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デジタル時代のポップスターを生み出した「Musical.ly」と「Live.ly」ーー小中高生が1日30万円を稼げる時代に私たちが理解すべきこと

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2017年4月、 ソニー生命保険が「中高生が思い描く将来についての意識調査」を実施したところ 、将来なりたい職業として、Youtuber(もしくはYoutuberなどの動画投稿者)が男子中学生の3位、女子中学生では10位にランクインしました。また、 2016年に大阪のある小学校が調査した「4年生のなりたい職業」 の3位にYoutuberが選ばれたと報じられたこともありました。 Youtuberが評…

2017年4月、 ソニー生命保険が「中高生が思い描く将来についての意識調査」を実施したところ 、将来なりたい職業として、Youtuber(もしくはYoutuberなどの動画投稿者)が男子中学生の3位、女子中学生では10位にランクインしました。また、 2016年に大阪のある小学校が調査した「4年生のなりたい職業」 の3位にYoutuberが選ばれたと報じられたこともありました。

Youtuberが評価された理由として、手っ取り早く有名になれる職業である点が挙げられるかもしれません。10〜20年前には、小中高生の生活圏内に、大衆メディアの中心「テレビ」が存在し、野球やサッカーのようなスポーツや芸能人が活躍する姿が映っていました。しかし、「スマホ」の普及とデジタルコンテンツ環境の変化・拡大に伴い、Youtuberのように素人がお茶の間の人気者になれる時代が到来。いわば「デジタル時代のポップスター」が、大衆からたくさんの反響を受けたり、憧れを持たれる存在になった点が、Youtuber人気の背景にあるといえるでしょう。

「デジタル時代のポップスター」と表現しましたが、最近では10代から高い人気を誇る動画ソーシャル・メディア「 Tik Tok 」や「 MixChannel 」の台頭が、さらに素人から成り上がった人気者への憧れに拍車をかけています。

「Tik Tok」は人気音楽にのせた口パク動画を手軽にアップロードできるアプリとしてアジアで人気に火が付いています。ユーザー層は15〜22歳のティーン層。特にインドネシアで流行っており、人口の42%を占める2億5800万人にも及ぶ25歳以下の若者層に人気とのことです。2016年には10億ドルの広告収益を獲得としたと報じられています(詳細記事は こちら )。

一方「MixChannel」はライブ動画を手軽に共有できる10代向けアプリ。 すでにユーザー数は1,000万を超えています

さて、北米に目を向けると「Tik Tok」や「MixChannel」の元祖とも言えるアプリが見受けられます。口パク音楽動画「 Musical.ly 」と、ライブ配信動画サービス「 Live.ly 」です。両アプリとも、小中高生をターゲットとしており、人気Youtuberのように無名であった若者が大金を稼ぎ、有名になる機会を提供しています。

本記事では「 Musical.ly 」と「 Live.ly 」の収益モデルを簡単に紹介しつつ、小中高生が両アプリに魅かれる理由や、どのようにして「デジタル時代のポップスター」の夢を勝ち得たのかを紐解くと共に、10代の就きたい職業に関して私たちが理解すべきことを考察していきたいと思います。

15秒の口パクで新たな音楽市場を創出

まずは「 Musical.ly 」と「 Live.ly 」それぞれのサービスモデルを簡単に説明しましょう。

Musical.ly 」は人気歌手の音楽にのせた「口パク動画」を15秒撮影して、シェアできるソーシャルアプリです。登録ユーザー数は2億人に及び、15〜21歳のユーザーを中心に人気を集めています。毎日1300万の動画がアップロードされていると伝えられています(詳細記事は こちら )。

同アプリのビジネスモデルとして秀逸な点は3つあります。1つ目は、新たな音楽市場「口パク動画市場」を創出した点。ティーンユーザーによって既存音楽を15秒の時間枠でアレンジしてもらうことで、新しい音楽コンテンツ訴求・広告の業態を作り出しました。

2つ目は収益モデル。ユーザーは100ポイント99セントするアプリ通貨を購入することで、好きなユーザーにハート型のアイコンを飛ばし、声援を送ることができます。アイコンを貰った動画配信者は、ポイントを現金化できます。50%が配信者へ、30%が「Apple」を含む口パク動画の音源レーベル企業へ、20%が「 Musical.ly 」へ分配される仕組みです。

