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新規就農者を支援する野菜販売スタートアップ・坂ノ途中、三井住友海上キャピタルや朝日放送など8社からシリーズAで総額2億円を資金調達

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京都を拠点に、新規就農者の農業参入支援と対面や直販での野菜販売を展開するスタートアップ・坂ノ途中は今週、シリーズAラウンドで総額2億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、三井住友海上キャピタル、朝日放送(東証:9405)の投資部門である ABC ドリームベンチャーズ、山陰合同銀行(東証:8381)傘下のごうぎんキャピタル、丸亀製麺で知られるトリドール(東証:3397)傘下の投…

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Image credit: 坂ノ途中

京都を拠点に、新規就農者の農業参入支援と対面や直販での野菜販売を展開するスタートアップ・坂ノ途中は今週、シリーズAラウンドで総額2億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、三井住友海上キャピタル、朝日放送(東証:9405)の投資部門である ABC ドリームベンチャーズ、山陰合同銀行(東証:8381)傘下のごうぎんキャピタル、丸亀製麺で知られるトリドール(東証:3397)傘下の投資会社 TD インベストメントフューチャーベンチャーキャピタル(東証:8462)、京都中央信用金庫傘下の中信ベンチャーキャピタル、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC と略す)、キユーピー(東証:2809)の8社。坂ノ途中にとっては、2年前に行った関係者からの資金調達に続き、初の外部資本からの資金調達となる。

坂ノ途中の設立は2009年7月、創業者の小野邦彦氏が京都大学在学中に「環境×農業」分野での起業に興味を持ち、2006年のキャンパスベンチャーグランプリ大阪大会での特別賞受賞を経て事業を開始した。野菜が畑で作られてから消費者の食卓に並ぶまでの、生産・調達・流通・販売の一連のプロセスに関与し、有機野菜の取扱に特化していること、年間400種類を超えるバラエティに富んだ野菜を扱っていること、100軒ほどいる契約農家のうち9割が新規就農者で構成されていることが特徴だ。消費者サイドからは、どの農家が育てた作物かもわかるようになっている。

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坂ノ途中 Soil 京都・九条大宮店
Image credit: 坂ノ途中

坂ノ途中と契約する生産者の4割弱は京都に集中しており、関西圏全体で見れば全契約農家の8割ほど。一方、販売先の約半数は関東圏で、インターネットを通じた定期宅配サービスのによる需要が50%、ハイエンドのレストランや百貨店の食料品売場への卸販売が35%、残りの15%は、東京の代々木八幡と経堂・京都の九条大宮に展開する自社経営の八百屋で対面直販によるものなのだそうだ。

調達資金の使途は、カスタマーサポートとマーケティング強化

日本の農家は経営規模が小さく経営が自然要因に左右されやすいが、小野氏はかつて勤務した外資系金融機関での金融知識にヒントを得て、金融工学に基づいて栽培計画の全体最適化を図ることで、農作物の商品供給における総量不安定性を打ち消すことに注力している。

野菜の品質を高くした上で、バリエーションも高くするのは非常に難しい。

そして、野菜の定期宅配では、お客を飽きさせないのがミソ。野菜がさほど好きでない人には、定期的に野菜が届くのは苦痛でしかないが、好きな人には(坂ノ途中は)非常にウケている。

大手の食品デリバリ定期配送サービスでも、利用開始から5週間後の継続利用率は半数を下回るとのことだが、坂ノ途中では、季節や収穫状況に応じて届く野菜が変化するため、長期にわたって使い続けてくれる多くのユーザに助けられているとのこと。ただ、ここで「助けられている」と書いたように、坂ノ途中の会社としての経営努力よりも、サービスを愛してくれるユーザのおかげでビジネスが成立している側面が大きいようで(小野氏)、坂ノ途中では今回調達した資金を使って、カスタマーサポートやマーケティングを強化する考えだ。

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小野邦彦氏

プロダクトの質の高さは評価されているが、正直なところ、坂ノ途中はまだカスタマーサポートがイケてない。今は、お客さんが自発的に見つけてくれて、ファンになってくれて、買って行ってくれているという感じ。お客さんの好意に甘え過ぎていると思う。カスタマーサポートを充実させ、より多くのお客さんに使ってもらえるようにしたい。

先日は、(ロフトワークの)MTRL 京都(マテリアル京都)で、当社のローヤルカスタマー向けに食べ物の上映会を開催した。2017年は、そのような(ユーザエンゲージメントの)機会を充実させ、エネルギーを注いでいきたいと思っている。(小野氏)

今後は、「北欧、暮らしの道具店」のほか、2015年に審査員特別賞を受賞した「T-Venture Program」運営元 CCC の「T-SITE」を通じて、集客やウェブマーケティングにも注力する計画だ。

新規就農者を増やす努力

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坂ノ途中 Soil 京都・九条大宮店
Image credit: 坂ノ途中

手軽に農業が始められることを謳い文句にする企業もいる反面、坂ノ途中は現実的だ。農作物を育む土地を大事にし、自然の循環を重視し、効率や生産性優先ではなく、まずは〝考えられる農家〟を増やしていきたいと小野氏は語る。坂ノ途中では自社農場を持っており、そこには就農に興味を持った人々が定期的に集まってくるのだそうだ。

自社農場では、農業に興味を持った人が研修生になるまで一緒に並行伴走するような感じ。根性だけでは乗り切れないのが農業。その間にあきらめて戻っていく人もいるし、一方、成長して本格的に農業に入ってくる人も多い。今のところは、参加者個々人の頑張りに依存しているが、新規就農した農家や就農を目指す参加者をネットワーク化して、学びあえるような環境を作っていきたい。

今までは、収入が安定しない農業では、代々農業を営んでいる家庭を除けば、新規就農者が結婚し、子供を育てるというような生活は難しくさえあった。坂ノ途中が農業を儲かる事業に変えたとまでは言えないが、坂ノ途中が契約している新規就農者には、30代から40代の結婚して家庭を持つような人が増えている。ボロ儲けはできないけど、少しは未来を描けるようになっているのではないか。(小野氏)

農業従事者の人口減と高齢化が下げ止まらない中、坂ノ途中の前向きで果敢な挑戦にエールを送りたい。

この分野では、新規就農者プラットフォームの「LEAP」を運営する seak が今年9月、寺田倉庫や三菱UFJキャピタルから約6,000万円を調達している

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中国のライドシェアリングサービス「Didi Chuxing(滴滴出行)」、アンバーアラートシステムと連携——行方不明の子どもの捜索に協力

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中国の配車サービス大手 Didi Chuxing(滴滴出行)が今回新たに、行方不明になっている子どもの捜索を目的とするシステム、アンバーアラート(誘拐警報システム)への参加を決めた。同システムは5月に、巨大インターネット企業 Alibaba の後援を受けてローンチされた。 全米行方不明・被搾取児童センター(National Center for Missing & Exploited Ch…

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中国の配車サービス大手 Didi Chuxing(滴滴出行)が今回新たに、行方不明になっている子どもの捜索を目的とするシステム、アンバーアラート(誘拐警報システム)への参加を決めた。同システムは5月に、巨大インターネット企業 Alibaba の後援を受けてローンチされた。

