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キュレーションメディア「TABI LABO」がピボット——佐々木俊尚氏を共同編集長に迎え、モバイル志向のカルチャーメディアに進化

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今年2月にローンチした TABI LABO(旅ラボ)は、数多いキュレーションメディアの中でも圧倒的に読者の数を伸ばしているようだ。そのことは、Facebook のタイムラインを見ていても、TABI LABO の記事が頻繁に引用されていることから伺い知ることができる。 ただ、最近になって気づいたのは、TABI LABO という名前にもかかわらず、取り上げられる記事が必ずしも旅に関するネタではないこと…

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左から:共同創業者 久志尚太郎氏、共同編集長 佐々木俊尚氏、共同創業者 成瀬勇輝氏

今年2月にローンチした TABI LABO(旅ラボ)は、数多いキュレーションメディアの中でも圧倒的に読者の数を伸ばしているようだ。そのことは、Facebook のタイムラインを見ていても、TABI LABO の記事が頻繁に引用されていることから伺い知ることができる。

ただ、最近になって気づいたのは、TABI LABO という名前にもかかわらず、取り上げられる記事が必ずしも旅に関するネタではないことだ。テレビ番組などでも紹介されていた、フィリピンの蚊取りボトルの話は、日本での話題作りに貢献したという点で TABI LABO はその一翼を担っているが、言うまでもなく、蚊取りボトルは、旅とは直接的に関係が無い。

「ん、ピボットしたのかな?」と思っていたところへ、TABI LABO 共同創業者の久志尚太郎氏から連絡をもらった。どうやらチームを増強し、新たな試みにチャレンジするというのだ。東大の駒場キャンパスに程近いオフィスに、約半年ぶりに TABI LABO のチームを訪ねた。

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フィリピンの蚊取りボトル

佐々木俊尚氏がチームに参加、知的好奇心を満たすメディアへ

共同創業者の成瀬勇輝氏と久志尚太郎氏による会社「Number 9」の事業としてスタートした TABI LABO だが、事業をスピンアウトさせ、TABI LABO 単独の事業会社「TABI LABO」を設立し、かねてより二人と親交のあったジャーナリストの佐々木俊尚氏が共同編集長として参画することになった。

これまでは、協力キュレーターなどの力を借りて、旅をテーマに面白い記事を収集することに主眼を置いていた TABI LABO だが、佐々木氏のチーム参画により、より尖ったニュースやネタを探し出し、読者の知的好奇心を満たすコンテンツづくりが可能になるとしている。今後、オリジナルのコンテンツも充実させるべく、キュレーションだけでなく、スクラッチで文章を書く専属ライターも増やしていくとのことだ。

共同編集長就任にあたって、佐々木氏は TABI LABO が目指す方向を語ってくれた。

70年代後半〜80代にかけて、雑誌の POPEYE などは、まさに文化を伝えていた。ニオイを持った文化、地に足の着いた都会の文化を伝えるということが、今の紙メディアではできていない。TABI LABO という、モバイルで簡単に読めるメディアができたことで、当時の POPEYE のようなことが現代でできるのではないかと思った。(佐々木氏)

<参考> かつて雑誌は若者を動かした、って信じられる?『popeye物語』

キュレーションメディア、または、バイラルメディア(双方で意味は微妙に違うが…)がもとにするのは、既に世の中にパブリッシュされた情報。対して、佐々木氏の言う POPEYE に代表されるメディアは、そこに掲載された情報からトレンドが創り出され、アーリーアダプターやインフルエンサーさえもが後追いする構図さえあった。

アメリカの有名バイラルメディアも、大手メディア等からライターを引き抜いて、面白動画の転載などから、オリジナルコンテンツの発信に転向するところが増えてきている。バイラルメディアといはいうものの、そもそもバイラルとは手段に過ぎない。何を伝えるかが重要だ。(佐々木氏)

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TABI LABO が目指す方向性

モバイル最適化と深堀コンテンツの充実で、リピーターを増やす

一般的に、メディア系のサイトの KPI は UU(訪問者数)や PV(閲覧数)だ。7月現在、TABI LABO は月間で400万UU/3,000万PV、広告を出せば、十分にマネタイズが可能なレベルにある。事実、ローンチから6ヶ月に満たない現時点で収支を黒字化できているが、久志氏によれば、TABI LABO は UU や PV にはあまり関心を持っていないという。

UU 増や PV 増を念頭においても、結果的に、コンテンツの力や読者のロイヤルティが低下し、原稿をまともに書けるライターも居なくなってしまう。我々は、PV とかインプレッションではない KPI を設定し、ユーザの滞留時間やリピート率で攻めたい。コンテンツに力を持たせることで、エッジの効いた人にネイティブアドを出せるようになり、十分なマネタイズができるのではないかと思う。(久志氏)

tabi-labo_screenshot雨後の筍のようにバイラルメディアが増えている中ではあるが、結局は、優秀なライターを抱えられたところが最後に勝ち、最も強い参入障壁になるのではないか、というのが彼らの考えだ。

これまで旅のみにフォーカスしていたトピックを、今後は feature、key person、travel、life style、sports、beauty、technology、issue、key person の9つのカテゴリに拡大し、週に一度は weekly feature として特集記事も配信してゆく。コンテンツの充実と読者のエンゲージメントの強化によって、ラグジュアリー層の雑誌等に見られるような、広告上流層(代理店や広告主の意思決定者)へのアプローチも可能と考えているようだ。

既に TABI LABO はスマートフォンからの閲覧にも最適化されているが、ユーザビリティの改善やユーザ動向の分析を可能にするため、年内のリリースを目標にモバイルアプリの開発にも着手したいとしている。


