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タイの起業家が開発した植物由来代替ミルク、牛乳アレルギーに苦しむ人に福音となる「Sesamilk」とは

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2016年、タイのゴマビジネスで10年以上の経験を持つ起業家 Siripen Suntornmonkongsri 氏は、自身の専門知識を活かして、人々に正しい方法でゴマを摂取することを促すだけでなく、環境にも優しい製品を開発することを決意した。 そうしてまもなく、彼女は食品科学者でバンコクのモンクット王工科大学ラートクラバン校教授でもある2人—— Napatrapee Luengsakul 氏と …

CEO Siripen Suntornmonkongsri 氏(左)と、取締役 Wattana Suntornmonkongsri 氏(右)
Image credit: Sesamilk Foods

2016年、タイのゴマビジネスで10年以上の経験を持つ起業家 Siripen Suntornmonkongsri 氏は、自身の専門知識を活かして、人々に正しい方法でゴマを摂取することを促すだけでなく、環境にも優しい製品を開発することを決意した。

そうしてまもなく、彼女は食品科学者でバンコクのモンクット王工科大学ラートクラバン校教授でもある2人—— Napatrapee Luengsakul 氏と Tongchai Puttongsiri 氏——と出会い、アイデアを練り上げた。

我々の研究は良い結果をもたらし、それが2018年に Sesamilk を開発することにつながった。(Suntornmonkongsri 氏)

Sesamilk とは?

Image credit: Sesamilk Foods

Sesamilk は、タイ国家イノベーション庁のアクセラレータ「Space-F」第1期に採択された Sesamilk Foods が開発した代替乳製品で、脂肪分が豊富なタイ産の高級ゴマから抽出され作られる。

他の植物由来ミルクとは異なり、Sesamilk は天然の種子から抽出されます。2019年3月に発売されたこの製品には、健康に有害な成分は一切含まれてい無い。

世界中で、乳製品や豆乳にアレルギーを持つ人が増えている。この事実と相まって、ベジタリアンや健康志向の人が増えている。Sesamilk はこのような人々をターゲットにしている。(Suntornmonkongsri 氏)

ゴマは、ゴマの木のさやに入っている、油分を多く含んだ小さな種子だ。この種子には多くの潜在的な健康効果があり、何千年も前から民間療法で使用されてきた。

アジアでは、ゴマの種は饅頭のふりかけに使われ、油は料理に広く使われている。しかし、油やふりかけとして使用した場合、その栄養素はそのままでは人体に吸収されない。

飲み物 にすると、ゴマの栄養素をまるごと人体に吸収させることができる。さらに注目すべきは、ゴマにはガンの治療薬が含まれていると言われていることだ。(Suntornmonkongsri 氏)

健康への効能

Image credit: Sesamilk Foods

Suntornmonkongsri 氏は、Sesamilk にはセサミン、セサモリン、セサモールなどの栄養素が含まれていることを指摘している。セサミンは、熱発育と脂肪の酸化を高め、脂肪燃焼酵素を調節し、脂肪の貯蔵を減少させ、インスリン感受性を高め、ケトン体の形成を促進することができる。

また、セサミンは強力な抗酸化物質でもあり、体内のコレステロール値を低下させ、HDL レベルを調整し、血圧を低下させ、肝臓と腎臓の健康を改善する。

我々は「機能性ミルク」と呼んでいる。Sesamilk には、豆乳に黒ゴマを混ぜたものよりもセサミンが128倍も含まれており、成長ホルモンやコレステロールが含まれていないため、牛乳よりも健康的で、アレルギーの心配も無い。

Sesamiilk は自然由来のもので、1歳未満の子供でも食べることができ、乳糖不耐症、牛乳アレルギー、ベジタリアン、ビーガンの方にも利用できる。(Suntornmonkongsri 氏)

現在、Sesamilk はタイ国内の約500店舗(オンラインとオフライン)で販売されている。また、日本、マカオ、香港、ベトナムにも輸出されている。

タイだけでなく、日本のようにゴマの利点をよく知っている国からも、お客様から良いフィードバックを得ている。(中略)

我々はまた、グローバル市場での Sesamilk の事業機会を見出している。牛乳代替品として、Sesamilk は、泡立ちが良く、コーヒーや飲料と相性が良いので、HORECA(ホテル・レストラン・カフェ業界)、中でも特にカフェで大きなチャンスがあると考えている。(Suntornmonkongsri 氏)

同社は Sesamilk の生産に加え、タイでゴマ農業を推進している。ゴマは干ばつに強いため、経済的かつ持続可能な事業だ。

挑戦

認知度を高めることは、Sesamilk にとって、最初から大変な作業だったと CEO は認めている。先発企業として、同社はマーケティング活動に多くの投資をし、同時に多くの国でブランドの認知度を高めようとしなければならないかもしれない。

資金調達もまた、我々が成長する上で重要な部分を占める。シンガポールの Lee Choo Chien 氏とタイの Somchai Hirunyakorn 氏という2人のエンジェル投資家から、すでに最初のシード資金調達を受けている。しかし、今年はさらに拡大するために、より多くの資金を調達する予定だ。(Suntornmonkongsri 氏)

この分野では、シンガポールの TurtleTree Labs が競合しており、同社は細胞ベースの技術を用いて動物を必要とせずに牛乳を作ることができる。1月には、サウジアラビアの起業家兼投資家アルワリード・ビン・タラール王子が所有する VC の KBW Ventures が TurtleTree Labs に投資した