北米では創作の自由に対する法律が緩いため、アプリリリース当時は音楽著作権を持っているレーベル会社からの許可を得ずとも「ユーザーによってアレンジされた動画はコピーではなく創作作品であり、それ故に合法である」とのスタンスからサービス展開が始まりました。当初は勝手に音源を使われ、収益シェアもなかったことから、レーベル会社も不満を持っていたことでしょう。

ところがユーザー数が増えるにつれて互いに無視できない存在になり、 2017年4月には「Apple Music」との正式提携にこぎつけています 。つまり、ユーザーは「Apple Music」内で配信される全ての音楽を、口パク動画として公式配信できる権利を得たわけです。「Apple」側も、新たな収益源を手にしたわけで、Win-Winの形で話は終わっています。少し強引なやり方ともいえますが、ユーザーを集めてから大企業と交渉していく姿勢は、シリコンバレー流かもしれません。

さて3つ目は、エンゲージメントの高さです。例えば2016年5月に有名女性歌手「Selena Gomez氏」が自身の楽曲「Kill ‘Em With Kindness」の口パク動画を配信したところ、 346万いいね!、56万コメント獲得した そうです。同楽曲は当時、Youtube上で200万いいね!、13万コメントされていることから、「 Musical.ly 」の方が「Youtube」より多くのリアクションを得られる高いエンゲージ・プラットフォームに成長していることが伺えます。

「ティーン版Youtuber」を生み出したライブ動画アプリ

Musical.ly 」のコンセプトは「口パク動画」から始まりましたが、リリース後には音源の活用方法が多岐に渡り始めました。例えば映画のワンシーンを真似たり、動物の声真似するなど、ユーザーによるアレンジ動画が広まった形です。そこで「 Musical.ly 」の姉妹アプリとして登場した「 Live.ly 」は、このような「口パク」動画以外のニーズを満たすために開発されました。15秒の決まった枠の中で、特定の音楽を楽しむのではなく、自由な表現をライブ動画配信で楽しんでもらおうと狙ったわけです。

Musical.ly 」と同様に、アプリ内で絵文字を購入する課金制度が存在します。ユーザーは気に入った動画配信者に対して、絵文字を投げ銭感覚で投じることができます。絵文字は全8種類あり、100ポイント99セント、500ポイント4ドル99セント、2000ポイント19ドル99セントというラインナップです。ファンによる有料絵文字の収益のうち、50%が配信者へ、30%がiTunes側へ、20%が「 Live.ly 」へ分配される仕組みになっています。

記事によれば、視聴数を最も集める上位10〜20人のトップユーザーは毎日30分の配信を2週間続けることで、4.6万ドルも稼ぐとのことです。これは1日で約3,000ドルを稼いでいる計算で、またトップユーザーでなくとも、90分の配信を1日に1〜3回続けているユーザーは、毎日800〜1,900ドルを稼げるそうです(詳細記事は こちら )。

さらにトップのユーザーは、ライブ配信時に12万人を超える視聴者が付くとのこと 。あるトップユーザーは、「 Live.ly 」を始める前に「Facebook」でライブ配信を行っていた経験があるらしく、その際は1,000視聴者ほどしかつかなかったそうです。改めて、「 Musical.ly 」と「 Live.ly 」のエンゲージ力の高さが伺い知れますし、「Facebook」と比較すると単純計算で120倍差もあるユーザーとの高いインタラクティブ性がスター誕生の秘訣といえます。

このように、10代向けに手軽にお金を稼げる仕組みと、「Youtube」より効率的に高い知名度を上げられるプラットフォームを提供することで、「デジタル時代のポップスター」を志す若者が増えているのが欧米のメディア事情です。

私たちが理解しておくべき10代のキャリア選択

Image by  Rocky T

さて、このようなソーシャルアプリが多く登場してきた昨今、10代の若者が将来を考える上でのメリット・デメリットを私達が十分に知っておく必要がある段階といえるでしょう。

例えば、2017年のサラリーマンの平均年収は418万円。もっとも平均年収の高い業種の金融業で741万円との データ があります。一方、2017年度の12プロ球団における 野球選手の平均年俸は3826万円 、2016年度の J1サッカー選手の平均年俸は2017万円 であると伝えられています。

一方、「 Live.ly 」のトップユーザーで年収は約220万ドル(1ドル100円換算で2億円超え)、1日800ドルを稼ぐ上位ユーザーで年収は約28万ドル(1ドル100円換算で2,800万円超え)になります。つまり、サラリーマンやスポーツ選手と金銭面で比較した場合、小中高生の段階で十分にインフルエンサーとして社会に価値を提供でき、自立できる機会が確立されつつあるわけです。