Above: Didi Chuxing: AMBER Alerts
(上)Didi Chuxing(滴滴出行):アンバーアラート

全米行方不明・被搾取児童センター(National Center for Missing & Exploited Children、NCMEC)によって制定されたアンバーアラートは、当時9歳の少女 Amber Hagerman ちゃんの誘拐殺害事件を受け、1996年にアメリカで初めて導入された。

一般的にアンバーアラートは、テレビやラジオなど数々の媒体を通じて発令され、アメリカだけでも20年前のローンチ以来772人の子どもの発見に役立っている。世界中で数十億のスマートフォンが普及する中、アンバーアラートを行き届かせる貴重な手段となるのがインターネットだ。昨年 Uber が同プログラムに参加し、Google も FacebookMicrosoft 同様、少し前からすでにアンバーアラートを自社商品に組み入れている。

2015年初頭、地元でライバル同士だった Didi Dache(滴滴打車)と Kuaidi Dache(快的打車)が合併し、Didi Chuxing が誕生した。同社は今日では、タクシー、カープーリング、ドライバー付きのプレミアムカーといったさまざまなスマートフォンベースの車両サービスを提供している。ライダー(サービス利用者)数が4億人を超える Didi は、中国では他社を圧倒的に上回る業界最大手だ。Uber が7月に白旗を掲げて中国における業務独占を諦め、350億米ドル規模の契約で Didi と中国国内のオペレーションを統合することに合意した。これより前、Didi は73億米ドルという大規模な資金調達ラウンドを実施しており、Apple も10億ドルという額を注ぎ込んだ

中国のアンバーアラートシステムは5月にローンチされたが、当初は中国公安部(MPS)と Alibaba(阿里巴巴)の合同プロジェクトであった。中国全土で5,000人を超える警察官が運用に携わっている。行方不明の子どもが報告されると、当局が写真などの関連情報を公式プラットフォーム「Tuan Yuan/Reunion」にアップロードし、Didi が事件の主要情報と共にアラートを子どもが最後に目撃された場所付近にいるライダーに送信する。子どもの行方不明が報告されてから1時間以内に半径100km 以内のライダー全員にアラートが送られ、2時間、3時間と時間が経過すると共に、受信範囲は半径200km、300km へと拡大される。

Didi Chuxing の他、Sina Weibo(新浪微博)、Alipay(支付宝)、Tencent QQ(騰訊 QQ) といったインターネットプラットフォームもアンバーアラートプログラムに参加する予定である。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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チャットでゴミを安全に捨ててくれる Delete、人類の本質的課題に取り組む Slow Studio から生まれる

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しばしば私は、家の周囲に発生する多くの古い電化製品、衣服、家具、その他の物を捨てたいと思っている。しかし、これらをゴミ箱に放り込むことにいくばくかの心配があってやはり行動は遅くなってしまう。環境にやさしい方法で確実にこれらを捨てる方法はないのだろうか? Delete はこの課題に安心を提供することを狙って今日(編集部注:原文掲載日11月18日)公開され、125万ドルの資金を調達した。Slow Ve…

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Image Credit: Delete

しばしば私は、家の周囲に発生する多くの古い電化製品、衣服、家具、その他の物を捨てたいと思っている。しかし、これらをゴミ箱に放り込むことにいくばくかの心配があってやはり行動は遅くなってしまう。環境にやさしい方法で確実にこれらを捨てる方法はないのだろうか?

Delete はこの課題に安心を提供することを狙って今日(編集部注:原文掲載日11月18日)公開され、125万ドルの資金を調達した。Slow Ventures が提供する新たなスタートアップインキュベーター「Slow Studio」から生まれた同社の使命は、人々が不要なアイテムを寄付、リサイクル、処分するための最も簡単な方法を提供することだ。捨てたいものの写真とテキストを用意するだけで、25分以内または予定された時間に、同社のメンバーがその捨てたいものを取りに来てくれる。

今日公開された Delete サービスは、サンフランシスコ、オークランド、バークレー、サウスサンフランシスコで提供を開始し、将来的には他の市場にも拡大する予定だ。

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人生をシンプルにする

「電話はあなたの生活をリモートコントロールしてくれるようになったのに、どうして削除ボタンはないのでしょうか?」。

同社の CEO で元 Red Bull 幹部でもあった Nate Warner 氏はこう続ける。「簡単かつ便利にモノを捨てること以上のことなんです」。

Delete は古い電化製品やリサイクル可能な紙、危険な家庭用品、ゴミ、寄付される衣類、木材など、捨てたいものはほぼ全て捨ててくれる。Warner 氏は一般的なゴミの99%を除去すると話しているが、ピアノや車、または他の非常に大きななものを捨てたい場合は別の方法を探す必要がある。

サービスを利用するためにアプリをダウンロードする必要はない。捨てたいものがある場合はテキストを送信するだけだ。同社はSMSで受付し、代理人があなたの家にやって来て不要物を確認して見積りを出して捨ててくれる。20ドルから利用可能だが、実際に仕事が完了してそれに満足するまで支払う必要はない。

Warner 氏は個別数値の開示は拒否したものの、彼が言うには30%の月次成長率を達成しているそうなので人々は結果に満足しているのだろう。

引き取りが発生すると Delete のクルーは商品を倉庫に運び、仕分を実施して契約パートナーに物品を配達して安全で環境に優しい方法で処分する。回収またはリサイクルできないものがある場合、Delete は環境被害を与えない方法で確実に処分してくれる。

Warner 氏は「人々は過度の負荷にさらされています」と語る。

「携帯電話によって生活をよりシンプルに、かつ部屋をより余裕ある空間にする方法には大きな可能性があります。あなたはモノを捨てることなく、他のモノの余裕を生み出すことができるのです」。

プロジェクトを推進するため、Delete は Slow Ventures と Upside Partnership から125万ドルを調達している。

Slow Studio から生まれたプロジェクト

前述のように Delete は Expa、Obvious、HVF、Science に似たモデルであるインキュベーターの Slow Studio から生まれた。Slow Ventures の創業者でありパートナーでもある Dave Morin 氏はこのプログラムの目標がコミュニティに参加した創業者との共同作業により、根源的なアイデアに取り組む企業を創ることだと語っている。

同社の哲学は持続可能でインパクトのあるビジネスを中心としており、インキュベーターは大きな問題に取り組んでいる起業家に忍耐を注入したいと考えている。Morin氏は「Delete はこのプログラムの好例」とVentureBeat に語った。

「ゴミや捨てるモノは人々の生活にとって大きな問題です。真の課題だと思う」。

Slow Studio の他の分野には、病気治癒などのゲノミクスに関する問題を解決しようというものもある。 Morin 氏は既に世界中の苦痛を減らすための他のアイデアと共に、うつ病を治す方法を探し始めている。さらに同社は「テクノロジーが影響を及ぼすことのできる現実の問題をふまえ、長期的な視野を持つ企業を構築することに非常に関心がある」と述べている。

今日の発表は Slow Ventures の第3回目の資金調達ラウンドに次いだニュースとなった。

【原文】
【via VentureBeat】 @VentureBeat

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ソーシャルビジネス存続のカギは〝面白いと思える心〟〜シーバス・ザ・ベンチャー ビジネスセミナー「社会起業でスタートアップするには?」から

