんやfreeeさんのところに提供して終わり、という具合です。開放まではされていません。こうした状況を変えるには先に説明した通り、こういったAPIを相互運用性を持たせる形で束ねる存在が必要で、誰かが手を上げる必要があります。
MUGENLABO
なるほど
鬼頭
また、現実的な課題としてコストの問題があって、例えば口座の残高確認をスマホでやったとして、それにかかるシステムのコストを誰に転嫁しますか?という問題が出てくる。そうなると当然銀行側がAPIを提供してもそれに対して利用する事業者さんが手数料を上乗せしにくい。このコストの問題がやはり大きいというのは課題として聞いています。
MUGENLABO
ということで長時間に渡り、鬼頭さんにEmbedded Finance、全ての事業者がフィンテックに変わっていく4つのフェーズについて解説いただきました。ありがとうございました。
鬼頭
ありがとうございました。

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アニメ・マンガを起点にスタートアップとの共創めざす大日本印刷(DNP)

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up KDDI ∞ Laboの事業共創プログラム「∞の翼(ムゲンノツバサ) 」は、大企業2社以上で策定した事業テーマに基づき、スタートアップと共に新規事業創出を目…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

KDDI ∞ Laboの事業共創プログラム「∞の翼(ムゲンノツバサ) 」は、大企業2社以上で策定した事業テーマに基づき、スタートアップと共に新規事業創出を目指すプログラムです。2021年度は、事業の要となる MVP(Minimum Viable Product)のローンチを目指します。

本稿では、今年度の「∞の翼」に参加するパートナーの一社である大日本印刷(以降、DNP)にお話を伺いました。採択されたスタートアップ、DNP、KDDI の3社により、これまでにないアニメ・マンガIP(知的財産権)を活用した、新しい価値を提供するビジネスの創出を目指します。

 

DNP の歴史——受託、自社事業、そして共創へ

DNPは出版印刷業を祖業とする会社です。DNPの前身は、1876年に創業した秀英舎と1907年に設立した日清印刷で、1950年頃までは、出版印刷を中心とした事業を行ってきました。その後、印刷技術の応用によって事業領域を拡大する「拡印刷」を推進、印刷する対象を紙からフィルムや金属などに拡げることで、包装や建材、エレクトロニクス製品までを手がける総合印刷会社へと発展しました。さらに1970年代には印刷用の組版をコンピューターで行うCTSを導入し、そのデジタル化のノウハウがその後のICカードやネットワーク関連のビジネスで活かされました。そういった意味では、我々がデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼んでいるのに近い大きな転換を、DNPは約40年も前に経験していたことになります。

社会環境が大きく変化する今、DNPは、「P&I(印刷と情報)」の強みを活かし、さまざまなパートナーとの対話・協働を通して、将来にわたって人々や社会に価値を提供することを目指しています。2021年3月期からの3か年の中期経営計画では、イノベーションによる新たな価値創造が柱に据えられ、「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」の4つの成長領域で事業注力することが明らかになっています。また、受託事業のみならず、自社事業、そして共創事業にも取り組むことで、さまざまなパートナーの強みと自社の強みを掛け合わせ社会課題解決につながる価値を生み出そうとしています。

今回の「∞の翼」でスタートアップとの共創に手を挙げていただいたのは、DNP コンテンツコミュニケーション本部 イベント・MD推進部の皆さんです。前述した中期経営計画でも記された DNPが注力する成長領域の一つ「知とコミュニケーション」の一翼を担っています。コンテンツコミュニケーション本部の目標は、受託・自社・共創の類を問わず、コンテンツ分野に特化してコミュニケーションをサービス化し、それを事業化していくこと。その象徴的存在が、今年4月に渋谷モディに開設された「東京アニメセンター in DNP PLAZA SHIBUYA」です。

共創を象徴する場として、渋谷にオープンした東京アニメセンターin DNP PLAZA SHIBUYA

東京アニメセンターとは

東京アニメセンターが創設されたのは、2006年の秋葉原。当初は、アニメプロダクション各社が加盟する一般社団法人日本動画協会(The Association of Japanese Animations、以下:AJA)がアニメ産業の発展と情報発信の場として展開していました。DNPは2017年にAJAと提携し、東京・市谷のオープンイノベーション施設「DNP プラザ」内に「東京アニメセンター in DNP PLAZA」を開設。さらに、今年に入り、DNPはパートナーの強みを掛け合わせ、リアルとバーチャルの双方を行き来できる新しい体験価値と経済圏を創出する「XR コミュニケーション事業」を打ち出し、これを具現化する場所の一つとして東京・渋谷のモディ内に「東京アニメセンター in DNP PLAZA SHIBUYA」としてリニューアルオープンしました。

