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【IPOスタートアップの資本政策解剖】Sun*(サンアスタリスク)編〜第4回「Smartround Academia」から

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第4回 Smartround Academia(2020年11月11日開催)で、資本政策を解剖したのは Sun*(サンアスタリスク、東証:4053)だ。現在の法人は2013年3月に設立され、2020年7月31日に東証マザーズに上場。黒い革ジャンに身を包んだ上場企業 CEO の登場は印象的だった。今回、資本政策を披露してくれたのは、Sun* CEOの小林泰平氏だ。 小林氏は早稲田実業高校を中退後、一…

第4回 Smartround Academia(2020年11月11日開催)で、資本政策を解剖したのは Sun*(サンアスタリスク、東証:4053)だ。現在の法人は2013年3月に設立され、2020年7月31日に東証マザーズに上場。黒い革ジャンに身を包んだ上場企業 CEO の登場は印象的だった。今回、資本政策を披露してくれたのは、Sun* CEOの小林泰平氏だ。

小林氏は早稲田実業高校を中退後、一時はホームレス生活をしながらバンド活動に熱を注ぐ。ライブハウス勤務を経て、ソフトウェア開発会社で IT エンジニアとして就職。その後、サンアスタリスクの前身にあたるフランジア・ジャパンを創業した平井誠人氏(Sun* 現取締役)に誘われ、Framgia Vietnam の COO への就任と同時に渡越。その後、Sun*へと社名を改め、現在、小林氏は同社の CEO を務める。

Sun*は、「誰もが価値創造に夢中になれる世界」をビジョンとして掲げ、新規事業やスタートアップの事業創造からサービスの成長までを包括的に支援するサービスを提供。デザインチームと開発チームの双方を抱え、SMB(中小企業)からエンタープライズ(大企業)まで、多岐に渡るクライアントとプロダクト開発を行う。

今回の聞き手も、スマートラウンド COO 冨田阿里氏が務めた。

(文:馬本寛子、編集:池田将)

Image credit: Sun Asterisk

〈これまでのSun*関連記事(一部)〉

〈上場前(2013年3月〜2020年7月)〉

(クリックして拡大) Image credit: Sun Asterisk

Sun*の創業は2013年3月だが、原点はそれより以前、2つの法人から歴史が始まっている。現在取締役を務める平井誠人氏が2012年に創業した Framgia(フランジア)と、同様に現在、取締役を務める服部裕輔氏が2013年3月に創業したアイピースだ。

アイピースは創業時から Framgia Vietnam と協業しており、毎度契約を結ぶ形態で事業を進めているという状況だった。その後2社が合併することとなり、アイピースを母体とする形でフランジア・ジャパンが誕生した。合併の際にシンガポールにホールディングスカンパニーを設立し、Framgia Vietnam を完全子会社に。その他、フィリピンやバングラデシュなどにも子会社を設立した。

フランジア・ジャパンは後にフランジアと社名を改め、2017年頃から日本での上場を目指しその準備に着手。2017年12月には、小林氏が CEO に就任した。上場半年前の2019年末から2020年2月末にかけて、Sun*として初となる外部資金調達を行う。このラウンドでは、農林中央金庫、ソニーネットワークコミュニケーションズ、Sony Innovation Fund by IGV(Innovation Growth Ventures)、加賀電子、リバネスキャピタル、15th Rock Venturesなどが参画し、その他デットファイナンスも含めて総額20億円を調達した

(クリックして拡大)
Image credit: Sun Asterisk

以下、資本政策に関して視聴者からの質問の回答なども含めて要約する。(順不同)

  • 独資のみで IPO するという選択肢もあったものの、IPO 前後は経営陣が事業にフルコミットして向き合う余裕がないことを懸念した。そのため、IPO 後の成長ドライバを仕込む目的で、事業会社を中心に資本業務提携を進めた
  • 外部の方からの紹介で農林中央金庫を紹介してもらった。規模も大きく、長期的な目線で柔軟に考えていただけると思い、彼らの第1号出資案件としての資金調達に繋がった。互いに初めての調達だったこともあり着金までに半年を要したが、その間に事業や法務などをしっかりチェックしてもらったため、このタイミングで IPO の準備はほぼ整った。
  • ソニーからは、ソニーネットワークコミュニケーションズとS ony Innovation Fund by IGV(Innovation Growth Ventures)の双方から調達している。ファンドのみの投資で事業シナジーが生まれるか懸念したため、事業シナジーが最もありそうなソニーネットワークコミュニケーションズからも投資をもらえるよう交渉し、双方から投資を受けた。

【信託型 SO について】

  • 2018年12月に第1回 SO 発行を行う。同社の税理士を務める糸井俊博氏を信託型 SO の受託者として、株式の9%相当分を凍結した。当時の売上高や利益などから算出した価格でSOを発行した。当時算出した株価は80円。
  • 小林氏は、Sun*がIPOする条件のひとつとして、全社員が株主になることを挙げていた。給与や賞与は、最大限に配慮しても評価者のバイアスがかかってしまうものであるが、全社員の仕事の成果による外部評価が反映される「株価」は、社員の会社に対する価値貢献への対価がしっかりと支払われる仕組みとの考えによるものだ。
  • 上場後に入社する社員に対しても株を配布したいと考えていたため、信託型 SOを選ぶことにした。
  • 信託型 SO の導入を検討しているのであれば、しっかりとした制度設計が必要。しっかりと制度設計をしなければ、社員がSOを受け取れなかったり、税金の問題が発生したりするリスクがある。信託型 SO については、プルータスコンサルティングに依頼し設計した。