【via e27】 @e27co

【原文】

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2人のインド人ヴィーガンが立ち上げた、植物由来代替卵スタートアップEvo Foods

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Tech in Asia では、有料購読サービスを提供。有料記事の閲読、全記事への回数無制限閲読、5万社を超える企業データベースへの無制限アクセス、カンファレンスへの限定割引などの特典があります。詳しくはこちらから


代替肉製品は最近、スーパーマーケットやファーストフードチェーンでもヒットしており、注目を集めている。インドでは、あるスタートアップが植物由来の液体卵を製造し、この分野での違いを生み出そうとしている。

Evo Foods の COO Shraddha Bhansali 氏は Tech in Asia に次のように語った。

クリーンなタンパク質製品、特に動物性製品に代わる植物由来の代替品の市場に需給ギャップがあることに気づき、これに対処すべく Evo Foods を立ち上げることにした。

Evo Foods の代替卵で作られたオムレツ
Image credit: Evo Foods

ムンバイに拠点を置く Evo Foods は、インドの第一級都市に住む5,000万〜6,000万人をターゲットに、昨年事業を開始した。Evo Foodsは、インドの伝統的な卵市場に対してクリーンなタンパク質の代替品を作るために、深層食品科学により豆類などの植物からタンパク質を抽出しているという。

このスタートアップは、コレステロール、抗生物質、動物虐待のないインド初の100%植物由来の液体卵を開発したとしている。また、従来からの卵の味、食感、タンパク質含有量を効果的に模倣している。

報告書によると、2019年の世界の植物由来食品産業は42億米ドル規模とされている。インドは、インドネシア、ベトナム、ブラジルとともに、植物由来食品の有利な市場の1つと考えられている。

別の報告書によると、インドはアジア太平洋地域の植物性タンパク質市場の約10%を占めているという。同国の食品産業の価値は2023年までに5億6,500万ドル以上に達すると予想されており、これは主に中低所得世帯の購買力の上昇、若者の増加、健康志向の高い中高年層の人口が牽引している。

新型コロナウイルスの感染拡大はまた、アジアにおける代替タンパク質産業の成長を加速させる上で重要な役割を果たした。

潜在的な障害

しかし、Evo Foods は業界に内在するいくつかの課題とともに、厳しい競争に直面する可能性がある。結局のところ、大手企業がグローバルに展開したいと考えるのは当然のことだ。

例えば、アメリカを拠点とする Impossible Foods は、総額13億米ドルの資金調達を行い、現在、香港、マカオ、シンガポール、中国に進出しています。

イギリスを拠点とする Just は、インドを含むアジアへの進出も視野に入れており、植物由来の卵をより多く販売している。Just はすでに4,000万個の植物由来卵を販売しているいう。

インドでは、植物由来の牛乳を製造する Goodmylk や、インド工科大学デリー校が立ち上げた Plantmade などが、ヴィーガン用のパニール(編注:南アジア圏のチーズ)や植物由来のスクランブルエッグを販売している。

一方、Evo Foods の製品はまだパイロット段階。当初は7月に発売する予定だったが、ロックダウンの影響で10月に延期せざるを得なかった。

あるインタビューで、Evo Foods は同社の植物由来の卵が、今後8ヶ月間でベーキングにおける従来の卵の使用を置き換えることを期待していると述べた。別の頻繁な利用用途も考えられる。

左から:Evo Foods COO Shraddha Bhansali 氏、CEO Kartik Dixit 氏
Photo credit: Evo Foods

顧客への啓蒙、つまり植物由来の卵を消費することのメリットを顧客に納得してもらうことも課題だと Bhansali 氏は言う。

特に初期の段階では価格設定も問題となる。Evo Foods は以前、従来の卵よりも60%高い価格設定を計画しているとしていた。しかし同社は、生産量の拡大に伴い、2年程度でコストが下がると考えている。

我々はクリーンなタンパク質企業になりたいので、代替タンパク質業界に目を向けており、そのもとであらゆる種類の製品の定番ブランドになることを目指している。(Evo Foods CEO Kartik Dixit 氏)

しかし、同社は少なくとも今後3年間は、まず植物由来の卵製品と顧客教育に力を入れていくという。

グローバルな野望

Evo Foods は正しい道を歩んでいるようだ。これまでに、アメリカを拠点とするアーリーステージ VC の VegInvest、Wild Earthの 共同創業者 Ryan Bethencourt 氏、Shiok Meats の共同創業者 Sandhya Sriram 氏、アメリカを拠点とする VC の Big Idea Venturesから資金調達を行っている。

Big Idea Ventures は、5,000米万ドル規模の「New Protein Fund」を通じて、植物由来食品、食品技術、代替タンパク質に取り組む企業に投資している。

Evo Foods は、ニューヨークの VC が運営するフードテックアクセラレータの第2期に採択された。Bhansali 氏によると、この動きは彼らのスタートアップが来年末までにアメリカに進出するのに役立つだけでなく、将来的にはインド、東南アジア、オーストラリアにも進出することになるという。

Evo Foods のコアチームは、Bhansali 氏と Dixit 氏に加え、チーフフードサイエンティストらからなる。Bhansali 氏は、ムンバイでベジタリアンレストランとバーを経営するヴィーガンだ。また、3年前から環境に配慮したヴィーガンでもある Dixit 氏は、Evo Foods を設立する前、オンライン食料品デリバリプラットフォームと培養肉の会社で働いていた。