東京アニメセンターが紹介するテーマであるXRのアプリ「HoloModels」を使ったクレヨンしんちゃんのコンテンツ
©臼井儀人/双葉社 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK ©HoloModels™/©Gugenka®
引用元:https://gugenka.jp/digital/holomodels_shinchan.php

この新しい東京アニメセンターで、DNPはアニメ・マンガ・ゲーム等のコンテンツホルダーと協業し、リアルとバーチャル双方の多様な表現手法を使ってコンテンツの魅力を発信します。ここを「XRコミュニケーション事業」の基軸となる拠点として、生活者とコンテンツ・企業をつなぐ新しいコミュニケーションモデルの創出を推進しています。東京アニメセンターではコンテンツホルダーの協力を得て、企画展形式でさまざまなキャラクターとXRの融合事例を体験させてくれます。オープンを記念した初回の企画展は、「原作30周年記念展 クレヨンしんちゃん オラのミリョク新発見だゾ」を開催しました。

「リテールテイメント」を実現する DNP の自動販売機
大阪・心斎橋PARCO内のクレヨンしんちゃんオフィシャルショップ「アクションデパート心斎橋店」に設置
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK
引用元:https://www.dnp.co.jp/news/detail/10158923_1587.html

また、DNPではアニメキャラクターとコミュニケーションできる特典を提供する、小売(リテール)と娯楽(エンターテイメント)が融合した買い物体験「リテールテイメント」というコンセプトを生み出しています。この体験を実現するサービスの一つは DNPが開発した自動販売機で、情報表示用のディスプレーを搭載し、キャラクターグッズの購入時に、商品に応じた特典コンテンツの表示やキャラクターとの合成写真が撮影できます。また、購入時のディスプレーに表示された2次元コードをスマートフォン等で読み取ることで、撮影した写真が自分のスマートフォンに転送されたり、バーチャルなイベントに参加したりすることができます。

「スタートアップと共に、これまでに無かったビジネスを創造したい」

東京アニメセンターの企画展内スクリーンエリアで、スタートアップとの共創について語る DNPの渡邉氏、上田氏、モタイ氏
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

今回の「∞の翼」では、幅広な顧客基盤やソリューションを持つDNP、通信インフラやパートナー連合を有するKDDI、さらに、アニメやマンガといったIPを持つコンテンツホルダーとの関係性がある中で、スタートアップからのユニークな提案が求められます。DNPでは、展示でもない、リアルグッズでもない、イベントでもない、これまでに無かったアニメ・マンガ起点の新しいサービスの提案に期待しています。今年度の「∞の翼」の目標としてMVPのローンチが掲げられているように、上田氏はDNPとしても「東京アニメセンターを通じて生活者に実際に提供させていただき、具体的なサービスモデルのイメージが描けるような形まで、プログラムの中で推進していきたい。」と強調します。

スタートアップとは、その会社ならではの技術と我々のアセットとを組み合わせることで、MVPを作り上げていきたいと思いますが、提案いただくものは、ハードウェア、ソフトウェアを問いません。中には、ブロックチェーン、NFT、インフラとなる技術も活用できると考えます。

企業向けへの展開も、十分に可能性があります。例えば、東京アニメセンターで生活者に接客するキャラクターも、東京アニメセンターを飛び出して、小売店舗の店頭で接客することも可能です。様々な業界に対して、コンテンツを活用したコミュニケーションモデルの創出=ビジネスの発展につながると考えています。(上田氏)

DNP自らがアニメやマンガのコンテンツホルダーなわけではありませんが、彼らが強固な関係を持つコンテンツホルダーや、アニメプロダクションらに共同で事業提案などが可能であるため、スタートアップ単独では難しい事業展開のハードルをかなり下げることができます。ここからスタートアップとの共創で生まれる新たなサービスは、日本のみならず、海外のアニメファンらも魅了する可能性があります。DNPやKDDIは必要に応じて、そういった海外展開の側面支援にも対応するそうです。これまでに見たこともない、アニメ・マンガ起点の新サービス・新ビジネスの誕生に向けて、アイデアと野望に満ちたスタートアップの参加を楽しみにしたいと思います。