【その他】

  • 銀行からの借入は行っていたが、2017年12月まで外部資本を入れずに経営していたため、企業体制や形態などを柔軟に変更できた。

〈上場 2020年7月〉

日本取引所グループ公式チャンネル」から。
Image credit: JPX

革ジャンで登場する小林氏の姿に重ね、取締役の株主保有比率の多さ(信託型 SO 割当分を除き、経営陣だけで75%以上を保有)も極めて印象的だった、Sun*の上場。

小林氏は、上場日の初値が出る瞬間を主幹事を務めた大和証券で経営陣らと見た際の裏話も話してくれた。コロナ禍で東証で鐘を鳴らすセレモニーは挙行されなかったが、初値が発表される9時の瞬間を見届けるイベントに遅刻してしまい「前代未聞だ」と言われたとのこと。どんな時も自然体でいる小林氏の一面が垣間見えた。

東南アジアを軸に事業拡大を進めていた同社が、「日本での上場」を目指した背景には、現在の日本に対しての強い想いがあったと、小林氏は話した。

ベトナムと日本を行き来する生活を送る中、ベトナムのデジタル化のスピード感に対して、日本の変化の遅さを感じて不安を抱くようになった。(中略)

そうした課題感を持って、2017年頃から「日本の社会課題に対して目を背けながら、ベトナムで楽しく仕事を続けて良いのか?」という疑問を経営陣で議論し続けた結果、Sun*の事業としてエンタープライズまで巻き込んでいくことで、日本の IT 人材不足や DX 推進を進める一助を担うことを目指す方向に転換することにした。

〈上場後 2020年7月〜〉

左から:取締役 平井誠人氏、取締役 梅田琢也氏、
代表取締役 CEO 小林泰平氏、取締役 服部裕輔氏
Image credit: Sun Asterisk

Sun*が上場時に公開した有価証券届出書によると、同社の主な株主は平井誠人氏(取締役、34.37%)を筆頭に、服部裕輔氏(取締役、19.91%)、藤本一成氏(執行役員、13.05%)、糸井俊博氏(税理士・信託型 SO の受託者、8.23%)、小林泰平氏(代表取締役、7.70%)のほか、農林中金(5.55%)、ソニーネットワークコミュニケーションズ(0.55%)、Sony Innovation Fund by IGV(Innovation Growth Ventures、1.64%)、加賀電子(東証:8154、0.55%)、リバネスキャピタル(0.16%)、15th Rock Ventures(0.16%)などである。

取締役を中心とした経営陣の持分比率が8割以上を占めている。また、信託型 SO の受託者とされている、同社の税理士を務める糸井氏が保有する8.23%の株式については、新株予約権信託に当てられている。現時点で、この SO は、2%ほどしか使用されていないそうだ。

役員や現在と未来の社員が保有する株式を合わせると約9割となる。上場を目指すまで、自己資金をもとにした安定感のある収益モデルを築き上げ、成長を続けてきた Sun*の色が見える資本構成となっている。

〈その他〉

Smartround Academia から。代表取締役 CEO 小林泰平氏と(左)、インタビュアーを務めたスマートラウンド COO 冨田阿里氏(右)。
Image credit: Smartround

視聴者から寄せられた質問の回答で、上記に記入できなかったものを以下にまとめる。

Q:受託開発とみなされるとPER(株価収益率)などが低くなると思われがちだが、投資家や主幹事にどう説明したのか。

受託開発と言えど、さまざまな形態がある。請負契約、準委任契約、派遣契約など。Sun*では、基本的に準委任契約を行っており、毎月の稼働工数に応じた対価をいただいている。3ヶ月以上継続する準委任契約を「ストック型契約」と定義しているが、それらの契約更新は半年〜1年の契約がほとんど。

長期契約を結び、きちんと実績を積んでいくことで ARPU も上がるモデルなので、基本的には納得してもらえた。というより、厚労省や機関投資家などからも「これはなんと表せば良いのだろうか?」という反応だった。

スタートアップや新規事業においては、プロダクトに完成もなければ、要件も決まっていないので、見積も難しい。そうした点を考慮すれば、互いに準委任契約の方が良いと思う。

Q:創業前のスタートアップの支援とは、具体的にどんなことをしているのか。

創業する前から、エンジニアチーム・デザインチームを無償で提供。プロトタイプの作成まで無償提供し、テストマーケティングを経て、市場に出せるタイミングで、Sun* から、20%の資本を入れて一緒に起業している。基本的には、起業家が Sun* のオフィスに来て常駐している(採択時の起業家のスクリーニングは非常に厳しく行っている)、

現在4社ほど支援しており、うち2社は資金調達を終えている(関連記事1関連記事2関連記事3)。調達ラウンドも一緒に行っているが、実感としては、開発チームがいて、プロダクトもあり、トラクションも出ているため、投資家からの評価も良い。

Sun*が持っている20%も、事業シナジーのある会社と提携できるチャンスなどがあれば、バッファとして使用しても問題ない。これらのプロジェクトについては、現在 Sun*としてもチャレンジしている状況。

Q:会社の体制が変わっていく中で、社内のメンバーをどのようにモチベートしていたのか?

