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サイブラリーを生み出した「AND(アンド)の思考」とはーーサイバーエージェントに学ぶ組織論【対談・3/3】小澤政生×諸戸友

組織論対談最終回。初回と前回はこちらから 諸戸:小澤さんの中で他に自分が採用責任者としてやってみてハマったな、というか効果的だったなっていうのありますか? 小澤:説明会辞めたのと同時に、サイブラリーというのも始めました。 諸戸:サイブラリー? 小澤:サイバーエージェントのライブラリーでサイブラリーです。サイバーでよく使われる「AND(アンド)の思考」なんですけど、説明会を辞めて、でもより良い採用し…

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組織論対談最終回。初回前回はこちらから

諸戸:小澤さんの中で他に自分が採用責任者としてやってみてハマったな、というか効果的だったなっていうのありますか?

小澤:説明会辞めたのと同時に、サイブラリーというのも始めました。

諸戸:サイブラリー?

小澤:サイバーエージェントのライブラリーでサイブラリーです。サイバーでよく使われる「AND(アンド)の思考」なんですけど、説明会を辞めて、でもより良い採用していくにはどうしたらいいのか、という一見対極にあるものをANDで両方とも美味しいとこ取りしてやろうみたいな考え方です。

そこで『サイブラリー』が生まれました。これは社員1人ひとりに自分の思うサイバーを5分くらい動画で説明してもらうんです。

当時40本くらい撮影して、それを学生に公開しました。移動中にみてもらって、説明会にきた体にする、いわば動画説明会みたいなものですね。通常であれば人事が話すだけですけど、「数十人(多分今なら数百人)の社員が自分の言葉で話す自社のリアル」、という切り口で、多種多様なサイバーエージェントを伝えていくっていうのはヒットしましたね。

取材もたくさんいただいたのでまるで自分が作ったかのように言われますが、ネーミングも企画運営も当時のメンバーのおかげで実現しました。

諸戸:これってANDの思考がないと出てこないですよね。

小澤:僕の中では「説明会を一旦全部やめてみて、ダメなら戻そう」くらいにしか考えてなかったのですが、実際やってみるといろんな反応が見れて面白かったですね。

例えば、夜行バスって今も昔も8時間くらいかかるじゃないですか。そこで色々見てきてくれるので、直接会った時や面談するときの質問の精度がめちゃくちゃ上がったんです。サイバーってなんの会社ですか?という質問はなくなって、サイブラリーで◯◯さんの見たんですけど、あれって実際どうなんですか?とか。

学生の質問力が上がったから、現場の社員も話せる引き出しが増えて、結果採用のスピードが上がったなんてこともありますね。あと、内定者が入社前にサイブラリーを見て事業、人、文化を映像で知ることができるようになったので、配属の参考になったり、入社後の加速につながりました。結果論ですが。

諸戸:いっぱい具体的な手法を教えて頂いたのであれなんですけど、何かこう総じて一番初めに僕が投げかけていた、「なんでサイバーには優秀なひとが集まってくるのか」っていう問いでいうと何が正しいんだろう。

僕が今聞いて思ったのは、さっきの「コスト意識」とか「ANDの思考」とか、そういう思考の人が人事にいるっていうところが1つポイントなのかな?と思ったんですよ。

小澤:多分、スタンスだけシンプルな言葉で決まっていて、後は自由にやってっていうカルチャーだからだと思います。「良い人を自分たちでちゃんと採用しよう。玉入れみたいにやって」「いい採用と強い組織を目指そう」みたいな。
最初は白目向きそうだし獣道を歩いている感覚になります。けどなんかワクワクするし、1回やってみるか!と決めて集まってくるカルチャーが作り出す強い組織だと思います。自分で決めて進めないといけないことしかないので、決断経験値は相当つきました。

諸戸:それが人事だけじゃなくて色んなところで、共通してあるのかもしれないですね。
そうすると当然、優秀な人が活躍しやすい環境になるんですよね。

小澤:あとは、渡邊大介さんもおっしゃっていたメッセージヴィークルじゃないですけど、経営陣からのメッセージを目にする機会がめちゃめちゃ多いです。ミクロじゃなくてマクロなメッセージ。「あ、やってもいいんだ、やっても死なねーな。全部やろ。やってから考えよう」みたいな(笑)

諸戸:そんなサイバーを辞めるきっかけというか独立しようと思った背景ってどんなところですか?

