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Z Venture Capital 創業物語:アジアNo.1のCVCを目指して(後半)

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本稿はZ Venture Capital代表取締役の堀新一郎氏の手記「ヤフーからZVCに転籍します。採用強化します」を前後半にて転載させていただいたもの。CVCがどのようにして立ち上がり、成長していったのかその軌跡を辿る上で重要な記録になっていたので、ご本人の承諾を元に転載させていただいた。彼の記事はこちらでも読める。 3号ファンド設立:2018年8月 (前半からのつづき)社長就任、組織づくり、E…

写真は2020年2月に都さんが入社した時の記念撮影。早くこの頃に戻りたいですね

本稿はZ Venture Capital代表取締役の堀新一郎氏の手記「ヤフーからZVCに転籍します。採用強化します」を前後半にて転載させていただいたもの。CVCがどのようにして立ち上がり、成長していったのかその軌跡を辿る上で重要な記録になっていたので、ご本人の承諾を元に転載させていただいた。彼の記事はこちらでも読める。

3号ファンド設立:2018年8月

(前半からのつづき)社長就任、組織づくり、EV Growth立ち上げと色々なイベントが次々と起こりますが、当然国内スタートアップの資金調達環境は賑やかなので、投資活動は休むことなく進みます。また、日を重ねるにつれスタートアップの資金調達金額はどんどん大きくなっていきます。ついこの間まで30億円のファンドを運営していた自分たちが、突如200億円という巨大なファンドを任された時には一体いつになったら組入が終わるんだろう、と想像も容易にできなかったものです。

YJCはシードからレイターステージの全てのステージに投資するオールステージVCです。レイターステージでは2016年にビズリーチへ16億円の投資を実施しました。また、east venturesと共同で運営するアクセラレータープログラム「Code Republic」でも続々とシード投資も行っています。気付くと2号ファンドの組入も順調に進み、新たなファンドを設立する必要が出てきました。1号・2号ファンドで素晴らしい起業家の皆様とご一緒させていただいた実績を評価していただき、ヤフー取締役会で叱咤激励のメッセージとともに200億円の3号ファンド設立の承認が降りました。

3号ファンド設立の年は、ヤフーの経営体制が変わった年でした。全社で投資活動を積極化していく号令が新社長の川邊さんから発せられていました。川邊さんからは「キャピタルゲインだけではなく、CVCとしてシナジー創出で結果を出して欲しい」というメッセージを頂きました。新しい経営陣の期待を胸に、YJCはシナジー創出を2012年8月の創業以来、より強く意識した運営に移行していくようになります。

具体的な戦略は、前述したセクター別のスペシャリストをコマース、メディア、フィンテックとZホールディングスが所有する事業アセットに合わせた3本の柱とし、これら3領域を重点投資領域に設定します。各セクターのスペシャリストが事業開発のテーマを各カンパニー長に提案する流れを作りました。この活動は2018年から開始していますが、まだまだ改善の余地があり、進化させていかないといけない、と思っています。

Z Venture Capital爆誕:2021年4月

YJCとLINE V合併、新生「Z Venture Capital」誕生ーー堀代表に聞く“300億円新ファンド”と投資戦略

ある日、Zホールディングスの経営幹部からLINEとの経営統合について聞かされます。そして、LINE VenturesとYJCを一つにするという話が舞い降りてきました。LINE Venturesのメンバーは8割以上がソウル、サンフランシスコ、北京といった海外拠点にいます。

コロナ禍で合併相手のメンバーと直接顔を合わせて話し合うことすらも出来ません。令和の時代のM&Aは全てオンラインで進めなくてはなりません。元々PMIを経験したことがないのに、ぶっつけ本番でオンライン・グローバルPMIにチャレンジです。

言葉やカルチャーの違いから様々なすれ違いも生まれます。「Zoom飲み会やらなくなったよねー」というような声が聞こえますが、Zoom飲み会しか交流する手段がないので今でも月1でパートナー間ではやってます(笑)

数々のハードル(!?)を乗り越え、無事に2021年4月1日にZ Venture CapitalとしてZホールディングスのCVCとしてYJCとLINE Venturesは生まれ変わりました。ファンドサイズも300億円とさらにビッグになりました。

合併からの6ヶ月間の振り返り: 2021年10月1日

ミドルバック総責任者に就任した岡本紫苑CFO・General Counsel

ファンドのPMIの経験がある方はそんなにいらっしゃらないと思いますが、私にとっても初めてのことで思った以上に大変でした。2020年2月にジョインしてくれた都さん(現ZVC取締役COO、パートナー)の加入はとても力強かったです。都さんは韓国語、日本語、英語を堪能に話すことが出来ます。旧LINE Venturesの幹部と腹を割って話す際には都さんに沢山助けてもらっています。

投資委員会運営やDue Diligence(投資検討業務)といった超重要な業務に加え、人事評価制度などファンド運営のみならず会社運営に関わる様々な業務を統一化していかなくてはなりません。ビジョン、ミッション、バリューの策定なども本来であればオフサイト合宿を開催して喧々諤々の議論を行いたかったですが、全てオンラインで対応しなくてはいけません。

ZホールディングスとLINEの統合に関して公正取引委員会による審査が行われていたこともあり、LINE Venturesの皆さんとCVCの統合について議論することが直前まで出来ませんでした。なので、4月1日までに合併に関する全てのタスクを消化できませんでした。とりあえず、投資活動ができるようになっていないとマズイ、ということでファンドの設立だけは間に合わせ、4月1日からガンガン投資ができるようにしました。ホームページもとりあえず形式的にLPだけ準備しました(正式版は年内にリリース予定です)。

結果、この半年間、約30社近くに約50億円弱の投資を行うことが出来ました。もちろん、日本だけではなく、米国・東南アジアにも投資をしています。Z Venture Capitalに関わる全メンバーの努力に本当に感動しています。

アジアNo.1のCVCを目指すべく、投資活動に並行して会社運営もどんどんパワーアップしていっています。

5月より、Z Venture Capitalは取締役会設置会社に移行しました。また、監査役にはZホールディングスの法務統括部長である妹尾執行役員に就任してもらいました。

また、8月からは今までフロントメンバーとして活躍してきた岡本紫苑さんにCFO兼General Counselに就任いただき、フロントの活動に加えてミドルバックの総責任者として国内とグローバルのファンド運営に深く携わっていただくことになりました。

そして、10月からはメンバーがZ Venture Capital株式会社に転籍します。Z Venture Capitalの定める勤務形態・報酬体系のもとで、投資活動に従事してもらいます。独立子会社として、独り立ちしていきます。

思い返すと2013年6月に小澤さんに誘われて、ヤフー主務・YJC兼務という形でベンチャー投資業務に携わってきました。道中、ヤフーのM&Aの業務が忙しくなりすぎてスタートアップ投資がままならなくなり、主務をYJCに切り替える、といった経緯もありました。しかし、この8年間はずっと「出向」という扱いでした。今回の転籍は、親会社Zホールディングスの私達に対する期待がとても大きいものだと受け止めています。

原文はこちらから

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Z Venture Capital 創業物語:YJキャピタル創業、突然やってきた社長交代(前半)

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本稿はZ Venture Capital代表取締役の堀新一郎氏の手記「ヤフーからZVCに転籍します。採用強化します」を前後半にて転載させていただいたもの。CVCがどのようにして立ち上がり、成長していったのかその軌跡を辿る上で重要な記録になっていたので、ご本人の承諾を元に転載させていただいた。彼の記事はこちらでも読める。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRI…

