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「縦と横」に拡大する国内スタートアップ・エコシステム

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近年のテック系スタートアップのエコシステムを考える上で大切な要素として(1)資金(2)人(3)知識、があります。製造業中心だった時代と比較して、資産はソフトウェアが中心であり、人が資金で得た時間を使って新たなサービスを生み出す、といった具合です。 ポイントは知識です。この10年間で起業のエコシステムには様々なフレームワークが生まれました。2012年前後に出たエリック・リース氏の「リーン・スタートア…

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THE SEEDが京都にオープンさせたインキュベーション施設にて

近年のテック系スタートアップのエコシステムを考える上で大切な要素として(1)資金(2)人(3)知識、があります。製造業中心だった時代と比較して、資産はソフトウェアが中心であり、人が資金で得た時間を使って新たなサービスを生み出す、といった具合です。

ポイントは知識です。この10年間で起業のエコシステムには様々なフレームワークが生まれました。2012年前後に出たエリック・リース氏の「リーン・スタートアップ」をはじめとする戦略フレームワークもそうですし、磯崎哲也先生の起業のファイナンスやJ-KISSといった資本政策、Open Network Labが開始した日本版YCスタイルのアクセラレーション・プログラム、リファラル採用やOKRのような採用・組織論などなどなど。

こういったスタートアップに関する知識・経験のフレームワークは、ゼロからスクラッチで起業するよりも格段に生産能力を上げ、確実に参加する起業家の打席回数を増やしています。

この知と経験の共有に大きな役割を果たしているのが投資家・起業家コミュニティです。個人投資家やVC単体での勉強会ももちろん、大型の招待制カンファレンスなど、大小様々なコミュニティがイベントなどを通じて「知の共有」を実施しています。本当に増えました。

  • 特定個人やVC・業界団体に紐づく完全クローズド
  • 応募選考などのフィルタで参加できるセミクローズド
  • メディア主催などのオープン

パターンとしてはおおよそこのような分類ができるのですが、最近になってまた新しいタイプのコミュニティが増えています。キーワードは「縦(レイヤー)」と「横(エリア)」の拡大です。

地域特化のシード支援

昨日、シードに特化したVCの「THE SEED」が京都にインキュベーション拠点を開設したことを発表していました。ファンドを代表する廣澤太紀さんは92年生まれの若手キャピタリストの一人で、狙いは関西のスタートアップ・シーンを作ることです。

現在、京都には京都大学をはじめとする優秀な学生コミュニティがあり、数年前に廣澤さんが起業に興味のある学生を集めるためTwitterで呼び掛けたところ、あっという間に200名近くの学生が集まったそうです。

実は関西には大阪を中心に起業を支援しようという動きはずっとありました。例えば今年で7回目を迎える「Hack Osaka」などもその一つです。大阪市を中心に海外スタートアップコミュニティとの連携を模索した活動で、また大阪市は今年9月にスタートアップ拠点を目指すための官民組織を立ち上げるという発表もしています。

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福岡拠点のF Venturesが開催する「TORYUMON」も学生中心

大阪市がやや行政色が強いのに対し、ボトムアップ型で成功しているのが福岡です。2012年には現地の起業コミュニティイベント「明星和楽(※)」を中心に福岡市と協力して「スタートアップ都市・ふくおか」宣言を公表。その後、小学校跡地にコミュニティスペースのFukuoka Growth Nextを立ち上げ、地方都市におけるスタートアップコミュニティのノード的役割を果たすことに成功しました。

この福岡の地でTHE SEEDよりも先に地域スタートアップ支援を手掛けたのがF Venturesです。代表の両角将太さんも88年生まれの若手キャピタリストの一人で、ちょうど今月は6回目となる学生向けのスタートアップイベント「TORYUMON」を開催していました。地域におけるシード投資家主導のボトムアップイベントではモデルケースになりつつあります。

