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サブスク×空間デザインで、遊休スペースから新事業を生み出す——東急とsubsclifeの協業

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 消費者ニーズの変化に伴って、さまざまな企業がサービス形態の変更を余儀なくされています。変化に柔軟に対応することができれば、難しい局面は新たなビジネスチャンスとして捉えることができます。元来、不動産や空間を提供するインフラビジネスは、大掛かりで物理的な制約を伴うため、コストをかけずに素早くサービス提供の…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

消費者ニーズの変化に伴って、さまざまな企業がサービス形態の変更を余儀なくされています。変化に柔軟に対応することができれば、難しい局面は新たなビジネスチャンスとして捉えることができます。元来、不動産や空間を提供するインフラビジネスは、大掛かりで物理的な制約を伴うため、コストをかけずに素早くサービス提供の形態を変更することは難しいとされてきました。

しかし、インフラビジネスの代表プレーヤーでもある東急は、サブスクビジネスの新旗手である subsclife と協業。使われなくなっていたスペースを、コロナ禍にある今のニーズに合った事業へと生き返らせることに成功しました。大企業が持つ不動産というアセットと、スタートアップが持つ柔軟なサービスが、新たな価値を生み出した現場を、関係者の裏話から紐解いてみたいと思います。

サブスクの活用で、暫定的用途での運用が可能に

鉄道会社には数多くの駅があり、そのいくつかには定期券売り場があります。コロナ禍で通勤需要が減ったことに加え、自動券売機の活用やスマートフォンによるモバイル定期券などの普及から、近年は定期券売り場の閉鎖に踏み切る鉄道会社が増えています。東京と神奈川という大都市でサービスを展開する東急電鉄もこの例に漏れず、この春には主要駅6駅にある定期券売り場を廃止しました。

東急では空いたスペースを転用する予定ですが、具体的に新たな用途が決まるまでの間、未使用スペースとして置いておくのはもったいない。空き地に新たなビルが立つまでの間、時間貸しの駐車場として運用されると同じように、暫定的な活用方法を模索していたところ、シェアオフィス化が決まり、subsclife から空間デザインやオフィス家具をサブスク提供する提案が寄せられました。

シェアオフィスの開設に、サブスクを導入した理由

TSO エキスル長津田

今回、定期券売り場からシェアオフィスへ転換を図る舞台となったのは、東急東横線の武蔵小杉駅と東急田園都市線の長津田駅です。どちらも東京郊外に位置し、東京都内へ向かう通勤・通学客の玄関口であるため、コロナ禍でリモートワークやオンライン学習が中心となったことは、鉄道需要の変化に大きなインパクトを与えました。また、沿線各駅の自動券売機が高機能化が進み、定期券売り場に出向かなくても定期が購入できるようになったことも影響しています。

東急は全国で「NewWork」という企業向けシェアオフィスを100カ所ほど展開していますが、今回、取り上げるシェアオフィスは NewWork とは性質の異なるものです。定期券売り場の廃止で空いた場所=遊休資産を次の本格的用途が決まるまでの間スピーディーに活用すること、また、あくまで暫定活用のため低投資でそれを実現できることがポイントでした。一般的なシェアオフィスは什器などの初期投資を回収する期間が必要ですが、サブスクで調達すればその期間を意識せずにすみます。

TSO エキ de work Kosugi

subsclife では、空きスペース活用、ニューノーマルな働き方を促進する空間スペースをお客様の課題に応じて理想の形を提案しています。今回はの拠点はどちらも共通して東急電鉄さまの新しい空間への試みでしたため、サブスク形態で「モノの所有ではなく利用」の形で空間をご支援しています。また、当社は家具の選択のみならず、場所のコンセプト、内装提案からご支援しており、東急電鉄様の拠点特徴から、お客様に受け入れられる場所のご提案を差し上げました。(subsclife 野田さん)

武蔵小杉駅の拠点(TSO エキ de work Kosugi)周辺は、共働き世帯が多く、多くの企業がテレワークに切り替えたことから働く場所のニーズが急増。駅周辺のカフェやコワーキングスペースがにぎわっていたことや、駅周辺の再開発からデザインも重視し「職住近接で働くこともできるカフェ」を目指しました。対照的に、長津田駅の拠点(TSO エキスル長津田)周辺はファミリー層が多く、移動の合間や帰宅前の短時間利用時にくつろげる「ゆとりのあるオープンスペース」をテーマにしました。(subsclife 水野さん)

家具の提供だけでなく、空間提案が採用のきっかけに

東急アクセラレートプログラムで最優秀賞を獲得した、subsclife 代表の町野健氏(右)

subsclife は、2019〜2020年にかけて実施された東急のスタートアップアクセラレータ「TOKYU ACCELERATE PROGRAM(当時)」に参加、東急モールズデベロップメントが運営する商業施設に入居するテナントに対し、サブスクでのインテリアや家具調達を踏まえた空間づくりの提案を行い、デモデイで最優秀賞を獲得しました。家具の提供だけでなく、空間づくりの提案まで行えることのメリットは大きく、この時の評価がきっかけとなって、協業先候補として声がかかったそうです。

subsclife が協業する形で展開したシェアオフィスは、前出の武蔵小杉と長津田に加えて、田園都市線宮崎台駅前にある「電車とバスの博物館」内のスペースにも採用され、合計で3店舗にまで広がりました。東急の〝本業〟の現場社員が企画から参加、構想から実装まで2ヶ月半という短期間でプロジェクトが進められ、どの店舗も手作り感溢れる仕上がりとなった。世の中の変化に呼応した柔軟な動きが求められる中、現場社員が事業のピボットを体現する好機となりました。

構想段階から参画していた乗務員や駅係員が「ニーズを組みとり、スピーディーに検討、そして実施」という一連の 流れを体感し、また運営(商売)の難しさを肌で感じる事で新たな働き方への一歩を踏み出していると感じていますし、意識変革にも繋がっていると考えます。また、コロナ禍で先行き不透明な中で新たな事業を始めるという事を実施することで、わずかながら部門活性化にも寄与できたのではと考えています。(東急電鉄 澤口さん

2ヶ月半というスピード感、現場社員のプロジェクト参画、サブスクを利用した遊休資産の活用といった文脈で注目を集め、7月のオープンからこれまでの3ヶ月間、このシェアオフィスは数多くのメディアに取り上げられました。東急ではユーザの満足度向上に向け、今後もスピーディーな改善を続けたいと言います。一方、subsclife はこれまでにもオフィスの空間づくり支援の実績はありましたが、全くの異分野に関われたことを機に、新たな事業拡大の可能性を期待しているとのことでした。

空間に付加価値をもたらすsubsclife

水野さんがデザインした、エキスル長津田のレイアウト

突貫作業で進められたシェアオフィスの開設プロジェクトに関わったこと、東急と協業したことが実績となって、subsclife には他社からも多くの相談が舞い込んでいます。コロナ禍で宿泊予約が入りにくくなったホテルがロビーを改造して仕事できる空間にしたいという相談のほか、オフィスビルが建設ラッシュの東京では、デベロッパ各社がテナント獲得に激しい競争を強いられる中、空きの出たフロアに subsclife が家具をつけた形で賃貸に出すなど、不動産をより借りてもらいやすくする価値創造にも一役買っています。

シェアオフィスのプロジェクトは、タイトなスケジュールでしたが、夜遅い時間帯まで連絡をやり取りさせていただくなど、プロジェクト実現のために同じ方向を向いて、熱意を持ってご一緒させていただくことができ、楽しい経験をさせていただきました。(subsclife 野田さん)