上場経験者も社員にいたので、上場に対してネガティブな印象を持っている方も実際にいた。そのため、社員と現在の状況や IPO する理由などについて、1対1で話す時間をこまめに設けた。

IPO しても、会社の概念は変わらない。変わるとしたら、中身の「人」でしかない。あえて言うと、ステークホルダーが増えることで、外圧がかかり、経営陣が変わる可能性があることくらいだと思っていると伝えていた。

CEO の人間性が変わらなければ、会社として変わることは何もない。だから、メディア露出も含め、外部露出などもいつもと同じように、自然体で出るようにしている。


イベントは、小林氏から後進へのアドバイスで締めくくられた。

新しいことを始めるのは、人間の幸せに直結することだと思うが、一般的には資金や仲間を集められないなどの問題で諦めてしまうことが多い。

Sun*は情熱を持った人が「諦めなくてもいいインフラ」をつくることを目指している。ビジネスや事業成長そのものよりも、ビジョンを重視し、芯や軸を持って進み続けていくことを応援できるような存在になりたい。

信じていることやその本質を大事にしてほしい。ダメならダメで失敗した方がいいと思う。失敗して、再チャレンジしている人もたくさんいるので、恐れることなくガンガンチャレンジしてもらえればと思う。

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【IPOスタートアップの資本政策解剖】グッドパッチ編〜第3回「Smartround Academia」から

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第3回 Smartround Academia(8月25日開催)で、資本政策を解剖したのはグッドパッチ (東証:7351)だ。2011年9月に創業し、2020年6月30日に東証マザーズに上場。コロナ禍にありながら明るいニュースをもたらした上場としても印象的だった。今回、資本政策を披露してくれたのは、グッドパッチCEOの土屋尚史氏だ。資本政策と共に、グッドパッチが上場するまでの経営について語ってくれ…

第3回 Smartround Academia(8月25日開催)で、資本政策を解剖したのはグッドパッチ (東証:7351)だ。2011年9月に創業し、2020年6月30日に東証マザーズに上場。コロナ禍にありながら明るいニュースをもたらした上場としても印象的だった。今回、資本政策を披露してくれたのは、グッドパッチCEOの土屋尚史氏だ。資本政策と共に、グッドパッチが上場するまでの経営について語ってくれた。

土屋氏は、Webディレクターを経てサンフランシスコに渡り、スタートアップの海外進出支援などを経験した後、2011年にグッドパッチを創業。同社は現在、東京・ベルリン・ミュンヘンに拠点を持つ。「デザインの力でビジネスを前進させるグローバルデザインカンパニー」として、デザインパートナー事業とデザインプラットフォーム事業の2軸で事業展開をしている。

今回の聞き手も、スマートラウンド COO 冨田阿里氏が務めた。

(文:馬本寛子、編集:池田将)

Image credit: Masaru Ikeda

<これまでのグッドパッチ 関連記事(一部)>

<参考文献>

<上場前(2011年9月~2020年6月)>

グッドパッチは、2020年6月に上場を果たした。創業時、土屋氏は上場することを考えていなかったと話す。祖母からの遺産の500万円を資本金として起業し、土屋氏のみでの経営だった。そこから、最初の資金調達を行ったのは、創業から2年後の2013年12月。DG インキュベーションから1億円の資金調達だった。グッドパッチ にとって初めての外部資金調達であったが、同社ではこれをシリーズ A ラウンドとしている。

2016年2月のシリーズ B ラウンドでは DG インキュベーション、Salesforce Ventures、SMBC ベンチャーキャピタル、SBI インベストメント、FiNC から総額4億円を調達した。続けて、2017年4月に実施されたシリーズ C ラウンドでも、SBI インベストメントと三井住友海上キャピタルから総額4億円を調達している。

