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明日施行の改正航空法がドローン飛行に及ぼす影響と、5年先の未来について、解説します【ウェビナー】

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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。今回は、本日施行された航空法の改正の内容と、それによるドローン運航への影響についてお伝えします。解説してくださるのは、青山学院大学教授で、世界初の災害救援隊「DRONE BIRD(ドローンバード)」の発起人である古橋大地さんです。別途、古橋さんとドローンバードに関するロングインタビューをお届けする予定なので…

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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。今回は、本日施行された航空法の改正の内容と、それによるドローン運航への影響についてお伝えします。解説してくださるのは、青山学院大学教授で、世界初の災害救援隊「DRONE BIRD(ドローンバード)」の発起人である古橋大地さんです。別途、古橋さんとドローンバードに関するロングインタビューをお届けする予定なので、お楽しみに。

聞き手の三橋
では、まずは、古橋さんの自己紹介からお願いいたします。
古橋大地さん
こんにちは。クライシスマッパーズ・ジャパン(NPO法人申請中)の古橋大地です。青山学院大学の教授として、市民参加型のオープンストリートマップについての研究と実践を進めています。
聞き手の三橋
あと、今回のウェビナーの中にも登場するので、現在、クラウドファンディングで支援者を募っている「ドローンバード」についても概要をお願いします。
古橋大地さん
被災地で撮影された写真を元に、世界中のボランティアやマッパーと共に「現地の被災状況マップ」を作ってきました。しかし現実的には、発災前の情報を使うことのほうが多かったのが現状です。ドローンバードは、ドローンを使って空撮することで、一刻も早く発災後の状況地図を作成し、現地の救援活動に役立てるものです。
聞き手の三橋
なるほど。さて、早速本題に入りたいと思います。2015年12月10日本日、国土交通省が一部改正した航空法が施行されました。これによって、普及をみせる無人飛行機(ドローン)の飛行についてルールが定められたわけですが、当然「ドローンバード」も影響を受けますね。
古橋大地さん
はい、すでにドローンバードとして、国土交通省航空局とはやり取りをしています。決してドローンを完全に取り締まるということではなく、ただ、誰が、どこで、どんなドローンを飛ばしているのかを把握したいというのが、今回の航空法改正の狙いだと思います。
聞き手の三橋
具体的に、今後、ドローンを飛ばすためにはどんなルールに従う必要があるんでしょうか?
古橋大地さん
まず、規制のエリアですが、これまでは飛行機が通らないところは、高度250メートルまで無許可で飛ばすことができましたが、今回から、飛行機が飛んでいてもいなくても、一律150メートルに変わりました。ドローンを飛ばしたければ、飛行開始の10営業日前までに申請書の提出が必要です。
無人航空機の飛行ルール(国土交通大臣サイトより)
無人航空機の飛行ルール(国土交通大臣サイトより)
聞き手の三橋
その他にはどんな規定が?
古橋大地さん
東京首都圏など、人口密集地を飛ばす場合も、同様に事前申請が必要です。また、ルールに違反した場合は、50万円以下の罰金が科せられます。これらが規制の基本的な方向ですが、一方で航空法の対象外というのが明確に示されました。重量200g未満のドローンに関しては、航空法の対象外になります。
聞き手の三橋
では、ある意味、199gのドローンを作ることができれば、航空法の縛りはなくなるということ?
古橋大地さん
その通りです。例えば、私が持っている「Parrot Bebop Drone」というドローンは、バッテリーなどを搭載した状態で400〜500gです。つまり、この半分までにする必要があります。既存のドローンでは、小さいもので100gくらい。ただ、これだと風にすぐ流されて、ちゃんと飛ばないんです。
image via. Parrot
Parrot Bebop Drone:バッテリーなどを搭載した状態で400〜500gほど
聞き手の三橋
ちょっと日本を離れて、世界的にみてドローンを飛ばすことに対して寛容な国や地域ってあるんですか?ドローンバードの活動を考えると、災害は世界どこでも起こり得ますよね。
古橋大地さん
今までは逆に言うと、野放しに近い状態でした。例えば、ネパールでは今年4月に地震が起きて、その際にカトマンズなどで空撮ドローンが飛ばされました。推測の範囲ですが、おそらく何機かが墜落して誰かが怪我をしたのかもしれない。ドローンを飛ばすとだいたい何度かは墜落させてしまうので。
聞き手の三橋
結局、ネパール政府は規制を厳しくしたんですか?
古橋大地さん
はい。事前申請をして許可がないとドローンを飛ばせなくなりました。たしか、タイやフィリピンでもドローンのパイロット登録が事前に必要など国によってルールはまちまちですが、基本的にはドローンを勝手には飛ばせないという規制する方向で動いています。
聞き手の三橋
ドローンバードの活動内容を考えると、いちいち事前申請をしなくても、災害が起きたらすぐにドローンを飛ばせる状態が望ましいですよね。この200g未満のドローンの開発って、どれくらい現実的ですか?
古橋大地さん
すぐには無理ですね。やっぱり、ちゃんと空撮できるものに仕上げていくには少し時間がかかります。199g未満の空撮専用ドローンを作ることがドローンバードの長期的な目標です。ですので、ドローンバードという組織として、包括申請をする予定です。メンバーリストと使う機体のリスト、飛ばす地域などをまとめて航空局に提出します。
聞き手の三橋
じゃあ、実際にドローンを飛ばしたり、改良したドローンを開発したりするより、裏側の管理作業が大変そうですね…。
古橋大地さん
隊員の名簿、使用する機材、機体に機体番号を記載するなどいろいろな規定があるので…。かなり細くて根をあげそうになりますが、必要なことなので、きちんと航空局とやりとりしながら進めていきます。いずれにしても、政府が「完全にドローンを排除する」という方向ではなかったことはちょっと安心しています。
聞き手の三橋
最後に。米国大手企業などもドローンを使った物流を実験しています。今後、ドローンは、私たちの生活をどんな風に変えていくと思いますか?
古橋大地さん
日本という国にとって、ドローンはすごく重要になると思います。どんどん高齢化が進んでいる。人が足りなくなって労働人口が減れば、いわゆるロボットに頼らざるおえない世の中になっていくはずです。その時に、ペッパーみたいなロボットもいいですが、空を使えるロボットみたいな形でのドローンの進化が期待されると思っています。
聞き手の三橋
ドローンが、社会の利便性を空から高めていく役割を担うと。
古橋大地さん
それこそ、物流や情報を届けること、情報のインフラになるなど、いろんな形でドローンを使わざるおえなくなっていくんじゃないでしょうか。逆に使わないという選択肢はもうないので、いかに安全に運用するかという話を前提に議論を進めていく必要があると思います。
聞き手の三橋
その未来、古橋さんはいつ頃叶うと思いますか?
古橋大地さん
僕が2010年からドローンを使い始めて5年が経ちました。当時使っていた機体は、600万円くらいするものだったんですよ。今は、業務用で十分に使えるものが数十万円で出てきています。作業効率を考えて、今でも主には300万円ほどの機体を使ってはいますが、コストは劇的に下がっていきます。
聞き手の三橋
じゃあ、5年後の2020年の東京オリンピックの頃には、ドローンがもう少し生活に浸透しているかもしれませんね。
古橋大地さん
だと思います。離島をつなげるような性能を持ったドローンが、その頃にはもう10分の1くらいのコストになっているんじゃないでしょうか。
聞き手の三橋
空を見上げたらドローンが飛び交っている、なんてSF映画に出てきそうなシーンが現実のものになるかも。古橋さん、解説どうもありがとうございました。

 

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国内でも注目集まるHR(ヒューマンリソース)テック「市場成長の理由」を解説します【TBウェビナー】

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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。 定期的にお送りしているエンタープライズ(主にB2B)向けオンラインビジネスの調達ニュースから、特に注目したいビジネスについてその状況などを掘り下げます。今回は国内でもプレーヤーが出現しつつあるHR(ヒューマンリソース)テクノロジー分野の基礎知識について本誌ブロガーでアーキタイプ所属の鈴木大貴さんに解説頂き…

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Image Credit : A Second City rose from the ashes of the first – Chicago. / 15609463@N03 on Flickr

THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。

定期的にお送りしているエンタープライズ(主にB2B)向けオンラインビジネスの調達ニュースから、特に注目したいビジネスについてその状況などを掘り下げます。今回は国内でもプレーヤーが出現しつつあるHR(ヒューマンリソース)テクノロジー分野の基礎知識について本誌ブロガーでアーキタイプ所属の鈴木大貴さんに解説頂きます。

聞き手の平野
前回に引き続き、エンタープライズ方面の解説はインキュベーションを手がけるアーキタイプ所属、ビジネス系の若手ブロガーとしても活動されている鈴木大貴さんです。
鈴木大貴さん
こんにちは。よろしくお願いします。
聞き手の平野
今回はHR領域ですね。最近では私もビズリーチのスタンバイ・カンパニーやキメラの動きなどをチェックしてますが、国内でも話題が増えてきた印象ありますね。
鈴木大貴さん
そうですね。日頃から海外B2Bスタートアップの資金調達ニュースを眺めてますが、特にここ1年の間、HR領域で調達するスタートアップの数が非常に多いです。ざっとバリューチェーンで俯瞰するとこういうプレーヤーが活躍しています。

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聞き手の平野
市場が動いてる要因はどこにあるとみてますか?
鈴木大貴さん
要因は大きく3つに分かれます。まずはマーケットの環境に変化があったとき、次にベンチマークすべき急成長プレイヤーが出た時、最後は別領域のメソッドや新技術との掛けあわせにより課題の解決手段が増えてきたときです。
聞き手の平野
なるほど。

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鈴木大貴さん
まず環境変化からです。様々なメディアで語られる通りシリコンバレーではここ数年、人材、特にエンジニアの採用競争が激化しており人材採用・戦力化の重要性が年々増しています。そのためエンジニア採用に特化したHackerRankのような求人プラットフォームや、採用候補者が本当にスキルを持っているのかテストするInterviewed、採用した人材を如何に定着させるかを支援するCulture Ampといったプレイヤーが出てきてるんですね。
聞き手の平野
リファラル採用で伸びてきたJobviteもありますね。国内ではWantedlyですかね。
鈴木大貴さん
シェアリングエコノミーやオンデマンド系スタートアップの勃興によって、選考中人材のバックグラウンドチェックを行うCheckrやOnfidoのように、急成長スタートアップにとって多大な工数の掛かる採用業務を如何に効率化するかという観点のサービスも成長してきてます。
聞き手の平野
金鉱周辺でつるはしを売るタイプですね。
鈴木大貴さん
グローバル人材やフリーランサーの登用等、ネットの利便性が上がったことでリモートワークをはじめ多用なワークスタイルを労働者や企業が選択できるようになっています。そのためフリーランサーをマネジメントできるWorkmarketやグローバル拠点の立ち上げ支援を行うMoveGuidesなどもこのタイプですね。

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聞き手の平野
次の市場成長要因は急成長プレーヤーの出現ですか。

鈴木大貴さん
創業2年で40億ドル評価まで上り詰めたZenefitsはHR領域の超急成長SaaSスタートアップとしてよく知られています。中小企業が必要な給与や保険の管理を無料でできるSaaSを提供し保険会社からの成果報酬でマネタイズしているモデルですね。

聞き手の平野
爆伸びですね。
鈴木大貴さん
累計6,000万ドルを調達し直近半年で導入社数が倍増しているというGreenhouseも急成長HRTechスタートアップとして知られています。採用ページの作成、候補者のトラッキング、面接スケジュール管理といわゆるATS領域のサービスを提供しており、PinterestやSlackなどもサービスを利用してる注目株です。
聞き手の平野
こういうわかりやすいプレーヤー出てくると世界的にもコピーキャットが出てきたりして市場の盛り上がりにつながりますよね。

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鈴木大貴さん
最後の市場成長要因は課題解決の手法が多様化です。例えばSlackは開発現場におけるリアルタイムコミュニケーション手段を提供することで一気に成長していますよね。
聞き手の平野
もうこれなしでは仕事考えられないぐらい使ってます。
鈴木大貴さん
HRにおける即時性という観点では普段使うメールや情報共有ツールと連携し、部下や同僚の評価を入力できるRelektiveが直近で資金調達を実施しているんです。
聞き手の平野
リアルタイムコミュニケーションって気持ちいいんですよね。さっさと用事が終わるから。それをHR領域に持ち込んだんですね。
鈴木大貴さん
ビッグデータの活用も進んでいます。求職者側の経歴・希望と企業の募集条件を言語解析しマッチング精度を高めるjobandtalentや、大量のデータから予測分析をかけ候補者の採用後のパフォーマンスを予想するHireVue、財務と職場環境のデータを集約・分析することで最適な人員計画が立案できるVISIERがそれです。
聞き手の平野
では大貴さん、国内では今後どのような動きが予想されるでしょうか?
鈴木大貴さん
まずこのフリップをごらんください。

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聞き手の平野
ずっと言われ続けてきた現役世代の減少ですね。10年後でこんな数字になってるんですか。
鈴木大貴さん
将来の時間軸で考えると特に日本においては、労働人口の減少が喫緊の課題となってくるはずなのです。フリップの通り、リクルートワークス研究所のレポートによると2025年の労働人口をシミュレーションした結果、シナリオによっては2015年と比べ557万人の減少が予想されています。
聞き手の平野
ここを狙ってる事業者は多そうです。
鈴木大貴さん
企業で働く現状の環境が大きく変わっている可能性が高く、解決すべき大きな課題が間違いなく山積しているはずなんですね。前述した通り、チャンスは市場の変化にあります。
聞き手の平野
具体的にはどこがポイントになりそうですか?
鈴木大貴さん
大手企業を中心とした新卒一括採用文化、USと比較すると流動性の低い労働市場、IndeedやMonster、CareerBuilderといったオープンな採用プラットフォームが少ないこともあり、ATSはじめUSで流行りのサービスをそのままタイムマシンで持ってくるだけではマーケットのフィットに時間がかかるのではと予想しています。
聞き手の平野
海外事例を横目で見つつ、日本の文化・商慣習に合うサービスを出せるか、というところですね。
鈴木大貴さん
働く、というのは社会人であれば誰でも直面する問題です。働く側、雇う側、双方のマッチングや労働環境がよくなるサービスがたくさん日本でも出てくるといいなと思います。
聞き手の平野
解説どうもありがとうございました。今後も地味ですがB2B領域の読み解き続けたいと思います。

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日本と世界のファッションテックのマクロトレンドについて、解説します【ウェビナー】

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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。 THE BRIDGE で「ファッション」のカテゴリで検索してみると、さまざまなスタートアップの名前が表示されますが、その多くはこれまで、Eコマースや O2O の一部として語られることが多かったように思います。人工知能やウエアラブルデバイスなど高度な技術のコンシューマライゼーションにより、これらをファッショ…

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Quai de Valmy, Paris January 2013 (Source: Wikimedia Commons)

THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。

THE BRIDGE で「ファッション」のカテゴリで検索してみると、さまざまなスタートアップの名前が表示されますが、その多くはこれまで、Eコマースや O2O の一部として語られることが多かったように思います。人工知能やウエアラブルデバイスなど高度な技術のコンシューマライゼーションにより、これらをファッションビジネスに適用したファッションテックがにぎやかになりつつあります。

THE BRIDGE でも以前紹介したスタイラーの小関翼さんが先ごろ、ファッションテック分野のスタートアップを網羅したカオスマップを発表されました。このマップをもとに、今回は小関さんに、日本や世界のファッションテックのマクロトレンドについて解説いただきます。

