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CareemのCEO曰く、「Uberとの合併は、中東スタートアップエコシステムの幕開け」

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VC 支援を受けた地域的なスタートアップが、自社を数十億米ドルで有力なライバル企業に売却するという事態は、それ自体大きな勝ちだとみられることが多い。設立者にとっては儲けものであり、投資家は忠誠を示す代わりに対価をもらえるからだ。 しかし、配車サービス企業 Careem の CEO で共同設立者の Mudassir Sheikha 氏は、自社を Uber に31億米ドル以上で売却することで、単に大金…

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Careem の CEO Mudassir Sheikha 氏(中央)と Magnus Olsson 氏(左)、Abdulla Elyas 氏(右)
Image Credit: Careem

VC 支援を受けた地域的なスタートアップが、自社を数十億米ドルで有力なライバル企業に売却するという事態は、それ自体大きな勝ちだとみられることが多い。設立者にとっては儲けものであり、投資家は忠誠を示す代わりに対価をもらえるからだ。

しかし、配車サービス企業 Careem の CEO で共同設立者の Mudassir Sheikha 氏は、自社を Uber に31億米ドル以上で売却することで、単に大金が入るという以上の結果が生まれることを望んでいる。彼は今回の取引を、「中東地域にとっての幕開け」と考えており、これによって中東のスタートアップが国際的な投資家たちの投資先リストに入るだろうというのだ。

あらゆるエコシステムには画期的な取引が必要で、今回の取引もその1つになるとよいと思っています。

Sheikha 氏は3月27日、Careem 社員宛ての公開書簡でそう述べた。

これまでのストーリー

ドバイ拠点の Careem は2012年に設立され、今日では14カ国の市場で3,000万人以上のユーザを誇っており、中東に力を入れている。同社は Uber からの合併の誘いがあるまでに、約7億7,000万米ドルの資金を獲得してきた。

Uber が Careem との合併を検討しているというニュースは昨年7月に浮上し、2月、Uber が Careem を完全に買収するための交渉が進んでいるとの噂が流れた。3月第4週の週末、合併の契約がもうすぐ発表されるとの報道が強まり、3月26日、Uber が認めるに至った。

実際、今回の契約は今年に入ってこれまでの中で良かった出来事であり、Uber の CEO である Dara Khosrowshahi 氏のインクルーシブな姿勢と、Sheikha 氏のいう Khosrowshahi 氏の「エンパワーリング・リーダーシップスタイル」がなければ、決して実現しなかったかもしれない。Careem は、当初 Uber と力を合わせることにためらいがあったが、Khosrowshahi 氏は、Careem が独自のブランドとアイデンティティを保持し、基本的には通常の操業を続けてよいと認める意思を持っていたことが、契約締結の鍵となった。

Sheikha 氏は語る。

初めは Uber による買収の話はあまり私たちに響きませんでした。

しかし、Dara 氏と議論を重ねるうちに、私たちは彼と、また彼のチームとより関係を強くしていきました。そうしたら以前とは違う実感がありました。明らかだったのは、彼らが中東のような市場でのプラットフォーム提供のチャンスの価値をより深く理解していたこと、そしてこのチャンスを掴むには同地域にフォーカスを当てた企業がどうしても必要だろうと理解していたことです。

シリコンバレー企業が地方の企業設立者から舵をもぎ取ってしまうような、月並みなやり方を真似るのではなく、むしろ Khosrowshahi 氏は、Careem の成功を創出した要素、つまり地域に関する同社チームの知識と経験に干渉しないということを選んだのだ。

彼は尊敬心を持った立場から話してくれ、どうしたら力を合わせて中東地域を変革する大きなチャンスを追えるかという話に主にこだわっていました。(Sheikha 氏)

MENA

明らかなのは、Careem は、MENA 地域(中東および北アフリカ地域)に自社が与える影響力を重視しているということだ。同地域への影響力について Sheikha 氏は書簡で何度も言及している。

私たち2社の規模とリソースを統合することにより、この地域のより多くの人々の生活をシンプルに、そしてより良くすることができるでしょう。

しかし、配車サービスや運送業の話を超えて、Sheikha 氏は、Uber との合併契約がより大きな何かの幕開けとなってほしいと願っている。

これまで比較的成熟したスタートアップのエコシステムを誇ってきたイスラエルを除いて、中東は多額のイグジットや投資のことでトップ記事になるような地域ではない。もちろん、Amazon が2017年に中東のライバル Souq.com を5億8,000万米ドルで買収したこと、Yahoo が2009年にヨルダンの Maktoob を(報道によると)1億6,400万米ドルで買収したことなど、少しは例もあることはある。

とはいえ、MENA 地域は VC 投資の点では成長している。直近のスタートアップ投資レポートによると、同地域の企業への投資額は2018年に記録史上最高となっており、前年比31%増で8億9,300万米ドルとなった。カリフォルニア発のシードファンドおよびアクセラレータ500 Startups は、明らかにアーリーステージ投資の点で、MENA 地域への投資家の中でも最も活発に投資を行っている。ちょうど昨日500 Startups は、初となる MENA ファンドを3,300万米ドルでクローズした

昨年 MENA 地域に参入した他の著名な国際的投資家としては、ニューヨークの General Atlantic があり、2018年後半にアラブ首長国連邦の Property Finder に対する1億2,000万米ドル投資ラウンドをリードした。他の投資家としては、中国の Gobi Partners があり、アラブ首長国連邦の Holidayme への1,600万米ドル投資をリードした。パロアルトの Accel も2016年、Holidayme に投資を行っている。