この活動が成功するかどうかは際立った事例がでるかどうかにかかっています。例えば福岡は孫正義さん・泰蔵さん兄弟をはじめとするビッグネームから家入一真さんのようなお兄さん起業家、地元に根ざして世界を目指すヌーラボの橋本正徳さんなど、バイネームを多く輩出しています。廣澤さんも京都でこのような際立った事例を生み出せればとお話していました。

若手のゆるやかな共同戦線

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複数の若手VC支援先をベテラン勢がメンタリング(提供:Startup Investor Track)

エリアを「横つながり」の拡大とみるならば、「縦のつながり」は年代やレイヤーによって表現できます。先日、都内で開催されていた投資家グループによるスタートアップのマッチングイベントはやや変わった趣向のものでした。主催したのは「Startup Investor Track(SIT)」という投資家の任意団体です。

<参考記事>

集まった投資家は独立系VCや、事業会社のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の代表クラスで、ここに複数の若手VCが数社集まってその支援先を紹介する、という内容でした。一度に複数VC同士が絡み合って支援先を共有できるので効率がよく、実際、とあるVCでは数社気になるスタートアップと出会えたそうです。

なんとなくありそうな集まりに見えて、通常、こういった投資家向けの支援先紹介イベントは特定VC主催のものが多く、単独で実施するケースがほとんどです。当たり前ですが、自社で投資している支援先「以外」のスタートアップを懇意にしているVCに紹介する必要はないわけです。

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非公開で実施される投資家向けのピッチ

囲い込みではなく、ゆるやかにオープンな共同戦線が張られているようになった背景に「年代」があります。実はスタートアップ投資の現場では年代は結構重要な要素で、例えば学生起業をする人には、同じ目線を持った同年代のキャピタリストの方が相性がよい、という傾向があります。前述したTHE SEEDやF Venturesもそうですが、こういった若手のVCが増えることで起業ルーキーの層が厚くなり、それを支援するベテラン投資家たち、という構図が生まれつつあるのです。

また、前述したTHE SEEDの廣澤さんもこの会に参加していて、若手を中心にとある意識の変化があると教えてくれました。それがゆるやかな合従連衡の考え方です。

国内でスタートアップ投資が始まった2010年代初頭と異なり、今はもう先行している事業が大きく成長している時代に入っています。この競争環境にあって支援先が勝ち抜くためには、単独での事業拡大はもちろんながら、売・買収といった合従連衡は避けられない状況にあるのです。

欧米で日常的に発生している人材買収(Acq-hire)がよい例で、こういった未来を考えた時、囲い込みよりも最終的に自分たちの年代で大きな成功者が生まれることの方に魅力を感じる、としていた廣澤さんの考え方はひとつの正解に思えます。

日本にスタートアップ・ブームが発生して約10年、エコシステムは随分と成長をしました。非製造業で1ラウンド・100億円を集める未公開企業も生まれ、上場後に1000億円の評価を市場から受ける例も出てきています。エコシステムの成長はあまり表立ったものではありませんが、確実に進化し、これらの結果を下支えしているのです。

※情報開示:筆者は明星和楽のイベント企画に関わった一人です。現在は現地コミュニティにて運営されており関係性は薄くなっていますが、念の為開示しておきます。

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懸念広がる「スタートアップの資金繰り」ーー外為法関連法令の改正にVCら有志が声明を発表

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国内の独立系ベンチャーキャピタルを中心とする有志は8月29日、「外為法に関する規制強化に対する表明」を公表した。5月に発表された「外為法に基づく対内直接投資(外国投資家による非上場株式の取得)に関する告示」に関するもので、8月31日から外国投資家が対内直接投資を行う場合、これまでよりも広い範囲で当局に対して事前の届出を行う必要が発生する。 声明を出したのは今月発足した勉強会「Startup Inv…

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Photo by Pixabay on Pexels.com

国内の独立系ベンチャーキャピタルを中心とする有志は8月29日、「外為法に関する規制強化に対する表明」を公表した。5月に発表された「外為法に基づく対内直接投資(外国投資家による非上場株式の取得)に関する告示」に関するもので、8月31日から外国投資家が対内直接投資を行う場合、これまでよりも広い範囲で当局に対して事前の届出を行う必要が発生する。