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10月下旬、東京・目黒の Impact Hub Tokyo で、酒造メーカー大手シーバスリーガルの主催による、シーバス・ザ・ベンチャー ビジネスセミナー「社会起業でスタートアップするには?」が開催された。 シーバスリーガルは毎年、幻冬舎発行の雑誌「GOETHE(ゲーテ)」の協力により、卓越した社会起業家に助成金を提供する「シーバスブラザーズ・ヤングアントレプレナー基金」を運営している。また、この基…

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Photo credit: Ryo Shimizu (Rphotography-tokyo)

10月下旬、東京・目黒の Impact Hub Tokyo で、酒造メーカー大手シーバスリーガルの主催による、シーバス・ザ・ベンチャー ビジネスセミナー「社会起業でスタートアップするには?」が開催された。

シーバスリーガルは毎年、幻冬舎発行の雑誌「GOETHE(ゲーテ)」の協力により、卓越した社会起業家に助成金を提供する「シーバスブラザーズ・ヤングアントレプレナー基金」を運営している。また、この基金の受賞者には、シーバスリーガルが社会起業家を表彰する世界大会「THE VENTURE(ザ・ベンチャー)」に参加する権利も提供され、世界大会で優勝すれば100万ドルの賞金を獲得することができる。

このセミナーでは2つのパネルディスカッションが設けられ、THE BRIDGE では両セッションのモデレートをお手伝いさせていただいた。

「ヤングアントレプレナー基金」「THE VENTURE」から得られるもの

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Photo credit: Ryo Shimizu (Rphotography-tokyo)

この日集まった約100名の参加者を前に、ヤングアントレプレナー基金第3回受賞者の SenSprout(センスプラウト)の川原圭博氏と、第4回受賞者の MOLCURE(モルキュア)の小川隆氏が登壇し、受賞までの経緯や受賞してからの変化について経験談を語ってくれた。

<関連記事>

SenSprout は、THE BRIDGE でも以前紹介した導電性インクを使ったスタートアップ AgIC と同じ技術に端を発し、スマート農業センサー「SenSprout」で世界の水問題・食糧問題を解決しようとしている。川原氏は、東京大学大学院で准教授を務める研究者で、SenSprout には技術アドバイザーとして関わっている。

野菜を作るには水が必要だ。牛肉となる牛を育てるにも牧草や穀物が必要で、大量の水を使う。そこで印刷技術を使い、土の中の水分量を正確に測定し、最小限の水で農作物を作れる技術を開発した。日本の農家に寄り添い、彼らに喜んで使ってもらえるものを届けるのがミッション。今後は、世界でも使ってほしいと考えている。(川原氏)

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川原圭博氏
Photo credit: Momoko Takano

小川氏が率いる MOLCURE は、次世代シーケンサーと人工知能を組み合わせて、抗がん剤などに用いる高機能抗体を創出するプラットフォームを開発している。

病気の原因を探し出しと、それを解決するためのモノづくりをしている。世界的な製薬会社でも、成功するのは20件に1件程度。残りの赤字を成功プロジェクトで回収しなければならない。MOLCURE は、成功するはずだったプロジェクトの取りこぼしを見つけ、成功率を上げるお手伝いをしている。(小川氏)

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小川隆氏(右)
Photo credit: Ryo Shimizu (Rphotography-tokyo)

川原氏も小川氏も、起業家であると同時に科学者であり研究者だ。それゆえ、事業に従事する傍ら、学会や国際会議などへの出席にも忙しい。そんな二人だが、世界大会である「THE VENTURE」へ参加した経験を次のように語ってくれた。

16カ国から各国の代表がサンフランシスコに集まり、ビジネスプランを競い合った。プレゼン手法や考え方などからも大きな刺激を受けた。起業家として鍛えられたと思う。アルゼンチンの代表が、農業関係の事業を展開する方だった。受賞をきっかけに一緒に何か始めたい、と考えている。(川原氏)

世界各国の起業家と共に時を過ごせたのは、他では得られない体験だった。彼らは人間的にも強い。共に過ごしたことで、自分も鍛えられたと思う。今年になって国内の製薬会社3社と話ができ、受賞を機に海外との距離も近くなった。(小川氏)

世界的なインキュベータやアクセラレータの数が増えてきたとはいえ、国境を越えて起業家同士が切磋琢磨できる機会が得られるのはまだまだ稀だ。助成金もさることながら、人脈・機会・スキル・露出といった複合的なメリットが享受できるのは、ヤングアントレプレナー基金と「THE VENTURE」のユニークな魅力と言えるだろう。

気鋭の社会起業家に聞く、ソーシャルビジネス最前線

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Photo credit: Ryo Shimizu (Rphotography-tokyo)

続いて、2つ目のセッションでは、気鋭の社会起業家のお2人にも加わっていただき、世界や日本のスタートアップ・シーンにおけるソーシャルビジネスの高まり、社会起業家としての心得などについても語ってもらった。

ソーシャルビジネス系のプロジェクトを多く扱うクラウドファンディングサイト「READYFOR」の米良はるか氏と、ドローンを使った災害時の地図作成を行うクライシスマッパーズ ジャパンの古橋大地氏だ。

米良氏は、THE BRIDGE がスタートアップ・デイティングとして活動を始めたのと同じ頃、東日本大震災の起きた2011年に活動を開始。最近では、日本財団主催のソーシャルイノベーションフォーラムで米良氏が審査員を務めるなど、日本における社会起業の分野で第一人者的存在となっている。

古橋氏は、ドローンを便利なハードウェアとして捉えるだけでなく、ドローンを操作できる人を有機的につなげることで、社会にどのような利益をもたらせられるかを考えている人物だ。クライシスマッパーズ ジャパンの活動内容については、こちらのインタビューの内容が詳しい。

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古橋大地氏
Photo credit: Ryo Shimizu (Rphotography-tokyo)

古橋氏と米良氏に、ソーシャルビジネスの意義について聞いてみた。

伊能忠敬のように地図作りをどこまで続けられるか、世の中にどのように役立つかを意識して事業展開を考えている。事業の継続性=サステイナビリィが重要。(古橋氏)

では、ソーシャルビジネスを継続させるには、どのような点に注力するべきなのだろう? 5年以上にわたり、ソーシャルビジネスを続けてきた米良氏は、次のように語ってくれた。

「社会問題を解決しなければいけない!」と気張っているより、「社会に欠けている部分を皆でサポートしたら面白いだろうな」「人に役に立てれば生きている実感がありそう』と考える人の方が、長続きする気がするように思う。(中略)

以前は、一攫千金を狙って起業する人が多かったようだが、今は最低限暮らしていけるお金があればよくて社会起業をしたい人、面白さや楽しさが原動力になって事業を始める人が増えている気がする。(米良氏)

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米良はるか氏(右から2人目)
Photo credit: Momoko Takano

そもそも、企業というのは、ソーシャルビジネスかどうかにかかわらず、社会公益性を伴わないと存続することができないので、逆説的に言えば、設立してから存続している企業というのは、広義ではどれもがソーシャルビジネスだと言うこともできる。起業家が思い付いた、誰かを幸せにするアイデア、世の中のためになるアイデアを形にすれば、それは自然とソーシャルなものになっていくのだろう。

