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SXSW 2019番外編: 日本のフードテックは、これからの食文化伝承のカギとなるか?【ゲスト寄稿】

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本稿は、岡本侑子氏による寄稿。同氏は宮城県石巻市生まれ。高校では建築、大学ではプロダクトデザインを専攻し、新卒から広告業界に身を置いている。 現在は、広告会社に在籍する一方、他社でもフリーランスとして仕事も受けているパラレルワーカーでもある。 最近は中国や、他国のカンファレンス情報を複数のメディアにて発信もしている。 SXSW(サウスバイサウスウエスト)2019 期間中の3月13日(アメリカ中部標…

本稿は、岡本侑子氏による寄稿。同氏は宮城県石巻市生まれ。高校では建築、大学ではプロダクトデザインを専攻し、新卒から広告業界に身を置いている。

現在は、広告会社に在籍する一方、他社でもフリーランスとして仕事も受けているパラレルワーカーでもある。

最近は中国や、他国のカンファレンス情報を複数のメディアにて発信もしている。


SXSW(サウスバイサウスウエスト)2019 期間中の3月13日(アメリカ中部標準時夏時間)、非公式イベントとして「The Kitchen Hacker’s Guide to the Food Galaxy in SXSW」がアメリカ・オースティン郊外で開催された。

主催したのは、ウマミラボ、立命館大学、シェフの杉浦仁志氏、東洋ガラス。イベントには日本人を含む約70名が参加した。

立命館大学が進める「江戸未来フードシステムデザインラボ」

今回特にフードテックを活用で目立ったのは、立命館大学 食マネジメント学部で研究を行なっている「江戸未来フードシステムデザインラボ」だ。

立命館大学は、食科学の深い知見を培うとともに、高度なマネジメント能力と実践的な行動力をそなえた、食の人類的な課題解決に寄与できる人材育成を目指し、18年4月に食マネジメント学部を創設した。野中朋美さん(食マネジメント学部 准教授)、鎌谷かおるさん(食マネジメント学部 准教授)の研究室プロジェクトとして、江戸フードサステイナビリティの研究を行なっている。

なぜ京都や滋賀に拠点を構える立命館大学が、〝江戸〟未来フードサスティナビリティの研究をスタートさせたのか。

江戸には、「都市」としての江戸、「時代」としての江戸の2つの意味を含んでいる。

江戸は、江戸時代の全国各地の流通、文化、技術、情報が、交差しあいながら完成したもの。 そして、その文脈は、江戸時代の大規模輸送や、樽の開発、海路や加工技術の発展によって成長した日本酒にあてはまることから、日本酒をテーマに選んでいる。

鎌谷かおるさんによると、江戸時代に入り、本格的に大規模な造酒が、各地で可能になり、特に摂津国の伊丹や池田で作られた酒は、美味しくて有名になった。江戸時代半ばになると、摂津国の灘の酒造業が多く出回るようになった。そして、灘の酒は、日本の人々に知られるところとなり、灘を含めた摂津国で製造された酒は、江戸の町の酒の消費量の7割を担っていたとされている。

<参考文献>

日本酒100%ゼリーを使った料理

そして、今回イベント内でシェフを担当したのは杉浦仁志シェフ。

2017年5月にミラノで開催された The Vegetarian Chance で世界中から集まった多数のシェフの中からトップ8に選出されるなどの経歴を持つ。

そのシェフが今回の提供料理で使用していたのは、日本酒100%ゼリーである。

現状国内などで販売されている日本酒ゼリーは、食べやすくするために清酒の他に砂糖や果汁が含まれている。しかし、このゼリーは粉末の寒天と日本酒のみから作られているため、事実上の〝100%日本酒ゼリー〟なのである。

ユキオーの技術によって、100%の日本酒ゼリーを作ることに成功している。

技術内容の詳細は非公開。現状はまだプロトタイプであるため、販売はしていない。

現在、どの国でも旅行の際の土産として酒類の国外持ち出し量は制限されていて、もちろん日本酒も制限対象となる。他国での日本食ブームに加えて、日本酒は日本料理と切っては切れない関係もあるため、もっと多くの人に日本酒を楽しんでほしいところだが、どうしても法令による制限が絡んでしまう。