東急さんは、街を作ったり都市を作ったり、多くの領域で事業を展開されているので、オフィス以外の空間作りでも、またご一緒させていただける機会があるとうれしいです。(subsclife 水野さん)

ビルや不動産のライフサイクルは数十年単位とされ、一方で人々や社会のニーズはもっと短い年月で変化を繰り返しています。スピードが強みのスタートアップが経済の中心で活躍するようになってきていることもあって、オフィスやワークスタイルの変化速度は加速の一途をたどっています。需要と供給の間のギャップを柔軟なサービスで埋めてくれる存在として、subsclife の今後の事業展開に大いに注目していきたいと思います。

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フードデリバリー「Chompy」が東急百貨店デパ地下と連携ーーアプリで注文、デリバリーやテイクアウトが可能に

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 フードデリバリーサービス「Chompy(チョンピー)」は9月から東急百貨店と協力し、デパ地下でのお買い物体験を再現した試験運用を開始したと発表している。 渋谷 東急フードショー、東横のれん街、東急フードショーエッジの3拠点で実施するもので、「テイクアウト&デリバリー by 東急フードショー」アプリによ…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

フードデリバリーサービス「Chompy(チョンピー)」は9月から東急百貨店と協力し、デパ地下でのお買い物体験を再現した試験運用を開始したと発表している。

渋谷 東急フードショー、東横のれん街、東急フードショーエッジの3拠点で実施するもので、「テイクアウト&デリバリー by 東急フードショー」アプリにより、利用者は注文・決済・受け取りの指定ができるようになる。

サービスイメージ

アプリから注文した商品の受け取りは、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)という方式で、各食品フロアに設置されたロッカーもしくはデリバリーを選択することができる。

デリバリーは店舗から3Km圏内の制限があり、料金は700円から900円。テイクアウトについてはロッカーの利用料として200円かかるほか、注文から最短30分で受け取り可能です。Chompy代表取締役の大見周平氏は今回の連携のきっかけを次のようにコメントしている。

2020年の2月から渋谷を中心にデリバリーを開始しており、当初より東急百貨店さんとの連携に可能性を感じていてアクセラレーションプログラムに申し込ませていただいたのがきっかけです。

今まではChompyのポータルアプリ上への出店という形式を取っていましたが、デリバリー市場や飲食EC市場の変化に伴い、公式アプリの必要性を強く感じるようになりました。またこのタイミングで、東急百貨店さん側でもBOPISを実現するオリジナルアプリのPJTがスタートしており、リリースまでトントン拍子で議論が進んだ形です。(Chompy代表取締役 大見周平氏)

対象になる商品は惣菜や弁当、菓子、生鮮・グローサリー、和洋酒など幅広く、同一拠点内であれば一回の利用で複数のショップの商品をまとめて注文できる。両社は昨年8月からフードデリバリー「Chompy」内で東急百貨店のデパ地下グルメのデリバリーサービスを実施しており、この運用をベースに東急百貨店向けの専用アプリとして開発し、テイクアウトにも対応した。

まだ注文数は限定的ですが、短い期間に高頻度でリピートするお客さまがいたり、多くの注文が複数店舗にまたがった注文であるなど、当初の仮説が上手くワークしている様子がうかがえます。今後は、まず渋谷の3拠点にて集客・LTV向上の2側面でアプリの磨き込みを実施していきたいと考えています。(Chompy代表取締役 大見周平氏)

一方の東急百貨店側も昨今のライフスタイルの急激な変化に対し、店舗販売だけでなく個人宅やオフィスへ直接届ける必要性を感じつつあったと今回の提携の背景を語る。

2020年8月から開始したChompyアプリ内での東急フードショーエッジ出店において『複数ショップまとめ買いが多い』『高頻度で注文されるお客様が一定数存在する』など、顧客ニーズを実感することができたことが背景にあります。そこで今年の春に、Chompyが公式アプリを開設するサービスを提供開始することを知り、当社のアプリ開発・共同運営を依頼したという流れです。

新規アプリのため会員数、注文数はまだ途上であるものの、すでに上記の複数ショップまとめ買いや、お得意様の存在は傾向として見えています。まずは渋谷3拠点において成功事例を作り、その後東急線沿線を中心とする当社運営店舗に拡大していきたいと考えています。(東急百貨店事業戦略室、事業開発担当マネジャー下山拓郎氏)

また下山氏は今後の結果をふまえ、中長期的に店頭購買と同列にテイクアウトやデリバリーが自然と選択肢に並ぶような体験を提供していきたいとした。

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東急がスタートアップとの事業共創スキームをリブランド、アクセラレータからアライアンスプラットフォームへ

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東急(東証:9005)は4日、2015年7月から運営してきた「東急アクセラレートプログラム」を「東急アライアンスプラットフォーム」に名称変更することを明らかにした。略称は TAP のままとなる。スタートアップシーンの情勢の変化からスタートアップのニーズが変化してきており、東急では、事業支援の意味合いが強い「アクセラレータ」から、より 対等な立場で双方向のコミュニケーションを行うことで応募企業との事…

「東急アライアンスプラットフォーム」事務局の皆さん。
左上から時計回り:福井崇博氏、金井純平氏、武居隼人氏、吉田浩章氏

東急(東証:9005)は4日、2015年7月から運営してきた「東急アクセラレートプログラム」を「東急アライアンスプラットフォーム」に名称変更することを明らかにした。略称は TAP のままとなる。スタートアップシーンの情勢の変化からスタートアップのニーズが変化してきており、東急では、事業支援の意味合いが強い「アクセラレータ」から、より 対等な立場で双方向のコミュニケーションを行うことで応募企業との事業共創を推進する「アライアンス」に進化する意味を込めたとしている。

東急では、未来事業を創出する社内組織としてフューチャー・デザイン・ラボを開設しており、TOKYU 2050 VISION「東急ならではの社会価値提供による世界が憧れる街づくり」を発表している。この実現に向けて、事業共創の対象領域をこれまでの不動産、交通、生活サービスなどの事業領域に加えて、グループを横断して注力する分野「デジタルプラットフォーム」、「脱炭素・サーキュラーエコノミー」を加えた19領域に拡充する。

Image credit: Tokyu

プログラムがプラットフォームとなることによって、東急グループ各社も、参加を希望するスタートアップ各社も、相互に事業共創へのアクセスがしやすくなる。まず、新しくなる TAP の web サイトにはオウンドメディア「TAP Library」が開設され、これまでに参加したスタートアップとの共創事例などのほか、東急グループ各社からも、スタートアップの力を借りて解決したい課題が紹介される。スタートアップから提案を受ける前に、事業会社から課題を提示するというアプローチに変わる格好だ。

TAP はこれまで東急グループ各社のリソースを活用し、スタートアップにテストマーケティングの機会を提供してきた。2018年度からは締切を設けない通年募集、適宜共創を検討するという体制となり、2020年度からは、東急グループとの事業共創を前提とせず、東急グループにとっての新領域も採択の対象となった。グループ傘下27事業者(19社)17領域が参加しており、これまで54件の実証実験、26件の事業化、7件の業務・資本提携を実現してきた。

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まちづくりに「障害のある作家のアート」が染み出すROADCASTプロジェクト、ヘラルボニーと東急が共創