MENA 地域のスタートアップは、繁栄するために必要な要素のいくつかをすでに持ち合わせており、同地域での多額のイグジットによってより多くの億万長者が生まれることになるだろう。ひいてはエンジェル投資家が増え、さらに勢いを増すことにつながるかもしれない。今のところ、Sheikha 氏は、MENA が注目を浴びるのに Careem が寄与し、それにより同地域の他の企業への直接的な投資機会が増えるかもしれないということに満足しているようだ。

Sheikha 氏は次のように語った。

この大規模な合併取引が、MENA 地域の新興技術エコシステムを地域の、また外国の投資家に知らしめることになります。そうして、同地域の起業家への支援機会と投資機会を根本的に、また不可逆的に向上させることができるでしょう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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カイロのスタートアップシーンは今(後編)ーー注目の現地スタートアップにインタビュー

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スタートアップシーンが徐々に盛り上がりを見せているMENA(中東、北アフリカ)地域。地域最大規模のスタートアップイベント RiseUp Summit への参加を通じて、学んだこと、感じたことを前回は「元大学キャンパスをテックハブへと変えた「スタートアップの父」とは?」でお届けした。 今回は、具体的に地域でどのようなスタートアップが注目されているのかを紹介したい。 Slickrーーソーシャルショッピ…

カイロで開催された地域最大規模のスタートアップイベントRiseUp Summitのフィナーレ
カイロで開催された地域最大規模のスタートアップイベントRiseUp Summitのフィナーレ

スタートアップシーンが徐々に盛り上がりを見せているMENA(中東、北アフリカ)地域。地域最大規模のスタートアップイベント RiseUp Summit への参加を通じて、学んだこと、感じたことを前回は「元大学キャンパスをテックハブへと変えた「スタートアップの父」とは?」でお届けした。

今回は、具体的に地域でどのようなスタートアップが注目されているのかを紹介したい。

Slickrーーソーシャルショッピングができるファッションeコマース

今回は、私にとって初めてのカイロ訪問だったので、MENA地域のスタートアップとほとんどコネクションがなかった。なので、とりあえずイベントで出会った人々に「この地域で注目されてるスタートアップはどこ?」と聞いていった。ある若い女性の「私は Slickr」をお勧めしたいわ!というコメントがきっかけで、Slickrのコーファウンダーである Maria S. Munozさんに話を伺うことにした。

Slickrのコーファウンダー、Maria S. Munozさん
Slickrのコーファウンダー、Maria S. Munozさん

SlickrはファッションのEコマースプラットフォームにSNS機能を追加させたもの。ユーザー同士フォローし合うことができ、コメントを付け合うことができる。こうしたソーシャルなつながりを作ることによって、サイト上の滞在時間とリターン率を高めることが狙いだ。8ヶ月前のローンチ以降、カイロの90のブランドがプラットフォームに参加して、7000名のユーザーを惹きつけた。10代後半から30代の若者がターゲットだ。

一方で、カイロならではの課題も共有してくれた。インターネット普及率は40パーセント程度であり、銀行口座を持っていない人口も多い(正確な数は不明だが、人口の35パーセントが銀行口座を持ち、94パーセントの決済は現金で行われるというレポートもある)ため、オンラインでの買い物はまだ人々にとって一般的なものではない。こうした状況下でもっとも普及しているEコマースサイトはJumiaであり、1500人もの従業員を持つ同社は新興国市場でビジネスを立ち上げることに長けている、ベルリンに拠点を置くインキュベータRocket Internetに支援されている。

Munozさんは、カイロのスタートアップシーンについて「とても勢いがあるし、将来の可能性も大きい」と語りつつも、自身の事業については「カイロでやっていくには限界がある。ファッションが熱いロンドンに事業を展開する予定」と話してくれた。

Cash Bashaーー現金のみでAmazonで買い物ができるようにしたい

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Eコマースに関連して、Cash Bashaも紹介したい。クレジットカードや銀行口座を持っている人が少ないことが、Eコマース普及の一つのネックになっていることを書いたが、Cash Bashaは、まさに決済手段として現金だけしか使えない状況であってもAmazonでの買い物を可能にするサービスだ。ローカルの提携ショップまたは自宅で現金を支払い、その確認がされたら、Amazonでの購入手続きが進められる。

欧米や南米の新興国を中心に展開しているAmazonは、MENA地域には未進出である。だが、Amazon.comやAmazon.co.uk にある、地元で買えないような商品はカイロの人々にも人気だ。手数料や税金が上乗せされるものの、需要は大きいようだ。Cash Bashaは、そんなAmazonで買い物したい人をサポートするサービスなのだ。

Kotobnaーー誰もが作家になれるプラットフォーム

「村上春樹の大ファンなんだ。アラビア語でも出ているし、エジプトでも彼は人気だよ」と日本人の私を見かけて声をかけてくれたのは、Kotobna.net のファウンダー、Mohammad Gamalさんだ。Kotobna.net は、電子ブックプラットフォームだ。