本稿はZ Venture Capital代表取締役の堀新一郎氏の手記「ヤフーからZVCに転籍します。採用強化します」を前後半にて転載させていただいたもの。CVCがどのようにして立ち上がり、成長していったのかその軌跡を辿る上で重要な記録になっていたので、ご本人の承諾を元に転載させていただいた。彼の記事はこちらでも読める。

皆さんこんにちは。Z Venture Capitalの堀です。

2021年10月。YJキャピタルとLINE Venturesが合併しZ Venture Capital(以下、ZVC)として新たな航海に出てから半年が過ぎました。10月1日よりZVCメンバーは、ヤフーからの出向を解除しZVCに転籍します。引き続き、グループ会社の一員ではありますが、大企業ヤフーの社員という保護された立場がなくなり、イチCVC(Corporate Venture Capital)の社員として独り立ちしていくことになりました。(旧LINE Venturesのメンバーは年明けに転籍予定です)

ヤフー、LINEといったインターネット業界を代表する企業を親会社に持つ二つのCVCが統合というイベントもあり暫くバタバタしていたので、今日は改めてこれまでの9年を振り返ってみたいと思います。

YJキャピタル創業: 2012年9月

侍衣装のオンデマンド撮影の手配がつかず、鎌倉武士のコスプレ写真になってしまったことは良き思い出です

2012年3月、創業期からヤフーを牽引してきた井上社長が宮坂さんに経営をバトンタッチしました。FacebookがNasdaqにIPOした5月、ヤフーではCVC立ち上げの議論がスタートしました。

破壊的イノベーションを発見しに行き、スタートアップと共に成長する。そしてキャピタルゲインも得る。そういった目論見でYJキャピタル(以下、YJC)が、10億円の1号ファンドが設立されました。初代社長には当時のヤフーの大矢CFOが就任。取締役にエンジェル投資家としても有名な小澤さんが加わり、矢継ぎ早に投資を決めていきます。3ヶ月で投資資金は底を尽き、20億円の投資総額の増額を行うという荒々しい船出でした。

かくいう私は2012年4月にヤフーに入社し、M&Aチームに配属されました。YJCに参画するのは2013年7月で、YJC設立から10ヶ月が過ぎていました。

2号ファンド設立: 2015年1月

30億円に増額したファンドもあっという間に投資余力が無くなりました。1号ファンドの投資先は続々とIPOし、設立から2年しか経っていませんでしたがVCとして驚異のパフォーマンスを叩き出していました。YJCの親会社ヤフーは、2号ファンドの運用総額を200億円に増やします。2倍、ではなく約7倍です。私は当時取締役会に同席出来なかったので伝え聞いた話ですが、これほど順調にいっているのであれば1,000億円にまで増やしても良いのではないか?という意見も出ていたとのことです。当時1,000億円のファンドが出来たらどんなことになっていたことやら(笑)

2号ファンドは200億円。1号ファンドでは国内投資だけを行ってきましたが、200億円の軍資金を持って海外投資にも足を踏み入れることになりました。このタイミングで小澤さんはヤフーショッピングの責任者も兼務していたこともあり、多忙を極めていたので社長を当時のヤフーのM&A責任者の平山さんに引き継ぎます。

海外にはヤフージャパンの名は知られていない。海外の起業家に覚えてもらえるようなインパクトを先に残そう。そういった狙いから全メンバーが侍のコスプレをし、ホームページをリニューアルしました。

社長交代: 2016年10月

社長就任を受けてオフィスにいたみんなとパチリ

ファンドサイズが200億円になり、投資対象エリアも世界に広がったことでメンバーはあちこち飛び回っていました。そんな最中、平山さんにカフェに呼び出され「他社に転職することになったから後は任せたい」と突然の告白を受けます。大矢さん、小澤さん、平山さんと続いたバトンを私が受け継ぐことになりました。

代表を引き受けた後、いくつかの課題が浮かび上がってきました。社長じゃなかった頃には見えていなかった景色だったかもしれません。1つ目はメンバーの離脱。これはもう、私自身の問題であり、深く反省しています。社長という役職をきちんと理解していなかったこと、そして結果を出さなくてはいけないという焦りからメンバーの育成やサポートを疎かにしていました。

もう一つは海外投資のパフォーマンス。2015年から海外投資をイスラエル、韓国、米国、東南アジアといったエリアで行ってきました。国内投資のパフォーマンスと比較すると海外投資の結果は活動期間2年弱と短い期間ではありましたが、誰がどう見ても低調でした。社長になってから初めて行った意思決定は【海外新規投資の凍結】でした。

投資資金も余っており急いで投資を進めなくてはならない状況でしたが、足元を固めることを優先して組織づくりに着手します。

組織づくりは決して平坦な道のりではなかったです。CVCという歴史の浅い組織体が、独立系を含む数々のVCが乱立するマーケットで外部から採用が容易に出来なかったからです。ヤフーでは中途採用に関して厳しい基準があります(これは組織として素晴らしいことです)。ポンポンと採用がまず出来ない。

人材要件を満たす高スペック人材に来てもらおうにも、競合VCほどの柔軟な報酬制度というわけではないのでなかなか良い人材に入ってもらえません。採用は、ヤフーにいる人材を引っ張ってくるしか方法がありませんでした。社員数が数千人もいるから十分じゃないか、という声もあるかもしれませんが、ヤフーの社員でVC業務を経験した者は皆無だったので、これまた百戦錬磨のキャピタリストが活躍しているマーケットでは大きな周回遅れを強いられました。

こうした状況下で、世間で活躍しているキャピタリスト(ソーシング力を持っていて、ビジネス経験も豊富で、金融・会計・法務ノウハウを保有している)をロールモデルにした人材開発を諦めます。世の投資銀行、証券会社、コンサルティングファームがやっているようにセクター別のスペシャリストを擁立することに方針転換しました。これは社内でも反対の声がありましたが、生き残る道として選択しました。

EV Growth Fund設立:2018年4月

EV Growth Fundの面々と。左から衛藤バタラ氏、Willson氏、Roderick氏、堀、大久保義春氏

海外投資の凍結を決めたものの、海外投資が成功する要件とは何か・そもそも投資が成功する要件とは何か。ということをずっと考えていました。私の上司でありメンターでもある小澤さんには「投資してもらいたい、と思われるブランド・信用が無ければどこの国で投資をやっても良い起業家に投資出来ない」と言われていました。

国内では小澤さんが約4年間かけてYJキャピタルの立ち上げに尽力してくれたため、YJキャピタルに素晴らしいブランドが築かれたと思っています。しかし、海外で同じことをやろうと思うと、そもそも人生を海外生活にかけられる人材を採用し、その人がブランド立ち上げるまでに4〜5年は待たなくてはなりません。グローバルでスタートアップ投資はどんどん成長していたので、思ったように海外進出出来ない現状に焦りの気持ちがどんどん募っていきました。

そんな中、グローバル市場でブランド力を保有するパートナーと共同GPという形であれば海外投資にチャレンジ出来る、と考えるようになりパートナー探しを始めました。どのVCもヤフーと共同GPを立ち上げるメリットを感じてもらえなかったのですが、east venturesのManaging DirectorのWillsonと話す機会が2017年9月に訪れます。日本ではメルカリを始めとする数々の著名なスタートアップに投資しているVCですが、東南アジアではTokopediaやTravelokaのシードステージから投資をしている、東南アジア№1のシードVCです。