【資本政策について】

  • 創業時は、上場することなどを一切考えていなかった。一般的な中小企業の資本構成を参考に、1株5万円の100株からスタートした。
  • シリーズ A ラウンドの裏話。元々、会社の計画として資金調達をする予定はなかったが、創業から2年目の時点で1億円ほどの売上が出て、利益が2,000万円ほどに。当時は、プライベートカンパニーだったため、この状態で利益が2,000万円程であれば、税金が払えない可能性があった。そのため、社員にボーナスを多めに出すなど対策を行ったが、ボーナスに対しても税金がかかったため、キャッシュアウトしかける可能性があった。当時は、規模の大きいクライアント1社に売上を依存している状態で、社員は20名、月のバーンレートは1,000万円ほどの状態だった。このことを須田氏(現・監査役)に相談したところ資金調達を勧められたため、シリーズ A ラウンドの資金調達に動いた。
  • 第1回 SO(ストックオプション)発行では、SO についての知識が十分でなかったことから、誤った渡し方をしてしまったかもしれない。最大10%まで配布して良いと言われていたため、計8%ほど渡した。しかし、この頃から上場まで残っていた社員は1名だった。
  • バリュエーションが高かったこともあり、シリーズ B ラウンドでは事業会社を中心に投資を募った。
  • シリーズ C ラウンドについて。当時フィンテックサービスのデザインが重要視されつつあったので、フィンテックに関連するファンドから資金調達を実施。
  • 第4回 SO 発行では、当時(2018年)在籍していた社員全員に SO を発行した。マネージャーなどには少々厚めに渡した。評価に連動しているのではなく、入社順とグレードに合わせて SO を渡した。
  • 2019年の株式移動では、土屋氏が保有する株式10万株の5%となる5,000株を役員・監査役に生株で譲渡した。彼らのコミットメントを強めるという意味合いと、彼らがいたから会社を立て直せたことに対する感謝の意も含めたものだ。
  • 上場するタイミングで、従業員持株会を作った。

【組織と関連する資本政策の動きについて】

  • シリーズ B ラウンドのタイミングから、2年後の上場を目指し、準備を始める。ここでの組織づくりが、会社の経営に大きな影響を与えることになった。シリーズ B ラウンドの直前で CFO を採用し、取締役を4人に増やした。また、執行役員を1人追加し、マネージャーも6人置いた。
  • シリーズ B ラウンドでは事業計画において見積が甘く、1年後の状態が危ういことが問題視され、その責任を明確にするため CFO が退任した。その退任と組織の崩壊に伴い、当時の管理部門にいた社員が全員辞めた。上場を目指すならば、上場経験のある CFO が必要だと思う。
  • 組織の崩壊に伴い、SO 消却が数回にわたって行われた。一方、組織が大崩壊していることを理解しながらも入社し、立て直しに入ってくれた役員や社員に対して新たに SO を発行している(第2回、第3回 SO 発行)

<上場(2020年6月)>

Image credit: Goodpatch

デザインカンパニーとして、初の上場を果たしたグッドパッチ。コロナ禍での上場となり、スタートアップ界に明るいニュースをもたらしたが、一時は上場延期の可能性も告げられていたそうだ。

創業時、選択肢に全くなかった「上場」を土屋氏が目指したのは、渋谷にオフィスを移転し、会社のビジョンやミッションを策定した2014年だったと話す。

30名ほどの社員数だったものの、メンバーの熱量の高さや優秀さを感じていた。ビジョンやミッションに向き合う中で、グッドパッチは絶対に無くしてはならない会社だと思い、売却という選択肢は無くし、上場のみを目指すようになった。(中略)

本来、デザインはものすごく価値があるものなのに、それが社会に求められていなかった。デザインの力を証明するというミッションは、グッドパッチが諦めたら、他に出てくる会社はないと思った。(土屋氏)

<上場後(2020年6月~)>

グッドパッチ2020年8月通期決算説明資料(クリックして拡大)
Image credit: Goodpatch

グッドパッチが2020年10月に公開した通期決算説明資料(上)によると、32.7%が一般株主となっている。しかし、上場の際には、VC の割合が多いとする意見もあったとされる。

今回の Smartround Academia で共同モデレータを務めた金坂直哉氏(マネーフォワードシンカ 代表取締役社長)は、事業内容や将来性についての機関投資家からの反応がどのようなものだったかと尋ねた。

デザイン会社の上場は初めてであるので、周囲には『わからない』と言われつつも、デザインの重要性は理解してもらえたと感じている。上場時に、かなり多くの機関投資家に入ってもらえたことからも、DX が注目される現在において、デザインの重要性が増していることも理解してもらえたのではないか。(土屋氏)

<その他>

視聴者から組織崩壊時の質問が多数尋ねられた。それらについての回答は以下にまとめる。

Q:組織崩壊時でも事業推進を続けた理由とは?

崩壊中でも売り上げは30%ずつ伸びていたこともあり、組織崩壊に伴い入れ替わるような形で入社した社員が事業推進を積極的に進めていた。事業推進を進められたのは、グッドパッチのブランドバリューが落ちなかったからだと思う。組織崩壊はしても、クオリティが守られていたので、なんとか持ち堪えた。

会社に対して不満を持っていた当時の社員も、仕事と自分の意思を切り離し、仕事に対して熱心に取り組んでくれた。そのようなプロフェッショナリティのある社員が働いていたので、クライアントに対しては、しっかりと価値を提供できていたのだと思う。

Q:組織づくりで一番重要なポイントは何か?