小澤:「採る側」から「育てて増やす側」になりたかったからです。

いろんな人になんで辞めたの?と聞かれますが、僕は今でもサイバーが本当に好きだし、自分を拾ってくれて、これでもかというくらいチャレンジをさせてくれた会社なので藤田社長や曽山さんには感謝しかありません。採用の仕事が面白くて、今だに天職だと思えているのもサイバーのおかげです。

採用責任者として自社に貢献できる人の採用を7年もやっていると、一瞬でっていったらあれですけど、(サイバーに)合うか合わないか瞬時にわかるようになってきて。その時その瞬間に会った学生を、その場でジャッジすることしかできなくなっていました。

一方で、採用したい人をいかに競合に勝って採用するかというのを考える時に、この会社に勝つためにはこのタイミングでこう言って、そうするときっと向こうはこう返してくるから、そのタイミングでこの社員を当てれば多分いけるなとか、悪い意味での「占い師」みたいになってきたんですよね。

自分が占い師化していくのがすごく嫌になってきて、採用がすごく好きで始めて他の人よりちょっと得意かなと誇りを持てる仕事だったのに、だんだん占いと判断しかしない自分が嫌いになってきたというのが正直ありました。

諸戸:なるほど

小澤:それと重なるかのように、ライフワークとして小学校とか大学の授業とかでキャリアについて話す場を有難いことに頂くことが増えてきて、もっとそっち側できっかけや気づきを与える仕組みを作れないかなと。

当然サイバーにはものすごくお世話になったし、何度も言いますがものすごく好きな会社でなのでめちゃくちゃ悩みました。ここは僕の穿った見方なんですけど、教育授業は既にやっていたし、サイバーってどっちかというとエンタメ性の強い会社なので、僕の中ではサイバー内で2つ目の教育事業みたいなものはないと思っていました。

なので、たまたま藤田社長とご飯を食べに行って、そこで起業を考えていると伝えたら「いいじゃん。起業はやりたいときにやったほうがいいよ」って。

諸戸:それは藤田さんが仰ったんですか??

小澤:はい。「やりたいときにやったほうがいいよ、ただ30超えてからの起業は気を付けた方がいいよ」と。それが僕の中ではやっぱすごいなって。普通だったらなんでって聞くじゃないですか。理由も聞かずにそう言ってくれて、逆にそれを聞いてもうちょっと頑張ろうかと悩んだくらいです。

藤田社長のおっしゃる通り、僕も当時31歳だったんですけど、チャレンジするなら今しかない。だったら思いっきりやってみてもいいかなという思いもあって。

諸戸:すごいね。本来だったら、何で?って聞くだろうし、うちでやればいいじゃん、とか、止めたりすることが多いと思うけど、瞬間的に「いいじゃん」っていうのは凄いね。

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写真左:TechBowlの小澤政生さん、クルーズの諸戸友さん

小澤:そうなんですよね、別に起業を煽っているわけではなく、でも覚悟決めて伝えたので応援してくださったんだと思ってます。

諸戸:それが起業のきっかけだったんですね。今って起業してからどれくらいですか?

小澤:10か月くらいです。

諸戸:10か月の間で、自分でやってみて気づく、あ、これサイバーで知ってて良かったなとかサイバーで教えてもらって良かったなってことって何かあります?

小澤:たくさんありますね。やっぱり「チームサイバーエージェント」の凄さは一番感じます。組織の一員として働いていた時って、自分の得意な部分だけやってても、後は周りの人がうまく連携して支えてくれてるので成功してたんだなと思います。一人でやっていると当たり前ですけどコピーも振込も請求書作成も全部やらなきゃいけない訳じゃないですか。今まで当たり前だったものが全部当たり前じゃなくなる。

苦手なお金回りとかバックオフィスとか、資本政策とかやったことないことしかないし、分からないことだらけです。1歩進んで10歩下がるみたいな感覚です。でもとりあえずやる。全部やる。やらないと死ぬ。そういうのを毎日繰り返しながらやっぱりサイバーってすごい会社だったなーと外に出てから思います。ちょっと飽きたからとか、なんか最近ブームだから、と浮き足立ったくらいで起業はしない方がいいです。本当に。

あと「小さく試す」も学びです。教育って特にそう感じるんですが、永遠に答えがない。とりあえずこんな感じでやってみたらどうなるんだろうみたいな、そういう実験を怖がらず小さく試しながら改善していく習慣は今もすごく活きています。

諸戸:実際に採用するっていう仕事から自分で育ててそういう人を増やすっていう仕事に変わるわけじゃないですか。凄く意義のあることだと思うんですけど、どういう人にどうなってほしいみたいなのってご自身の中であるんですか?

小澤:「イキイキ働くエンジニアを世の中に増やす」っていうのが僕のやりたいことです。そのイキイキの定義やどういうエンジニアになるかは人によって様々だと思うんです。

誰もが使うデカいサービスを創りたい!でもいいし、得意な分野だけで食べていきたいでもいいし、身近な人と幸せに生きたいでもいい。働き方もとにかく色々あっていいと思うんですけど、その選択肢を自分で決めて、責任をもって楽しくやれるエンジニアを増やしたいと思っています。

結果的にTechBowlにプロ意識を持った若手エンジニアが集まってきて、「世界一の技術集団」になり、そこから面白いコミュニティや面白いものが次々と生まれるような仕組みを創りたいと思っています。

諸戸:それってどういうところからそういう課題意識を持ったんですか?

