BRIDGE

タグ KDDI ∞ Labo

オープンイノベーションにおける「体験」の作り方ーービービット・藤井氏 Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 前半のインタビューでは行動データに基づいた消費者の状況を細かく把握・仮説を立てることで新たなビジネス、製品のチャンスを伺う「バリュージャーニー」の考え方について伺いました。後半ではいよいよこの考え方を共創・オープンイノベーションにどう活用すべきかお話いただきます。複数のカルチャーが相乗りする企業同士の…

ビービット 東アジア営業責任者の藤井保文氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

前半のインタビューでは行動データに基づいた消費者の状況を細かく把握・仮説を立てることで新たなビジネス、製品のチャンスを伺う「バリュージャーニー」の考え方について伺いました。後半ではいよいよこの考え方を共創・オープンイノベーションにどう活用すべきかお話いただきます。複数のカルチャーが相乗りする企業同士の協業・共創でいかにしてひとつの体験、提供価値を生み出すことができるのでしょうか。(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、回答はビービット東アジア営業責任者、藤井保文さん。文中敬称略)

話を変えて。藤井さんは企業単位で新たな体験を生み出すロジックを説かれているわけですが、オープンイノベーションという文脈で、様々なカルチャーが混在する複数の企業が共同で一つの体験を生み出すことについて、どのような視点が必要だと思われますか

藤井:デジタル世界の理解を本当に全員が同じレベルで同じように見ている必要があるかというと、僕はそうではないかもなと思っています。例えば書籍にも記載した丸井さんの話が面白いです。丸井さんはデジタル社会に対応してはいるものの、必ずしもデジタルトランスフォーメーションを中心においていないんです。

昨今、デジタルネイティブなD2Cブランドがたくさん増えていますが、彼らは大きくなっていけばいくほど、ポップアップストアや実店舗を構えようとする傾向があるんです。このようなケースが生まれれば生まれるほど各社は同じような課題を抱えるようになる。

ではそこもターゲティングしておいて「リアル店舗プラットフォーム」というポジションを取りましょうとされてるのが丸井さんなんです。

デジタル化を旗振りして集まれ!とやるのではなく課題を先読みして待っている

藤井:いつかはデジタルネイティブ組がオフラインに進出したくなるだろう、という考え方は非常に戦略的なポジショニングだと思っています。

ですので、決して自社がデジタルに強くなっている訳ではないが「デジタル前提の世の中」に各社がどう対応するかを考えておき、かつ、そこと隣接するような状況を取りたいと考えているプレーヤーたちと手を組むのが一番シナジーが生まれるのではないかなと思っています。

自社アセットの強みを理解している企業には無理にパートナーを集めなくても集まってくる状況がありますが、もしかしたらそのあたりがポイントなのかもしれませんね

藤井:逆に言うと、この隣接する状況みたいなものを捉えずに「何か大きいからとりあえず組もう」みたいな形になってしまうと難しいですよね。事業化やコラボレーションの形を作るのが難しかったり、逆にユーザーに使われなかったり、みたいなことが発生する。

共創プロジェクトの旗振り役、担当者像ってどうあるべきですか

藤井:やはり軸の強さ、思いの強さは重要ですよね。とはいえ、大企業の中でイントレプレナーみたいに活動するのであれば、上司はやはり権限移譲しないといけないし、加えて部下も説明責任をちゃんと果たさないといけません。

例えば新規事業の話をしていて「上が理解してくれないですよね」みたいなのがあるんですけど、実際にどのような説明したのかを聞いてみると「いや、もうちょっと頑張ろうよ」みたいなケースが多いです。

どういうビジネスモデルになり得るとか、1年単位での収益性の話をしているのに、やろうとしていることは利益関係なく投資金を燃やして突き進むユニコーン企業が競合になるようなものだったりするとやはりおかしいですよね。また、やる上で企業全体のシナジーとして作っていくのかといった説明を追求せずに、何かこう「このままでは駄目だ」という話しかしないというのでは話は進みませんよね。

ただ、新規事業のロジックってあるようでなかなか難しい。結果的に打席に立った数勝負みたいなところもあります

藤井:それで言うと丸井さんが数年前に「信用の共創」というコア・バリューを作られたんですが、このプロセスがひとつ興味深いエピソードになるかもしれません。

『「信用の共創」とは、創業者の言葉「信用は私たちがお客さまに与えるものではなく、お客さまと共につくるもの」に由来するもので、丸井グループの創業の精神の一つです。創業時の商売は家具の月賦販売でした。当時高額だった家具を幅広いお客さまにご購入いただけるよう、当社が購入代金を一時お貸しして、それを月々の分割払いで返済していただくというものです。現金商売のように一期一会で売ったら縁が切れてしまうという関係ではなく、売った後も、10回、12回、24回払いなど、お客さまとお店とのお付き合いが長く続きます。

お支払いの遅れがなければ、ご利用可能金額が増え、ご利用期間が長くなるほどお客さまの信用はだんだんと上がっていきます。こうしたお客さまとのかかわりの中で、「信用はお客さまと共につくるもの」という精神が生まれてきました。このように私たちは、お客さまの年収や職業、資産の有無などに応じて一方的に信用を与えるのではなく、ご利用実績を通じてお客さまと双方向で信用を共に創っていく、つまり「信用の共創」を積み重ねてきたのです』(丸井グループ「玉ねぎの芯」より抜粋)

丸井さんは一時期、経営が危なくなった時、創業当時まで系譜を辿ってその時からあった価値を見直されているんです。大手って過去の成功体験があるじゃないですか。それは明らかにその時代にマッチしたから成功した訳ですよね。

過去に答えがあるケースですね

藤井:でも、今の最新の環境変化から見るとその価値がなくなっているケースもある。書籍でスターバックスのケースをお伝えしてますが、あのようなリアルのサードプレイスはデリバリー前提の社会では成立しづらくなります。だからと言って本来の価値を見出さずに新しいことをやっても、もうそれは違う企業になっちゃうので意味がないですよね。

つまり、「その価値は何だったのか」という問い直しはすごく重要なんです。この不変の価値みたいなものを時代に合わせて再定義する、という行為は結果的に強い軸になり得るし、強いスタートアップの誰と組めばよいか、どのようなシナジーが生まれてくるのかが自然と見えてくることになると思うのです。

もう一点、中国企業との協業について意見をください。BATに代表される中国テック巨人の躍進や、米中摩擦における市場の分断、中国版NASDAQと言われる「STAR Market(科創板)」の開始など、中国との協業を検討する機会はさらに増えてくると予想されます。藤井さんは著書「アフターデジタル(1・2)」で多くの中国企業について触れられていますが、協業・共創における文化的な違いなど含め、どのような視点が必要か教えていただけますか

藤井:確かに中国企業は貢献した人を潰すということをあまり考えない、ファミリー性を強く持っているのが特徴です。うちのファミリーに入るなら優遇します、コラボレーションのあり方も「トップと下の人たち」という経済圏内に限られるという傾向はありますね。大きくはAlibabaなのかTencentなのかのような陣営争いです。だから経済圏やどっち陣営なのかを把握しておくことはすごく重要です。

このあたりは日本の財閥系企業の繋がりとも通じるところですね

藤井:例えば中国市場で某飲料メーカーさんがAlibaba系列のモールに出店するとなったんです。期間限定ですよ。そこの提携発表会の会場に行ったんですが、Alibabaの方は「これは結婚です」って言うわけです。裏切ったらどうなるか分かってますか、の裏返しですよね(笑。中国企業とのお付き合いというのは婚姻関係に例えられるというのが実情です。

一歩踏み込んでますね

藤井:それと重要なのが早さで、日本企業が仮に中国企業とコラボレーションしようとすると、すごく上の方のレイヤーでの会話を「明後日までに」とサラッと言われたりする。そんなの絶対予定埋まってるじゃないですか(笑。