決して野球やサッカー選手を目指すことを否定しているわけではありません。しかし社会に出るタイミングが早まり、金銭的に自立できる敷居が確実に低まっているデジタル時代において、Youtuberのような「デジタル時代のポップスター」を目指す潮流が、決して悪い流れでないと認める時期に来ていると言えるのではないでしょうか。

悪質Youtuberが話題になったように、大きな責任が若者にも求められる職業であるリスクの認知はもちろん必要です。一方で、「Apple」を含め、大手企業がタイアップに動いているトレンドをみると、小中高生が立派にインフルエンサーとして新興市場で活躍できる現実味は十分にあります。この点、「とりあえずやってみたら?」という門戸を開いておく姿勢と、従来の職業と比べて実際どの程度稼ぐことができて、社会においてどのような役割を担い、市場ポテンシャルはどのくらいあるのかという理解を私たちが最低限持っておく必要がありそうです。

頭ごなしに否定せず、新たな市場が生まれている事実と、そこに関わる企業の動き方までをしっかり理解した上で、10代のキャリアを論じる必要があるのではないでしょうか。

 

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中国発のミュージックビデオのような動画が作れるアプリ「Musical.ly」は、どのようにしてアメリカのティーンの心をつかんだか?

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ティーネージャーは不思議な存在だ。ティーネージャーの文化について、まれに本人たちから語られる情報や、たまに流れてくる内部情報(参考:年下の兄弟姉妹)以外からわかることは少ない。成人した大人にとって、ティーンとは理解しがたいものなのだ。 しかし、中国のソーシャルネットワーキングスタートアップの Musical.ly は、彼らの心をがっちりとつかんでいる。 「dab(ダブ)って何のことだか知っています…

Doin’ the dab. Photo credit: Gokudabbing.
dabをしているところ。
Photo credit: Gokudabbing.

ティーネージャーは不思議な存在だ。ティーネージャーの文化について、まれに本人たちから語られる情報や、たまに流れてくる内部情報(参考:年下の兄弟姉妹)以外からわかることは少ない。成人した大人にとって、ティーンとは理解しがたいものなのだ。

しかし、中国のソーシャルネットワーキングスタートアップの Musical.ly は、彼らの心をがっちりとつかんでいる。

「dab(ダブ)って何のことだか知っていますよね」と、Musical.ly の共同設立者で CEO である Louis Yang(陽陸育)氏。私が困惑した様子でいると、Louis 氏は驚いたような表情をして見せた。

Louis 氏は左手を伸ばし、曲げた右腕の中に顔を押し込んで見せ、「これが dab と言われるものです」と説明した。「アメリカの子どもたちは dab を流行らせようとしていますよ。どんなときでもね。」

Musical.ly は昨年の夏にスタートし、それから半年後に第一弾となるアプリをローンチした。15秒間の動画を作成するプラットフォームは北米のティーンたちに受け、Instagram や Snapchat と並び、アプリストアランキングのトップに登りつめた。最初はミュージックビデオの口パク動画を投稿するプラットフォームだったが、今ではちょっとしたお笑い劇やダンスまで、ありとあらゆる種類のパフォーマンスを投稿できるようになった。「Musers(Musical.ly のユーザを意味する)」の中には、独自のアパレルラインをローンチしたり音楽ツアーに出たりと、同アプリから有名人になった者もいる。

そして、上海に拠点を置く同社は、今ではライブストリーミングアプリ Live.ly にも取りかかっている。

Live.ly は、ユーザがファンや友達とやり取りするためのプラットフォームです。(Louis 氏)

Musical.ly との違いは、会ったことのない知らない人ではなく友達とのつながりに集中したことだという。

Live.ly では動画を何本も投稿するというよりは、日々の軌跡を残し、友達同士で交流するためのプラットフォームだ。つまり、ライブストリーミングに特化している。また、アプローチとしてはよりリアルタイムと言える。各ユーザが自分のチャンネルを持ち、写真や動画、ライブストリームを投稿する。しかし、Live.ly のチャンネル投稿はすぐに消えてしまうので注意が必要だ。24時間以内に新投稿をしてチャンネルを更新しないと、今まで投稿した内容が消えてしまうのだ。

