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耳の覇権争い始まるーー知っておくべき音声市場45社スタートアップまとめ(前編)

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「こんな魔法、聞いたことがない」 10月30日、Appleから華々しいデビューを飾った「AirPods Pro」。ノイズキャンセル機能が搭載され、より没入感のあるサウンドを味わうことができるようになりました。「Hey Sir」と呼びかけるだけで音楽・通話・音量調節もできるスマートアシスタントの機能も担っています。外部音取り込みモードが追加され、周囲の音も自然と聞こえるように。価格は249ドル。 G…

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Image Credit: Apple

「こんな魔法、聞いたことがない」

10月30日、Appleから華々しいデビューを飾った「AirPods Pro」。ノイズキャンセル機能が搭載され、より没入感のあるサウンドを味わうことができるようになりました。「Hey Sir」と呼びかけるだけで音楽・通話・音量調節もできるスマートアシスタントの機能も担っています。外部音取り込みモードが追加され、周囲の音も自然と聞こえるように。価格は249ドル。

Googleは先んじて「Pixel Buds」を発表しています。従来モデルとは違い、完全無線タイプとなりAirPodsと直接競合となる製品。環境音に合わせて自動的に音量を上げ下げする機能を搭載。「OK Google」でアシスタント機能を呼び出すことができます。最大の特徴は目の前の相手の内容を翻訳するGoogle翻訳機能を搭載している点。2020年春に価格179ドルで販売予定です。

Amazonも9月末に「Echo Buds」を発表。音響アシスタントAlexa機能とノイズリダクション機能を搭載。SiriやGoogleアシスタントと連携可能。価格は129.99ドルとApple、Googleと比較して最も手頃なもの。そしてMicrosoftも完全ワイヤレスイヤホン「Surface Earbuds」を発表。Officeソフトと連携ができ、たとえばPowerPointの資料情報を翻訳できるとのこと。価格は249ドルとAppleと同額。

3つの“聴く”習慣

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Photo by Feruz Matkarimov on Pexels.com

こうして直近1か月ほどで発表されたスマートイヤフォン製品を見るとGAFAM5社のなかでFacebookを除く四つ巴状態であることがわかります。世界のインターネットを支配すると言っても過言でもない巨大企業らを急速にキャッチアップさせる音声市場にはどのような魅力や成長性があるのでしょうか。考えられる理由は3つほど挙げられます。

1つはスマートスピーカーの普及。Amazon Echoシリーズが市場シェア約70%を占めている中、次のようなデータが公表されています。こちらの記事によると、全世代平均で週17時間ほどオーディオコンテンツを消費するとのこと。Podcastやラジオ、ストリーミング音楽などが該当します。なかでもスマートスピーカー所有者は、非所有者と比較してプライムアワー(8-10PM)に47%以上多くの時間をオーディオコンテンツに割いているそうです。

スマートスピーカーがプライムアワーに使われるシチュエーションを自宅リビングであると仮定すると、私たちがより多くオーディオコンテンツに増える機会は増えるでしょう。2019年6月時点で7,000万台のスマートスピーカーが流通していますが、次の3-4年で1億台を数えるはずです。こうしたスピーカーによってリビングで消費するオーディオコンテンツ時間は比例して増えると想像できます。

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Photo by Burst on Pexels.com

2つ目は「観る」から「聴く」行動へ私たちの習慣が変わりつつある点です。これは先述したハードウェアによって提供されるオーディオ体験とは違い、習慣という最も力強い市場成長を支える要素となります。

読者の方で、スクリーンオフにした状態でYouTubeを聴き流した経験のある方はいないでしょうか?筆者はYouTubeの有料ユーザーなのですが、ざっと見積もって利用時間の7-8割は聴き流しており、そのためにお金を支払っています。私がこの記事を書いている間もYouTubeを聴き流しながら4-5時間ほど作業に当たっています。こうしたユーザーの新たな行動様式が自然と構築され、習慣化されることほど強力な市場要因はありません。

実際、著名VCであるMarc Andreessen氏も同じような点を指摘しています。同氏曰く、YouTubeの視聴者は職場で仕事をしながら動画コンテンツを聴く習慣ができていると語ります。1日8時間ほど労働時間があるとすると、週平均40時間ほどオーディオコンテンツの視聴時間が発生する計算です。これは前述した世代平均のオーディオコンテンツ消費時間17時間の6倍にも匹敵する市場です。

