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メルカリShopsは何を変えるーー新たな局面に入る国内B2C EC、注目される個人の動き

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メルカリがメルペイ以来、約2年ぶりとなる新たな事業を公表しました。メルカリShopsはこれまで個人間売買(C2C)を中心としてきた同社にとって初めての事業者向け(B2C)サービスになります。 メルカリは創業した2013年以降、フリマアプリ「メルカリ」を中心にシンプルな事業構成で成長を続けましたが、2018年8月の上場までに新たな事業創造の仕組みとして2015年にソウゾウを設立しています。ここではク…

メルカリがメルペイ以来、約2年ぶりとなる新たな事業を公表しました。メルカリShopsはこれまで個人間売買(C2C)を中心としてきた同社にとって初めての事業者向け(B2C)サービスになります。

メルカリは創業した2013年以降、フリマアプリ「メルカリ」を中心にシンプルな事業構成で成長を続けましたが、2018年8月の上場までに新たな事業創造の仕組みとして2015年にソウゾウを設立しています。ここではクラシファイドの「アッテ」書籍特化の「カウル」ブランド特化の「メゾンズ」買取アプリの「メルカリNOW」シェアサイクルの「メルチャリ」などの新規事業を公表しましたが、いずれも単独でセグメント化できるほどの事業規模にならなかったことから、それぞれ機能としてメルカリに吸収されるなどし、ソウゾウ自体も2019年6月に会社精算という形で一度幕を下ろしています。

このソウゾウが同じ社名で復活したのが昨年12月でした。代表には2017年からソウゾウに参加していた石川佑樹氏が就任し、メルカリ創業者の山田進太郎氏と名村卓氏(CTO)が取締役として脇を固めるという体制になっています。現在、40名弱の体制で発表したメルカリShopsを軌道に乗せるべく開発を続けているそうです。

メルカリにはソウゾウ以外にも新たな取り組みを加速させる組織としてメルカリR4D(R&D部門)や、現在、小泉文明さんが代表を務める子会社の鹿島アントラーズといった取り組みがあります。

今日、開示された2021年6月通期決算で、メルカリはユーザー数1954万人、GMVにして7845億円、売上751億円という結果を公表しました。売上成長率は年次で28%と高い水準を維持しており、この勢いの元、次の成長を目指した中期計画も開示しています。この中でソウゾウはメルコインと並んで、メルカリが推進する6つの事業のひとつに数えられました。

メルカリ決算発表資料より

さて、今回公表されたメルカリShopsですが、こちらの記事にも書いた通り、過去に取り組んだC2Cの実験的なサービスとは異なり、本格的なB2C・コマース領域を攻めています。現在、経済産業省が毎年発表している電子商取引に関する調査では、B2Cに関するコマース市場規模は全体で19兆円ほどあり、ここ1年はコロナ禍もあって大きく成長・変動している状況が浮かび上がっています。C2C市場も成長していますが、規模にして10倍の開きがあるビッグ・マーケットです。

これまでソウゾウではメルカリで展開されるサービスの特化型や、シェア文脈で繋がりのあるモビリティなどやや周辺の新規事業領域を試すような取り組みを続けていました。これはメルペイやメルカリUS、鹿島アントラーズの立ち上げとはやや異なるスキームです。

ではなぜ本体ではなく、ソウゾウで本命とも目されるB2Cコマースを手がけることになったのでしょうか。

本稿ではソウゾウ代表の石川氏へのインタビューを元に、数回に渡り成長するスタートアップがどのように新規事業に取り組んでいるのか、そしてメルカリShopsが新たな局面を迎えるEC市場をどのように捉えようとしているのか、考察交えてお伝えしてみたいと思います。