声明を出したのは今月発足した勉強会「Startup Investor Track(以下、SIT)」に参加する一部有志ら数社。SITはスタートアップを支援する投資家らがノウハウ共有など目的に設立した任意のコミュニティ団体。独立系のベンチャーキャピタル28社および10名の個人投資家が初期メンバーとして参加している。

今回の改正で事前届を要する業種が拡大したことで、これまで対象ではなかったスタートアップ企業が届出の範囲となる可能性が持ち上がっている。改正内容では事前届を受理した日から原則30日間は投資実行が禁止されることになるため、資金繰りに猶予のない企業の死活問題に発展する可能性が指摘されている。

同声明では告示の運用上の工夫等によって、これまで通りの迅速な投資が継続できるよう期待を表明している。

<関連記事>

<公表声明全文>

外為法に関する規制強化に対する表明

令和元年5月27日に、外為法に基づく対内直接投資(外国投資家による非上場株式の取得)に関する告示が発表されました。令和元年8月1日から適用されている改正告示には、経過措置が設けられていますが、令和元年8月31日以降に外国投資家が対内直接投資を行う場合、外国投資家は、これまでよりも広い範囲で当局に対して事前の届出を行う必要があります。

事前届出が必要となる特定の業種については、我が国の安全保障の観点から、これまでにも何度か規制対象が拡大されてきましたが、今般の改正告示により、国内の大半のベンチャー企業が関わっている、ソフトウェア開発やインターネットを用いた事業が、事前届出の対象業種に含まれることになりました。

なお、外国投資家の定義には、日本の上場企業が日本法に基づいて組成したファンドだが、当該上場企業の外国人株主比率が50%を超えるものが含まれ、日本のベンチャーキャピタルの多くが、外国投資家に何等か関係する状況になっています。

従来から、外為法は、外国投資家が対内直接投資を行うに際し、当該投資が特定の業種に係る場合に、当局に対する事前の届出を要求しており、我が国の安全保障はじめ重要な国益の維持発展に寄与してきていたと承知しております。

今般の外為法に関する改正告示につきましては、その趣旨として、以下の内容が掲げられています。

「近年、サイバーセキュリティーの確保の重要性が高まっていることなどを踏まえ、安全保障上重要な技術の流出や、我が国の防衛生産・技術基盤の棄損など、我が国の安全保障に重大な影響を及ぼす事態を生じることを適切に防止する観点」

我々は、ベンチャー企業への投資や育成に関わる立場として、我が国の安全保障等への重大な影響を防止するとの法令改正の趣旨に、大いに賛同しております。

他方、我々が支援しているベンチャー企業の大半は、我が国にイノベーションを起こし、我が国経済の将来を活性化し、国益を最大化させるとの大志を抱きながら、運転資金が途切れ、事業を閉鎖せざるを得ないリスクを常に抱えています。そのため、ベンチャー企業に対する資金提供者から迅速な投資意思決定を引き出し、運転資金を確保することが死活的に重要となっています。

我々ベンチャー投資に携わる者どもとしても、こうした適時的確な投資を行うことが、日本の国益の増進に適うものと確信し、活動を進めてきております。

しかしながら、今般の外為法に関する改正告示に基づいて事前届を要する業種が拡大したことにより、これまで事前届を要さず適時迅速な投資ができていたベンチャー企業に対しても、事前届が必要となり、期間短縮への配慮があるとは承知しつつも事前届の受理日から原則30日間は投資実行が禁止されることとなりました。

これにより、未来のイノベーションをけん引し、日本の国益を増進する主体の一つとなりうる有望なベンチャー企業が、適時迅速な資金調達ができなくなり、倒産の憂き目にあうケースが出てくる可能性が懸念されています。