小澤:エンジニアとの就活の面談イベントとかマッチングイベントとかで、少し前だったら、わけ分からないことを好き勝手やっているエンジニアが結構いたんですよね。周りから見るとそれ何?クソアプリじゃん!(笑)みたいなものでも本人が好きで熱中してやっているのが一番いいんです。

でも最近は世の中のエンジニアニーズやテクノロジーが進んでいるみたいな文脈があって、「エンジニアとはこうあるべき」「とりあえず就活までにこれを作れるようになっておくべき」みたいな「べき論」に翻弄されている人も多く、結果的にエンジニアになりたいけど具体的に何が作りたいかというと分からないとか、とりあえず就活のために昨日徹夜してアプリつくりました、みたいな人が増えています。

与えられたものを作る努力は認めるんですけど、これ本当につくりたかったの?って聞くと顔が曇っちゃう人がほとんどで、純粋にモノづくりが好きなエンジニアではなく、エンジニアになることが目的になっている人が増えているなという印象がありました。手段の目的化っていうやつですね。

エンジニア目指す人が増えているのはいいことですが向かう先がずれていると感じるので、そこに一石投じてイキイキ働くプロのエンジニアを世の中に増やしたいと思っています。

諸戸:そういう小澤さんの言うプロのエンジニアというのはどうやって育てていくんですか?

小澤:お勉強ではなく「実務の疑似体験」を早くさせることだと思っています。今やっている「TechTrain」というサービスは、30歳以下を対象としたプロエンジニア養成サービスです。メンターが全員現役のプロエンジニアで、彼らが副業でコードレビューや開発の相談に無料で乗ってくれます。

諸戸:教える側はどういうところがモチベーションになっているんだろう。

小澤:自分たちがそうしてもらってきたからそうしてあげたい、還元したいという気持ちが一番ですね。あと定期的にメンターだけのオフ会をやっているんですけど、そういうコミュニティにも好んで参加してくれています。同業他社の同世代のコミュニティって意外とないので、TechBowlのメンターオフ会の情報交換が働くモチベーションや自分のキャリアを考えるきっかけに繋がったり。

あとはメルカリのCTOの名村(卓)さんが弊社の技術顧問を引き受けてくださっているんですけど、そういう時代を作ってきた人たちがメンターのメンターとしてお酒を交わしながらアットホームな雰囲気で色々話せるのが嬉しいと言ってくれています。みんな本当にいい方で、メンターは弊社の1番の強みなので感謝しています。

諸戸:今後はTechBowlとしては、どういう展開を描いているのですか?

小澤:TechBowlって名前の通りなのですが、Tech(技術の)Bowl(サラダボウル)みたいなのを作りたいと思っています。

トマトはトマト、キュウリはキュウリで、それぞれ色があり、存在感があります。でも混ぜると化学反応が起きて、色とりどりの鮮やかなサラダになる。エンジニアもそれぞれ自分の『色』はあると思うんですが、いろんなエンジニアがタッグを組むことで今までにない『色鮮やかな』サービスや技術が生まれる。集え、混ざれ、”鮮”エンジニア。という世界を創りたいですね。

諸戸:なるほど、そういう社名の由来でもあったんですね。今日はいろいろとありがとうございました!9月25日のイベントでもさらなるぶっちゃけ期待しています!

お知らせ:諸戸さん・小澤さんは9月25日のイベント「サイバーエージェント大解剖スペシャル」に登壇予定です。すでに定員に達しているので、参加したい方は主催者やパネラーにSNS等で直接お尋ねください

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今年やった採用手法は「1回全部捨てる」の真実ーーサイバーエージェントに学ぶ組織論【対談・2/3】小澤政生×諸戸友

組織論対談、前回からの続き。 諸戸:元々採用が重要という考えが根底にあって、全社総会でベストリクルーター賞は〇〇さんです、わー!みたいな皆が羨ましがるような文化を仕組みや制度で醸成してきてたんでしょうね。YJCを取り入れて、改めて採用大事なんだぞっていう、これもメッセージヴィークルですよね。前回の渡邊さんの言葉を借りると。ところで、小澤さんは採用やる前は何をやっていたんだっけ? 小澤:僕、実は出戻…

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写真左:TechBowlの小澤政生さん、クルーズの諸戸友さん

組織論対談、前回からの続き。

諸戸:元々採用が重要という考えが根底にあって、全社総会でベストリクルーター賞は〇〇さんです、わー!みたいな皆が羨ましがるような文化を仕組みや制度で醸成してきてたんでしょうね。YJCを取り入れて、改めて採用大事なんだぞっていう、これもメッセージヴィークルですよね。前回の渡邊さんの言葉を借りると。ところで、小澤さんは採用やる前は何をやっていたんだっけ?