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まちづくりに「障害のある作家のアート」が染み出すROADCASTプロジェクト、ヘラルボニーと東急が共創

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 近年、企業活動において社会的な要請への対応がよ…

写真左から:ヘラルボニー代表取締役の松田崇弥さん、東急のフューチャー・デザイン・ラボ事業創造担当の片山幹健さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

近年、企業活動において社会的な要請への対応がより強く求められるようになりました。SDGsにまつわる環境や福祉、ダイバーシティへの理解と行動など、利益と企業価値の向上だけでは見えてこない「人間本来の権利や生活に関わる取り組み」を企業は無視することができなくなりつつあります。

一方、こういった取り組みにはアイデアが必要です。今回ご紹介するヘラルボニーと東急の共創事例は、人と社会、企業それぞれが持っている課題を和らげつつ、持続可能な取り組みとしてまとめることに成功しています。街のビルボードをアートに変える取り組みについて、ヘラルボニー代表取締役の松田崇弥さんと東急のフューチャー・デザイン・ラボ事業創造担当の片山幹健さんにその裏側をお聞きしました。

まちづくりに「障害のある作家のアート」が染み出す

街の中に溢れる屋外広告のスペースを出稿したい広告主とマッチングするプラットフォーム、それが東急の展開する「ROADCAST」です。この広告スペースに出稿がない空き期間をアートで華やかに演出しようというのが、今回の「Wall Art MUSEUM STORE」プロジェクトになります。

一方、タッグを組んだヘラルボニーは知的障害のある作家とアートライセンス契約を結び、2,000点以上のアートデータを元に事業を展開するスタートアップです。今回の共創プロジェクトでは、東急の管理する壁面広告の「空き枠」にヘラルボニーが管理するアートを配置しよう、というものでした。

もう少し具体的に説明すると、通常、壁面広告には下地となる枠があります。ここは空いている期間に何も表示されないか、空き枠募集の電話番号などが記載されることが多くなります。当然ながら見た目は悪く、空いている期間が長いと人気がないような印象を持たれてしまいます。

「Wall Art MUSEUM STORE」作品

東急や壁面広告枠を提供する不動産事業者にとっては、広告出稿がない期間も壁面を華やかに演出できると同時に、福祉への取り組みに協力することもできます。また、ヘラルボニー側も預かる作家の作品を一人でも多くの人々に届けることができるようになる、というわけです。

アイデアなのはここで作家の作品を買えるような導線を作ったことです。

QRコードを掲載してそこからオンラインストアで、アート作品をプリントしたグッズなどを購入できる仕組みなのですが、松田さんのお話では直接ここからやってくると同時に、街中でヘラルボニーの作品を知った人たちが自然とサイトに集まるようになったとされていました。片山さんはプロジェクトの狙いをこう語ります。

「売上の一部はアーティストと福祉施設に還元され、福祉分野の経済的活性化につなげます。渋谷、原宿、表参道、虎ノ門、新宿、銀座など約40箇所から開始し、今後もウォールアートを増やしていく計画です。開始から約3か月で300件ほどのQRコード読込があり、そのうち約30%が商品の購入ページに遷移しています。

ROADCASTは、屋外広告という切り口で街のちょっとした空きスペースを活用して街の価値向上につなげていく事業です。景観を害するものとして街の嫌われ者だったり、効果測定が難しくただただコストのかかる広告媒体だった屋外広告の可能性を追求し、アート展示など街の賑わい形成につながるメディアとしての整備やDX推進による効果測定の仕組み化など、街にとっても広告主にとってもWin-Winな存在を目指したいです」(片山さん)。

東急アクセラレートプログラムでの出会い

壁面アートからグッズを購入できる(ヘラルボニーのECサイト)

