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コロナ禍で続々とピボットする旅・宿泊系スタートアップ、新常態に適応する新ビジネスとは

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新型コロナウイルスの感染拡大が最も提供を与えたセクターの一つは、旅行や宿泊観光業界だろう。3月には、Founders Fund などから支援を受け、創業5年目となるアメリカで旅行代金最適化の「Service」が資金調達や買収話の頓挫からサービスを停止。5月には、インドネシアの格安ホテルアグリゲーター「Airy」が恒久的なシャットダウンを余儀なくされた。一時期は、NASDAQ からの上場廃止検討が報…

今年1月、成都から上海へのフライトに搭乗する乗客ら
Image credit: TechNode/Eliza Gkritsi

新型コロナウイルスの感染拡大が最も提供を与えたセクターの一つは、旅行や宿泊観光業界だろう。3月には、Founders Fund などから支援を受け、創業5年目となるアメリカで旅行代金最適化の「Service」が資金調達や買収話の頓挫からサービスを停止。5月には、インドネシアの格安ホテルアグリゲーター「Airy」が恒久的なシャットダウンを余儀なくされた。一時期は、NASDAQ からの上場廃止検討が報道された中国の OTA 大手 Ctrip(携程)は、今のところ、国内需要の回帰でなんとか持ちこたえているようだ。

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一方で、日本にも海外にも、見事なまでのピボットを遂げたか、これから遂げようとするスタートアップがいる。コロナ禍の新常態が作り出した社会需要に対応して、新たなバーティカルが生まれる可能性もあるだろう。簡単なことではないが、小回りの効きにくい大企業に比べてみれば、ピボットはスタートアップのお家芸と言ってもいいはずだ。ダーウィンが進化論で言った「変化に対応できる者だけが唯一生き残れる」ことがスタートアップにも当てはまるなら、今の時期のピボットは大いに称賛されるべきだろう。

長期滞在やワーケーション対応の宿泊施設価格交渉サイト「Ellcano(エルカノ)」が正式ローンチへ(日本)

宿泊権利売買の「Cansell」を運営する Cansell は今週にも、長期滞在やワーケーション対応の宿泊施設価格交渉サイト「Ellcano(エルカノ)」を正式ローンチする予定。まもなくアプリが公開されるとみられる。今年8月に発表された Elcano は当初9月のローンチが予定されていたが、Go To トラベルへの対応などを行ったため、予定より遅れてのローンチとなった。

Ellcano は、長期旅行・出張(3日〜)、ワーケーション(1週間〜)、ホテル住まい(2週間〜)を対象としたサービス。ユーザが尋ねたい宿泊施設を選び期間を選択することで、各宿泊施設から予算に応じた価格回答を得ることができる。成約時に Ellcano が紹介手数料を得るモデルだ。同社では今後も Cansell のサービスを継続しながら、Ellcano で新たな顧客を開拓するとしている。

海外現地担当者にZoomでイベントへ参加仲介してもらえる「Travel Meet」がローンチ(日本)

knowte(ノウト)は昨年、旅行を計画する消費者が適切な現地ランドオペレータとチャットで繋がることができるプラットフォーム「Oooh(オー)」を正式ローンチした。旅行代理店などが依頼を受けた旅のオーダーについて、実際の細かい旅のアレンジは日本語が話せる海外現地のランドオペレータに任せていることが多い。しかし、コロナ禍では、ランドオペレータも仕事がない状態続いている。

ランドオペレータのネットワークに強みを持つ knowte では、「Travel Meet」というサービスを先々週ローンチした。このサービスでは、展示会や商談会、イベントやカンファレンスなどに、企業担当者が出張する代わりにランドオペレータに出向いてもらい、商談相手などと Zoom で繋いでもらって会話することができる。通訳の帯同も可能だ。knowte では、海外でビジネス活動が再開されている地域であっても、会社のレギュレーションで社員が出張させられない企業を中心に販売したい考えだ。

海外旅行者のリスク管理ができるモバイルプラットフォーム「Sitata」(カナダ)

Sitata は、海外旅行者のリスク管理ができるモバイルプラットフォームを開発している。このアプリでは、デモ、感染症、フライトのストライキやキャンセル、自然災害などイベント中止などのリスク情報を24時間モニタし、ユーザに関連がありそうな情報を通知してくれる。旅行者の状況を位置追跡できる機能も有する。

このアプリが提供する最も革新的で命を救う可能性のある機能の一つは、旅行者と旅行医療を専門とする医師を結びつける機能だ。医師からはビデオ通話で診察を受けることもできるし、場所や空き状況によっては、ホテルの部屋にいながらにして医師に診察してもらうこともできる。個人利用に加え、主に企業で出張中の従業員を支援するために利用されることを想定している。

ホテルを感染者の一時療養施設や医療従事者の宿泊施設としての活用を促す「HospitalityHelps」(アメリカ)

宿泊施設向け管理 SaaS「Cloudbed」は、ホテルを感染者の一時療養施設や医療従事者の宿泊施設としての活用を促すためのイニシアティブ「HospitalityHelps」を開設した。CloudBed は、主に中小規模のホテル、ホステル、バケーションレンタルのオペレーション最適化・自動化のためのソリューションだが、そのユーザであるホテルなどを中心に HospitalityHelps への参加を募っている。一元化された情報は、政府や医療機関らと連携する。

宿泊特典サイトから、ホテル向け感染症予防対策指導プラットフォームに変貌した「Freecovid」(アルゼンチン)

昨年ローンチした宿泊リワードサイト「Tripflix」は、ホテルの感染症予防対策指導プラットフォーム「Freecovid」へと完全ピボットした。Freecoovid では、WHO(世界保健機関)や WTO(世界観光機関)、各国政府が展開する安全プロトコルをホテル業界が実施できいるよう、包括的なトレーニングやコミュニケーションツールを提供する。国際チェーンに所属しない独立系や家族経営の中小規模ホテルを中心にアルゼンチン国内40以上のホテルが導入。ブラジル、ペルー、コロンビア、メキシコでも展開する。

在宅ではなく「Working From Anywhere」の重要性とオフィス空間の両立

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Working From Home(WFH)を企業または個人が導入するかは、つい先日まで二極化するテーマだった。しかしパンデミック以降、WFHの状態でも生産性高い労働環境を作れることを多くの人たちが感じ始めている。 さて、現段階におけるリモートワークへの動きは、企業運営の安定や従業員の短中期的な雇用維持を目的としたものだった。つまり、企業は環境変化に対応しているようで、実際の多くの企業は新しい環境…

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Photo by Vlada Karpovich on Pexels.com

Working From Home(WFH)を企業または個人が導入するかは、つい先日まで二極化するテーマだった。しかしパンデミック以降、WFHの状態でも生産性高い労働環境を作れることを多くの人たちが感じ始めている。

さて、現段階におけるリモートワークへの動きは、企業運営の安定や従業員の短中期的な雇用維持を目的としたものだった。つまり、企業は環境変化に対応しているようで、実際の多くの企業は新しい環境における事業継続プランを考えぬけていない状況にある。