Kotobna.netのファウンダー、Mohammad Gamalさん
Kotobna.netのファウンダー、Mohammad Gamalさん

「エジプトで本を出版したいと思ったら、選択肢は二つだけだ。一つは大きな出版社から出す。でもこれは有名な作家でないとできない。知名度がなければ、小さな出版社にあたるしかないが、彼らはただお金をとって本を印刷するだけで、マーケティングも流通もやってくれないんだ」と、Gamalさんはエジプトの出版業界の課題について指摘する。そこで、誰でも自分が書いた本を簡単に出版できるような、オンラインの出版プラットフォームの必要性を感じ、自ら立ち上げることにした。

2015年4月にローンチしてから、200の書籍がKotobna.net上に登録され、ユーザーは6000名、ダウンロードは1万1000件に達したという。面白いのはプライシングで、著者はサイトに登録するために年間8ドルを支払い、売上の60パーセントを受け取る。そして、個々の本の値段は、多くのユーザーが購入すればするほど、つまり人気に応じて徐々に上がっていくのだという。

Gamalさんによれば、アラビア語圏において、モバイルで読書をする人々の数は、スマホの普及に伴ってここ5年で6倍ほど増えたという。また、このサービスはアラビア語を読む人すべてをターゲットにしているため、エジプトだけに限る必要もない。アラビア語圏全体の市場シェアを少しずつ伸ばしていきたいと、語ってくれた。

Transi.Toーーカイロの公共交通機関の情報をモバイルで検索

Transi.Toは、カイロの公共交通機関マップを提供し、市民が効率的に市内を移動できることを目指すアプリ。このアプリが生まれた背景には、カイロでは公共交通機関のマップやスケジュールが整備されておらず、渋滞もひどいという深刻な状況がある。さらに、もっとも大変なのは「公共交通機関のデータが不足していることです」と、ファウンダーのHoda Mahmoudさんは語る。そのため、現在のアプリのデータはクラウドソーシングで取得したものを使っている。

Transi.Toのファウンダー、Hoda Mahmoudさん
Transi.Toのファウンダー、Hoda Mahmoudさん

確かに、筆者も実際に体験してみて分かったのだが、カイロの交通事情はかなりカオスな状況だ。約1800万もの人が住むカイロは常に渋滞がひどいし、バスの運行状況も、そもそもどれが市営のバスなのかさえも初心者の私には分からなかった。Uberの人気が出るのも納得である。公共交通機関のデータが整備され、それがモバイルでさくさくと検索できるようになったら、どれだけ便利になることだろう。

また、Mahmoudさんは女性のファウンダーならではのチャレンジについても語ってくれた。もともとGoogleに勤めていた彼女は、スタートアップに専念したいといってGoogleを辞めたときに、両親から「安定している職をなぜ手放すのか」と反対されたそうだ。また、男性の方が信用が得られやすい社会であるため、女性ファウンダーは特に事業が安定するまでの初期の頃は苦労することが多いとも話してくれた。そのため、立ち上げ時にはビジネスの場には父親に同伴してもらう女性ファウンダーもたまにいるとのことだ。

✳︎

今回ご紹介したのは、まだローンチまもないスタートアップだが、ドバイでスタートし中東のUberとして注目される Careem や、エジプトの採用プラットフォームとして注目される Wuzzuf、死亡情報を知らせるプラットフォームEl wafeyat などは、その成長が特に注目されている。Careemは、先月11月にシリーズCで6000万ドルを、WuzzufもシリーズAで500 Startupsなどから370万ドルを今年8月に調達している。

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カイロのスタートアップシーンは今(前編) – 元大学キャンパスをテックハブへと変えた「スタートアップの父」とは?

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先週末、カイロ中心部のタハリール広場から歩いて数分の場所にある元カイロ・アメリカン大学のキャンパスは、数千名の人々が集まり大きな盛況を博していた。カイロ内外から、スタートアップイベント「RiseUp Summit」に、起業家、投資家、メディア関係者が集まったのだ。主催者によれば、4000名以上の登録があったという。地域最大規模のスタートアップイベントだ。 なぜ今、カイロのスタートアップシーンが勢い…

RiseUp Summit
元アメリカン大学のキャンパスで開催されたRiseUp Summit 2015(筆者撮影)

先週末、カイロ中心部のタハリール広場から歩いて数分の場所にある元カイロ・アメリカン大学のキャンパスは、数千名の人々が集まり大きな盛況を博していた。カイロ内外から、スタートアップイベント「RiseUp Summit」に、起業家、投資家、メディア関係者が集まったのだ。主催者によれば、4000名以上の登録があったという。地域最大規模のスタートアップイベントだ。

なぜ今、カイロのスタートアップシーンが勢いづきつつあるのか、今回のイベントから分かったこと、感じたことをレポートしたい。

インターネット・モバイル普及率の急速な成長

最初に断っておけば「スタートアップシーンが盛り上がっている」といっても、日常的に億単位の資金調達をするスタートアップが出ていたり、大手テック企業による買収などが盛んな欧米のスタートアップシーンの状況と比べれば、エジプトのそれは何年も遅れをとっており、そのエコシステムの規模もはるかに小さい。それはヨルダンやレバノン、UAEといったその他のMENA(中東・北アフリカ)諸国でも同様である。

それでも、カイロやその他MENA地域におけるテック系スタートアップシーンが徐々に熱くなり始めていることは確かだ。

MENA地域のスタートアップハブとして注目される都市は、ヨルダンのアンマン(A)、レバノンのベイルート(B)、エジプトのカイロ(C)、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(D)の「ABCD」であることは、こちらの記事でも紹介した。