小澤:僕、実は出戻りなんですよ。サイバーで営業として配属して半年で辞めて、自営業を手伝いながら家庭教師と飲食のバイトして、証券マン1年やってサイバーに戻りました。

諸戸:サイバーに戻って最初から人事でしたっけ?

小澤:そうです。出戻ってからずっとエンジニア採用です。

諸戸:それ自体はやっぱりやりたかったことなの?

小澤:採用の仕事はやってみたかったし、興味があったので、嬉しかったですね。でも、エンジニア採用って言われて、はて?みたいな。エンジニアって何ですか?みたいなところから始まりました(笑)

諸戸:じゃあエンジニアを採用するための知識やどういうやり方があるのかみたいなのは自分で調べて作っていったってこと?

小澤:そうですね、本を読むのはあまり得意じゃないので、とりあえず小さく試してみようと思って、エンジニアってググってエンジニアの方がよく持ってるマウスとかシャツとか完全食とかデスク用品を買いまくったり、流行ってるゲームとかツールをとりあえず使って会話に入るとか。とりあえず歩み寄ろうと必死でした。

あと、大阪にも開発メンバーや内定者アルバイトがいたので、その人たちを毎日ランチ誘って、とにかく技術用語を覚えたり、サービス開発をレストランに例えてホワイトボードで説明してもらったりして、点の情報をかき集めてました。それをもう1回自分で白紙にバーっと書いていって、点と点を数珠繋ぎにしていってサイバーのエンジニアの特徴をつかむ、みたいなことは最初の頃はよくやっていました。

諸戸:とはいえ、経験ない中で大変でしたでしょうね。

小澤:基本的にエンジニア採用に限っていうと僕ら人事はサッカーでいうと「ボランチ」の役割だと思っています。学生に会った時に「この学生はAndroidに興味があるのか、iOSに興味があるのか、サービスに興味あるのか、研究開発に興味あるのか」そのあたりの温度感や解像度を先に人事で察知して、いち早くエンジニアにつなぐ。

粒度が粗くてパスがまだ出せない人は、人事側で初期情報を繰り返し与え、精度を上げてからエンジニアにパスしていく。とにかく「早くパスを送る」ってことを徹底的にやっていました。

この「高速パス回し」は採用に限らず組織としてサイバーが強いところだと思います。ただ、事業が多い分、とにかくパスの出しどころが多いんですよ。例えば漠然とゲームを作りたいっていう候補者がいたとします。小さい時からゲームが好きだったから、という人もいれば、当たればデカいビジネスをやりたいという人もいます。

候補者の疑問やリクエストを出来るだけ細かくヒアリングしながら分解して、一番刺さるポイントを突き刺していく感じです。

諸戸:そうすると当然、色んな事業があるわけだから、色んな文化があって、色んな人材を採用していくわけですよね。その中で共通して言える言葉、敢えて言語化するとしたら?

小澤:それがまさに「素直でいいヤツ」ですね。過去に、部署別採用、事業別採用みたいなのを提案したことがありました。

ゲームと、メディアと広告で使う技術も全く違うし、組織文化も違うので、どっちが正解というわけじゃないですけど、事業部別で半分採用し、残りの半分をジェネラリストとして本体で採用するという提案をしました。

その方が会社としても事業の立ち上がりとかクローズも多い会社なのでわりと柔軟に動ける組織になるんじゃないかと考えたんです。ただ、結局実行まではいかないんです。

何故かというと「インターネットサービス事業を展開しているサイバーエージェント」で働きたい人を採用したいからです。これは藤田社長がよく話しているうどん屋の話。「明日うどん屋をやるよと言ってもやれる人です。仮にサイバーがまったく違う事業をすることになったとして、たとえそれがうどん屋であっても何であっても、我々の組織を持ってすればきっと成功すると思う」っていうのは採用にもすごく浸透した考え方だと思います。

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諸戸:なるほど、カルチャーフィットなのか!やっぱりそこは。

小澤:事業部別採用にしてしまうと、他の事業や会社に興味を持たないし、自分の部署以外知りません、みたいな感じになる可能性がある。各社各事業で自由に裁量持ってやりつつも、「ベンチャーの集合体」としてのサイバーを大事にしたい、そこがなくなるとサイバーっぽくないというか。

諸戸:サイバーっぽい、ぽくないってどういうこと?