一部の従業員はリモートワークを自然と受け入れられているものの、それまでの役割や責任によっては、自宅で生産性維持を図るのに苦労しているのも事実だ。COVID-19が表沙汰になるまでは、全労働者の内半分以上を在宅で作業している割合はわずか3.6%であった。ある調査によれば、オフィスワーカーの67%はミーティングなど第三者とコラボレーションが必要とされるとされ、オフィス空間は今でも貴重であることが分かる。

しかし、Global Workplace Analyticsによれば、2021年の終わりまでに全体の25~30%は在宅作業になると予想している。

2020年も半分が過ぎようとしているが、徐々にオフィスへ人を戻し始めている企業も少なくないだろう。しかし、それでも多くの国では未だソーシャルディスタンスの重要性が説かれ、企業に属するものとしての労働の真価が問われ出している段階だと言える。

どこでも生産性を高めるために

Work From Home自体が世界の経済的仕組みを大きく変えるものになるのではないことは明らかだ。次のニューノーマルにおいては「Working From Anywhere」的概念が重要となるだろう。

また企業のリーダーたちは、今後ソーシャルディスタンスを意識したオフィススペースの設計が必要不可欠になるはずだ。例えばオフィスのパントリーを廃止したり、ビデオ会議用の小さなスペースを設置することなどが挙げられる。

つまり企業側はオフィスからでも、またそれ以外からの環境からでもフレキシブルに作業に集中できるツール提供が求められるようになる。さらに外部環境からの労働者が増えれば、それだけセキュリティーの要件を満たす必要性も今まで以上に求められるだろう。

中長期的なプラン

将来の業績を考えると、企業が現段階でいかに中長期的目線で投資することができるかが重要なファクターになることは間違いない。GlobalDataの調査によれば、APACにおける雇用者の57%がテクノロジー投資を増やしたい意向を持っていると明らかにしている。こうした投資は、クラウドをベースとしたコラボレーションプラットフォームが主となっており、中長期的な企業運営のオンラインシフトを伺うことができる。

マクロ的視点では、オフィスに対してより健康に特化した投資が求められるため、スマートビルディングへの需要が進むことになるはずだ。体温を自動的に測定する赤外線カメラや、空気の入れ替えをするスマート空気清浄機、エレベーターのタッチレスシステムなど、急激な入れ替えが迫られているかもしれない。

ニューノーマルに備えて

あらゆる欠点はあるにせよ、これからもオフィスがある程度チームコラボレーションのために利用され続けることは間違いない。重要なプロジェクトや提案書作成のため徹夜したり、エレベーターの中でCEOと偶然鉢合わせて気まずくなるなど、実はオフィスでしか得られない貴重な経験も数多くある。

つまり、COVID-19はオフィスを廃止したのではなくリモートワークでも効率的かつフレキシブルな労働環境を創り出せることを証明したと言える。一つはっきりしているのは、リモートワークを許容することが組織を中長期的に存続させるために必要であるということだ。

リモートワークが数多く始まり、私たちは改めて労働環境におけるコミュニケーションとコラボレーションを同時に体感できる環境を求めていることに気が付かされた。確かにこれからは、会社の全員が同じ場所に集まることはないかもしれないが、こうした繋がりの感覚をいかに生み出すかが企業運営にとって重要な観点となってくるのだろう。

【via e27】 @e27co

【原文】

中国の観光市場、新型コロナから復活へのキーワードは「ライブストリーミング」と「擬似体験」

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China Hospitality Association(中国飯店協会)は、ホテルやホームステイ事業者の74%が閉鎖を選択したと報告している。2020年は2月までに、この業界は670億人民元(約1兆円)以上の損失を出し、賃貸アパートの損失は約7億人民元(約107億円)となった。健康上の理由から、多くの国が観光客の入国を制限したり、国境を閉鎖したりしている。タイ政府観光局によると、4月にタイを訪れ…

今年1月、成都から上海へのフライトに搭乗する乗客ら
Image credit: TechNode/Eliza Gkritsi

China Hospitality Association(中国飯店協会)は、ホテルやホームステイ事業者の74%が閉鎖を選択したと報告している。2020年は2月までに、この業界は670億人民元(約1兆円)以上の損失を出し、賃貸アパートの損失は約7億人民元(約107億円)となった。健康上の理由から、多くの国が観光客の入国を制限したり、国境を閉鎖したりしている。タイ政府観光局によると、4月にタイを訪れた外国人観光客はゼロで、1月から5月にかけて1,002万人減少した。

中国では、新型コロナウイルスは観光事業にとって重要な期間である春節の最中にやってきた。人々は家に留まることを選び、すべての旅行計画をキャンセルした。さまざまな観光スポットも政府の規制に応じて閉鎖された。

しかし、手をこまねいている人はおらず、誰もが観光や代わりとなる娯楽を探していた。観光客も、ホテルも、現代技術を使い、新しい方法で観光を体験した。

テクノロジーが実現した本物ではできない体験

Dunhuang Research Institute(敦煌研究院)は Tencent(騰訊)と協力し「Yunyou Dunhuang(雲遊敦煌)」と いう WeChat ミニプログラム(微信小程序)を立ち上げた。敦煌石窟の壁画を紹介するだけでなく、ユーザが仮想の壁画を互いに対話しながら作ることができる。

ユーザは本物ではできない方法で壁画を近くで探索することができる。このミニプログラムは2月20日に公開され、kれまでに350万人以上が使用した。4月にはアップデートされ、莫高窟の壁画をモチーフにしたアニメーションシリーズを開始した。アニメーションは壁画の芸術性、質感、淡い色彩を最大限に生かしている

この現代技術と古代文化の組み合わせは、大きな社会変化を引き起こし、2020年に登場するオンライン文化ツアーとインタラクティブな展示会の代表的なものとなった。

「雲遊敦煌」を取り上げる中国・遼寧省のテレビニュース(動画)

既存の資源を使った新しいサービス

White Swan Hotel(白天鵝賓館)のライブストリーミング
Image credit: White Swan Hotel(白天鵝賓館)

上海では、一部のホテルが近隣の企業に食べ物の持ち帰りサービスを提供したほか、中国の有名ホテルチェーン「Huazhu(華住)」は十分な宿泊施設を持たない出稼ぎ労働者のために隔離室を作りサービスを提供した。

現在、中国国内の新型コロナウイルスはコントロールされており、さまざまなホテルのマネージャーは、ホテルを宣伝し、潜在的な顧客に割引を配るために、旅行アプリ上でライブストリーミングを開催し始めている。

2月以降、Alibaba(阿里巴巴)のグループの旅行サイト「Fliggy(飛猪)」には28,000件に及ぶライブストリーミングがローンチし、既に2億5,000万人以上が視聴した。視聴ユーザは、旅先をリサーチする時間が短縮され、限定ディスカウント情報を簡単に見つけることができるため、これを気に入っている。

中国初の5つ星ホテルである「White Swan Hotel(白天鵝賓館)」は6月5日、Fliggy でライブストリーミングを実施した。高級ホテルが Alibaba のプラットフォームでライブストリーミングを実施したのは初めてのことだ。

同ホテルはミシュラン3つ星レストランで伝統的な広東料理を提供していることから、ライブストリーミングではその高級料理を特集した。最終的には170万人が3時間以上視聴し、ホテルのフォロワーは3,200人以上増え、3秒ごとに予約が入った