聞き手の池田
こんにちは。まずは自己紹介からお願いいたします。
スタイラーの小関さん
スタイラーの小関です。ファッションの提案ができる O2O アプリ「STYLER」を運営しています。以前は Amazon に勤務しており、ライフスタイル領域で日本発のイノベーションを起こすことを目指して、今年3月にスタイラーを設立しました。
聞き手の池田
まずは、現在のファッションテックのトレンドを教えてください。去年から今年にかけて、特に勢いづいているアプリやサービスの分野、廃れていっているビジネスモデルはあるでしょうか。
スタイラーの小関さん
パーソナライズ(Personalize)がキーになっています。今回の Fashion Tech Map のB2BでもB2Cでも、データをいかに活用して一人一人のお客様に合った服を作るか、売るかといったものが多いですよね。ただ、これはファッションだからと言って特別視する必要はなく、他の産業でも同じです。もともと僕がいた金融だって一人一人に合った資産運用を提案すべきだし、衣食住の「食」と「住」もそう。特定の業界を特別視するのは逆に物事の本質を見落とすと思います。
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クリックして拡大
スタイラーの小関さん
僕自身は第三の波が来ていると思っていて、第一世代は洋服をインターネットで販売していた。でも、ファッションは売り手と買い手で情報の格差が大きいので、第二世代はその格差をコーディネートやビジュアルで補っていました。MapだとVirtual Stylistのところですね。第三世代はコミュニケーションが積極的に介在します。既に現実は先行していて、タオバオ(淘宝)など中国のECはチャットの組み込みが普通になっています。そこで値切ったりもするそうです(笑)。
聞き手の池田
なるほど。サードウェーブはコーヒーだけじゃなく、ファッション界にもやってきているわけですね。チャットを使ったEコマースは以前、THE BRIDGE でもタイのEコマースを取り上げたときにも触れました。他にも、いくつか教えてもらえますか?
スタイラーの小関さん
面白いと思うのは普通の服にデザインが近づいていることです。Apple Watch がエルメス(HERMES)とコラボしたのはみなさんご存知ですが、Pebble Time Round や Sony の Wena Wrist も普通に物欲が刺激されますよね(笑)。ウエアラブルデバイスが「ウエアラブルデバイス」と認識されているうちはダメで、単なる「服」と認識されるくらいで生活に溶け込むと思います。その点、Googleもリーバイス(Levi’s)と組んでいて動向が気になります。
聞き手の池田
日本でも、コンデナスト(Condé Nast)がファッションテックのアクセラレータ「デコーデッド・ファッション(Decoded Fashion)」をやるような動きが出てきています。
スタイラーの小関さん
コンデナスト以外もハースト婦人画報社が講談社や集英社、小学館と一緒にハッカソンを開催したりとテクノロジーに接近する動きが見られます。ただし、これはオールド・メディアの生き残り戦略の1つかなとも思います。当たり前ですけど、スタートアップのアクセラレータは非常に特殊で難しい分野なので試行錯誤が続くのではないでしょうか。
聞き手の池田
なるほど。生き残り策ですか。話は変わりますが、例えば、フィンテックならロンドン、ハードウェアなら台湾のように、ファッションテックをやるならここ、のようなスタートアップ・ハブは世界に生まれてきているのでしょうか?
スタイラーの小関さん
スタートアップ・ハブについては、東京や大阪などの日本の都市にもチャンスがあると思います。ただ、デコーデッド・ファッションの創始者リズ・バセラー(Liz Bacelar)が東京に来た時も言っていましたが、東京でデコーデッド・ファッションを開いた理由は、コンデナスト・ジャパンに呼ばれただけで、中国に呼ばれていたら中国で開いていました。そして、デコーデッド・ファッションはニューヨークやロンドンの方が先行して誘致に成功しています。
聞き手の池田
日本のファッションテックの潜在的な可能性は高いと?
スタイラーの小関さん
日本は一国内で生産から消費まで分厚いファッション・ビジネスが存在するので有利なんですよね。下の図は経済産業省が2014年に発表した、各地域のファッション産業の価格別ピラミッドです。下からファストファッション、ミドル、ラグジュアリーです。基本的に所得に応じていて、日本はミドル価格帯のブランドを多く楽しんでいます。
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出典:経済産業省「日本ファッション産業の海外展開戦略に関する調査」2014
聞き手の池田
来年、東京でファッションテックのイベントを開催されるとか。
スタイラーの小関さん
はい。ファッションテックの事業者が主体となったイベント、Fashion Tech Summitを2016年1月に開催して、東京をファッションテックのハブ化することに貢献したいと思います。
聞き手の池田
ファッション・テックにおける、オープン・イノベーションの事例(ファッションメーカー × スタートアップ)などの事例があれば、教えてください。
スタイラーの小関さん
例えば、国内だとラグジュアリー・ブランドのハナエ・モリ・マニュスクリ(Hanae Mori manuscrit)は、デザイナーの天津憂さんのアイディアで、ユーザーがスマホアプリからデザインを変更できる「DIGITAL COUTURE HANAE MORI × DIGITAL FASHION LTD.」をリリースしました。アプリケーションの開発は、デジタルファッションという会社が手がけています。STYLERが行っている「Fashion Tech対談」というFashion Techのニュースでも経緯を掲載しているので、ご興味の有る方はそちらでどうぞ。
聞き手の池田
海外ではどうでしょうか?
スタイラーの小関さん
これは有名な話ですが、バーバリー(Burberry)が2008年に「Runway to Reality」という、コレクションをインターネットを介して生中継し、かつ直後に注文も受け付けました。成功を収めた当時のCEOアンジェラ・アーレンツ(Angela Ahrendts)は、今はアップル(Apple)の副社長です。これらの老舗ブランドでもウェブの知見を活用していることを考えると、ファッション・メーカー × スタートアップが今後拡大してもおかしくないと思います。
聞き手の池田
最近のファッションテックで言えば、Polyvore の Yahoo による買収が大きな動きの一つだと思っています。買収額は2億ドル以上と言われています。このケース、または、他のケースでもいいのですが、小関さんの見解をお聞かせください。
スタイラーの小関さん
正確な買収額については存じ上げないので金額の多寡は触れませんが、ファッション市場の規模やPolyvoreが抱えていると言われている月間2000万人のユーザーを考えると、良いディールだったのではないでしょうか。また、今後もファッションに知見のある企業を取り込むケースが増えるかもしれません。というのも、アパレル企業がウェブの知見を取り込むのが難しいように、ウェブ企業がファッションの知見を得るのも難しいんですよね。
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今年東京で開催された新経済サミット2015で登壇する、Polyvore の創業者でCEOのJess Lee氏(右)。左は、メイクアップ・アーティストで世界的 YouTuber の Michelle Phan 氏。
聞き手の池田
そうすると、M&A というのは双方にとって良い選択肢であると。
スタイラーの小関さん
ええ。以前、人工知能の研究者として著名な東京大学の松尾豊さんとDeep Learning(深層学習)について対談したのですが、FacebookやInstagramといった大手SNSでも、ファッションを画像解析するのは難しいんですよね。アップされる画像はユーザーがお洒落をしている時の服装だから、普段の格好を読み取ることが難しい。むしろファッションサービスやインストアでのユーザー行動が購買にとっては重要かもしれないですね。
聞き手の池田
なるほど、ありがとうございました。知見に富んだ小関さんならではの分析、ファッション業界に疎い私にも、世界のファッションテックの状況が垣間見られたように思います。これからもまた、いろいろ教えてください。2016年1月の Fashion Tech Summit も楽しみにしています。

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シリーズ・ビットコイン:マウントゴックス事件から見えてくるビットコインの課題、を解説します。

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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。 ビットコインについては金融系テクノロジーの中でも最も可能性のあるプロダクトでありながら、日本で幅広く語られるシーンはまだそれほど多くはありません。そこで本ウェビナーでは数回に分けてビットコインの可能性、特にビジネスチャンスについて業界の動向や最新トレンドについて解説したいと思います。 初回は、不幸にも日本…

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Bitcoin Wallpaper (2560×1600) / jason_benjamin

THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。

ビットコインについては金融系テクノロジーの中でも最も可能性のあるプロダクトでありながら、日本で幅広く語られるシーンはまだそれほど多くはありません。そこで本ウェビナーでは数回に分けてビットコインの可能性、特にビジネスチャンスについて業界の動向や最新トレンドについて解説したいと思います。

初回は、不幸にも日本でビットコインの名前を幅広く知らしめることになったマウントゴックスの事件ですが、先日また新たな報道で不正の実態が明らかになってきました。この話題から見えてくるビットコインの正しい課題と仕組みを、ビットコイン取引所「coincheck」のレジュプレス取締役、大塚雄介氏に解説して頂きます。