小川氏は、

ベンチャーは楽しくないと続かない。僕自身も癌の家系。癌に有効な薬の開発は、人類にとっても重要なミッション。その役割の一翼でも担えるのが、喜びにつながっている。

…と語り、また、川原氏は

大学で研究をしていても、実用化されるのか不安を覚えるが、自分たちが開発した技術でプロダクトを作って農家に納品すると、お金をいただける上に『ありがとう』と喜んでもらえる。これは、研究者にとっては本当に衝撃的な体験。社会の役に立っていることを実感できた瞬間。

と喜んでみせた。

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Photo credit: Ryo Shimizu (Rphotography-tokyo)

パネルディスカッション終了後はネットワーキングの時間となり、登壇者や参加者は、シーバスリーガルが提供したウイスキーを片手に談笑にふけった。

「シーバスブラザーズ・ヤングアントレプレナー基金」の募集は11月25日までで、応募や条件詳細については、ここから確認することができる。

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Photo credit: Ryo Shimizu (Rphotography-tokyo)

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社会起業家育成プログラム「Unreasonable Labs Tokyo」が開催、応募60件から選ばれたチームが社会を変えるアイデアを披露

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<11月8日正午、以下項目を修正・追加> メンタリング実施拠点数について、世界8地域→世界25カ国に修正(2015年から2016年の増分による) ピッチ審査員に斎藤ラッセル氏を追加(一部、審査員予定者の変更による) C4 と Capital Group, Corporate Contributions Committee と、Capital for New Commons の差し替え(C4 は C…

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<11月8日正午、以下項目を修正・追加>

  • メンタリング実施拠点数について、世界8地域→世界25カ国に修正(2015年から2016年の増分による)
  • ピッチ審査員に斎藤ラッセル氏を追加(一部、審査員予定者の変更による)
  • C4 と Capital Group, Corporate Contributions Committee と、Capital for New Commons の差し替え(C4 は Capital Group, Corporate Contributions Committee の略称ではなく、Capital for New Commons の略称であるため)
  • 主催者要望により、写真のキャプションに受賞者の個人名を追加。

<11月9日正午、以下項目を修正>

  • Do The Samurai の写真のキャプションの受賞者名を修正。

アメリカ・コロラド州ボルダーに本拠を置くアクセラレータ Unreasonable Institute は、社会課題を解決するビジネスや起業家を育成するアクセラレーション・プログラムを展開している。Unreasonable Institute は、世界のより多くの地域に social entrepreneurship(社会起業)の輪を広げようと、5日間の超短期間圧縮プログラム「Unreasonable Labs」を提げて、世界8地域でメンタリングを行うツアーを行っている。

<関連記事>

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Unreasonable Labs Japan ジャパンディレクター 竹村詠美氏

先週、同プログラムが東京で実施され、MTDO の田子學氏をはじめ、大学教授、社会起業家、投資家ら23人のメンターがメンタリングを行った。Unreasonable Labs Japan ジャパンディレクターの竹村詠美氏によれば、今年は、福岡・熊本・神戸・大阪・京都・仙台・東京の7ヶ所(開催順)で事前説明会を行ったこともあり、60チームがエントリし、そのうち10チームがファイナリストに残った。6日に都内で開催された Unreasonable Challenge Day では、メンタリングを受けたファイナリスト10チームのピッチが繰り広げられた。

このピッチセッションで審査員を務めたのは、

…の方々だ。1位〜3位の副賞は、社会起業家に投資を行っている C4(Capital for New Commons)から提供された。バリュープレスからはプレスリリース配信ができる権利、Peatix からは、Peatix コミュニティへの集客支援とトップページでのピックアップ掲載権が全ファイナリストに送られた。受賞したチームと、それぞれのサービス内容は次の通り。

【優勝(C4 SDG Award:Grand Prize)】Co-creation Centre by Co-creation

(副賞:30万円)

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優勝した Co-creation の高橋知子氏(前列左から2人目)

東北で学習塾を経営してきた代表が立ち上げた、シングルマザー家庭における負の連鎖を断ち切るためを意図したサービス。ソーシャルマザー制度により子供にとっての〝第2の母親〟を創出してシングルマザーを支援、シングルマザーのためのシェアハウスを創設・運営する。

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【準優勝(C4 SDG Award:Runner-up)】Your Action on Earth

(副賞:15万円)

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準優勝した Your Action on Earth の水本穣戸氏(前列左から3人目)

家電を省エネ製品に取り替えることで、地域や国全体で言えば大きな資源保護になるが、家庭ではまだまだ積極的ではない。理由は面倒だからだ。Your Action on Earth では学生をトレーニングして家庭に派遣、省エネデバイスを家庭にインストールしてまわる。節電などで浮いたお金の一部から Your Action on Earth は収入を得ることができる。

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【3位(C4 SDG Award:Honorable Mention)】ホトカミ by Do The Samurai

(副賞:5万円)

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3位の Do The Samurai の吉田亮氏(前列左から2人目)

寺や神社はこれまで、檀家や氏子といった家単位の援助をもとに収入を得てきたが、その習慣が近年希薄になっており、今後、寺や神社は3万件が消滅してしまうという。そして、それらのうち、ウェブサイトを持つ寺や神社は、1.5%に当たる2,000軒ほどに留まっている。「ホトカミ」は〝寺や神社版の食べログ〟を目指し、現在、寺や神社14万軒分の情報を収録したデータベースを作っている。

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【チェリオ賞】コンビナート by Archetype Nova

(副賞:ライフガード、および、ライフガードオリジナルTシャツ)

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チェリオ賞を受賞した Archetype Nova の内田晃盟氏(前列左)

テクノロジーで、伝統工芸の衰退を防ごうという試み。伝統工芸の技を受け継ぐ職人のデータベースを構築し、企業のニーズとマッチングする。実際にこれまでに籐細工のほか、漆塗りのスマートフォンケース、和紙の名刺入れなどの製品が考案されている。

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【FitBit 賞】Smile Quants

(副賞:FitBit)

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FitBit 賞を受賞した Smart Quants の浅野正太郎氏(前列左)

人がうつになることでもたらす経済的損失は大きい。企業では、うつになりかけている人を事前に察知することができれば、症状が深刻化するのを予防し、離職などの結果に陥るのを防ぐことができる。Smile Quants は人の顔の表情を認識することで、うつの兆候があるかどうかを検知するしくみ。まずは、パソコンの前に座っている時間が長く、精神的なプレッシャーを受けることが多いコールセンターなどへの導入を想定。

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【FitBit 賞】SPARK by Team Inquiry

(副賞:FitBit)

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FitBit 賞を受賞した Team Inquiry の宮田真知氏

中高生に対して、ディスカッションが行える機会や環境を与えることで、意見の異なる人たちと協力や共生関係を促したり、社会改善への能動的な参加へのつなげたりすることを目的とした活動。代表が成人して投票権を手にした時、どうしていいかわからなかった経験をきっかけに、ディスカッションをすることで中高生らが自分の意見を持ってもらうことを意図している。

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入賞ならなかったものの、ファイナリストに残ったサービス・チームは次の通り。