売上の増加

ライブストリーミングに加え、ソーシャルメディアプラットフォームを利用してインターネットユーザと交流したホテルもある。高級ホテルグループの Shangri-La はお得情報や割引の他にも、過去の顧客との交流を目的として Weibo(微博)で抽選会を実施した。参加者は Shangri-La の窓越しに撮影した屋外の植物の写真を投稿する必要がある。当選者にはバウチャーやバッグがプレゼントされた。

長い間家にいた中国の人々は今旅行計画を始めている。中国文化和旅遊部(日本の観光庁に相当)よると、5月1日から4日までの国内観光客数は1億400万人、国内観光収入は約432.3億人民元(約6,590億円)に達した。どうやら春が来ているようだ。

旅行制限で大きな打撃を受け、再挑戦を余儀なくされている欧米の大型観光地でも同様の傾向が見られた。西側諸国の有名な美術館の多くは、ロックダウン中にコレクションを無料でオンライン公開した。ロサンゼルスの J・ポール・ゲティ美術館は、自宅にあるものだけで有名な芸術作品を再現する、世界中の人々が参加した有名なオンライン写真チャレンジを開催した。隔離措置の初期段階では、オンラインでの創造性が大きく解放された。

国内観光の可能性

56日間にわたり感染がなく取締緩和された北京では、6月11日に再び感染が発生した。その結果、街は再びロックダウンされ、多くのフライトがキャンセルされた。同じような状態は少し前に吉林省でも起こった。地方政府は5 月13日から都市を跨いだ旅行を規制した。しかし、これらの事案は人々の旅行意欲に影響を与えていない。

Fliggy によるうと、旅行は6月のドラゴンボートフェスティバル(龍船節)の時期には、旅行者数が去年の60%の水準にまで上昇した。Fliggy によると、旅行は去年の数の60% に戻るツーリストの全体的な数との6 月の端午の節句の間に上がった。北京、天津、河北は昨年の水準の約40%に戻っている

つまり、中国の観光産業は、強力な新型コロナ対策にもかかわらず、徐々に回復してきているということだ。地方政府からの支援策や創造的なプロモーション活動により、国内観光事業はすぐにはね戻る。しかし、国際観光には時間がかかり、人々は二度と同じように国際的な旅行をすることはないだろう。

Airbnb の共同創業者 Brian Chesky  氏は、旅行が以前と同じになることはないと考えていると述べている。彼は、欧米の人々が旅行を自宅から200マイルの範囲に限定し、自然のスポットや小さな中心地に向かうと予測している。彼は、ロンドン、ローマ、パリのような大きな目的地を訪問し、有名なランドマークの前で写真のためにポーズをとる時代は終わったと考えている

このようなトレンドの一部はすでに中国でも展開されており、湖州の Giraffe Hotel(長頸鹿莊園酒店)のように、アフリカのサファリを模した、本物のキリンが敷地内を歩き回る場所が登場している。実生活で決して会いに行けないだろう旅行者にとって、国内で有名な海外観光を体験できる場所が作られたとき、我々はかつての中国の古き時代を思い出すことになるだろう。

そのチャンスは再び訪れるだろうが、新型コロナウイルスが我々の生活に入り込む前よりも、それを望む人は少なくなっているだろう。

【via TechNode】 @technodechina

【原文】

Fukuoka Growth Next、新型コロナがもたらす社会課題の解決を目指す実証実験「Beyond Coronavirus」採択7プロジェクトを発表

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<本稿画像はいずれも Fukuoka Growth Next 配信のライブストリーミングから> 福岡市の官民協働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next(FGN)」は1日、新型コロナウイルスがもたらす社会課題の解決を目指す実証実験「Beyond Coronavirus」の採択プロジェクトを発表した。 これは FGN が5月1日から募集していたもので、感染予防や健康管理、リモ…

左から:Fukuoka Growth Next 事務局長 内田雄一郎氏、福岡市長 高島宗一郎氏、福岡地域戦略推進協議会(FDC)事務局長 石丸修平氏

<本稿画像はいずれも Fukuoka Growth Next 配信のライブストリーミングから>

福岡市の官民協働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next(FGN)」は1日、新型コロナウイルスがもたらす社会課題の解決を目指す実証実験「Beyond Coronavirus」の採択プロジェクトを発表した。

これは FGN が5月1日から募集していたもので、感染予防や健康管理、リモートワークの推進、子どもの教育環境向上、外出自粛中の日常生活を豊かにする With コロナプロジェクトなどの分野で日本内外から35件の応募があり、審査会を通じ7件が採択された。

採択されたプロジェクト(=スタートアップなど)には、税込最大で助成金50万円が進呈されるほか、実証実験期間中は FGN のコワーキングスペースを無償提供される。1日に FGN で開催された採択式には7プロジェクトのオーナー(スタートアップなど7社の代表)がオンラインまたはオフラインで招かれ、アイデアをピッチ形式で披露した。

スマートオペレーションサービス「aiPass」を活用した宿泊施設の新しいオペレーション構築 by クイッキン

予約・チェックイン~チェックアウトまでを最小限の接客で運用可能とするサービス「aiPass」の実証実験。業務効率化のみならず、コロナ禍における非対面・非接触かつ三密回避の実現を目指す。今回は、事前チェックインやフロントチェックイン等の利用率等を検証する。クイッキンは Open Network Lab 第20期採択。今年2月、DG ベンチャーズ、インキュベイトファンドからシード資金を調達

迷惑電話・コロナ詐欺や誤情報の防止情報基盤構築/Whoscall実証実験 by Gogolook(走著瞧)

スマホアプリ「Whoscall」を活用し、迷惑電話やオレオレ詐欺やコロナに関連した詐欺の防止を可能とするサービスの実証実験。今回は、福岡市内において、アプリをモニターに利用してもらい、迷惑電話防止のサポートにおける効果等を測定・検証する。(関連記事

映像制作の業務効率化/ AI多言語文字起こし&自動翻訳 by ユニゾンシステムズ

ファイル共有、大容量の映像データの高速伝送等で映像制作を効率化できる「Join-View」の実証実験。リモートでの映像制作や、AI活用の多言語の自動翻訳で、編集作業や海外とのコミュニケーションの負荷を低減する。今回は、福岡市と連携している海外都市等との相互の情報発信等において、その有用性を検証する。

デジタル身分証プラットフォーム「TRUSTDOCK」 by TRUSTDOCK

「デジタル身分証」やオンラインでの本人確認サービスを行うための実証実験。今回は、行政手続きのデジタル化・効率化に向けた検討を行うとともに、窓口業務等の実行プロセスにおける完遂度と満足度を検証する。TRUSTDOCK は昨年5月に STRIVE などから資金を調達

自律分散オフィス「TiNK Desk / TiNK VPO」 by tsumug


マンション等を無人運用可能な小型オフィスに転換する「TiNK Desk / TiNK VPO」で、遠隔体温検知、自動問診、手洗い判定システムを実証実験。今回は、各デバイスの運用フローを確認するとともに、連動運用し、利用者の健康チェック率、手洗い率向上等を検証する。(関連記事

多目的AIカメラサービス事業 by 九州電力 + オプティム

混雑検知やマスク装着の有無などを、1台のカメラで提供可能な多目的AIカメラサービスの実証実験。フィジカルディスタンス確保やマスク装着の注意喚起ができるようにするもの。さらなる技術向上やサービス向上のため、利用した機能のUI、利用状況、満足度等を検証する。