両社の共創は、東急が実施するアクセラレートプログラムにヘラルボニーが参加したことで始まります。

「元々ROADCASTは、落書きに悩む壁を中心に街中の数十~百箇所で広告を同時展開し、街の賑わい形成や落書き抑止という街への貢献を意識して展開をしていました。一方で殺風景な壁に戻ってしまう広告未稼働時がもったいないと感じており、持続可能な形で街や社会に貢献できる活用方法を模索していたんです。そんな折、ヘラルボニーの全日本仮囲いアートミュージアムという取り組みをお伺いし、それを発展させる形で、街をまるごとミュージアムショップにできないかというアイデアをヘラルボニーさんと話し合いました。期間限定のイベント的にアートを展示して終わりではなく、持続性のある展開としてじわじわと街中にウォールアートを増やしつつ、ウォールアートからECへと誘導して物販収益につなげているのがポイントです」(片山さん)。

街全体をアートミュージアムにしよう、という方向性はすぐに固まるものの、屋外でヘラルボニーのアートを展示すると施工コストが大きくなってしまいます。福祉という観点ではよい取り組みも持続性がなければイベントで終わります。そこで出たアイデアが壁面設置の下地パネルそのものをアート作品に変える、というものだったのです。下地パネルの製作・施工コストもそこから生まれる物販収益から回収することにしました。

「知的障害のあるアーティストとの接点はまだまだ少ないため、街を通してアート作品を掲出することで繋がりを生み出せたことには大きな意義があったと考えています。両社にとってプラスになるような仕組みを整えるのに苦戦しましたが、QRコードから売れた分の売り上げをシェアする仕組みを構築したことで、ヘラルボニーは壁面で販売し、ROADCASTさんは未利用壁面を活用できる、両者にとって持続可能な方法ができたと思います。結果、街でアート作品を発見した、というSNS投稿が見られるようになりました。壁面から弊社について検索した人など、認知度の向上に繋がっているのではと考えています」(松田さん)。

片山さんによれば、壁面を貸している物件所有者の方からも好評をいただいているそうで、こういった形で少しずつ、SDGsなどの活動に寄与できるという点も評価されているのだとか。今後は時期ごとに企画を練ってWall Art MUSEUM STOREならではのアート展示やアートを落とし込んだプロダクトの取り扱いにも挑戦したいとお話されていました。

次回も国内の共創事例をお届けいたします。

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伝統メディアを「デジタル化」させるキメラ、凸版印刷とタッグ

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 伝統的なメディア・パブリッシャーが抱える悩みの…

写真左から:凸版印刷の菅原健春氏、キメラ代表取締役の大東洋克氏、凸版印刷の内田多氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

伝統的なメディア・パブリッシャーが抱える悩みのタネはビジネスモデルです。紙をデジタルにするだけでなく、ビジネスモデル・体制からコンテンツを作る考え方、読者との向き合い、あらゆる面で従来の手法を見直さなければならないからです。この課題に取り組もうという共創が、凸版印刷とデジタルパブリッシャー支援を手がけるキメラの提携になります。2019年末には両社の資本を含めた業務提携の取り組みが公表されています。

そこで本稿では両社が手がけるパブリッシャーのデジタル化ソリューション「Ximera Ae」(キメラ・エーイー)を中心に、伝統的なメディアが抱える課題とその解決方法について両社のお話を伺いました。

デジタルメディアのグロース支援

キメラが提供するのは「読者ロイヤルティ」を中心に据えたデジタルメディア事業グロース支援事業で、各メディアが抱える複雑な課題を伴走のスタイルで解決しています。海外製ツールである記事コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat(チャートビート)」の日本総代理店としても、導入と分析ノウハウの支援でメディアと向き合っており、2019年1月以来、パブリッシャー19社・51媒体(2021年2月末時点)に向けてデジタルメディアの事業評価やグロース支援を手がけた実績を持ちます。

Ximera Aeサービスイメージ

また、こうやって積み上げたメディアへの読者エンゲージメント向上ノウハウを基に、メディアが制作するコンテンツの価値を訴求し、マネタイズするサブスクリプション管理プラットフォーム「Ximera Ae」を自社開発しています。同時に、共創・協業する凸版印刷とは、出版社などのメディア営業網を活用して「Ximera Ae」の販売連携をしています。

「キメラは『パブリッシャーの未来を共に創る』企業です。有益な情報を提供することで時代を動かし、⽂化を築いてきたパブリッシャーを深くリスペクトしています。既存のメディアビジネスが苦境にある中で、真摯にコンテンツに向き合う⽅々が報われる世界を作り、今⼀度インターネットの本来の価値を創造したいと考えています。2021年からは、初の自社開発プロダクトである、サブスクリプション管理プラットフォーム『Ximera Ae』を通じ、デジタルメディアのマネタイズ選択肢を広げていきたいです」。(大東さん)