私はYJCで東南アジアのエリアを中心に投資を行っていましたが、誰もが投資をしたいと思っている優良企業のシリーズAに参加出来ずにやきもきしていました。一方で、east venturesは殆どの有望なスタートアップのシードステージに投資していました。当時、シードVCでeast venturesが頭一つ抜け出ていたからです。そして、彼らのポートフォリオ企業に対して東南アジアを代表する有名なVCがシリーズAでバンバンと投資を決めていました。

「私もそのインナーサークルに入りたい」と常々思っていましたが、出張ベースでは簡単に入れてもらえません。そこで「シリーズA以降の投資機会を域内の他のVCに提供する前に、east venturesとYJCで先に出資しませんか」と私からWillsonに提案したところ、「たまたま同じ提案をSinarmasから受けたところでこれは何かの偶然かもしれない。SinarmasもYJCも共にeast ventures Seed FundのLPなので、この際3社でGrowthステージに特化したVCを作って、東南アジア№1のVCを一緒に目指していかないか」とトントン拍子で高層が実現に向けて突き進んでいくことになりました。

本提案はヤフーの経営陣から「このスキームなら海外投資を任せられる」とお墨付きをいただくことになり、半年後には150億円のEV Growth1号ファンドをeast ventures、SinarmasとYJCの3社の共同GPファンドとしてスタートすることが出来ました。

後半につづく原文はこちらから

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YJCとLINE V合併、新生「Z Venture Capital」誕生ーー堀代表に聞く“300億円新ファンド”と投資戦略

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Zホールディングス(以下、ZHD)の連結子会社で事業投資を手がけるYJキャピタルは4月1日、LINE Venturesと合併し、Z Venture Capital(以下、ZVC)としての事業を開始すると発表した。3月1日に両社の親会社であるZHDとLINEの経営統合が完了したことを受けたもので、YJキャピタルを承継会社とし、商号を変更した上で両社が保有していたコーポレートベンチャーキャピタルとして…

Z Venture Capital代表取締役の堀新⼀郎氏

Zホールディングス(以下、ZHD)の連結子会社で事業投資を手がけるYJキャピタルは4月1日、LINE Venturesと合併し、Z Venture Capital(以下、ZVC)としての事業を開始すると発表した。3月1日に両社の親会社であるZHDとLINEの経営統合が完了したことを受けたもので、YJキャピタルを承継会社とし、商号を変更した上で両社が保有していたコーポレートベンチャーキャピタルとしての投資機能を統合する。

またこれに伴いZVCの日本および韓国・米国・中国・東南アジアなどのグローバル投資ファンドとして新たに300億円の新ファンド「ZVC1号投資事業組合」の組成も公表した。代表取締役には旧YJキャピタル代表の堀新⼀郎氏が就任し、取締役会長に旧LINE Ventures代表取締役の黄仁埈(ファン インジュン)氏、取締役には旧YJキャピタル取締役の都虎吉(ドー ホーギル)氏、Zホールディングス執行役員の崔 ボラ(チェ ボラ)氏がそれぞれ就任する。

本誌では改めて代表に就任した堀氏に、統合後の投資戦略を聞いた。(以下、太字の質問は全て筆者。回答は堀氏)

統合で何が変わる

さて、統合で何が起こるのだろうか。堀氏はポイントを3つに整理して説明してくれた。

ーー統合で発生する変化は

堀氏:今までYJキャピタルは親会社であるヤフーのためにこのファンドのパフォーマンスリターンとしてキャピタルゲインとシナジー創出することに対してみんな一生懸命仕事してきました。LINE Venturesも同様です。LINEのためにやってきた。

今後、我々にとってのステークホルダーは(統合した)ZHDです。ここにはアスクルや一休、ZOZOといったグループ企業がたくさんあります。このグループ全体に対するシナジー創出をしてくことになる、という点が大きな相違点になるかなと考えています。

次にチームです。今まではYJキャピタル10名、LINE Ventures7名でそれぞれ別々に動いていたわけですが、これが総勢17名となり、東京、北京、ソウル、サンフランシスコの4拠点という構成に変わります。自然と対象になる国もYJキャピタルからするとグローバルを強化できたとなりますし、LINE Venturesからすればこれまでのグローバル投資に加えて日本への注力も可能になります。つまりチームの拡大によって投資エリアが拡大したこと、これが大きな変化です。最後がファンドの新設です。300億円で新設し、日本国内と海外に対して出資します。

ーーファンドの出資金は

堀氏:出資元母体はZHDとなります。

ーー国内のCVCで300億円というサイズはトップクラスだが、海外を含めてとなるとやや小さく感じる

堀氏:検討の詳細はノーコメントでお願いしますが、ここでしっかり結果を出して次にステップしたい、とさせてください。

日本とグローバルを1つのファンドで攻める

ではもう少し話を進めて具体的な投資戦略について聞いてみることにしよう。筆者は以前、堀氏にYJCとしての投資パフォーマンスの考え方を聞いたことがあるのだが、CVCでありながらシナジーだけでなくキャピタルゲインもしっかり狙う「二兎を追う」考え方と話していた。

投資領域についてZVCは「ZHDの中核事業であるコマース、メディア、フィンテックの3領域に加えて、ヘルスケア、サイバーセキュリティ、B2B ソフトウエア領域などにも積極投資を行う」としている。ステージはシードからレイターまで未公開企業のオールステージでここはこれまでと変わらない。

YJキャピタル時代から変化するのが海外投資だ。これまでにYJキャピタルはEast Ventures、Sinar Mas Digital Venturesと共同で東南アジアにフォーカスした2億5,000万米ドルのファンド「EV Growth」を2018年に設立しているが、LINE Venturesと統合することで主体的に取り組むことになった。エリアは韓国、米国、中国、東南アジアで、テーマはAI、ロボティクス、ブロックチェーンを含むディープテック領域としている。

では堀氏への質問に戻ろう。

ーーYJキャピタル視点で海外が新たな局面を迎えることになる

堀氏:LINE Venturesは2014年からファンドを2つ(※グローバルとジャパン)運用していまして、グローバル投資が100億円、日本投資が50億円というサイズでした。確かにチームメンバー含めグローバルへのフォーカスが強く、一方のYJキャピタルは国内が強かったと思います。投資戦略としてまずこの新設した300億円のファンドを中心にワンチーム経営に移ります。国内・海外でファンドを分けません。これが大きな挑戦だと思ってます。一方、ソーシングなどのチームはジャパンとグローバルで分かれます。

ーー海外と国内、新たな領域、複雑な投資戦略の舵取りをどう整理する

堀氏:基本的な考え方はZHDと将来シナジーがありそうな領域に対してキャピタルゲインを狙いながら、かつ、シナジーを考えた出資をしていくことになります。ただエリア毎に若干戦略は変わると思います。

まず日本についてはオールステージで、Code Republicを通じたシード投資からレイターまで全部をサポートします。フォーカスするセクターもYJキャピタルとしてやってきたメディア・フィンテック・コマース3領域に加え、LINEグループが入ってくることによってヘルスケア領域への注力が増えます。また、ZHDの統合により、アジアナンバーワンのテックカンパニーを目指すという方向性が示されてます。我々もですね、このAIによって世の中を変えていくという部分を注目しているので、AIオリエンテッドな企業にはこれまで以上に積極投資していく考えですね。

それと2社が合体することで親会社同士の大きなシナジーが生まれるのが広告事業です。これまでB2Cの企業であると考えられていた我々にとって、法人領域、つまりB2B SaaSについても一定以上の活動を仕掛けていくというのが日本に関する投資戦略になります。