佐々木氏の TABI LABO 共同編集長への就任は、TABI LABO にとって大きな転換点となるだろう。彼のような人物と、共に仕事をしたいと考えるライターも少なくないはずで、前述した人材獲得などの点でも有利に働くことが期待される。

最近では、東洋経済オンライン編集長だった佐々木紀彦氏が NewsPicks の編集部に移籍したり、ELLEgirl編集長だった澄川恭子氏がiQON のエディトリアルプロデューサーに就任したり、メディア系有名人の、メディア系スタートアップへのジョインが増えている。今後、このような動きは業界全般で加速していくのだろう。

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ローンチからの10日間で60万PV超を達成、旅のキュレーション・メディア「旅ラボ」が目指すもの

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インテリアのiemo、女性向けのmeryなど、ライフスタイル提案型のキュレーション・メディアのローンチが、このところ相次いでいる。コンテンツをスクラッチで作り出す手間をかけず、読者への見せ方と提案力で勝負するというものだ。もともとはアメリカの Upworthy あたりに端を発する手法ではあるが、日本でモバイルのニュース・キュレーション・アプリ(Gunosy、SmartNews、Kamelio、Vi…

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インテリアのiemo、女性向けのmeryなど、ライフスタイル提案型のキュレーション・メディアのローンチが、このところ相次いでいる。コンテンツをスクラッチで作り出す手間をかけず、読者への見せ方と提案力で勝負するというものだ。もともとはアメリカの Upworthy あたりに端を発する手法ではあるが、日本でモバイルのニュース・キュレーション・アプリ(GunosySmartNewsKamelioVingowNewspicks)が全盛を極めていることを考えると、キュレーション・メディアはアメリカ以上に、日本のユーザのニーズに合致しているのかもしれない。

2月22日、旅のキュレーション・メディア「旅ラボ」がローンチした。このプロジェクトを立ち上げたのは、これまでにも THE BRIDGE で取り上げた成瀬勇輝と、久志尚太郎という二人の青年だ。彼らに共通するのはアメリカでの留学経験、世界を旅する人であり、さらに二十代にして複数回の起業を経験している、ということだ。ある意味では世界を知る彼らが、このタイミングでキュレーション・メディアを始めた理由は何だろう。二人に聞いてみた。

世界の文化や風景を紹介するなどして、旅に出ることを誘う本やメディアはたくさんあります。一方で、旅行代理店や予約サイトに行くと、ツアーのパンフレット程度のものしか置いていない。つまり、ユーザにモチベーションを持たせるポイントと、旅に出るために実務的なアクションを起こさせるポイントの間がつながっていないのです。ここをシームレスにつなぎたいと考えています。(成瀬氏)

旅ラボのサイトを見てみると、右上に「世界を感じる」「世界を知る」「世界に行く」の3つのタブ項目が用意されている。「世界を感じる」にはキュレーションされたコンテンツ、「世界を知る」には独自コンテンツが集められ、そして「世界へ行く」では実際に旅を販売する予定で、この部分で旅ラボはマネタイズを図りたいと考えている。

UBER は利用者とタクシー会社の間に入って需要を仲介しているが、ここで重要なのは UBER が決済を取っているということ。決済を取ることで莫大な購入履歴を手にすることができ、それをもとに新たなビジネス展開が可能だからです。旅を販売する上で、自ら免許を取って旅行代理店を営むか、他社と協業する形をとるかは未定ですが、決済を取ることがこのビジネスでは重要だと思っています。(久志氏)

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旅ラボの共同創業者の2人、
成瀬勇輝氏(左)と久志尚太郎氏(右)

旅ラボがターゲットにするのは、ティーンネイジャー後半〜30代前半のデジタルネイティブの人たち。旅好きな層はもとより、これまで旅に出ることが無かった人も積極的に取り込みたいとしている。当初、二人からは「可処分所得×%程度の人をターゲットにしたいと思っている」というような回答を期待していたのだが、旅ラボによって〝旅へ出るまでのプロセス〟が変わる以上、それは当てはまらないようだ。

つまり、これまでは「お金が××万円貯まったので、この予算内で行ける面白そうな海外」という漠然とした思いから、ツアーのパンフレットに目を通して目的地を決める人が多かったかもしれない。旅ラボを使えば、おそらく最初に目的地が確定し、それからその旅に出るためのお金を貯める、というモチベーションも生まれるだろう。

UBER がそうであったように、既に存在する市場をインターネットでより便利にする過程は険しいかもしれないが、限りない可能性を秘めていると信じたい。

クラウドの力を武器に、ローンチ10日間で60万PV超を達成

ウェブサイトのUIに目をやってみると、アメリカのデジタル・ニュースサイト「QUARTZ」(THE BRIDGE でもいくつかの翻訳記事を掲載している)にそっくりなことがわかるように、旅ラボは日本の内外で評価の高い事例から良い要素を徹底的に取り込んでいる。これもまた、彼らの戦略だ。

現在は一日に2本くらいのペースで記事をアップしていますが、裏では常に数十本位の記事をストックしています。多くの人に読んでもらうためにはタイトル決めが肝要だと思っており、このプロセスでは、〝アンバサダー〟と呼んでいる120人位の人に協力してもらって、一本の記事に対して50個くらいあるタイトルの選択肢の中から最良のものを決めるようにしています。(成瀬氏)

2月22日のローンチから10日間で、旅ラボのアクセス数は60万PVを超えた。ローンチから1ヶ月後には300万〜500万PVを達成し、最終的に月間1億PVを目指したいと鼻息は荒い。

同社は、二年後に数十億円規模でのイグジットを目標に掲げている。既に複数のエンジェル投資家からの資金調達を模索しているようなので、近いうちによいニュースを伝えられるのを楽しみにしたい。

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