【via Tech in Asia】 @Techinasia

【原文】

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陸上養殖の普及と共に増す、IT活用の「スマート漁業」の可能性

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ピックアップ:AKVA group ASA: Potential new land based project ニュースサマリー:ノルウェー拠点のAquacon社は、米国における陸上養殖事業の展開にあたり養殖機器の総合サプライヤーAKVAグループとのパートナシップを発表した。養殖機器や開発リソースの提供面での協業が期待されており、メリーランド州にて1万5000トンのサーモン陸上養殖が計画されている…

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Photo by mali maeder on Pexels.com

ピックアップ:AKVA group ASA: Potential new land based project

ニュースサマリー:ノルウェー拠点のAquacon社は、米国における陸上養殖事業の展開にあたり養殖機器の総合サプライヤーAKVAグループとのパートナシップを発表した。養殖機器や開発リソースの提供面での協業が期待されており、メリーランド州にて1万5000トンのサーモン陸上養殖が計画されている。

重要なポイント:日本の養殖産業が1990年代を境に横ばいになりここ10年は落ち込む一方、ノルウェーでは1980年代から毎年2桁を超える高い成長率で成長し2011年には日本の生産量を上回っている。これを支えるのがスマート漁業テクノロジーだ。スマート漁業のリーディングカンパニーのひとつであるAKVAグループとAquaconが、陸上養殖の大型施設設置を共同で推進することにより、陸上養殖を始めとした次世代型の養殖技術の社会実装を推進する起爆剤となりうる。

詳細情報:急成長するノルウェーの養殖産業を支えるAKVAグループは、自社内にソフトウェア部門を抱えているのが特徴。給餌システムのようなハードウェアに加え、養殖魚の管理や養殖施設の管理を行うソフトウェアの開発と販売を行う養殖機器の総合サプライヤーとしての活躍も見受けられる。

  • 主なプロダクトには、データに基づいた最適な給餌量の提案や環境調査データの管理を行うFishtalk Control、養殖生産現場の機器を制御するためのAKVA connectなどが挙げられる。
  • 国内にも、IT技術を活用したスマート漁業のプレイヤーは年々登場している。KDDIやNTTドコモのような大手通信事業者を始め、ウミトロンFRDジャパンオプティムなどのスタートアップが挙げられ、流通面での企業としてはUUUOなどが挙げられる。
  • KDDIでは、IoTセンサーを活用し、水温・酸素濃度、塩分などの環境データを自動測定することで、無線通信回線を活用しクラウド上にデータを可視化&蓄積させ鯖の養殖事業効率化を目指す取り組みを行っている。また、ドローンを活用した早期の赤潮検知でマグロ養殖漁業者の負担と作業効率化を目指す取り組みなどが推進されている。
  • NTTドコモでは、ITスタートアップのアンデックスと協業し、カキ養殖における水温センサ付きブイを設置し、アプリ開発はアンデックス、通信モジュール部とクラウドサーバー管理はドコモが行うプロジェクトを実施。双日やISIDとのマグロ養殖事業におけるIoTやAI活用の実証実験を行うなど、他社との協業を積極的に進めている。
  • 一方、スタートアップのウミトロンでは、スマート給餌機や世界初のリアルタイム魚群食欲判定などの海中におけるスマート漁業ソリューションを提供する。また、小型衛星を2022年度に打ち上げ、養殖業における衛星データ活用を推進していくことも発表するなど、地上と宇宙の両方からのビジネスを推進している点で注目を集める。
  • 陸上養殖の国内企業としてはFRDジャパンが挙げられ、同社の閉鎖循環式陸上養殖システムでは、天然海水や地下水を使用せず、水道水を100%循環させながら水産養殖を行うことが可能。

背景:国内の養殖産業が停滞する一方で、スマート水産や陸上養殖を含めた次世代型養殖技術の市場規模は右肩上がりの成長の予測がなされており、今後より一層活況となっていくとみられる。

執筆:國生啓佑/編集:増渕大志

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水産養殖技術のウミトロン、衛星データを活用した高解像度海洋データ提供サービス「UMITRON PULSE」をローンチ

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シンガポールと日本を拠点に水産養殖技術を開発するウミトロンは28日、海洋環境データを可視化する Web サービス「UMITRON PULSE(ウミトロンパルス)」をローンチした。衛星リモートセンシング技術を活用し、世界中のさまざまなエリアの高解像度の海洋データを日次で確認することができるため、養殖事業者はより効率的な生育やリスク管理が可能となる。 UMITRON PULSE では現在、海水温、塩分…

シンガポールと日本を拠点に水産養殖技術を開発するウミトロンは28日、海洋環境データを可視化する Web サービス「UMITRON PULSE(ウミトロンパルス)」をローンチした。衛星リモートセンシング技術を活用し、世界中のさまざまなエリアの高解像度の海洋データを日次で確認することができるため、養殖事業者はより効率的な生育やリスク管理が可能となる。

UMITRON PULSE では現在、海水温、塩分、溶存酸素、クロロフィル濃度、波高の海洋データを提供しており、画面を拡大・縮小することで、養殖場に近い局所的なデータと広範囲データの両方を確認することが可能。当日付の海洋データだけではなく、48時間以内の海洋環境変化を予測する機能も提供する。また海洋環境データ種類の増加、各種データの毎時更新、過去の海洋データとの比較分析機能の追加も予定している。近日中には、UMITRON PULSE のモバイル版アプリも公開の予定。