聞き手の平野
みなさんこんにちは。まずは大塚さんのご紹介から。
レジュプレスの大塚さん
こんにちは。レジュプレスの大塚です。現在、ビットコインの取引所「coincheck」を運営しております。
聞き手の平野
そもそもビットコインの取引所サービス分からない、というビギナーの方向けのウェビナーですので、簡単に取引所サービスの説明とcoincheckの最近のビジネス状況について教えていただけますか?
レジュプレスの大塚さん
はい、coincheckはビットコインを日本円に交換できるサービスで、ビットコインを買ったり、送金したり、支払いに使ったりすることができる取引所サービスとなります。
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資料提供:レジュプレス
レジュプレスの大塚さん
現在、取扱い高はこのような感じで伸びておりまして、月間の取引高は3億5000万円ほどになりました。
聞き手の平野
国内でもビットコインの関心度の高まりは感じられましたが、やはり利用される方も増えているんですね。
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資料提供:レジュプレス
聞き手の平野
ところでこのビットコイン、SUICAなどの電子マネーとの違いがイマイチ分からない方もいらっしゃるかもしれません。
レジュプレスの大塚さん
仮想通貨という点では同じですが、SUICAのような電子マネーと決定的に違うのは、発行元が存在しない、というところになるでしょうね。
聞き手の平野
例えば日本円だったら政府が発行してますが、それがない、ということですね。
レジュプレスの大塚さん
そうですね。例えば、海外転勤した時に、国を超えてお給料を支払う際、為替の影響でもらう金額が減ったりすることがありますが、究極的にはそういうことがなくなるテクノロジーでもあります。
聞き手の平野
ビジネスチャンスが多そうです。
レジュプレスの大塚さん
ただ今はまだ、ローカルで使う場合はその国の通貨を使った方が使いやすかったりするので、私たちのような実際の国で発行している通貨と交換する交換所が必要になるのです。
聞き手の平野
ありがとうございます。では、今回の本題ですが、日本でビットコインと言えば、このマウントゴックスの話題が取り上げられることが多いです。先日も日経新聞にこのような記事が出ておりました
レジュプレスの大塚さん
ビットコインの有用性ではなく、不正の方で知られることになったのは本当に残念なことですね。
聞き手の平野
ただこの件、実はイマイチ掴み切れてません。マウントゴックス社が不正をした、ということが問題なのか、ビットコインの仕組みに問題があったのか、どちらなのか。
レジュプレスの大塚さん
まず最初に実際に発生している事象と、報道されている情報を整理する必要がありますね。まず、この件が話題になった昨年2月の時の状況と比較するとこんな感じです。

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レジュプレスの大塚さん
日経の報道にもある通り、ポイントは外部からの攻撃だったと当初説明していたものが、実はその大半を社長が横領していたのではないか、という部分です。
聞き手の平野
非常にグレーですね。いっそのことなら全部横領してくれてたら分かりやすかったのですが。
レジュプレスの大塚さん
そうですね、この一部は本当に外部から攻撃を受けて流出した、ということでビットコインの安全性について議論が巻き起こったわけです。しかし、課題を整理してみると気がつくポイントが見えてくると思います。

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レジュプレスの大塚さん
そもそもビットコインというか、データの安全性について語る場合、不正コピーと不正アクセスの二つに分けて考えると分かりやすいかもしれません。
聞き手の平野
なるほど。
レジュプレスの大塚さん
前者は紙幣のコピーに似てる行為です。後者は銀行強盗ですね。インターネットというのはある意味誰でも自由にアクセスができる広場みたいなところです。そんなところに金の延べ棒をずらりと並べておいたら、どうなりますか?
聞き手の平野
あー、それは持っていっちゃいますね。
レジュプレスの大塚さん
今回発生したのはまさにそういうことなんです。銀行強盗されたからと言って金の延べ棒自体の価値は変わりませんよね。ただ、これまでの既存通貨というものは、銀行など、預ける場所や発行、管理する行政機関など仕組みが非常に整備されているわけです。
聞き手の平野
そこがまだゆるい、という。
レジュプレスの大塚さん
ゆるいというか、これまでは事業者が独自に試行錯誤していました。そこで今後、ビットコインの管理についていろいろな方法で安全性を高める方法が議論し、現在は行政と協議を重ねビットコイン業界で共通のルールを整備しています。何よりも大切なのはユーザーに安心してご利用いただけるルール整備ですね。

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レジュプレスの大塚さん
まず、物理的に強盗に合わないよう、インターネット上には多額のビットコインを置かない方法があります。コールドウォレットといわれるもので、いわゆる「ネットに接続されていない」オフラインでデータを管理する方法です。
聞き手の平野
数パーセントオンラインに残っているのは、オンラインでの取引に使う分ということですか?
レジュプレスの大塚さん
そうです。0%だとユーザーはリアルタイムにビットコインの送金・購入ができないため、ユーザーの利便性を考慮して最小限のリスクの範囲内で少額のビットコインをオンラインにおいています。
聞き手の平野
なるほど。
レジュプレスの大塚さん
それともう一つ取引所を運営する上で大切なことが、資金の管理を明確にする、ということです。
聞き手の平野
こんなの当たり前のようにやってると思ってたんですが、実際はなんのルールもなかったんですね。

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レジュプレスの大塚さん
法人として取締役会などの会議体でチェックすることももちろんですが、やはり取引事業者以外の第三者機関のチェックは必要になるでしょうね。
聞き手の平野
確か政府も金融庁などを監督省庁として指定するよう案を取りまとめているという報道もありました。
レジュプレスの大塚さん
事業者の登録や監督省庁への報告義務などの法整備が整えば、ユーザーはより安心して利用ができるようになると思います。
聞き手の平野
なるほど。よくわかりました。大塚さん、解説どうもありがとうございました。では、また次回。

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米国の近年のEdTech企業の資金調達の流れについて、解説します【ウェビナー】

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THE BRIDGEウェビナーは、ニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。 前回、Ednityの佐藤さんになぜ米国でこれだけ教育系スタートアップが生まれるのか、社会的背景などをもとに解説をいただきました。今回は、その続きとして実際の米国のEdTech市場における資金調達の動きなどについて解説いただきます。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、…

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THE BRIDGEウェビナーは、ニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。

前回Ednityの佐藤さんになぜ米国でこれだけ教育系スタートアップが生まれるのか、社会的背景などをもとに解説をいただきました。今回は、その続きとして実際の米国のEdTech市場における資金調達の動きなどについて解説いただきます。

聞き手の江口
こんにちは。ということで、前回に引き続き佐藤さんよろしくお願いいたします。
Ednityの佐藤さん
よろしくお願いいたします。
聞き手の江口
前回は、アメリカで教育系のサービスが生まれる社会的な背景について伺いました。所得格差と教育格差を埋めるためにテクノロジーへの理解や浸透がある、というお話でしたね。
Ednityの佐藤さん
そうですね。良くも悪くもアメリカという国を体現しているものだと思います。
聞き手の江口
今回は、それらも踏まえながら、アメリカでの昨今のEdTech市場全体の動きについて解説をお願いします。
Ednityの佐藤さん
はい。学力格差の大きさとコモン・コアの発足によって、アメリカでは教育分野のスタートアップが多数生まれてくるようになりました。それらを踏まえて、特に公教育向けのサービスを4つに分類してみました。

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Ednityの佐藤さん
今回は詳細は省きますが、上図の「Curricula」にあたるデジタル教材分野が市場全体の3分の1を占めています。アメリカでは、こうした教材ベンチャーが多いのですが、その背景にコモン・コアができた背景と似ています。
聞き手の江口
どういうことですか?
Ednityの佐藤さん
アメリカでは、日本のような教科書検定がなく州や学区毎に教科書が選定できます。また、地方分権のため教育現場が予算に対して強い権限を持っています。ということは、スタートアップのような新興企業が作ったサービスであっても、教育現場の人たちが気に入れば導入がスムーズにいくため、スタートアップであっても売上が見込みやすく、ビジネスモデルの確度が高い。
聞き手の江口
なるほど。前回では、地方分権でローカルの権限が強いがゆえに学力格差が起きると指摘していましたが、同時に新しいサービスを受け入れやすい土壌があるってことなんですね。