伝統メディアの課題

これまでもパブリッシャーのデジタル化は「電子書籍」などでじわじわと進んできた経緯がありました。一方、ここ数年で一気に顕在化してきた課金・サブスクリプションモデルへの対応は、読者数を大きく稼ぐ必要のある広告モデルと相反する部分があります。また、考えるべきポイントも流入経路から読者ロイヤリティなど多岐に渡るため、パブリッシャーが抱える課題や悩みは更に複雑さを増します。大東さんは現状をこう分析します。

「Yahoo!ニュースやSmartNewsなどのニュースプラットフォーム、TwitterやFacebookといったソーシャルメディア、はたまたnoteなどの個人によるコンテンツ発信モデルの台頭により、『マスメディア』と呼ばれていた新聞、雑誌、テレビが、インターネットを通じたコンテンツ発信および読者とのコミュニケーションにおいて、相対的に強みが発揮できない状況になりつつあります。

一方、コンテンツの発信手法や形態の多様化により、ユーザーが視聴・閲読できるコンテンツが膨大になっている状況下では、デジタルメディアは、ページビュー数に依存した広告収益(視聴・閲読は無料)モデルのみでは、従来のアナログの事業形態時の収益を補完・置換できる規模・成長性を見込むことが難しくなっているのも事実です」。(大東さん)

凸版印刷とキメラが特に注目しているのが、大手・中堅の伝統的なメディア企業だそうです。

特にビジネスモデルに直結するテーマでもあることから信頼関係は重要で、その点で凸版印刷の持つ関係性は大手出版社などとの取り組みをする上で大きくプラスに働いているというお話でした。一方、凸版印刷の菅原さんと内田さんはこういった提案先に対し、不足するSaaSプロダクトの営業ノウハウをキメラと協力して補完したことも明かしてくれました。

顧客とのすり合わせを重ねてソリューションを提供する受注産業・営業スタイルの凸版印刷内では、キメラのSaaS型プロダクトの営業経験・ノウハウが不足しており、キメラと凸版印刷、パブリッシャーの3者連携の実現・成果創出に結びつけることができなかったんです。そこでキメラチームの協力を得ながら、凸版印刷内でのセールスファネルの勉強会やヒアリングシートの整備・更新、受け渡し基準の明確化などを積み重ね、改善しながら連携していってます。

「パブリッシャーは、サブスクリプションモデルの構築に際し、技術的な開発仕様の検討で手一杯になり、サブスクリプションの事業計画や運用体制構築まで手が回らない状況も多くなりがちです。こうした問題に対して構造的な課題抽出と解決を実現し、メディアの本分としての価値ある情報発信に集中しやすい環境づくりが可能、とお伝えするようにしていますね」。(菅原さん・内田さん)

印刷を中心に出版社などのメディア企業と長らく関係を構築してきたのが凸版印刷です。エコシステム全体を考えた際、パブリッシャーのビジネスモデル、デジタル化を推進することは業界全体の下支えになるのは間違いありません。

両社は以前、本メディアでも取材したトッパンCVCのチームのアプローチをきっかけに協業・資本提携の話が始まったそうです。事業部等で協業検討を進め、黒子のようにメディアグロースを支えるという方向性が一致したことでその後の協業が加速したというお話でした。

次回も国内の共創事例をお届けいたします。

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店舗とサイト「間」の購買体験を探せーーアイスタイルとKDDI「@cosme TOKYO -virtual store-」での共創

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up KDDIとアイスタイルは1月8日から、XRを活用…

写真左から:KDDI 藤倉皓平と下桐希、コスメネクスト(Flagship store事業部/@cosmeTOKYO)坂井亮介氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

KDDIとアイスタイルは1月8日から、XRを活用したバーチャル店舗「@cosme TOKYO -virtual store-」を提供開始しています。利用者はスマートフォン向けアプリ「au XR Door」内に設置された店舗へ仮想的に来店し、化粧品ブランドの購買体験を楽しめるというものです。

