タグ 特集:宇宙スタートアップ最前線

パリ拠点のInterstellar Lab、カリフォルニア州モハーヴェ砂漠にバイオーム網を構築へ——火星研究を活用、気候変動から生き延びる方法を探る

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Interstellar Lab は11月21日、モハーヴェ砂漠にバイオーム(生物群系)のネットワークを作り上げると発表した。これは人間が火星で生きる方法をさらに調査するために設計されたものであり、またこれらの知見は地球上にもっと持続可能なコミュニティを作るためにも応用される。 地球上に作られるこのビレッジは Experimental Bioregenerative Station(バイオ再生実験…

Interstellar Lab

Interstellar Lab は11月21日、モハーヴェ砂漠にバイオーム(生物群系)のネットワークを作り上げると発表した。これは人間が火星で生きる方法をさらに調査するために設計されたものであり、またこれらの知見は地球上にもっと持続可能なコミュニティを作るためにも応用される。

地球上に作られるこのビレッジは Experimental Bioregenerative Station(バイオ再生実験ステーション)、または EBios と呼ばれる。パリを拠点とする Interstellar Lab はこのプロジェクトを「再生可能な生存支援技術の閉じた循環系のビレッジ」と表現している。水処理やゴミ処理、食料生産といったシステムは、厳しい環境での生存に最適化するために、徹底的にいちから設計される。

人間が別の星で生きるための準備という高い目標があるが、同時に、いずれ直面するかもしれない気候変動の危機や根本的な限界に適応するという意図もある。

設立者兼 CEO の Barbara Belvisi 氏はこう言う。

私たちの星で何が起きているのかを知ることと宇宙探索には、強いつながりがあります。

この発表がされたのは、人間を火星に送るということについての興味が近年高まってきてからだった。2か月前、Elon Musk 氏はいずれ人間を月や火星に運ぶ Space X の Starship をお披露目した。また NASA も、いずれ火星に人間を送る方法を見つけようとする長期計画を持っている。

これらのミッションはまだ遥か未来のことだが、そういった環境で人間がどうやって生存するのかを理解することは、大いに研究者の興味を引いてもいる。Belvisi 氏はこの興味への支援を望んでおり、それをビジネスにしたいと考えている。

パリを拠点とする Hardware Club の共同設立者として最もよく知られている Belvisi 氏は、次に何をしたいのか明確なプランもないままに昨年同社を去った。旅行をしたりして休みを取った後、彼女は自分が持つ最も大きな2つの情熱、宇宙旅行と環境について考え始めた。2018年、彼女はその2つを結びつける方法を見つけるために Interstellar Lab を設立した。

現時点で同社は主に自己資金と、エンジェル投資家からの多少の寄付で運営している。Belvisi 氏はモハーヴェに適切な場所を4か所確認し、2020年2月までに不動産を購入できるよう、現在交渉中であると述べている。また設計と建築のために追加の資金調達を行うべく動いている。目標は最初の EBios ビレッジ建設を2021年に始めることだ。

完成すれば、EBios は一度に100人が暮らせるようになる。1年の半分は、施設は他の星での居住や地球上での持続可能な生活に関する研究者の仕事のために使われる。施設内のすべてのものはリサイクルされ再利用される。Belvisi 氏はこのプロジェクトを NASA と話し合っており、フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センター付近に2つめの EBios を建設することも模索している。

長期的に見て、もし地球上で研究して別のシステムの実現性を実際にテストすれば、火星もしくは月への持続可能な入植は現実的なものになるでしょう。

Southern California Commercial Spaceflight Initiative のディレクターであり、以前はホワイトハウスで NASA のリエゾンでもあった Greg Autry 氏は声明でこう述べている。

だがこの挑戦の一部では、研究プロジェクトがビジネスにもなっている。その目的のため、EBios は1年の残りの半分は旅行客向けとなり、究極的に持続可能なライフスタイルを体験する1週間を過ごしてもらうと Belvisi 氏は述べている。料金はまだ考慮中だが、現時点では1週間で3,000米ドルから6,000米ドルの間で計画しているという。

こういった経験にお金を払う人がいるという考えは、そんなに突飛なものでもない。イギリスでは2002年に Eden Project がオープンし、来訪者は一連のバイオームにより幅広い生息地域を体験でき、また環境や持続可能性について学ぶこともできる。より最近では、Astroland Space Agency がスペイン北部に火星での生活を再現するスポットをオープンした。参加者はオンラインでのトレーニングと、火星の環境を模して作られた洞窟での3日間の生活を合わせたパッケージに5,500米ドルを支払う。

もちろん、Interstellar のプロジェクトでもっとも思い起こされるものは、1990年代初頭の有名な Biosphere 2プロジェクトだ。アリゾナ砂漠に作られ、砂漠や熱帯雨林、湿地帯、草原といった生息地域を再現しようとしたバイオームである。食料を生産する区域もあった。科学者のチームがその中に2年間暮らしたが、食料生育のトラブル、動物の死亡、十分な量の酸素の維持といった数多の問題にぶつかった。

Belvisi 氏はその実験に参加したベテラン、ならびに現在ではアリゾナ大学の環境研究センターとなっている同施設で働いている研究者と連絡を取り合っていると述べている。