ウミトロンは2018年、産業革新機構、D4V、藤代真一氏、松岡剛志氏のほか、未来創生ファンドなどからなどから総額12.2億円を調達。昨年には、米州開発銀行(IDB)グループの IDB Lab から総額200万米ドルを調達し、ペルーのチチカカ湖で UMITRON CELL を使ったサーモントラウト養殖の効率化による地域経済活性化支援を開始した。また、世界最大のエビ養殖事業者である CP Foods と提携し、エビ養殖場での PoC を開始した。今年初めには、愛媛の海でブランド魚を育てるプロジェクトのクラウドファンディングを成功させている

via PR TIMES

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ホテル業界で始まるUberEats化、注目すべき「バーチャル・ルームサービス」モデルとは

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実店舗を持たず、「UberEats」「Postmates」「Doordash」に代表されるフード配達アプリ上でメニュー展開をする業態は「ゴーストレストラン」と呼ばれます(バーチャルレストランなどとも時折呼ばれます)。 ウェイトレスを雇用する必要がなく、調理場所さえ確保してしまえば、オンラインで出店が可能。経営のスリム化が図れます。人との接触が憚られる時勢に最適なソリューションとして世界中で認知・利…

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Butler Hospitality ウェブサイト

実店舗を持たず、「UberEats」「Postmates」「Doordash」に代表されるフード配達アプリ上でメニュー展開をする業態は「ゴーストレストラン」と呼ばれます(バーチャルレストランなどとも時折呼ばれます)。

ウェイトレスを雇用する必要がなく、調理場所さえ確保してしまえば、オンラインで出店が可能。経営のスリム化が図れます。人との接触が憚られる時勢に最適なソリューションとして世界中で認知・利用が高まりました。Uber創業者のTravis Kalanick氏も、同社退職後の今は「CloudKitchens」を立ちあげ、フード配達市場へ進出しています。すでに同社は50億ドルの企業価値がつけられているとのことです。

そして今、ゴーストレストランの業態をホテルに持ち込んだ事業モデルに注目が集まっています。新たなホテルビジネスを展開するのが「Butler Hospitality」。同社がニューヨークで2015年に創業し、7月10日1,500万ドルの資金調達を発表しています。

従来、ルームサービス経由で料理を注文する場合、サービス料金として数十ドルの非常に高額な料金がかかっていました。人件費が高い一方で注文量が少ないために、料金は高止まりせざるを得ないジレンマが起こってしまうケースです。

ルームサービスを頼むより、近くのレストランへ宿泊客が自ら出向いて料理を調達した方が格安に収まる場合もしばしばですが、見知らぬ土地であったり、ホテル周辺にレストランがないような場合は、渋々ルームサービスを頼まざるを得ない状況になります。

そこで活躍しているのがButler Hospitalityです。同社はバーチャル・ルームサービスを展開しているのですが、これがなんとホテル内のレストランを買収して自社事業として運営するモデルなのです。できたての料理を近隣30分以内で配達できるホテルに届ける、ルームサービス特化のフード配達事業を立ち上げています。

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Butler Hospitality ウェブサイト

ホテルとは完全別運営の、配達特化のレストラン「ゴーストレストラン」として事業を独立させており、配達距離の短いルームサービスを提供。Butler Hospitalityと提携するホテルは、従来より安い、できたての料理を宿泊客に提供できるようになります。自社でスタッフを抱えることもなく、月額利用料をButler Hospitality側に支払う形式になるため、コスト予測も容易にできるようになります。

一方、Butler Hospitality側に求められるのは需要予測です。UberEatsのように、配達需要・距離・時間でデリバリー料金が変動するダイナミック・プライシングとは違い、ルームサービス料金は一定である必要があります。この点を加味した上で、適切な配達拠点・料金設定が必要となります。

近隣ホテルと提携できているのはレストランを買収しているためです。運営を完全に独立させているため、レストランが置かれているホテルにサービスを特定させる必要がありません。売上の悪いホテルレストランを買収し、運営手法含めリブランドしながらネットワーク網を増やす、巧みなビジネスモデルと言えるでしょう。

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Butler Hospitality ウェブサイト

さて、Butler Hospitatlityの真価はパンデミックで発揮されています。先述したように、同社のレストランはホテルオーナーやビルテナントとも独立しています。そのため、率先してニューヨーク市内で日々必死になって働くエッセンスワーカーを支援する動きを見せています。「Businesswire」によると、医療従事者、隔離された高齢者、コロナ患者、パートナーホテルに滞在する軍人などに17万5,000食以上の食事を届けたとのことです。

コロナ禍、空回りのレストランを持つホテル事業者がButler Hospitalityと同じ事業を地域で展開することも十分考えられるでしょう。地域のエッセンシャルワーカー向けにサービス業態を変えることで、社会の共感性を得やくなるかもしれません。

確かに消毒作業のコストはバカにはなりませんが、この非常時に最前線でウィルス感染のリスクを被る人たちの受け皿の一つとなるアイデアとなるかもしれません。地域の医療機関や教育機関、行政から収益化することで、エッセンシャルワーカーを支える生活インフラ事業としてホテル事業を転換できる可能性もあると感じます。