このバーチャル店舗では、花王の化粧品ブランド「KANEBO」「KATE」「SOFINA iP」の商品が販売されるほか、バーチャル空間で仮想的に商品を手に取ってテスターを利用したり、8K(5G推奨)の高画質できめ細やかに表現された店舗の内観や商品の色彩によって、実際に来店したような体験が可能になっています。KDDIとアイスタイルは今回のバーチャル店舗での取り組みを通じ、先端技術を活用したビジネスモデルの共同創出も狙うとしています。

アイスタイルでは2020年1月にJR原宿駅前に体験型のフラッグシップショップ「@cosme TOKYO」をオープンさせており、600ブランド2万アイテムを展開していました。両社は感染症拡大をきっかけにEC利用が拡大するなか、この店舗でのワクワクするような体験とXR・5Gを活用した完全非接触の購買を融合させた取り組みとして、今回のバーチャル店舗を開始しています。

本稿ではKDDI・アイスタイルの両社でこの共創案件を担当したアイスタイル坂井氏、KDDI下桐氏、藤倉氏のお二人に話を伺いました(文中の太字の質問は全てMUGENLABO Magazine編集部)。

スマホのみ「没入体験」への挑戦

バーチャル店舗「@cosme TOKYO -virtual store-」においてユーザーは「au XR Door」アプリを立ち上げてスマホをかざすと、360°画像としてバーチャル店舗を歩き回ることが可能になります。

また、商品棚の前で手に取った商品をタップすると@cosmeの公式通販「@cosme SHOPPING」へ遷移し、商品購入ができます。行きたい場所についてはフロアマップから直接移動することも可能で、花王の商品の一部については各ブランド棚や店舗内1Fに設置されたテスターバーにて、テスターを使ったような体験ができるようになっています。

KDDIは今回の協業で5G・XR技術の提供を実施し、アイスタイルは「@cosme TOKYO」で得たリモート接客などのノウハウや@cosmeとのクチコミデータベースとの連携を担う、という分担になっています。

スマホのみで没入体験を目指したバーチャル店舗(@cosmeブログより)

今回のバーチャル店舗設置の狙いについて教えてください

坂井:2020年1月にJR原宿駅前にオープンした新体験フラッグシップショップ「@cosme TOKYO」ではワクワクする空間やランキング売り場、手書きのポップ、カウンセリングなど店舗でしか体験できないお買い物の楽しさをお届けしており、600ブランド2万アイテム以上の幅広い品ぞろえとさまざまな楽しい仕掛けを用意しました。

今回の取り組みには『購買体験』をどうアップデートしていくのかというテーマがあります。これは@cosme視点ではあるのですが、「@cosme TOKYO」のような店舗によるリアル購買とeコマースによるオンライン購買があった時、この中間にあるような体験を作れないか、というのが狙いのひとつです。

なるほど「店舗とコマースの中間」の体験は新しい視点ですね

坂井:仮想空間に入るとワクワクしたようなコンテンツが溢れていて体験もできる。買いたい場合は買える。これは2次元のeコマースだけではなかなか表現しきれない部分です。一方、来店には物理的な移動や接触がハードルです。これをスマートフォンひとつで実現しようという、本当の最初の一歩がau XR Doorの取り組みなんです。

実際に使ってみると没入っぽい体験でありながらスマートフォンのみで利用できるので、手軽な反面、スペースを必要とするなど戸惑いもありました

KDDI:実は今回、「@cosme TOKYO -virtual store-」に使ったアプリ「au XR Door」はそもそもVRヘッドセットを利用してXRサービスを企画・開発しているチームが新たに提案したものなんです。

VRヘッドセットは特に女性が着用する際、髪型が崩れるなどの運用面の課題がありました。また、機材も必要になるので、一人で体験するにはややハードルが高かったんです。そこで没入体験でありながらスマートフォンだけでそれを実現できないか、そう考えた結果があの「どこでもドア」体験だったんです。実際に利用データを見てみると、仮想店舗に来店した人はポップをズームで見ていたりと実際の来店と同様のアプローチが優先される、ということが徐々に見えてきています。

一方、課題があることも認識していて、例えば歩き回るスペースがない場合にどうするのかとか、ユーザーからの定性的なフィードバックや、実際のデータから見えてくる「つまづき」を参考に今後のアップデートを議論しているところです。

まだ始まったばかりですが、この新しい購買体験のヒントは見えてきましたか?

