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UberのIPOへ向けた事業選択と、ロボット配達元年ーー6000万ドルを集めた「Shyp」や「UberRush」が撤退した3つの理由(後編)

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 前編では大手配達代行サービス「 Shyp 」が倒産した理由を2つ述べてきました。後編では、同じタイミングでサービス閉鎖を発表した配車サービスUberが展開した小規模店舗向け配達代行サービス「 UberRush 」の撤退の意味を紐解いていきます。 上場へ向けた選択と投資家が求める安全経営 UberRush撤退の背景を説明するには、輸送企業Uberのミッションを語らなければいけません。同社は膨大な…

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前編では大手配達代行サービス「 Shyp 」が倒産した理由を2つ述べてきました。後編では、同じタイミングでサービス閉鎖を発表した配車サービスUberが展開した小規模店舗向け配達代行サービス「 UberRush 」の撤退の意味を紐解いていきます。

上場へ向けた選択と投資家が求める安全経営

UberRush撤退の背景を説明するには、輸送企業Uberのミッションを語らなければいけません。同社は膨大な配車ビックデータを収集・分析することで都市交通の最適化を図ることをミッションに掲げて始まった企業です。最終的に都市の交通渋滞を完全に解消し、顧客が最短ルート・最短時間で移動ができる世界を目指しているわけです。

自社輸送データを活用することで生まれたのが、日本でも展開しているフードデリバリーサービスのUberEatsやUberRushなのです。都市輸送の最適化を軸に据えて、輸送に関わる全てのサービス領域へ横展開する戦略を採っていたからこそ始まったサービスであると言えます。しかし手広くサービス展開をしすぎた印象が否めません。

B2Cの配達代行では、競合サービス「 Postmates 」が大きく先行していました。加えて、1回当たり5〜7ドルの収益モデルでサービスを維持するにはそれなりの配達需要が必要となってきます。市場参入のタイミングに出遅れ、収益性や市場競合性において課題が山積したサービスであったといえるでしょう。このような状況の中、Uberは事業選択を迫られた背景があります。

UberのCEOであったTravis Kalanick氏の辞任以降、投資家からサービス黒字化や上場する声が高まりつつあります。事実、新CEOであるDara Khosrowshahi氏は 2019年までの上場を目指す と明言しています。こうした流れから戦略統一化を図る動きが活発化し、明らかに収益性の低いサービスを展開するのではなく、IPOに向けた黒字化への流れが加速することになったのです。言い換えれば、ミッションに忠実に沿った形でサービスを立て続けに立ち上げるフェーズから、収益性を重視した堅実経営のフェーズに移行したということで、UberRushが清算される結果になったのもこういった背景が要因と考えられます。
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ただ、UberRushがサービス閉鎖をする一方、ローカルフードデリバリーサービスのUberEatsは継続が見込まれます。Bloombergによれば、2017年度のフードデリバリー市場占有率でUberEatsが市場第2の15%を占めており、先行サービスのPostmatesやDoorDashを抜いていることから、未だ収益化余地のあるフードデリバリーに事業リソースを集中する戦略が予想されます。

このような投資家や市場から黒字化・上場を迫られる傾向は2015年後半から始まっています。例えばホームクリーナーを派遣するサービスで6000万ドル以上の資金調達を果たしたHomejoyが従業員への契約形態や低賃金支払いの問題により倒産したのは記憶に新しいところです。

同社の一件から、シリコンバレーの投資家は一斉にクラウドソーシング企業に対して安全経営ができるよう、早急な黒字化を求めるようになりました。実際、前述のInstacartは 2015年に配送料の値上げを行い、従業員に対しての賃上げと黒字化へ向けた措置 を行いました。クラウドを事業モデルの根幹に添えている大手スタートアップが、外部から厳しい目にさらされている点もUberRushサービス閉鎖の一因といえるでしょう。

自動配達を制する者が、ラストマイルを制する

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Image by  Elvert Barnes

では、ShypやUberRushがいなくなったラストマイル市場の今後はどうなるのでしょうか。中長期的に見ると、自動配達による活況が考えられます。

すでにPostmatesはロボット企業「 Starship Technologies 」と提携して ワシントンD.C.でロボットを使ったローカル配達の実証実験 を行っています。先日ソフトバンクが投資したDoorDashもStarship Technologiesと実証実験を行っていると同時に、大手レストラン検索サービスYelp傘下のロボット企業、Marbleを買収して自動配達の動きを加速させています。