彼女はこれらの実験から学ぼうとしているが、Interstellar のプロジェクトは根本的な部分で違っているという。既存の生息地を模倣しようとするのではなく、EBios は閉じた循環系のビレッジの中で、生存に最適化するように徹底的に設計されているのだ。また、ある区画から別の区画へと汚染が拡大する可能性を防ぐために、それぞれの区画は独立することになる。

彼らの目標は地球のエコシステムを再現することでした。弊社の目標は、地球環境から完全に離れて、持続可能なやり方で、人間が生きていく方法を作り出すことです。(Belvisi 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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イーロン・マスク氏、宇宙空間からのツイートに成功

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ピックアップ:The satellites will work in tandem with ground stations that receive and convert the signal ニュースサマリー:SpaceX CEOのイーロン・マスク氏は火曜日、同社が開発する宇宙インターネット「Starlink」の衛星回線を通したツイートに成功した模様。本人も驚いていることから、実験的に投稿さ…

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ピックアップThe satellites will work in tandem with ground stations that receive and convert the signal

ニュースサマリー:SpaceX CEOのイーロン・マスク氏は火曜日、同社が開発する宇宙インターネット「Starlink」の衛星回線を通したツイートに成功した模様。本人も驚いていることから、実験的に投稿されたツイートだったことが伺える。

Starlinkのプロジェクト概要は、「宇宙空間に無人小型衛星を3万機飛ばし、地球を覆い尽くした上で、それらの小型衛星を通してブロードバンド通信を地上に提供する」というもの。

<参考記事>

今年5月、既に最初の60機の打ち上げには成功しており、今回のツイートは周回軌道に乗っている60機による通信を介して投稿されたものである。

2019-06-16 11.16.04

話題のポイント:Starlinkによるインターネットは、現在十分な通信速度や回線が担保されていない地域までカバーできるとされています。

これまで「Facebook」や「Google」が“世界中にインターネットを提供する”という構想でいくつかプロジェクトを立ち上げた過去がありますが、“宇宙から”のアプローチは、当面SpaceXにしかできない独自の打ち手でしょう。

また、60機の小型衛星の打ち上げ成功後、Starlinkはその衛星数を1万2,000から倍以上の3万に変更すると発表しています。

未だ追加で提案されている1万8,000機分は、アメリカ連邦通信委員会(FCC)の承認を受けてはいません。しかし、現在周回軌道に乗っている60機と今後数ヶ月・数年内に打ち上がる数百機のパフォーマンスが順調であれば、承認を簡単に受けることができると推測できます。

Starlinkの低コストなインターネット・インフラは世界を変えるでしょうか。絵空事のようなビジョンを持つまだ始まったばかりのプロジェクトではありますが、SpaceXなら可能なのではないかとも期待してしまいます。今後もその動向に注目していきたいと思います。

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宇宙産業向けロボティクススタートアップGITAI、シリーズAラウンドで410万米ドルを調達——スパイラルベンチャーズなどから

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宇宙産業向けロボティクススタートアップの GITAI は21日、シリーズ A ラウンドで410万米ドルを調達したことを明らかにした。このラウンドはスパイラルベンチャーズ(Spiral Ventures Japan)がリードインベスターを務め、DBJ Capital、電源開発、500 Startups Japan(現 Coral Capital)が参加した。 今回の投資家のうち、500 Startu…

GITAI が開発中のロボット6号機
Image credit: Gitai

宇宙産業向けロボティクススタートアップの GITAI は21日、シリーズ A ラウンドで410万米ドルを調達したことを明らかにした。このラウンドはスパイラルベンチャーズ(Spiral Ventures Japan)がリードインベスターを務め、DBJ Capital、電源開発、500 Startups Japan(現 Coral Capital)が参加した。

今回の投資家のうち、500 Startups Japan(当時)は2017年に実施したシードラウンド(125万米ドルを調達)に続いての参加。同社の創業以来の累積調達額は概算で6億円超となる。なお、シリーズ A ラウンドはクローズしておらず、年内の追加調達を検討しているとのことで、その場合の最大累計調達額は10億円規模となる模様だ。

同社では、今回の調達で得た資金を GITAI の宇宙用作業代替ロボットの開発費、2020年末に予定している国際宇宙ステーションへの実証実験機の打ち上げ費用に使うとしている。

GITAI は当初、異なる2地点にいるオペレータとロボットをつなぐテレイグジスタンスにフォーカスしていたが、2017年頃に宇宙分野への事業をシフトした。今年初めには、同社 の COO に、ヒューマノイド科学者・技術者で SCHAFT 創業者兼元 CEO の中西雄飛(なかにし・ゆうと)氏が就任したことを発表している。

via PR TIMES

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宇宙空間の建設会社「Archinaut」がNASAから7300万ドル調達ーー無重力空間3Dプリントで製造組み立てを可能に

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ピックアップ:Archinaut snags 73 million in NASA funding to 3D print giant spacecraft parts in orbit ニュースサマリー:宇宙スタートアップ「Made In Space」は7月14日、NASA(National Aeronautics and Space Administration)より7300万ドルの資金を獲得…