ABCDの都市の中でも、その勢いの大きさをもっとも感じさせられると言われるのがカイロだ。というのも、カイロの人口は郊外も含めれば約1900万人、エジプト全体の人口も約9000万人と、他のMENAの都市を規模において大きく引き離す。それだけ国内の市場、スタートアップの人材や消費者の規模が大きい。

そして、カイロでテックスタートアップが盛り上がりつつある背景には、急速なインターネット、スマートフォン普及率の成長が背景にある。現在のエジプトにおけるインターネットの普及率は4割程度と言われるが、2010年時にはその数は15パーセント程度であったことを考えると大きな伸びであり、今後も大きな成長が見込まれる。インターネットやモバイルがさらに普及すれば、eコマースやUberのようなモバイル上のオンデマンドサービスの成長も大きく伸びていくだろう。また、24歳以下の人口が全体の約半分と、若い「デジタルネイティブ」が多い点もまた、テック企業の今後の大きな成長を期待できる理由である。

たとえば、昨年11月にカイロでの事業を開始したUberは、最初の1年で100万件の乗車予約を達成したと発表している。同社はエジプト第2の都市であるアレクサンドリアにも拡大する予定だ。ちなみに、今回筆者がカイロを訪問した際も数回Uberを利用したが、毎回予約から数分以内に車をスムーズに呼ぶことができた。外国人にとっては、公共交通機関の情報を理解することが難しく、また地元のタクシーの料金についても不安が残るため、透明性と利便性を提供してくれるUberは非常に役立った。

カイロの「スタートアップの父」Ahmed Alfi氏の取り組み

話を戻すと、スタートアップのエコシステム全体が成長するには、当然ながら大きな市場やインフラの普及だけでなく、多くの起業家の輩出、そして起業家を育成、支援するためのシステムが必要になる。その点、これまでベンチャー企業文化の素地がほとんどなかったカイロでは大きなチャレンジに直面していた。

そんな中、カイロのスタートアップコミュニティの支援に大きな貢献をしている人物がいる。「カイロのスタートアップシーンにおけるキーパーソンは誰か?」と尋ねると、ほぼ全員がまず最初にその名を上げる Ahmed Alfi氏だ。

Alfi氏は、エジプトで生まれ、その後の人生のほとんどをアメリカで過ごした。90年以降、ベンチャーキャピタリストとして長年のキャリアを持ち、テック企業への投資を行ってきた。

そんな彼が2012年、母国エジプトの首都カイロの中心地にあるGreekキャンパスと呼ばれるアメリカン大学の元キャンパスが空っぽの廃墟になっている状態を目にしたとき、その広大なスペースをスタートアップのハブにするアイデアを思いつく。歴史的な建物、広大なキャンパスをテック企業、スタートアップのスペースにするのだ。1週間後には大学との交渉がスタートし、ほどなくして10年間のリース契約が結ばれた。

Greekキャンパス
元アメリカン大学のGreekキャンパス(筆者撮影)

2012年。約30年の独裁政権を維持したムバーラク大統領が辞任にいたったエジプト革命の翌年のことだ。ムバーラク政権崩壊後も、政治情勢は安定せず抗議運動や流血の事件も起きていた。そんな先が見えない状況においても「もう少し状況を見てみよう」という姿勢にはならなかった。

Greekキャンパスは、デモの中心地であったタハリール広場から歩いて数分の場所である。それでも、Alfi氏は「場所については心配していない。治安も徐々に回復するだろう。これは長期的なプロジェクトなんだ。私たちはこれを成し遂げるための方法を見つける。」とメディアに語っている

それから3年が経ち、現在では100を超えるテックスタートアップ、企業のオフィスがGrEEKキャンパス(リース契約以降、キャンパスの表記の方法が変わった)を拠点としている。「起業家は合法、違法に関わらず、何事によっても行動が妨げられてはならない」とAlfi氏は以前のRiseUpで語ったが、このGreekキャンパスにおけるテックハブこそ、氏の起業家精神によって実現したものだ。

今回開催されたイベントRiseUpもまた、このGrEEKキャンパスで開催され、カイロを超えてMENA地域全体の起業家や投資家が集まり交流する「ハブ」となっていた。

Alfi氏はまた、ベンチャーキャピタルSawari Venturesを設立し、Flat6Labsというアクセラレータプログラムも2011年からカイロやベイルートなど4都市で展開している。

RiseUp Summit
数々のスタートアップのオフィスが入っている建物内(筆者撮影)

起業にかける希望

今回私がRiseUpで出会った地元の起業家に「カイロのスタートアップコミュニティはどうか?」と尋ねると、多くの起業家がその横のつながりの強さを強調した。マーケティングや開発、PR…問題に直面すると、他のスタートアップやテック企業を訪ね、力を借りる。こうしたスタートアップ同士の知識やノウハウの交換は、GrEEKキャンパスで日常的に行われている。

一般的にスタートアップのエコシステムを成長させていくためには、行政や大手企業の支援、そして大学などの研究機関、投資家、起業家のつながりが望まれる。その点、カイロでは政治情勢が安定しないため、行政による起業家支援はまだあまり望めない状況にある。だからこそ、Alfi氏による取り組みは一層大きな意義をもつ。