ーー海外は

堀氏:次に海外なんですが、これは国にもよりますが、国内に比べて競争が非常に激しい。ですので、我々の強みとしてグループ企業が持っているデータやサービス基盤を軸に、ディープテック領域やサイバーセキュリティなど、これらの資産を活用して新しい市場を創造できるような、そういった企業に出資していくことになります。ここは将来の事業開発という意味も込めて比較的アーリーステージへの投資が中心になるはずです。

ーーEV Growthの設立やZHDのアジアフォーカス、そしてご自身もベトナムでの赴任経験など「アジア色」を強く感じる

堀氏:はい、東南アジアが重要になると考えています。LINEはタイや台湾、インドネシアなどで一定のユーザーがいますが、我々としてもグローバル投資における一番注目しているマーケットが東南アジアなんです。これら地域には既にLINEが持っているエコシステムがありますから、それを強化するような投資が考えられます。例えばエンターテインメントやデリバリー、PayPayのノウハウなどそういったものを活かせる領域があるはずなので、本体サービスの連携を含めた、現地スタートアップと垂直立ち上げできるようなチャンスがあれば積極的にいきたいですね。

シナジーへの取り組み

YJキャピタル時代に始まった完全クローズドの協業イベント「Zピッチ」

統合によるワンチーム・ワンファンドへの移行、そして投資エリアの拡大と領域の広がりについて堀氏に聞いた。最後はシナジーについてだ。これまでもYJキャピタルとヤフーでは、マイノリティ出資をきっかけにグループ入りするdelyのような連携ケースがあった。

リリースによれば今回統合したZHDグループは国内で200を超えるサービスを提供し、従業員数2万3,000人を誇るインターネットサービスグループになるそうだ。特にLINEは国内のみならずタイや台湾、インドネシアでも利用が進んでいる。ZVCはこれらのサービスエコシステムに対し、事業提携機会の創出やノウハウ共有、プロダクトの導入支援、海外展開支援などを通じて出資先をより具体的に連結させる動きをするとしている。

Yahoo!やLINEという巨大エコシステムと出資先をどう結び付け、事業拡大に寄与するのか。

ーー本体投資とZVCの連携について。そもそも投資事業はどう棲み分けする

堀氏:棲み分けは明確にあって、マジョリティ投資はZHD、マイノリティーはZVCです。出資先とグループの協業・連携はもちろん継続で、Yahoo!と連携したdelyやスタンバイのようにZVCの支援先とグループ企業が一緒になって事業開発していく。これは我々の使命だと思っているので、今後はそれをどれだけ増やせるかということを頑張っていきます。

ーーYJキャピタルは本体事業との連携に積極的だった印象があるが、LINE Venturesは私の取材範囲の限りでは、そこまで大きくスタートアップ育成やシナジー活動を聞いてこなかった。育成や協業支援という観点で意見の相違やハードルはあったのでは

堀氏:カルチャーの違いは当然ありました。だからミッション・ビジョン・バリューなどを作る際にもかなり議論はしましたね。まあ半年ぐらいは試行錯誤は続くと思うんですが、それ以上に一緒に組むことでできることが増える。期待というか、本当に興奮している状況ですね。

例えばこれまでYJキャピタルでは西海岸や中国にスタッフがいなかったわけです。だからこの地区のスタートアップどうなってるんだろうとか、アメリカの状況知りたくても、実は知り合いづてに聞いたりしてたんですね。それが現地にいるわけです。これだけでも物凄いプラスです。で、先日、delyの堀江(裕介・代表取締役)さんが「参謀部屋」っていうのを作っていましてですね、彼が中国のこの企業どうなってるんですか、韓国の、インドの、アメリカのってバンバン聞いてくるんですよ。今は韓国にも中国にも4月からはアメリカのメンバーも増えるので本当に手応えを感じてますね。

ーー確かに現地情報はこれまでになかった恩恵だ。もう一点、グループシナジー創出のために協業イベントを開催していたがあれは継続するのか

堀氏:はい、Zピッチは支援先の登壇企業との提携・協業が中心だったんですけど、そのスピンオフをソフトバンクと一緒にやったんです。事業部長ではなく呼んだのは営業マンで、500人ぐらい集まりました。彼らは法人営業のプロダクトを探していて、そこに対してスタートアップを紹介したわけです。今、バンバン商談決まってます。

ーーCVCとしての投資戦略だけでなく、本体連動がより明確になった印象がある

堀氏:エコシステムへのアクセスを提供するっていう表現を使ってます。LINEだったりYahoo! ショッピングだったり、スタートアップのみなさんが組むことで事業が大きくなるのであれば、そこへのアクセスを提供するし、事業責任者だったり、社長だったりとの商談をセッティングします。我々はアジアで一番大きなインターネット・カンパニーになるので、このリソース・アセットを存分に使ってくださいと。このエコシステムの「入口」まで我々がご案内しますよ、というのが伝えたいことです。

ありがとうございました。

堀氏との会話で、特に海外のトレンド、特に情報が閉じがちになる中国やアジア圏の情報が容易に手に入るのは大きなメリットと感じた。国内はある程度盤石なZHDに与えられた使命はアジア圏における存在感の拡大にある。ユニコーン(未上場企業で10億ドル以上評価)輩出数でアメリカに続く中国・インドといったアジア各国に対抗するためにはマザーズ上場組を含め、シードから成長期に入るスタートアップ企業を底上げする必要がある。そのためにも内需はもちろん、市場として周辺各国での展開を選択肢に入れられるかどうかは大きい。

ZHD本体はAI関連を中心に今後、5年間で5,000億円の戦略投資を公表している。なので、どうしても300億円というサイズに小さい印象が付き纏ってしまうが、堀氏の言う通りステップバイステップで拡大させていくのだろう。ZVCがシードからマザーズ上場クラスまでの発掘・育成を担うことができれば、ZHDの戦略投資におけるシナジー効果は自ずから明らかになっていくだろう。

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ビズリーチなど展開のビジョナルがマザーズ上場へ、評価額は1,550億円規模に

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ビズリーチなどを傘下に持つ「ビジョナル」は3月17日、東京証券取引所への新規上場申請を実施し承認されたことを発表した。市場区分はマザーズで証券コードは4194。2,12万7,800株を公募し、1124万7,800株を売り出す。なお、オーバーアロットメントは26万6,900株。主幹事は野村證券と三菱UFJモルガン・スタンレー証券が務め、上場予定日は4月22日。 価格の仮条件は4月6日に決定し、ブック…


ビズリーチなどを傘下に持つ「ビジョナル」は3月17日、東京証券取引所への新規上場申請を実施し承認されたことを発表した。市場区分はマザーズで証券コードは4194。2,12万7,800株を公募し、1124万7,800株を売り出す。なお、オーバーアロットメントは26万6,900株。主幹事は野村證券と三菱UFJモルガン・スタンレー証券が務め、上場予定日は4月22日。

価格の仮条件は4月6日に決定し、ブックビルディング期間は4月6日から3日を通して実施される。最終的な公開価格決定日は4月12日。同社公開の有価証券届出書によれば、2020年7月期(第1期)の通期売上高は258億7,900万円で経常利益が22億5,400万円。足下の第2期第2四半期の売上高は累計で121億6,700万円、営業利益15億1,200万円、経常利益が16億6,500万円となっている。公募分を含めた総株数は3,559万1,100株。想定発行価格の4,355円から算出した評価額は約1,550億円。