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ピックアップArchinaut snags 73 million in NASA funding to 3D print giant spacecraft parts in orbit

ニュースサマリー:宇宙スタートアップ「Made In Space」は7月14日、NASA(National Aeronautics and Space Administration)より7300万ドルの資金を獲得したと発表した。獲得資金は、同社が推し進める宇宙空間における3Dプリンティングプロジェクト「Archinaut」のNASAとの共同実証実験に用いられる。

同社は2010年創業。宇宙船やロボットを地球から運ぶのでなく、3Dプリンティングを利用し宇宙空間で製造することを目指しているプロジェクトだ。また、製造だけでなく組み立ても無重力空間にて行う機能を併せ持つ。

同社は2022年を目途に初号機を打ち上げ、実際に無重力状態における3Dプリンティングを用いた製造・組み立てを実施する予定としている。動画はNASAが公開した、同プロジェクトの詳細を説明したもの。

 

話題のポイント:宇宙空間で3Dプリンティングを利用、こう聞くといかに同技術が私たちの知らないところで急激に発展・実用化へ向けた動きが起きているか実感できます。例えば以下は、昨年3月にエルサルバドルに3Dプリンターを利用して建設された、正真正銘の「家」。建設費用はたったの4000ドルしか必要ないそうです。

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市場調査会社Market and Marketが公開した3Dプリンティングの市場規模や需要予想によると、2019年における3Dプリンティングの市場規模は15億ドルで、2024年には約3倍となる45億ドル規模と試算されています。年平均成長率(CAGR)にすると25%なんですが、なんとこの牽引要因がまさにこの宇宙空間における3Dプリンティング技術への需要なのだそうです。

Made In Space, Inc., successfully demonstrated  Archinaut’s  additive manufacturing — better known as 3D printing — and robotic assembly capability in a simulated space environment, a key milestone that paves the way to operate in space. Pictured above, Archinaut manufacturing and assembly unit enters the Thermal Vacuum Chamber (TVAC) at teammate Northrop Grumman’s facility in Redondo Beach, Calif. TVAC simulates the thermal and pressure environment of Low Earth Orbit.

おそらく2024年を目途に技術が需要に追いつくという算段なのでしょう。ちなみに「Archinaut」では今年3月に地球上にて人工的に作り出した無重力空間で3Dプリンティングを利用した製造・組み立てを無事成功させています。

 

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小型SAR衛星を開発するSynspective、シリーズAラウンドで86.7億円を資金調達——創業17ヶ月で累積調達額109億円、世界最速・国内最大規模

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小型 SAR(合成開口レーダー)衛星を開発する Synspective は26日、シリーズ A ラウンドで86.7億円を資金調達したと発表した。同社は昨年12月に、東京大学協創プラットフォーム(東大 IPC)やジャフコなどから3億円を調達しており、それに続くものと見られる。以前には孫泰蔵氏らが率いるディープテック向けファンド Abies Ventures などからも調達しており、累積調達額は109…

Synspective の創業者と投資家の皆さん
Image credit: Masaru Ikeda

小型 SAR(合成開口レーダー)衛星を開発する Synspective は26日、シリーズ A ラウンドで86.7億円を資金調達したと発表した。同社は昨年12月に、東京大学協創プラットフォーム(東大 IPC)やジャフコなどから3億円を調達しており、それに続くものと見られる。以前には孫泰蔵氏らが率いるディープテック向けファンド Abies Ventures などからも調達しており、累積調達額は109.1億円となる。宇宙開発コンサルティング会社シー・エス・ピー・ジャパンの調べによると、創業から1年5ヶ月での109.1億円調達は世界最速。

今回の調達に参加した投資家は次の通り(ジャフコ、東大 IPC、Abies Ventures は以前のラウンドに続くフォローオン出資)。なお、今回リードインベスターを務めたエースタートは今年初め、50億円の宇宙ビジネス特化ファンドを発表しており、宇宙ゴミを掃除する衛星スタートアップ Astroscale のシリーズ C ラウンドシリーズ D ラウンドにも参加している。

  • エースタート
  • 清水建設(東証:1803)
  • ジャフコ(東証:8595)
  • 東京大学協創プラットフォーム(東大 IPC)
  • 慶応イノベーション・イニシアティブ(KII)
  • Abies Ventures
  • みらい創造機構(東工大関連 VC ファンド)
  • 三菱 UFJ 信託銀行
  • 芙蓉総合リース(東証:8424)
  • 森トラスト
  • SBI インベストメント(SBI AI & Blockchain)
  • みずほキャピタル
Synspective 共同創業者で CEO の新井元行氏
Image credit: Masaru Ikeda

Synspective は2018年2月、新井元行氏(現 CEO)、白坂成功氏(現取締役、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)らにより設立。新井氏は米会計系コンサルティングファームに在職中に東京大学に入学。技術経営戦略学博士号を取得後、サウジアラビアの再エネ導入支援や経済産業省と日本企業の現地進出支援に従事した経験を持つ。