おそらく1、2年ほどはローカル配達市場におけるスタートアップの登場は沈静化するでしょう。しかしラストマイルに代表される 米国のパーセル(小包)配達市場規模は96億ドル に及びます。堅調な需要を誇る市場において、自動配達ロボットが本格的に投入されるタイミングで市場が再燃することも予想されます。

筆者も何度か利用していたShypが倒産した件は非常に残念に思いますが、クラウドソーシング型のビジネスモデルには限界があることを暗示しているのかもしれません。視点を変えれば、自動運転・ロボットによる自動配達の需要が高まり、急速に市場再編・変革が起きる「ロボット配達元年」が近づいている兆しであるとも考えられます。

日本ではコンビニで配達物受取・発送ができる物流インフラが整っていることから、配達代行が大きなトレンドになってはいません。一方、UberEatsが日本上陸をして順調に成長をしている点を見ると、サービス領域によっては配達代行に対しての消費者需要は確実に眠っていると思われます。こうした点を踏まえて、5〜10年先の自動配達の未来を想像しながら事業を考えると、新たな業態に生まれ変わった配達代行市場が見えてくるかもしれません。

Fedexキラーが突如閉鎖ーー米ラストマイル物流市場に急展開、6000万ドルを集めた「Shyp」や「UberRush」が撤退した3つの理由(前編)

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日本時間3月28日の深夜2時、大手配達代行サービス「Shyp」からサービス閉鎖の告知メールが突然送付されました。以前ユーザーであった筆者の元にも届きました。 「 Shyp 」は、米大手Eコマースプラットフォーム「 eBay 」の販売利用者に向けて、梱包から配達までの代行を行う物流サービスを提供(個人で荷物の配達代行をお願いしたいユーザーも利用可)。2013年にサンフランシスコで創業した同社は、シリ…

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日本時間3月28日の深夜2時、大手配達代行サービス「Shyp」からサービス閉鎖の告知メールが突然送付されました。以前ユーザーであった筆者の元にも届きました。

Shyp 」は、米大手Eコマースプラットフォーム「 eBay 」の販売利用者に向けて、梱包から配達までの代行を行う物流サービスを提供(個人で荷物の配達代行をお願いしたいユーザーも利用可)。2013年にサンフランシスコで創業した同社は、シリーズBの段階まで成長した上で累計約6,200万ドルの資金調達を集めた大型スタートアップです。

アプリを使って配送したい商品の基本情報を入力すると、20分以内にクラウドネットワークで集めた配送代行者が受け取りに来ます。商品はShypの自社工場へ送られ、最適なサイズのダンボールで梱包され、最安値の運輸手段で配達されます。配達する際に必要な梱包ボックスの手配から、郵便局や運輸業者のピックアップ拠点まで持ち運ぶ手間までを解決するサービスとして登場しました。

2015年には5,000万ドルの資金調達を行っています。当時は、 前年比で物流量が5倍、月間顧客成長率は20% と好調な成績を収めていました。2016年には 「eBay」と業務提携 を行い、通常5ドルの代行料がかかるところ、同社プラットフォーム販売者は無料で配達を行うことができるようになりました。

Shypが勢いに乗っていた2015年にローンチされたサービスが、配車サービスUberの展開する「 UberRush 」です。小規模店舗が顧客に商品を短時間で届けられるローカル配達サービスとして展開を始め、5分以内に配達代行者が受け取りに来る競合サービスとして登場しました。配達料金は5〜7ドル程度で、料金設定の面から十分にShypと戦えるサービスでした。

UberRushは料理から洋服まで、どんな商品でも運ぶ一方、ShypはEコマース販売者の配達代行をメインに扱うサービスとして市場ポジションを取っている点が大きな違いです。

両サービスは、サービス領域は違えども短距離配達「ラストマイル」の課題を解決していました。しかしUberRushも3月下旬に入って急にサービス閉鎖の告知 を行っています。かつては日本のヤマト運輸に当たる、米大手運輸業者「Fedexキラー」の異名を持った物流サービスの相次ぐ閉鎖。本記事では、なぜ大手配達代行サービスが失敗したのか、今後どのような市場再編が起こるのかを紐解いていきます。