そんな課題の打開策の一つとして、ゼリーによる持ち出しは大きな可能性を秘めている。

日本酒100%だからこそ、料理などにも使うことができるし、ゼリーの寒天成分は煮出せば無くなるので、再び日本酒に戻す(完全な清酒の状態ではなく、ゼリー状では無くなるという意味)ことも可能だ。それは新たな食感を作り出し、料理の幅が広がる可能性もあると杉浦シェフは話した。

イベントでは、立命館大学 食マネジメント学部の長谷川千尋さん、黒坂ヒカルさん、立石綾さんがプレゼンテーションを行った他、ウマミラボの出汁出展、日本酒が振舞われていた。

ウマミラボは、出汁と日本酒を紹介

ウマミラボは、出汁を引く全ての機材を1つのスーツケースに収め、日本の伝統的な出汁の素材と現地の食材/調味料/お酒をブレンドすることでその土地ならではの「旨み」を発見する、移動式のポップアップ出汁ラボラトリー。発起人は望月重太朗さん(REDD)

ウマミラボは、5種類の異なる出汁を提供していた。
イベントでは18種類の全国各地の日本酒も振舞われた。
ウマミラボパートナーである山寺純さん。外国人にも大人気だった。

東洋ガラスの「Alchemist bar -taste is who you are-」

東洋ガラスが出展したこの作品は、味覚共有というもので、ドライフルーツやハーブ、スパイスなどを組み合わせて自分好みのお酒を作り、シェアするというもの。容器は、人のクリエイティビティとコミュニケーションを促進するものでありたい、という願いを込めて展示を行ったという。

東洋ガラスの「Alchemist bar -taste is who you are-」

SXSW 2019でもフードテックは重要なトピックになっており、センションカテゴリにフードが設けられているほどだった。

フードロスなどの分かりやすいソーシャルインパクトもフードテックのサービスとして注目を集めていくだろうが、自国の産業や文化をどのようにハックして多くの人に伝え、喜んでもらえるかという観点でのフードテックがあっても良いのかもしれない。

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SXSW 2019 Interactive現地レポート——落合陽一氏プロデュースの「New Japan Islands」がオープンなど

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本稿は、SXSW 2019(サウスバイサウスウエスト 2019)の取材の一部である。 SXSW Interactive がテキサス州オースティンで始まった。SXSW については、ここ数年連続して取り上げているので、詳細については省略するが、イベントと呼ぶには物足りない、街をあげた世界で最もクリエイティブな祭典の一つと言ってよいだろう。 SXSW Interactive のほぼ前半、ここまでで目に止…

本稿は、SXSW 2019(サウスバイサウスウエスト 2019)の取材の一部である。

SXSW Interactive がテキサス州オースティンで始まった。SXSW については、ここ数年連続して取り上げているので、詳細については省略するが、イベントと呼ぶには物足りない、街をあげた世界で最もクリエイティブな祭典の一つと言ってよいだろう。

SXSW Interactive のほぼ前半、ここまでで目に止まった、いくつかのハイライトをランダムに書いてみる。

The New Japan Islands(NJI)

経済産業省の主催、ソフトバンクらの協賛、メディアアーティストの落合陽一氏プロデュースで開設された「The New Japan Islands(NJI)」。その名の通り、「デジタル発酵する風景」をコンセプトに近未来の日本を、食やデジタル文化、サブカルチャーなどの分野にスポットライトを当て表現している。

NJI 開設初日となった10日には、落合氏のほか、経済産業省の宇留賀敬一氏ら関係者が神式で NJI の成功を祈った。この施設では、日本酒メーカー、印刷会社有志、福井県の永平寺などがプロダクトや宗教・文化などを紹介しているほか、夜には J-POP を扱ったディスコイベントやカラオケ大会が行われる。12日には、東北大震災犠牲者を忌って黙祷が捧げられた。