「タイミーデリバリー」を活用したフードデリバリーの効率化 by タイミー

スマホアプリ「タイミーデリバリー」を利用したフードデリバリーにおいての実証実験を実施。飲食店や購入者への配送料や手数料の負担の軽減を図る。今回は事業化に向けフードデリバリーの「同時配送」の実証を行い、時間当たりの注文件数・配送件数・リピート率等を検証する。タイミーは昨年10月、20億円を調達している。(関連記事


採択プロジェクトの発表に先立ち、福岡市市長の高島宗一郎氏のほか、地元 VC やスタートアップの経営者らを集めたパネルディスカッションも開かれた。新型コロナウイルスの社会の影響は小さくないものの、ことスタートアップに関しては、ピボットや経営努力などで倒産や廃業を余儀なくされた企業は今のところ皆無だと言う。事業を柔軟に変化させやすいスタートアップの強みがうまく作用しているのかもしれない。

高島氏らは東日本大震災の際に社会影響は大きかったものの、そのビフォーとアフターでイノベーションが起きるほどの大きな経済変革が起きなかったことを例に挙げ、欧米に比べると、新型コロナウイルスの犠牲者が比較的抑えられている日本では、ニューノーマル(新常態)への対応を促す風潮も一過性のものに終始する可能性があるとし、今回の機会を活用して、より意識的にイノベーションを起こす必要があることを強調した。

パネルディスカッションに参加した、九大発のバイオテックスタートアップ KAICO 代表取締役の大和建太氏は、他都市に活動拠点を置きつつもテレワークかつ副業形式で研究開発の一部を担う社員を今年8月から採用する予定で、コロナ禍にありながらも、雇用の選択肢を拡大することで事業拡大の可能性を追求していきたいと語った。

中国版スーパーシティを標榜する杭州市、新型コロナ収束後も健康コードシステムの拡大使用を検討——市民はプライバシー侵害や差別助長を懸念

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中国東部に位置する杭州市の政府当局は、パンデミック対策の健康コード(健康碼)システムを長期使用することを提案した。これは国のロックダウン期間中に市民の健康リスクを診断するという目的をはるかに超えており、ユーザのプライバシーに対する懸念をさらに深めている。 重要視すべき理由:新型コロナウイルス流行のピーク時に、中国全土においてローカルの「健康コードシステム」が急速に導入されたことで、今後の健康監視の…

上海市民は健康コードがグリーンであれば市内を自由に移動できる。
Image credit: TechNode/ Shi Jiayi

中国東部に位置する杭州市の政府当局は、パンデミック対策の健康コード(健康碼)システムを長期使用することを提案した。これは国のロックダウン期間中に市民の健康リスクを診断するという目的をはるかに超えており、ユーザのプライバシーに対する懸念をさらに深めている。

重要視すべき理由:新型コロナウイルス流行のピーク時に、中国全土においてローカルの「健康コードシステム」が急速に導入されたことで、今後の健康監視のあり方について疑問が投げかけられた

  • 提案された健康コードが提供するのは、緑、黄、赤といった個別の色でのスコアリングではなく、運動、喫煙、飲酒、睡眠などの習慣からなる多くのデータポイントに基づいたスライディングスケールの数値スコアである。
  • 発表された資料から、都市レベルのランキングシステムや企業・組織にも利用されることが示唆される。
  • 価値のあるツールだが、健康コードの不透明性が問題となっている。色による格付けでユーザの日常生活に影響を与える一方、その根拠となるインプットについてはほとんど明らかにされていない。
企業が杭州の新健康コードシステムを使用した例(webサイト「Healthy Hangzhou(健康杭州)」より)。
Image credit: TechNode/Shaun Ee

詳細情報:この提案は杭州保健委員の Sun Yongrong(孫雍容)氏によるもの。同氏は5月22日、健康コード使用の「深化」について他の委員と議論するための集まりを開いた。新しいスライディングスケールシステムはまだ端緒に就いたばかりだが、健康コードがなくならないことに対する懸念が強まっている。

  • 健康コードがさらに拡大される可能性を報じるニュースにネチズンの非難が集中している。杭州のニュースアカウントが投稿した簡易ブログプラットフォーム「Weibo(微博)」の記事に対し、何千件ものコメントがついた。
  • 「ユーザの個人データにアクセスする権利を与えたのは誰ですか? 医療データは完全に個人的な問題です。なぜそれを利用して病人を差別するための準備を進めようとしているのですか?」という「Suyin Hulü(素銀湖緑)」氏の発言に1万5,000件の「いいね」が集まっている。
「最杭州」が Weibo に投稿した新健康コードに関する記事に対して、プライバシーの侵害や差別の助長を批判する返信が寄せられた(2020年5月25日撮影)
Image credit: TechNode

背景:中国が市民データのさらなる活用を検討している分野は健康監視だけにとどまらない。中央政府も地方政府もともに、ビッグデータの活用を推進している。

  • プレスリリースは、当初は交通の流れを改善することを目的として Alibaba(阿里巴巴)が主導し、後に拡大されたプロジェクト「杭州シティブレイン2.0(杭州城市大脳2.0)」に賛同するものである。
  • 国家レベルで言うと、中国は地方政府間のデータを大規模に統合する国家統合プラットフォームも推進している。このようなローカルな健康コードシステムが全国レベルのプラットフォームとどのように連携するかは不明だ。
  • 中国の市や省は独自の健康コードシステムを試すための幅広い自治権を付与されており、Alibaba の本拠地である杭州市はその最前線にある。杭州市はこのようなシステムを2月に初めて発表した。今後の動向は注目に値する。

結論:これまで健康コードは感染症の流行に焦点を当て、主に移動経路や臨床症状などのデータを収集してきた。これをさらに拡大することは巨大な事業だ。杭州市がどのようにして大規模なデータ収集のプロジェクトに着手するのかは提案では明確にされていない。

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【via TechNode】 @technodechina

【原文】

新型コロナ感染防止で、プライバシー保護と追跡アプリがせめぎ合い——自由の国フランスの葛藤を考える

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多くの国が新型コロナウイルスの感染を追跡するアプリの開発を進めている中、フランスは公衆衛生と大規模な監視の両立を図ろうとする取り組みで広がりをみせている技術的、倫理的な議論の矢面に立たされている。 フランス政府は、国民から収集したデータを集中させるアプリ「StopCovid」のフレームワークを採用した。プライバシー擁護団体はこの手法を激しく非難し、プライバシーを熱心に擁護しているという政治家たちを…

CC BY 2.0: Photo by Nik Anderson

多くの国が新型コロナウイルスの感染を追跡するアプリの開発を進めている中、フランスは公衆衛生と大規模な監視の両立を図ろうとする取り組みで広がりをみせている技術的、倫理的な議論の矢面に立たされている。

フランス政府は、国民から収集したデータを集中させるアプリ「StopCovid」のフレームワークを採用した。プライバシー擁護団体はこの手法を激しく非難し、プライバシーを熱心に擁護しているという政治家たちを偽善者と断じた。StopCovid の問題は Apple に対する非難にも飛び火した。Apple はこれまでのところ、自社端末にこの種の機能を導入することには反対してきた。