坂井:コスメって本当に多くの種類があるので、それらを自宅にいながらにしていくつも試せる、例えば自分の顔に合った商品を見つける、といったこともできるようになるかもしれません。こういった魅力的なブランドとの出会いの方法をアップデートできるんじゃないかと考えています。

データの活用についてはいかがでしょう。来店した人の属性データなどから多様な商品のおすすめをする、といった流れは想像できそうです

坂井:データをAIで読み解いたりそれをマッチングに使うことはeコマースでも可能です。どちらかというと、それ以上にヒューマンタッチが重要で、つまり接客ですね。お客さんの肌にあったパーソナライズされた提案活動、これが化粧品には大切なんです。ここについてはもちろんテクノロジーも使いますが、オンラインカウンセリングのような人の力を組み合わせた、テックタッチ・ヒューマンタッチを融合させた空間づくりには挑戦していきます。

スマホのみで没入体験を目指したバーチャル店舗(@cosmeブログより)

少し話を変えて、コロナの影響と実際の利用ユーザーからの反応についても教えてください

KDDI:そもそもKDDIでは新型コロナウイルス感染症の影響で売上に悩んでいる化粧品メーカーや小売に対して、リアル店舗やECとは異なる新たな販路として、実店舗のVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)を再現し、在庫がなくても店舗体験をユーザーに提供できる低コストのバーチャルストアを企画していました。特にテスターを試すのが憚られる中、手に取ったかのような体験ができる機能やARのメイクアップ機能は実物がなくても商品確認ができる、という点で非常に重要と考えています。

坂井:これはコロナ感染拡大の以前からですが、小売りのDXや店舗体験の可視化・価値化はテーマにありました。やはり化粧品はリアル店舗にお越しいただいてから始まるUXが多かったんです。そうこうしている内に感染症が拡大し、店舗としての魅力である「巡ること=出会うこと」「試すこと=手にとること」「相談すること」ができなくなってしまったんですね。

なるほど

坂井:今回のケースでは、こういった本来提供できるUXの価値が下がっている状況をバーチャル体験で補う、というのが目標にありました。そこでオンライン/バーチャル上での出会いの場である店舗を立ち上げ、店舗やオンライン上から仮想的に商品を手に取ったり、テスターを使ったような体験と「公式通販」から商品の購入ができる、というところまで用意した、というのがここまでの取り組みですね。

協業のスピード感はどのような流れだったのでしょうか

坂井:とあるメーカーさんにお繋ぎいただいたのがキッカケです。目指す方向やイメージはお互いすぐにリンクしていたと思っておりまして、この仲間たちなら絶対に新しい価値が見出せると思ったことを覚えています。実施に至るまでのハードルは時間と環境ですかね。

KDDI:私たちもオンラインとオフラインを融合させた顧客体験をXR Doorを通じて実現できると感じたため、ご紹介いただいた後、KDDI側からも協業をお願いしました。

坂井:ただ、とにかく時間もなくて、9月中旬に初めてKDDIさんとお会いしてから4社を跨ぐ横断プロジェクトが生まれ、毎週のように打ち合わせを重ね、12月にはデモを出すというところまでもっていったのは素晴らしいスピード感でしたね。今回はずっとコロナ感染拡大との闘いでもあり、本当はお披露目を@cosmeTOKYO1周年のリアルイベントでさせていただきたかったですが、緊急事態宣言により延期となったのは心残りです。

反響はいかがですか

坂井:リアルな店舗とECのオムニチャネル化・OMOという発想自体はお持ちの人が多いですが、我々は店舗”体験”のオンライン化にこだわりました。また他企業がすでに展開しているブラウザ用の表面的なバーチャルサイトではまだまだ表現が難しいです。その点において、将来を見越したチャレンジであり「らしさ」があると化粧品業界の関係者から注目をいただいています。

KDDI:@cosmeブログでは「@cosme TOKYO -virtual store-」の記事が約50万閲覧を超え、XR Doorの新規ユーザー数も増えています。多くのユーザーにバーチャルストアの可能性を感じていただけているのではないかと思う一方、緊急事態宣言が発令された結果、リアル店舗と連携した取り組みがまだ実現できていないのが課題です。この件についてはアフターコロナに向けて準備しております。

ありがとうございました

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エンターテインメント領域で新たな産業創出をーーテレビ東京コミュニケーションズの投資活動