そして、今カイロをはじめMENA地域の成長に大きな期待をしているのはAlfi氏だけではない。今回3度目を迎えるRiseUPは、これまでカイロにフォーカスしていた段階を超えて、MENA地域全体のつながりを築くことに注力した。そして、MENA地域外からの投資家や企業、ジャーナリストも会場では目立っていた。今月はじめにMENA地域のシードステージスタートアップを対象に3000万ドル規模のマイクロファンドの設立を発表した500 Startupsもイベントに参加。ファウンダーのDave McClure氏も訪れた。

RiseUp Summit
500 StartupsのファウンダーDave McClure氏の対談後(筆者撮影)

Facebook、Google、Uberといった企業もまた地域に秘められた機会に注目している。起業家やスモールビジネスの支援、教育を通じて、現地での存在感を高めることを目指している。

現地の起業家たちは、こうした経験やノウハウの厚い投資家や企業から学ぶことに熱心で、ワークショップや対談セッションの後も積極的に質問やピッチをしていた。

500 StartupsとともにGeeks on a Planeという、MENA地域のスタートアップハブ都市を訪問してシリコンバレーの投資家と現地の投資家、起業家とのつながりを深めるツアーに参加していたシリコンバレーの Quest Venture Partnersのマネージングパートナー、マーカス・オガワ氏は、MENA地域のスタートアップの状況について「エグジットの選択肢が少ないなど、まだまだ現地の起業家にとってはチャレンジは大きい」と言う。同時に、「今の時期に中東に行くことについては不安があったけれども、実際に現地に来たらそんな不安感は一気に消えた。テレビで報道されることと現地とのギャップは大きい。アラブの人々のホスピタリティに感動した」と語る。

私自身も今回のカイロ訪問に関しては、心配してくれた友人も多かった。実際、今月はじめにカイロ中心部のナイトクラブで爆発事件があり、16名の人々が死亡した。それでも、短い期間ながらも実際にカイロを訪れてみて、起業家の意欲やまた海外から来たゲストをもてなす現地の人々のホスピタリティに感動せずにはいられなかった。政情や社会の不安を抱えながらも、彼らは前を向いていて、そして外国人にとても優しかった。

「起業家は、何事によっても行動を妨げられてはならない」とAlfi氏が言ったように、社会が安定するのを待つのではなく、目の前の機会をつかんで変革を起こしていこうとする起業家の力がイベント全体で感じられた。

後編では現地で注目されるスタートアップをいくつか紹介したい。

RiseUp Summit
TechcrunchのMike Butcher氏とFacebook, Uber, Googleのディスカッション(筆者撮影)
RiseUp Summit
2日目の最後に開催されたスタートアップバトル(筆者撮影)
RiseUp Summit
RiseUp Summit 2015(筆者撮影)
RiseUp Summit
RiseUp Summit 2015(筆者撮影)

関連記事:
欧米の投資家も注目するMENAーー12月にカイロで4000名規模の「RiseUP Summit」が開催
スタートアップが成長中のMENA(中東・北アフリカ)、注目される都市やエコシステムの概要

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2015年の中東を賑わせるスタートアップ17選〜「Startup Istanbul 2015」ファイナリストの顔ぶれ

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本稿は Startup Istanbul 2015 の取材の一部である。 先週、トルコ・イスタンブールで開催された、中東・北アフリカ地域最大のスタートアップ・カンファレンス「Startup Istanbul 2015」から、ピッチ・コンペティション「Startup Challenge」の模様をお伝えしたい。Startup Challenge では、世界各国から応募が寄せられ、その中から68カ国の1…

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本稿は Startup Istanbul 2015 の取材の一部である。

先週、トルコ・イスタンブールで開催された、中東・北アフリカ地域最大のスタートアップ・カンファレンス「Startup Istanbul 2015」から、ピッチ・コンペティション「Startup Challenge」の模様をお伝えしたい。Startup Challenge では、世界各国から応募が寄せられ、その中から68カ国の100チームが予選を通過した。

メンタリングの結果50チームに絞られ、さらにそこから Startup Istanbul 2015 前日に開催された投資家による審査を経て、17チームがファイナリストに残った。昨年の結果と比べてみると、パキスタン勢がファイナリストに3チームも食い込んでおり、圧倒的に優勢を誇っているのがわかる。

Startup Challenge 決勝の審査員を務めたのは次の方々だ。

  • Steve Blank 氏(起業家 兼 起業家精神に関する教育者、著述家)
  • Andrea Barrica 氏(500 Startups ベンチャーパートナー)
  • 佐藤輝英氏(BEENEXT 創業者)

なお、ピッチの MC は、オジェギン大学教授の Erhan Erkut 氏が務めた。当初、500 Startups からは Dave McClure が審査員を務める予定だったが、Dave は時差ボケによる疲れとのことから Andrea が代打を務めることとなった。

優勝:NIMS(ケニア)

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ケニアにおいては、人口の約半数は銀行口座を持っていない。したがって、多くの企業においては社員に給料を現金で支払っているが、このため給料支払の業務が煩雑になる。NIMS は、銀行口座よりも普及率の高いモバイルを金銭授受の窓口にすることで、給料支払に関わる手間を省くことができる。モバイルで給料を受け取った社員は、そのままモバイル決済で商品を購入したり、現金化したりすることができる。

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2位:iGrow(インドネシア)

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iGrow はインターネット越しに農作物を育てることができるプラットフォームだ。都会では農業を営むことができないユーザが、iGrow を介して資金をスポンサードし、遠く離れた農園で農作物の栽培を依頼することができる。投資した資金によって、農作物からは収穫売上が得られる。ユーザはその収穫売上の40%を手にすることができ、残りの60%はその後の農作物の育成のために使われる。Startup Asia Jakarta 2014 では優勝している