でも、当たり前のようにこれに対応できないと中国から切り離されてしまう。確かに大変ですけど逆に言えば、これに追い付きながら中国でテストマーケティングしていくようなことができると、単純な事業としてのコラボレーションだけでなく、企業としての世界レベルでの強さ、早さを手に入れることもできますよね。

新たな産業を生み出す力としての中国の現状をどのように見られていますか

藤井:中国が得意なのは限りなく「C」に近い「B」の部分です。

14億人いる中国なので、やはりC向けのビジネスが非常に強く、Alipayのような二面市場(消費者と事業者双方にサービス提供しているもの)を見ても、限りなくCに近いBの部分にアプローチしている点は、日本にはない知見が多く存在しています。

消費者向けの場合は行動データをベースに信用スコアを出して、どれぐらい貸し出せるかがわかるので金融とも繋がりやすい。そしてここには多くの事例があって特に新興国向けのビジネスとしてはこちらが得意です。

ビジネス向けの市場で注目している動向はありますか

藤井:感染症拡大でリモート前提になった時期、AlibabaやTencent、BytedanceからBusiness suiteが出て三つ巴で市場に浸透していったんです。SlackやZoom、Googleドライブ、Salesforceなどなど何でも入ってます。さらにコピー機の貸出みたいなこともセットでやってるケースもあって、かなり広範囲なワンストップ提供を始めてるんです。これがもっと多くの企業に導入され始めると、そこを基盤にまた新しい事業が生まれるかもしれないね、という話はしています。

逆に中国企業は日本をどう見ているのでしょうか

藤井:中国ではテクノロジーテンプレートみたいなのはどんどん出てくるんですが、一方でコンセプトを作るみたいな能力がやや薄い面はありますよね。ユニークネスみたいなところがあまり出てこないので、そこの意味では日本が重宝されています。例えば建物のコンセプトを作る場合、日本人の建築家は注目され続けています。

テクノロジーの分野ではドイツを一番メインに見てるって感じですね。工業的な意味合いだと車などは一日の長があるので、ドイツと比べても勝負できている。だから例えば車の中でどんな体験をするかっていうコラボレーションは可能性があるかもしれません。また、日本のことを長寿大国だと思っているので、領域的に高齢化社会に向けた医療や介護に関しては日本の知見が欲しいというのはありそうです。

長時間ありがとうございました。

共創を成功に導く「バリュージャーニー」とはーービービット・藤井氏 Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回はアフターデジタルの共同著者で、昨年7月にその第二弾となる「アフターデジタル2・UXと自由(日経BP)」を出版されたビービット東アジア営業責任者の藤井保文さんにお話を伺います。 人々の消費行動がより複雑になる現代、企業にはどの…

ビービット 東アジア営業責任者の藤井保文氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

日本の共創・オープンイノベーションに関わるキーマンの言葉を紡ぐシリーズ、今回はアフターデジタルの共同著者で、昨年7月にその第二弾となる「アフターデジタル2・UXと自由(日経BP)」を出版されたビービット東アジア営業責任者の藤井保文さんにお話を伺います。

人々の消費行動がより複雑になる現代、企業にはどのようなアプローチ・思考が求められるのでしょうか。藤井さんはこの点に対して消費者の動きを示す行動データに基づいた「バリュージャーニー」という思考フレームワークを提案されています。

東アジアを中心とする豊富な事例を元に、前編ではバリュージャーニーの考え方、後編では共創・オープンイノベーションにおける新しい体験の創出方法についてお話いただきました。(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、回答はビービット東アジア営業責任者、藤井保文さん。文中敬称略)

体験が重要視される時代の理由と「バリュージャーニー」

書籍にあるバリュージャーニーの考え方を改めてお聞きしたいのですが

藤井:アフターデジタルで語っていることを大きくビフォー・アフターで捉えた場合、これからの時代は特に「行動データが出てくる」点に大きな変化がある、という考え方を主眼にしています。モバイル・IoT・センシングといった技術革新のおかげで、これまでであればデータが残らなかった飲食や移動、支払いといった「行動」全部含めて履歴が残せるようになりました。これを前提とすると、できることが大きく変わってきます。

なるほど

藤井:人間ってある時はビジネスパーソンであったりある時は家庭人間であったりと、その時々の「モード」があると思うのですが、そのモードによって求めているものは違ってくるじゃないですか。一方、これまでのデータは属性などで人をざっくりとしか捉えられていなかったので、これだとモード毎の「最適なタイミング」にタッチできない。

これが行動データであれば最適なタイミングにタッチして正しいコンテンツを提供する、状況に合ったコミュニケーションをすることができるようになるんです。

行動データが加わることでタイミングが読めるようになると

藤井:今みたいにひとりの人の中にもたくさんの状況や視点があるという認識に立つことで、市場規模の新たな側面も見えてくるようになるはずです。また同時に顧客理解の解像度が高まることで、新しい製品企画につながる可能性も高まる。そう考えるとやはりこの行動データを活用できるかどうかが各企業にとって肝になってくる時代になっていると思いますね。

となると、どうやって行動データを取得するかがポイントです

藤井:ひたすらモノを売っているだけではやはり購買データしか得られません。これでは普段どういう行動をしているのか分からない。だから「製品販売型」から「体験提供型」にモデルを変える必要性が出てきます。

この「製品販売から体験提供へ」ということを、アフターデジタルでは「バリューチェーン型からバリュージャーニー型へ」という言葉で表しています。このバリュージャーニーにおける競争原理は「如何に良い体験を提供するのか」になります。

体験がひたすらよくないと消費者は使い続けてくれませんし、逆に使い続けてくれることによって、人々が「好きだ」と思ってくれているものに対して行動データが集まっていく構造になるわけです。だからちゃんと体験を作る、UXを作るってことが必要だよねと。

体験のよいサービスはリピートされるからそこでデータも得られて、というサイクルができる

藤井:これまでバリューチェーンとされていたものの多くは「製品を作って売る」ところにフォーカスしたビジネスプロセスでした。だからこのような体験提供型のビジネスモデルに対しては独自のビジネスプロセスを構築しないといけなかった。

製品は接点の一つでしかなく、それ以外のさまざまな体験などの接点を通して、顧客はその企業やサービスを判断するようになるのです。だから提供するものは製品ではなく「ジャーニー」になる。このジャーニーを作っていくビジネスプロセスが必要、という話なのです。

企業と消費者の間にある体験って、購入や利用、サポートなどかなり幅が広い印象です。こうなるとバリュージャーニーはかなり数が多くなるのではないでしょうか?

藤井:まず認識を整理したいのですが、バリュージャーニーを「作る」という作業とバリュージャーニーを運営後、「更新するという作業」があると考えています。バリュージャーニーを作る時はどのように接点を設計し、顧客と密な関係を作っていくのか、信頼関係を構築していくのかといった話です。

一方、実際そのユーザーが各接点を通して利用してくれて、その中から得られた行動データから「じゃあもっとこういう風なカスタマイズができる」とか「みんなはこの辺に困っているからこういう新しい機能を追加しよう」という運営の話があるんですね。この両方がセットになってバリュージャーニーが完成するんです。

体験を提供して行動データを取るまでのプロセスと、取った後の改善プロセスみたいな分け方ですね。ところで具体的にバリュージャーニーを「作る」上でのポイントはどういうものですか

藤井:UXをまとめあげる世界観やコンセプト、軸とは何かを考えることですね。

例えば、同じペイメントでも中国ではAlipayとWeChat Payの両方をみなさん使っています。なぜ同じようなサービスを両方使ってるのかと言うと、そのポジションが違うからなんです。Alipayは公共的なお支払いをするというイメージですし、本人たちのミッション・ビジョン・バリュー自体も「デジタル商取引を円滑にする」というところからきているので、とにかく商取引をスムーズにさせる存在なんです。