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Ednityの佐藤さん
そうしたさまざまな環境から、アメリカにおけるEdTech市場は盛り上がっており、(グラフはアメリカのみではなくグローバルでのデータですが)2014年のEdTech企業の資金調達額は前年比で70%増、2015年も増加傾向にあります。
聞き手の江口
グラフを見ても、年々増えていますね!
Ednityの佐藤さん
また、資金調達だけでなく、M&A件数や規模も増加しています。2012年〜2014年の3年間のM&Aの内容を調べたところ、2014年のM&Aの規模は前年比で25%増加しています。

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Ednityの佐藤さん
シリコンバレーのEdTechに特化したシードアクセラレーターのImagine K12がスタートしたのが2011年の夏です。EdTechの資金調達額が増加していることは、この頃に生まれたスタートアップが順調に成長しているからだと思います。事実、Imagine K12の1期生であるremindは合計で5950万ドル、ClassDojoは合計で1001万ドルを調達しています。
聞き手の江口
アメリカにおけるここ近年のEdTechの盛り上がりを通じて、大きな市場をつくりあげていることが実感できますね。
Ednityの佐藤さん
教育分野のスタートアップが生まれているだけでなく、多額の資金がスタートアップに流れ込んで成長を支えています。
聞き手の江口
ということは、さまざまなVCがこの領域に参入している、ということですか?
Ednityの佐藤さん
はい。Imagine K12だけではなく、NewSchools Venture Fund、Learn Capital、Rethink Educationといった、EdTechに特化したVCの存在も大きいです。同時に、アメリカで教育系スタートアップが生態系を作るためには公教育に切り込む必要があり、市場の3分の1を占めるデジタル教材系スタートアップがその鍵を握っていると思います。その背景には、先にもお伝えしたように教育格差を埋めるために生徒の基礎学力向上が課題だからです。
聞き手の江口
お話を伺っていると、アメリカにおいてはいかに教育格差は是正するかが問われていますね。同時に、スタンフォード大学とかハーバード大学など、トップレベルの大学があるのもアメリカです。
Ednityの佐藤さん
そうですね。アメリカはやはり教育格差が激しく、全米の基礎学力を底上げしていくという課題を解決するためにデジタル教材ベンチャーが多く誕生しています。 対して、日本の場合は基礎学力については課題とされていないかもしれません。
聞き手の江口
日本は、よくも悪くも全体としての平均は高い印象があります。

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Ednityの佐藤さん
OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に3年ごとに実施されるPISA(15歳児の学習到達度調査)のデータを見てみると、「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」のそれぞれで日本はOECD加盟国の中で数学的リテラシーが2位、読解力が1位、科学的リテラシーが1位と総合で1位という成績でした。
聞き手の江口
反対に、アメリカは意外と下のほうなんですね。
Ednityの佐藤さん
アメリカの場合、OECD加盟国の中で読解力はぎりぎり平均を上回りましたが、数学的リテラシーと科学的リテラシーに関しては平均以下という結果です。アメリカのGDPの大きさなどを考慮すると、感覚的にもアメリカの学力格差が大きいことが理解できるかと思います。
聞き手の江口
たしかに、格差があることによって平均が下がりますしね。
Ednityの佐藤さん
つまり、アメリカではPISAでも測定されるような基礎学力の成績を引き上げることが、最重要課題だということがここでもみてとれます。 逆に、トップ層の引き上げはハーバード大などの世界的にも評価の高い大学があったり、MOOCsの充実、シリコンバレーなどの起業の生態系環境など十分に揃っています。こうした多様な姿があるのがまさにアメリカの形といえます。
聞き手の江口
自治体や学校単位で独自の教育プログラムが作れるということが、よくも悪くも教育レベルの差を作るってことですね。
Ednityの佐藤さん
日本の場合は、学習指導要領の改訂や「アクティブ・ラーニング」という言葉の登場にも表れていますが、課題とされているのは単なる教科・科目の基礎学力の向上ではなく知識を用いていかに主体的に課題を解決していけるか、実社会で活躍していくために必要な普遍的なスキルの獲得といった、高次元の課題に直面しているといえます。それらのスキルは非常に抽象的で、効果測定も数値評価も極めて困難です。ですが、現在行われている日本の教育改革は、この難易度の高い課題の解決に取り組もうとしています。
聞き手の江口
自立した思考と行動を持って、主体的に行動する人を育てることが日本に求められている、ということですね。
Ednityの佐藤さん
他にも、日本の公教育の課題は、教員の労働環境や校務に関する課題もあります。なので、アメリカと日本とでは教育における背景や課題が違うので、「アメリカでイケてる教育ベンチャーのビジネスモデルを日本に持っていきたい」とコピーキャットしても難しい、ということを理解しなければいけません。他の分野と比べて、教育分野はそれぞれの国によって事情が大きく異なる分野なので、それぞれの国ごとに応じた展開がより求められると思います。
聞き手の江口
なるほど。日本が抱えている課題をきちんと向き合うことで、日本独自のEdTechが生まれる、ということですね。アメリカのEdTechの市場だけでなく日本とアメリカが抱える課題の違いについても触れていただきました。本日はありがとうございました。

BRIDGE Members

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なぜ米国で教育系スタートアップが生まれやすいのか、解説します【ウェビナー】

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THE BRIDGEウェビナーは、ニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。 以前掲載した「Facebook、公共教育向けに個人の学習状況を把握するサービスを開発」という記事ですが、大変多くの読者に読まれ、コメントなども多く大きな反響を呼びました。一方、なぜ今回のFacebookのサービスなどのように、米国では教育系サービスが次から次へと誕生するのでしょうか。MOOCsなどのオン…

Image by NEC Corporation of America on Flickr
Image by NEC Corporation of America on Flickr

THE BRIDGEウェビナーは、ニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。

以前掲載した「Facebook、公共教育向けに個人の学習状況を把握するサービスを開発」という記事ですが、大変多くの読者に読まれ、コメントなども多く大きな反響を呼びました。一方、なぜ今回のFacebookのサービスなどのように、米国では教育系サービスが次から次へと誕生するのでしょうか。MOOCsなどのオンラインのオープンコースも米国からスタートしたり、積極的にテクノロジーを教育の現場に導入したりする動きも盛んです。

こうした米国における教育系スタートアップが誕生する背景について、日本で学校向けSNS「ednity」を展開している佐藤見竜さんに、解説をいただきます。

聞き手の江口
こんにちは。まずは、佐藤さんの自己紹介をお願いします。
ednityの佐藤さん
こんにちは。Ednityの佐藤です。教師と生徒、生徒同士の学校に関するやりとりに特化したSNSサービスの「ednity」を運営しています。
聞き手の江口
なかなか知られていないかもですが、すでに国内のさまざまな教育現場でednityは使われていますよね。
Ednityの佐藤さん
そうですね。日本の公立校で初めてBYODによるiPadの購入を義務化した千葉県の袖ヶ浦高校などで活用されるなど、公立、私立問わず使っていただいています。
聞き手の江口
改めてednityについてもお伺いしたいと思っていますが、今回は先日THE BRIDGEでも話題だったFacebookの教育向けサービスの件ついて解説いただきたいのですが。
Ednityの佐藤さん
先日Facebookが公教育向けのプロジェクトを発表した、って内容のやつですね。
聞き手の江口
そうです。SNS上でもかなりコメントが付いて、読まれた記事となりました。
Ednityの佐藤さん
Facebookが公開したのは、個々人の学習状況を把握するPersonalized Learning Plan (PLP)というサービスでした。これは、生徒が先生と長期目標を定め、その目標を達成するための日々の学習計画を視覚化し、その状況が分かるようにするというものです。また、そのための教材や宿題といったコンテンツをオンラインで個々人毎に配布していきます。生徒個人の学習状況を把握し、長所と短所を理解した上で、最適な教育コンテンツを提供し成長を促すことが狙いです。
聞き手の江口
このサービス、実はかなりの時間をかけて開発されたみたいですよね。Facebookとしてもかなり熱心に取り組んだサービスだということが伺えます。
Ednityの佐藤さん
実は、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏は教育分野にすごく熱心で、Startup:Educationという非営利の教育団体を設立し、そこからPanorama Educationなど3社ほど教育系の企業に投資をしたり、個人でもAltschoolに出資したりしています。Altschoolでは、2016年には出資金をもとにカリフォルニアとマンハッタンの計6ヵ所にまでスクールが拡大するようです。ザッカーバーグ個人がそれだけ教育に熱心なので、企業として取り組むサービスもそれだけ力の入ったものだと思いますし、ただのサービスではなくしっかりと公教育に使われることを念頭に設計しているものと言えますね。
聞き手の江口
マーク・ザッカーバーグ氏がそこまで教育分野に投資をしてるとは思いもよりませんでした。
Ednityの佐藤さん
ちなみに、FacebookだけではなくGoogleも先日Classroomを公開したりしています。すでにAppleやMicrosoftも教育分野に参入しており、近年世界をリードするシリコンバレー出身のテック企業が、こぞって教育分野に熱心に取り組んでいます。