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Photo by Tobi on Pexels.com

3つ目は運転時間。米国では月間1.1億回の自動車通勤が発生。合計走行時間は25億時間にも及ぶといいいます。これから自動運転技術がさらなる発展を遂げ、完全自動運転化が実現すれば車内の運転時間がそのまま余暇時間として新たな市場に成り代わります。

そこでオーディオコンテンツは市場シェアの大半を占めると考えられます。というのも、動画視聴をしては仮に事故を起こした際に運転手が過失を取られることが予想され、非常にリスクの高いコンテンツになるためです。オーディオであれば視界を逸らさずにコンテンツ消費できます。

ここまで音声市場の成長性を3つの視点から説明してきました。ここからは音声市場で活躍するスタートアップ45社を4つのカテゴリーから簡単に説明していこうと思います。

1. 音声SNS

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Image Credit: Spoon Radio

声で繋がるSNSが流行の兆しを見せています。その最先鋒が「Spoon Radio」。2013年に韓国で創業したSNSスタートアップ。累計調達額は1,960万ドル。口パク動画SNSとして米国市場で台頭し、後にTikTokに買収されたMusical.lyの投資家も出資しています

Spoon Radioは「音声版SHOWROOM」といえるでしょう。ユーザーはタイトルと背景画像を設定するだけで自分のライブ配信ができます。ホストユーザーは音声で配信をし、ゲストユーザーとチャットをしながらやり取りをします。最大の特徴は音声のみの配信。動画とは違いどんな場所からでも配信ができる手軽さが売りです。

日本上陸初期の頃から私も使っており、ライブ・ランキングTop10位前後に毎回入るほど好んで配信をしていました。Spoon Radioは間違いなくオンラインで友人を最短、かつ最も簡単に作るためのツールであったのは間違いありません。その理由が2つ。「配信体験」と「Facebook・Twitter以上のフレンドネットワーク」です。

たとえば自室のベッドで横になりながら配信・聞けるシチュエーションを独占できる点は、他社ライブ配信アプリにはない大きな強みでした。街を歩きながらでも電話感覚で配信ができます。動画配信より手軽に配信できる参入障壁の低さは大きな魅力。そして前述したように他ユーザーのライブ配信をどんな環境下でも気軽に「聴き流せる」体験は余暇時間の大半を支配できます。この点、Spoon Radioを通じて音声が次なる巨大市場になると確信できました。

魅力的な音声配信体験に加えて、FacebookやTwitter以上のソーシャルフレンドの繋がりが大きな魅力として挙げられます。お互いの配信枠に遊びに行き、手軽に声で直接繋がることで知らないユーザーとより親密になれます。こうした力強いネットワークエフェクトがユーザーを逃がしません。事実、筆者はFacebookやTwitter以上にのめり込んでしまい、ソーシャル中毒状態になるほどはまってしまったためアカウント削除してしまいました。ですが、仕事が一区切りついて時間や気持ちの余裕ができればいつでも戻っていきたいと思わされる製品でした。

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Image Credit: TTYL

さて、アジアにおけるライブ音声市場ではSpoon Radioの独走状態であると感じています。一方、欧米市場では深く浸透していません。この市場機会を狙ったスタートアップが多数登場しています。その1つが「TTYL」です。2018年にロサンゼルスで創業し、累計調達額は200万ドル。

TTYLは累計7,000万ドルを調達してエグジットした多人数動画チャットアプリ「Houseparty」の音声版と呼べます。Spoon Radioが一方的な配信であるのに対して、複数人の双方向音声チャットの場を提供しています。

リアルタイムで音声配信されている枠にユーザーがジャンプインする体験が用意されています。知らない人との会話も楽しめることができます。似たようなプロダクトに「Chalk」が挙げられます。しかしどちらのアプリも近しい友人との会話を想定しているため、ユーザー同士のネットワークが広まるのかという点に課題が残ります。

一方、特定のトピックを事前に設定して配信するのが「Dabel」。日本人起業家である井口尊仁氏が仕掛ける音声SNS。TTYLとは違い、見知らぬ人同士との対話に軸を置く製品。配信枠にタイトルが入っているため事前にある程度どんなトピクが話されているのか想像できます。また、いきなり音声対話が始まるわけではなく、ホストユーザーがゲストユーザーを指名することで双方向の音声チャットが始まるため、ユーザー心理的に自然と会話を始められる導線が用意されています。