一方のWeChat Payは全てをコミュニケーション化する、例えば企業と個人であっても友達のようにコミュニケーションできるかどうかを一番上においてペイメント事業を展開しています。だから両者はインターフェースも全然違うし、機能の優先度も違うんです。本でも書いている話ですけど、ミッションによってUIまで全部変わっているケースです。

ここでいう具体的な体験のケースってどういうものですか

藤井:例えばお金を受け取る際、Alipayはお金を送ったら終わりです。受け取る作業はいらない。だから数人でご飯に行って割り勘しようとなっても、Alipayは送金したら終わりなんです。一方、WeChat Payは送金後に一つひとつ受け取るボタンを押す必要がある。

押し忘れたら回収できないし面倒に思うじゃないですか。でもね、違うんです。

ある日、レストランで上司が部下にご馳走するとします。そうするとお会計の際に、その部下がいやいや、私もお金出しますと財布を出す動作があるじゃないですか。上司が絶対払うとわかっているのに一応まず財布を出すみたいな。

それをWeChat Payはデジタル上でやらせてくれてるんです。つまり部下が上司に百元を送ってきてるんですけど、上司がその受け取りボタンを押さなければ払ったことにならないわけです。万が一受け取ろうとすると相手も、え?みたいな顔をしてくるんですよね(笑。

面白い。確かに体験が違いますね

藤井:これはあえて一手間増やすという、UI上で普通はやっちゃいけないようなことを組み入れることで、「お金の受け渡し」行為を「コミュニケーションの体験」とみなして余地を残そうとしているんです。逆にAlibabaからこれを見ると、どうしてわざわざ手数を増やして交渉取引をスムーズにしないんだ、となる。

ですから、みんなが何かを想起する状況に置かれた時、そのサービスとしての第一想起を取れるかどうかが重要になります。これが「状況ベースでのポジショニング」で、この定義がないまま、バリュージャーニーを作るのは本当に難しいものになってしまいます。(後半につづく)

国内エコシステムとスタートアップ・IPOの意義ーー大和証券・丸尾氏 Vol.2

SHARE:

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 IPOの意義とはなんだろうか。資金調達の手段であり、社会的な信用の獲得であり、企業に正しいガバナンスを与えるものでもある。一方、マーケットが求める「極めて短期の結果」に疲弊し、オルタナティブを求める考え方も出てきている。 新しいスタートアップエコシステムの創造ロジック「リーン・スタートアップ」の著者、…

大和証券の専務取締役、丸尾浩一氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

IPOの意義とはなんだろうか。資金調達の手段であり、社会的な信用の獲得であり、企業に正しいガバナンスを与えるものでもある。一方、マーケットが求める「極めて短期の結果」に疲弊し、オルタナティブを求める考え方も出てきている。

新しいスタートアップエコシステムの創造ロジック「リーン・スタートアップ」の著者、エリック・リース氏は2011年の著書で既にこの問題点を突いており、より長期的な成果の視点に立った「長期株式取引所」の考え方を披露している。10年たった今、彼は長期経営をテーマとした新証券取引所「Long Term Stock Exchange」を2019年に開設した。

丸尾氏は拡大するマーケットにおけるIPOの意義を、大きなエコシステム全体で俯瞰する必要があると説く。

エコシステムとIPOの役割

「例えばサイバーエージェントってマクアケやサイバーバズ、BASEなどに出資して、彼らが上場することで資金を回収していますよね。こういった利益がないとAbemaのような新しいチャレンジはできない。エニグモの須田さん(将啓氏・代表取締役)も上場後に個人として投資している。こう考えると、上場した企業や起業家は投資にまわるわけです。PKSHA Technologyは上場してCVCを作った。こうすることで自分たちが張れないAI技術に株主となって挑戦ができる」。

BASEは上場時の時価総額が250億円程度だった。しかし今(※執筆時、2020年12月9日時点)の評価額は2500億円に届こうという規模にまで膨らんだ。感染症拡大がEC需要を押し上げたことが要因のひとつではあるが、これにより、彼らはより有利な条件で資金調達を進めることができる。株の希釈も最小限に抑えることができるからだ。そしてBASEもまた、新たなスタートアップへの投資を通じて、エコシステムの一員としての役割を果たそうとしている。

世の中に必要なことをやる

取材の終わり、長年多くの起業家、経営者と向き合ってきた丸尾氏に、次の世代の起業家と投資家に求めるものを聞いた。

「この経営者はやるやつか、そういう目で見ている時はキャピタリストに近いかもしれません。あと大切なのは長い目ですね。(支援側で)すぐに商売にならないなと思ってすぐに引いたんでは長い付き合いにならない。だから大事な会社や起業家にはしっかりと担当をつけます。大手企業では当然のようにやってきましたが、若い経営者ともやりますよ。

確かにね、起業家で金が欲しいから上場するという時代もありました。でもね、志がないものは退場してます。BASEの鶴岡さんとかはお金よりも成し遂げたいものがある。これが大きく変わったところです。世の中にはこれが必要なんだという。それって無理じゃないの?というところで事業をしてくるわけですから、我々はIPOでそのチャンスを拡大させるわけです。発想がね、お金や自分だけではなく、地球だったりイノベーション目線なんです。そう言う人が次の1兆円企業を作ると思ってますよ」。

今、世の中ではSDGsに代表される、持続可能な社会づくりが大きく叫ばれるようになった。ITバブルが発生した2000年以降、世の中には過剰な生産によって資本主義のゆがみのようなものが発生している。2030年に向けて活動する起業家には、長期の視点に立ったビジョンがより強く求められるようになった。

彼らは社会の課題や要請にどう答えるのかを問われているのだ。

数年前まではROE重視だったが、脱炭素やSDGs、ESG投資への潮流はますます加速していく。今は地球に優しい、そういったことに資する企業を支援していきたいし、新しい取り組みにあえて挑んでいく、強い大和でありたいです。

「これまでITやゲームなど、その時代、時代に応じたトレンドを作ってきました。赤字上場という新たな選択肢の道も開きましたし、BASEのようにマーケットでバリュエーションを出して次の成長資金を獲得してもらう。こういう起業家たちの『やりたい』をこれからも後押ししたいし、世の中のためになる企業の発展を支援していきたいです」。

(了)

前例なき「赤字上場」が生んだものーー大和証券・丸尾氏 Vol.1

SHARE:

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 エリックリース氏の著書「リーン・スタートアップ」が出版されたのが2011年。新たな事業を「構築、学習、計測」というアジャイルなフローに落とし込んだ、新たな起業の手法は世界的に大きなブームとなった。時を同じくして日本でもY Combinatorらが発祥となるアクセラレーションプログラムが開始となり、スマ…

大和証券の専務取締役、丸尾浩一氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

エリックリース氏の著書「リーン・スタートアップ」が出版されたのが2011年。新たな事業を「構築、学習、計測」というアジャイルなフローに落とし込んだ、新たな起業の手法は世界的に大きなブームとなった。時を同じくして日本でもY Combinatorらが発祥となるアクセラレーションプログラムが開始となり、スマートフォンシフトの後押しもあって多くのスタートアップたちを生み出すことに成功する。

日本におけるテックスタートアップ・エコシステムの新たな幕開けだ。KDDI ∞ Laboもその中で産声を上げた。

このエコシステムにおける重要なマイルストーン、それがIPO(新規株式公開)になる。1999年から2000年にかけて発生した日本のITバブルではソフトバンクやヤフー、楽天、サイバーエージェントなどの企業が株式市場で大きく勃興し、その後に続くディー・エヌ・エーやミクシィ、グリーなど、国内インターネット企業が躍進する基盤を作った。

そして2010年代、新たなエコシステムの中で大きく成長したメルカリやラクスル、freee、BASEといった新興企業の多くを主幹事として株式市場に送り出した証券会社、それが大和証券だ。ヤフーやGMO、サイバーエージェントにミクシィにディー・エヌ・エーなど、黎明期からこの国内エコシステムを眺めてきた株式市場の水先案内人は、2010年代に何を見つけ、そして次の世代に何を期待するのか。