政府も諦めていない。データを匿名化することで集中型のアプローチでもプライバシーを保護できるのと同時にウイルスの感染拡大に対して全体的な安全性が向上し、知見も得られると主張している。さらに根本的な話として、データの公共利用に関する決定を行うのは民間企業ではなく、有権者によって選ばれた主体であるべきだとフランス政府は強調している。

感染拡大への対処にデータは重要な不可欠のツールとみられている中、フランスで熱を帯びる論争は、公衆衛生とプライバシーの保護の両立をいかに図るかという世界的な議論の縮図となっている。このアプリが信頼を獲得するには、有効性を確保できる程度まで利用者が増加しなくてはならないという点では、関係者の見方は一致している。

国民の理解と技術的な設計という観点で言えば、今回の新型コロナウイルスだけでなく将来のウイルス感染拡大に対処するのに相反する要素(公衆衛生とプライバシー)の両立を図ろうとしている政府にとって、このアプリは一つの試金石となるだろう。

フランスのデジタル大臣 Cédric O 氏は政府によるアプリ開発を擁護する記事の中で、「どのような技術であれ、リスクがゼロの技術は存在しません」と述べている

絶対確実なソリューションなどありえません。何らかの欠陥はあるものです。
(中略)

StopCovid は平時のアプリではないのです。このようなプロジェクトは、新型コロナウイルスの感染拡大が引き起こした今の状況ならではのものです。

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データの集中

これまでに、複数の国で同様のウイルス感染追跡アプリが導入されてきた。データを集中させるべきか、ユーザの位置を追跡するべきかといった諸々の問題に対しては、幅広い手法が採用されている。ごく最近では Apple と Google の提携が発表され、Android と iOS の利用端末を問わないアプリを第三者が製作することを可能にする接触者追跡 API を開発することになった。

ヨーロッパでは、将来におけるこのアプリの運用に際して2つの相反する見方が示された。一つは、データを中央サーバに保存し、そこで感染のマッチングを行う方法。もう一つは、データをユーザのスマートフォンにとどめ、そこでマッチングを行う方法だ。いずれも、GPS や他の位置追跡手法を使用することはない。

フランスでは最近、この技術に関する詳細、プライバシーとの相反、セキュリティ上のリスクなどが新聞で報じられ、テレビのニュースでも話題となっており、この問題が国民にとっていかに重要な問題であるかを物語っている。

政府は、汎欧州プライバシー保護近接追跡(PEPP-PT)という団体が開発した集中型のフレームワークを採用することとした。当初はドイツの研究者たちによって始められたこの取り組みは、最終的に ROBERTROBust and privacy-presERving proximity Tracing protocol)とよばれる追跡フレームワークに結実した。

フランスの研究所 Inria の CEO Bruno Sportisse 氏は4月中旬に ROBERT について語っており、データ追跡に関するフレームワークは例外なく、プライバシーとセキュリティで何らかの相反を抱えているという。

また、一方のアプローチを「集中型」、他方を「分散型」と名付けるのは誤りだと話している。どのようなシステムであれ、ある程度の情報は端末で処理されるほか、ある程度は共通サーバを経由するからだ。ROBERTについて言えば、全てのユーザはオプトインしなくてはならない。そして中央サーバに送られる情報は、実名や個人情報ではなく暗号化された識別子を使って保存される。

このアプリケーションは「追跡アプリ」ではありません。使用しているのは Bluetooth だけで、通信規格 GSM やジオロケーションデータは使っていません。

ましてや監視アプリでもありません。自明なことですが、政府は言うまでもなく誰であっても、ウイルス検査で陽性と判定された人のリストや、交流した人のリストにアクセスできるようには作られていません。(Sportisse 氏)

フランスの StopCovid アプリは、研究所のほか大学、民間企業から成る組織の知恵を活用した ROBERT のフレームワークで設計されている。関係する組織は Inria、ANSSI、Capgemini、Dassault Systèmes、Inserm、Lunabee Studio、Orange、Withings、フランスの公衆衛生当局である。StopCovid アプリの試験版の公開は5月下旬が予定されているため、それまでにフランス議会での審議と承認が行われる。承認がなされ、試験が成功したという前提の下では、アプリの配布は6月上旬になるだろう。

このアプリを特効薬としてプロモートする者はいないが、今月に入って都市封鎖が徐々に解除されつつある中、ツールの一つとして重視されるようになっている。

Cédric O 氏も、StopCovid が国民の監視を意図するものではなく、アプリのダウンロードと起動は強制ではないことを強調している。内容を問わず情報の共有はオプトインを基に厳格になされる。

オプトインした人は新型コロナウイルスに感染した場合にその情報を伝えることができる。するとアプリは感染者の近くにいる全てのユーザに通知を行う仕組みだ。その場合、通知を受けた人が医療機関を受診するかはアプリのユーザ次第である。誰が感染者であるかの情報は提供されない。またアプリには、感染者が特定できるような情報は含まれない。

今回のフランスモデルに関しては、独立系のプライバシー保護機関である国家情報自由委員会(CNIL)より、EU の一般データ保護規則(GDPR)の規定に沿ったプライバシー対策が十分取られているとして暫定的な承認を取得している。フランス国家電子会議の諮問機関も当座の承認を与えているが、実際にアプリを検証できるようになるまでは最終的な意見の提出を保留するとしている。

Cédric O 氏は全体的なプライバシーの懸念について、次のように記している。

StopCovid プロジェクトは何かをするための足掛かりではありません。全てが一時的な措置です。データは数日経つと消去されます。感染拡大期以外にアプリを使用する意図はありません。

データの分散化

ROBERT に対抗するフレームワークとして、DP-PPT(Decentralized Privacy-Preserving Proximity Tracing)という分散型の接触者追跡プロトコルがある。このフレームワークを開発したのはヨーロッパにある研究機関出身の研究者連合で、Apple や Google が開発を進めているAPIと同期させることができる。

Apple と Google が提携する以前、新型コロナウイルス追跡アプリは iPhone の動作でさまざまな問題を抱えていた。例えば、Apple では一般的に、他の電話との接続を確認するのに Bluetooth が連続して信号を送らないようにしている。最新版 Android 端末も Bluetooth に一定の制限はかけているものの、接触者追跡アプリで最大の障壁となっていたのは iPhone だった。

スイス連邦工科大学ローザンヌ工科大学(EPFL)のコンピュータ・コミュニケーションサイエンス学部長で、DP-PPT チームの一員でもある James Larus 氏は、次のように話している。

Android のスマートフォンならどちらのアプリも問題なく実行できます。問題は Apple のスマートフォンです。

シンガポール政府は、アプリをフォアグラウンドで動作させるようにして、電話をロックのかからない状態にすることで Apple 問題に対処する次善策を開発した。だが、バッテリーの消耗が激しいほかプライバシー上の懸念もあって利用は低調、効果を上げるに至っていない。

接触者に関連するデータがユーザの電話に残っている間、Appleはこの問題に対処していくことにして、基本的には政府に対し分散型ソリューションを採用させるようにした。集中型アプリの場合、ウイルス感染者の接触者情報が中央サーバにアップロードされる。それが分散型 Apple-Google 版アプリの場合、感染したことをアプリに報告すると、サーバは暗号処理された接触者情報をデータベースにアップロードすることになる。