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聞き手の江口
なるほど。その背景にはどういったものがあるのでしょうか。なにかアメリカ特有のものがあるのでしょうか。
Ednityの佐藤さん
その背景として、これはみなさん当たり前に思うかもしれませんが、アメリカは多民族国家で様々な人種や文化圏が共存している国です。
聞き手の江口
移民も多いですしね。
Ednityの佐藤さん
はい、特に南部はメキシコ系移民やアフリカ系移民のアメリカ人が多いことから貧困率が高く、アメリカは所得格差の大きな国となっています。
聞き手の江口
親の所得と子どもの大学進学率の因果関係などが研究で明らかにされたりと、所得格差は教育格差とリンクしていますよね。
Ednityの佐藤さん
同時に、アメリカは地方分権が進んでいる国で、各州の権限が強く、学校や自治体によって教える内容や教えるやり方も自由とされています。学校によって教育の質が全然違うので、卒業後の生徒の学力もバラつきがあり、家庭の所得が高い地域と低い地域とで大きな開きが見受けられます。
聞き手の江口
なるほど。経済格差と地方分権が、アメリカの教育格差を引き起こしたといえますね。所得格差はいわば情報格差にもつながったりします。所得問題と教育問題も含めたさまざまな社会課題に対してどのようなアプローチで解決するかが問われている時代と言えますね。

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Ednityの佐藤さん
はい。そうした所得格差による教育格差を埋めるために、アメリカで卒業後の学力格差を解消する仕組みが導入されるようになりました。それは、Common Core State Standardという全米共通の学力基準が2009年に発足しました。
聞き手の江口
日本で言うところの学習指導要領みたいなものですか?
Ednityの佐藤さん
それに近いかもですね。いままでなかったのか、と驚く人もいるかもしれません。しかし、なかったからこそ自由な教育方法が確立されたと言えるかもしれません。この仕組みは、2014年に施行されました。つまり、コモン・コアは教えるやり方は自由だけど、教える内容はある程度統一しようね、という考えです。コモン・コアの動きは、EdSurgeで働いている友人の上杉周作さんが以前に詳しい記事を書いていたので、ぜひそちらを参照していただければ、詳細がわかるかと。
聞き手の江口
コモン・コアが発足したということは、これまでやってきた教育現場の人たちも大変ですね。
Ednityの佐藤さん
そうなんです。これまで通りのやり方や教育内容だと、この基準に満たない学校や自治体が多数出てきました。そこで、学校や自治体がこのギャップを埋めるためにテクノロジーを活用することが積極的だ、というのがいままさにアメリカで教育系スタートアップやさまざまなサービスが多数生まれている理由と言えますね。このあたりの行政や教育現場の動きを追いかけることで、新しいサービスのアイデアの着想のヒントが得られるかもしれません。
聞き手の江口
実際にコモン・コアが導入がされて1年経っていますが、アメリカではどのような反応が起きてるんですか?
Ednityの佐藤さん
つい先日出た資料によると、カリフォルニアで3〜8年生と11年生の320万人がコモン・コアテストを受験し、英語が44%、数学が34%の到達だったという数字がでていて、実際の結果に大きなギャップが出たことが明らかになりました。
聞き手の江口
34%とか44%が到達ってことは、半分以上が基準に満たない学力だった、ってことですか?
Ednityの佐藤さん
そうなりますね。また、経済的ハンディキャップのない生徒とある生徒では、基準到達の割合に2倍以上もの差がでたとのことで、ここでも所得と教育格差が浮き彫りになったと言えます。ニューヨーク州などでは親がコモン・コアテストに反対して子どもを試験に受けさせない、という動きもあるみたいです。色々と世論でも議論がなされている真っ最中ですね。
聞き手の江口
ありがとうございます。なんとなく、アメリカ独特の教育現場が抱える課題が少し理解できました。次回に、最近のEdTech企業の動きもぜひ解説いただきたいと思っていますが、まずは本日はここまで。ありがとうございました。

BRIDGE Members

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7,000社が利用中の統合型ユーザーサポートサービス「Intercom」の仕組み、解説します【ウェビナー】

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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。 定期的にお送りしているエンタープライズ(主にB2B)向けオンラインビジネスの調達ニュースから、特に注目したいビジネスについてその状況などを掘り下げます。初回となる今回は先日シリーズCラウンドで3500万ドルを調達した、ユーザーとの統合型コミュニケーションツール「Intercom」について、本誌ブロガーでア…

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Image Credit : Intercom web site

THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。

定期的にお送りしているエンタープライズ(主にB2B)向けオンラインビジネスの調達ニュースから、特に注目したいビジネスについてその状況などを掘り下げます。初回となる今回は先日シリーズCラウンドで3500万ドルを調達した、ユーザーとの統合型コミュニケーションツール「Intercom」について、本誌ブロガーでアーキタイプ所属の鈴木大貴さんに解説頂きます。

聞き手の平野
まずこのシリーズのお決まりなので改めてご紹介から。鈴木大貴さんは現在、インキュベーションを手がけるアーキタイプに所属する傍ら、若手ブロガーとしても活動されているお一人になります。
鈴木大貴さん
みなさん初めまして。主に本業でもB2B方面を担当していることもあって、そのビジネスモデルなどを日々探求しております。
聞き手の平野
では早速、いつもエンタープライズ向けの海外企業動向をチェックしてもらってますが、もう少し掘り下げてほしいという声もありまして、今回からこういう解説もお願いすることになりました。
鈴木大貴さん
初回はIntercomですね。これは一言で言うと「ユーザーとの統合型コミュニケーションツール」で、ユーザーの動きをリアルタイムに分析したり、エンゲージメントを向上させるためのサービスをワンパッケージで提供しているのが特徴になります。競合となるのはこちらの方々。

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聞き手の平野
いわゆる組み込みのサポートチャットツールですね。CrunchBaseみたらこれまでに6580万ドルも資金を集めてました。
鈴木大貴さん
2011年にアイルランド出身のチームで創業して、500Startupsに採択されています。ちなみにCTOのCiaran氏はアイルランド出身でトリノオリンピックを目指すアルペンスキーの選手だったそうです。
聞き手の平野
屈強そうですね。
鈴木大貴さん
同サービスが伸びてきた背景に、彼らを利用するサービスのビジネスモデルがあるんです。
聞き手の平野
7000社も使ってるんですね。中にはInvisionやShopifyといった有名どころもあるようです。
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Image Credit : Intercom web site
鈴木大貴さん
通常、SaaSのようなユーザーから直接課金するモデルを採用するWebサービスの場合、まずフリープランから使ってもらい、いかに課金ユーザーになってもらうか、また離脱なく継続的な課金ユーザーでいてもらうこと、さらにはより高単価な上位プランのユーザーになってもらう…、といったことが成長の重要なポイントになります。
聞き手の平野
フリーミアムモデルですね。
鈴木大貴さん
つまり、サービスの質が高ければユーザーが紹介で新規ユーザーを呼んでくれるといったこともあるため、顧客と適切なコミュニケーションを取り、サービスの品質を高めていく努力がこれまで以上に求められている、という背景があります。
聞き手の平野
なるほど。
鈴木大貴さん
例えばあるユーザーに対して無料利用から有償利用に切り替えをお願いしたいとしましょう。Intercomを使わない場合、サービスに登録した情報を顧客データベースに登録し直して、別途有償利用促進のメールを送信したり、場合によってはチャットで質問対応して、その情報をバラバラに管理する、というケースが少なくありません。
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Image Credit : Intercom web site
聞き手の平野
あるあるですね。私もやってます。ツールがバラバラです。
鈴木大貴さん
大きなコミュニケーションコストと管理コストがかかりますし、漏れから機会損失に繋がることもあるでしょう。
鈴木大貴さん
この課題解決をするのがIntercomなんですね。自社で運営するWebサービスにIntercomのコードを数行埋め込むだけで、Webサービスに登録しているユーザーの利用状況(サインアップ日時や最終アクセス日など)が把握できる分析機能や、カスタマーサポートができるチャット機能、特定セグメントのユーザーに対しメールやアプリでお知らせを出すことも可能になります。
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Image Credit : Intercom web site
聞き手の平野
なるほど、チャットだけじゃなくてこういう画面でサポート管理まで全般的に組み込んじゃうって感じなんですね。
鈴木大貴さん
ひとつのツールで管理ができるので、ユーザーに対してのコミュニケーション履歴が全て管理できるのが大きなメリットです。こんな感じでサポート途中のユーザーの案件をチーム内でメンションして聞いたりできるようになってます。
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Image Credit : Intercom web site
聞き手の平野
Slackをユーザーサポートまで開放してCRMと統合したような、そんな印象です。
鈴木大貴さん
ビジネスモデルは典型的なSaaSの月額課金です。「Acquire」「Engage」「Support」といった目的に応じた機能がパッケージ化されておりそれぞれ月額49ドルから提供しています。
聞き手の平野
こうやって紐解くと、ユーザーサポートサービスとして、統合型と特化型という分類ができそう、というのもなかなか興味深いところでした。解説ありがとうございました。また次回。