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。 近年、企業活動において社会的な要請への対応がより強く求められるようになりました。SDGsにまつわる環境や福祉、ダイバーシティへの理解と行動など、利益と企業価値の向上だけでは見えてこない「人間本…

写真左から:ヘラルボニー代表取締役の松田崇弥さん、東急のフューチャー・デザイン・ラボ事業創造担当の片山幹健さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

近年、企業活動において社会的な要請への対応がより強く求められるようになりました。SDGsにまつわる環境や福祉、ダイバーシティへの理解と行動など、利益と企業価値の向上だけでは見えてこない「人間本来の権利や生活に関わる取り組み」を企業は無視することができなくなりつつあります。

一方、こういった取り組みにはアイデアが必要です。今回ご紹介するヘラルボニーと東急の共創事例は、人と社会、企業それぞれが持っている課題を和らげつつ、持続可能な取り組みとしてまとめることに成功しています。街のビルボードをアートに変える取り組みについて、ヘラルボニー代表取締役の松田崇弥さんと東急のフューチャー・デザイン・ラボ事業創造担当の片山幹健さんにその裏側をお聞きしました。

まちづくりに「障害のある作家のアート」が染み出す

街の中に溢れる屋外広告のスペースを出稿したい広告主とマッチングするプラットフォーム、それが東急の展開する「ROADCAST」です。この広告スペースに出稿がない空き期間をアートで華やかに演出しようというのが、今回の「Wall Art MUSEUM STORE」プロジェクトになります。

一方、タッグを組んだヘラルボニーは知的障害のある作家とアートライセンス契約を結び、2,000点以上のアートデータを元に事業を展開するスタートアップです。今回の共創プロジェクトでは、東急の管理する壁面広告の「空き枠」にヘラルボニーが管理するアートを配置しよう、というものでした。

もう少し具体的に説明すると、通常、壁面広告には下地となる枠があります。ここは空いている期間に何も表示されないか、空き枠募集の電話番号などが記載されることが多くなります。当然ながら見た目は悪く、空いている期間が長いと人気がないような印象を持たれてしまいます。

「Wall Art MUSEUM STORE」作品

東急や壁面広告枠を提供する不動産事業者にとっては、広告出稿がない期間も壁面を華やかに演出できると同時に、福祉への取り組みに協力することもできます。また、ヘラルボニー側も預かる作家の作品を一人でも多くの人々に届けることができるようになる、というわけです。

アイデアなのはここで作家の作品を買えるような導線を作ったことです。

QRコードを掲載してそこからオンラインストアで、アート作品をプリントしたグッズなどを購入できる仕組みなのですが、松田さんのお話では直接ここからやってくると同時に、街中でヘラルボニーの作品を知った人たちが自然とサイトに集まるようになったとされていました。片山さんはプロジェクトの狙いをこう語ります。

「売上の一部はアーティストと福祉施設に還元され、福祉分野の経済的活性化につなげます。渋谷、原宿、表参道、虎ノ門、新宿、銀座など約40箇所から開始し、今後もウォールアートを増やしていく計画です。開始から約3か月で300件ほどのQRコード読込があり、そのうち約30%が商品の購入ページに遷移しています。

ROADCASTは、屋外広告という切り口で街のちょっとした空きスペースを活用して街の価値向上につなげていく事業です。景観を害するものとして街の嫌われ者だったり、効果測定が難しくただただコストのかかる広告媒体だった屋外広告の可能性を追求し、アート展示など街の賑わい形成につながるメディアとしての整備やDX推進による効果測定の仕組み化など、街にとっても広告主にとってもWin-Winな存在を目指したいです」(片山さん)。

東急アクセラレートプログラムでの出会い

壁面アートからグッズを購入できる(ヘラルボニーのECサイト)

両社の共創は、東急が実施するアクセラレートプログラムにヘラルボニーが参加したことで始まります。

「元々ROADCASTは、落書きに悩む壁を中心に街中の数十~百箇所で広告を同時展開し、街の賑わい形成や落書き抑止という街への貢献を意識して展開をしていました。一方で殺風景な壁に戻ってしまう広告未稼働時がもったいないと感じており、持続可能な形で街や社会に貢献できる活用方法を模索していたんです。そんな折、ヘラルボニーの全日本仮囲いアートミュージアムという取り組みをお伺いし、それを発展させる形で、街をまるごとミュージアムショップにできないかというアイデアをヘラルボニーさんと話し合いました。期間限定のイベント的にアートを展示して終わりではなく、持続性のある展開としてじわじわと街中にウォールアートを増やしつつ、ウォールアートからECへと誘導して物販収益につなげているのがポイントです」(片山さん)。

街全体をアートミュージアムにしよう、という方向性はすぐに固まるものの、屋外でヘラルボニーのアートを展示すると施工コストが大きくなってしまいます。福祉という観点ではよい取り組みも持続性がなければイベントで終わります。そこで出たアイデアが壁面設置の下地パネルそのものをアート作品に変える、というものだったのです。下地パネルの製作・施工コストもそこから生まれる物販収益から回収することにしました。

「知的障害のあるアーティストとの接点はまだまだ少ないため、街を通してアート作品を掲出することで繋がりを生み出せたことには大きな意義があったと考えています。両社にとってプラスになるような仕組みを整えるのに苦戦しましたが、QRコードから売れた分の売り上げをシェアする仕組みを構築したことで、ヘラルボニーは壁面で販売し、ROADCASTさんは未利用壁面を活用できる、両者にとって持続可能な方法ができたと思います。結果、街でアート作品を発見した、というSNS投稿が見られるようになりました。壁面から弊社について検索した人など、認知度の向上に繋がっているのではと考えています」(松田さん)。

片山さんによれば、壁面を貸している物件所有者の方からも好評をいただいているそうで、こういった形で少しずつ、SDGsなどの活動に寄与できるという点も評価されているのだとか。今後は時期ごとに企画を練ってWall Art MUSEUM STOREならではのアート展示やアートを落とし込んだプロダクトの取り扱いにも挑戦したいとお話されていました。

次回も国内の共創事例をお届けいたします。

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東急のアクセラレータが2020年度のデモデイを開催、スタートアップ6チームが東急グループ各社との共創事業を提案ピッチ

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東急(東証:9005)は18日、都内で同社のスタートアップアクセラレータ「東急アクセラレートプログラム(TAP)」2020年度の最終審査会を開催し、東急グループとの事業共創検討に至った6社が登壇した。なお、今回は新型コロナウイルス対策のため無観客開催、審査員は遠隔での参加となった。 5年目を迎えた TAP は、東急グループのリソースを活用し、スタートアップにテストマーケティングの機会を提供するのが…

東急(東証:9005)は18日、都内で同社のスタートアップアクセラレータ「東急アクセラレートプログラム(TAP)」2020年度の最終審査会を開催し、東急グループとの事業共創検討に至った6社が登壇した。なお、今回は新型コロナウイルス対策のため無観客開催、審査員は遠隔での参加となった。

5年目を迎えた TAP は、東急グループのリソースを活用し、スタートアップにテストマーケティングの機会を提供するのが特徴。2018年度からは締切を設けない通年募集、適宜共創を検討するという体制となった。2020年度からは、東急グループとの事業共創を前提とせず、東急グループにとっての全くの新領域も採択の対象となった。グループ傘下27事業者(19社)17領域が参加している。