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3位:Taskulu(イラン)

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Taskulu は、タスク管理ツールの Trello と ビジネスグループ内情報共有ツール Slack の連携機能の提供に特化したサービス。もともとは共有情報の、グループ内のアクセス制限を管理する機能を提供していたが、ユーザからの声を受けて、現在の形にピボットした。Taskulu を使うことで、ユーザはプロジェクトの作成や担当者のロール付与が容易になる。ユーザの多くはイラン国外にいて、これまでに80万ドルの資金調達をクローズしている。

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Mytoddlr(ナイジェリア)

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Mytoddlr は、小学校入学前の子育てに関する、保護者のためのモバイルコミュニケーション/コラボレーション・プラットフォーム。これまでに2,000人の保護者が利用している。子供の成長、日常の活動、記憶に留めるべき瞬間をシェアして、保護者の子育てを支援する。子供の睡眠時間、トイレの時間などもアプリのアナリティクス画面で分析・管理できる。

Pockee(ギリシア)

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Pockee は、スーパーマーケットへ顧客を誘導する O2O アプリ。人気ブランドのディスカウント・クーポンを入手することができ、スーパーで利用することができる。連日、200以上の日用品のクーポンが提供され、ギリシア国内で、最寄りのスーパーでの買い物時に利用が可能。割引が適用された購入については、買い物から1〜7日以内にユーザの銀行口座または PayPal の口座に割引金額がキャッシュバックされる。

Melissa Climate(ブルガリア)

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Melissa Climate はエアコンにつながる IoT。スマートフォンを使って、エアコンが備え付けられている場所以外から遠隔制御できるほか、現場の気候条件、ユーザの習慣などを学習し、利用する電力を最大25%カットすることができる。先ごろ、香港で開催されたスタートアップ・カンファレンス RISE のピッチ・コンペティションで優勝した、香港のスタートアップ Ambi Climate にもコンセプトが似ている。

Picturesqe(ハンガリー)

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Picturesqe は人工知能により、数多くの写真の中から必要な写真を即座に探し出すことができるソリューション。深層学習によりユーザの好みを理解して、ある対象物を撮影した複数の写真の中から、ユーザが最も欲する写真をヒットすることができる。同じ人物が写っている写真をグルーピングできるほか、トリミングしても写真をぼかさずにズームインできる IntelliZoom 機能、ビジネスやプライベートで多くの写真を扱う人に便利な機能が満載。

Expensya(フランス)

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Expensya は、中小企業向けの社員の経費精算を効率化するモバイルアプリ+クラウドソリューション。社員はアプリを使って、手入力またはレシートの写真を撮ることで経費入力が可能。多くの経理アプリケーション向けにデータをエクスポートできるほか、ダッシュボードを通じて会計士がデータにアクセスすることもできる。日本の Staple とコンセプトは似ている。アプリは、iOS、Android、Windows Phone でダウンロード可能。1ユーザあたり月額6.99ユーロ。

WebHR(パキスタン)

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WebHR はクラウドベースの人材管理サービス。フリーミアムサービスで、社員10人までのスタートアップや中小企業は無料で利用することができる。社員数10人を超えた起業には、ユーザ一人あたり60セントの月額費用がかかる。これまでに12,000社のサインアップがあり、うち、190カ国の400社は既に有料ユーザとのこと。今後は、欧米を中心に Fortune 500 など有名企業を顧客に獲得したいとしている。

Hajj Guider(パキスタン)

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Hajj Guider は、イスラム教徒にとって欠かすことのできないメッカ巡礼(Hajj)や小巡礼(Umrah)を、問題なくやり遂げることをサポートするアプリ。巡礼者同士の情報共有が可能で、メッカ巡礼者向け特別便(ハッジ・フライト)、宿泊情報、ナビゲーションや混雑していない場所の情報などを得ることができる。近年、メッカ巡礼においては、巡礼者混雑による将棋倒し死亡事故などが相次いでおり、情報共有によって、それらの問題を未然に防ぐ意図もある。2016年初頭にアプリをリリース予定。

SecurityWall(パキスタン)

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SecurityWall は、Startup Istanbul 史上最年少となるパキスタンの17歳の少年によるスタートアップ。サーバ、ソフトウェア、ウェブアプリなどの脆弱性診断やマルウェアの防御や除去を定期的に実施してくれるサービスを提供。近年、サイバーアタックやマルウェアなどによる被害が増加する一方、企業の中にはセキュリティに関する専門家が置けないのが実情。これらの企業に、SecurityWall はクラウド的にセキュリティ・サービスを提供する。2015年4月に開催された Cyber Secure Pakistan で優勝している。

Transterra Media(レバノン)

Transterra Media は、ニュース、ジャーナリズム、広告用のテキスト、写真、ビデオなどを販売できるマーケットプレイス。4,000人のコンテンツ供給者がいて、コンテンツを購入するニュース・パブリッシャーには、Al Jazeera や NBC など中東や欧米の放送局など。販売できたコンテンツについては、売上の70%をコンテンツ供給者、30%を Transterra Media で分配する。コンテンツ供給者は、ソーシャルメディアを使って集めている。来年には、年間200万ドル程度の売上を見込んでいるとのこと。

WePress(トルコ、アラブ首長国連邦)