宿泊料からの収益と比べれば微々たるものかもしれませんが、ホテル業界の生存戦略を考える上で、そして雇用を守る上で考えられる一つのソリューションではないでしょうか。

ニッチなデリバリー業態で成長を続けているのがButler Hospitatlityであり、毎年収益が2倍で増加しているレストラン・ネットワーク事業です。稼働が下がっている、ホテル内レストランを新たな事業として生まれ変わらせるモデルは日本でも十分に応用が効くかもしれません。

Butler Hospitatlityが提供するのはルームサービスですが、提供範囲およびレストラン買収・配達拠点を広げて一般ユーザーにも配達は可能でしょう。東京以上に状況が厳しいニューヨークから、新たなビジネスが芽を出してます。

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Alibaba(阿里巴巴)の食料品店チェーン「Freshippo(盒馬鮮生)」、上海の店舗でBeyond Meatの代替肉パティを今夏販売開始

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Alibaba(阿里巴巴)は1日、TechNode に送った声明の中で、同社のの食料品店チェーン「Freshippo(盒馬鮮生)」の上海店舗に Beyond Meat の植物肉パティが今夏登場すると述べた。 重要視すべき理由:アメリカの代替肉スタートアップ Beyond Meat は、中国市場への参入に意欲的だが、Starfield(星期零)や Z-Rou(株肉)など中国企業との競争に直面している…

KFC で提供されている Beyond Meat の植物肉パティ
Image credit: TechNode/Jiayi Shi

Alibaba(阿里巴巴)は1日、TechNode に送った声明の中で、同社のの食料品店チェーン「Freshippo(盒馬鮮生)」の上海店舗に Beyond Meat の植物肉パティが今夏登場すると述べた。

重要視すべき理由:アメリカの代替肉スタートアップ Beyond Meat は、中国市場への参入に意欲的だが、Starfield(星期零)や Z-Rou(株肉)など中国企業との競争に直面している。

  • Alibaba の人気の高いニューリテールのオンラインおよびオフラインストアと連携することで、Beyond Meat は中国都市部の消費者の目に止まりつつある。
  • Freshippo は一般消費者に加えハイエンド顧客をターゲットにしており、同社によると、販売商品の40%を高価な輸入品が占めているという。Beyond Meat の価格設定は、こういった富裕層の消費者の目を逃すことはないだろう。

Beyond Meat と Freshippo は、革新的なショッピング体験と製品をお客様に提供するというビジョンを共有している。(Freshippo のシニアディレクターでマーチャンダイジング責任者の Zhao Jiayu 氏)

詳細情報:植物肉パティは、7月上旬から上海にある Freshippo 50店舗で販売される。

  • Alibaba によると、杭州と北京の48店舗では2020年9月から植物性パティを販売する予定。
  • Alibaba と Beyond Meat は7月18日、上海でライブでの料理デモ、サンプル、景品を含む発売イベントを開催する予定。

背景:中国では豚肉の人気が牛肉を大きく上回っており、ベジタリアンの数が少ないため、代替肉パティの販売は難しい。

  • Beyond Meat は4月に中国市場に参入、スターバックス(星巴克)で植物ベースのメニューを発売した。
  • その後、中国で KFC、ピザハット、タコベル を運営する Yum China(百勝中国)と限定コラボ商品を発売した。6月にはこれらの店でBeyond Meat の商品が販売された。
  • 2015年に設立された Freshippo は、中国の20以上の都市に進出している。
  • Alibaba によると、Freshippo の売上の3分の2はモバイルアプリ経由であり、2020年3月時点で月間アクティブユーザは8億4,600万人を数えている。

【via TechNode】 @technodechina

【原文】

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ベルリン発の都市農業ソリューション「Infarm」、シリーズCラウンドで2億米ドルを調達へ

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<ピックアップ> Infarm looks to raise $200m for vertical farm expansion ベルリン発の都市農業(アーバンファーミング)ソリューションを開発するスタートアップ Infarm は、シリーズ C ラウンドで2億米ドルを調達しようとしている。関係者によれば、同社は既に1億4,000万米ドルの調達を完了している。バリュエーションは1年前のシリーズ B …

Image credit: Infarm

<ピックアップ> Infarm looks to raise $200m for vertical farm expansion

ベルリン発の都市農業(アーバンファーミング)ソリューションを開発するスタートアップ Infarm は、シリーズ C ラウンドで2億米ドルを調達しようとしている。関係者によれば、同社は既に1億4,000万米ドルの調達を完了している。バリュエーションは1年前のシリーズ B ラウンド(1億米ドルを調達)の際の2倍以上、数億米ドルに達するとみられる。

シリーズ C ラウンドにはこれまでに、Atomico、Balderton、TriplePoint、Cherry Ventures、LocalGlobe に加え、リヒテンシュタイン公国の皇太子 Alois von Liechtenstein 殿下のインパクト投資ビークル LGT Lightstone が参加しているとみられる。LGT Lightstone は、ミュンヘン発〝空飛ぶタクシー〟製造スタートアップ Lilium への出資でも知られる。

Infarm は今年2月、 JR 東日本(東証:9020)から調達額非開示の出資を受けたことを明らかにした。今夏には、JR 東日本傘下の高級スーパー「紀ノ国屋」で Infarm の仕組みを使った屋内(店内)栽培の農作物の販売を開始することを明らかにしている

新型コロナウイルス感染拡大が食品サプライチェーンを圧迫したことで、Infarm のような新業態には事業機会が増えた一方、同社の顧客の一部を占める飲食業の需要にも打撃を与えている。