重要なことはありすぎて、一括りにまとめられない。会社として目指す方向性や価値観の軸など、社内の共通言語を明確にすることが非常に重要。(中略)

また、会社は役員とマネージャーのコミットでほぼ決まると思う。だからこそ、これらのポジションにコミットが薄い人を置いてはならない。会社を成長させるためには、バリューやミッションを口すっぱく言い続け、役割を与えられている人は、それらをやり切らねばならない。それほど強くコミットできる人が中心にいなければ組織は崩れると思う。


グッドパッチは今年6月末の上場後 Goodpatch Design Fund を開設した(出資プロジェクトの呼称であり、本社事業会計からの出資。子会社設立やファンドの組成を伴うものではない)。これまでに「お金の健康診断」「オカネコ」運営 400F(フォーハンドレッドエフ)、レシート買取アプリ「ONE」を提供する WED に出資している

グッドパッチはまた、マネーフォワードベンチャーパートナーズ(MFVP)にも出資している。土屋氏は、スタートアップエコシステムの醸成を活性化すべく、今後、スタートアップへの出資を積極化していくとしている。

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【IPOスタートアップの資本政策解剖】マネーフォワード編〜第2回「Smartround Academia」から

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前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。 金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴー…


前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。

金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックスの東京オフィスとサンフランシスコを経て、2014年にマネーフォワードに参画。同社が個人向けの家計簿アプリから、事業者向けの会計サービスへと進化を始めた直後のことだ。昨年までマネーフォワードの CFO を務めていた金坂氏だが、IPO 経験を生かし昨年設立された成長企業向けのフィナンシャルアドバイザリーを提供するマネーフォワードシンカの代表に就任。7月1日付けで、金坂氏が再びマネーフォワードの CFO に復帰就任したことが発表されている

なお、マネーフォワードシンカは新型コロナウイルス感染拡大を受けて、今年3月に VC とスタートアップのオンライン面談マッチングを支援する活動を実施したほか(すでに終了)、5月には投資家向けに保有する未上場スタートアップ株式の売却先を紹介する株式売却アドバイザリーサービスを開始している。

今回の聞き手も、スマートラウンド COO 冨田阿里氏が務めた。

<これまでのマネーフォワード関連記事(一部)>

<上場前(2012年5月〜2017年9月)>

マネーフォワードは2017年9月に上場を果たしたが、上場前段階で44億円、上場後も市場以外で143億円を調達するなど、事業成長に成長資金を常に調達し続けている。最初の資金調達となったのは、創業から7ヶ月後の2012年12月。代表取締役の辻庸介氏の古巣マネックス証券のベンチャー投資部門からだった(当時のマネックス・ビジネス・インキュベーション、現在のマネックスベンチャーズ)。マネーフォワードにとって初めての外部資金調達(2,000万円)だったが、同社ではこれをシリーズ A ラウンドと位置付けている。

シリーズ B〜C ラウンド位までは VC 調達が多いが、シリーズ C〜D ラウンドあたりからは地方銀行や事業会社からの調達が増えている。マネーフォワードは、B 向けの販売チャネルとして地方銀行や会計事務所などとの協業を行っており、事業ステージの進捗とともにベンチャー資金よりは事業パートナーからの資金注入が増えていることがわかる。ちなみに金坂氏がマネーフォワードに参画したのも、同社が シリーズ C を始める2014年のことである。

スタートアップ経営者にとって資金調達のリードを掴むことは重要ミッションの一つであり、この日の視聴者からは金坂氏に対し、自社に合った VC や投資家にたどり着く方法、投資家とのリレーションに対して質問が多くなされた。質問の順序は前後するが、金坂氏の説明を要約すると概ね次の通りだ。

