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リモートワークはやめてオフィスに戻った話

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緊急事態宣言の解除から1カ月近くが経過しようとしています。報道など見てると、観光地や商店街などに賑わいが戻りつつある様子が伝えられる一方、世界的なパンデミックは収束どころか拡大している地域もあり、ああ、結局ワクチンが出てくるまでは薄氷を踏むような状況なのだなと再認識している次第です。 気になる働き方の変化についても各社方向性が決まりつつあります。 例えばそもそも昨年からテレワークを計画していたKD…

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Photo by Marc Mueller on Pexels.com

緊急事態宣言の解除から1カ月近くが経過しようとしています。報道など見てると、観光地や商店街などに賑わいが戻りつつある様子が伝えられる一方、世界的なパンデミックは収束どころか拡大している地域もあり、ああ、結局ワクチンが出てくるまでは薄氷を踏むような状況なのだなと再認識している次第です。

気になる働き方の変化についても各社方向性が決まりつつあります。

例えばそもそも昨年からテレワークを計画していたKDDIや、今年早々に全グループ社員をリモート推奨としたNTTグループのように、事業者自体がテレワーク関連のサービスを提供しているようなケースは妥当として、カルビーのようなメーカーまで新しい生活スタイルに合わせてきています。中でも日立製作所についてはかなり意外でしたが、記事にある通り数年前から実験を繰り返していたということで、改めて経営サイドの準備の大切さを感じるわけです。

一方、スタートアップ含め、比較的動きやすいテクノロジー系各社はどうでしょうか。

ここ数回、オフィスのあり方については各社の意見をまとめて書いてきましたが、Work From Homeのメリットで聞こえてきたのは(1)多様な生活に対応できるようになった、(2)通勤時間の無駄と同時に業務の棚卸しと効率化が議論できた、辺りに集約されるかなと。

<参考記事>

感染症拡大防止の観点で自宅に高齢者などを抱える人は、引き続き感染リスクを下げるために在宅が必要になると思いますが、それ以外にも子育てや介護など、ライフステージにおけるイベントは突然やってきます。こういったケースに働き方が柔軟に対応できるようになった結果、とあるテクノロジー系大手では離職率が下落したという話も聞いています。

また、多くの経営者、マネジメントで意見があったのが業務効率化、無駄の削除です。サイバーエージェントの意思決定が参考になりますが、原則出社に戻す一方、会議については社内であってもオンライン対応するというのが代表例です。場所の確保や移動時間もそうなのですが、オンライン・ミーティングは事前の準備等がしっかりとしていないと、かなりグダグダになります。特に会議中に発言をしないケースでは、本当に参加していたかどうか分からないため、発言責任などがより鮮明になるのも特徴です。それ以外にもハンコなくそう運動や、実は名刺いらなくね?問題など、今後もビジネスシーンにおける効率化は進むのではないでしょうか。

しかし思ったよりも「いや実は違うんじゃないか」と言われているのがコスト削減メリットです。

感染症拡大が決定的になった時、スタートアップ各社でオフィス解約の動きが活発化したのですが、やはり検討の結果、オフィスに戻るという選択をした企業もあります。LayerXもオフィス解約で話題になった1社でしたが、検討を重ねた上で、やはりチーム全員で場所に集まろうという意思決定をしたそうです。

リモートワークに関するメリット等の議論は他社のそれらと大差変わりなく、例えば採用に関する一次面接などは引き続きオンラインを継続するなど、双方の良い点を取り入れていくという意思決定になったというお話でした。しかしそれ以上に彼らが懸念したのが「新しい働き方を議論するコスト」だったそうです。これは大変興味深いコメントでした。

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完全テレワークの実施は約5割、同僚とのコミュニケーションも課題に。 ~ウィズコロナ時代テレワークの課題・工夫に関する調査結果を発表~(KDDI調査・6月11日)

KDDIが実施したリモートワークに関する調査でも、例えば雑談が少なくなる、運動不足になりがち、作業環境が悪い、といったデメリットが挙げられています。では、これらをどうやって解消するのか。この意思決定はスタートアップのような小さなチームにとっては結構な負担です。また、彼らのようにクリエイティビティや思考プロセスが求められる業務が多い分野もリモートワークが苦手とするところです。

具体的なオフィスの契約についても、完全になくしてしまうという意思決定はあまり聞こえてこなくなって、定期的に対面できる場所の必要性を訴える声や納得感の方が大きくなりつつあります。前述のサイバーエージェントは基本出社に戻って、その代わりに週に1回の「リモデイ」という原則リモートの日程を加えますし、こちらのオフィスのように曜日単位で借りられるオフィス、というものも出現してきています。

先行事例としても例えば、投資事業を手がけるミスルトゥではオフィスではなく「MISTLETOE OF TOKYO」というコミュニティスペースを運営していて、ここでは出社が目的ではなく、繋がりを作るといったセレンディピティを重視した考え方になっています。

重要なのはオフィスの考え方も多様性が一気に拡大する一方、「完全になくす」という選択肢は多くの企業にとっては難しいのだろうなということです。最終的にはオフィスの契約は残るケースが多くなり、一時的に期待されたコスト効率化(特に小さなチーム)についてはそこまで劇的なものにはならないのかもしれません。

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ミスルトゥが展開するスペースはオフィスというよりギャラリー

因みに本誌編集部では長らくWork From Anywhere(※在宅ではないので)の考え方で運営しています。シンプルに記事を書く、取材するという活動には各自の自律的な意思決定が重要で、そこに複数の判断が介在すると動きが鈍くなります。一方、事業については、企画運営などの観点からミスルトゥに似たようなコミュニティスペースを作ったりしたこともあります。

きっかけは悲しいパンデミックではありますが、場所ありきではなく、働き方や事業に合わせて場所を考えるよいきっかけであることは間違いないのではないでしょうか。