  • Connect Think by おもつな……NPO と地域の中小企業をマッチングするサービス。中小企業から NPO への協賛を促す。
  • フリー外科……外科手術版の Airbnb。セカンドオピニオンを得るような信頼している外科医に手術を依頼、空いている病院の設備を使って手術を受けられるサービス。
  • Notation……地方行政のキャッシュフロー改善、サービス改善のために、地方に関するあらゆる統計データをわかりやすく可視化。
  • Working’ Coaching……障害者の賃金が低いのは、障害者の労働を支援する職員一人が支援できる障害者の数が限られるため。Eラーニングを実施することで、障害者の職能を向上させ待遇改善と自立支援に貢献する。

なお、イベントの締めくくりには、Women’s Eye の石本めぐみ氏、Capital Group, Corporate Contributions Committee の  Genc Baki 氏、KIBOW インパクト・インベストメント・チーム・ディレクターの山中礼二氏、ACUMEN 東京チャプターの灘仁美氏らが登壇し、インパクト投資に関するパネルディスカッションが持たれた。モデレータは、APVN(Asian Venture Philanthropy Network)地域統括の伊藤健氏が務めた。

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左から:APVN 地域統括 伊藤健氏(モデレータ)、ACUMEN 東京チャプター 灘仁美氏、KIBOW インパクト・インベストメント・チーム・ディレクター 山中礼二氏、Women’s Eye 代表 石本めぐみ氏、Capital Group, Corporate Contributions Committee Genc Baki 氏

Women’s Eye は Capital Group から出資を受けているが、社会企業が投資家から出資を受ける上での心得として、Women’s Eye の石本氏は、何よりも投資家から信頼を獲得することが肝要であり、そのためには会計を含めた透明性、また、どんなに業務に忙殺されても外部に対して自分たちの活動をアピールしつづけていることが大事だと語った。

Capital Group の Baki 氏は、インパクト投資のポイントとして、投資先には経済的なリターンもさることながら、社会的なインパクトやサステイナビリティが求められるとした。

KIBOW はこれまでに2つの社会企業に対して投資を行っているが、山中氏はその企業の経営を支援する上では、働いている人の満足度や待遇改善などが KPI になってくると語った。

ACUMEN の灘氏は、ACUMEN のフォーカスは、南アジア・アフリカ・南アメリカの社会問題解決だが、日本では国内よりも海外の社会問題に関心を持ってもらうことが難しい、と国際的な活動を行う上での課題を語った。

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アフリカの無電化地域に電力を届ける「WASSHA」、JICA(国際協力機構)から3億円を資金調達

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東京に本社を置き、アフリカの発展途上国でキオスク店舗をネットワークすることにより、無電化地域に電力を届けるサービス「WASSHA」を展開する Digital Grid は20日、JICA(国際協力機構)からシリーズBラウンドシリーズ A のエクステンションラウンドで3億円を調達したことを発表した。Digital Grid はこれまでにシリーズAラウンドで、東京大学エッジキャピタル(UTEC)、日本…

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左から:JICA 民間連携事業部次長 小西淳文氏、DBJ環境・CSR部部長 田原正人部長、Digital Grid 取締役CFO 志藤篤氏、Digital Grid 代表取締役CEO 秋田智司氏、JICA 理事 富吉賢一氏、UTEC 代表取締役社長 郷治友孝、JICA 民間連携事業部主任調査役 佐野悠一郎氏
(20日、東京の JICA 本部で行われた調印式にて。撮影:JICA/久野真一氏)

東京に本社を置き、アフリカの発展途上国でキオスク店舗をネットワークすることにより、無電化地域に電力を届けるサービス「WASSHA」を展開する Digital Grid は20日、JICA(国際協力機構)からシリーズBラウンドシリーズ A のエクステンションラウンドで3億円を調達したことを発表した。Digital Grid はこれまでにシリーズAラウンドで、東京大学エッジキャピタル(UTEC)日本政策投資銀行イノベーティブベンチャーファンド(NECグループとSMBCグループによる共同運用)、電源開発から総額8億円を調達している。既存株主の追加出資と今回の JICA からの3億円をあわせ、シリーズBラウンドシリーズ A のエクステンションラウンドでの調達総額は4億円となり、創業当初からの累積調達総額は12億円となる。

(2016年10月20日15:30更新:ラウンド毎の調達金額の内訳に誤りがありましたので、記述を修正しました。

(2019年11月8日正午更新:このラウンドをシリーズ B ラウンドではなく、シリーズ A のエクステンションラウンドに位置付けを変更するとの連絡を同社から受け、バックデイトで一部記述内容を変更しました。)

Digital Grid は2013年の設立で、東京大学大学院の阿部力也教授の「電力ネットワークイノベーション(デジタルグリッド)」の研究からスピンオフしたスタートアップだ。アフリカの無電化地域の村々のキオスクにソーラーパネルや充電バッテリを設置し、LED ランタン30基、ラジオ、タブレットなどを無償でレンタル供与。店舗はこれら生活家電を村の住人に貸し出し、日々充電に来てもらうことで課金する。店舗のオーナーがスマートフォンを操作してモバイル決済することで充電ボックスからランタン、ラジオ、タブレットなどに通電されるようになっており、Digital Grid の店舗からの売上回収もモバイルで実施する。

<関連記事>

日本の ODA(政府開発援助)や青年海外協力隊など国際協力支援を牽引する JICA にとっては、中東・北アフリカの開発ファンドに出資している事例はあるが、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)以南の事業案件への出資は初の試み。JICA が持つ BOP FS(Base of the Pyramid – Feasibility Study)というスキームからの投融資で、(調査だけにとどまらない)対事業向けの資金拠出としても初となる。

今回の出資を担当した、JICA 民間連携事業部主任調査役の佐野悠一郎氏は、出資金の原資は税金であり、またグラント(助成金)でもないため、最終的に資金を回収する必要はあるが、WASSHA の事業拡大によって「開発効果の発現」が期待できることや、円借款・無償資金提供・従来の ODA では手の届かない世界に支援を届けられる可能性があることから、グロースキャピタルとして Digital Grid に出資する判断に至ったと説明する。

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左から:Digital Grid 代表取締役CEO 秋田智司氏、取締役CFO 志藤篤氏
(撮影:JICA/久野真一氏)

JICA はアフリカ54カ国のうち、ほとんどの国に現地事務所を開設し、青年海外協力隊員やシニア海外ボランティアを派遣している。彼らを通じて、JICA は現地住民から日常生活に関わる要望を把握しているのに加え、アフリカ諸国の政府や関係省庁と堅固なネットワークを築いているため、Digital Grid はこれらの JICA のリソースを活用して、よりスムーズなビジネスのスケールを実現できるようになる。

6月にインタビューした際には、タンザニア首都のダルエスサラームを中心に2都市にある加盟キオスク650店舗で提供していた WASSHA だが、10月末までに加盟店舗820軒にまで拡大。タンザニア国内10州(region)でサービスを展開しており、技術スタッフの派遣や修理を行うセンターも3都市にまで増やしている。Digital Grid では、構築中の加盟キオスクとのネットワークを活かし、自社の電力サービス以外にも、他のスタートアップの開発したサービスの販売やテストマーケティングにも協力していきたい、としている。