  • アーリーステージにおいて特に重要なのは資本政策。後戻りできず、投資家とのやりとりで飲んだ条件や契約が、結果的に上場で足を引っ張ることが起こりうるのがエクイティファイナンスの怖さだ。バリューエションも、ダイリューションも、上げ過ぎても下げ過ぎても良くない。多面的な角度から考えることでリスクを下げるべきだと思う。
  • 投資家との契約にあたっては自社にあったアドバイザーと相談し、二社以上の投資家と話すことで、投資家との契約における交渉力を維持すべきだと思う。
  • エクイティファイナンスにかけた時間は、2014年の時で半年(シリーズ C)、2015年の時で4ヶ月(シリーズ D1)、その次は数ヶ月くらい(シリーズ D2)。回数を経るにつれ、普段からリレーションが取れているため、短くできるようになっていった。
  • 投資家とは常にコミュニケーションし、「次にファイナンスするときは声をかけてください」と言ってもらえる関係性を確立しておく。あるラウンドのファイナンスが終わった瞬間から、投資家には次のラウンドに参加してもらう可能性があるという位置づけ。
  • 地方銀行から資金を調達できた背景には、ビジネス面でのアライアンスが進んでいることが大きく影響している。アプリを作るとか、クラウドサービスを進めるとか、そういった協業関係が無いと、地方銀行からの資金調達は難しいのではないか。
  • バリュエーションが100億円を超えてくると VC からの調達は難しくなってくることも事実。投資家に対しては、バリュエーションや投資リターン以外のメリットを見せる必要が出てくる。レイターステージで事業パートナーからの調達が増えるのには、そういう理由もあるだろう。
  • ストックオプションは、基本的に年に1回の形で運用していた。全株式の中で、上場時の何%を割り当てるかは投資家らとの契約の中で決めていた。例えば、ストックオプションで付与できる割合を全株式の15〜20%程度に設定しておき、創業から上場までを4年と見るなら、1年あたり4〜5%程度は付与できる、というようなイメージ。誰にどのように付与するかについては、社員が100人程度の規模までは評価制度が確立されていなかったので、CEO や CFO が相談して決めていた。
  • どの投資家から、バリュエーションをいくらにして、どれだけ調達するかについては、まずは自分たちのビジョンを明確にし、それに必要な資金を算出する。そして、どの程度のバーンレートをカバーして、その金額で何年持たせられるかを計算する。マネーフォワードの場合は、比較的厚めにファイナンスしてきた。ストレッチしたバリュエーションでファイナンスができたのは幸運だった。そして、投資家には、事業上の関係やフィーリングも含め、一緒の船に乗ってやっていける人や企業を相手に選ぶべきだ。
  • 投資家に伝えていくストーリー(業績見通しの計画)については、事業のステージによって違ってくる。2014年くらいまでは(シリーズ C あたり)売上はまだ1億円に届かない位の業績だったので、今後どういうプロダクトをローンチしていくのかを話していた。2015年(売上4億4,000万円)、2016年(売上15億4,000万円)くらいになると、トラックレコードで将来成長を見せられた。売上がまだ無いときは SAM(実際に提供可能な市場規模)や TAM(獲得可能な最大市場規模)で、売上が出てきたら実績の延長線で話せるようになる。
  • 資金調達は CEO 中心でも CFO 中心でもできるが、どんな体制で臨むかはその会社次第。資金調達に表面的なスキルよりも、むしろ、投資家との信頼関係を築いたり、最後までやり切れる人だと見てもらえたりすることが大事。投資家も経営者を2〜3年見ていればそのあたりが分かってくるので、安心して投資ができるようになる。投資家に対しては、真摯かつ愚直に事業に取り組んでいる姿を見せ続けるというのが王道。ファイナンスが必要になってから、ある日投資家に出会い、「いきなり投資を決めてください」と申し出る選択肢は勧めない。

<上場(2017年9月)>

スタートアップ経営者にとって、自社の業績が上場基準を満たしたとして、いつ上場するかというのは熟慮すべき課題。最近では、ファンドの大型化によって、資金需要だけで考えれば VC からの調達でも充足することができるだろう。しかし、「金は天下の回りもの」であるゆえ、経済のある部分がスタックすると資金調達を含め経済全体がスタックする危険を指摘する CFO は多い。

マネーフォワードでは、シリーズ E ラウンドを迎えた2016年前後から経営陣の間で上場に向けた話が出始め、「上場を最速で目指そう」という意見の一致から2017年夏にターゲットを定めた。マネーフォワードの初期投資家の代表者でもあり、辻氏の心の師でもある松本大氏が言う「上場はタイミングが難しいがゆえ、できるときにするのがいい」という以前からの進言も参考にしたそう。

タイミングは重要であるが、タイミングは簡単にずらせるものでもない。したがって、シンプルに考えた結果、最速を目指した。すべての会社に当てはまらないかもしれないが、マネーフォワードの場合、IPO できるときに IPO して次の成長に備えるということで、そういうタイミングになった。(中略)

海外ではかなり大きくなるまでは IPO しないという傾向がある。これは IPO しないというよりも、大きくならないと IPO できないからという感じ。日本の場合はマザーズという新興市場があるので、IPO できるタイミングで IPO というのもありだし、大きくしてから IPO するというどちらも選択肢としてありだと思う。(金坂氏)

<上場後(2017年9月〜)>

マネーフォワードが2020年4月に公開した第1四半期の決算説明会資料によると、同社の株主のうち機関投資家比率は過半数を超え、海外機関投資家が36%、国内機関投資家が16%を占める。昨年、日経が発表した売上高100億円以下の上場企業「NEXT1000」を対象にした調査では、2018年度に海外投資家を増やした会社1位はマネーフォワードだった(89社)。別の日経記事によれば、これら海外からの公募増資は、主に M&A 資金などに充てるためのものだ。

実際のところ、クラビス(2017年11月)、ナレッジラボ(2018年7月)、ワクフリ(2018年8月)、スマートキャンプ(2019年11月)と、マネーフォワードはスタートアップ買収にも積極的だ。マネーフォワードの海外投資家からの資金調達は、日本の SaaS や会計系サービスなどへの強い期待の現れと見ることもできる。また、買収はしていないが、Chatwork(東証:4448)や BASE(東証:4477)といった上場を果たしたスタートアップに対する投資家でもあった。

そういったこともあり、マネーフォワードはこれまで海外投資家への IR 活動を積極的に行ってきた経緯がある。IPO 以降、通算で三度にわたる海外からの資金調達を行っており、1度目は IPO と同じタイミングで、旧臨報方式(アメリカを除くアジアやヨーロッパなどの世界にオファリングをする)により30億円、2度目と3度目は海外公募増資(Global Offering)により、それぞれ66億円(2018年12月)と47億円(2020年1月)を調達している。1度目の調達時に旧臨報方式を選んだのは投資家からの需要が大きかったこためで、英文でのドキュメンテーション作成も必要とされなかった。