本稿は国内エコシステムの今と未来を知るをテーマに、大和証券の専務取締役、丸尾浩一氏に10年の振り返りと、次世代の起業家に求めるものを伺った。

初モノの大和

2019年度の売上高1,961億円、営業利益252億円、グループ企業103社の大連合を組むインターネット企業、それがGMOインターネットグループだ。直近の連結時価総額が約1.6兆円(※)にもなる、このGMOインターネットを中心に構成される10社の上場企業の内、9社は大和証券が主幹事を引き受けている。

「熊谷さん(正寿氏、代表取締役会長兼社長 グループ代表)は周囲をやる気にさせてどんどん上場させていく。やりたいんだと。だからことごとくウチで(主幹事を)やらせてもらった。上場会社をたくさん作るというGMO独自の経営戦略をしっかり支える。それが我々の役目」。

2000年ITバブルで株価が乱高下する際、当時部長だった頃から丸尾氏は経営者の側でマーケットのアドバイスを送り続けた。サイバーエージェントに楽天、ミクシィ、GMO。数多くのIT銘柄を支えてきた彼は長期にわたる信頼関係こそが重要、そう振り返る。

ITバブルから約10年、時代の変わり目となったのがモバイルインターネットの隆盛だ。いわゆる「ガラケー」プラットフォームは数々のアプリやゲームを生み出し、新たな起業のエコシステムを作り出した。この流れはその後のスマートフォン・シフトへと続き、今のスタートアップエコシステムを形作る基礎となった。大和はこの新しい潮流の中、次々と「誰もやらない」初モノ銘柄を世に送り続ける。

「リブセンス(2011年12月上場)は当時、25歳の最年少上場でしたよね。レアジョブ(2014年6月上場)もオンライン英会話という分野の草分けでした。コロプラ(2012年12月上場)はスマホゲームで、エニグモ(2012年7月上場)も越境ECというテーマの先駆けです。昨日、上場の承認が下りたポピンズホールディングス(2020年12月21日に上場、取材日時点は承認段階)は女性活躍を支援するというミッションを掲げていて、『SDGs(持続可能な開発目標)IPO』として第三者にオピニオンを取ってIPOの資金使途を明確にしたスキーム。本邦初と考えています。誰もやらないことをやる。自分たちが率先して画期的なことをやろうじゃないかと」。

大和が国内インターネット黎明期からIT・ネットに張り続けるには訳がある。重厚長大な企業相手だと競争環境が厳しい。「だからこそ大和の基礎は徹底的に他社がやらないことをやった。全ては勝つため」(丸尾氏)。

初モノに強い大和ーー。この基盤を受け継ぎ、彼らは今のITスタートアップたちの水先案内人となることを選んだのだ。

日本ベンチャーキャピタルが公表している資料によれば、2010年のIPO件数は22件。世の中はリーマンショック後の東日本大震災という過酷な時期でもあった。2012年に第二次安倍内閣が発足してからは翌年に東京オリンピックが決定するなど、徐々に明るい話題も増えてくるが、何者かも分からない新興のテック・スタートアップにとっては厳しい冬の時代だったことは間違いない。

そんな中、丸尾氏はある「初モノ」に挑戦することになる。クラウドワークスの赤字上場だ。

前例なき、クラウドワークスの赤字上場

クラウドワークス代表取締役の吉田浩一郎氏(撮影は2013年12月)

2010年代の半ば、主要なインターネットビジネスはまだまだゲームが中心だったが、デジタル化の流れはじわじわと現実世界に染み出していく。それまで電話で配車していたタクシーは、徐々にアプリで事前決済まで済ませた「移動サービス」となり、個人で不要になったものはスマホ経由で気軽に売買できるようになった。一方で市場はまだまだ実験的な空気に支配されている。シェアやオンデマンドといった新たな経済活動がマス層に本格的に広がるのは2010年代後半を待たねばならなかった。

課題はリードタイムだ。世の中が変わることはわかっている。けどその時が来るまでをどう過ごせばよいか。スタートアップたちは各社、独自の資本政策でこの「いつかやってくる波」を待つ必要があった。クラウドソーシングという、個人をエンパワメントする時代を見据えたクラウドワークスもそのひとつだった。

「大和証券がすごいなと思うのは(Tech系の赤字上場は)初めてですから。普通は絶対やらない。引受部が断る。無理。でもね、最初にやることが大事なんですよ。当然、うまくいかなかったら責任問題になる。だから僕らもリスク取ってやってるんですよ」。

丸尾氏が創業者の吉田浩一郎氏と出会ったのは、とあるキャピタリストからの紹介が縁だったそうだ。クラウドワークスの創業は2011年11月。そこからわずか3年後の2014年12月に東証マザーズに新規上場を果たすことになるのだが、丸尾氏も「今ではありえない突貫工事」と振り返るほど、株式公開までの道のりは痺れるチャレンジだったようだ。

「最初に(紹介を受けたキャピタリストから)レクチャーを受けた時、数千万円の黒字で進んでたんですね。(上場申請の)直前になって、急に吉田さんから連絡があり、丸尾さん相談があると。(ある方から丸尾さんに相談しろと言われたらしく、赤字での上場を相談されて)いや、黒字にしないと無理ですよと言ったんですがなんとかならないかと。ご自身でも上場するんだと周囲に伝えているし、当時クラウドソーシングはゲームに次ぐプラットフォームになる、派遣市場の黎明期と同じなんだと。投資銀行部門にぜひこれやりたいと話しまして。上場引受実務担当者に賛同してもらわないと無理なわけです。結果、やります!と決めてくれた。普通、赤字上場のようなチャレンジは大組織の中では、中々難しいものなんです」。

新規上場の際、前期が赤字であっても足元の直前期は黒字というケースが通例だ。バイオやロボットなど、長期にわたって公開市場での資金調達を前提とする場合と異なり、インターネット銘柄での赤字上場はサイバーエージェント以来、14年ぶりの出来事になる。そして上場から4年後の2018年9月期、クラウドワークスの総契約額は100億円を突破し、無事黒字化を果たす。

「情熱ですね。(主幹事として2019年に上場した)BASEの鶴岡さん(裕太氏・代表取締役)を紹介してくれたのも吉田さんです。これをきっかけにコミュニティが広がりました」。

そもそもクラウドワークスが上場した東証マザーズは株式公開市場の中でも若い企業を対象に、成長のステップとして活用されることの多いマーケットだ。真に50年、100年と続く企業を生み出すための日本独自のエコシステムといってもよい。クラウドワークスはその点で、正しくこの機能を活用したケースだった。

大和の思い切った「初モノ」は国内のスタートアップエコシステムに大きな影響を与える。これをきっかけにラクスル(2018年5月上場)やメルカリ(2018年6月上場)など、足元が赤字であってもマーケットと共にその後の成長を見据える新たな選択肢が増えることとなったのだ。(後半につづく)

※Bloomberg記事より10月14日時点の数字として

テレビの課題とネットの解決方法ーースクーとテレビ東京コミュニケーションズが共創 Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディーをお届けします。 前半では、双方向性を重視した学習プラットフォームサービスを手掛けるSchooとテレビ東京コミュニケーションズの取り組みについて、スタートアップサイドの話題をお届けしました。後半では、テレビ東京…

テレビ東京コミュニケーションズのメディア事業本部ビジネスデザイン部事業推進ユニット、行田尚史さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディーをお届けします。

前半では、双方向性を重視した学習プラットフォームサービスを手掛けるSchooとテレビ東京コミュニケーションズの取り組みについて、スタートアップサイドの話題をお届けしました。後半では、テレビ東京コミュニケーションズサイドで本プロジェクトに参加する、同社のメディア事業本部ビジネスデザイン部事業推進ユニット、行田尚史さんに話を伺います。同社がインターネットを活用したオンライン教育事業に参戦する意義や目指すゴールについて語って頂きました。