JICA では、インフラ・SDGs(Sustainable Development Goals;国連が定める「持続可能な開発目標」)・気候変動の3つの領域をテーマとした事業に対して出資を行うスキームを持っており、これらの領域でグロースステージにある社会起業系スタートアップなどに積極的に出資を検討していきたいとしている。

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WASSHA で提供されるランプと、スマートフォン充電用のバッテリーボックス
(撮影:JICA/久野真一氏)

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日本財団のソーシャルイノベーションフォーラム2016、上限1億円×3年間を支援する「特別ソーシャルイノベーター」3組を選出

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本稿は、9月28日〜30日に東京で開催された「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」の取材の一部。 日本財団は9月28日〜30日、マルチセクターが手を取り合い、社会起業などを通じて新たなインパクト創出の促進を目的としたカンファレンス「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」を開催した。主催者発表で、3日間を通じた参加者ののべ人数は2,187人となり、非営利活動・社会貢献分野では国内最大規…

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本稿は、9月28日〜30日に東京で開催された「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」の取材の一部。

日本財団は9月28日〜30日、マルチセクターが手を取り合い、社会起業などを通じて新たなインパクト創出の促進を目的としたカンファレンス「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」を開催した。主催者発表で、3日間を通じた参加者ののべ人数は2,187人となり、非営利活動・社会貢献分野では国内最大規模となった。

このカンファレンスを前に、日本財団では社会にインパクトをもたらせる可能性のある社会活動や社会起業の事例を今年4月から募集。このソーシャルイノベーターのプログラムには全国から225件の応募があり、その中から10組11人がソーシャルイノベーターに選ばれた。30日には、彼ら11人によるプレゼンテーションが実施され、そのうち優れた3件を〝特別ソーシャルイノベーター〟として選出し、日本財団から上限1億円×3年間の支援が発表された。

特別ソーシャルイノベーター最優秀賞:岩本悠氏(学校魅力化プラットフォーム 共同代表)

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表彰を受ける、学校魅力化プラットフォームの岩本悠氏。右は、選考委員長を務めた、三菱総合研究所理事長で元東京大学総長の小宮山宏氏。

事業名:「教育魅力化による地方創生プロジェクト」
主な活動地域:島根県

概要:

  • 【地方消滅】学校を魅力的にする→若者が地域に残る又は他地域から流入する→地域の産業や暮らしが活性化→消滅確実地域が持続可能地域へ
  • 【スケールアウト】①地域間の学びあいプラットフォーム構築、②学校を核としたコレクティブチームの形成、③学校魅力化の評価システム導入

日本財団によるインタビュー記事

特別ソーシャルイノベーター優秀賞:河内崇典氏、高亜希氏(Collective for Children 共同代表)

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表彰される Collective for Children の河内崇典氏と高亜希氏。右は、選考委員を務めた、日本ファンドレイジング協会代表理事の鵜尾雅隆氏。

事業名:「子どもの貧困サポートパッケージづくり」
主な活動地域:関西(大阪府、兵庫県中心)

概要:NPO 連合体でつくる子どもの貧困を解決するサポートパッケージづくりおよびバウチャーの導入。「切れ目のない子どものセーフティネットをつくる」

日本財団によるインタビュー記事

特別ソーシャルイノベーター優秀賞:林篤志氏(Next Commons Lab 代表)

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表彰される Next Commons Lab 代表の林篤志氏。右は、選考委員を務めた、READYFOR 代表取締役 CEO の 米良はるか氏。

事業名:「地域交響圏システム Next Commons Lab の構築」
主な活動地域:岩手県遠野市他

概要:物理的制約がなく個人の自由を尊重する共同体と、新しい働き方から生まれる経済性を両立した「Next Commons Lab(NCL)」の構築。かつてのムラ社会への回帰でも、資本主義の徹底でもない、「アップデートされた共同体」

日本財団によるインタビュー記事


なお、特別ソーシャルイノベーターには惜しくも入賞ならなかったが、ソーシャルイノベーター(ファイナリスト)として選ばれたのは次の7組の皆さん。

  • 伊藤次郎氏(OVA 代表理事)…こころのインフラを創造する
  • 塩山諒氏(スマイルスタイル 代表理事)…誰もが希望を見出し、働き続けられる社会
  • 下沢貴之氏(ライフジム運営協議会 会長)…ライフジムで日本を健康に、もっと元気に
  • 竹井智宏氏(MAKOTO 代表理事)…人が復活! 日本が復活! そして、日本が復活へ!
  • 槌屋詩野氏(Open Impact Systems プロジェクトマネージャー)…人々が関係性を理解し効率的に協働する社会
  • 手島大輔氏(セルザチャレンジ代表)…革新的な口腔ケアで世界の障害者の仕事創出
  • 中嶋健造氏(自伐型林業推進協会 代表理事)…世界をリードする森林大国日本へ

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日本財団主催のソーシャルイノベーションフォーラム2016が開幕——小泉進次郎衆院議員がソーシャルイノベーターらを激励

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本稿は、9月28日〜30日に東京で開催された「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」の取材の一部。 日本財団は、同財団初となる社会起業やソーシャルインパクトに特化したカンファンレンス「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」を28日〜30日の3日間にわたり東京で開催、1日目となる今日は、日本財団会長の笹川陽平氏の挨拶に引き続き、これまでに復興政務官や地方創生担当政務官を務めた衆議院議員の…

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イベント冒頭に挨拶をする日本財団会長の笹川陽平氏

本稿は、9月28日〜30日に東京で開催された「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」の取材の一部。

日本財団は、同財団初となる社会起業やソーシャルインパクトに特化したカンファンレンス「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」を28日〜30日の3日間にわたり東京で開催、1日目となる今日は、日本財団会長の笹川陽平氏の挨拶に引き続き、これまでに復興政務官や地方創生担当政務官を務めた衆議院議員の小泉進次郎氏が基調講演した。

ソーシャルイノベーションフォーラムでは、「新たな発想と明確なビジョンを持ち、セクターを超えたチームを結成し、社会課題の解決に向けて、失敗を恐れずに活動を推進できるリーダー」を〝ソーシャルイノベーター〟と定義。今年4月に募集を開始したソーシャルイノベーターのプログラムには全国から225件の応募があり、その中から10組11人がソーシャルイノベーターに選ばれた。30日には、彼ら11人によるプレゼンテーションが実施され、そのうち優れた数件を〝特別ソーシャルイノベーター〟として選出、日本財団から上限1億円×3年間の支援が提供される予定だ。

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今回選ばれたソーシャルイノベーターの皆さん

イベントの冒頭で挨拶に登壇した笹川氏は、国や行政だけでは解決できない社会課題には、民間や公私の垣根を超えたマルチセクターでの取り組みが必要だと指摘し、昨今、特に日本の若い人々が自ら社会のために何かできないかと行動を始めていることは、日本の将来を切り拓いていく上で喜ばしいことだと述べた。続いて笹川氏は、東北大震災の被災地や地方創生の現場を行脚し続ける小泉氏を、江戸時代後期の農政家・二宮尊徳(金次郎)の功績になぞらえ〝小泉金次郎〟として紹介し、聴衆の笑いを誘った。

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徳島県神山町の「神山しずくプロジェクト」から生まれた、間伐材の杉を原材料とする器を手に、イノベーションの重要性を説く衆院議員の小泉進次郎氏