金坂氏によれば、M&A する場合と、マイナー出資する場合では、投資先スタートアップの選定基準が全く異なってくる。マネーフォワードの M&A 戦略はプロダクトを増やす M&A とユーザを増やす M&A に大別されるが、これまではプロダクトを増やす方に終始してきたそうで、今後はユーザを増やす M&A 案件も手掛けていきたいという。また、M&A では買収先のスタートアップの経営者をマネーフォワードグループの経営陣に迎えることを前提とするため、会社間や人の間のカルチャーフィットが重要となる。資本提携や出資の場合はこの限りではなく、投資先のスタートアップの経営者が IPO までやり切れるかどうかを見極めるそうだ。

また、上場後は、いかに株主に長く会社を愛してもらうか、もっと言えば、株を持ち続けてもらうかというのはテーマだ。安定株主をどうやって確保するかという視聴者からの問いには、金坂氏は次のように応えた。

安定株主という概念は信じていない。どんな株主にも、売りたい時に売る権利があるからだ。ただし、投資家とはコミュニケーションを密にとって、長期にわたって株式を保有してもらえるよう努力はしている。投資家とは立場が違うので、株式を売り出すタイミングについては交渉はできても無理は言えない。普段からしっかりした IR を心がけ、マネーフォワードの場合は大口の株式売却があっても、株価に影響を与えずに、それをいい投資家にまた買ってもらえている。

<その他>

  • 株主が多いと株主とのコミュニケーションが大変になる、と懸念する経営者もいる。マネーフォワードの場合、ミドルステージ以降は、事業パートナーに株主になってもらったものが多い。そのため、彼らに対しては投資家への説明以前に事業における説明があり、月1回ペースでの KPI 報告会、その後、社長や担当者も交え飲み会という形で運営していた。株主=事業パートナーに毎月会っているので、次のファイナンスの情報も伝えやすい。複数の株主が同時に同じ場所に集まれ、効率的に意見を交換できる点でもよかった。
  • 新型コロナウイルスの影響で資金調達が難しくなるのも事実だろうが、工夫をする方法はある。まず、資金が足りないからと言って新規投資家に連絡を取る前に既存投資家と密にコミュニケーションをとるべきだ。新規投資家と既存投資家では、そのスタートアップに対して持っている情報量が違うし、既存投資家がサポートできないのに新規投資家がサポートするのは難しい。既存投資家の支援を獲得し、それから新規投資家を呼んでくるべき。営業上ムダなコストはとことん削ること。

マネーフォワードシンカのクライアント企業

金坂氏が代表を務めるマネーフォワードシンカでは、スタートアップが IPO などイグジットを目指す上でのフィナンシャルアドバイザリー事業を行っている。昨年9月の創立から、スタッフメンバーは総勢10名体制にまで成長。マネーフォワードの上場を通じて得られた知見や経験をもとに、2021年までにスタートアップ100社の支援を目指しているそうだ。

また本セッション終盤には、先月のエルピクセルの元取締役横領事件にも触れられた。CEO は CFO に全幅の信頼を置くものだが、悲しいことにこういう事案が時々世の中を賑わせてしまう。今回の事件では、銀行口座の通帳コピーが細工されるという単純なトリックで経営陣が騙されてしまったわけだが、マネーフォワードを使えば、口座情報はリアルタイムで金融機関からアグリゲートされるため、その情報をオンラインで経営陣が共有すれば、同じような問題は生じない、とのことだった。

スマートラウンドは、起業家の資本政策づくりを支援する SaaS「smartround(スマートラウンド)」のユーザが去る6月16日で1,000社を超えたと発表した。smartround のローンチは昨年6月22日なので、1日平均約2.8社のペースでユーザが増えたことになる。また先頃、これまでの「資本政策 smartround」「経営管理 smartround」「会社紹介 smartround」「ライブラリ smartround」に加え、新たに「株主総会 smartround」をリリースした。株主総会 smartround の機能の一部は、先月ケップルがローンチした「株主総会クラウド」と競合する可能性がある。

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【IPOスタートアップの資本政策解剖】ビザスク編〜第1回「Smartround Academia」から

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スタートアップのニュースサイトを運営していると、伝えやすいことと伝えにくいことがある。伝えやすいのは、サービスやプロダクトのローンチなど新しい何かが始まる話。これと対照的に伝えにくいのは資本政策だ。資本政策は一度間違えると後戻りできない。 会社を何度かやった経験から言わせてもらえるなら、失敗を経ることで資本政策の過ちを学んで次に生かすことはできるが、時間というものが何より貴重な資源である我々にとっ…

スタートアップのニュースサイトを運営していると、伝えやすいことと伝えにくいことがある。伝えやすいのは、サービスやプロダクトのローンチなど新しい何かが始まる話。これと対照的に伝えにくいのは資本政策だ。資本政策は一度間違えると後戻りできない。

会社を何度かやった経験から言わせてもらえるなら、失敗を経ることで資本政策の過ちを学んで次に生かすことはできるが、時間というものが何より貴重な資源である我々にとっては、なるべくなら失敗に要する時間の浪費は回避したい。