BRIDGE Members

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ハンズフリーの自撮りドローン「Lily」は本当にできるの?を解説します【ウェビナー】

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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。 Lilyは「自撮りドローン」という異名を持つ、これまでにないコンセプトで話題になった機体です。今年5月に予約開始となり、現在699ドル(正式価格は999ドル予定)でプレオーダー受付中のこのドローンの可能性と、実際に製品化するにあたっての課題を解説してみたいと思います。ガジェット、IoT関連はいつもの岡島康…

THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。

Lilyは「自撮りドローン」という異名を持つ、これまでにないコンセプトで話題になった機体です。今年5月に予約開始となり、現在699ドル(正式価格は999ドル予定)でプレオーダー受付中のこのドローンの可能性と、実際に製品化するにあたっての課題を解説してみたいと思います。ガジェット、IoT関連はいつもの岡島康憲さんの解説でお送りします。(岡島さんのこれまでの解説はこちらから

聞き手の平野
今回はLily、2カ月ほど前に話題になった自撮りドローンですね。
IoTに詳しい岡島さん
全長約26cmの円板状で、重さは1.3Kgとコンパクトです。サイトを確認すると2時間充電して20分飛行できるとあるので自撮りには十分ですね。
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Image Credit : Lily Camera on YouTube
IoTに詳しい岡島さん
おばあちゃんでも投げるだけで…
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Image Credit : Lily Camera on YouTube
IoTに詳しい岡島さん
ほらこの通り。こんな集合写真が撮影できちゃいます。
聞き手の平野
そもそもドローンって何に使うのかあんまりよく分かってなかったんですが、撮影用だったんですね。
IoTに詳しい岡島さん
大体の人はカメラを載せて撮影とかしてますね。後はレースとか。
聞き手の平野
正直、撮影するものがないと飽きるんじゃないですか?空撮っていっても綺麗な空とか一回で十分、というか見る方が楽しいし。
IoTに詳しい岡島さん
ということでセルフィーなんですよ。
聞き手の平野
セルフィーにしては大掛かりですよね…。まあいいでしょう、改めてどうやって撮影してくれるんですか?
IoTに詳しい岡島さん
サイトのこの映像にある通り、放り投げると勝手に投げたユーザーの周りを飛んでくれて、例えばスノボしてる様子を追いかけて撮ってくれたりしてくれます。
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Image Credit : Lily Camera on YouTube
IoTに詳しい岡島さん
水の中に放り投げても大丈夫な防水仕様で、ユーザーが取り付けるブレスレット型のセンサーを目指して追いかけてきます。
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Image Credit : Lily Camera on YouTube
IoTに詳しい岡島さん
撮影飛行が終わったら、こんな感じで手乗り着地までしてくれるようです。ここまでくると「ドローン」というより「ハンズフリー自撮りシステム」ですよ。
聞き手の平野
さすがに街中のカップルがこれでセルフィーってわけにはいかなさそうですね。
IoTに詳しい岡島さん
ドローンって色々なメーカーが色々なスペックで出してますが、普通の人がドローンを買うには利用用途の提案があんまりなかったんです。
聞き手の平野
確かに。商用ではAmazonの配達などが話題になりますが、一人一ドローンはさすがに想像しにくい。
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Image Credit : Lily Camera
IoTに詳しい岡島さん
一方でLilyは「自撮り」という強烈なアプリケーションを乗せたドローンと言えますな。「ハンズフリーで自撮りしたいけどどうやって実装しよう」という課題をドローンで解決した。いい課題をいい方法で解決した、と言えるプロダクトだと思います。
聞き手の平野
岡島さん、ベタ褒めですけどLilyからお金もらってたりしませんよね?
IoTに詳しい岡島さん
だがほんとにちゃんと飛んで自撮りしてくれるのかは買ってみないとわからない。
聞き手の平野
えっ
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Image Credit : Lily Camera on YouTube
IoTに詳しい岡島さん
なんだかんだでドローンの姿勢制御って難しいんですよ。投げ飛ばしたり水につけたり、そういうエクストリームな状況にまんべんなく対応できるよう、姿勢を検知するためのセンサーや態勢を立て直すためのローターなど、Lilyならではの技術が盛り込まれているはずなんです。
聞き手の平野
動画みる限りではできてるっぽいですけど…。
IoTに詳しい岡島さん
ただこのシステムを作るのは簡単じゃないはず。もちろんそこを解決できる見込みがあるからLilyを開発しているんだろうけど。
聞き手の平野
なるほど。
IoTに詳しい岡島さん
あとはユーザーの位置特定。Lilyの場合はブレスレット型のセンサーをユーザーが身に付けることで、Lilyがユーザーの位置を特定してるんですね。でも実際に飛ぶ画面になると電柱から建物、他の人も検知しながら飛ばないとうまくいかない。
聞き手の平野
確かにこのムービー、よく見たら周囲の障害物ほとんどない前提ですね…。
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Image Credit : Lily Camera on YouTube
IoTに詳しい岡島さん
設計段階で「ユーザーの位置をきちんと特定できるか」「乱暴に投げられても態勢を立て直せるか」など技術的にハードルの高いと思われる部分があるのでそれらの機能を限られたコスト内で実現できるかがこのドローンビジネスのポイントになります。
聞き手の平野
大変そう。
IoTに詳しい岡島さん
Lilyの製品版において、姿勢制御とユーザーの位置特定を解決してくれるのであればLilyは最強の自撮りデバイスの一つになるんでしょうな。ほんとうまくいってほしい。これはほんとにすごいアイディアだしね。
聞き手の平野
ドローンシリーズはいくつか解説続けたいですね。

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フード系ITビジネスってどういう構造なの?を解説します。【ウェビナー】

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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。 飲食業向けの予約台帳サービス「トレタ」を提供する中村仁さんが、フード系ビジネスに関する業界マップを公開し、話題を呼んでいます。フード系ITビジネスはどのような分類があって、どこにチャンスがあるのでしょうか?この点についてこのマップを作成した中村さんご本人に解説をして頂きました。(※情報開示がありますので文…

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Image Credit : Wall_Food_10125 / 68711844@N07

THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。

飲食業向けの予約台帳サービス「トレタ」を提供する中村仁さんが、フード系ビジネスに関する業界マップを公開し、話題を呼んでいます。フード系ITビジネスはどのような分類があって、どこにチャンスがあるのでしょうか?この点についてこのマップを作成した中村さんご本人に解説をして頂きました。(※情報開示がありますので文末に掲載しておきます)