この分野では、Bowery は Alphabet の GV などから1億4,000万米ドル以上を調達。また、SoftBank の支援を受け、Jeff Bezos 氏(Amazon 創業者)や Eric Schmidt 氏(Google 元会長)らも出資するアメリカのユニコーン Plenty は4億米ドルを調達している。3月下旬には、Bloomberg が Plenty が1億米ドル以上の新規調達を目指していると報じた

<関連記事>

via Financial Times

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フードデリバリの「最適ルート」を探せ!ーー需要高まる“物流A/Bテスト”に商機あり

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withコロナの現在、EC市場が急成長しています。それに伴い、配達サービス強化が急務になりました。人員を最小限にしてオンライン上だけで店舗展開、在庫スペースと配達拠点だけを持つ「バーチャル店舗」の機運が高まっていると感じます。 多くの事業者が、仕入れ・在庫管理・配達だけを担い、オンラインで広告する「スマート店舗経営」スタイルの良さに気が付くでしょう。この流れは実店舗を持つ大変さを知っている人にとっ…

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Photo by Norma Mortenson on Pexels.com

withコロナの現在、EC市場が急成長しています。それに伴い、配達サービス強化が急務になりました。人員を最小限にしてオンライン上だけで店舗展開、在庫スペースと配達拠点だけを持つ「バーチャル店舗」の機運が高まっていると感じます。

多くの事業者が、仕入れ・在庫管理・配達だけを担い、オンラインで広告する「スマート店舗経営」スタイルの良さに気が付くでしょう。この流れは実店舗を持つ大変さを知っている人にとって、不可逆的なトレンドとしてポストコロナでも加速していくかもしれません。

バーチャル店舗と相性が良いのは飲食業界です。たとえばUberEats上で商品を販売し、実店舗を持たず、配達拠点を兼ねたキッチンだけを所有・もしくは賃貸する業態が普及しようとしています。店員の人件費を削ることで効率的な事業運営が可能となりました。こうした業態は「バーチャルレストラン」「ゴーストレストラン」と呼ばれています。

グローバルフードデリバリー市場は2019年時点で1,074億ドル規模です。2020年には1,113億ドルにまで成長すると試算されています。「UberEats」「DoorDash」「GrubHub」「Postmates」の台頭と共に、世界中で配達ボリュームが増えている証左とも言えます。多くの飲食事業者がこうしたプラットフォームに加わり、店舗のバーチャル化を図ることは間違いありません。

参加事業者数が増えることは喜ばしいですが、プラットフォーム側は配達網の最適化に対する課題を新たに抱えています。

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Image Credit:nextmv

配達プラットフォーム企業が物流事業を運営する場合、その事業がどのように機能するかについて、細かくルールを決める意思決定アルゴリズムを構築する必要が出てきます。

TechCrunchで紹介された例ですが、たとえば業務を最適化するために、注文レストランに最も近いドライバーが食品を配達すべきだというルールを敷くとします。そうすると、近くにある別のレストランが一定の時間内に注文を受ける可能性が高いので、ドライバーは5分待ってから配達に向かうべきだという規定を追加することもするかもしれません。

これらのルールは、時間帯、場所、または何百もの他の要因に基づいて変更されることがあります。最終的にこの意思決定モデルは、規模が大きくなるとかなり複雑になります。コントロールできなくなる可能性が出てくるのです。

そこで登場したのが「nextmv」です。同社は「オペレーションズリサーチ」「Decision Science」の分野で活躍するスタートアップで、この分野はビジネス上の問題(多くの場合、複雑なオペレーション)に数学的モデルを適用します。

nextmvはオペレーションリサーチを活用して、主にフードデリバリー市場に参入しています。利用企業が自社独自の物流アルゴリズムを構築できるサービスを提供しているのです。膨大な量のデータを用いながらA/Bテストの要領でシミュレーションをおこない、先述したような意思決定のルールを作り出すことができます。

同社が参入するグローバルサプライチェーン分析市場は2018年で34.6億ドル規模です。2025年には98.75億ドルにまで成長する見込みです。年平均成長率は16.4%と試算されています。

もともと、オペレーションリサーチは、食材が届くまでの最適な配送ルート選択の自動化、医療スタッフのための最適なシフトスケジュール管理、サプライチェーンにおける価格設定などあらゆる分野に応用が効きます。しかし、現実では軍・防衛産業に人材を採られており、他の市場にあまりノウハウや知見、サービスが降りてきていませんでした。そこで高いシミュレーション技術をフード配達へと応用したのがnextmvとなります。

あらゆるモノがビッグデータとして分析・活用されていく現代。天候や交通情報、スタッフシフト構成、注文状況および事前予測から最適な配達ルートを常に導き出す、「フード配達版ナビゲーションシステム」に注目が集まるでしょう。単なるルート選択ではなく、個々の事情においてベストなルート選択を提案する、新たなGoogle Mapが求められているとも言えます。

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熊本発の植物肉スタートアップDAIZ、シリーズAラウンドで6.5億円を調達——A-FIVE、三菱UFJキャピタル、ニチレイフーズなどから

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※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから 大豆由来の植物肉原料「ミラクルチップ」を開発・製造する DAIZ(旧社名:大豆エナジー)は18日、シリーズ A ラウンドで6.5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、官民ファンドの A-FIVE(農林漁業成長産業羽化支援機構)、三菱 UFJ キャピタル、岡三キャピタルパートナーズ、ニチレイフーズ、大企業…