継続して投稿しなければなりません。新しいコンテンツを追加していかないと、こんな風に消えていってしまいます。

Louis 氏はこう語り、チャンネル部分が白い静止画になっているテストユーザのアカウントを見せながら説明してくれた。

今のところ、Live.ly は Musical.ly の熱心なティーンユーザに受けている。6月にアプリがローンチしてからわずか数日後、Live.ly はアプリストアのランキングのトップに躍り出た。Louis 氏によると、Live.ly ユーザの60%が Musical.ly を経由してきているという。その理由の一つはデザインだ。2つのアプリはしっかりとクロスオ―バーされているのだ。例えば、Live.ly では Musical.ly のユーザがすでに持っているファンベースを Live.ly でも使うことができる。

Typical live stream on the left, danmu comments on the right.
左:ライブストリーミングの典型例、右:danmu(弾幕)と呼ばれるコメントシステム

Musical.ly からの新アプリ、Live.ly で素晴らしいのは、中国と欧米の製品仕様を融合させているところだ。例えばアプリのライブ放送では、ユーザはバーチャルギフトを送ることができる。これは Periscope や Facebook Live など欧米系よりも中国系のライブストリーミングプラットフォームによく見られる機能だ。もちろん、Live.ly のバーチャルギフトはティーネージャーの好みに合わせて作られている。バーチャルコイン5枚ではパンダを、1,000枚ではドナルド・トランプ氏の顔画像を買えるようになっている。

Live.ly では、「danmu」(画面全体に浮かび上がりスクロールされるコメント、弾幕)機能もサポートされている。もともとは日本を起源とする danmu は、中国の動画・ライブストリーミングサイトの人気機能であり、中でも Bilibili(嗶哩嗶哩) のものが有名だ。そして今やアメリカのティーンたちも弾幕文化を取り入れつつある。

Louis 氏はこのように語っている。

ティーンたちは投稿そのものよりリアクション、つまり弾幕に興味を持っています。まずは友達どうしで、次にインフルエンサーとそのフォロワー間に面白い相互作用が生まれていると見ています。

続いて Live.ly のバーチャルギフトについては、次のようにコメントした。

ユーザはバーチャルギフトを送ることによって愛を示しているのです。

観察し、学習する

Louis Yang, CEO of Musical.ly. Photo credit: Musical.ly
Musical.ly CEO Louis Yang(陽陸育)氏
Photo credit: Musical.ly

Musical.ly の台頭は、当初はティーネージャー、または北米市場では目立たなかった。実際中国から Musical.ly をローンチしたばかりの頃は、アメリカの親世代が頭を悩ませているインターネット上のいじめへの対応といった、ローカリゼーションに関する課題を突き付けられた。

Musical.ly は今では9,000万人以上のユーザを抱え、そのうち40%はアメリカ、40%はヨーロッパ、そして残り20%は南米とアジアに分布している。

Musical.ly の成功の秘訣は「ユーザの意見を聞くだけ」と、非常にシンプルだ。

「まずはデータを観察するようにしています」と Louis 氏は語る。例えば、Live.ly がユーザ間の親密なリアクションに焦点を置いたのがその例だ。Louis 氏も、「Musical.ly では、1人当たりのユーザに平均10人以上の友達、つまりリアルな友達がいることがわかりました」と話す。

Musical.ly にはアプリ内のトレンドコンテンツ観察に特化したチームがいる。例えば、ユーザがまるで固まっているかのような動作を取るマネキンチャレンジといったトレンドコンテンツだ。また、中国で人気のソーシャルメッセージングアプリ WeChat(微信)を使い、ユーザと直接コミュニケーションをとれるようにもしている。

いろいろなグループを作成し、ユーザがクールなもの、そうでないものについて話し合えるようにしています。バグ報告や提案は WeChat で送ってもらっています。(Louis 氏)

また、ユーザからリクエストされた機能をくみ取り、製品ロードマップに直接入れることもある。

ゆくゆくはビデオチャット形式のビデオコミュニケーション機能を追加し、その機能を Live.ly にも拡大しようと計画している。また、Vine のサービス終了に伴い、同社は動画ベースのソーシャルメディア市場のシェア拡大にも目をつけている。

実際、Vine ユーザのトップ層が Musical.ly に流れてきています。Musical.ly を新しい定着先として見出しているのです。彼らを歓迎するという意味でも、Musical.ly に Vine の機能をいくつか盛り込もうと思っています。

Louis 氏は微笑みながらこう語った。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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