テレビ局がデジタル番組に参入する理由

Schooと共創に至ったきっかけはどのようなものでしたか

行田:テレビ局の制作するコンテンツは、基本的に一方向性なものがほとんどです。ただ、インターネットの広がりで、今や双方向性のある動画コンテンツは当たり前となりつつあり、テレビ東京コミュニケーションズとしてデジタル番組の可能性は常に模索している状況でした。そんな中、その領域においてノウハウのある「Schoo」さんと「KDDI ∞ Labo MeetUp!!」で出会い、テレビ局がデジタル番組に参加する可能性について協議をいくつか重ねてきました。

その結果、両社の持つ動画コンテンツ力やネットワークという強みを組み合わせることで、既存インターネット動画コンテンツにはない、新しいコンテンツが制作できるのではないかという結論に至ったのがすべての始まりです。

テレビとネットはコンテンツとして近いと言われてきました。ネット側から映像コンテンツを作ってきたスタートアップのSchooと実際に協業してみてどのような印象をもたれましたか

行田:ご一緒することで学ぶことが多いですね。企業としての進め方やプロジェクト進行、細かいところなんですが、テレビ東京コミュニケーションズにはなかったものでしたし、私が初めて知った進行の手法や言葉があったりしました。興味を持てることが多く、また、Schoo側のスキルセットが非常に高いです。いい刺激を受けています。

共創することで新しい発見と出会えた

行田:時代がデジタルシフトする中で良くも悪くも、現代は人の好みが細分化されてきていると感じます。特にデジタルコンテンツの世界においては、より専門性の高いコアな層が自分の好きなものだけを消費するという流れにシフトしています。今までテレビ局は、マスの需要に合わせたコンテンツ制作を中心にやってきました。逆に1000人だけが見てくれればよいというような、ニッチな番組制作のチャレンジをどうしても今までできていなかったという課題感もありました。

手始めとして経済の領域に絞ったコンテンツ制作を進められていますね

行田:元々、テレビ東京コミュニケーションズでは経済カテゴリーにおける動画コンテンツで「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」などを制作してきました。しかし、お伝えしたようにあくまで一方向性であることが課題の一つです。双方向性なデジタル番組の成長に加え、昨今ビジネス分野においてもインターネット動画コンテンツが台頭し始めており、今後も需要が伸びていくことが予想されています。そうした市場のトレンドも捉え、経済と学びの番組から始めさせていただいています。

双方向性がポイントとされていますが、設計として工夫されている点は

行田:まさにSchooさんとご一緒させていただいているというのが答えになります。出演者側と視聴者側をコメントで繋げ、そのコメントを基に番組全体の構成をしていく流れに重きを置いています。コメントと言っても、そのほとんどは視聴者からの「質問」です。リテラシーが高めの番組設計であれば、例えば自分の意見を主張するようなコメントのコンテンツが望ましいのかもしれませんが、私たちはあくまで学びたいという意識が強いユーザーに向け番組制作をしています。

そのため、質問のコメントを拾いながら出演者が番組の流れを作ることにはなりますが、まさに双方向性が伴い、かつ積極的に視聴者が参加できる生放送ならではの番組作りができているのではと感じます。

Schoo×テレビ東京コミュニケーションズというブランドが目指す姿

ライブ配信番組『ギモンの法則 -不確かな未来を経済でひらく-』

経済関連のデジタルコンテンツの需要が伸びていますが、一方で情報過多になっている印象もあります

行田:今までのデジタル経済番組はある程度リテラシー高めな人に向けコンテンツが訴求されてきていたように感じます。しかし、実際には経済を学ぶことに興味はありつつも、まだそこまで入り切れていない層も多く存在しているのでは?と仮説を立てています。そうした潜在的なユーザー層に向け、テレビ東京コミュニケーションズが持つ既存の知見とSchooさんのインターネット動画コンテンツへの知見を組み合わせ、現状提供されている番組とは違った角度での新しい「経済×学び」の番組が出来上がるのではないかと考えています。

ターゲット層や番組の方向性的に、アテンションを取りやすい経済用語に頼った集客がしずらいかなと思います。(例えば「デジタル通貨」など)そこで、どういった点にフォーカスしターゲット層の獲得を目指していくのでしょうか

行田:番組のテーマ設定自体はあまりビジネス感のないように工夫をしています。例えば、「なぜ転売ヤーは儲からないのか」・「なぜ同僚のあいつは出世するのか」など視聴者にとって身近な出来事や人物を主に取り上げています。

つまり、経済が先行しているのではなく、普段の生活で思った疑問が先行し、そこから経済の理論に結びつけ答えを導くという番組のスタンスを前面に押し出すことで、正しいターゲットへのリーチを取るという戦略です。難しいワードを覚えましょうという見せ方では全くないんですよね。

Schooさんとのリリースで、「双方向性で共創する時代を捉えた学びブランド」の構築を目指す、と触れられています。剛体的にはどういった「ブランド」なのでしょうか

行田:「学び続けられる、経済番組」としての第一想起にSchoo×テレビ東京コミュニケーションズとなるブランドづくりを目指しています。Schooさんはミッションに「世の中から卒業をなくす」を掲げ、大人になっても学び続けられる場所というコンセプトを大事にされています。そうした面でも、私たちの制作する番組は「ユーザーの分からないという需要」に対して「答えをその場で導く」という性質に重きを置いた番組の構成になっています。「学び」×「経済」の掛け算の部分に、テレビ東京コミュニケーションズをブランド化していく、そういう戦略を抱いています。

ありがとうございました!

新技術をグループ各社につなぐーーフジ・スタートアップ・ベンチャーズ(FSV)

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けした東急のCVC活動に続いてお届けするのは、フジテレビの「フジ・スタートアップ・ベンチャーズ(以下、FSV)」です。 フジテレビは昨年12月に2号ファンドとなる「フジ・スタートアップ・ファンド2号投資事業有限責任組合」を50億円規模で設立しています。2…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けした東急のCVC活動に続いてお届けするのは、フジテレビの「フジ・スタートアップ・ベンチャーズ(以下、FSV)」です。

フジテレビは昨年12月に2号ファンドとなる「フジ・スタートアップ・ファンド2号投資事業有限責任組合」を50億円規模で設立しています。2号ファンドでは国内外のミドル・レイターステージのスタートアップも対象とした事業領域を限定しない投資活動を進めていくとのことです。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答はFSVの鈴木修太さんと若月賢一さん)

CVC設立の経緯について教えてください

FSV:第1号ファンドはフジ・メディア・ホールディングス(以下、FMH)グループのメディア・コンテンツ事業とのビジネスアライアンスを目的に2013年に設立しました。ファンド規模は15億円で、インターネット・モバイル分野のシード・アーリーステージのスタートアップを中心に投資実績を積んできました。昨年12月に設立した2号ファンドでは1号ファンドの特性を継承しつつ、革新的な技術やビジネスモデルを持つ幅広いスタートアップをターゲットにしています。そのため、投資領域やステージを限定していませんが、目的としてはFMHグループの新規事業領域開拓も見据えた投資戦略となっています。

FMHグループの新規事業領域の開拓も目的のひとつ、ということですが共創の事例などがあれば教えてください

FSV:まず、事業連携はFSV主導ではなく、どちらかというと現場中心で進めています。例えば、今年出資したビジネスデータ分析・機械学習システム開発のThe ROOM4D社とは、フジテレビの視聴データ活用に関する課題解決、配信データ分析の設計に共同で取り組んでいます。

また昨年出資した台北、香港、上海ほか東南アジアでインフルエンサーマーケティング事業を行っているカプセルジャパン社とは、FMH傘下のポニーキャニオンとの協業で日本-台湾でのタレントの発掘・プロモーションを開始するとともに、海外向けのYouTuberライブイベント配信などを計画しています。