2020年度はスタートアップ146社からエントリがあり、うち52社がプレゼン審査を通過、最終的に6社が共創検討対象(今回の登壇者)に残った。第1期からの通算での応募累計791社、うち PoC を実施した件数は52件、事業提携や資本提携を結んだのは7社で、東急グループからスタートアップへの出資総額は10数億円に達した。

最終審査会では、新規性、親和性、成長性、実現可能性の4つの観点で審査された。今回の最終審査会で審査員を務めたのは以下の方々だ。

  • グローバル IoT テクノロジーベンチャーズ 代表取締役社長 安達俊久氏(ゲスト審査員)
  • デロイトトーマツベンチャーサポート 代表取締役社長 斎藤祐馬氏(ゲスト審査員)
  • SBI インベストメント CVC 事業部長 加藤由紀子氏(ゲスト審査員)
  • Spiral Capital シニアアソシエイト 立石美帆氏(ゲスト審査員)
  • 東急 代表取締役社長 髙橋和夫氏(審査員長)
  • 東急 取締役 常務執行役員 フューチャー・デザイン・ラボ管掌 藤原裕久氏(内部審査員)
  • 東急 執行役員沿線生活創造事業部長 金井美恵氏(内部審査員)

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【東急賞(最優秀賞)】ヘラルボニー ✖️ 東急百貨店 ✖️ 東急

賞金:109万円

知的障害者は日本国内に108万人、世界に2億人いると言われる。ヘラルボニーは彼らが持つ能力を生かし、特にアートというアプローチで事業化を支援している。日本各地の福祉施設と連携することで、知的障害者が描いたアート作品をライセンス販売する事業を展開しており、これまでに集めたアート作品の数千点以上。

ヘラルボニーは、東急の社内ベンチャーで、渋谷などの街の壁面にアートや広告を掲出できるマッチングサービス「ROADCAST」と協業。ROADCAST 未稼動時のヘラルボニーアーティストの作品掲出や QR コード掲出によるプロダクト販売などに取り組んだ。東急百貨店のチャリティープロジェクトなどの企画や ROADCASTとの「Sakura Art MUSEUM STORE」などの連動企画を行う予定。

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【渋谷賞(優秀賞)】SYN ✖️ 東急百貨店

賞金:42万8,000円

SYN は、DeNA でカーシェアリングの「Anyca(エニカ)」事業の立ち上げなどに従事した大見周平氏らにより2019年6月創業。先行するフードデリバリ各社とは一線を画し、飲食店の多様性と料金の安さにフォーカスした「Chompy」を展開している。同社は昨年8月から、東急百貨店との協業により、東急百貨店の地下食料品店街(デパ地下)の複数店舗から取り寄せできる実証実験を開始。

二段階購入オペレーションにより、Chompy のクルーがデパ地下に入らなくても複数店舗の商品を取りまとめでき、百貨店と Chompy クルーがやりとりできる Slack を使った業務フローを確立。昨年8月からの注文実績は売上ベースで1,000万円相当4,000回に上り、注文の約半数が複数店舗横断のオーダーだったという。今後、デパ地下だけでなく、百貨店全体の OMO 推進に注力する。

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【二子玉川賞(優秀賞)】ウミトロン ✖️ 東急ストア

賞金:25万円

日本とシンガポールを拠点とするウミトロンは。魚や水産物の動きを AI や IoT、リモートセンシング技術を活用して解析し、それに応じた給餌をすることで、環境負荷の少ない水産養殖技術を確立している。こうした技術をもとに育てられ、環境認証を得た魚や水産物を、同社では養殖魚の認知向上・消費促進を目的として、独自サステナブルブランド「うみとさち」として展開している。

ウミトロンは2021年2月、東急ストア5店舗で「うみとさち」の養殖魚をテスト販売した。サステナブルなシーフードの価値が伝わりにくいという店舗側の課題、サステナブルなシーフードを入手できる所が無い、という消費者側の課題解決を念頭においた。生産者や魚の情報、レシピが得られる QR コード配置、六本木ミッドタウンの店舗ではバーチャル店員が応対した。

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【SOIL 賞】カンリー ✖️ 東急百貨店

賞金:10万円

カンリー(旧社名:Leretto)は、Google マイビジネスや SNS アカウントの一元管理サービス「Canly(カンリー)」を提供。リアル店舗を探す時には、その店舗のウェブサイトよりも、Google 検索か Google Maps の結果に頼って、店舗や位置情報にたどり着くことが多い。同社は、Google マイビジネスの表示順位を向上させる MEO(Map Engine Optimization)を展開する。

カンリーでは2020年9月から、東急百貨店の国内主要店舗に Canly を導入し、改ざん防止機能などを用いた情報整備や、一括配信・管理機能による情報発信、投稿やクチコミ分析などに取り組んだ。今後、Canly の機能をさらに活用し、東急百貨店に関するクチコミへの返信、主要媒体との連携強化、SNS アカウント一括管理により、顧客との双方向のコミュニケーションを強化する計画だ。

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【SOIL 賞】アイリッジ ✖️ 東急建設

賞金:10万円

アイリッジ(東証:3917)は、「popinfo」など O2O アプリのプラットフォーム提供や、リテール・鉄道・金融向けのコンシューマ向けアプリの開発に注力している。東急グループとは、これまでに「東急線アプリ」や東急線アプリ内朝活キャンペーン「グッチョイクーポン」の開発でも取引関係にある。

同社では、鉄道工事を行う企業向けの工具管理ソリューション「RFID Tool Management」を提案した。鉄道工事の現場では、線路内に持ち込んだ工具類の置き忘れがないかを指差点呼・チェックリスト管理で行っていたが、これを RFID を使った自動処理に置き換えることで、東急建設との PoC では26分から3分に(80%)削減できたという。今後製品化し、全国の鉄道会社への展開を目論む。

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【SOIL 賞】フラー ✖️ 東急

賞金:10万円

フラーは千葉・柏の葉に本拠を置き、企業に対しアプリやウェブなどデジタルにかかわる支援を展開する、「デジタルパートナー事業」を展開するスタートアップ。これまでには、アプリ分析プラットフォーム「App Ape(アップ・エイプ)」などの展開で知られる。今回、東急とは「CaaS(City as a Service)構想実現に向けたファーストステップとしての街づくりアプリ」で協業。

詳細は現時点で非開示のため、本稿では詳述しない。アプリは近日公開される予定。

その後、アプリ「Common」のローンチが発表された。(2020年3月31日追記)

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【ベストアライアンス賞】東急百貨店

今年度の TAP で最も活躍・貢献した TAP 参画事業者(東急グループ傘下社)を TAP 事務局により選出。東急百貨店が選ばれた。今年度の TAP で、東急百貨店は選出スタートアップのうち、ヘラルボニー、SYN、カンリーの3社と協業している。

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“世界が憧れる街づくり”を共に実現する企業に出資ーー東急CVC活動

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けした住友生命の「SUMISEI INNOVATION FUND」に続いてお届けするのは、東急株式会社(以下、東急)のCVCです。 東急は11月にCVC活動の1号案件として、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を運営する日本クラウドキャピ…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

企業の共創活動をリレー的に繋ぐコーナー、前回お届けした住友生命の「SUMISEI INNOVATION FUND」に続いてお届けするのは、東急株式会社(以下、東急)のCVCです。

東急は11月にCVC活動の1号案件として、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を運営する日本クラウドキャピタルとの資本業務提携を公表しました。東急側から1億円の出資に加え、相互の案件紹介やFUNDINNO利用企業への東急からの協調投資、沿線の中小企業への株式投資型クラウドファンディングの展開を予定しているそうです。