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WePress は、記事を書くジャーナリスト、ニュースを映像で伝えるビデオジャーナリストを、テーマに応じて該当する分野の出版物、オンラインニュースサイトの編集者とつなぐマーケットプレイス。出版放送分野の企業や編集者のディレクトリ・データベースが用意されており、ジャーナリストは自身の過去作品を提示し、売り込みをすることができる。編集者とのやりとりができるメッセージ機能も搭載。

Waveit(イスラエル)

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Waveit は、写真やビデオを投稿し、Tinder ライクなインターフェイスにより、好きなら右へ、嫌いなら左へ、お気に入りなら下へ、シェアするなら上へスワイプすることで、関心の近い人々とつながることができるソーシャルアプリ。自分が写真を撮った位置情報が地図上に表示されるほか、その写真投稿を気に入った(wave)したユーザの情報も地図上に表示され、自分の投稿がどこまで影響を及ぼしているかを可視化することができる。

Uplift(アメリカ)

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Uplift は、スタンフォード大学発の無人航空機(UAV)スタートアップ。社会起業(ソーシャル・アントレナーシップ)を念頭においており、地理的または政治的に人道救助が必要な人たちに救援物資を届けることを目的としている。近年、特にトルコからヨーロッパに広がるシリア難民の問題解決の一助として、国境を越えて難民に物資を届けることが一つの想定ユースケースとして披露された。

Welcome(ギリシア)

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Welcome は、初めて行った旅先で、まるで友人が迎えてくれるかのようなサービスを提供。空港に降り立ち右も左もわからない中で、空港での車によるピックアップ、データ通信用の SIM カードの提供、宿泊先の提供などを実現する。Airbnb や Uber など、複数のシェアリングエコノミーサービスとの連携により、これらのサービスをワンストップで提供できるのが特徴。訪問先に関する Q&A もアプリを通じて受け付ける。アメリカでは出張の多い人のために、衣料品を預かり、出張の都度ホテルまで洗濯した衣料品をスーツケースにパックして送ってくれる Dufl が存在するが、このようなサービスと連携しても面白いかもしれない。

Gaming Battle Ground(クロアチア)

Gaming Battle Ground (GBG) は、ユーザがオンラインゲーム対戦を作成し、参加することで収入を得ることができるプラットフォーム。ゲームを選び、参加人数と対戦日をセットするだけで対戦を作成できる。eスポーツのゲームを提供するプロバイダー複数社と提携しており、これらのゲームのトーナメントを簡単に作成できる。今年3月にセルビアのベオグラードで開催された Startup Sauna 地域大会で優勝。

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スタートアップが成長中のMENA(中東・北アフリカ)、注目される都市やエコシステムの概要

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12月にエジプトのカイロで開催される4000名規模のスタートアップカンファレンス「RiseUP Summit」の紹介と共に、中東と北アフリカ地域「MENA」におけるスタートアップシーンの隆盛についてこちらの記事でお伝えした。 MENAのスタートアップシーンに関してもう少し掘り下げて、全体像をより分かりやすくお伝えできればと思う。 スタートアップ都市「ABCD」ー アンマン、ベイルート、カイロ、ドバ…

 via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “Andrew A. Shenouda“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

12月にエジプトのカイロで開催される4000名規模のスタートアップカンファレンス「RiseUP Summit」の紹介と共に、中東と北アフリカ地域「MENA」におけるスタートアップシーンの隆盛についてこちらの記事でお伝えした。

MENAのスタートアップシーンに関してもう少し掘り下げて、全体像をより分かりやすくお伝えできればと思う。

スタートアップ都市「ABCD」ー アンマン、ベイルート、カイロ、ドバイ

上記の記事でも触れたが、MENA地域のスタートアップハブとして注目される都市は「ABCD」と呼ばれる。Aはヨルダンのアンマン、Bはレバノンのベイルート、Cはエジプトのカイロ、Dがアラブ首長国連邦(UAE)のドバイだ。

Wamdaのレポートによれば、エジプト、ヨルダン、レバノン、UAEのみで2010年以来設立されたスタートアップ支援機関の6割を占めている。

ちなみに、各国と都市の人口がどれくらいかというと、ヨルダンは811万(アンマンは115万)、エジプト8848万(カイロ1877万)、レバノン618万(ベイルートは222万)、UAE 577万(ドバイ241万)といったかんじだ(いずれもCIA の The World Factbookより)。

人口ではエジプトが群を抜いており、またカイロなど都市人口も多い。人口規模だけでなく、若者が多く、インターネットやモバイルの普及率も急速に伸びている点が特徴的だ。以下は90年代末から2013年にかけての人口におけるインターネット使用者率を各国で比較したグラフだが、その成長スピードは非常に速い。

なお、Wamdaのレポートによると、ファウンダーの7割が男性であり、その多くが海外で学んでから自国に戻っているという。グローバル感覚を持ち、他文化にオープンなファウンダーがスタートアップの立ち上げをしているという印象だ。

同時に、現地のサポートシステムや資金調達の環境もここ数年で整いつつある。アクセラレータプログラムとしてよく知られるのは、カイロのFlat6Labs、アンマンのOasis500、ベイルートのSeeqnce、ドバイのSeedStartupあたりだろう。