小澤:なんだろう、何なんですかね(笑)

諸戸:なんとなく分かるけどね、僕も。サイバーぽいなこの人とか。

小澤:「21世紀を代表する会社を創る」という会社のビジョンがあるんですが、新卒の頃ってよく分からないんですよね。

これって何のこと?みたいな感じですけど、働けば働くほど、そのビジョンの意味がじわじわフィットしてくるというか使いやすくなってくる感じがあります。

あくまで僕の印象ですけど「21世紀を代表する会社を創る」っていう大きい上向きのベクトルがあって、よく見ると小さいベクトルが向きは違えどみんな上を向いている感じというか。魚群が同じ方向に進むことで大きな1匹の魚に見える感じのイメージです。で、その魚群がどんどん増え、少しずつ向きを変えながら突き進み続けていき、全体としてのサイズがまたグッと大きくなるというか。

そのビジョンに向かっていればやり方とか過程はどうでもよくて、暴れるだけ暴れてくれ〜みたいな。そこに共感する人でないと採用しない。サイバーっぽいってそんな感じなのかなぁと思います。

ちょっと採用の話っぽくなるんですが、キャリアって個人と組織と社会の3つの円でよく例えられますよね。

例えば、エンジニア志望の学生でたまにいたのは、「機械学習をやりたいので入社したいです!」とか。これだけだと別にサイバーじゃなく他の会社でもいいじゃないですか。ベクトルが自分にしか向いてないので採用しない。

「機械学習を使ってサイバーの中でこういうもの作りたいです。これができたら世の中こんなにハッピーになるんですよ!ちょっとやってみたのでみてください」、みたいな鼻息の荒い子はやっぱり一緒に働きたいですよね。

諸戸:キーワードとか言語化してこういう人っていうのがある訳じゃないけど、とはいえサイバーっぽい、ぽくないとか個人、組織、社会の3つのベクトルが同じ方を向いているかとかなんとなく共通認識はやっぱりあるんですね。

小澤:そうですね。活躍社員の名前を具体的に出して、あの社員を超える人を採用しないとダメだと言って、その社員を構成する要素を細かく分析して、その上で「あの人超える(むしろ超えさせたい)な、よし採用しよう!」みたいな議論はわりとしていました。

協調性とか行動力とか地頭みたいなのをポイント化してもよくわからないし、評価者によってバラつきが出たり、覚えられないのであまりそういう堅い採用はしてこなかったですね。多分今もそうだと思います。サイバーっぽくないですね。

諸戸:ついつい決めたくなっちゃうんですよね。スタートアップでもちゃんとやろうとしている会社ほど、自頭がいいとか負けず嫌いとか、5個6個せっかく何時間もかけて決めたけどそれってどこも言ってることじゃん、みたいな。過程は大事かもしれないですけどね。

もう1 つ僕が思うのが、サイバーの採用って毎年毎年やり方が変わるじゃないですか。規模が大きくなるにつれて、だんだん変化させるのって大変だと思うんですが。

小澤:そうですね。やっぱりサイバーの好きなところは「思いっきり振る」ところです。今年やった採用手法は1回全部捨てる、来年やるときには今年やったものは二度と使えないものだと思ってやる、そういう意識で採用に取り組むのは結構痺れましたが、個人的にはすごくいい経験をさせてもらったと思います。

「もしも〜がなくなったら」とか「もしも〜が10倍100倍だったら」をよく妄想していました。例えば、今までめっちゃ使っていた媒体を、もし来年全く使わなくなったとしたら数百万円の費用が浮くことになる。

もし浮いたらその予算をどう使うのがいいだろう、という具合により効果的なものを自然と考え始める。他にももしも通年採用が当たり前になったら?1,000人採用するとしたら?人事が今の10倍になったら?研修を無くして速攻配属させたら?とか。勝手に妄想してニヤニヤしてましたね。

語弊があるかもしれませんが、人事って事業部に比べて割とお金をじゃぶじゃぶ使おうと思えば使えると思うんです。でもそこに対するコスト意識とか自分でお金を稼ぐみたいな、直接生み出すわけじゃないですけど、予算のアロケーションを考え、張るところを張る、捨てるときは全部捨ててみる、みたいな選択と集中、そして「妄想」をセットでやるのはとてもいい経験だったなぁと思います。

事業サイドではこういうのって当たり前にやっていると思うんですが、採用とか人事ってとにかくコスト削減が第一にきて、レバレッジ効かせるとか、採用で業績貢献するみたいな視点が意外と抜けてたりするんですよね。

その辺りはゼロベース思考というか、「来年やるときは今年やったことは全部やらない」と決めて、やりながら揺れ戻していくことが、去年より良い採用を生むことに繋がっていたと思います。

諸戸:バージョンアップとかマイナーチェンジとかじゃなくて、毎年がらっとリセットしてやり方を変えていくってことですね。僕も採用やっていたから分かるんですけど、毎年変えるのって、それこそ上手くいってたら提案しづらいし、勇気いりませんか?