Synspective は、SAR 衛星コンステレーションシステムを構築、同システムから取得したデータと多様なデータを統合し、機械学習等を活用して情報抽出することで、顧客の課題に対するソリューションを提供。小型 SAR 衛星は技術的難易度が高く、また SAR データ処理も専門知識が必要になる。同社には、内閣府の革新的研究開発プログラム「ImPACT」の小型 SAR 衛星開発メンバーが深く関わっており、衛星開発と衛星画像解析の両方に研究チームとデータサイエンティストを配置することでこれを実現している。

提供するソリューションのユースケースとしては、取得した画像やデータ活用による鉱山資源開発、途上国のインフラ建設・不正の監視、防災および減災など。Synspective は2019年4月、フランスのロケット打ち上げ大手 Arianespace と SAR 衛星「StriX-α」の打ち上げ契約を締結したと発表している。

既存の SAR 衛星と Synspective の SAR 衛星「StriX」の比較
Image credit: Masaru Ikeda

26日の記者会見での新井氏の説明によれば、Synspective は小型 SAR 衛星を2020年までに1基、2022年までに6基、それ以降、25基の打ち上げを計画している。衛星6基の稼働によりアジアに99ある人口100万人都市の1日1回以上の観測、衛星25基の稼働により世界に292ある人口100万人都市の1日1回以上の観測が可能になるという。今回のファイナンスでは、2022年までに計画している小型 SAR 衛星6基の打ち上げとソリューション開発までの費用確保を意図している。

この分野のスタートアップとしては、日本国内では SAR 衛星開発の QPS 研究所、衛星データ分析の Sigma-SAR などがある。

<関連記事>

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SpaceXが描く「宇宙インターネット構想」Starlinkの全貌とは

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ピックアップ:SpaceX raises over $1 billion through two funding rounds ニュースサマリー:ここ半年、イーロンマスク氏率いる米国の宇宙ベンチャー「SpaceX」の異常な調達劇が続いている。 2018年の11月にはBank of Americaからデットで2億5000万ドル、同年12月に英国の投資企業ベイリー・ギフォードからシリーズJラウンドで4…

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ピックアップSpaceX raises over $1 billion through two funding rounds

ニュースサマリー:ここ半年、イーロンマスク氏率いる米国の宇宙ベンチャー「SpaceX」の異常な調達劇が続いている。

2018年の11月にはBank of Americaからデットで2億5000万ドル、同年12月に英国の投資企業ベイリー・ギフォードからシリーズJラウンドで4億8600万ドルを調達。そして2019年5月24日に新たなベンチャー・ラウンドでの5億3500万ドル調達を公表している。

これら調達の目的は主に宇宙ブロードバンド計画である「Starlink」へのリソース投入のためだ。Starlinkとは、地球を取り巻く宇宙空間に約2万機の小型衛星を配置し、それらの衛星からインターネット通信を提供するというこれまでに類を見ないプロジェクトのことである。

5月23日19時30分、Starlinkプロジェクトのはじめの一歩として、60基のStarlink用小型衛星を積み上げたFalcon9(SpaceXの主力ロケット)の打ち上げに成功した。以下の動画をご覧いただきたい。60基の衛星が宇宙空間へと旅立つ姿は、まるで銀河鉄道のうように美しく、魅力的だ。

credit : Marco Langbroek

話題のトピック:「新しいインターネット提供システムを作るために、宇宙に1万2000の小型衛星を飛ばし、そこから地球全体に通信を配給する」。そう聞いても、話があまりに現実世界とかけ離れているため、実感も分かなければ、にわかには信じがたいというのが筆者の第一印象でした。

そして実際にそう思われている読者の方も少なくないと考えています。そこで、本記事でStarlinkプロジェクトに使われている衛星・ロケットの仕組みや、直近のターゲット市場など、できる限り詳しいところまで解説します。なお、ここからは主にspaceflightnowの情報を参照した文章となります。

Starlinkの衛星は、非常にコンパクトに設計されており、なんと重さはわずか227kgしかありません。見た目は下記画像の通りで、翼のような1枚の太陽光パネルを広げ、エネルギーを獲得しながら、約4~5年地球の周りを周回し、やがて大気によって焼却されます。

2019-06-16 09.36.35
credit : Starlink

特徴はその重さ故に、低高度の軌道を確保している点です。軽さ故に地球の重力の力を受けづらく、低い高度でも正常に軌道を確保し続けることが可能です。通常の人工衛星は高度1000kmの軌道に沿っていますが、Starlinkの衛星は500km圏を保ちます。

地球に近いということはすなわち通信を地球に届けやすくなるという意味ですので、インターネット提供の低コスト化を実現しているということです。

そして高度が低いことによるもう一つのメリットとして、デブリ(宇宙ゴミ)の排出軽減があります。役目を終えたStarlink衛星は、いずれ大気圏に突入し燃え尽きます。その際、もともと低高度・コンパクトという特徴を持ったStarlink衛星は、一般的な人工衛星よりも早い段階で大気圏に入り、確実に燃えるきるようにできているため宇宙・地球環境に優しいのです。

では、これらの衛星を60機も積み上げて、宇宙の軌道に運び込んだロケットとはどんなものなのでしょうか。それがFalcon9という、SpaceXが独自に開発した着陸機能を搭載した新型ロケットです。以下は2016年のFalcon9の着陸時の映像ですが、打ち上がったロケットが、まるで逆再生かのように綺麗に着陸しています。