角度が変わったEC化率

令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

今年7月末、経済産業省のECに関する新たなレポートが発表されました。電子商取引に関する市場調査で、毎年、電子商取引に関わる人たちが標準的な情報として参考にしているレポートです。毎回、一定のペースで市場成長していましたが、今回はやや様子が異なっていました。市場規模こそ19兆円ほどでややマイナスの結果だったのですが、その内訳が大きく変動していたのです。

概要は以前の記事に書いた通りなのですが、注目すべきはEC化率の変化です。物販における対面販売と電子商取引の比率において、これまでも家電や文具など、ネット販売しやすいものについてはEC化が3割〜4割と進んでいたのですが、食品や化粧品、ファッションといった対面でなければ購入体験が悪くなる品目についてはずっと低調なままでした。それが今回、大きく動いたのです。レポートにも言及されている通り、コロナ禍における生活様式の変化が大きな要因になったと考えられます。

メルカリShopsはまさにこの角度が変化するタイミングで投入されたわけです。石川さんにEC市場のトレンド変化で感じた違和感について尋ねたところ、このように状況を説明してくれました。

「特に(物販系ECの)カテゴリによらず、まだまだ幅広くギャップは存在していると思っています。去年1年間で出店者の方や事業者の方々は必要に迫られてコマースを利用せざるを得なくなったという状況が強くあったと認識しています。その中において、トライしてみたけど実際にはなかなか上手くいかなかったり、そもそもトライ自体、どうしたらいいか分からないという状況もあったようです」。

特に石川さんたちがヒアリングした対象の中で、個人に近い小規模な事業者が受けた影響は大きかったようで、これらの事業者が一気に動いた、というのが今回のレポートに出てきた角度や数字のように思います。国内には中小規模の事業者はざっくりと360万者存在しており、その内、300万者が従業員20名以下の小規模事業者と位置付けられています。しかし、実態としてその数はもっと多いのかもしれません。石川さんは筆者の質問にこう答えています。

筆者:実態として個人、フリーランスや自由な働き方をしている人たちがC2CからB2Cコマースに進出している印象があります。この数は360万事業者とは別の、もう少し大きなパイに広がっていると感じているのですがどのように考えてますか?

石川:そうですね、まさにそこは今、お話された数字よりも大きい見立てをしています。ここ自体はこれからも境目が見えにくくなる、伸びしろがある変化の大きい領域だと思っています。逆に言うとソリューションが不足とは言わなくとも、なんでないんだろうなと思っている人が多いのではないでしょうか。

国内におけるフリーランスの人口は広義で462万人(※1)とされています。一方、国内の労働人口(就業者数)は6692万人です。また、コロナ禍において3割近くの人々が副業への関心が高まったという調査結果(※2)もあります。元々、終身雇用などの古い制度が終焉を迎え、新しい働き方などを模索する人たちが動き出している中、コロナ禍という大きな節目を迎えたわけです。

仮説としてこれらの労働人口が、次の収入の口をコマースに向けたとしてもおかしくはありません。

ちなみに今日の決算発表ではメルカリのユーザー数1954万人と共に、潜在出品者数として3600万人の数値が公表されていました。また同様のコマースプラットフォームとして先行するBASEの6月時点のショップ数が150万店です。メルカリShopsに出店する人たちの数を推計することは難しいですが、この数字の間に可能性が秘められているのは間違いなさそうです。

今後、メルカリShopsで店舗開設数などが開示されていくことになると思いますが、この数字がどのような立ち上がりになるのか、またどういった推移曲線を描くのかという点には注目をしています。

次回は個人や小さな事業者がECを始めるにあたっての課題やNFTへの対応などについて、引き続き石川さんの言葉を参考に考察してみたいと思います。

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※1:2020年・フリーランス協会調べ

※2:コロナ禍により「副業・兼業を行いたい」思いが強まった人は28.3%。テレワーク頻度が高くなるほど、副業・兼業の意向も高くなる傾向がみられる(図表3)。「テレワークできる会社・職種に転職したい」思いが強まった人は17.6%。(出典:第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査

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