東急のCVC活動はファンドや子会社のような形式ではなく、東急本体による直接投資型を採用しています。1案件あたりの出資額は数千万円から数億円規模で、投資対象には「ヘルスケア」、「住む・働く・移動」、「ソーシャルファイナンス(コミュニティサービス含む)」がテーマとして挙げられています。(本文中の太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部)

CVC活動の開始経緯について教えてください

東急:東急では、2019年9月に公表した長期経営構想に基づき「TOKYU 2050 VISION」を掲げています。2050年に向けて「東急ならではの社会価値提供による世界が憧れる街づくり」の実現を目指したビジョンです。

「TOKYU 2050 VISION」全体像

特に「City as a Service」を中心としたリアルとデジタルの融合による次世代型街づくりは重要な指針として捉えており、それに基づく新規事業の創出・推進がCVC設立の目的です。そのため、初期フェーズの投資対象はヘルスケア、住む・働く・移動、ソーシャルファイナンス(コミュニティサービスを含む)の3つをテーマに置かせていただいてます。

東急さんと言えば2015年から東急アクセラレートプログラム(TAP)などを通じてスタートアップとの協業を模索されていました。改めてCVC活動として公表されたのはどうしてでしょうか

東急:今まで東急のスタートアップ投資は基本的に、案件ごとに起案する事業部が異なっていた経緯がありました。そのため、弊社内でCVC専任チームを作ることで会社としてノウハウを蓄積していく、というのも今回の主旨の一つです。

また、2050年目線でのバックキャストアプローチによる新規事業創造においては、CVCはリスクを適切に抑えながらも長期視点でパートナー関係を築くことができる最適な手段の1つだと考えています。お話の通り、今まで当社では、オープンイノベーション推進の一環としてTAPを推進してきました。TAPでは主に、既存事業との連携や周辺領域での検討、PoCを経た上での事業部出資が中心となっています。

なるほど、投資案件に向き合う専任組織を作った、ということですね

東急:はい、CVC専任チームを置くことでPoC等の結果を待ってから出資検討する事業連携先行型ではなく、スタートアップの資金調達のスケジュール感も考慮することが可能になります。優れたスタートアップに大企業が選ばれる時代において、お互いの将来像を描いた上で投資先行型のマイナー出資を行う方針としています。

また、投資方針としては、直近の事業連携の有無よりも将来的に「TOKYU 2050 VISION」における”City as a Service”構想で必要なサービス・テクノロジーかどうかが重要な指標となると考えています。「ヘルスケア」「住む・働く・移動」「ソーシャルファイナンス(コミュニティーサービス含む)」に関連して東急との連携に興味を持っていただけるスタートアップの皆さんと、お会いできるのを楽しみにしています。

さて、今回、第一号案件として発表されたのはFUNDINNOさんとの資本業務提携でした

東急:FUNDINNOさんとの提携は「ソーシャルファイナンス」をテーマとした、東急線沿線に関わる人々によるスタートアップ企業・地域事業者への投資を通した街づくりへの参加機会の創出を目的としたものです。

日本クラウドキャピタル×東急 連携イメージ

初期フェーズとしては、東急とFUNDINNO双方のスタートアップネットワークを活用した相互の案件紹介やFUNDINNO利用企業への東急からの協調投資、その後の事業連携による社会実装を中心に取り組みを進めていく予定です。将来的には、東急線沿線の中小企業への株式投資型クラウドファンディングの展開も進めていきたいと考えています。

大手企業からの出資と株式投資型クラウドファンディングの組み合わせにどのような可能性を感じておられますか

東急:CVCの今後の出資案件でも、スタートアップの意思や希望を尊重することが大前提ですが、FUNDINNOでの資金調達と弊社からの協調投資を両立させた設計も想定しています。これにより、スタートアップ側は沿線などの個人投資家をファンにつけた上で、東急と長期視点で事業連携に取り組めるメリットを見出せるのではという狙いがあります。

ありがとうございました。

ということで東急CVCの活動についてお届けしました。次回はフジテレビの取り組みにバトンをお渡ししてお送りします。

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東急がCVCを開始、初案件で「FUNDINNO」運営に出資——投資型クラファンとの連携で、協調投資・相互送客も視野に

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東急(東証:9005)は25日、スタートアップへの出資を行う CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)事業を開始することを明らかにした。特別目的会社やファンドなどのビークルを設立はせず、東急本体の事業会計から出資を行う。投資判断は東急の経営陣が参加する委員会で実施されるとみられるが、全体予算規模や投資先一社あたりの出資額(チケットサイズ)などは現時点で設定していない模様。 なお、同社は CVC …

東急(東証:9005)は25日、スタートアップへの出資を行う CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)事業を開始することを明らかにした。特別目的会社やファンドなどのビークルを設立はせず、東急本体の事業会計から出資を行う。投資判断は東急の経営陣が参加する委員会で実施されるとみられるが、全体予算規模や投資先一社あたりの出資額(チケットサイズ)などは現時点で設定していない模様。

なお、同社は CVC の第1号案件として投資型クラウドファンディング「FUNDINNO(ファンディーノ)」を運営する日本クラウドキャピタルに出資し業務提携したことも明らかにした。出資金額や持分は明らかにされていない。東急と日本クラウドキャピタルは業務提携を通じて、投資案件への協調投資と相互送客を行うとしている。

東急は以前から、グループ各社や各部門とスタートアップの協業を促すオープンイノベーションプログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」を運営している。TAP では、グループ各社や各部門が持つ「既存の事業」の DX を主眼に置いているため、東急とって「未来の事業(東急の資産を活用しながらも、例えば、鉄道や不動産などに直接関係しない事業)」の創出には限界があった。

こうしたことから、東急では未来事業を創出する社内組織としてフューチャー・デザイン・ラボを開設、TOKYU2050VISION「東急ならではの社会価値提供による世界が憧れる街づくり」を発表していた。今回の CVC 事業開始は、この TOKYU2050VISION の実現、つまり未来事業の創出に特化したものとなるため、既存の TAP とは投資対象となるスタートアップやスコープも異なるものとなる。

福井崇博氏

これまでオープンイノベーションをやってきたので、スタートアップ界隈でも東急の名前を知ってもらえている。ただ、将来に対する投資、長期的な連携強化に向けた手段として、CVC の活動が必要なのではないかと1年ほど前から準備に着手していた。

TAP の活動はグループの各社や各部門が対応するため、オープンイノベーションの案件ごとに主体が異なる。既存事業の改善や周辺事業が中心となっていた活動から、東急グループが組織として出資ノウハウを貯めるための活動も必要なのでは、ということになった。

TAP に採択されたスタートアップが CVC の投資対象になるとは限らないし、CVC から出資したスタートアップが TAP に採択されるとも限らない。(東急 フューチャー・デザイン・ラボ イノベーション推進担当 課長補佐 福井崇博氏)

<参考文献>

東急 CVC と日本クラウドキャピタルとの協業イメージ
Image credit: Tokyu / JCC

一方、日本クラウドキャピタルは FUNDINNO に参加する投資家の裾野の拡大や、投資型クラウドファンディングで資金を得たスタートアップのその後の事業展開支援の一環として、以前から東急と協業の可能性を模索していたという。