LG

モルト、ホップ、イースト菌、フレイバーなどをカートリッジ投入するだけで、好みのビールを自宅で醸造できる「LG HomeBrew」。マシンがカートリッジ表面に印刷された QR コードを読み取り、発行・熟成・加熱・冷却などを最適化されたタイミングで自動的に行ってくれる。

せっかくなのでこのマシンで醸造されたビールを味わってみたかったのだが、実際に来訪者に提供されたのはヒューガルテンだった。このほか、アイスクリームのホームメイドマシン、スワロフスキーとコラボして制作されたモバイルデバイスなどが展示されていたが、いずれもコンセプトモデルということで現時点では販売の予定は無い模様。

Todai to Texas(TTT)

例年、東大から学生チームを SXSW に派遣する「Today to Texas(TTT)」。TTT が出展する日本パビリオン周辺では、世界各国のスタートアップブースがしのぎを削っているが、特にユニークさと見た目の奇抜さで TTT のチームは群を抜いていたように思う。

JellySurf は、加速度センサーと LED を内蔵したサーフボードだ。透明なボードに LED が埋め込まれており、ユーザの動きに同期してイルミネーションが彩りを見せる。サーフィンの上達を意図して制作されており、ユーザは光の動きを狙って身体の重心を変えるなどしトレーニングができるほか、集積されたデータによって、さらに良いトレーニングプラグラムを作り出せる可能性もある。

Mantra は、マンガをスキャンするだけで翻訳版を作り出せるプラットフォーム。すでに原語のほか、複数原語で出版済のマンガを使って教師データとして用い AI に学習させている。回を重ねるごとに、より的確な翻訳結果が導き出され、吹き出しには翻訳されたセリフが入った状態で印刷される。翻訳版が出ていないマンガタイトルの翻訳、翻訳出版までに時間を要する問題の解決を狙う。

金属棒にドローンが4つ備えられた「浮遊棒」は、バーチャルリアリティ(VR)と捕まっている棒の重さに変化をつけることで、ユーザがあたかも宙を舞っているかのような体験を仮想的にもたらすことができるデバイスだ。

電通

昨年の電通の出展からは「Sushi Teleportation」を取り上げたが、それをもう一歩進めた形の未来型寿司レストランとして「Sushi Singularity」が出展されていた。オンラインで CGM 的に編集・想像された新たな寿司の誕生、ヘルスデータに基づいた栄養素の個人最適化、フード製造 3D プリンタを使った距離や場所にとらわれない寿司体験の実現が目標。2020年には Sushi Singularity の開店を目指している。

女性の乳房の形を模した IoT デバイス「Father Nursing Assistant」は、母親がいない時にも、父親が代わって、赤ちゃんの授乳や寝かしつけができるようにすることを狙ったものだ。男性が胸に装着することを想定しており、一方の胸には乳首が、もう一方の胸にはミルクタンクが備わっている。アプリと連携し授乳や入眠タイミングを検知、視覚的に赤ちゃんの状態を把握できる。

新たな移動手段

SXSW の間では、Uber、Lyft、Ride Austin といった配車アプリが多用されているのは言うまでもなく、今年から導入されて注目を集めるのは e スクーターだ。電動スクーター専業の Lime はもとより、Uber が運営する「Jump」、Lyft は昨年 Motivate を買収して誕生させた「Lyft Bikes」などを市内中心部で展開。

オースティン市内は SXSW 期間中、交通規制が敷かれていてクルマは入域できないのに加え、会場から会場(Austin Convention Center や付近のホテル)の移動は、クルマを使うには近いけど歩くには少し遠いかもしれないという、まさに「帯に短く襷に長い」状態。このラストマイルアクセスを埋めるのが電動スクーターというわけだ。これは興味深い試みである。

<関連記事>

第一弾はここまで。追って、セッションやピッチコンペティション、サイドイベントの様子を続編をお伝えする。

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