失敗の可能性を抑えて理想的な資本政策を組み立てるには先人の知見に頼るのがベストだが、この資本政策に関する知見というのが、世の中ではなかなか共有されない。投資家と企業経営者が経営上の秘密を公開することを嫌ったり、場合によって潜在的な競合に〝塩を送る〟ことになるのを懸念したり、その理由はさまざまだろう。

昨年7月に正式ローンチした「Smartround(スマートラウンド)」は、起業家の資本政策づくりを支援する SaaS だ。以前ならスプレッドシートを使って行っていた業務を圧倒的に効率化でき、策定したプランは、必要に応じて、会社の経営陣同士はもとより、投資家など外部のステイクホルダーとも共有することができる。

スマートラウンドは今月から、Smartround を活用し、IPO を遂げたスタートアップの創業からの資本政策の軌跡を共有してもらうウェビナーシリーズ「Smartround Academia」を開始した。それぞれのスタートアップの CFO や資本政策に深く関わる IR 担当者らが、自分たちの経験を惜しげもなく披露してくれる機会である。

第1回の Smartround Academia (5月15日開催)では、今年3月に東証マザーズへの上場を果たした、スポットコンサル提供のビザスク(東証:4490)が登壇。2012年3月の創業、2013年10月のサービスローンチを経て上場に至るまでの8年にわたる資本政策の裏側を、コーポレートグループ資本政策室長の宮城勝秀氏が解説した。聞き手は、スマートラウンド COO 冨田阿里氏が務めた。

<これまでのビザスク関連記事>


ビザスクが提供するのは、ビジネス領域に特化したナレッジシェアプラットフォームだ。新規事業の検討や市場調査のニーズがある依頼者が、その分野に知見を持つアドバイザーから講義を受けたり相談をしたりすることができる。依頼者が直接アドバイザーを見つける方法と、ビザスクのスタッフが依頼者に適切なアドバイザーを紹介する方法があり、特に後者が売上の多くを占める。2020年2月現在、アドバイザーの数は10万人を超え、依頼者とアドバイザーのマッチング実績は累積49,000件超。

B 向け SaaS サービスの特徴の一つは、ユーザから料金を前払徴収する点だ。製造業や在庫が必要なスタートアップであれば予め買付費用が必要になるが、ビザスクはマッチングサービスであるため、それも必要ない。また、ビザスクでは、依頼者からの利用料支払には事前購入のチケット制をとっている。前受金が入金されてからアドバイザーには報酬を支払うまでのリードタイムが生まれるため、これが同社のバランスシートにキャッシュポジティブ化に一役買っていると言っていいだろう。

したがって、興味深いことにビザスクは IPO するまでに外部投資家(主に VC )からは2度(シリーズ A、シリーズ A2)しか資金調達を実施していない。キャッシュボジティブであるため運転資金は十分に確保されているため(もっとも、運転資金はベンチャーキャピタルより、信用を獲得できているならデット調達が理想的ではあるが)、VC からの資金は全て事業拡大や加速のために投じることができたと理解できるだろう。

ビザスクの資本政策における細かい数字の推移は上の Smartround の画面(上図)をスクロールして見てもらうとして、ビザスクの創業から IPO に至るまでのタイムラインを要約すると次の通りだ。

ビザスクでは新たに加わったメンバーへのストックオプション(新株予約権)の発行を通算で13回にわたって行っている。数回実施されている株式分割もまた、バリュエーションおよび株価上昇に伴って株式を扱いやすくすること、ひいては、ストックオプションを発行しやすくする意図があったと考えられる。従業員に対して、必要に応じて十分なストックオプション割当ができるよう、資金調達時には外部株主からの理解を得ておくことの必要性を宮城氏は強調した。

なお、2017年10月に実施されたストックオプション発行(第4回)では政策金融公庫に付与されているが、これはビザスクが資本性ローン(デットでありながら、金融機関が資本の一部とみなす性質を持つ劣後ローン)での資金調達時のもの。政策金融公庫は、ビザスク上場後にストックオプションを行使して株式利益を得ることで、ローン貸出の金利に相当する利益を後日確保する契約になっている。

また、2019年6月に実施されたストックオプション発行(第12回)では信託受託者に付与されているが、これはストックオプションの一定枠を預けることで、その時の条件でストックオプションを「冷凍保存できる効果(宮城氏)」があるという。後日、必要な人に対して付与することができる。信託型ストックオプションの設計や行使の方法は各所に資料が公開されているのでここでは詳述しないが、最近では、「SOICO」に代表されるような信託型ストックオプションに特化したプラットフォームも生まれつつある。

一般論として、市場に流通していない未公開株式の価格は、結局のところ創業者をはじめステイクホルダーの「言い値」でしかないわけだが、特に IPO しようとするスタートアップは、IPO に向けて、その株価の算定根拠を各所から求められるようになる。宮城氏は適宜、外部評価者による株価算定を実施することも勧めた。

ビザスクでは事業拡大に向け、宮城氏が所属する資本政策室をはじめ、広く人材を募集している

次回の Smartround Academia は6月12日、マネーフォーワードの資本政策徹底解剖。同社元 CFO の金坂直哉氏が登壇の予定。お楽しみに。

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