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Image Credit: Playlist

音声SNS市場の中でも少し違った切り口を出しているスタートアップもいます。たとえば「Playlist」は事前に用意されている音楽ライブラリの中から好きな曲を選んで友人と一緒に聞くサービスを提供。チャットをしながら感想を述べ合ったりできます。

友人が投稿した音声コンテンツを聴くことで繋がるサービスも一般的です。一般ユーザーが投稿するコメントを聞いてやり取りし合います。2014年にニューヨークで創業し、累計600万ドルを調達した「HereMeOut」が代表的。また、同じようなコンセプトの「Koo!」も登場しています。短い音声データをシェアする体験はSnapchatの流れに乗っているといえるかもしれません。

前編はここまで。後編では他3つのカテゴリーを、Spotifyの戦略を説明しながら紹介しようと思います。

〝音声版Twitter〟「voice」がAndroidとiOS向けにアプリをβ版公開、日本・中国・台湾への市場展開を開始

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東京に拠点を置くスタートアップ ZoooG は14日、音声の共有ができるソーシャル・ネットワーク・アプリ「voice(ボイス)」の iOS 版をβローンチした。これは先月の Android 版のβ版ローンチに続くもので、今後、日本・中国・台湾へのマーケティング展開を本格化する。voice は Twitter と同じ感覚で音声を投稿し、気に入ったユーザをフォローしたり、フォローされたりするサービスだ…

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東京に拠点を置くスタートアップ ZoooG は14日、音声の共有ができるソーシャル・ネットワーク・アプリ「voice(ボイス)」の iOS 版をβローンチした。これは先月の Android 版のβ版ローンチに続くもので、今後、日本・中国・台湾へのマーケティング展開を本格化する。voice は Twitter と同じ感覚で音声を投稿し、気に入ったユーザをフォローしたり、フォローされたりするサービスだ。

ZoooG ではかねてから、100人以上の人気ツイキャス主(フォロワー数の多いツイキャス・ユーザ)からなるネットワークを持っており、彼らのフォロワー数の総和は190万人。ZoooG の創業者兼代表取締役である手塚千里氏が、別会社から昨秋リリースした、人気ツイキャス主から擬似電話がかかってくるアプリ「fancy call」( Android / iOS )では、ダウンロード数8万件を記録している。これを受けて、音声をやりとりするアプリの需要に可能性を感じた手塚氏は、今回 voice をリリースすることにした。

(DeNAが提供する)SHOWROOM でも、ツイキャスでも、ラジオ放送をやっている人は多い。しかし、1対αの音声だけに特化したサービスが無かったので、voice を作ることにした。中国や台湾でも、他愛のない音声コンテンツを投稿する人は多いので、需要は大きいと考えている。(手塚氏)

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ZoooG 手塚千里氏

当面の目標として、ZoooG では、自社が持つ人気ツイキャス主の情報伝播の力を使い日本国内で20万ダウンロード、Facebook などを通じたプロモーションで台湾で10万ダウンロードを達成したいとしている。中国については、市場がユニークであることから、中国の動画投稿サイト「Bilibili(嗶哩嗶哩、日本のニコニコ動画に相当)」などを活用しながら、現地でのマーケティングに長けた日本企業と共同で事業を展開する計画とのことだ。

voice は無料で利用できるが、投稿された音声は24時間経過すると消える仕様となっている。自身やフォローしているユーザの気に入った音声を消えないように保存する場合には、保存メニューを利用するためにアプリ内課金が発生する。今後は、有名人を起用した「声ガチャ」のようなビジネスモデルも検討しているという。

voice 以外にも、世界ではこれまでに音声ベースのソーシャルネットワーク・アプリは存在しており、有名な事例としてはシンガポール発の「Bubbly(旧称:Bubble Motion)」が挙げられる。Bubbly は昨年8月にインドのテレコム企業 Altruist Group に買収されたが、インド人の替え歌投稿のプラットフォームに終始してしまい、世界的に受け入れられるアプリにはならなかった、というのが手塚氏の見方だ。彼は Bubbly が成し得なかった世界展開を、voice では中国・台湾から着手し、マレーシアやインドネシアといった若年人口の多い東南アジアへと拡大させていきたいと語った。

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voice を開発する ZoooG のチームは、アプリ開発に関わる外部協力者などを含めると約10人のメンバーで構成される。これまでに個人投資家から数千万円のシード資金を調達しており、voice の世界展開に目処が立った時点で、次ラウンドの資金調達の検討を始めるとしている。