Starlink衛星60基は、このFalcon9の中に格納されていたのです。以下はFalconの中に敷き詰められた60基のStarlink衛星です。Falcon9はこの打ち上げ後も正常に着陸することができたと言います。一般的にロケットは使い捨てであり、ゴミが海に落ちたりといったデメリットがあります。衛星だけでなく、SpacaXはロケットもエコにできているようです。

スクリーンショット 2019-06-16 12.11.34.png
credit : Elon Musk

SpaceXは、2019年内に2~6回の打ち上げを想定しており、2020年にはそのペースを加速させ、計720基ほどの衛星を周回軌道に載せることを目標にしています。spaceflightnowによれば次の6回の打ち上げが終わり次第、アメリカ北部及びカナダでのサービス提供を計画していると言います。ちなみに、同社はすでにアメリカ連邦通信委員会(FCC)の承認を受けてプロジェクトを実施しているとのことです。

Spaceflowの記事のなかで、イーロンマスクは以下のようにコメントしています。

Starlinkは、SpaceXのさらなるロケット・宇宙船開発のための資本を生み出す手段であり、火星や月に自立したコミュニティを作るための鍵となるステップです。私はStarlinkで得た利益を宇宙船開発に繋げることができると信じています。

この発言からも、イーロンマスク にとってのStarlinkプロジェクトは、彼が以前から掲げている人類火星移住計画の通過点に過ぎないということが伝わってきます。

SpaceXが創業したのは2002年であり、今年で創業17年を迎えるということになりますが、思えば同社は国家の独占領域であったロケット事業を民間で初めて成功させた企業です。

その創業者であるマスク氏はその後電気自動車やハイパーループといった革新的な事業をいくつも立ち上げた実績を持っています。したがって、今回のStarlinkプロジェクトが軌道に乗り始めるのも、案外時間の問題なのかもしれません。

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Amazonの衛星プロジェクトから考える次なる宇宙事業ーーロケット打ち上げ基地のSaaS化を狙え

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ピックアップ: Amazon plans network of satellites for high-speed broadband ニュースサマリー : 4月初旬、Amazonが高速インターネットサービス構築のため約3,000機の衛星を打ち上げるネットワーク計画「プロジェクト・カイパー」を公式に認めた。 本プロジェクトはインターネットアクセスが難しい国々の人や、待ち時間の少ない高速ブロードバン…

ピックアップ: Amazon plans network of satellites for high-speed broadband

ニュースサマリー : 4月初旬、Amazonが高速インターネットサービス構築のため約3,000機の衛星を打ち上げるネットワーク計画「プロジェクト・カイパー」を公式に認めた。

本プロジェクトはインターネットアクセスが難しい国々の人や、待ち時間の少ない高速ブロードバンド需要を持つ人向けのもの。低軌道周回衛星が打ち上げられるという。

競合にはElon Musk創業のロケット会社「SpaceX」やAirbusの支援を受けた「OneWeb」、カナダ拠点の「Telesat」などが挙げられる。事実、2019年2月にはOneWebが6機の衛星を打ち上げを行った。

なかでもSpaceXやTelesatはAmazon同様に低軌道の小型周回衛星を数百・数千ほど打ち上げてデータネットワークを構築するプロジェクトにすでに取り組んでいる。

話題のポイント : ここからはAmazonの衛星プロジェクトを基に新たな宇宙ビジネスを考察していきます。キーワードは”打ち上げ基地のSaaS化“です。

Amazonにとって4月は水面下で大きな案件が進んでいることが判明した月でした。本件だけではなく米国国防総省が進める1兆円規模のエンタープライズ・クラウドプロジェクト「JEDI」の契約最終候補の2社にMicrosoftと残ったと報じられています

クラウドサービスを支えるのは大容量のデータストレージ拠点と、世界中どこからでも接続できる高速インターネットサービスの両方と言えるでしょう。この点、Amazonや他社宇宙ベンチャーは後者の課題に挑んでいることが大きなトレンドであると認識できます。

次世代インターネット通信網構築のための宇宙開発の波はアジアにもすぐさまやってくるはずです。

中国の大手企業「バイドゥー」「アリババ」「テンセント」の3社が米国企業と拮抗するように衛星打ち上げ事業を仕掛けることが予想されます。後発するように日本の「ソフトバンク」「楽天」「LINE」が参入する可能性も考えられます(ソフトバンクはOneWebに出資済み)。

宇宙ベンチャー企業の参入も盛んです。たとえば小型人工衛星を開発する「Rocket Lab」「Firefly」「Vector」は低価格の衛星を軌道上に乗せるロケット実験の真っ最中。

このような少し先の未来のトレンドを逆算すると2つのことが言えそうです。

1つは米国大手に追随する形で多数の企業が打ち上げ事業に参入する未来を考えると、打ち上げ基地の需要が高まることが予想される。2つ目はロケット打ち上げに次々と成功した世界では、どのロケット企業のサービスを使って衛星を立ち上げるかという選択肢が増える課題が発生する。