他方、アプリは同時にこのデータベースをユーザのスマートフォンにダウンロードする。データベース内の感染レポートの記録とユーザの最近の接触者がマッチしたことをアプリが検知すると、ユーザに対して通知がなされる。このアプローチと ROBERT のフレームワークとの主な違いは、匿名化された ID が中央サーバに常時保存されることがないことである。

現実的な違いは、データの保存場所とマッチングの行われる場所に関する問題です。これこそが本当の違いでしょう。ただ結局のところ、アプリの機能は同じです。(Larus 氏)

いずれのフレームワークについてもある種の暗号化に依存しているため、潜在的なセキュリティリスクは残る。フランスの場合、システムを統制している政府機関がアプリとネットワークに十分なセキュリティを施していることに対する信頼を得なくてはならない。

しかし分散化アプローチでも、ユーザがウイルスに感染した場合、他人の携帯電話に自分の暗号化情報が保存されてしまうリスクがある。システムが全ユーザの携帯電話で同じくらい安全になるにはこの方法しかない。

これこそ、フランス政府が分散型アプローチを採用しなかった理由の一つである。フランスのセキュリティ機関である国家情報システムセキュリティ庁(ANSSI)は、暗号化された識別子が他人の携帯電話に広まるという理由で分散型モデルはリスクが高いという決定を下した。

ANSSI は書簡の中で次のように記している。

プライバシーと人権を保護する観点で、あらゆる分散型アプリには重大なリスクがある。

各個人の相互作用グラフ(ソーシャルグラフ)を収集することによって、大規模な監視が可能となる。それが携帯電話の OS レベルで実現され得る。OS メーカーだけでなく国家機関でさえも、選択するアプローチによっては程度の差こそあれ、いとも簡単にソーシャルグラフが作成できてしまう。

フランス対 Apple

今月はフランスの集団がアプリの完成に向けた作業を急ぐ中、Apple とフランス政府の間で一つの大きな問題が行き詰まりをみせていた。イギリスではフランスと同じ考え方に基づいたウイルス感染追跡アプリを採用したのに対し、ドイツでは方向転換をして分散型アプリを志向した。

フランスのアプリ製作にも協力している Orange の CEO Stéphane Richard 氏は、StopCovid アプリのコンソーシアムと Apple の交渉の行方について楽観的な見通しを示した。彼はロイターに次のように語っている

毎日のように会合が行われています。まだ合意に達していませんが(中略)Appleとは精力的に議論しており、状況は悪くありません。

しかしフランス政府は長引く苛立ちを隠せない。Cédric O 氏は5月5日、ビジネステレビ BFM でのインタビューで次のように述べた

Apple は iPhone でのアプリ動作の向上で協力できることがあったはずです。ところが Apple は協力を望まなかったのです。

Cédric O 氏は他にも、Appleとの論争が意味しているのは「OSの寡占的な市場特性」という厳しい見方を示した。国が大企業の犠牲になっているというのだ。

フランス政府の観点で言えば、健全な政策とは国の責任すなわち主権です。資質をもって、そして欠陥はありながらもフランスの国民を守るのに最善だと考える方法を選ぶのは行政なのです。提案している2社がアメリカの企業という理由で両社の API を受け入れないわけではありません。(中略)

現在の仕様では、技術的な選択が制約となっているから受け入れないのです。つまり iOS 搭載の携帯電話が完全に動作するのは、分散型ソリューションだけです。(Cédric O 氏)

Cédric O 氏はさらに、「大企業の選択による制約を受けることなく、現状と同じくらい革新的かつ効率的に」、フランスは主権を守れるようにしなくてはならないと述べた。

こうした技術的、政治的な論争で見落とされているのは、どのアプリが本当に効果的であるかを把握している人が誰もいないという現実だ。その背景には、技術がまだ証明されていないことが一部関係している。また、十分な数のダウンロードが確保されるかも明らかでない。疫学者の大まかな見通しによると、有効な追跡システムになるには人口の6割がアプリを利用する必要がある。

それでも、一定の影響を及ぼすためには、アプリと国の医療インフラを接続する必要があるとスイスのLarus氏は話している。ユーザが通知を受け取った際、追加情報がほしいとき誰に連絡すればよいか、検査を予約するにはどうすればよいかなどその時点で取るべき行動を知っておく必要がある。

同じく医師、病院、StopCovid アプリのコールセンター、検査機関も、感染者の近くにいるとの通知を受けた人から連絡を受けた際に定められた指針に従う準備ができていなくてはならない。対象者がすぐに検査を受けたり、症状を診察してもらえたりする体制になっているか、政策当局者は決定をしなくてはならない。

この問題には多くの人々が関わるほか、政治的な意思決定が求められています。それは非常に難しい決定であるほか、内政、その国に特有の問題です。ある国で採用された単一アプリのバックエンドを別の国に単純に落とし込むことにはならないでしょう。(Larus 氏)

とはいえ、Larus 氏からすると、アプリを取り巻く問題はきわめて技術的であるとはいえ、この問題がフランスや欧州各国で真剣に受け止められているのは喜ばしいことであるという。現在の感染流行を抑制するためには、現世代の接触者追跡アプリに関するプライバシー、セキュリティ、設計、指針の間にある相反を正していくことが重要になるだろう。

だが、今なされる決定が将来の接触者追跡アプリの基盤になるとみられる。来るべきウイルス感染アプリが広く受け入れられ、その価値を証明できるのなら、次のウイルス感染拡大が発生したときに手間暇のかかる指針の策定や技術的な論争を避けることができるだろう。

次の機会は必ずあると Larus 氏は述べている。

同じことを繰り返すとしたら、次は素早くできるでしょうか? 再び迅速な行動ができるようにするためのアプリシッティング用コードはあるでしょうか? 次は一から始めなくても済むように、健全なシステムへの統合は維持されているでしょうか? 今回の危機を乗り越えた後も、今蓄積しつつある専門知識、ナレッジは重要なものになるでしよう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

アフターコロナの不動産テック【ゲスト寄稿】

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本稿は、パリと東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。英語によるオリジナル原稿は、THE BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿) This guest post is authored by Paris- / Tokyo-based venture capitalist Mark Bivens. The …

mark-bivens_portrait本稿は、パリと東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。英語によるオリジナル原稿は、THE BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Paris- / Tokyo-based venture capitalist Mark Bivens. The original English article is available here on The Bridge English edition.


本稿は、一部データが非公開となったため削除しました。ご了承ください。

新型コロナ感染拡大、安全確保と自由のバランスをどう取るか?