FSV主体に出資の判断をしつつ、事業連携は各部門ごとに担当するという分担ですね

FSV:はい、FSVでは投資検討の初期段階でフジテレビをはじめグループ内で関連する事業に携わっている現場に、まずはヒアリングを行います。内容は、マーケット環境から、類似会社情報、事業の成長性など多角的かつ俯瞰的な視点で、あれこれ探っていく形です。その上で、投資委員として入っていただいている外部のキャピタリストの方々の専門的な見地からの意見も踏まえて最終的な投資判断を行っています。出資後の事業連携は、グループ会社の中で関連する事業を手がける部署が中心になって進めていきます。

改めてグループとして「CVC」部門を持つ意義を教えてください

FSV:FMHやフジテレビをはじめグループ各社でも直接投資を実施しています。直接投資は各社の事業に直結するアライアンスや事業連携が既に見えているケースが多いです。一方、CVCとしてのFSVの役割は、新しい事業領域の開拓や技術革新、将来性といった視点も持って投資検討を進めることにあります。出資後は出資先とグループ各社とのつなぎ役であり、またイノベーション創出や将来的なM&Aなど、双方の状況に合わせて、様々な選択肢を持っていることが重要であろうと考えています。

ありがとうございました。

ということでフジテレビのCVC活動についてお届けしました。次回はテレビ東京の取り組みにバトンをお渡ししてお送りします。

“世界が憧れる街づくり”を共に実現する企業に出資ーー東急CVC活動

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けした住友生命の「SUMISEI INNOVATION FUND」に続いてお届けするのは、東急株式会社(以下、東急)のCVCです。 東急は11月にCVC活動の1号案件として、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を運営する日本クラウドキャピ…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けした住友生命の「SUMISEI INNOVATION FUND」に続いてお届けするのは、東急株式会社(以下、東急)のCVCです。

東急は11月にCVC活動の1号案件として、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を運営する日本クラウドキャピタルとの資本業務提携を公表しました。東急側から1億円の出資に加え、相互の案件紹介やFUNDINNO利用企業への東急からの協調投資、沿線の中小企業への株式投資型クラウドファンディングの展開を予定しているそうです。

東急のCVC活動はファンドや子会社のような形式ではなく、東急本体による直接投資型を採用しています。1案件あたりの出資額は数千万円から数億円規模で、投資対象には「ヘルスケア」、「住む・働く・移動」、「ソーシャルファイナンス(コミュニティサービス含む)」がテーマとして挙げられています。(本文中の太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部)

CVC活動の開始経緯について教えてください

東急:東急では、2019年9月に公表した長期経営構想に基づき「TOKYU 2050 VISION」を掲げています。2050年に向けて「東急ならではの社会価値提供による世界が憧れる街づくり」の実現を目指したビジョンです。

「TOKYU 2050 VISION」全体像

特に「City as a Service」を中心としたリアルとデジタルの融合による次世代型街づくりは重要な指針として捉えており、それに基づく新規事業の創出・推進がCVC設立の目的です。そのため、初期フェーズの投資対象はヘルスケア、住む・働く・移動、ソーシャルファイナンス(コミュニティサービスを含む)の3つをテーマに置かせていただいてます。

東急さんと言えば2015年から東急アクセラレートプログラム(TAP)などを通じてスタートアップとの協業を模索されていました。改めてCVC活動として公表されたのはどうしてでしょうか

東急:今まで東急のスタートアップ投資は基本的に、案件ごとに起案する事業部が異なっていた経緯がありました。そのため、弊社内でCVC専任チームを作ることで会社としてノウハウを蓄積していく、というのも今回の主旨の一つです。

また、2050年目線でのバックキャストアプローチによる新規事業創造においては、CVCはリスクを適切に抑えながらも長期視点でパートナー関係を築くことができる最適な手段の1つだと考えています。お話の通り、今まで当社では、オープンイノベーション推進の一環としてTAPを推進してきました。TAPでは主に、既存事業との連携や周辺領域での検討、PoCを経た上での事業部出資が中心となっています。

なるほど、投資案件に向き合う専任組織を作った、ということですね

東急:はい、CVC専任チームを置くことでPoC等の結果を待ってから出資検討する事業連携先行型ではなく、スタートアップの資金調達のスケジュール感も考慮することが可能になります。優れたスタートアップに大企業が選ばれる時代において、お互いの将来像を描いた上で投資先行型のマイナー出資を行う方針としています。

また、投資方針としては、直近の事業連携の有無よりも将来的に「TOKYU 2050 VISION」における”City as a Service”構想で必要なサービス・テクノロジーかどうかが重要な指標となると考えています。「ヘルスケア」「住む・働く・移動」「ソーシャルファイナンス(コミュニティーサービス含む)」に関連して東急との連携に興味を持っていただけるスタートアップの皆さんと、お会いできるのを楽しみにしています。

さて、今回、第一号案件として発表されたのはFUNDINNOさんとの資本業務提携でした

東急:FUNDINNOさんとの提携は「ソーシャルファイナンス」をテーマとした、東急線沿線に関わる人々によるスタートアップ企業・地域事業者への投資を通した街づくりへの参加機会の創出を目的としたものです。

日本クラウドキャピタル×東急 連携イメージ

初期フェーズとしては、東急とFUNDINNO双方のスタートアップネットワークを活用した相互の案件紹介やFUNDINNO利用企業への東急からの協調投資、その後の事業連携による社会実装を中心に取り組みを進めていく予定です。将来的には、東急線沿線の中小企業への株式投資型クラウドファンディングの展開も進めていきたいと考えています。

大手企業からの出資と株式投資型クラウドファンディングの組み合わせにどのような可能性を感じておられますか

東急:CVCの今後の出資案件でも、スタートアップの意思や希望を尊重することが大前提ですが、FUNDINNOでの資金調達と弊社からの協調投資を両立させた設計も想定しています。これにより、スタートアップ側は沿線などの個人投資家をファンにつけた上で、東急と長期視点で事業連携に取り組めるメリットを見出せるのではという狙いがあります。

ありがとうございました。

ということで東急CVCの活動についてお届けしました。次回はフジテレビの取り組みにバトンをお渡ししてお送りします。

ギフティ上場のリアル:上場への道のり、そして新たなギフトの世界へ Vol.4

SHARE:

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 これはとある新社会人がスタートアップし、上場するまでのストーリーである。 彼はソーシャルメディアの可能性を感じ、人と人とが繋がる「ギフト」で新たな世界を創ろうと考えた。2010年に創業した社員数人の小さなスタートアップは、いくつもの支援を受けながら幾多の困難をクリアし、社会の公器となるべく2019年9…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

これはとある新社会人がスタートアップし、上場するまでのストーリーである。

彼はソーシャルメディアの可能性を感じ、人と人とが繋がる「ギフト」で新たな世界を創ろうと考えた。2010年に創業した社員数人の小さなスタートアップは、いくつもの支援を受けながら幾多の困難をクリアし、社会の公器となるべく2019年9月、東証マザーズに上場を果たした。ギフティという名前でスタートアップした彼らは、創業時「ソーシャルギフト」という新しい概念を提唱し、その後のeギフト市場で着実に成果を出し、現在もなお成長を続けている。

このロングインタビューでは、スタートアップのリアルとして、KDDI ∞ Labo第一期生であるギフティ創業者、太田睦(むつみ)氏と共にその上場までの道のりを辿る。後に続くスタートアップ起業家、そしてその成長を共に共創しようと試みを続ける大手各社のヒントになれば幸いだ。(文中の質問は全てMUGENLABO Magazine 編集部、回答は太田氏)

ギフティが東証マザーズに上場したのはちょうど1年と少し前の2019年9月だ。

起業を志して社会人としての一歩を踏み出した青年が、新たなソーシャルメディアの潮流にヒントを見出し、様々な支援とチャンスをモノにして社会に認められる企業に成長した。今、支援してくれていた企業との関係値はどのようなものになっているのだろうか。太田氏はその変化についてこのように話してくれた。

