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2015年の中東を賑わせるスタートアップ17選〜「Startup Istanbul 2015」ファイナリストの顔ぶれ

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本稿は Startup Istanbul 2015 の取材の一部である。 先週、トルコ・イスタンブールで開催された、中東・北アフリカ地域最大のスタートアップ・カンファレンス「Startup Istanbul 2015」から、ピッチ・コンペティション「Startup Challenge」の模様をお伝えしたい。Startup Challenge では、世界各国から応募が寄せられ、その中から68カ国の1…

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本稿は Startup Istanbul 2015 の取材の一部である。

先週、トルコ・イスタンブールで開催された、中東・北アフリカ地域最大のスタートアップ・カンファレンス「Startup Istanbul 2015」から、ピッチ・コンペティション「Startup Challenge」の模様をお伝えしたい。Startup Challenge では、世界各国から応募が寄せられ、その中から68カ国の100チームが予選を通過した。

メンタリングの結果50チームに絞られ、さらにそこから Startup Istanbul 2015 前日に開催された投資家による審査を経て、17チームがファイナリストに残った。昨年の結果と比べてみると、パキスタン勢がファイナリストに3チームも食い込んでおり、圧倒的に優勢を誇っているのがわかる。

Startup Challenge 決勝の審査員を務めたのは次の方々だ。

  • Steve Blank 氏(起業家 兼 起業家精神に関する教育者、著述家)
  • Andrea Barrica 氏(500 Startups ベンチャーパートナー)
  • 佐藤輝英氏(BEENEXT 創業者)

なお、ピッチの MC は、オジェギン大学教授の Erhan Erkut 氏が務めた。当初、500 Startups からは Dave McClure が審査員を務める予定だったが、Dave は時差ボケによる疲れとのことから Andrea が代打を務めることとなった。

優勝:NIMS(ケニア)

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ケニアにおいては、人口の約半数は銀行口座を持っていない。したがって、多くの企業においては社員に給料を現金で支払っているが、このため給料支払の業務が煩雑になる。NIMS は、銀行口座よりも普及率の高いモバイルを金銭授受の窓口にすることで、給料支払に関わる手間を省くことができる。モバイルで給料を受け取った社員は、そのままモバイル決済で商品を購入したり、現金化したりすることができる。

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2位:iGrow(インドネシア)

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iGrow はインターネット越しに農作物を育てることができるプラットフォームだ。都会では農業を営むことができないユーザが、iGrow を介して資金をスポンサードし、遠く離れた農園で農作物の栽培を依頼することができる。投資した資金によって、農作物からは収穫売上が得られる。ユーザはその収穫売上の40%を手にすることができ、残りの60%はその後の農作物の育成のために使われる。Startup Asia Jakarta 2014 では優勝している

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3位:Taskulu(イラン)

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Taskulu は、タスク管理ツールの Trello と ビジネスグループ内情報共有ツール Slack の連携機能の提供に特化したサービス。もともとは共有情報の、グループ内のアクセス制限を管理する機能を提供していたが、ユーザからの声を受けて、現在の形にピボットした。Taskulu を使うことで、ユーザはプロジェクトの作成や担当者のロール付与が容易になる。ユーザの多くはイラン国外にいて、これまでに80万ドルの資金調達をクローズしている。

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Mytoddlr(ナイジェリア)

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Mytoddlr は、小学校入学前の子育てに関する、保護者のためのモバイルコミュニケーション/コラボレーション・プラットフォーム。これまでに2,000人の保護者が利用している。子供の成長、日常の活動、記憶に留めるべき瞬間をシェアして、保護者の子育てを支援する。子供の睡眠時間、トイレの時間などもアプリのアナリティクス画面で分析・管理できる。

Pockee(ギリシア)

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Pockee は、スーパーマーケットへ顧客を誘導する O2O アプリ。人気ブランドのディスカウント・クーポンを入手することができ、スーパーで利用することができる。連日、200以上の日用品のクーポンが提供され、ギリシア国内で、最寄りのスーパーでの買い物時に利用が可能。割引が適用された購入については、買い物から1〜7日以内にユーザの銀行口座または PayPal の口座に割引金額がキャッシュバックされる。

Melissa Climate(ブルガリア)