今回上場を承認されたビジョナルは、2007年8月に創業したダイレクトリクルーティングサービス「株式会社ビズリーチ」を中核に、2020年2月にグループ経営体制に移して新設された企業。傘下にビズリーチ、ビジョナル・インキュベーション、BINAR、Cloud  Solution、トラボックスを100%の子会社、株式の40%を保有するスタンバイを関連会社として持つ。

グループにおけるビジネスは主力のビズリーチ事業(全体売上の約8割を占める)と、HRクラウドのHRMOS事業、そしてその他HR Tech事業に分かれる。2009年4月に開始したプロ人材の採用プラットフォーム「BizReach(ビズリーチ)」から始まり、2014年に20代向け転職サイト「キャリトレ」、2015年には求人検索エンジン「スタンバイ」などを順次展開した。2020年7月期におけるビズリーチ事業の累計導入企業数は1万3,800社で、足元の2021年7月期第2四半期累計は1万5,500社となっている。

主力事業のBizReach

また、2016年からは本格的なHR TechサービスとしてHRクラウドの「HRMOS」を開始し、ビズリーチ事業とは異なる柱を立てている。2020年7月期・第4四半期におけるARR(年間経常収益)は10億3,200万円で、足元の2021年7月期第2四半期は11億3,200万円となっている。一方、チャーンレート(解約率)は2020年7月期・第4四半期が1.15%であったのに対して足元の2021年7月期第2四半期は1.43%とやや上昇している。

これら主力の事業に続く次の柱を作るべく、インキュベーション事業にも取り組む。M&Aでグループ入りしたトラボックスはこれまでの人材事業とは全く異なるエンタープライズ向けの物流プラットフォームであり、その他、新たな事業に取り組む組織としてビジョナル・インキュベーションを稼働させる。グループ全体で社員数(臨時含む)は1,204人。

主要な株主は創業者で代表取締役の南壮一郎氏が50.4%、ジャフコが13.99%、島田亨氏が6.83%、YJキャピタルが5.14%、Japan Entrepreneur Collaboration Limitedが4.67%、竹内真氏が3.73%、ジャパン・コインベストが1.63%、グロービス・キャピタル・パートナーズが1.49%、Salesforce Venturesが1.48%、永田信氏が1.21%と続く

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米中で人気沸騰中、成長が期待されるオンラインフィットネス市場を大解剖

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、YJキャピタルのキャピタリスト岡本紫苑さんによるもの。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。Twitterアカウントは@OkamotoShion YJキャピタルは、オンラインフィットネス動画配信サービス「LEAN BODY」を運営するLEAN BODYに追加投資をさせていただきました。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシ…

Photo by Anna Shvets from Pexels

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、YJキャピタルのキャピタリスト岡本紫苑さんによるもの。原文はこちらから、また、その他の記事はこちらから読める。Twitterアカウントは@OkamotoShion

YJキャピタルは、オンラインフィットネス動画配信サービス「LEAN BODY」を運営するLEAN BODYに追加投資をさせていただきました。

追加投資を決断したのは、①今後オンラインフィットネスがフィットネスサービスの中心として拡大すると予想しており、②LEAN BODY社が日本のオンラインフィットネス業界のリーディングプレイヤーであると考えているからです。今回は、①のオンラインフィットネス市場の成長可能性について書いてみたいと思います。

1. 国内フィットネス市場の概況

(1)国内フィットネスクラブ市場の構造変革

オンラインフィットネス市場について検討する前提として、リアルのフィットネスクラブの市場規模について見ていきます。2018年時点の国内フィットネスクラブ売上高は約4,800億円、施設数は約5,800軒です。昨今の健康志向の高まりを受け、売上高・施設数共に右肩上がりで成長しています。

引用:ティップネスウェブサイト

フィットネスクラブの主要プレイヤーは、コナミ、セントラルスポーツといった従来型の総合型フィットネスクラブと、24時間セルフ型のエニタイムフィットネス、ターゲット限定型のカーブス、パーソナル型の「RIZAP」等の新興型プレイヤーとに大別されます。

出所:SPEEDA総研作成図をもとに筆者加工

後者の新興型プレイヤーが2013年以降頃から増加し、近年はフィットネスクラブ売上高ランキング上位に複数名を連ねています。この新興型プレイヤーの躍進を、第一次構造変革と呼ぶことにします。

出所:SPEEDAデータをもとに筆者加工

それでは、次に起こる構造変革は何でしょうか。第二次構造変革と呼ぶべきものが、オンラインフィットネスプレイヤーの台頭であると考えています。そもそも第一次構造変革はなぜ起こったのでしょうか。それは一言でいえば、フィットネスがより日常生活に浸透したことによる変革だと考えています。24時間好きな時に利用できるエニタイムフィットネスやJOY FIT、総合型フィットネスクラブよりも安価で短時間なトレーニングを想定したカーブス等が躍進したのは、フィットネスをいつでも・より手軽に楽しみたいという消費者のニーズが現れたものといえるでしょう。

そうしたフィットネスの日常生活への浸透は今後ますます進み、いつでも・どこでも・手軽にフィットネスを楽しみたいというニーズはより拡大するものと考えています。そして、そのようなニーズを実現してくれるのがオンラインフィットネスなのです。

資料:筆者作成

(2)日本におけるオンラインフィットネスの市場規模

では、オンラインフィットネスの市場規模はどの程度あるのでしょうか。日本は他国と比べてもフィットネスクラブの会員数が少なく、フィットネスクラブに通っている人は全人口のわずか3.3%です。これは、フィットネスクラブの施設数が足りないこと、料金が高いことが主な原因であると考えられます。これらの理由により現在フィットネスクラブに通っていない97%の人も、いつでもどこでも行うことができ、料金も手軽なオンラインフィットネスであれば、実施できる可能性は十分にあります。

出所:プロフィットジャパンブログ

また、米国では、大手フィットネスジムチェーンの24 Hour Fitnessとフィットネス動画配信サービスのDaily Burn等、リアルのフィットネスクラブとオンラインフィットネスサービスが提携する例が見られます。ジムには月に数回通い、ジムに行けない平日夜にはオンラインフィットネスで軽く体を動かす等の形で、リアルのフィットネスクラブとオンラインフィットネスを併用している人が多数いることがうかがえます。このように両サービスの併用が一般になされていることから、フィットネスクラブを既に利用している人も、オンラインフィットネスサービスのターゲットに十分なり得ると考えます。

上記により、オンラインフィットネス市場は、顕在化しているフィットネスクラブの市場規模よりもはるかに大きなポテンシャルがあると考えられます。

2. 世界のオンラインフィットネス市場の概況

世界に目を向けると、既にアメリカ、中国等でオンラインフィットネスサービスの躍進が始まっています。Report Oceanのレポートによると、世界のバーチャル/オンラインフィットネスの市場規模は、2019年は31億2247万米ドル、2026年までに330億2667万米ドルに達するとされており、2020年~2026年中はCAGRで38.20%という高い成長が予測されています。

(1)アメリカ

アメリカではご存知のとおり、エクササイズバイクで知られるPelotonが急成長を遂げています。有料会員数は133万人を超えており、時価総額は約465億ドル(2021/1/9現在)まで成長しています。2020年7-9月決算は売上高7.6億ドル(前年比232%増)、営業利益は6,890万ドルで、2四半期連続の黒字を達成しました。

出所:Google

また、瞑想アプリについてもCalmやHeadspaceが大規模な資金調達を行う等、注目が集まっています。他方、リアルのフィットネスジムについては、老舗フィットネスジム「ゴールドジム」を運営するGGIホールディングスが2020年5月に連邦破産法11条を申請する等、コロナ禍による苦境が鮮明になっています。

