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Podcastはなぜマネタイズが難しいのかーー業界の変遷を紐解く

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、STRIVEのパートナー根岸奈津美氏によるもの。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。Twitterアカウントは@negishinatsumi。 Radiotalkに投資しているSTRIVEの根岸です。前回音楽ストリーミング業界に関して書いたのですが、その続きで音楽以外の音声コンテンツが今後どうなっていくかを考えるときの、前段の今までの業界の流れ…

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、STRIVEのパートナー根岸奈津美氏によるもの。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。Twitterアカウントは@negishinatsumi

Radiotalkに投資しているSTRIVEの根岸です。前回音楽ストリーミング業界に関して書いたのですが、その続きで音楽以外の音声コンテンツが今後どうなっていくかを考えるときの、前段の今までの業界の流れについて書きました。

プラットフォームは細分化し、新しいコンテンツや課金方法が出現

オーディオコンテンツを届けるチャネルはラジオから、インターネットラジオ(懐かしい‥)が出てきて、その後、音楽、Audiobook、Podcastそれぞれに強みを持ったオーディオプラットフォームが出てきました。プラットフォームの進化に伴い、コンテンツもPodcast、LIVE配信など新しいものが出てきており、課金方法も、広告や番組内ショッピングから、サブスクや投げ銭などに広がってきています。

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音声市場で最もホットな領域はPodcast市場

オーディオコンテンツ市場で、最も大きいのは音楽市場で128億ドル、次いでオーディオブックが35億ドル。Podcastは色々調べたのですがグローバルでたったの11億ドルでした。利用者数は一定数いるもののマネタイズに課題があり現時点での市場規模は大きくないです(後述)。

別のデータで、中国のPodcast市場(オーディオブック含む)を73億ドルとしているものもあります。中国ではXimalaya(未上場)やLihzi(2019年通期売上高$169M)等のオーディオプラットフォームが存在し、早くからサブスク課金があったり、足元ではライブ配信などへのギフティングなど、課金手段が色々とあるため、USなどよりも課金規模では大きい可能性があると考えています。

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Podcastをはじめとする音楽外の音声コンテンツ市場は、足元急拡大しています。ライブ配信などの新しいコンテンツや、Clubhouse、Twitterなどの新規参入者の存在、それらのサービスが収益化を強化する方針を打ち出していることから、今後加速度的に大きな市場になると期待しています。

Podcastの変遷

Podcastの全体感を知るために変遷を書きます。

2003年(Podcast登場)

2003年にPodcastという単語が初めて登場。2005年にAppleがApple Podcastを正式サポートし、圧倒的なプラットフォームになります。当時はスマホアプリを使った手軽なホスティングサービスは当然なく、自身でサーバーを立て、録音した音源をPCソフトで編集するなど、個人が番組制作・配信するにはハードルが高いものだったようです。

2008年(iPhone3Gとブロードバンド)

音楽ストリーミング同様、2008年のiPhone3Gとブロードバンド環境が転機になりました。元々Apple Podcastという圧倒的なプラットフォームがあったUSでは、2013年頃からですがSimplecastやAnchorFMなどスマートフォンアプリで録音編集できるホスティングサービスが新しく出てきて、個人でも手軽に配信できる環境が整っていきました。

大きなプラットフォームがまだなかった中国では、ホスティングサービス単体というよりは、前述のLizhiやXimalayaなど、録音編集から配信まで一元的にできるプラットフォーム(日本でいうRadiotalkやstand.fmさんのようなサービス)が2010年頃から登場しました。

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2015年(スマートスピーカーとAirpods)

次の転換点がAirpodsやスマートスピーカーの発売です。そもそも本来音声コンテンツは画面をみなくても楽しめることが利点なのに、PCやスマホの画面に縛られてるという矛盾がありました。

Airpods等の登場で、ハンズフリーで話したり、ながらで発信やコミュニケーションができるようになり、コンテンツもPodcastのような発信者ベースのものから、ライブ、そしてClubhouseなどよりインタラクティブなコンテンツやサービスが出てきています。

2015年から6年かかって音声サービスが拡大しているのは、コロナの巣ごもりなどの影響もありますが、マネタイズもセットで展開するサービスが増えてきたからではないか、と思っています。プラットフォームに儲かる仕組みがあったほうがコンテンツが増えますが(YouTuberなど)、これまで、限られた人気者しかマネタイズできないような状況でした。そしてそんな状況は変わってきています。

Podcastの構造の話

マネタイズの課題について触れる前に、一度、USのPodcastの構造について見ます。2005年以降、下図の赤枠で囲った無料のPodcast配信プラットフォームは大手のAppleなどが牛耳っています。なので、USで、音声関連で立ち上がったスタートアップは、既述の2008年のスマホ化とブロードバンド対応以降、青枠で囲った配信系SaaSや制作会社などになります。

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最近のプラットフォームは、TikTokのように制作から配信までプラットフォームが一元的に提供するものだと思いますが、Podcast市場の場合、配信プラットフォームであるAppleが強すぎるゆえにUSでは分断した構造になったのだと考えています。ホスティング系のSaaS(Anchorなど)が立ち上がったことで、サーバーの準備や特別なPCソフトなど必要とせず、個人が手軽に配信できるようになりました。