柴原祐喜氏

東急沿線の特色を生かしたクラウドファンディングの実施や、東急沿線地域の方々から投資家を集めるということも可能だろう。

また、FUNDINNO で調達を終えたスタートアップの中から、東急グループ各社の事業と連携したい、というところもあるはず。投資型クラウドファンディング → CVC 調達という「協調投資」のケースも生まれてくるだろう。

こういった協調投資が実現できれば、対象社はファンを取り込んだ上で、東急グループの事業会社のアセットを使って実証実験できるので、プロジェクトの成功確度もより高まる。(日本クラウドキャピタル 代表取締役 CEO 柴原祐喜氏)

前出した東急の CVC 活動では、TOKYU2050VISION における「City as a Service(CaaS)」構想に基づいて、出資検討対象となるテーマがヘルスケア、住む・働く・移動、ソーシャルファイナンス(金銭的リターンだけではなく社会的リターンも追求する金融)の3つに設定されている。日本クラウドキャピタルは、ソーシャルファイナンスの文脈から出資を受けることが決まったそうだ。


CVC 活動とは別に、東急はこれまでに TAP の枠組みでスタートアップとの事業提携や資本提携を6社と結んでおり、東急グループからスタートアップへの出資総額は10数億円に上っていることを明らかにしている(今年3月現在)。

一方、2017年4月に FUNDINNO をローンチした日本クラウドキャピタルは、サービス開始後3年目を迎えた今年4月、投資型クラウドファンディングへの参加者登録が2.7万人を超えたことを明らかにしている。今年9月には約8.5億円を調達し、累計調達額が約14億円、株主数が83(機関投資家、個人投資家を含む)となったことを発表していた

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個店にフォーカス・配達料も安いフードデリバリ「Chompy」、プレシリーズAラウンドで6.5億円を調達——東急デパ地下からのお取り寄せも

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東京・渋谷などを中心にフードデリバリサービス「Chompy(チョンピー)」を運営する SYN(シン)は6日、プレシリーズ A ラウンドで6.5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、ANRI、Coral Capital、DCM Ventures、Delight Ventures、The Breakthrough Partners GO FUND。これは、同社が設立後まもない昨年6月に…

Image credit: Syn

東京・渋谷などを中心にフードデリバリサービス「Chompy(チョンピー)」を運営する SYN(シン)は6日、プレシリーズ A ラウンドで6.5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、ANRI、Coral Capital、DCM Ventures、Delight Ventures、The Breakthrough Partners GO FUND。これは、同社が設立後まもない昨年6月に実施したシードラウンドで実施した2億円の調達に続くものだ。

Delight Ventures と Coral Capital はシードラウンドに続くフォローオン。SYN 創業時からの累積調達額は約9億円に達した。

今回の調達を受けて、SYN はこれまでオープンβ版として提供していた Chompy の正式ローンチをアナウンスした。また、配送料無料で複数店舗からオーダーできる「らくとく便」、東急百貨店との協業により、東急百貨店の地下食料品店街(デパ地下)から取り寄せができる実証実験も開始する。

大見周平氏

SYN は、DeNA でカーシェアリングの「Anyca(エニカ)」事業の立ち上げなどに従事した大見周平氏らにより創業。また、創業当初からクラウドワークス副社長の成田修造氏もアドバイザーとして名を連ねる。大見氏は、自分が共感できるか、社会課題を解決できるか、将来の夢を他の人々と共有できるかを軸に、さまざまな事業の可能性を模索してきたという。

そんな中で、食は日本が持つ世界的にも非常に強いアセットであるを再認識し、一方で、高齢化や単身生活や共働きといった社会構造の変化に、現在の飲食業の提供形態は必ずしもフィットしていないと考えた。多額の設備投資やアグレッシブな多店舗展開に依存する従来型モデルに依存しなくても、消費者に望まれる飲食店に新たな収益源を提供することを Chompy は目指している。

飲食業は、もともと(新型コロナ前からも)創業から3年で半分が倒産する市場。統廃合は非常に激しい。もちろん、新型コロナはそれを加速するし、新しい出店を控える人もいるだろう。そこに、どのような仕組みを提案していけるかだと思う。

飲食業の人々が持つエモい部分と、さまざまなバリューチェーンを切り分けて考えられるかどうかが重要。料理人を揃えるマネジメント力、キッチンがあること、食材を揃えられること、ゲストにサーブできること——いろんなバリューチェーンがあるが、それを明確に定義できている会社の方が、新型コロナ後もうまくいっている。(大見氏)

大見氏によれば、飲食店が外食の延長上でフードデリバリをやろうとするとうまくいかないという。利益を圧迫し、場合によっては逆ザヤにさえなる。コロナ禍においては、来店時ほどの最高の体験は提供できないにせよ、まずは店を知ってもらうためにレシピを公開したり、手ごろな価格の持ち帰り用メニューを販売したりして、多くのファンの獲得に成功する飲食店も現れている。

飲食店の多様性と料金の安さを実現する仕組み

Image credit: Syn

Uber EATS や出前館など先行するフードデリバリとの差別化要素の一つは、徹底した飲食店のレベルの高さと多様性だ。SYN は選抜条件を明らかにしていないが、Chompy への参加を希望した飲食店のうち実際に掲載されるのは3割程度だという。全国的にチェーン展開する飲食店は少なく、結果として、熱狂的な常連客の多い個人経営の飲食店が多くを占めている。

Chompy が渋谷周辺から攻めているのも、そういう理由からだろう。SYN が全国へとスケールする野望を持っていることは事実だが、まずは渋谷周辺でこのモデルがワークすることを確かめ、そこから首都圏や都市部にサービス拡大していくと見られる。渋谷はまさにギグエコノミーのメッカであり、ここを制する者が日本全体を制すると言っても過言ではない。

今週、Uber EATS が配達料月額定額制モデルを発表したが、これを迎え撃つ形となる Chompy もまた料金面で引けを取らない。日本のフードデリバリは、世界的に見ても店舗への手数料が高く、また顧客が支払う配達料も高いため、フードデリバリは外食ではないものの金額的にちょっとした豪華な食事になってしまう。

Chompy ではこれを「まとめて注文」を受け「まとめて配達」する方法でロジスティクスを効率化し、店舗手数料や配達料を低く抑えている。その極め付けが今日スタートした、「らくとく便」だろう。らくとく便に参加している飲食店からのデリバリは配達料が無料となっている。

らくとく便では、昼食や夕食時間帯の1時間前までに注文することで配達料が無料化され、複数店舗を横断した同時注文も可能になる。これを可能にするのが、大見氏が「玉子屋方式」(玉子屋は首都圏のオフィス向け仕出弁当屋で、発注数に応じて配達先に近いバンで量をやりくりするロジスティクスは有名)と呼ぶロジスティクスの仕組みで、飲食店で料理をピックアップするスタッフと、料理を客にデリバリするスタッフに分け、中継地点で料理を交換することで効率的な配送が可能になっている。

デパ地下の名店も

SYN は今日、東急百貨店と提携したことも発表した。これにより、今後、東急百貨店のデパ地下に入居する食料品店からも取り寄せができるようになるようだ。実証実験ということなので、具体的にどの店舗がどの程度の規模で参加するのかは現時点で不明だが、コロナ禍でが外出抑制が求められる中、店舗にとっては売上を確保しつつ、消費者にとっては三密を避けながらも食卓を豊かにできるため、正式サービスとして採用されることに期待したい。

<参考文献>

SYN のチームは、現在20名程度の体制で運営されているが、今回の資金調達を受けて、システム開発、カスタマーサクセス、マーケティングなどの人員を拡充したい考えだ。