小泉氏は、人口減少と少子化は不可避の現実として受けとめるべきだと述べ、仮に、悲観的な考えしか持てない人口1億2,000万人の国より、将来を楽観視し自信に満ちた人口6,000万人の国の方が、さまざまなイノベーションの成功事例が生み出せるのではないかと提言。2020年の東京オリンピックやパラリンピックの終了後、直視せざるを得なくなる社会課題に備え、今回のような機会を通じてコレクティブなインパクトが生まれることを望みたいと述べ、ソーシャルイノベーションフォーラムへの期待を明らかにした。

日本財団はボートレースの収益金の一部を原資とし、日本で初となるソーシャルインパクトボンドのパイロット事業を横須賀市福岡市や松本市尼崎市などで行なっている。最近では、熊本大地震で倒壊した熊本城の修復に、30億円の資金拠出を表明したことでも記憶に新しい。

<関連記事>

<参考文献>

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ソーシャルインパクトの祭典「SOCAP16」現地レポート〜日本の社会起業家もさまざまなソリューションを紹介【ゲスト寄稿】

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら。 9月13日から16日まで、サンフランシスコの Fort Mason Center は、毎年ここで開かれる SOCAP(Social Capial Markets)カンファレンスの会場となった。このカンファレンスのモットーは「社会変化を促す力としてビジネスを用…

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら


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Image Credit: 晴山敬氏

9月13日から16日まで、サンフランシスコの Fort Mason Center は、毎年ここで開かれる SOCAP(Social Capial Markets)カンファレンスの会場となった。このカンファレンスのモットーは「社会変化を促す力としてビジネスを用いるグローバルコミュニティーが、共に集って話を聞き、学び、それを実行する場所」だ。2008年にスタートしたときの参加者は600人だったが、今年はその数も2,500人を超えた。

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Social Good LLC の飯盛豊氏
Image credit: “Tex” Pomeroy

今年のイベントにサンフランシスコを訪れている団体は、日本からもいくつかあった。Impact Hub Tokyo と密接に関与する Social Good LLC からは、飯盛豊氏が代表して参加していた。Social Good の最近のビジネスコンセプトは、森林地域の安全改善分野への IoT の適用だ。そのビジネスがターゲットとする地域の一つであるインドネシアでは、センサーを搭載した鳥の巣箱を使って IoT ネットワークを構築している。

インドネシアは、生物の多様性を保存するためだけでなく、熱帯雨林における木材の取引状況を維持するためにも、環境の状態をモニタし続ける必要がある。偶然にもその森林火災検出ネットワークは、近年、多くの山火事を経験しているカリフォルニアでも使われることになるようだ。また、Social Good は、コミュニティでの災害軽減活動を推進すべく、スタートアップと非営利組織をつなぐことも目指していることは、特筆に値するだろう。

日本の商社からも何人かが参加していたようだ。以前、三井物産に勤務し、EU 向けに総合商社に関するレポートを書いたコンサルタントの米満裕彦氏によれば、インパクト投資とその意味が、商社のような組織にとって関心の中心になっているからだという。

特に、SOCAP は環境エネルギーやサステイナブルな食糧・農業に特化しています。これは、総合商社が極めて関心を持つ分野です。

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Image credit: SOCAP

SOCAP 2016 の1日目は近隣経済に話題が絞られ、都市がその変化を牽引する存在になるとの仮定のもと議論が交わされた。特にサンフランシスコ・ベイエリアでは、シリコンバレーや SOMA 地区だけでなく、湾東側のバークレー、エメリービル、オークランドに代表される地域で継続的な成長が見られることからもわかるように、都市がオープンイノベーションや包摂的起業(Inclusive Entrepreneurship)の中心地となっている。

<関連リンク>

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Image credit: SOCAP

よりよい社会を作るためにコミュニティが強くなることに加え、近隣経済を考える上で、再考や復興を促進する力がメインテーマになった。森林火災の問題に話を戻すと、警報を発するドローンや被害軽減を目的としたモバイルシステムなど、新しい技術をもとに災害対策の再考や復興の促進を考えさせる、奇抜なソリューションがシリコンバレーで関心を集めている。

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Image credit: “Tex” Pomeroy

興味深いことに、SOCAP 2016 は9月12日にスタートした TechCrunch Disrupt SF と日程が重なった(残念ながら今年の TechCrunch Disrupt は、SOCAP 2016 の会場の Fort Mason Center からは街の反対側にあたる Pier48 で開催された。昨年はもっと近い場所だったが)。サンフランシスコやカリフォルニアが大地震に備えるべきとの観点から、SOCAP の会場では、ある日本のスタートアップは、コミュニティシステムとして自社の地震センサー警報ネットワークの情報を拡散していた。

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Image credit: SOCAP

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韓国におけるメンタルヘルス支援システムの崩壊、スタートアップが手を差し伸べられる方法とは…

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私は韓国が大好きだ。 風景も文化も好きだ。だが一番好きなのは、ここに住む人々と彼らが創り出す活気あふれる環境だ。 コンビニでアルバイトをしている未成年から、地下鉄に乗るたびに腹パンチをしてくるおばさん方まで、この国の独自性を高める皆が大好きだ。 だからこのテーマは私にとって非常に重要であり、取り組むべきものである。 韓国では毎年10万人中約30人が自殺する。これより高い自殺率は世界でもガイアナでし…

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私は韓国が大好きだ。

風景も文化も好きだ。だが一番好きなのは、ここに住む人々と彼らが創り出す活気あふれる環境だ。

コンビニでアルバイトをしている未成年から、地下鉄に乗るたびに腹パンチをしてくるおばさん方まで、この国の独自性を高める皆が大好きだ。

だからこのテーマは私にとって非常に重要であり、取り組むべきものである。

韓国では毎年10万人中約30人が自殺する。これより高い自殺率は世界でもガイアナでしかみられない。

この記事では、なぜこんなことになるのか、自殺率に最も寄与している集団である学生と高齢者に注目してみよう。その次に、現在何が行われていてなぜそれが上手くいかず、そして彼らを助け出すためにスタートアップコミュニティに求められていることは何なのか、これらを分析的にみていこう。

韓国の学生は朝から晩まで苦難の連続

確かなデータほど物言うものはない。韓国では・・・

  • 24歳未満の自殺率は OECD 平均の1.5倍である
  • 学生のおよそ10%が自殺を考えたことがある
  • 2001年から2011年にかけて、この年齢グループの自殺者数は57%上昇した

皆さんはこの数字を見てゾッとするだろう。政治家も然りだ。

韓国国会でも議会のたびに、この問題にどう対応するかに終始するが具体的な対策は何も取られていない。

この危機の最たる要因は教育機関である。学生は毎日早朝から夜中まで勉強させられているからだ。

学生たちは「一流大学に入学する」という永遠に続くかのようなプレッシャーに直面しながら、失敗することへの絶え間ない恐怖に対処しなければならず、それができなければ落ちこぼれとみなされる。あらゆる社会的プレッシャー(社会的、経済的など)と併せて考えると、両側から点火されたダイナマイトが爆発するのをただ待っているようなものだ。