(2)中国

中国においても米国同様、オンラインフィットネスが大きく成長しています。ソーシャルフィットネスアプリやフィットネスマシン等を提供するスポーツテック企業の「Keep」は、シリーズEラウンドで約8,000万ドルの資金調達を行い、中国のスポーツテック分野の初のユニコーン企業となりました(※)。同社の発表によると、Keepの登録ユーザー数は2億人を超えているとされています。他にも任天堂のリングフィットアドベンチャーが爆売れする等、コロナ禍を契機にホームフィットネスが大きな注目を集めています。(※BRIDGE編集部註釈:Keepは先日、シリーズFで3.6億ドルをさらに調達

3. コロナ禍収束後のオンラインフィットネスの未来

オンラインフィットネスは、コロナ禍による外出自粛・フィットネスジムの閉鎖により大きく躍進しました。そうであれば、ワクチンの普及によりコロナ禍が落ち着けば、オンラインフィットネスブームも収束してしまうのでしょうか。私はそんなことはなく、オンラインフィットネスはアフターコロナにおいてもフィットネス業界の中心となると考えています。

まず、米国の例を見てみると、下図のとおり、2020年7-9月はコロナの新規感染者数が落ち着いていました。その時期は米国の多くの州でジムの営業が再開されていましたが、上記のとおり、オンラインフィットネスPelotonは当該四半期も好調な業績を記録しています。

出所:Google

また、ボストンコンサルティンググループのコロナにより自粛している活動・施設の利用再開時期に関する意識調査によると、ジム/スパについては「たとえ通常時に戻ったとしても行うつもりはない」との回答が33%と、他の活動・施設よりも多くなっています。これは、コロナ禍収束後においても、自宅でのフィットネスでジム/スパの利用を代替可能と考えているユーザーが多いためだと考えられます。

出所:ボストンコンサルティンググループ

さらに、上記のとおり、リアルジムとオンラインフィットネスを併用しているユーザーが多数いることから、コロナ禍が収束し、フィットネスジムの利用が再開したとしても、それによりオンラインフィットネスのブームが去ることにはつながらないと考えています。

4. まとめ

上記のとおり、私は日本におけるオンラインフィットネスの発展に大きな可能性を感じており、アフターコロナの時代においてもフィットネス業界の中心的存在になると考えています。

コロナ禍によって人々は新しい生活様式を余儀なくされ、心身の健康維持や在宅時間の充実について向き合うきっかけを与えられることになりました。いつでも・どこでも・気軽に・自分に合ったコンテンツでフィットネスを楽しみ、ココロもカラダも健康になれる。そんな未来をLEAN BODYが実現してくれると信じ、YJキャピタルとしてもささやかながらそんな未来に貢献できればと思っています。

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インターネット最強は生まれるかーーYJキャピタルが「Zピッチ」開始、グループ各社連携を加速

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ニュースサマリ:ヤフーのCVC、YJキャピタルは9月16日、グループ企業との連携強化を目的とした取り組み「Zピッチ」の開始を伝えている。ヤフーやソフトバンク、Zホールディングスのグループ企業各社とスタートアップの協業を模索するもので、事業部の責任者や現場メンバーを対象に事業プレゼンテーションの機会を提供する。開催は非公開形式で隔週での実施が予定されている。応募は無料。事業との関連を考慮して応募内容…

YJキャピタルが以前開催していた事業提携ピッチの様子(素材提供:YJキャピタル)

ニュースサマリ:ヤフーのCVC、YJキャピタルは9月16日、グループ企業との連携強化を目的とした取り組み「Zピッチ」の開始を伝えている。ヤフーやソフトバンク、Zホールディングスのグループ企業各社とスタートアップの協業を模索するもので、事業部の責任者や現場メンバーを対象に事業プレゼンテーションの機会を提供する。開催は非公開形式で隔週での実施が予定されている。応募は無料。事業との関連を考慮して応募内容から選考される。

YJキャピタルではこれまでdelyやビジョナル(旧ビズリーチ)などへの出資を通じてグループ企業・サービスとの連携を進めてきた実績がある。選出されたスタートアップについては、具体的な事業連携の検討やYJキャピタルを通じた出資検討が実施される見込み。

話題のポイント:ここ1、2年、スタートアップエコシステムにおける投資サイドのアップデートが進んでいる印象です。独立系ベンチャーキャピタルについてはこちらの記事にまとめたように、各社ハンズオンを組織化したり、リブランディングすることでそれぞれのカラーを出すようになっています。

一方、事業系の投資を担うコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)についても同様の差別化が始まっています。KDDIは2011年からインキュベーションのプログラム「KDDI ∞ Labo」を軸にCVCファンドと直接投資をうまく使い分け、買収したソラコムを上場に向かわせる「スウィングバイ・IPO」を話題にしました。

サイバーエージェントのCVC、サイバーエージェント・キャピタル(CAC)もまた、グループのノウハウを提供する支援体制を公表したばかりですが、今回のYJキャピタルも同様の流れとみてよいでしょう。KDDIがパートナーを組む複数企業との共創、CACがグループシナジーを中心とした支援を打ち出しているのに対して、YJキャピタルはグループ会社との直接的な連携を提案しているのも差別化ポイントです。

特にヤフーは国内インターネットを牽引してきた一丁目一番地です。

PayPayを始めとするフィンテック、ヤフオク中心のコマース、メディアとしての「Yahoo! JAPAN」以外の領域も存在感を示しており、例えばグループ企業の一休(トラベル)、鳴り物入りで傘下となったZOZO(ファッション)、アスクル(小売流通)など、「無い物はない」状態を保ちつつあります。

もう一つ忘れてはならないのがLINEとの統合です。まだ詳しい時期は未定ながら、これまで弱かったコミュニケーション領域が補完されることで、領域の抜け漏れはもちろん、東・東南アジアでの展開も視野に入ってきます。アジア圏にはBAT(中国)やGrab・Gojec(東南アジア)などの強豪が力を示しており、ここにZHD・LINE連合がどのように食い込んで世界のポジションを獲得するかに注目が集まっています。

今回のZピッチは名称からもわかるように、YJキャピタル単体のピッチイベントというよりは、こういった広義でのアジア・インターネット戦争における参加窓口と考えた方がよさそうです。今日時点でのZホールディングスの時価総額は約3.2兆円で、インターネット・カンパニーとしてはエムスリー(約4.1兆円)に次ぐ規模となっています。ここを超え、アジアの巨頭たちと競り合うスタートアップが出てくるかどうか。久々に楽しみなステージが出てきました。

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コロナ禍でどうなる「Y Combinator 2020」ここが注目【Podcast:Code Republic・松山さん】

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史上初めて完全オンライン上にて開催された「Y Combinator 2020年度夏季アクセラレータープログラム」。8月31日より2日に分けて、総参加企業198社がオンライン上でプレゼンテーションを披露しました。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 参加企業のほぼ半分である48%はB2Bソフ…

史上初めて完全オンライン上にて開催された「Y Combinator 2020年度夏季アクセラレータープログラム」。8月31日より2日に分けて、総参加企業198社がオンライン上でプレゼンテーションを披露しました。

参加企業のほぼ半分である48%はB2Bソフトウェア開発スタートアップが占め、それに続けてヘルスケア関連が16%、コンシューマー関連が13%、フィンテック関連が11%を占める結果となっています。本稿ではスタートアップアクセラレータープログラム「Code Republic(コードリパブリック)」の松山馨太さんがstand.fmで語った、デモデイ参加企業のトレンドについて印象に残ったポイントをまとめてみました(文中の発言箇所はすべて松山さんの音声からの書き起こしです)。