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東急のアクセラレータが2019年度のデモデイを開催、スタートアップ6チームが東急グループ各社との共創事業を提案ピッチ

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東急(東証:9005)は23日、都内で同社のスタートアップアクセラレータ「東急アクセラレートプログラム(TAP)」2019年度の最終審査会を開催し、東急グループとの事業共創検討に至った6社が登壇した。なお、今回は新型コロナウイルス対策のため無観客開催、審査員は遠隔での参加となった。 東急アクセラレートプログラムは、東急グループのリソースを活用し、スタートアップにテストマーケティングの機会を提供する…

東急(東証:9005)は23日、都内で同社のスタートアップアクセラレータ「東急アクセラレートプログラム(TAP)」2019年度の最終審査会を開催し、東急グループとの事業共創検討に至った6社が登壇した。なお、今回は新型コロナウイルス対策のため無観客開催、審査員は遠隔での参加となった。

東急アクセラレートプログラムは、東急グループのリソースを活用し、スタートアップにテストマーケティングの機会を提供するのが特徴。前回のバッチからは締切を設けない通年募集、適宜共創を検討するという体制が取られている。今回からはさらにいくつかのマイナーチェンジが施され、経営メンタリングよりも東急グループ各社への事業実装を重視する形に移行、また以前は審査が毎月実施だったが、エントリから審査結果連絡までのリードタイムが2週間に短縮された。

2019年度はスタートアップ124社からエントリがあり、うち43社がプレゼン審査を通過、最終的に6社が共創検討対象(今回の登壇者)に残った。第1期からの通算での応募累計634社、うち PoC を実施した件数は30件、事業提携や資本提携を結んだのは6社で、東急グループからスタートアップへの出資総額は10数億円に上る。

対象となる領域は、交通/不動産・百貨店・スーパー/広告/ヘルスケア/ツーリズム/エンタテイメント/スマートホーム/デジタルマーケ/スポーツ/ホテル・ホステル/物流・倉庫/建設/カード・ポイント/教育・カルチャーなど17領域で、東急グループ26事業者がスタートアップとの協業を目指す。なお、次期2020年度からは、東急グループとの事業共創を前提とせず、東急グループにとっての全くの新領域も採択の対象となる。

最終審査会では、新規性、親和性、成長性、実現可能性の4つの観点で審査された。今回の最終審査会で審査員を務めたのは以下の方々だ。

  • グローバル IoT テクノロジーベンチャーズ 代表取締役社長 安達俊久氏(ゲスト審査員)
  • デロイトトーマツベンチャーサポート 代表取締役社長 斎藤祐馬氏(ゲスト審査員)
  • SBI インベストメント CVC 事業部長 加藤由紀子氏(ゲスト審査員)
  • Spiral Capital シニアアソシエイト 立石美帆氏(ゲスト審査員)
  • 東急 代表取締役社長 髙橋和夫氏(審査員長)
  • 東急 執行役員渋谷開発事業部長 東浦亮典氏(内部審査員)
  • 東急 執行役員沿線生活創造事業部長 金井美恵氏(内部審査員)

【最優秀賞(東急賞)】subsclife ✖️ 東急モールズデベロップメント

賞金:109万円

subsclife は、IoT 家具ブランドを展開する KAMARQ HOLDINGS からスピンオフしたスタートアップで、家具のサブスクリプションサービスを提供している。この日は、家具の購入から処分や売却まで、家具のライフサイクルを包括的にサービスとして提供できることをアピールした。

東急グループとは、法人向けには東急モールズデベロップメントが運営する商業施設に入居するテナントに対して、サブスクモデルによるインテリアや家具調達を踏まえた空間づくりの提案を行う。個人向けには、SHIBUYA 109 が監修した若年層ニーズ調査、企画開発に基づき、2種類のインテリアコーディネイトを3月下旬からサブスク家具として販売・提供する。

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【優秀賞(渋谷賞)】Balus ✖️ 東急レクリエーション

賞金:42万8,000円

Balus は、ライブエンターテイメントの分野に XR を持ち込むスタートアップだ。リモートでライブイベントが開催できるプラットフォーム「SPWN」を開発している。ライブ会場は都市圏に偏っており、週末は混雑していて予約が困難で、これは主催者であるアーティストにとっても、ファンにとっても不都合だ。また、アーティストにとって大きな収入源となるマーチャンダイズは、商品を購入した顧客情報を取得していないため、タッチポイントをその後のプロモーションに生かしきれていない。

バルスでは、VTuber の双方向ライブに代表されるアーティストのライブ中継はもとより(アプリ無し、ブラウザのみで使えるのも一つの売り)、チケット販売、マーチャンダイズ販売、DVD 販売、デジタルコンテンツ販売などを一つのプラットフォーム上に集約し、ファンにワンストップで提供できるようにする。顧客情報も集約するため、アーティストにとってもプロモーションを実施しやすく、マネタイゼーション効果を最大化できる。

昨年3月のローンチ以降、2019年には東京・大阪・福岡・札幌・福岡・上海・タイをはじめとして、69回のライブイベントを開催。これまでに45,000人がユーザ登録しており、平均単価15,000円、1イベントで最大3,800万円を売り上げた実績がある。東急レクリエーションとは、大阪や川崎のシネコン「109 シネマズ」で実施してきたライブイベントを全国拡大していくという。ライブイベント開催にあたって専用線敷設が必要なく、機材も PC のみで充足することから、主催者にとってのハードルが大幅に下がるという。

【二子玉川賞】LUUP ✖️ 東急電鉄

賞金:25万円

LUUP は、マイクロモビリティを都市に実装しようとする MaaS スタートアップだ。街のあらゆる場所にモビリティ機器を借りたり返したりできるポートを配置し、高齢者も含め全ての人が安全かつ便利に利用できるモビリティのプラットフォーマーになることを目指している。

現在は、マイクロモビリティを普及させるための素地づくりとして、電動キックボードの規制緩和(多くの先進国と異なり、日本やイギリスでは電動キックボードへの交通法規の適合化が進んでいないため、原付バイクと同じ扱いになる)やシェア事業としての実証実験(不動産オーナーと関係性を作りポートを整備、モビリティが所構わず放置されないための環境づくりなど)に注力、半年間で7つの自治体と連携した。

先頃、LUUP はマイクロモビリティ分野の複数プロバイダを集めた業界団体「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、LUUP の岡井大輝氏が代表に就任。LUUP は現在、警察庁の認可のもと一部公道での実証実験や、国の特定制度下(サンドボックス)での実証実験を行っている。東急電鉄とは、MaaS 実装、不動産連携、スマートシティ分野での協業を目指す。「東急線・東急バス サブスクパス」との連携、ベトナムで東急が開発するスマートシティ「東急ビンズンガーデンシティ」への実験導入などを行う。

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【SOIL 賞】空 ✖️ 東急ライフィア

賞金:10万円

は、ダイナミックプライシングによるホテルの価格設定支援サービスを提供している。同社の「MagicPrice」は、ホテルが周辺の競合ホテルとの比較や過去データに基づいた需要予想にも基づき、機械学習で最適な価格をリアリタイム計算。計算された価格は、自社サイトのほかサイトコントローラを経由して、旅行予約サイトや OTA にも自動反映できるしくみだ。東急グループでは東急ホテルズが運営する一部ホテルで MagicPrice が採用されている。