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世界中の国々が人類の最も身近な脅威に注目している。コロナウイルスは、雇用、世界的な経済活動、国際関係、愛する人の健康、私たち自身の生活を脅かしている。疫学者は感染拡大と闘うために、コロナウイルスがどこでどのように広がっているかをより深く理解するためのデータを必要としている。世界レベルから地方レベルまで、世界のリーダーは、資源の管理、避難所設置制限への対応、事業再開などについて、十分な情報に基づいた…

シンガポールで導入された接触追跡アプリ「TraceTogether」。
日本でも、このアプリをベースとした同種のアプリが開発されているとの報道がある。

世界中の国々が人類の最も身近な脅威に注目している。コロナウイルスは、雇用、世界的な経済活動、国際関係、愛する人の健康、私たち自身の生活を脅かしている。疫学者は感染拡大と闘うために、コロナウイルスがどこでどのように広がっているかをより深く理解するためのデータを必要としている。世界レベルから地方レベルまで、世界のリーダーは、資源の管理、避難所設置制限への対応、事業再開などについて、十分な情報に基づいた意思決定を行うために、ウイルスの広がりを追跡できる必要がある。

政治家がテストしているスマートフォンを使った接触者追跡、熱スキャン、顔認識などのテクノロジーは、すべて監視することを言い換えただけのもので、現在検討されているトレードオフは、今回の危機以降にも拡大する可能性がある。

コロナウイルス感染拡大が起きる前、倫理と社会正義における最も重要かつ人気のある運動の一つは、テクノロジーによる監視、特に顔認証のような AI 技術に反対する運動だった。それは、ビッグテックの最もよくない部分、行き過ぎた法執行、政府乱用の可能性に対して、日常生活者を対抗させる権力に特化した枚挙にいとまのない話題である。「監視資本主義」は、読んで字のごとく品の無いものだし、特定の種類の権力について真実を語ることは気分がいい。

<関連記事>

しかし今、何百万人もの人々が突然失業し、アメリカだけでもコロナウイルスによる死者が約8万人も出ている中で、問題はもはや企業の利益でも、プライバシーや安全性でも、権力に対する取り締まりの有効性でもない。世界的感染拡大においては、プライバシー、安全性、権力、生命そのものとのトレードオフが非常に重要になるかもしれない。

コロナウイルスの蔓延は、すぐに生死に関わる脅威となる。これほどの規模の感染拡大を経験した人は現代の世の中にはいないので、誰もが適応しようと必死になっている。このような悲惨な状況下では、データのプライバシーや顔認証による政府の過剰な監視についての理論的な懸念は、簡単に脇に追いやられてしまう。

コロナウイルス関連の医療記録が大規模なデータベースに蓄積され、最前線の医療従事者がこの病気と闘うのに役立つとしたら、それは本当に悪いことなのだろうか? あるいは、そのデータが、疫学者がウイルスを追跡し、それがどこでどのように広がっているかを理解するのに役立つならば? あるいは研究者が治療法を開発するのに役立っているとしたら? コロナウイルス患者と接触したかどうかを調べるために、スマートフォンのデータを共有しなければならないとしても、誰が気にするだろうか? もしそれがスーパースプレッダーが何百人も何千人もの人々に感染するのを防ぐことができるのであれば、顔認識監視システムを導入することは本当にそんなに手間のかかることなのだろうか?

これらの疑問は正当なものだが、全体としては危険なほど浅はかな視点である。

9.11後のアメリカでは、同じような時代の流れが浸透している。恐怖心——そして連帯への強い願望から、議会は超党派の幅広い支持を得て愛国者法を速やかに可決した。しかし、アメリカにはガードレールを要求・実装するだけの先見の明が無く、連邦政府はそれから約20年間、広範な監視権限を維持してきた。我々が9.11と愛国者法から学んだこと(少なくとも学ぶべきだったこと)は、脅威への積極的なアプローチが、将来を見据えた保護を排除すべきでないということだ。それ以下であれば、パニックに陥ることになる。

プライバシーやその他の自由を、急ぎ足で大々的に放棄することによってもたらされる危険性は、理論的なものではない。コロナウイルスがもたらす脅威のように、すぐにはっきりとしたものではないのだ。プライバシーを手放すことは自分の権力を手放すことであり、誰が全てのデータを保持しているのかを知ることは重要である。

データを保持するのは、Apple や Google のようなテック大手のこともあれば(彼らは、すでに広く信頼されていないが)、PalantirClearviewBanjo のような極右過激派とつながりを持つ AI 監視テック企業である可能性もある。他にも、あなたの権力が直接政府の手に流れるケースもある。時には、顔認証監視のようなタスクを実行するために、政府がテック企業と契約している場合、あなたのデータと権力が同時に奪われる可能性もある。

おそらくもっと悪いことに、一部の専門家や倫理学者は、感染拡大中に構築または配備されたシステムは解体されないと考えている。つまり、あなたが今スマートフォンのデータを携帯電話会社に提供することに同意した場合、彼らはそのデータを(感染収束後も)取り続ける可能性が高いということだ。あなたが街中に展開された顔認識システムなど検疫措置に同意した場合、それらのシステムは、検疫が終わった後も、法執行のスタンダードの一部になる可能性が高い、といったところだろうか。

感染拡大に、困難なトレードオフは必要無いと言いたいわけではない。困難ではあるが非常に重要なのは、どのような譲歩が受け入れられる必要があるのかを理解し、どのような法的・規制上の保護措置を講じる必要があるのかを理解することである。

手始めに、いくつかの一般的なベストプラクティスに目を向けることができる。世界中の何百もの組織が署名した「通信監視への人権の適用に関する国際原則」は、いかなる集団監視の取り組みも、必要かつ適切で、相応のものでなければならないと長年にわたって主張してきた。データ収集に関する意思決定は、法執行機関ではなく、保健当局が行う必要がある。プライバシーへの配慮は、連絡先追跡アプリのようなツールに組み込まれるべきだ。公衆衛生の名の下に行われた妥協は、プライバシーへのコストとのバランスをとる必要がある。また、監視システムが設置されている場合は、コロナウイルスの緊急性の高い脅威が収まった時点で解体する必要がある。感染拡大時に収集されたデータは、誰が、どのような目的で、どのくらいの期間、そのデータにアクセスできるかについての厳格な制限を含む法的保護を持たなければならない。

今回の VentureBeat 特集連載「AI と監視(AI and Surveillance)」では、議員が取り組んでいるプライバシーと監視のトレードオフを探り、コロナウイルスを追跡する方法を概説し、政治、テクノロジー、人々の生活が交差するところで政府が直面する課題のケーススタディとしてフランスを取り上げる

これは生死に関わる問題だ。しかし、それは現在の生と死であるとともに、この先何年にもわたっての生と死の問題なのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

ゲームアクセサリ大手Razer、シンガポールでマスク自販機を設置へ

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Tech in Asia では、有料購読サービスを提供。有料記事の閲読、全記事への回数無制限閲読、5万社を超える企業データベースへの無制限アクセス、カンファレンスへの限定割引などの特典があります。詳しくはこちらから


シンガポールにおける新型コロナウイルスの症例数は増加の一途をたどっており、サージカルマスクへのアクセスが最も重要になっている。これに伴い、ゲーミングライフスタイルブランドの Razer は、Razer Fintech のモバイルウォレットアプリ「Razer Pay」を使ってアクセスできるサージカルマスク自動販売機をシンガポール市内に設置すると発表した。

Photo credit: Razer

同社では、6月1日の「サーキットブレーカー(シンガポールのロックダウン措置)」解除までに20台の設置を計画している。設置場所は、ビジネス街中心部にある JustCo のコワーキングセンターや、地下鉄乗換駅に近い Frasers Property Retail のモール内に設置される。

また、Razer はシンガポールの16歳以上の成人全員にサージカルマスクを1枚無料で提供する予定だ。割り当ては Razer Pay のアプリを介して行われ、認証プロセスの後、ユーザにQRコードのクーポンが発行される。認証されたユーザは、自動販売機でコードをスキャンして無料マスクを受け取ることができる。このアプリでは、自動販売機の位置情報も提供される。