ギフトの新たな世界へ

KDDIとの関係値って今どのようになっていますか

太田:実は法人販売ではKDDIさんとご一緒する機会は減っていて、それよりもクライアントとして使っていただいてます。特にauスマートパス会員向けのキャンペーンって大規模なので、それを見て、ウチでもああいった取組をしたいという声をいただいたりしています。

一方で株主としても関係性がありますよね

太田:giftee for Businessが立ち上がってからの事業進捗がよかったというのもあって、ネガティブなプレッシャーよりもそれをもっと加速させようよ、ということでとにかく沢山紹介をいただきました。au経済圏の中でもこの保険で使えないかとか、銀行があるからここで、といった感じです。商材的に組みやすいというのはあると思います。

ーービジネス利用でキャンペーン的な利用に商機を見出したギフティだが、創業期のコンセプト「ソーシャルギフト」の本質は小さなありがとうを個人が贈り合う世界観だ。事業としての成長は引き続き追いかけながら、この世界観についてはどうだろう。太田氏は以前からその考え方に変わりはないと強調する。

太田:創業時に持っていた思いみたいなところは今も変わっていないですよ。ただ目標に近づいてはいるものの、まだ二合目とか三合目の感覚ですね。まだeギフトを貰ったことない、使ったことないっていう人は世の中に沢山いると思います。こんなのがあるんだ!みたいな反応をいただくこともあるのでまだまだです。C2Cのギフト文化を作っていくっていうところは引き続き目指していきたいです。

一方、彼らの成長を支えたビジネスにおけるギフト文化についても気付きがあったと語る。

太田:ただモノを売りたいから景品を配ってるっていう側面ももちろんあります。けど、企業さんと最終的なお客さんがもっと最適な形でつながる仕組みもあるんじゃないかなと最近は思うようになっています。例えばまだ見ぬブランドにあるお客さんがすごくマッチする、みたいな関係性があるとするじゃないですか。

こういった最初の瞬間にギフトってフィットするんですよね。

それと「繋がり続ける」っていうところでもギフトってすごくいいコミュニケーションツールだなと思ってるんです。今までは個人と個人の繋がりのとこだけを見てたんですけど、企業と人っていうところも興味がある領域ですし、今、地域通貨もやっているので地域と人っていう繋がりを作ったりとか、その繋がりを持ち続けられるサービスをどんどん世の中に出していきたいなと思っています。

ーーソーシャルギフトから始まった太田氏たちのスタートアップ・ストーリーは、ギフトを通じた人や企業、地域との繋がりの物語に広がっていく。上場といっても企業にとっては長い道のりのほんの一歩にしか過ぎない。スタートアップした頃の目標をひとつ達成し、ギフティのチームは次の目標に向かって進んでいく。太田氏はインタビューの最後にこのようなコメントをくれた。

太田:eギフトを軸として企業の間に様々な縁を育むサービスをっていうビジョンを掲げているんですが、この先に気持ちの循環が促進されて良い関係で繋がった社会ができるとよいなと思っています。

領域が広がれば広がるほど好奇心が増していきますし、また知らない世界があってそこに自分たちが提供できる新しい価値が見つかって、どんどん自分たちが実現した世界や社会が作られていくのはわくわくします。

オフラインで使われるサービスなので、土日とかちょっと街に出た時に自分たちのサービスが使われているのを目にする機会って増えたんですよ。自分たちがやってることがこうやって形になって影響を与えているんだなと思うとやはりやりがいに繋がりますよね。(了)

「新ブランド」目指しネットとタッグーースクーとテレビ東京コミュニケーションズの共創 Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 オンライン学習プラットフォームを手掛ける「Schoo」とテレビ東京コミュニケーションズは10月20日、経済と学びを掛け合わせたブランド、コミュニティ開発に向けた共同事業への取り組みを公表していま…

Schooの代表取締役、森健志郎さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

オンライン学習プラットフォームを手掛ける「Schoo」とテレビ東京コミュニケーションズは10月20日、経済と学びを掛け合わせたブランド、コミュニティ開発に向けた共同事業への取り組みを公表しています。また、その第一弾としてSchooプラットフォームでの新番組『ギモンの法則 -不確かな未来を経済でひらく-』のライブストリーム、ならびに番組と連動するオンラインコミュニティの開設を発表しました。

Schooは学習環境に双方向性を提供しているのが特徴です。そこに、テレビ東京コミュニケーションズの動画配信ビジネス・デジタルコンテンツの開発運営力を繋ぎ合わせ、新たなオンライン学習体験の誕生を目指す取り組みになっています。

今回共創に参加したSchooは、大人たちがずっと学び続けられるオンライン生放送学習コミュニティとして、2012年のサービス開始以降、毎日生放送の授業を放送し続けています。授業ジャンルは、すぐに使えるビジネススキルからプログラミング・経済・健康まで幅広く制作しています。「世の中から卒業をなくす」をミッションに掲げるSchoo。生放送の授業は無料で公開し、アーカイブとして6000本以上の録画授業が公開されています。2020年9月には、会員数が51万人を突破し、ビジネスプランの導入企業も累計約1500社に達しているそうです。

初回は学習の場をデジタル化していくことの意義について、Schooの代表取締役、森健志郎さんにお話を伺いました。

身近な疑問から経済への関心を生み出す

今回のテレビ東京コミュニケーションズとの取り組みは、ライブ配信番組とオンラインコミュニティを連動させることで、学びとコミュニケーションを循環させる狙いがあります。

ライブ配信される「ギモンの法則ー不確かな未来を経済でひらく」は、日々の生活の中で生じる素朴な疑問とその裏にある経済の仕組みを上手く結びつけ、経済のプロがわかりやすく解説してくれる、という番組内容になっています。各週のテーマには「なぜ私たちは働きすぎるのか?」や「なぜ「転売ヤー」は儲からないのか?」など、一度は疑問に感じたことのあるトピックが選ばれており、また、ライブ配信という特性を利用し、授業中は受講生が積極的にチャットで学びの場に参加する仕組みです。

さらにそれから続く形のオンラインコミュニティでは、授業のインプットを受講生同士でアウトプットできるようになっており、番組コンテンツから視聴者を巻き込み、観るだけで終わらせない仕組みにチャレンジしているそうです。

学び続けられる社会をどう作る

今回の取り組みのポイントはタッチポイントの多様性にあります。

インターネットの拡大や来るべき5G時代の到来によって、情報を得る場所は従来のマス媒体のみならず、TwitterやFacebookなどのSNSに加え、YouTube等の動画プラットフォームも含め大きく広がりを見せています。これら特徴には、情報の配信者と情報の受け手の双方向による情報交換(コミュニケーション)が介在していることが挙げられます。

「これまでの時代は、情報への接触がテレビを含む4マスが中心であり、また提供方法は一方的な情報提供によるわかりやすさや面白さが中心でした。しかし、5Gの到来により情報の接触媒体が多様化し今まで以上に大量の情報がコミュニケーションされるように変化していくと考えています。

また、学びは教育産業だけではなく、メディアや出版などのコンテンツ産業と呼ばれる業界にも多く存在します。会社のmissionである「世の中から卒業をなくす」をより早く実現するため、業界外の皆様との連携も課題でありました。そのため、学び続けられる社会の実現という意味でもテレビ東京コミュニケーションズ様との今回の取り組みは重要であると考えています」(Schoo代表取締役 森氏)。

テレビ東京コミュニケーションズとの共同事業第一弾では話題の提供だけでなく、具体的に人々が繋がり続ける仕組みにチャレンジしました。将来的には、生み出された経済ブランドやコミュニティを起点に、「出版」や「スペース運営」「イベント開催」などビジネス化も検討するそうです。