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Melissa Climate はエアコンにつながる IoT。スマートフォンを使って、エアコンが備え付けられている場所以外から遠隔制御できるほか、現場の気候条件、ユーザの習慣などを学習し、利用する電力を最大25%カットすることができる。先ごろ、香港で開催されたスタートアップ・カンファレンス RISE のピッチ・コンペティションで優勝した、香港のスタートアップ Ambi Climate にもコンセプトが似ている。

Picturesqe(ハンガリー)

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Picturesqe は人工知能により、数多くの写真の中から必要な写真を即座に探し出すことができるソリューション。深層学習によりユーザの好みを理解して、ある対象物を撮影した複数の写真の中から、ユーザが最も欲する写真をヒットすることができる。同じ人物が写っている写真をグルーピングできるほか、トリミングしても写真をぼかさずにズームインできる IntelliZoom 機能、ビジネスやプライベートで多くの写真を扱う人に便利な機能が満載。

Expensya(フランス)

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Expensya は、中小企業向けの社員の経費精算を効率化するモバイルアプリ+クラウドソリューション。社員はアプリを使って、手入力またはレシートの写真を撮ることで経費入力が可能。多くの経理アプリケーション向けにデータをエクスポートできるほか、ダッシュボードを通じて会計士がデータにアクセスすることもできる。日本の Staple とコンセプトは似ている。アプリは、iOS、Android、Windows Phone でダウンロード可能。1ユーザあたり月額6.99ユーロ。

WebHR(パキスタン)

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WebHR はクラウドベースの人材管理サービス。フリーミアムサービスで、社員10人までのスタートアップや中小企業は無料で利用することができる。社員数10人を超えた起業には、ユーザ一人あたり60セントの月額費用がかかる。これまでに12,000社のサインアップがあり、うち、190カ国の400社は既に有料ユーザとのこと。今後は、欧米を中心に Fortune 500 など有名企業を顧客に獲得したいとしている。

Hajj Guider(パキスタン)

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Hajj Guider は、イスラム教徒にとって欠かすことのできないメッカ巡礼(Hajj)や小巡礼(Umrah)を、問題なくやり遂げることをサポートするアプリ。巡礼者同士の情報共有が可能で、メッカ巡礼者向け特別便(ハッジ・フライト)、宿泊情報、ナビゲーションや混雑していない場所の情報などを得ることができる。近年、メッカ巡礼においては、巡礼者混雑による将棋倒し死亡事故などが相次いでおり、情報共有によって、それらの問題を未然に防ぐ意図もある。2016年初頭にアプリをリリース予定。

SecurityWall(パキスタン)

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SecurityWall は、Startup Istanbul 史上最年少となるパキスタンの17歳の少年によるスタートアップ。サーバ、ソフトウェア、ウェブアプリなどの脆弱性診断やマルウェアの防御や除去を定期的に実施してくれるサービスを提供。近年、サイバーアタックやマルウェアなどによる被害が増加する一方、企業の中にはセキュリティに関する専門家が置けないのが実情。これらの企業に、SecurityWall はクラウド的にセキュリティ・サービスを提供する。2015年4月に開催された Cyber Secure Pakistan で優勝している。

Transterra Media(レバノン)

Transterra Media は、ニュース、ジャーナリズム、広告用のテキスト、写真、ビデオなどを販売できるマーケットプレイス。4,000人のコンテンツ供給者がいて、コンテンツを購入するニュース・パブリッシャーには、Al Jazeera や NBC など中東や欧米の放送局など。販売できたコンテンツについては、売上の70%をコンテンツ供給者、30%を Transterra Media で分配する。コンテンツ供給者は、ソーシャルメディアを使って集めている。来年には、年間200万ドル程度の売上を見込んでいるとのこと。

WePress(トルコ、アラブ首長国連邦)

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WePress は、記事を書くジャーナリスト、ニュースを映像で伝えるビデオジャーナリストを、テーマに応じて該当する分野の出版物、オンラインニュースサイトの編集者とつなぐマーケットプレイス。出版放送分野の企業や編集者のディレクトリ・データベースが用意されており、ジャーナリストは自身の過去作品を提示し、売り込みをすることができる。編集者とのやりとりができるメッセージ機能も搭載。

Waveit(イスラエル)

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Waveit は、写真やビデオを投稿し、Tinder ライクなインターフェイスにより、好きなら右へ、嫌いなら左へ、お気に入りなら下へ、シェアするなら上へスワイプすることで、関心の近い人々とつながることができるソーシャルアプリ。自分が写真を撮った位置情報が地図上に表示されるほか、その写真投稿を気に入った(wave)したユーザの情報も地図上に表示され、自分の投稿がどこまで影響を及ぼしているかを可視化することができる。