聞き手の平野
改めて中村仁(ひとし)さんのご紹介から。いつもしゃぶしゃぶとかとんかつとか美味しく頂いております。ありがとうございます。
トレタの中村仁さん
そういう紹介ですか(笑。はい、みなさんこんにちは。トレタという予約台帳サービスを運営している中村と申します。もしかしたら豚組という店舗をご利用頂いて知って頂いている方もいらっしゃるかもしれません。
聞き手の平野
さて、早速今日の勉強会の本題なんですが、先日公開された飲食業向けITビジネスマップというのがソーシャル上で話題になってました。
トレタの中村仁さん
今度開催するカンファレンスで「飲食店のIT化トレンドと基礎知識」っていうテーマで話をするんですが、そのための資料の一部です。
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提供:トレタブログ/クリックして原文へ
トレタの中村仁さん
まず、これはIT業界向けというよりは飲食店向けに作ったものだっていうことを説明させてください。
聞き手の平野
そもそもこんなにサービスがあるなんて私も知りませんでした。
トレタの中村仁さん
飲食店向けのサービスの大半は未だに営業マンによる対面販売が主流ですので、ほとんどのサービスをみんなが知らないのも当然といえば当然かなと。

聞き手の平野
結構クローズドな世界なんですよね。飲食店の方がアナログで、というのは何度も耳にしました。

トレタの中村仁さん
現在、国内では飲食店事業というのはざっくりと50万店舗が23兆円規模の市場を作っているんです。
聞き手の平野
このサービス群が対象とするべき市場規模、ということですね。もちろん飲食業の分も入ってますから、どうやってコストに食い込むか、ですが。
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資料作成:THE BRIDGE
トレタの中村仁さん
23兆円市場は飲食店の売上総計ですから、そのうち、コストとして人件費が30%、原材料費が30%、家賃が15%かかっているとすると、残りの25%がだいたい販管費などにあたるわけで、つまりざっくり5兆円くらいがこれら事業者にとってのマーケットと言えます。
聞き手の平野
ところで以前、取材の際に、特に飲食店のレジ周りについては次のような整理になると説明されてました。
トレタの中村仁さん
お店の売上に直結するサービスでは集客媒体、予約、POS、決済の4つが主戦場で、それ以外のサービスはどちらかというとコスト側のサービスという分け方になります。
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資料作成:THE BRIDGE
聞き手の平野
特に集客メディアは激戦区ですね。改めてこの大きなプレーヤーに立ち向かってるRettyすごいですね。
トレタの中村仁さん
飲食店が販促に売上の3%をかけているとすると、23兆円の3%、つまり7,000億円くらいが外食産業における販促予算の総額となるので、媒体各社はそこの取り合いになっている、と。そういう意味では、レッドオーシャンではあるけれど、まだまだ成長する可能性は残ってるとも考えられます。
聞き手の平野
今まで飲食店のネット活用というとグルメ媒体ばかりが注目されてきたんですが、集客以外に店舗の効率化だったり、満足度の向上といった部分にもITを活用しようという動きがある、ということなんですね。
トレタの中村仁さん
その辺にだんだんお店の意識が向いてきているという実感はあります。
聞き手の平野
それとリクルートさんのサービスがマップ上で結構まんべんなく展開されてるのも分かりますね。垂直統合するリクルートと水平分業する各プレーヤー群、みたいな感じです。
トレタの中村仁さん
そこはひとつこの地図を俯瞰する際のプレーヤー整理としては注目するポイントでしょうね。
聞き手の平野
ところでこのウェイティングシステムってなんなんですか?
トレタの中村仁さん
行列してるお店に端末が置いてあって、そこに電話番号とかメアドを入れると順番が来たら呼んでくれる、アレです。
聞き手の平野
ああ!整理券出してくれるあのシステムですか。
トレタの中村仁さん
そうそう(笑。アレです。
聞き手の平野
このマップにも掲載されてますが、先日取材したSENDもすごく面白い取り組みでしたので、また機会あれば解説してもらおうと思います。今回は解説ありがとうございました。

※情報開示:中村氏の運営するトレタと筆者の家族は契約関係にありますので、本件掲載にあたり情報開示させていただきます。

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スマホで3D写真が撮れるBevel、でもそもそも3D写真って必要?を解説します【ウェビナー】

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THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。 Bevelはスマートフォンのイヤフォンジャックに挿して使う3Dスキャナです。2015年7月にキックスターターでのキャンペーンを開始し、約4200人の支援者から30万ドルを集めて無事成立。現在は12月の出荷に向けて準備中となっております。今回も引き続きこのプロダクトの可能性について岩淵技術商事の岡島康憲さん…

THE BRIDGEウェビナーはニュースや新しいトレンドを詳しく解説するウェブセミナーです。

Bevelはスマートフォンのイヤフォンジャックに挿して使う3Dスキャナです。2015年7月にキックスターターでのキャンペーンを開始し、約4200人の支援者から30万ドルを集めて無事成立。現在は12月の出荷に向けて準備中となっております。今回も引き続きこのプロダクトの可能性について岩淵技術商事の岡島康憲さんに解説してもらいます。

聞き手の平野
前回に引き続き岡島さんよろしくお願い致します。
IoTに詳しい岡島さん
今回はBevelですね。最近注目しているガジェットです。スマートフォンやタブレットのイヤフォンジャックに挿して使う3Dスキャナになります。
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Image Credit : Bevel / Matter And Form Inc.
聞き手の平野
あの、そもそもなんですが、3Dスキャナって何に使うんですか?
IoTに詳しい岡島さん
いきなり根本的なところにきましたね。まあ、一般的な人にとって3D写真はシェアするためのネタとして面白かったり新鮮だったりというのはひとつあるんじゃないでしょうか。
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Image Credit : Seene
IoTに詳しい岡島さん
例えばこのSeeneってアプリご存知ですか?3Dっぽい素材がシェアされてて新しい可能性を感じます。
聞き手の平野
いや、使ったことなかったです。へえ、ちょっと面白い。確かにもう写真共有なんて、って思ったところからいろいろ出てきましたし、Instagramなんてファッション系の流入経路としては鉄板になりましたからね。可能性は否定できません。
IoTに詳しい岡島さん
一方で3Dプリンタ用のデータ作るのって結構大変。特に平野さんとか俺とか人の顔や頭を3Dプリントしようといったらそりゃもう大変。だから3Dスキャナがあるんですね。
聞き手の平野
たまに3Dプリンタでフィギュアとか作ってる人いますね。
IoTに詳しい岡島さん
ああいったデータはSeeneみたいなアプリでもできなくはないんだけど、精度という意味ではやはり低め。このシェア用途の人と、真面目に3Dプリンタ用のデータを作りたい人の間にあるのがこのBevelなんじゃないでしょうか。
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Image Credit : Bevel / Matter And Form Inc.
IoTに詳しい岡島さん
サクッと撮ってたまにシェアして遊んで、場合によっては3Dモデルを作ってそれをいじって3Dプリント、ていう流れを作るきっかけになるかもよ、的なプロダクトなんです。
聞き手の平野
3Dスキャンってなんか空港とかで身体検査するときに体に当てられるアレみたいにこう、ぐるぐる周囲を撮らないとダメなんじゃないんですか?
IoTに詳しい岡島さん
さっき取り上げたSeeneっていうアプリはユーザーに、スマホのカメラを微妙に左右に動かして撮影させ、取り込んだ画像を画像処理することで3D画像を生成しているんですね。こんな感じ。
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Image Credit : Seene
IoTに詳しい岡島さん
一方でBevelはスマホにレーザー照射と反射して返ってきたレーザーを受光するモジュールをイヤフォンジャック経由で接続することで、レーザーを使った3Dスキャンを実現している。
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Image Credit : Bevel / Matter And Form Inc.
聞き手の平野
だから正面からだけ撮影してできるんですね。
IoTに詳しい岡島さん
スマホのカメラで対象物表面の模様を読み取り、レーザーモジュールで形状を読み取ることができ、さらに正確な3Dスキャンが可能になる、というわけです。
聞き手の平野
こう、なんていうんでしょうか、解説聞いてると段々欲しくなってきました…
IoTに詳しい岡島さん
買いましょう。現在こちらプレオーダー状態で79米ドル99セントです。開発元のMatter And Form Inc.は比較的高性能な3Dスキャナも作ってるし、3Dスキャナを手軽にして3Dプリンタを使いやすくする、みたいなことを考えてそうですね。
聞き手の平野
この手のガジェット解説続けると、使わないモノが増えそうで怖くなってきました。解説ありがとうございます。また次回。

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