衛星の小型化と開発低コスト化が進み、宇宙へのアクセスが容易になれば各大手企業がこぞって衛星の打ち上げを希望する未来がやってくるはずです。この世界では打ち上げ基地のSaaS化 – Satellite as a Service – が新たなコンセプトとなるでしょう。

言い換えれば、世界のどこの打ち上げ基地を通じて、どの企業の打ち上げロケットを使い衛星を打ち上げるのかを手軽に予約できるプラットフォームの登場が期待されると考えられます。

現状、ロケット打ち上げには綿密な計画と打ち上げ予定日のだいぶ前にステーションの予約が必要となりますが、こうした従来手法がディスラプトされる可能性が考えられるのです。

市場では低コストな衛星開発を行うスタートアップがしのぎを削っていますが、先を見越したプラットフォームビジネスを考えてみると面白い展開を見せるかもしれません。ロケット開発コストは一切かからず、打ち上げ基地をネットワーク化して法人向けに卸すシンプルなモデルとなるでしょう。一回のブッキング手数料で多額の売上を得られるため、市場シェアを独占できれば収益化を大きく期待できます。

ロケット開発には手を伸ばせる企業は数少なく、技術力がない限りそもそも事業は立ち上がりません。このジレンマにはまることなく、WeWorkに代表される”固定資産のSaaS化”の考えを打ち上げ基地に適用することで新たな商機を見出せると感じます。

日本の宇宙ベンチャー企業も北海道の広大な土地を利用した打ち上げ基地を切り口に、アジア圏の基地をネットワーク化させるだけで新たなビジネスモデルを紡ぎ出せるかもしれません。ここまで述べてきたようにAmazonの事業から見えるトレンドを切り口に次なるスタートアップの可能性を十分に考察できるでしょう。

Image Credit by NASA Goddard Space FligRobert ScobleWILL POWERPaulo O

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宇宙ゴミを掃除するAstroscale、シリーズDのエクステンションラウンドで3,000万ドルを調達——米国に進出へ

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宇宙活動の⻑期的持続可能性を念頭に、宇宙ゴミの除去サービスを提供する Astroscale は、コロラド州デンバーに新しいオフィスを開設したと発表した。この戦略的なアメリカ拠点は、同社のシンガポール、日本、イギリス拠点に次ぐものだ。 新オフィスのオープニングと合わせ、Astroscale はシリーズ D のエクステンションラウンドで3,000万米ドルを追加調達した。このラウンドの投資家は、INCJ…

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Image credit: Astroscale

宇宙活動の⻑期的持続可能性を念頭に、宇宙ゴミの除去サービスを提供する Astroscale は、コロラド州デンバーに新しいオフィスを開設したと発表した。この戦略的なアメリカ拠点は、同社のシンガポール、日本、イギリス拠点に次ぐものだ。

新オフィスのオープニングと合わせ、Astroscale はシリーズ D のエクステンションラウンドで3,000万米ドルを追加調達した。このラウンドの投資家は、INCJ、ジャパンコインベスト投資事業有限責任組合2号(三井住友トラストインベストメント)、スペース・エースタート1号投資事業有限責任組合(エースタート)、協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(東大 IPC)、エンジェル投資家の平尾丈氏。

今回の追加調達により、Astroscale のシリーズ D ラウンドの調達合計額は8,000万米ドルに達し、累積調達額は1億3,200万米ドルに達した。

<関連記事>

Astroscale の創業者で CEO の岡田光信氏は、次のように述べている(以下、日本語原文ママ)

アストロスケールにとって、米国拠点の開設は、従業員や顧客にとっても多くの恩恵をもたらす、非常に重要なマイルストーンであると捉えています。米国はこれまで、宇宙交通管制(STM)や軌道上デブリの低減に積極的に取り組んできました。米国に拠点を構えることで、グローバル課題であるデブリ問題について、政策立案者や業界リーダーとの密なコミュニケーションが可能となり、持続的な解決策に向けて考察を深められると考えています。

Astroscale アメリカは事業開発と技術成長に特化し、マネージングディレクターの Ron Lopez 氏がリードする予定。Lopez 氏は、アメリカ空軍やボーイングで勤務するなど、宇宙航空分野で25年を超える政府および業界での実績があり、Honeywell Aerospace では防衛宇宙分野のアジア太平洋チームをリードしてきた。

同社のグローバル経営陣は、その他、NASA のワシントンで約15年の勤務経験のある GCOO(グローバル最高執行責任者)の Chris Blackerby 氏のほか、グローバルスタートアップ数社で金融・人事チームを率いた経験を持つCFAO(最高財務責任者兼最高総務責任者)の牧野愛氏、航空宇宙業界の専門家で、特にヨーロッパの宇宙業界に詳しい CCO(最高営業責任者)の John Auburn 氏らで構成されている。

【via e27】 @E27co

【原文】

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宇宙産業向けロボティクススタートアップGITAI、スカパーJSATと業務提携検討・JAXAと共同研究契約を締結——宇宙関連事業や共同研究を加速

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ロボティクススタートアップ の GITAI に元 SCHAFT の中西雄飛氏がジョインしたのをお伝えしてから2週間、その後、同社には宇宙関連事業者との提携話が相次いでいるようだ。 先週には、衛星通信大手のスカパー JSAT(東証:9412)との業務提携検討に関する覚書締結が発表された。スカパー JSAT は17機の通信衛星を保有するアジア最大の衛星オペレータだ。この業務提携検討の中で、具体的に何が…