特に人事とかノウハウ化しづらいものって一回なんかうまい感じの流れができると、それをもう1回リセットして考えるって結構・・・、言うは易し行うは難しって気がするんですよね。

小澤:そうですね、なので、会社説明会を全部捨てた時とかは、だいぶ怖かったですね。集まらなかったらどうしよう、と不安で寝れないこともありました(笑)

元々説明会を年に100回くらいやっていたんですけど、準備とかを含めると凄まじい時間がかかるので「さばく」採用になりがちじゃないですか。

なので、これって意味あるっけ?サイバーっぽくないよね、ってなって。タイミング良く全社的に業務の棚卸を推進していた期間も重なったので、じゃあ一回全部捨てようということになったんです。

中には全部捨てなくてよくないですか?みたいな意見もありましたが、当時スマホのアプリ作ったときも広告事業部1,600人いたのを800人一気に動かすとか、とにかくサイバーって、2人3人をちょろちょろ動かしても経営としても組織としても強くならないし、新しい課題もイノベーションも生まれない、という考え方が過去の経営的にもあったので、採用としても100回やっていたものを50、30にするのではなく、思い切ってゼロにしよう、という感じになりました。

それに、サイバーには撤退ルールというのもあって、始める前にあらかじめ撤退する基準や期日も決めるんです。だからやってみて本当にやばかったら〜月に戻そうみたいな。

諸戸:実際どうだったんですか?

小澤:最初はやはりひやひやしましたよ。募集も微減しましたが、いい学生に会う確率と、そういう学生にじっくり時間を充てる機会が増えたので、結果的に例年の3か月前倒しくらいで満足のいく採用を終えることができました。(つづく)

お知らせ:諸戸さん・小澤さんは9月25日のイベント「サイバーエージェント大解剖スペシャル」に登壇予定です。すでに定員に達しているので、参加したい方は主催者やパネラーにSNS等で直接お尋ねください

 

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Y(良い人を)J(自分たちで)C(ちゃんと採用する)ーーサイバーエージェントに学ぶ組織論【対談・1/3】小澤政生×諸戸友

企業の命運を握る「事業成長」。過去に大きくなってきた企業はどのようなストーリーを経て巨大組織を作ったのでしょうか? 前回に引き続き、組織や採用の中心にいたキーマンへのインタビューにて巨大組織に作り方に迫る対談シリーズ、2回目はTechBowl代表取締役の小澤政生さんに登場いただきます。 対談者プロフィール 小澤政生さん:1986年生まれ。2010年にサイバーエージェントに入社し、出戻りで2012年…

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写真左:TechBowlの小澤政生さん、クルーズの諸戸友さん

企業の命運を握る「事業成長」。過去に大きくなってきた企業はどのようなストーリーを経て巨大組織を作ったのでしょうか?

前回に引き続き、組織や採用の中心にいたキーマンへのインタビューにて巨大組織に作り方に迫る対談シリーズ、2回目はTechBowl代表取締役の小澤政生さんに登場いただきます。

対談者プロフィール

小澤政生さん:1986年生まれ。2010年にサイバーエージェントに入社し、出戻りで2012年から同社の技術職採用を担当。7年間で述べ1.5万人の採用候補者と面談。それまでの会社説明会を廃止し、オンライン動画でチェックできる「サイブラリー」を企画するなど、一味違う採用のあり方を提案した。2018年にエンジニア採用のTechBowlを創業。代表取締役に就任。

聞き手・諸戸友さん:1980年生まれ。2003年に新卒でリクルートの代理店に入社、2007年にベンチャー企業に特化した採用コンサルティングを行うアイ・パッションの立ち上げに創業メンバーとして参画、1,000人以上の起業家との出会いを経て、2012年クルーズ株式会社に入社後、執行役員に就任し、社長室、広報、ブランディング、新卒採用などを担当。現在は最高広報責任者CBOとしてグループのPR/IRを担当する。

諸戸:早速ですが、今度お願いしているイベント(詳細は最下部)の目的もそうなんですが、大枠のコンセプトとしては「スタートアップが明日からでも真似できること」っていうのをシェアしていきたいです。

サイバーエージェントとかソフトバンクとかDeNAとかベンチャーを代表する有名な会社がたくさんあって、でもどうやってベンチャーを代表するような会社になっていったのかを紐解いていき、その中で「これは自分たちも明日から使えるな」というものを提供できたら最高です。

例えば前回インタビューさせていただいた渡邊大介氏のメッセージヴィークルのお話とか。今回僕が一番小澤さんに聞きたいのは「なぜサイバーには優秀な人材が集まってくるのか」です。

特に優秀なエンジニアは非常に採用しづらい市況なのにサイバーには優秀なエンジニアが集まってくる。もちろんエンジニアに限らずなんですけど。その辺のポイントを紐解いていきたいなと

そもそも優秀な人が集まっているって僕は思っているんですけど、小澤さんが実際に採用しているときはどう感じてました?