子どもたちは青春を奪われている。楽しむ機会も学びたいことを学ぶ機会も与えられない。回り道は許されないのだ。

韓国の高齢者は赤貧と孤独に露命を繋ぐ

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毎年10万人中50人以上の高齢者が自殺する。これは全国平均のおよそ2倍だ。この傾向の原因は、増加していく赤貧を食い止めることができない破綻したシステムと、それによる孤立感である。

ソウル繁華街の江南や狎鴎亭の高級街は、韓国が世界最高レベルの経済大国にまで上り詰めた富裕国である証である。最新のビルに備えられた大型ビジョンでは裸同然の女性が香水の宣伝をするコマーシャルが流れ、その下では有名ブランド店を周ってせかせかと買い物をするカップルがいる。

しかし、資本主義の成功によるこういったありふれた光景の中で、上述の現実はよく忘れられてしまっているのだ。

たった数セントのために資源ごみを載せたリアカーを引くお年寄り。そのすぐ向こうにも老紳士が、通りすがりの若者が捨てた空き缶をごみ箱から注意深く取り出して、同じようにリアカーを引いている。

ソウル中をくまなくまわるとバッカスおばさんを見かけるだろう。これは可愛らしい音楽グループではない。自暴自棄になって体を売るお婆さんたちだ。

<参考記事>

韓国の高齢者のおよそ半数は貧しい暮らしをしており、これも高齢者の自殺の主因となっている。

福祉制度は崩壊しており、高齢者のセーフティネットはない。

もし高齢者に子がいれば、その子らは利益を享受できないだろう。というのも、時代遅れの儒教の教えに基づくと、子は親の世話をするのが当然と考えられているからだ。

理想の中の韓国社会では儒教は堅く守られ、子供は親の世話をするはずだ。しかし、私たちはそんな社会に生きてはいない。そういった社会は過去のものであり、私たちはそれを受け入れなければならないのだ。

この問題に対処するために行われていること

ここまでメンタルヘルス危機に関する韓国の暗い見通しについてみてきた。韓国のシステムには重大な欠陥があり、これを修復するためには何か手を打つ必要があるのは明らかだ。そうだろう?

いや、違うのだ。

学生の自殺が多いにも関わらず、ほとんど手は打たれていない。というのも、長い目で見ると大学に行かないことで社会的・経済的に失うものがあまりに多いからだ。一流大学に入学することで、学生は数少ない社会経済グループに飛躍できる。勉強が最優先され、精神衛生やストレス、不安は後回しにされる。

2010年代初頭には学習塾に通う時間を制限しようという動きもあったが、単に公教育を貧富の差なく充実させるに留まった。

この論文に示されているとおり、学習塾という列車を止めるものはない。ある線路を遮っても他の線路が作られてしまう。

韓国の学習塾は学問のメデューサだ。

高齢者に関しても、政府は助けようとはしていない。著者の Se-Woong Koo 氏は以下のように書いている。

韓国は裕福なように見せかけているが、高齢者に対する政府の支援は驚くほど限られている。韓国は GDP の1.7%を高齢者介護に費やしているが、これは OECD で最も貧しいメキシコよりわずかに多い程度だ。一方で、隣国の日本は高齢者に惜しみない援助をしており、GDP の8.9%を日本中の高齢層に施している。

朴大統領は選挙運動の中で、高齢者に月額20万韓国ウォン(180米ドル)というわずかばかりの年金計画を約束したが、完全に破綻した。世界で最も高齢化が進んでいる国の一つである韓国においては最適な政策ではなかったのだ。

スタートアップが支援する理由と方法

Facebook に代表されるような「楽しい」スタートアップのどれを見ても、何百というスタートアップが人の暮らしをより良いものにすることに焦点を当てている。

アフリカで水質を改善しているものから都心部の教育をより効果的にしているものまで、スタートアップコミュニティが手を広げている範囲は計り知れない。スタートアップコミュニティがこの問題を独力では解決できないとしても、事の解決の中核を担うことは間違いないだろう。

スタートアップで働く人たちはイノベーションや問題解決が好きで、行動が早い。単純な仕事でも終わらせるのに何年もかけるような肥大化した官僚組織とは対照的である。

うつ病と戦う学生には、自分を助けることについて政治家が議論しているのを待っている時間はない。彼女にはまさに今、助けが必要なのだ。

コミュニティ作りと改革による韓国の若者の救済

韓国の若者の自殺率を減少させる2つの解決策がある。

メンタルヘルスをクールなものに

1つめは、Sanctus という名前で同様のことをやっているイングランドの友人から拝借した考えである。コンセプトの概要は自分の苦悩や悩みを他の人と共有するのは普通だ、ということを学生に示すことで、「メンタルヘルスをクールなものにする」というものである。

自己表現することは弱さの表れではなく、自分を劣った人間にするものではない。むしろより良い人間にするものである。

これは、中学生や高校生だけでなくコミュニティ意識を生み出す年配の人もターゲットにしたさまざまなワークショップや授業、イベントを通して達成することができるだろう。

だがこれを順調にスタートさせるのはなかなか難しいとされる。韓国ではメンタルヘルス関連のことはタブーとされているからだ。しかしこれを成し遂げる産業があるとすれば、それこそがスタートアップである。

学習塾制度の刷新

学習塾のシステムを改革するには長い時間がかかるが、最重要課題である。

現在の教育システムは詰め込み、長時間、単調さなどあまりに不健全で、それにも関わらず誰も修正しようとか別の手段を考えようとかしていない。若者の精神衛生問題に取り組むためには、これに代わるものが必要である。

スタートアップは考えられるほとんどすべての分野に革命をもたらしてきた。今こそ学習塾業界にメスを入れるときである。

ターゲットプログラムによる高齢者の救済

学生の問題と同様に、高齢者のメンタルヘルス問題には二面からのアプローチが必要である。

経済的困窮に取り組む

ターゲットとなる最初の分野は、自殺の増加を引き起こす最大要因とされる経済的困窮である。

韓国の起業家は、安全、親切、かつ安定したやり方で高齢者を実社会に積極的に呼び戻す方法を模索する必要がある。これを行っているスタートアップは既にある。Seniors and Youth などだ。彼らは高齢者に世界中で韓国語教育をしてもらい固定給を支払うことで負担を和らげている。

コミュニティ作り

もう一つの方法は、高齢者が頼れる友人グループを作るために自分自身の間で大きなコミュニティの基礎を作り上げることである。

高齢者を打ちのめす絶望の連鎖の大きな要因として、話しかける相手もいなければ行く場所もない、といった絶えず続く孤独感が挙げられる。

これは起業家にとっては高齢者が集まって一緒に活動に参加できるような機会を提供する素晴らしいビジネスチャンスである。Korea Legacy Committee などの団体の働きによりこういった考えは既に実行に移されているが、この問題に対処するにはまだまだ助けが必要である。

韓国はインターネット網が発達しているため起業家の理想の地であるが、一方で起業家が飛び込んで実際に変革を起こす機会も溢れている。

結論

メンタルヘルスは全く恥じるものではない。この認識が韓国中に広まるのが早ければ早いほど、より良くなるだろう。

私はこの国が大好きであり、この国民が大好きである。

メンタルヘルスについてオープンで率直な議論をしよう。話す相手がいない?私にメールしてほしい。話そうではないか。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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