また、スタートアップへの出資者の8割以上がローカルな出資者だという。とはいえ、イランのスタートアップイベントでも聞いたことだが、中東のスタートアップシーンにおけるグローバルな民族コミュニティ「ディアスポラ」の存在は大きく、その背景にはグローバルなネットワークが存在していると推測する。

なお、同地域での投資に積極的なグローバルなVCは 500 Startups。2013年には7社、2014年に9社出資してきた。現地にパートナーを有し、スタートアップのスカウトにも積極的だ。500 StartupsのパートナーHasan Haider氏は、MENAの魅力について次のように語る。「MENA地域には、まだ手がつけられていない機会が眠っている。4億の人口が同一言語と似た文化を有し、スマートフォン普及率が50パーセントを超えるマーケットもある。人口の3分の1は15歳以下だ」

資金調達や人材の獲得、MENA地域内における国を超えた事業展開においてはまだまだチャレンジが存在するようだが、同地域のスタートアップエコシステムは確実に進歩しており、これから大きな期待ができるのではないだろうか。引き続き、MENAの動きに注目してみたい。

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欧米の投資家も注目するMENAーー12月にカイロで4000名規模の「RiseUP Summit」が開催

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MENA(ミーナ)ーとは「Middle East(中東)」と「North Africa(北アフリカ)」を合わせた市場を指すが、この地域でのスタートアップが徐々に盛り上がりを見せており、地域外の投資家からの注目も高まっている。 エジプト、アラブ首長国連邦、ヨルダン、レバノンなどの国がMENAには含まれるが、特に都市の人口も多く、スタートアップシーンが成長中であるカイロでは、12月12、13日に「Ri…

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MENA(ミーナ)ーとは「Middle East(中東)」と「North Africa(北アフリカ)」を合わせた市場を指すが、この地域でのスタートアップが徐々に盛り上がりを見せており、地域外の投資家からの注目も高まっている。

エジプト、アラブ首長国連邦、ヨルダン、レバノンなどの国がMENAには含まれるが、特に都市の人口も多く、スタートアップシーンが成長中であるカイロでは、12月12、13日に「RiseUp Summit」というスタートアップカンファレンスが開催される予定だ。オーガナイザーのAbdelhameed Ahmed Sharara氏にカンファレンスについて、またローカルなスタートアップシーンについて話を聞いた。

「アラブの春」がきっかけで市民の起業意欲が高める

Sharara氏は、スタートアップシーンが活気づくきっかけとして、2011年の反政府デモ「アラブの春」は大きかったと話す。歴史的な大規模反政府デモによってムバラク独裁政権に終止符が打たれたのちに経済改革が行われた。これがきっかけで、市民の間にイノベーティブな事業を行いたいという動機が高まっていったという。いくつもの事業が立ち上がると同時に、サポートシステムの必要性も生じ、国内また世界に離散しているエジプト人たちが集まって、アクセラレータプログラムやインキュベータが立ち上げられていった。

「RiseUp Summit」はそうしたスタートアップエコシステム内の横のつながりを促進するために生まれたイベントだ。このイベント自身もまたクラウドファンディングによって誕生している。Sharara氏は話す。

こうしたエジプト国内のスタートアップムーブメントもまた、「アラブの春」と同じ動機から生まれています。つまり、政府が動くのを待つのではなく、市民自らが立ち上がって社会を変革していくという意識です。

エジプトにおけるスタートアップムーブメントは「社会変革」の側面も大きいと語るSharara氏の言葉が印象的だった。

2013年にスタートしたRiseUp Summitは、初年度に2000名の参加者を集め、2度目の昨年にはその数が3500名まで膨れ上がった。今年は、エジプト以外のMENA地域全体を積極的に巻き込むことで、4000〜4500名規模のイベントにすることを目指している。Sharara氏によれば、MENA地域のスタートアップハブとして注目される都市は「ABCD」と呼ばれるという。Aはヨルダンのアンマン、Bはレバノンベイルート、Cはエジプトのカイロ、Dがアラブ首長国連邦のドバイだ。このABCDの都市のスタートアップと投資家をイベントに巻き込んで、地域の横のつながりをさらに深めることを目指す。

欧米の投資家からの注目も高まる

http://wuzzuf.net/
エジプトの人材採用プラットフォーム「Wuzzuf」

また、MENA地域のスタートアップに対する注目は欧米にまで広がりつつある。たとえば、BasharSoftというスタートアップが立ち上げた人材採用プラットフォーム Wuzzuf は、今年8月にシリーズAラウンドで170万ドルを調達し、これまでのエジプト国内では最大規模の資金調達となった。注目すべきは欧州のVCからの投資が入っていることだ。そのラウンドには、スウェーデンのVostok New Venturesや英国のPiton Capitalが参加。TechCrunchの記事によれば、VostokとPitonにとっては初のエジプト、中東地域への投資になるという。また、Wuzzuf.net は500 Startupsからも投資を受けている。

Wuzzufのコーファウンダー兼CEOであるAmeer Sherif氏は資金調達の発表の際に次のようにコメントし、エジプトの秘められた可能性の大きさについて語っている。「エジプトにおけるテックスタートアップの可能性は非常に大きい。9000万人という、ペルシャ湾岸諸国、レバント諸国の人口を合わせた数よりも大きい人口を持つ市場における機会はとても大きい。インターネットの普及率も過去5年間で倍増した」

RiseUp Summit はほとんどのプログラムが英語で開催されるとのことで、欧米の投資家とMENA地域のスタートアップのつながりがさらに促進されることが期待される。

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