小澤:そうですね、優秀な人がどんな人か、採用活動の中で正直僕は分からなかったですね。優秀かどうかより、“会社に合う人”を採用したっていう感じですね。

諸戸:会社に合う人ですか。

小澤:はい。サイバーで新卒採用を7年間やらせていただいたのですが、藤田社長からは、「能力が高い人じゃなくて一緒に働きたい人を採用して」「去年よりいい採用してね。よろしく」という2つだけしか言われなかったです。

そして、直属の上司だった曽山(哲人)さんからは「素直でいいヤツを採用しよう!いい採用と強い組織!滑ってもいいから全部やってね!」と言われました。

採用の仕事を始めた頃は、藤田社長と曽山さんの言葉が自分の中でよく理解できなくて、優秀な人材やそういう人に求められる能力をあれこれ言語化してみたり、いろんな人事採用系の本に書いてあるフレームワークを読み漁りましたが、なんか芯を食っていないというか、サイバーっぽい採用ではなかったんですよね。

その後、現場社員や事業のキーマン、経営陣から声を拾って分けて聞く、これを徹底的にやり込んでやっていくうちにだんだんサイバーっぽい採用になってきました。数年前からはYJCが始まり、さらに採用が強くなってきたと思います。

諸戸:YJCは小澤さんが考えたの?どんな狙いではじめたんですか?

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小澤:Y(良い人を)J(自分たちで)C(ちゃんと採用する)で、YJCです。そのネーミングや大枠の方向性はあした会議で決まりました。あした会議が終わった直後に「YJCをやることが決まったから考えてみて!」みたいな感じでお話をいただきました。

決まっていたのは「良い人を自分たちでちゃんと取る」「玉入れみたいな感じでやって」
という2つだけ。

諸戸:玉入れ、みんなで?

小澤:玉入れみたいな感じって最初は意味が分からなくて、画像検索しまくって、「あ、なるほど、きっとチームに分かれて競争はするけど、全体としては楽しくやれってことだな」という感じでした。

とりあえずいろんな社員にヒアリングしながら、チームを複数作り、各々が「良い人を自分たちでちゃんと採用する」ことができるような体制、ゲームルール、達成後のイメージ、進める中で起こりうる障害や不満の洗い出しをするなど、ガシガシ前に進めました。

諸戸:玉入れという1キーワードからのその汲み取り方はさすがですね(笑)そうなると、サイバーって具体的にあんまりあれしてこれしてと言われることとかないんですか?基本的には採用責任者が大方針やそのメッセージを汲み取って、自分たちで作っていくという感じですか?

小澤:そうですね。採用を始めた頃、関西エリアのエンジニア新卒採用の立ち上げを1人でやらせてもらたんですけど、当時も「2年で100個アプリを作る。エンジニアが足りない。なので採用強化します。オザマサ関西のエンジニア採用よろしくね!」みたいな感じでした。

諸戸:でも藤田さんはそういう意味で言うと採用まで下りてくるってこと?要は、この2つだけ頼むねとか、採用には割と絡むというか、採用の会議とかにも出てくるの?

小澤:いや、藤田社長と採用のためだけに会議をすることはほぼ無いです。ただ、役員会でやっぱり採用が大事だっていう話題が頻繁に上がるんですよね。「採用は一丁目一番地」とか「全ての事業の仕入れが採用」とか、そういうパワーワードは何度も出てくるので採用に関する経営メッセージは明確に伝わってきました。

まるでじっくり話したかのように経営メッセージが降りてくるし、アップデートもされる。755とか社内向けのサイトでも頻繁に目にするので、採用担当だけではなく、社員も会社の方向性を知る機会が多いし、採用に興味を持ってくれることが多かったのはとてもありがたかったです。そこを具現化していくのが採用人事の仕事なので、その辺りは曽山さんと相談しながら一緒にやらせていただきました。

諸戸:総じてスタンスとしては、採用が凄く大事で、採用から始まるんだみたいな文化はサイバー全体であるんですか?