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けしたヤマトHDのスタートアップ投資に続いてお届けするのは、テレビ東京コミュニケーションズのスタートアップ投資活動です。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! S…

テレビ東京コミュニケーションズ メディア事業開発本部 ビジネスデザイン部 遠藤哲也氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けしたヤマトHDのスタートアップ投資に続いてお届けするのは、テレビ東京コミュニケーションズのスタートアップ投資活動です。

テレビ東京のグループはテレビ東京ホールディングスをトップに、中核となる地上波とBS放送のテレビ東京とBSテレビ東京、テレビ通販やEC、コンテンツなどの周辺事業を手がける連結子会社12社、そしてコミュニケーション領域として動画配信事業などを手がけるテレビ東京コミュニケーションズが集まって構成されています。

テレビ東京ホールディングスが昨年に公表した中期経営計画では、コロナ禍における厳しい広告収入を前提としており、放送収益の落ち込みを最小限に抑えつつ、アニメ・コンテンツ事業やイベント、通販といった放送外・周辺領域の事業展開を強化するとしています。

本記事ではその中にあってクロスメディアや動画配信、IP事業などを手がけるテレビ東京コミュニケーションズが窓口となって推進する、スタートアップ投資の活動についてお伺いしました。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答はテレビ東京コミュニケーションズBusiness Producerの遠藤哲也さん)

事業本体からの投資活動ということですが、どのようなフォーカスで出資されていますか
遠藤:スタートアップとの事業シナジーを目的に出資をはじめました。投資領域は日本国内オンリーで、エンターテインメント領域に出資をしております。CVC形態ではなくプリンシパル投資のみです。出資した企業との事業連携により、実益をスタートアップと創出できるよう意識しております。出資後、すぐに現場に実装できるよう、密なコミュニケーションを取らせて頂き、各部署にスタートアップサービスの紹介、連携推進をしております。またメディア戦略や事業戦略のアドバイスも行っており、積極的な企業グロースのバックアップをさせて頂いております。

かなり明確な投資方針でわかりやすいですね。具体的なケーススタディはどのようなものがありますか
遠藤:出資先のZeppyとはデジタル経済番組の共同制作を実施しています。Zeppyは投資領域に特化したYouTubeコンテンツ制作を手がけていて、「投資をもっと普通のことに」をミッションに、投資の大衆化を目指し活動している企業です。株式投資専門チャンネルとしては国内最大級で、このZeppyに所属するYouTuberと連携することで、幅広い属性の個人投資家やYouTubeを日常的に視聴する一般層へのリーチを目的とした取り組みをしています。

また、同様に出資先のSEPALとは保有IPを活用したグッズ販売を実施しています。LINEと連動したECシステムで、若年層へシームレスなグッズセールスを目的とした取り組みです。彼らのECサービス「Live self order」はイベント事業者を中心に一気に活用が広がっています。

マーケットを変革するためにも、スタートアップは文字通りスタートしたら「アップ」し続けるべきだと思っています。世の中のニーズを捉え、経済の牽引役となる新たな産業を創出するべきです。私自身、スタートアップでマーケットへチャレンジしてきた経験もあり、現職でもそういった果敢にチャレンジするスタートアップを本気でバックアップしたいと思っています。

具体的な出資のポリシーや意思決定のフローはどのようになっていますか
遠藤:マイノリティ出資、リードを取ってのマジョリティ出資など、出資先企業毎に違います。出資時の重要な判断軸は、(1)経営者、(2)事業シナジー含めてのマーケットの成長性、(3)優位性です。

初面談から出資までのスケジュールとして、おおよそ3〜4カ月は頂いております。現場担当がスタートアップと面談し、その後、私に案件の報告があります。マーケットとビジネスモデルが弊社の事業拡張領域とフィットするのであれば、私の方で改めて面談のお時間を頂いております。更にビジネスゲインやキャピタルゲイン、共に見込めるようであればDD(デューデリジェンス)に進んで出資計画書を作成します。その後、役員に提案して細かい部分でのフィードバック、最終チェックを経て出資委員会での決議、出資という流れになります。

新たなアイデアや技術、ビジネスモデルに挑戦する方々と一緒に共創し、新たな産業創出にチャレンジしていきたいですね。

ありがとうございました。
ということでテレビ東京コミュニケーションズのスタートアップ投資活動についてお届けしました。次回もお楽しみに。

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