音声はこちらから

松山さんは今回のプログラムを三つのトレンドに整理しています。

  • 新興国のタイムマシン経営
  • withコロナ型のビジネス
  • データ業務の効率化

まず、「新興国のタイムマシン経営」について。

「アメリカでの成功モデルをインドやアフリカ・南米などの新興国で展開するビジネスです。採択社数を増加させた2019年冬プログラムも多く存在していましたが、今回は前回に比べても増加している印象です。それだけ単純なインターネットサービスによるイノベーションが難しくなっているのかもしれません」。

では、今回のバッチで目立っていた「新興国のタイムマシン経営」を軸に持つスタートアップはどういったものが挙げられるのでしょうか。松山氏は、約10社の同領域へ挑むスタートアップを取り上げています。

「今回のバッチでは、チャレンジャーバンクを展開するインド版PlaidのDecentro、決済システムを提供するパキスタン版StripeのSafepay、コーポレートカードを提供する東南アジア版BrexのVoloPay、手数料無料の株取引PFを提供する中東版ロビンフッドのThndrが大きく印象に残っています。不動産領域ではメキシコ版OpenDoorのFlat、エジプト版ZillowのSakneen、他にも飲食店のクラウドPOSを提供する南米版TOASTのParrot Software、卒業後に学費を支払うISAモデルのヨーロッパ版ラムダスクール、南米版ラムダスクールなど多くのサービスが発表されていました」。

中東版ロビンフッド「Thndr」

withコロナ型のビジネス

またCOVID-19真っ只中ということで、例年にはない特徴を次のように指摘されています。

「コロナウイルスの流れの中でヘルスケア領域はもちろんのこと、デリバリーサービスだけで9社、教育やフィットネスなどオンラインを通じたイベント・レッスンを販売するサービスが11社、リモートワークやリモートのコミュニケーションを支援するサービスが13社となっています。こうした動きは例年とは大きく異なっており、コロナによる環境変化を意識したビジネスが多く選定されていると感じました」。

具体的な選出スタートアップは次のようなものです。

「デリバリーでは中小規模のリアル店舗やEC事業者に対して、オンデマンドで即日配達サービスを提供するTyltGoのようなサービスがあり、複数事業者からの集荷、ルートの最適化、ドライバーのクラウドソーシングにより低コストで即日配達できる配送ネットワークを提供しています。

またIn Stockは、Amazon Primeより低価格で同日配達してくれるECプラットフォームを目指しており、消費者は、郵便番号と製品名を入力すると、即日配達もしくは持ち帰り可能な商品を表示、そのまま購入できるECサービスになっています。このサービスは小売店が登録すると、POSから在庫情報を読み取り、自動的に出品〜販売され、リアル店舗の小売業者の販売支援という一面もになっています。オンラインイベントやレッスンの販売では、サービス版Shopifyのようなサービスが多く登場しています。

Sutraは、フィットネスに特化したオンラインレッスンコンテンツの販売プラットフォームで、各ショップページ、ライブコンテンツ・オンデマンドコンテンツの販売、予約・決済システムを提供しています。同じくPolyOpsはWhatsapp・Telegramでオンラインレッスンを販売するために必要な機能を提供するサービスとなっており、月額支払・単発支払・アフィリエイトプログラム・会員管理等のツールを提供しています」。

この「ソーシャル・ディスタンス」におけるトレンドの中で特徴的な動きは次のようなものだそうです。

「このようなソーシャルを販売チャネルに変化する動きは、サービスだけでなく物販のECにおいても見られました。たとえば、インドのBikayiは、WhatsApp版Shopifyを標榜しており、インドでは個人商店がWhatsAppで注文をもらい配達するケースが多いそうで、WhatsAppと連携したオンラインショップを簡単に開設できるサービスを提供しています。同社はデモデイ終了5日後には約2億円の調達を実施しています。

リモートワークの領域では、常時接続のビデオチャットサービスとハードウェアを提供するSidekickのようなサービスがありました。また、TellaやQueueのような動画の共同編集サービスも登場しています。プライベートのリモートコミュニケーションでは、ZoomやLINEでのビデオを通話が一般化していますが、新たなフォーマットを提供するサービスも生まれてきています。

たとえば、Hereは、他のビデオチャットとは異なり自由にビデオチャットルームを作成できるサービスで、ルーム上に友人を招待したり、パワポ感覚でGIF、画像、メモなどを貼り付けて自由にカスタマイズできるサービスになっています。また、Piepackerはゲームをしながらビデオチャットできるクラウドゲームプラットフォームとなっており、ゲームをしながら話すだけでなく、ゲームキャラに自分を加工したり、ゲームに最適化したコミュニケーションで盛り上がれるサービスとなっています。

このようにデリバリー、オンラインイベント・レッスンの販売、リモートワーク・リモートコミュニケーションツールのようにWithコロナを意識したビジネスが多く登場していることが分かります」。

データ業務の効率化

最後のトレンドは「データ業務の効率化」です。SaaSなどの発展で、一般企業が膨大な利用データを抱える中、それを効率的利用へ導くためのサービスということでしょう。具体的に、デモデイではどのような課題解決を目指すスタートアップが選定されたのでしょうか。

「データのエラーや欠損を自動的に追跡・確認するシステムを提供するHubbleはデータの加工・変種における非効率を軽減しています。また、Aquarium LearningやKeyDBのように機械学習やデータベースの処理速度自体を向上させるサービスもあります。さらに非エンジニアのデータ分析では、Salesforce等のSaaSやShopify、Stripe等の決済情報、ソーシャルメディアに至るまで自社の様々なたデータ一元管理できシステムを提供するMozart Data、SQLを記述せずノーコードでデータベース上の分析・管理できるツールを提供するAchoが選定されています。」

今回のバッチは、YCにとってもその運営方法や選出するスタートアップのトレンドなど大きな変更が起きる年になったと言えるでしょう。松山さんが取り上げているように、COVID-19で求められている「withコロナ型のビジネス」は確実に増えたことは間違いありません。また、withコロナに関わらず今まで通りビッグデータ解析系スタートアップや、タイムマシン経営を先進国で目指すスタートアップも順調に需要を集め続けていることが伺えます。

ある意味、今年はコロナ禍でYCがどういった系統のスタートアップを選出するのか、例年以上に注目が集まっていたと思います。結果だけを見れば、コロナ関連の新市場が誕生し総合的な割合を増やしつつも、大半は既存テクノロジーにイノベーティブな磨きをかけていく、そうしたスタートアップが占めていたと感じます。

VC界をリードするY Combinatoがパンデミック以降、初めて選出したスタートアップにwithコロナ型のビジネスが組み込まれていたことはこれからのスタートアップ・VCの方向性を見極めていく上で重要なターニングポイントとなりそうです。

編集部よりお知らせ:松山さんが共同代表を務めるアクセラレータープログラム「Code Republic」では随時参加企業を募集中です。参加希望される方は公式サイトをご覧ください。

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ノーコードで世界は変わる

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本稿はスタートアップ自身がストーリーを投稿する「POST」記事です ノーコードという言葉をご存知でしょうか。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 言葉の通り、ノーコード(プログラミング不要)でアプリケーション開発のハードルを下げることを指します。今、このノーコードが様々な業界のビジネスや仕…

yappli_004
ヤプリCTO 佐野将史

本稿はスタートアップ自身がストーリーを投稿する「POST」記事です

ノーコードという言葉をご存知でしょうか。

言葉の通り、ノーコード(プログラミング不要)でアプリケーション開発のハードルを下げることを指します。今、このノーコードが様々な業界のビジネスや仕組みに影響を与えはじめています。私たちヤプリもまた、数多くの事例を手がけることでその効果を企業のみなさんと分かち合ってきた一社です。