ロボティクススタートアップ の GITAI に元 SCHAFT の中西雄飛氏がジョインしたのをお伝えしてから2週間、その後、同社には宇宙関連事業者との提携話が相次いでいるようだ。

宇宙ロボットの遠隔操作のための通信実験の検証
Image credit: Gitai

先週には、衛星通信大手のスカパー JSAT(東証:9412)との業務提携検討に関する覚書締結が発表された。スカパー JSAT は17機の通信衛星を保有するアジア最大の衛星オペレータだ。この業務提携検討の中で、具体的に何が進められるかは明らかにされていないが、GITAI が提供可能な機能と、衛星運用業界が直面する課題を見ていくと、いくつかの仮説が考えられる。

一つは、衛星の軌道投入の方法として一般的な地上からのロケットによる直打ち上げだけでなく、国際宇宙ステーションなどからの衛星放出を行う方法。打上げ環境条件が厳しくない、打上げ機会が多いなどのメリットがある。GITAI の遠隔制御ロボットと組み合わせれば、こういった衛星の放出前チェックアウト作業や放出作業も、宇宙飛行士を介在させずに行える可能性がある。

一方、人工衛星の寿命は概ね、軌道修正のために必要な薬剤の搭載可能量と、太陽電池やバッテリーの寿命に依存するところが大きいとされる。地球の重力圏にある静止衛星は高度が低下すると静止状態を維持できなくなるため、これを補正するために定期的に軌道修正を行う必要があるが、そのための薬剤の搭載可能量には上限がある。太陽電池は宇宙放射線の影響を受けやすく、バッテリーは充放電を繰り返しているため、いずれも数年程度で寿命を迎えてしまう。

寿命を終えた衛星を捕獲し、宇宙で薬剤の再充填や部品の交換、宇宙空間への再放出が一般化されれば、衛星の寿命は圧倒的に伸ばせるようになる。これまで寿命を終えた衛星は、軌道制御して意図的に大気圏突入させ焼却処分するのが一般的だったが、ロボットを使った衛星の延命措置が実用的になれば、衛星運用の初期コストや運営コストも圧倒的に改善されるようになるだろう。

JAXA での GITAI ロボットの実証実験
Image credit: Gitai

また、GITAI は25日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究契約の締結を発表した。

共同研究契約の締結に先立ち、GITAI は JAXA 筑波宇宙センターの国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟模擬フィールドで、ロボットによる宇宙飛行士の作業代替実験を実施したという。この実験では、スイッチ操作、工具操作、柔軟物操作、負荷の高い作業など汎用的な作業を1台のロボットで実施できる性能が求められる。

実験には複数のロボティクス企業が参加したが、GITAI のロボットはその中でも高いスコア(18の作業タスクのうち13に成功=72%)を獲得。今回の宇宙飛行士代替の適用可能性を評価するための共同研究契約締結に至った。この共同研究が目指すところは、先日の記事に書いた通りだ。JAXA は「きぼう」からの衛星放出事業も促進しており、スカパー JSAT との提携と相まって、宇宙関連ビジネスの効率性向上やコストダウンに寄与することが期待される。

<参考文献>

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元SCHAFTの中西雄飛氏、宇宙産業向けロボティクススタートアップGITAIのCOOに就任

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テレイグジスタンス(遠隔存在感)分野のロボティクススタートアップ GITAI(旧称 MacroSpace)は11日、同社 の COO に、ヒューマノイド科学者・技術者で SCHAFT 創業者兼元 CEO の中西雄飛(なかにし・ゆうと)氏が就任したことを発表した。 SCHAFT は2012年に設立。 TomyK や常石パートナーズから出資を受け、2013年にDARPA(アメリカ国防総省国防高等研究計…

GITAI のチーム。後列右から3人目が CEO の中ノ瀬翔氏。前列中央が COO の中西雄飛氏。
Image credit: Gitai

テレイグジスタンス(遠隔存在感)分野のロボティクススタートアップ GITAI(旧称 MacroSpace)は11日、同社 の COO に、ヒューマノイド科学者・技術者で SCHAFT 創業者兼元 CEO の中西雄飛(なかにし・ゆうと)氏が就任したことを発表した。

SCHAFT は2012年に設立。 TomyK や常石パートナーズから出資を受け、2013年にDARPA(アメリカ国防総省国防高等研究計画局)予選で優勝。後に Google(当時)に買収されたロボティクススタートアップだ。SCHAFT はその後、Google の持株会社 Alphabet 傘下の新技術開発会社 X(旧称 Google X)でロボット開発を続けていたが、昨年11月に SCHAFT のプロジェクトをシャットダウンしていた。

GITAI は当初、異なる2地点にいるオペレータとロボットをつなぐテレイグジスタンスにフォーカスしていた。同社が2017年に TECH LAB PAAK 第9期に参加した頃からは、宇宙分野への事業シフトを図りつつあったようだ。