Uplift(アメリカ)

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Uplift は、スタンフォード大学発の無人航空機(UAV)スタートアップ。社会起業(ソーシャル・アントレナーシップ)を念頭においており、地理的または政治的に人道救助が必要な人たちに救援物資を届けることを目的としている。近年、特にトルコからヨーロッパに広がるシリア難民の問題解決の一助として、国境を越えて難民に物資を届けることが一つの想定ユースケースとして披露された。

Welcome(ギリシア)

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Welcome は、初めて行った旅先で、まるで友人が迎えてくれるかのようなサービスを提供。空港に降り立ち右も左もわからない中で、空港での車によるピックアップ、データ通信用の SIM カードの提供、宿泊先の提供などを実現する。Airbnb や Uber など、複数のシェアリングエコノミーサービスとの連携により、これらのサービスをワンストップで提供できるのが特徴。訪問先に関する Q&A もアプリを通じて受け付ける。アメリカでは出張の多い人のために、衣料品を預かり、出張の都度ホテルまで洗濯した衣料品をスーツケースにパックして送ってくれる Dufl が存在するが、このようなサービスと連携しても面白いかもしれない。

Gaming Battle Ground(クロアチア)

Gaming Battle Ground (GBG) は、ユーザがオンラインゲーム対戦を作成し、参加することで収入を得ることができるプラットフォーム。ゲームを選び、参加人数と対戦日をセットするだけで対戦を作成できる。eスポーツのゲームを提供するプロバイダー複数社と提携しており、これらのゲームのトーナメントを簡単に作成できる。今年3月にセルビアのベオグラードで開催された Startup Sauna 地域大会で優勝。

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中東最大のスタートアップ・カンファレンス「Startup Istanbul 2015」が開催、Steve Blankほか世界の著名人が一挙集結

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本稿は Startup Istanbul 2015 の取材の一部である。 5日(現地時間)、トルコ・イスタンブールで年次のスタートアップ・カンファレンス「Startup Istanbul 2015」が開催され、中東・西アジア、東ヨーロッパ・北アフリカの国々の起業家、欧米の投資家らが一堂に会した。このイベントには世界68カ国から100社のスタートアップが集められ、トップの座を争うピッチ・コンペティシ…

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本稿は Startup Istanbul 2015 の取材の一部である。

5日(現地時間)、トルコ・イスタンブールで年次のスタートアップ・カンファレンス「Startup Istanbul 2015」が開催され、中東・西アジア、東ヨーロッパ・北アフリカの国々の起業家、欧米の投資家らが一堂に会した。このイベントには世界68カ国から100社のスタートアップが集められ、トップの座を争うピッチ・コンペティションが実施された。ピッチの模様については改めて書くことにするが、Startup Istanbul の中で興味深かったセッションについて取り上げてみたい。

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Startup Istanbul 2015 の冒頭には、自身も起業家であり起業家教育に力を注ぐ Steve Blank 氏が登場し会場を沸かせた。

Blank 氏は近年、さまざまな形式のスタートアップが姿を現し始めていることを指摘し、corporate startup(企業内スタートアップ、いわゆる intrapreneur に近いと考えられる)も、social startup(金銭的な見返りよりも、社会的な意義を尊重するスタートアップ)も、いずれもスタートアップだと説明した。

その上で、Blank 氏はスタートアップを「再現可能(or ピボット可能)かつスケールする可能性のあるビジネスモデルを探求し続ける上での一時的な組織体系(temporary organization in search of repeatable (or pivotable) and scalable business model)」と定義づけた。

スタートアップに求められるのは、ディストリビューション・モデルを見出し、ビジネスモデルを見出し、誰が客を考え、 MVP(Minimal Viable Product、実用最小限プロダクト)を作り上げること。企業の90%以上は失敗する。しかし、その失敗におめでとうといいたい。

スタートアップとは、アメーバのように形を変え続けるものだ。増えては消え、時には分裂し、中には消滅することもある。一般企業の四季報と違って、スタートアップのデータベースをメンテナンスするのは、それゆえ大変だったりするわけだが、仮に IPO したとしても、変化し続けることを忘れたり、恐れるようになったら、もはやスタートアップではないのかもしれない。