提携先のミス。ITリテラシーの低さ

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Image by :  davidhc

まずはShypの失敗事例から取り上げていきましょう。同社が失敗した原因の1つと考えられるのはeBayとの提携に頼ったことが挙げられます。

eBayは、 2017年第4四半期に1.7億アクティブユーザーを獲得していますが、2015年第1四半期の1.5億ユーザーからは微増傾向と、成長は鈍っています総物流額は2017年第4四半期に244億ドルでしたが、同じく2015年第1四半期の200億ドル と比較して成長が鈍化います。

プラットフォームとして頭打ち感の否めないeBayの最も大きな欠点は、ユーザー年齢層です。 2015年のデータ によると、35〜64歳までのユーザー層が61%を占めており、65歳以上のユーザーを含めると約70%が35歳以上のユーザー層になります。

ここで考えられる疑問点は、比較的高齢なユーザーがShypの情報を見つけてサービスを利用できるのかということです。筆者がeBayを使って不用品を売りに出した際、Shypへのサービス導線はありませんでした。つまり、ユーザー自らがShypというサービスを探し出して利用するしか顧客を囲い込む手段がないのです。

高齢ユーザーが多数いることからeBayのユーザーコミュニティーの特徴として、スマートフォンに慣れておらず、スタートアップの情報に疎いユーザー像が想像されます。つまり利用ユーザーに大きなギャップがあったこと成長戦略の限界に繋がったのではないでしょうか。データ開示はされていませんが、おそらくeBay利用者でShypを積極活用していた販売者は少なかったでしょう。

このようにスタートアップや投資家にとって、大手企業との提携はビジネスを急成長させる好機に見えますが、ある程度の社内リソースを割く必要も出てくるため、慎重に判断することが求められます。特に投資家はリターンを求めるために提携を急かすこともあるかもしれませんが、提携先の成長速度が着実なものであるかを含め、あらゆる側面から熟考する必要があるでしょう。

配達代行にお金を掛けたくない顧客心理

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Image by  shopblocks

eBayからの顧客獲得導線に期待が持てないと想定した場合、次にターゲット顧客となるのは個人で配達代行を頼む人たちです。Shypの場合、個人で配達代行を頼む顧客層は2種類に分かれます。

  1. eBay以外のフリマサービスの販売者
  2. 友人や家族に郵送で荷物を送る一般ユーザー

2)に該当する個人間配達は、Shypのターゲットでない点から考えると、一般利用者はあまりいないと思われます。すると前者に当たる、米国版メルカリを利用するようなフリマサービスの販売者側が想定顧客に成り得るでしょう。しかし、フリマ販売者のような顧客の心理的ハードルは非常に高いと考えます。

筆者は米国でメルカリを何度か試した経験があり、確かに梱包から郵便局へ届けるプロセスは大きなペインポイントだと感じました。しかし、日本のメルカリユーザーが100円単位で必死に値切る習慣は米国でも同じで、わざわざ売上から10ドル前後の代行コストを支払ってまでShypのサービスを利用することに高い心理的障壁を感じます。必要以上の損失感を感じるわけです。

ここで配達代行サービスを利用する顧客心理を比較するため、筆者が利用していた日用・食料品のお買い物代行サービスを展開する「 Instacart 」の事例を挙げましょう。同サービスは、10ドル前後の料金で、近所のスーパーから食料品を指定の時間に届けてくれる配達代行サービス。2014年に創業され、累計資金調達額は8.7億ドルに及ぶ超大型スタートアップです。

私の場合、アメリカでは車を持っていなかったため近くのスーパーへ行くこと自体が苦痛でした(私の家は丘の上だったので、なおさら大荷物を抱えての買い物は苦労しました)。500mlの飲料水ペットボトル36本セットを毎月まとめ買いしていたので、とても一人では持ちきれません。そういった状況で荷物を届けてくれるInstacartに8〜9ドルの対価を支払うことに損失感は感じませんでした。毎月必ず1度はやってくる苦痛の伴う買い物を代行しているサービスに対して、高い提供価値を感じていました。

このように、両サービスともほぼ同じ料金設定で短距離配達サービスに特化していながらも、扱う分野が違うだけで大きく顧客のサービス利用心理が変わってきます。顧客視点で考えると明らかにサービス価値及び費用対効果が高いのはInstacartであり、Shypではないと強く感じます。

Shypのビジネスモデルにおける欠点は、サービス利用を躊躇させる顧客心理にあると説明してきました。つまり顧客の抱える強い課題感を突けていなかったともいえます。(後半へ続く)