Image credit: Daiz

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

大豆由来の植物肉原料「ミラクルチップ」を開発・製造する DAIZ(旧社名:大豆エナジー)は18日、シリーズ A ラウンドで6.5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、官民ファンドの A-FIVE(農林漁業成長産業羽化支援機構)、三菱 UFJ キャピタル、岡三キャピタルパートナーズ、ニチレイフーズ、大企業各社が出資するベビーリーフメーカーの果実堂(果実堂は DAIZ の関連会社)。

DAIZ のこれまでの資金調達詳細は不明だが、2018年9月に西日本シティ銀行とQB キャピタルの運営する QB 第1号ファンドから1億円、2018年12月に鹿児島銀行から1億円、今年2月にニチレイフーズとの資本業務提携で5,000万円を調達している。今ラウンドの調達を受けて、創業以来の累積調達額は12億円に達した。同社では今回調達した資金を、植物肉を本物の肉の味に近づけるための R&D(AIプロファイリング技術)、植物肉原料(ミラクルチップ)3,000トン/年の生産能力拡大に用いる。

大豆由来の植物肉原料「ミラクルチップ」
Image credit: Daiz

DAIZ は、大豆の代謝に注目した独自の栽培法である特許技術「落合式ハイプレッシャー法」で大豆を発芽。発芽中に、酸素、二酸化炭素、温度、水分などの生育条件にプレッシャーを与えることで酵素が活性化し遊離アミノ酸量が増加、大豆の旨味を引き出す。独自の膨化成形技術により、他の原料や添加物を何も足さずに、肉の様な食感を再現する。

この分野の動きを見てみると、Impossible Foods は最近、5億米ドルを調達、アメリカのスーパー大手 Kroger Co の1,700店舗での植物肉販売を開始した。オーストラリアの Fry Family Food Co. と ドイツの LikeMeat という2つの代替肉スタートアップを買収したカナダの Livekindly(旧 FoodsUnited)は3月、植物由来鶏肉開発のため2億米ドルを調達した。4月には、シンガポールの人工肉スタートアップ Growthwell が800万米ドルを調達。また、Beyond Meatは、中国国内のスターバックス3,300店舗超で人工肉を使ったフードを販売開始した。

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都市型農業:環境汚染と食料危機へのサステイナブルなアンサー【ゲスト寄稿】

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本稿は、Queue の 取締役副社長兼 CCO 三橋啓多氏による寄稿。Queue のスタートアップ事例データベース「Sunryse.」の事例紹介記事「INSIGHT」から転載した。 三橋氏は2014年、リクルートホールディングス社内事業立案コンテスト「RING(旧:NewRING)」で学生初のグランプリを獲得し事業化。その後、国内大手広告会社や外資系広告会社などのインターンとフリーのプログラマー。…

三橋啓多氏

本稿は、Queue の 取締役副社長兼 CCO 三橋啓多氏による寄稿。Queue のスタートアップ事例データベース「Sunryse.」の事例紹介記事「INSIGHT」から転載した

三橋氏は2014年、リクルートホールディングス社内事業立案コンテスト「RING(旧:NewRING)」で学生初のグランプリを獲得し事業化。その後、国内大手広告会社や外資系広告会社などのインターンとフリーのプログラマー。ハードウェアスタートアップのコンサルティングなどに従事した。

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Image credit: Infarm

都市型農業とは?

都市型農業とは、その名の通り、農地の多い郊外ではなく人口の多い都市部で農作物を育てる農業のことを指す。身近な例では、屋上菜園や屋内での水耕栽培がそれに当たる。近年この都市型農業に取り組むスタートアップへの注目が集まっている。今日の Insight では、その背景と未来を考えていきたいと思う。

人口増加・集中と食糧危機

国連の調査によると、2050年までに地球の人口は100億人に迫ると予測されている。さらに、この内の約7割が都市部に居住すると予測されている。人類は、タダでさえ飢餓人口の増加しているこの惑星で、これらの増加・集中した人口の必要とする食糧を安定供給するシステムを構築する必要があるのだ。

人口増加・集中によって引き起こされる問題は、単なる不足だけではない。「安全な食」へのアクセスの需要も高騰することが考えられる。人口が増加・集中することで、都市部における食料品への需要が増大する一方、生鮮食品の供給は流通量のキャパシティや消費期限などの要因により限界がある。それが、有機作物であればなおさらである。

さらに、問題の影響範囲は食糧自体の供給だけにとどまらない。

人が暮らしていくには、食糧以外にも衛生的な水が必要になる。飲水を含めた生活用水の供給である。すでに、世界の一部の都市圏では水不足が深刻であり、ニューデリーやカリフォルニアが有名だ。当然、農業は大量の水を必要とする。つまり、人口増加・集中によって引き起こされる農作物への需要増は、生活用水・飲料水の不足という問題と同時にやってくる。

流通にも問題を抱えている。東京を含む世界の大都市圏では、都市部の交通・流通に深刻な問題を抱えている都市が少なくない。都市圏に人口が集中することで、移動する人の増加によりさらなる問題を引き起こすだけでなく、流通のためのトラックや自動車の氾濫を伴うことが容易に想像できる。それは同時に、環境負荷の増大を意味する。