Podcastのマネタイズの課題

そして、なぜ既存のPodcastプラットフォームではマネタイズがしにくいのかというと、Appleが無料コンテンツとして配信して普及させてきたこと(これが大きそう)や、コンテンツ制作と配信が別々なのでマネタイズポイントを作りにくいなどが考えられます。

Appleが無料コンテンツとして配信させてきたのは、Appleの意向なのかもしれませんが(ポリシーありそうな気も)、Podcastの仕組みにおいては、コンテンツを大手プラットフォーム外のサーバーにおいてあるため、プラットフォーム側としてはYoutubeのような完全自動広告など入れにくいという事情もあるようです。

USのPodcasterの場合は、一部の売れているPodcasterは広告案件をとってきて番組内で紹介したり、スポンサーをつけるなど、アナログ且つ限定的な方法でマネタイズをしています。Ancarなどのホスティングサービスは自動広告を入れられるサポートなどをしていますが、収益化という意味ではインパクトはまだ小さいようです。

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マネタイズの課題感は当然大きいのでUSではPatreonがPodcasterの収益化ニーズをとり、グロースしてきました。また、2019年にはPodcast版Netflixと言われた完全サブスク型のプラットフォームLuminaryも出てきました(が、Luminaryはあまり立上ってないようです)。

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一方、中国では、制作ホスティングから配信まで一元的に提供するプラットフォームが主流(下図赤枠)で、早くからサブスク課金や、ギフティングなどのマネタイズが始まり、Podcastだけでなくライブ配信など、多くのコンテンツが生まれているようです。日本でもRadiotalkやstand.fm、Voicyなどは一元プラットフォームで足元様々なタイプのマネタイズ手法を提供しています。

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プラットフォーム側もマネタイズを強化しています。Podcastで2021年にも最大手になると言われているSpotifyは、ホスティングSaaSのAnchorを買収し、プラットフォーマーとしてのマネタイズポイントを取りに行っています。また、Adやサブスクなど、マネタイズ手段も強化する方針を示しており、このあたりは今後本格的に変わってくると思われます。以下の岡さんの記事がわかりやすかったです(勝手に引用すみませんmm)。

今後の展望

さて、今後の展望ですが、「より多様なコンテンツ」と「マネタイズもセットにしたプラットフォーム」がグローバルで出てくると思っています。Podcastの変遷の2015年~の部分に書いた通り、従来のPodcastという形だけではなく、ライブ配信やインタラクティブな形式の新しいコンテンツが出てきています。ただし、広がるポイントとなるのがマネタイズで、まさにClubhouseやTwitterがサービスローンチと共にクリエイター収益化の支援を掲げているのは上記のマネタイズの課題を念頭に置いてだと考えています。

アイキャッチクレジット:Photo by Tommy Lopez from Pexels

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トーク配信アプリ「Radiotalk」、毎日放送系のMBSイノベーションドライブから約1億円を調達し業務提携

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スタートアップスタジオの XTech(クロステック)は今年3月、トーク配信アプリ「Radiotalk」を運営する子会社 Radiotalk の設立を発表している。Radiotalk は20日、毎日放送などの持株会社 MBS メディアホールディングスの新事業開発子会社 MBS イノベーションドライブから約1億円を資金調達し、業務提携したことを明らかにした。 Radiotalk は、移動中や家事・入浴…

左から:XTech 代表取締役 西條晋一氏、Radiotalk 代表取締役 井上佳央里氏、MBS イノベーションドライブ代表取締役 日笠賢治氏、毎日放送 髙本慧氏
Image credit: Radiotalk

スタートアップスタジオの XTech(クロステック)は今年3月、トーク配信アプリ「Radiotalk」を運営する子会社 Radiotalk の設立を発表している。Radiotalk は20日、毎日放送などの持株会社 MBS メディアホールディングスの新事業開発子会社 MBS イノベーションドライブから約1億円を資金調達し、業務提携したことを明らかにした。

Radiotalk は、移動中や家事・入浴中など、動画は見られなくても音声なら聞くことができる「耳の可処分時間」に焦点を当てた音声配信プラットフォームだ。現在は XTech が経営権を持つインターネットポータル大手エキサイトで、初の社内ベンチャー制度適用プロジェクトとして、2018年4月に製品版をローンチ。事業の拡大を狙い、今年に入って XTech に事業譲渡され、外部資本の調達や他企業との連携を念頭に独立法人化された。

Radiotalk

Radiotalk はこれまで、MBS ラジオと多くのコラボレーションを行ってきた。2018年8月からは、毎日放送東京支社の高本慧氏がパーソナリティを務める MBS ラジオの番組「あどりぶラヂオ」で、トーカー(Radiotalk で番組を発信するユーザ)が Radiotalk の吹き込んだフリートークを放送する企画を毎月末に実施している。今回の業務提携を通じて、Radiotalk は、毎日放送/ MBS ラジオが持つコンテンツ開発のノウハウやアセットをより一層活用できることになるだろう。

Radiotalk の競合として、THE BRIDGE の読者の頭には Voicy(ボイシー)の名前が浮かぶと思う。Voicy はこれまでにメディア各社を含む複数の企業やエンジェルから資金調達に成功している。スマートスピーカーや Radiko などのラジオ聴取アプリの誕生など、ながら聴取需要の拡大を促すデバイスやアプリは増加の一途をたどっており、メディア各社も従来のラジオリスナーに代わる層の開拓に注力している。今後のボイスメディアスタートアップの隆盛にも注目したい。

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