実際に、我々ベンチャーキャピタルや個人投資家として、法令諸規則にしたがい8月以前から準備を進めてきたものの、実際の投資の機会が間近に迫った中で対応を行おうとすると、どうしても申請後から承諾受領までの期間が迅速性を損うことが、現実に起こりうるとの認識を強くしつつあります。

我々ベンチャー投資に関わる者どもとしては、今般の外為法に関する改正告示の趣旨に完全に立脚しながらも、同時にイノベーション促進による社会課題解決や経済の活性化といった国益の増進が図られるよう、改正告示の運用上の工夫等がなされることにより、適時かつ迅速な国内ベンチャー企業への投資が引き続き実現されるよう、強く期待しております。

先日開催したSITにおいても、本件議論がなされ、その際に、上記懸念と期待が示されたことを踏まえて、今回有志により本件表明をするに至ったものでございます。

国内独立系ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家から構成されるStartup Investor Track(SIT)有志

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国内主要VCとエンジェルが集結「Startup Investor Track」ーー世界規模のスタートアップ創出に向けた新コミュニティがキックオフ #SIT

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国内の主要ベンチャーキャピタルおよび個人投資家(エンジェル)らで組織される「Startup Investor Track(SIT)」の運営事務局は8月27日、都内でキックオフイベントとなる勉強会を開催した。運営事務局の代表幹事にはグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏、幹事メンバーにEastVenturesの金子剛士氏、スカイランドベンチャーズの木下慶彦氏、ANRIの佐俣アンリ氏、エンジェル…

国内の主要ベンチャーキャピタルおよび個人投資家(エンジェル)らで組織される「Startup Investor Track(SIT)」の運営事務局は8月27日、都内でキックオフイベントとなる勉強会を開催した。運営事務局の代表幹事にはグローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏、幹事メンバーにEastVenturesの金子剛士氏、スカイランドベンチャーズの木下慶彦氏、ANRIの佐俣アンリ氏、エンジェル投資家としてChomp CEOの小林清剛氏らが名を連ねた。

SITは国内を中心とするスタートアップがグローバル規模で競争力をつけることを目的に、それを支えるベンチャーキャピタルおよび個人投資家たちがノウハウ共有などを通じて繋がる任意のコミュニティ団体。独立系のベンチャーキャピタル28社および10名の個人投資家が初期メンバーとして参加を表明している。

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SITキックオフに参加したキャピタリスト・エンジェルの方々

具体的にはYCombinatorの「SAFE」のようなシード・アーリー期の投資契約のテンプレート推進、VC法務や財務知識の勉強会、VC間での出資先相互紹介、海外VCの動向調査、LP候補企業とのネットワーキングなど、VC業界全体の底上げに繋がる活動を推進するとしている。

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グローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏

会の冒頭、登壇した代表幹事の百合本氏はSITの設立にあたり、これからやってくると噂される「スタートアップ冬」の時代を乗り越えるためにはリスクが取れる独立系VCの活躍が不可欠と語る。

「(これからスタートアップにとって)深い谷がやってくる可能性がある。ここでオーナーシップをもってリスクを取れる独立系VCがエコシステムの健全な発展に貢献すべき。また、新しいVCファームを作られた若い方が起業しやすい環境、さらにその後、先輩たちがサポートする必要もある」。

そもそもこのコミュニティは若手VCを中心とする勉強会の提案から始まったそうだ。幹事メンバーとして登壇した金子氏は立ち上げの経緯をこう振り返った。

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EastVenturesの金子剛士氏

「元々この勉強会は百合本さんを若手の独立系ベンチャーキャピタリストが囲む会から始まった。例えば現在話題となっている外為法の改正についても、規模の小さなVCではバックオフィスも弱く対応が難しい。そこで勉強会の開催を提案した。エコシステム発展に寄与したい」。

この後の勉強会では、機関投資家のLP出資におけるデュー・デリジェンスのポイントや外国為替方改正の対応、海外VC(a16z)に関する動向調査などの話題で、集まった投資家たちとの意見交換が実施された。

 

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