同社は、この取り組みの一環として、合計500万枚のマスクを配布する予定。

今後数週間の間に、Razer は、自動販売機の展開とマスクの供給を強化するために、Razer Payとの連携に加え、自動販売機の初期ベータテストを実施する予定だと述べている。

テスト参加に興味がある人は、Razer Pay をダウンロードしてアカウントを確認し、承認されるまで最大1営業日待つ必要がある。

マスクを継続的に供給するため、Razer は現地製造会社 Sunningdale Tech と提携、シンガポールに完全自動化されたマスク生産ラインを導入し、フル稼働で月に500万枚のマスクを生産できるようにした。Razer は、近日中に月産1,000万枚のマスク生産を倍増させることを目指している。

今回の新型コロナウイルス感染拡大では、ウイルス拡散抑止の予防措置のため、マスクは必然的に不足した必需品となっている。(中略)

今、Razer のマスク専用生産ラインが正式にオープンしたので、我々はシンガポール人としての責任を果たし、コミュニティを支援していく。(Razer CEO の Min-Liang Tan 氏)

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

小売店+ライブコマースーーwithコロナの生き残り戦略は“ほぼ24時間営業”の越境EC店舗

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※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載 小売業界が厳しい状況に追い込まれています。 Retail Driveによると、閉店した店舗舗の多くが再オープンしない動きを活発化させており、今年だけで1万5,000店もの米国小売店が閉店する可能性があるとの予測を公表しています。それ以外にもUSA TODAYは2025年までに米国で10万店もの店舗が…

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Photo by Chris Panas on Pexels.com

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

小売業界が厳しい状況に追い込まれています。

Retail Driveによると、閉店した店舗舗の多くが再オープンしない動きを活発化させており、今年だけで1万5,000店もの米国小売店が閉店する可能性があるとの予測を公表しています。それ以外にもUSA TODAYは2025年までに米国で10万店もの店舗が閉鎖される可能性を伝えてますし、Reutersが伝えるところではLord & Taylorは、在庫を清算するためだけに38店舗の百貨店を再開することを計画しているそうです。

厳しい経営状況の中、実店舗を持つ大手ブランドはどのように考えているのでしょうか。The Seattle Timesによれば、Amazonにブランドが取り込まれているという動きがあるようです。

同記事では、オンライン小売業者向けソフトウェア「Feedvisor」が実施した調査を紹介。新型コロナ大流行前は約45%のブランドがAmazonで商品を全く販売しておらず、3分の1以上のブランドは、顧客にリーチする上でAmazonを必要としていないと答えています。多くのブランドや卸売業者は、Amazonが自社のマージンを圧迫し、貴重な顧客データを収集し、最も人気のある商品をコピーするのではないかと懸念していたためAmazonの手の届かないところに身を置いていました。

ところが、パンデミックでこれらの状況は一変します。

Amazonの力は、以前まで売上の大半を実店舗に頼っていた大手ブランドにまで拡大し、数少ない実店舗に代わる販売店の一つとして浮上することになったのです。パンデミックの影響でAmazonは急速に成長するという、ユニークな立場に置かれています。

店舗からライブ配信する越境EC

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渋々Amazonへの参入を果たしている小売ブランド。これを機に、実店舗および自社ECの運用改善を行い、オンライン売上強化を図る動きが出てくるかもしれません。ただし、自社ECを前面に押し出したところで、Amazonへの勝算はほとんどないのが現実です。

それではAmazonが未だに進出しきれていない業態はどこでしょうか。

GAFAにだって弱点はあります。答えの1つがライブコマースです。あと1〜2ヶ月生き残れるのかわからない小売店舗が多数登場してきており、新たな販売チャネルニーズが高まりつつある中、ライブ配信プラットフォームの活用は期待される一手と考えます。

具体的には閉店中の店舗からライブ配信を行い、商品紹介・販売をする事業モデルが挙げられます。自粛要請が解除されたとしても向こう1〜2年は客の入りが減るリスクヘッジを考えつつ、全く使われない不動産資産および在庫を活用する考え方です。

事例として米国拠点のライブストリーミング越境ECサービスの「ShopShops」を挙げます。同社はニューヨークの店舗から中国市場向けに洋服を売るライブ配信コマースサービスを展開していました。プラットフォームはTaobao(淘寶網)です。テレビショッピング感覚でナビゲーター/キュレーターが提携店舗から商品を紹介し、店舗内の商品をお客が自国から購入していく越境ECの仕組みになっています。

平均2万弱のユーザーがリアルタイムに動画を視聴し、キュレーターが100点ほどの洋服・アクセサリーをリアルタイムに販売。北京のShopShopsチームがTaobaoのECサイトで購入を促し、米国のフォワーダーから輸出されます。LA・NYC・SF・MIAMI各都市で、毎日1回は販売イベントを開催。1店舗のイベント売り上げ平均は6,000ドルであったそうです。

ShopShopsは今はクローズしてしまっていますが、原因はタイミングの問題だったと今では感じます。withコロナの現代ではその提供価値が再認識されるのではないでしょうか。

“ほぼ24時間営業”の店舗業態

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Photo by Artem Beliaikin on Pexels.com

また今後は、店舗の価値を最大限活用する機運が高まってくるはずです。そこでShopShopsのように越境ECを事業軸に、時差を利用して店舗からほぼ24時間運用の形でライブ配信を行い、日本にいながらにして世界中に商品を販売する「店舗の販路拡張」の考えに注目が集まると感じています。時間帯によって配信先国を変える「24時間の」オペレーションです。

いわば各国ライブ配信プラットフォームにコンテンツ展開する「越境EC + ライブ配信時代の分散型メディア」のモデルで、人件費をなるべく削った形で実質24時間営業できる、無人店舗化にも繋がる事業概念です。

Airbnbが住宅の、Uberが自動車に眠る遊休資産をフル活用して成長したように、コロナで顕在化した閉店店舗および在庫資産を急成長を遂げつつあるEC市場に流す、時代に沿った越境ECのモデルに商機を感じています。

事実、閉店を余儀なくされた小売事業者が中国では、ライブ配信サービスを通じて消費者に直接商品を販売するECチャンネル化を指す「リテール・ストリーミング」の分野が成長しているそうです。

iiMedia Researchのレポートによると、中国でのライブストリームECは2019年に年間610億ドル相当の取引を達成しています。 さらに最近では、コロナウイルスのロックダウン中に人々が自宅にいるため、チャネルはさらに劇的な後押しを受けています。同じレポートでは、2020年にはリテールストリーミングの取引額が合計で1290億ドルに達すると予測。2月だけで、中国最大の小売ストリーミングプラットフォームのTaobaoは、ベンダー数719%の増加を見ているとのことです。

実店舗に人が集まらないのであれば、人が集まる場所に積極的に展開する必要があります。さらに、コスト垂れ流しの状態になっている新たな店舗運用を考える時期に、既存事業者が手軽に導入できる事業モデルを考える必要が出てきました。今回紹介した越境EC向け店舗サービスは、日本の店舗を1日でグローバル展開ブランドに変えるアイデアになるかもしれません。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した