空では、東急グループとは、ダイナミックプライシングが適用可能な不動産(特に駐車場は在庫が持ち越せない点で、ホテルとビジネスモデルが似ている)、モビリティや観光(レンタカーやツアー旅行なども、ホテルと同様、需要に連動して価格が変動する)などへのダイナミックプライシング適用を検討。なかでも東急グループ傘下でコインパーキングを運営する東急ライフィアと協業し、コインパーキングへのダイナミックプライシング導入の実証実験を図るとした。

空は、先頃、披露された NTT 東日本のアクセラレータ「LIGHTnIC(ライトニック)」第3期においても、NTT グループ傘下のコインパーキング運営会社 NTT ル・パルクと同様の実証実験を行うことを明らかにしている。

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【SOIL 賞】SELF ✖️ 東急百貨店

賞金:10万円

AI スタートアップの SELF は、B 向けのコミュニケーション AI を開発している。小売事業向けの販売自動化システム「SELF LINK」では、リアル店舗でベテラン店員が接客するような体験をオンラインショップで再現することができる。ユーザの好みや特性を徹底的に理解し、他方、商品の特性も解析することで最適なマッチング提案を行う。

東急百貨店との協業では、4月13日からオンラインショップに導入される予定で、母の日商品、ギフト、ワインの商品カテゴリで、販売員に代わって SELF LINK が顧客と対話、売り場を的確に案内し、顧客が関心を示しつつも意外性のある商品の提案を行うことを目指す。オンラインショップにおけるコンバージョンレートの向上を狙う。

顧客の特性みならず、商品の特性も解析した上で双方マッチングするプロセスについては、「Okinawa Startup Program」の直近バッチで輩出された awoo(阿物)の取り組みにも似ているかもしれない。

【SOIL 賞】FUN UP ✖️ 東急百貨店

賞金:10万円

FUN UP は、スマホ上でパーツやデザインを選ぶだけでオリジナルアクセサリーが作成でき、それをプラットフォーム上で売買できる、ものづくりマーケット「monomy(モノミー)」を運営。ユーザは自らデザインした作品が売れると、販売代金の10%を獲得することができ、新たなデザインを生み出すモチベーションにつながる。

企画〜生産〜カスタマーサービスまで通常であれば2ヶ月を要し、発注の最低ロットのため余剰在庫を抱えることを余儀なくされるが、monomy を使えば工程を半分以下に効率化でき最短で1週間にまで短縮が可能。少ロット多品種を扱うことが可能になることから、最近はインフルエンサーによるオリジナル D2C ブランドに注力、ここ半年で70以上のアクセサリブランドを立ち上げた。

東急百貨店との協業により、今年5月に渋谷ヒカリエ ShinQs で OMO(Online Merges with Offline)の実証実験を複数展開する予定。サステイナブル素材(パーツに端材などを活用)を使ったアクセサリの店頭販売、在庫なし・BTO デリバリ方式による人気インフルエンサーの D2C ブランドアクセサリの店頭販売などを開催予定。

百貨店によるオンライン D2C ブランドのリアル進出支援では、丸井グループ(東証:8252)が先月、新会社 D2C&Co.(ディーツーシーアンドカンパニー)を設立したニュースが記憶に新しい。

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東急電鉄、社会実装に特化したオープンイノベーション施設「SOIL」を開設——スタートアップシーンでアクティブな人々のハブに

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東急電鉄は今月、東京・渋谷に社会実装に特化したオープンイノベーション施設「SOIL(Shibuya Open Innovation Lab)」を開設した。その通常運用が16日から開始される。東急電鉄では、日本で鉄道会社がこのような施設を開設するのは初めてだとしている。 SOIL はいわゆるコワーキングスペースでもなければ、東急電鉄のグループ各社がスタートアップとの協業実現に特化した施設でもない。ス…

SOIL の受付
Image credit: Masaru Ikeda

東急電鉄は今月、東京・渋谷に社会実装に特化したオープンイノベーション施設「SOIL(Shibuya Open Innovation Lab)」を開設した。その通常運用が16日から開始される。東急電鉄では、日本で鉄道会社がこのような施設を開設するのは初めてだとしている。

SOIL はいわゆるコワーキングスペースでもなければ、東急電鉄のグループ各社がスタートアップとの協業実現に特化した施設でもない。スタートアップが持つ技術やサービスの社会実装をテーマに掲げたコミュニティスペースで、招待会員は打ち合わせや出会いの場として、ここを利用することが可能だ。

SOIL のオープンスペース。イベントも可能で、最大100名程度が収容できる。
Image credit: Masaru Ikeda

招待会員の定義は明確には発表されていないが、関係者の話によれば、渋谷をスタートアップハブとして発展させることに賛同し、スタートアップコミュニティでアクティブに活動している人を対象に、SOIL 担当者が独自に認定する形で運営されるようだ。なお、打ち合わせ場所としての利用は招待会員と招待会員が招いた人のみに限定されるが、イベントや勉強会には誰でも参加できる形をとる。

SOIL を、グローバルなイノベーションエコシステムの形成と、先端サービスやプロダクトの情報発信や社会実装のハブにしていきたい。

投資家であれば、投資の実績のある人たち、事業会社であれば、(スタートアップの持つ技術やサービスを)実際に社内にインプリした経験がある人たち、スタートアップなら自社だけでなく、コミュニティの中心にいて(他のスタートアップと)影響力のあるネットワークを持っている人たちを中心に招いていきたい。(フューチャー・デザイン・ラボ イノベーション推進担当 課長補佐 加藤由将氏)

SOIL には日経のスタートアップ取材拠点がある。SOIL の壁には、日経電子版が表示されている。
Image credit: Masaru Ikeda

東急電鉄は法人向けに会員制シェアオフィスネットワーク「NewWork」を展開しており、同社グループの社員が社外でオフィスワークする際には NewWork が利用されている。したがって、オープンイノベーションを意図したものでなければ、東急電鉄の社員でも SOIL ではなく NewWork の利用が推奨されている。施設名に東急電鉄の名前が冠されていないことからもわかるように、SOIL は東急電鉄の施設でありながら、東急電鉄だけのためのものではない、という位置付けのようだ。

渋谷駅の改札口から徒歩3分程度と抜群のロケーションを誇る SOIL だが、招待会員が訪れたときに施設内が満席で使えない、という状況は避けたいそうで、何人程度を招待会員に招くかについても、状況を見ながら進めていくようだ。SOIL の扉には入退室管理システムの「Akerun」がインストールされており、招待会員の平均的な利用頻度や時間などを見計らいながら、適正規模のコミュニティに育てていきたいとしている。

SOIL のミーティングルーム
Image credit: Masaru Ikeda

渋谷駅前では多くの高層ビルが建設ラッシュにあり、そのいくつかにはスタートアップのためのコミュニティスペースも開設される見込みだ。しかし、新しい高層ビルに限って入退館のセキュリティチェックが厳しくなる傾向があり、人が頻繁に出入りするコミュニティスペースとしては、高層階であればあるほど、そこにたどり着くまでが億劫になってしまうのもまた事実だ。しかし、東急電鉄では今回、敢えて渋谷・宮益坂に以前から所有していた雑居ビル(1983年1月竣工なので御年は36歳)の低層階に SOIL を開設したことで、気軽に出入りしやすい環境作りを目指したという。

7F に SOIL が入居する渋谷たくぎんビル前景。1F の OPEN HOUSE がいい目印になる。
Image credit: Masaru Ikeda

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