都市型農業は、この八方塞がりに思える状況に対して、アンサーを返そうとしている。

生産地と消費地を一致させるというアンサー

Image credit: Infarm

都市型農業が目指しているのは、都市圏での農作物の生産を実現することで、運搬の必要を極限まで減らした農作物の生産・流通の新しい形であり、それが当たり前になった未来の都市の姿だ。都市型農業に取り組むスタートアップの代表格とされるのは、ベルリンを拠点とする「infarm」である。infarm は野菜やハーブ類を効率的かつ安全に栽培できるラックを開発しており、それを世界中のスーパーマーケットやレストランに導入している。

このようなラック型農業の特徴は、「都市型」「垂直型」「屋内」の3つのキーワードで表現できる。

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都市型農業

生活者の多い都市圏での農作物の生産が可能になると、当然のことながら流通コストを大幅にカットする事ができる。これはサプライチェーンにおけるコストカットにとどまらず、環境への負荷の軽減を意味する。infarm の本社があるドイツをはじめ、ヨーロッパ諸国では、消費者のサステイナビリティへのこだわりが日本に比べて強いと言える。そのため、同じ値段、あるいは多少高くても環境負荷の少ない製品を選ぶ消費者が少なくない。この点、都市型農業は従来型の農業に比較して大きなアドバンテージがあると言える。

垂直型農業

ラックのような空間で農作物が可能になると、従来型の農業のように農地を横に拡大するという選択肢に加えて、「縦に積む」という事が可能になる。このような特徴から、ラック型の農業のことを「垂直型農業」、従来型の農業を「水平型農業」と呼び対比する事ができる。理論上、「垂直型農業」は「水平型農業」に比較すると、土地活用の効率において大きなアドバンテージがある。

屋内農業

ラックの中で、かつ屋内で生産が可能ということは、天候に左右されず安定した農作物の生産を可能にする。と同時に、栽培環境のコントロールを適切に行う事ができれば、季節に関係なく農作物を生産することも可能だ。さらに、外部要因による作物の病気の心配などもないため、農薬を使わない生産も可能になる。

プラスアルファ:テクノロジーによるアドバンテージ

さらに、ラック内へセンサー類を搭載し、そのフィードバックを生育環境に与えることによって、効率的で安定的な生産も可能になる。屋内・かつラック型であることは、テクノロジーの応用可能性の拡大を意味する。

Image credit: Queue

toC サービスとしての都市型農業

infarm のようなtoB型の都市型農業サービスは、都市圏の生活者の食を支える役割を担おうとしている。それに対して、toC 型の都市型農業サービスも存在する。彼らはまた別の視点から、都市型農業のサービスを展開している。

ここでは、「Click & Grow」を紹介したい。Click & Grow は家庭菜園を、小さなスペースで簡単に設置できる「スマートガーデン」と種の入ったポッドを販売している。この「スマートガーデン」を使えば、誰もが新鮮で GMO フリー(non-Genetically Modified Organism、遺伝子組換えでない)なオーガニック食品を簡単に家庭で栽培できる。オーガニック食品やサステイナブル食品への意識が高い消費者をメインターゲットに、個々人が手軽に各家庭で野菜や果物等の食品を育成できるスマートガーデンをソリューションとして提供している。このように、安全な食へのアクセスという点では、toB 型のサービスの持っている価値提供と似ているが、これだけではないのだ。

都市部に居住する人口の35%は高いレベルでの心身的不安を抱えていると報告されている。この状況は 2050年までに悪化し続けると予想されている。このような状況に対して、屋内植物は、消費を通じて健康を改善し、ストレスを減らし、空気の質と人々の幸福レベルを改善することが証明されている。自宅に家庭菜園があることで、生活の質の向上を提供価値としておいているのが Click & Grow の特徴の一つだ。

Image credit: Click & Grow

都市型農業の見据える農業の未来

これまで見てきたように、生産の部分に抜本的な変革を与えるという点で、infarm のようなサービスは「農業 × テクノロジー」の領域において最も進歩的なアプローチの一つと言えるだろう。

さて、農業や水産業などの分野で、「6次産業」という言葉がある。これは、生産業者(第一次産業)が食品加工(第二次産業)・流通販売(第三次産業)までカバーしている事業形態のことを指している。これは、主として生産業者の活性化の文脈で語られる事が多い言葉だ。

生産・加工・流通・販売を一つの事業者が行うという点では、都市型農業サービスはまさに、6次産業を地で行く存在だ。ただ、6次産業の意味するところと異なるのは、生産の部分に抜本的な変革をしているのが都市型農業である、ということになる。ともすれば、既存の生産者に対して強大な競合になりうる。

既存プレイヤーは、都市型農業サービスの到来に、どのように備えるべきだろうか。

我々はテクノロジーの専門家であって、農業の専門家ではない。そのため、この問に対する答えを示すことは控えようと思う。しかしながら、冒頭で見たように、従来の農業では来る人口増加・集中に対しての対応は難しいのではないかと感じている。そのため、よほどの経済的な障壁がない限り、都市型農業の到来は必然に思える。

時代の変化とテクノロジーの進化による既存プレイヤーの淘汰は、他の分野で幾度となく繰り返されてきた。それが農業にも及ぼうとしているのではないか。

一方で、テクノロジーによっては代替できない価値があることも、歴史が証明してきた。アメリカでは、2019年12月20日から26日の週にかけて、アナログレコードの週間売上記録が塗り替えられたそうだ。

より豊かでサステイナブルな未来へ向けて、農業領域において新興勢力と既存プレイヤーの、より良い棲み分けが進むことを願う。

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