「今回の(テレビ東京コミュニケーションズとの)業務提携リリースではFacebookでの反応(いいね)件数も700件と、他のリリースに比較しても多く、一般の皆様から一定の好感を得ていると感じています。社会的な信頼度の高さを認識するとともに「オンライン×学び」への注目度の高さを改めて認識致しました。また、お取り組みをすすめる中でスタートアップと同じ目線とスピード感でプロジェクトを共に進めていただくことができていることは当初に想像していた以上でした」(Schoo代表取締役 森氏)。

次回はテレビ東京コミュニケーションズサイドでこの共創事例に取り組んだチームの話題をお届けします。

ギフティ上場のリアル:社員数人のスタートアップが挑んだ大手とのコンペ Vol.3

SHARE:

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 これはとある新社会人がスタートアップし、上場するまでのストーリーである。 彼はソーシャルメディアの可能性を感じ、人と人とが繋がる「ギフト」で新たな世界を創ろうと考えた。2010年に創業した社員数人の小さなスタートアップは、いくつもの支援を受けながら幾多の困難をクリアし、社会の公器となるべく2019年9…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

これはとある新社会人がスタートアップし、上場するまでのストーリーである。

彼はソーシャルメディアの可能性を感じ、人と人とが繋がる「ギフト」で新たな世界を創ろうと考えた。2010年に創業した社員数人の小さなスタートアップは、いくつもの支援を受けながら幾多の困難をクリアし、社会の公器となるべく2019年9月、東証マザーズに上場を果たした。ギフティという名前でスタートアップした彼らは、創業時「ソーシャルギフト」という新しい概念を提唱し、その後のeギフト市場で着実に成果を出し、現在もなお成長を続けている。

このロングインタビューでは、スタートアップのリアルとして、KDDI ∞ Labo第一期生であるギフティ創業者、太田睦(むつみ)氏と共にその上場までの道のりを辿る。後に続くスタートアップ起業家、そしてその成長を共に共創しようと試みを続ける大手各社のヒントになれば幸いだ。(文中の質問は全てMUGENLABO Magazine 編集部、回答は太田氏)

念願のスターバックス導入に向けてチャレンジを続けるギフティ。信用の面からコンペ参加を打診された同社は、アイデアやeギフトの実績を買われて決勝にコマを進めることになる。しかし、その最終対戦のプレゼンテーションで顔を合わせることになったのは、某大手通信会社だった。

助け舟を出したKDDI

太田:トライアルの後、スターバックスさんからやはり会員向けにそういったオファーを贈るキャンペーンをやりたいよね、でもそれならやっぱり(不正利用防止の)仕組みはどうしても必要だよね、という話になったんです。だから改修について検討したい、けれどそれはコンペになると連絡をもらったんです。提案には大手の印刷会社さんや通信会社さんがバンバン出てきて(苦笑。当時の社員数って3人とかそういう時期でしたから入れたこと自体幸運なんですけど、結果的に最終で当たったのが大手通信会社さんだったんですね。

なかなか痺れるコンペですね

太田:eギフトを実際に運用してきた実績は評価いただいたのですが、与信面ではどうしてもそちらに軍配が上がる。至極当たり前のことを言われてしまって。それでKDDI ∞ Laboの∞ラボ長だった江幡(智広氏、現・mediba代表取締役)さんに相談したところ、飯田橋のソリューション部隊の方々を紹介してもらったんです。最初は説明に苦労しましたが、それでも当時、スターバックスとの取引がなかったことや、コンペの相手が競合の通信会社だということでご一緒いただけることになって。

ーーこうしてKDDIのソリューション部隊をバックに付けたギフティは与信面での課題をクリアし、このコンペに見事勝利を収めることになる。その後もKDDIと連携したeギフトのソリューション・パッケージを同じような座組みで展開し、この出来事は数人のスタートアップにとって大きなマイルストーンとなった。

ギアチェンジの時

個人がeギフトを贈り合う、という世界観を実現するための山の登り方は二つあった。ひとつは個人の力で拡散して世の中にムーブメントを起こす方法。もうひとつは既存の商流に乗せて、じわじわと世界を変えていく方法だ。ギフティは後者を選び、そして成功した。

KDDIとの連携でビジネス向けのeギフト・ソリューションを求める企業の声が徐々に届くようになり、大手ブランド向けに導入を進めるギフティ。ただ当時、絶対的なeギフトの流通量が不足するという課題を抱えていた。というのも、スターバックスなどのブランド向けソリューションで最終的なユーザーにeギフトの存在を知ってもらうための接点が、ギフティのサービスサイトと各ブランドのオウンドメディアなどに限られていたからだ。太田氏はこう振り返る。

アイデアだけのスタートアップから徐々に企業への階段を登るわけですが、その後の展開は

太田:スターバックスさんやローソンさんといった大手のブランドさんに導入いただけるようになったのですが、eギフトの流通先が基本的にギフティという個人向けのサイトと、各ブランドさんの自社サイトとかアプリ内にギフトの機能を埋め込ませていただく、という方法しかなかったんです。C2Cだけだと正直そこまで流通が伸びなかったっていうのが当時の本音でした。それを理由に解約されるということはないですけども、基本的に流通金額に応じた売上っていう形になっているので、このペースだと難しいかなという風に思って。

当時はどうしてC2Cで伸びないんだろうって考えてました。

日本人の方って特にギフトというコミュニケーションにおいては失敗したくないという気持ちがあると思うんです。自分がそのものの良さを分かってるから相手に送るわけで、いいとも言えない、知らないものをいきなり送るってなんか難しかっただろうなと。イノベーターみたいな人たちはそれでも理解してやっていくんですけどマジョリティーの方々については、ここを打開する何かが必要だなと思案していたのが2015年頃です。

ーーギフティにはビジネス向けのソリューションが大きく二つある。ブランドがリワードとなる商品を提供し、顧客向けにeギフトを提供できるようになる「eGift System」と法人が独自にeギフトを贈ることができるようになる「giftee for Business」だ。

ここまで語ってきたスターバックスの事例などは全てeGift System、つまりギフティとして提供するSaaS型のギフティングサービスだった。しかし、このプラットフォームだけでは、太田氏が悩んだようにプラットフォーム全体の流通の伸びがそのまま企業の成長キャップになってしまう。

もっと能動的に攻めていけないか。そう考えていたギフティをもう一段階変化させるきっかけがある日届くことになる。

太田:雑誌社さんからある日、読者アンケートの謝礼で使いたいという問い合わせが入ったんです。最初は正直、意外というかまあ、こういうケースもあるかなという感じだったんですけど、そういう問い合わせが続いたんですね。で、実際に話を聞きに行ったらそれまで読者アンケートの謝礼って金券とかを一枚一枚、封筒に入れて住所書いてっていうのをやってたらしいんです。実際に贈る景品よりも人件費とか送料の方がかかってるという状況で。ギフティだったらURLを送るだけで済むので間接コスト一気に削減できるよねという話になって。あと、読者アンケートって回答してから謝礼をもらうまで2週間とかかかってたんです。メール送付だったらすぐなので読者さんも喜んでくれる。

ーー企業は常にユーザーとの接点を求めている。そしてそこには実は業界によって見えないペインや無駄が隠れていることを知った太田氏らは、これをチャンスにビジネス向けのソリューションに力を入れることにした。上場時に6割の売上を支えた「giftee for Business」がそれだ。

これまでのギフティはeギフトなどの生成の仕組みを持っていないブランドに対してその仕組みを提供し、そこから「消費者同士が」ギフトを贈り合うことができるものだった。ビジネス向けのソリューションでは贈り手が企業になり、直接消費者とギフトを通じたコミュニケーションができるようになる。

ありがとうの形は企業によって様々だ。読者アンケートの謝礼やポイント交換、福利厚生など、感謝の解像度を上げることで企業はeギフトの使い方をより鮮明にできる。結果、これまでコンビニや飲食などに留まっていた利用企業が、人材や銀行、保険、不動産、通信会社など一気に広がることになった。

ギアチェンジを終えたギフティはここから上場への道のりを駆け上がることになる。(次回につづく)