小澤:「採用リクルーターに選ばれることが誉れ」みたいなカルチャーがあります。採用リクルーターに選ばれるためには当たり前ですが、まず本業で結果を出して活躍していることが条件。その上で未来の人材を一緒に探してくれる社員の力は絶大でした。会社の規模も大きくなって、社格も変わってきた今だからこそ、改めて「全ての事業の仕入れが採用」という強いメッセージで襟を正し、YJCを通じてさらに採用を強くしていこう、みたいな大きなパワーを感じました。(つづく)

お知らせ:諸戸さん・小澤さんは9月25日のイベント「サイバーエージェント大解剖スペシャル」に登壇予定です。すでに定員オーバーなので、どうしても参加したい方は主催者やパネラーに直接お尋ねください

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U30のITエンジニア育成コミュニティ「TechBowl」、XTech Venturesと中川綾太郎氏から数千万円を調達

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U30(30歳以下)の IT エンジニア育成コミュニティを運営する TechBowl(テックボウル)は7日、XTech Ventures と、ペロリの元代表取締役で個人投資家の中川綾太郎氏から資金調達を実施した。調達額は明らかにされていないが、関係者の情報を総合すると、数千万円程度と見られる。 TechBowl は、サイバーエージェント出身で同社の関西エリアの技術職採用を担当していた小澤政生氏が設…

XTech Ventures 西條晋一氏、TechBowl 小澤政生氏、XTech Ventures 波多江直彦氏

U30(30歳以下)の IT エンジニア育成コミュニティを運営する TechBowl(テックボウル)は7日、XTech Ventures と、ペロリの元代表取締役で個人投資家の中川綾太郎氏から資金調達を実施した。調達額は明らかにされていないが、関係者の情報を総合すると、数千万円程度と見られる。

TechBowl は、サイバーエージェント出身で同社の関西エリアの技術職採用を担当していた小澤政生氏が設立。今回調達した資金は、共にサービス立ち上げを担う仲間を採用し、プロダクトを開発するために充当する模様だ。ラウンドとしてはシードで、このフェイズでの外部調達はやや前のめり感はある。同社には Web サイトもまだ無いため、現時点での事業可能性は小澤氏が思いを綴った note に見出すより他ない。

IT エンジニアの育成、転職支援サービスはこれまでにも紹介してきたが、TechBowl が差別化しているのは、メンターが全員現役のエンジニアである点だという。テックスタートアップや IT 企業などでバリバリに働いているエンジニアが、TechBowl で育成を担当する。副業が解禁される風潮が追い風となり、彼らが本業で所属する企業からも理解が得られやすい環境が整ってきたようで、メンターはすでに50名集まっている。

また、いわゆる「非エンジニアが、エンジニアを目指してプログラミングを楽しもう」という育成プログラムが多い中で、 TechBowl ではもう一歩進んで「基礎知識はあるものの、実践的にサービスを作ってみたい人」を対象にするという。エンジニアが一定の知識を持ち実務経験を獲得したと判断されれば、TechBowl が就職先の企業を紹介する仕組みを目指しているようだ(許認可を必要とする、有料職業紹介事業の形式をとるのかどうかは不明)。

小澤氏は、THE BRIDGE とのインタビューで、若い人が IT エンジニアに職業に就く上で、これまでは説明会やインターンシップに参加するしか方法が無かった中で、地方にいながらにして開発経験を習得できる仕組みを確立したいと語った。現時点ではオンライン教材は存在せず、担当メンターが一人ずつオンライン面談した後、応募者を受け入れる体制をとっている。エンジニアの育成フェイズに応じて担当メンターが変わる可能性はあるが、教える側と教えられる側との関係性構築に重きを置いているようだ。

サイバーエージェントで7年間、採用関連の仕事をやっていたので、当時からの繋がりもあり、IT ベンチャーやメーカーからも(人材採用の)たくさん問い合わせをいただいている。15〜20社くらいからは、人のデータベースが溜まったら、ぜひ使いたいと言ってもらっている。

企業の担当者は毎年々々、エンジニアという少ないパイを奪い合うのに疲弊してきた。パイ自体を増やす仕組みを作らないと、問題が解決できないというのは、みんなが思ってきたこと。業界全体で IT エンジニアを増やしていこうっていうコンセプトが面白い、と TechBowl に大きな期待をしてもらっている。(小澤氏)

TechBowl は、アンバサダーという仕組みを構築しており、全国の大学などのエンジニアコミュニティ10団体(所属メンバーを合計すると概ね1,000人)と提携している。これらの組織とは共同でイベントを企画したり、東京から講師を派遣したりすることで、団体の所属メンバーのスキルアップやキャリア相談に乗る。また、これらのエンジニアコミュニティは TechBowl との提携を通じて、他のコミュニティとの人的往来や情報交換も期待しているという。

TechBowl への参加を希望するエンジニア、または、エンジニア志望者の応募には、現在のところ費用は発生しない。有料化の予定が明確にあるわけではないが、ビジネスモデルはこれから走りながら細かい部分を詰めるようだ。スキルや実績を積んだエンジニアが一定数に達した段階で、エンジニア採用を希望する企業を集めたマッチングイベントなどが、有望なマネタイズポイントになりそうだ。

今週初めには、やはりメンターシップを主軸に据えたエンジニアのキャリアサービスとして、 IT プロパートナーズが「Graspy」をローンチしている。

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