中西雄飛氏

国際宇宙ステーション(ISS)の運用にあたっては、累積ベースで世界全体で数兆円以上、日本単独でも数千億円以上のコストが費やされている。そのうち、約半分くらいは宇宙飛行士の養成、宇宙飛行士の地球〜ISS 間の往来、宇宙飛行士の生活を維持するための必要物資の運搬にかかるコストだ。

宇宙飛行士も人間である以上、その活動時間や活動範囲には制約がある。無重力状態や宇宙放射線の影響も無視できないので、一定期間のミッションを経た宇宙飛行士は地球に帰還する必要があるし、また、ISS においてはさまざまな実験を行うわけだが、宇宙飛行士によって専門分野が異なるため、あらゆる分野の実験を単独で実施するのにも限界があるだろう。

ISS にロボットを配置して地球上から遠隔制御することができれば、ISS に乗り込む宇宙飛行士の人数を抑えることもできる。ISS のロボットを操作するオペレータをタイムシフトで変えれば、あらゆる分野の専門家がそれぞれ自分の実施したい実験を遠隔で、しかも24時間単位で運用し続けることができる。既に存在する莫大なコストのかかる産業の一部をロボットで代替できるならば、そこにビジネスが創出できるかもしれない。GITAI の創業者でCEO の中ノ瀬翔氏はそう考えたようだ。

アメリカのトランプ政権が ISS 運用の民間シフト(NASA から宇宙スタートアップへの運営者転換)の方針を打ち出したことで、アメリカで宇宙スタートアップが勢いづいていることは顕著な流れだ。ISS の運用コストの8割を拠出するアメリカの動きにならう形で、日本も JAXA を中心に、ISS の実験モジュール「きぼう」の運用などで宇宙スタートアップとの協業を模索しつつある。

例えば、今まで400億円かかっていた ISS のミッションが40億円で運用できるようになるとする。この場合、ロボットが多少値の張るものであっても、ミッション全体のコスト削減ツールと位置付けられるので、ロボットの費用は許容できるだろう。(中略)

ロボットが自律的に動作できるようになるまでには、まだ少し時間がかかるだろうし、精細で低遅延の映像と操作性でテレイグジスタンスを提供できれば、十分に価値を提供できるのではないか。(中ノ瀬氏)

B 向けのロボットであれ、C 向けのロボットであれ、一般普及に対応できる量産レベルに持っていくには、圧倒的なコスト圧縮が求められる。実のところ、X が SCHAFT の運営継続を断念した背景にも、そのような理由があるようだ。それとは対照的に、宇宙ミッション向けのテレイグジスタンスとしてのロボットであれば、1台でも売れれば、スタートアップがしばらく経営を継続できるくらいの利益は出すことができるだろう。

GITAI が開発中のロボット6号機
Image credit: Gitai

SCHAFT の開発で、Google が特に重視していたのはビジネスとして成立させること。二足歩行のロボットで、いかにビジネスできるか、ということに焦点を置いていたので、そのためには、低コストで、低消費電力で、完全自律化させることをテーマにやっていた。(中略)

低コストにするということは、ロボット1台あたりの利益率は低くなるので量産化が必要になるが、完全自律化されたロボットがビジネス現場に到達するには、まだまだ時間がかかる。Google は5年間やらせてくれたし、やれるところまでやった感はあるけれど、そのような判断から区切りをつけたことになる。(中西氏)

中西氏のそれまでのコスト追求の世界とは対照的に、1台でも売れれば利益が出せる宇宙用代替作業のロボット市場。しかも、最初から完全自律化しないといけないという制約も無いため、中西氏は GITAI でヒューマノイド技術者としての知見を存分に発揮できると判断したようだ。彼によれば、完全自律を目指すロボットは、まだ人間の性能や人間と同じスピードで動かすところまでは、ハードウェアもソフトウェアも追いついていないのが現状だという。

ロボット研究者としては、他の誰かがこの分野で成し得ても、どこかで認めたくはないと思っている(笑)。でも、やりたいことを実現できて、それでお金をもらえているところがあれば、そこがエラい。(完全自律じゃないと)いろんな人からなじられようが、そういうのは放っておいて(笑)、ちゃんと使われるロボットを世の中に出したいと思った。

SCHAFT では人間の下半身の動作を再現するロボット、GITAI で人間の上半身の動作の多くを再現しているロボットを開発する中西氏。同じヒューマノイド科学者のもと、別々のスタートアップが生み出したテクノロジーが Google に買収され、名実ともに上半身と下半身が合体する日も、ひょっとしたら夢物語ではないかもしれない。

GITAI には、パーソナルモビリティ「WHILL」のメカニカルエンジニアだった上月豊隆氏(現 CTO)や、SCHAFT でソフトウェアエンジニアだった植田亮平氏(現ソフトウェア担当 VP)など、中西氏と同じく東京大学大学院情報システム工学研究室(JSK)出身の技術者が複数名在籍している。GITAI はいつの間にか、世界のロボティクス権威が集まる集団へと変貌を遂げていた。

GITAI は2016年9月にシードラウンドで Skyland Ventures から1,500万円を調達、2017年12月にシードラウンドで ANRI、500 Startups Japan(当時)から125万米ドルを資金調達している。

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