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起業家とは仕事ではない。それは、衝動に駆られるもの(calling)だ。スタートアップの世界では皆、ローカル vs. グローバルみたいな話をする。しかし、どんな国にだって地域市場は存在する。トルコには6,500万人もの人口がいるでしょ。トルコのスタートアップの人たちには、ぜひ、自分たちの地域の情報やアドバイスを、ブログや Wiki を作ってシェアしてほしい。(Blank 氏)

また、政府には助成金などの形でスタートアップにお金をばらまくのではなく、スタートアップの自発的なエコシステム形成を支援してほしいと付け加えた。

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続いて、500 Startups からは Dave McClure 氏が登場、世界中の人々がシリコンバレーを目指す中で、むしろ、自分のいる国や地域でスタートアップすることの意義を訴えた。

シリコンバレーなんて、みんな、シリコンバレー以外の地域から来た人たちの集まりに過ぎない。シリコンバレーとは、(場所ではなくて)精神の状態(state of mind)のことを言うんだ。世界中、どこに居たってスタートアップはできる。

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左から:Erhan Erdogan 氏、Dave McClure 氏、Erbil Karaman 氏

500 Durians、500 Tuktuks、500 Kimchi、500 Startups Japan など、世界各地で地域特化型マイクロファンドを続々と発表している 500 Startups だが、この日、500 Startup Turkey の設立と、同マイクロファンドを担当するトルコ現地のベンチャーパートナーとして Erhan Erdogan 氏と、ファンドマネージャーとして Erbil Karaman 氏が就任することを発表した。500 Startups では同社が出資したスタートアップが一定のイグジットを経た後も、その元創業者や関係者を Entrepreneur-in-Residence (EIR) などとして関係を維持し、状況にあわせて、マイクロファンドの運用責任者に抜擢したりしているようだ。

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日本からは、先ごろ新ファンド「BEENEXT」のローンチを発表した佐藤輝英氏がファイヤーサイドチャットに登壇した。Beenos の頃から、佐藤氏はトルコのスタートアップに積極的に投資を行っており、この地域の起業家にとっては憧れの存在だ。

佐藤氏はモデレータからの、投資先のスタートアップをどのようにコーチしているか、との問いに次のように答えた。

トルコでもインドでも、私は外国人であり、当地の市場のことは当地の起業家が一番よく知っている。何かをアドバイスすることはできない。

我々ができるのは、起業家と話し、その起業家を信じること。そして、その起業家に情報を与えること。投資先のスタートアップ同士で、自分たちの秘訣をシェアし合えるような環境を作ること。それだけだ。

佐藤氏は以前にも言っていたインドやトルコのEコマース関連のスタートアップに投資を続ける理由、BEENEXT がインドへの投資を活発化させている理由を披露し、聴衆の関心を引いていた。

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この記事にもあるように、MENA では総じて起業意欲が高まっており、筆者が会場や周辺イベントで話を聞いた限りでは、特にイランにおけるスタートアップ・コミュニティの隆盛が著しいようだ。クレジットカードやオンラインバンキングなど先進国的なインフラが未整備な市場ながらも、各種インターネット・サービスへのニーズが高まっている、イランの起業家の話によれば、この一年間でイランだけでスタートアップ・アクセラレータが6つ新たに生まれており、TechlyItIran などといった IT やスタートアップに特化したメディアも立ち上がってきている。

西アジアや中東のスタートアップの多くは、自国でローンチした後、次の活路をイスタンブールやドバイといった地域のハブ都市に求め、欧米をはじめとする全世界向けのサービスを開発して資金調達に成功した後、ニーズに応じて、よりアクセスのよい世界の都市へと飛び立って行く、というシナリオが形成されつつあるようだ。

Startup Istanbul のクロージングの折、司会者にステージ上に呼び出された Startup Istanbul のプロデューサーで、トルコのインキュベータ eToham の創業者 Burak Buyukdemir は「来年は、Startup Istanbul ではなく Startup MENA になるかもね」と語っていた。

左から MC を務めた Erhan Erkut 氏、eToham 創業者で Startup Istanbul プロデューサーの Burak Buyukdemir、最右はスタートアップのメンタリングを担当したオゾン氏
左から:MC を務めたオジェギン大学教授の Erhan Erkut 氏、eToham 創業者で Startup Istanbul プロデューサーの Burak Buyukdemir 氏、最右はスタートアップのメンタリングを担当した Ozan Sonmez 氏
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