見えてきた世界観は次のようなものです。

  • 非エンジニアの能力を拡張し、想像力を高め、アイデアを実現させることができる
  • 組織にスピードを与え、ユーザードリブンなプロジェクト推進を可能にする

本稿ではノーコードがもたらす変化、この先にある世界についてみなさんと共有できればと思っています。

広がるノーコードの世界

※動画は2015年当時のYappli

改めて、ヤプリで開発を担当している佐野将史と申します。創業からずっとアプリプラットフォーム「Yappli」の開発に携わってきました。7年近く経過した今、大手ブランド中心に導入社数は400社を超えて今も伸びています。

現状では「マーケティング支援」と我々が呼んでいるジャンルが顧客の大半を占めている状況です。背景としては、企業のモバイルマーケティング強化の文脈で自社アプリ利用が進んでおり、具体的にはアパレルや通販、商業施設、飲食などの業界(インダストリー)がアプリを通じて集客強化をしているケースが多いです。

ポイントカードやスタンプ、クーポン、ECがよく使われる機能で、オンラインのみならず、オフライン店舗への誘導などにも貢献し、利用企業の売上や集客に一定の効果が認められるようになりました。顧客の成長がそのまま私たちの成長につながっています。

一方、利用シーンにも広がりがあります。

例えば商品カタログや研修動画です。社内や取引先に配布するB2Bアプリで大手のメーカーさんに採用いただいてます。また、ユニークな例では青山学院大学さんが大学と学生間でのコミュニケーションを目的に利用されているケースもあります。

従来のオフライン(紙媒体など)や、ウェブで管理や共有していたものが、より接点の近いアプリに置き換わっているわけです。このようにインダストリーを問わない形で企業のモバイル投資が進んでおり、大きなチャンスが広がっているのがこの、ノーコードの市場になります。

ノーコードで社会はどう変わるのか?

pexels-photo-1266810.jpeg
Photo by Simon Matzinger on Pexels.com

では、本題です。ノーコードは世界をどう変えるのでしょうか。アプリが簡単に作れるだけ、今までのコストが圧縮できて利益が出るようになったーー。もちろん即時的な効果は前述した通りです。

しかし、私たちはもっと幅広い可能性があることに気がつきました。

例えばノーコードの世界観ではエンジニアや外注するベンダーのスキルは各社平等になります。各社(特に非情報産業系の企業)エンジニアリングのレベルは極めて平坦になります。一方、特色が出るのがデータです。価値のあるコンテンツやデータはそれぞれの企業の特色を表現し、よりこれら魅力的なデータをどうやって集めるか、という点が重要になってきます。

これまでは腕のよいエンジニアを雇い、より良い見せ方、より個性的な表現に高いコストを支払っていたわけですが、ノーコードの世界ではより企業のブランドの保有する資産(データ)という、本質的な競争環境が生まれると予想されます。

ではエンジニアは不要かというともちろんそんなことはありません。

ノーコードの世界では、量産可能なアプリを作る技術はどんどん不要とされていきます。反面、オリジナリティ(尖った・面白いもの)のあるエンジニアはより高い評価を受けることになります。言い換えれば、量産っぽいつまらない仕事が減り、クリエイティブな仕事ができるので優秀な人はどんどん活躍できるわけです。もちろんですが、エンジニアの知識があれば、ノーコードツールを活用する方法も、そして企業がどのようなデータを集めればより競争力が付くかも想像しやすくなります。

つまり、企業はより資産となるデータやコンテンツの独創性が競争力となり、かつ、エンジニアもより高い次元で企業と仕事ができるようになる。そんな世界観が今、実際にやってきていると考えています。

ノーコードの思想

yappli_001
現在提供しているYappliは今年7月にCMS刷新した

当然ですが、まだまだ道は半ばです。

エンジニアの方であれば理解いただけると思うのですが、400以上の様々な活用をされるアプリが、同じ言語で作られていて、同じプラットフォーム上で動いていることは、非エンジニアが想像する100倍くらいとんでもないことです。ある特定のアプリに対して、誰でも運用できるCMS(管理画面)があるのとは訳が違います。だから当初から「Yappli」を「アプリのCMS」とは言いたくありませんでした。

本当にこの世界を創るには強い信念と思想が必要です。便利なものを作ればいい、儲かるものを用意すればよい、投資が集まる聞こえの良い美辞麗句を並べれば良い、ではすぐに挫折します。

例えば、アプリ開発だけでよければ、カスタマイズをした方がいろんなアプリを作れるし、販促アプリ開発ツール、社内共有アプリ開発ツール、など、使用用途によってCMSを分けた方が売りやすいかもしれません。

しかし、1つの課題に対して1つのピースで解決していては絶対に生まれないアイデアや発見があるはずです。この7年間でどんどん変わっていく世界はそれを教えてくれました。なので、ヤプリとして活用方法を提案することはあっても、使用用途を決めることはしません。余白を残していることは重要なのです。

そして何よりノーコードが果たす役割として大切なのが「人の成長」です。

実際にYappliを最大に活用しているデザイナーさんや、導入担当者と近いCS(カスタマーサクセス)の担当者さんの言葉にヒントがありました。

そこにどんな人でも運用可能な管理画面があり、MAのようなプッシュ通知を打つことができたり、誰がみてもわかるダッシュボードがあったり、CDPと連携しデータを活用したり。サイロ化された組織を横断し、いくつものツールを連携することで実現可能だったことが、プラットフォーム上で実現できるようになれば、担当者の能力の拡張につながるはずです。

短期間でPDCAが回せる環境があれば、そこでの発見や経験は確実に人の成長に寄与します。またさらにそれを横に展開することで、その成長は加速されるはずです。私たちも導入企業の担当者さんと一緒に、アプリの運用についてワークをするようなミートアップも開催してます。ノーコードを合言葉に、業界や職種を超えて、人と人との交流を促進させるきっかけになれば、よりよい世界が広がると信じています。

本稿はノーコードのアプリプラットフォーム「Yappli」を開発・提供する株式会社ヤプリCTO、佐野将史氏によるもの。Facebookアカウントはmasafumi.sano。彼らの事業や採用に興味がある方、彼らとの取り組みを希望する企業はこちらからコンタクトください。

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小売デジタル化のhey、米Bain Capitalが70億円出資ーー予約集客のクービックを買収【報道・追記】

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STORESなどのコマース、決済プラットフォーム企業を傘下に運営するヘイ(hey)は8月4日、シリーズEラウンドの第三者割当増資の実施を公表する。 下記の通り、同社から今回の買収と増資について正式な発表があったので追記する。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 参考情報:hey がクービッ…

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ヘイウェブサイト

STORESなどのコマース、決済プラットフォーム企業を傘下に運営するヘイ(hey)は8月4日、シリーズEラウンドの第三者割当増資の実施を公表する。

下記の通り、同社から今回の買収と増資について正式な発表があったので追記する。

また、今回の大型増資にあたり、ヘイ代表取締役の佐藤裕介氏のリリースコメントを全文掲載する。

先日お客さまからいただいた言葉が忘れられません。STORES をご利用いただき、旅館の名物である金目鯛の煮付けをネットで販売開始した浜の湯の鈴木社長のひとことです。

「宿泊客がゼロで暇になってしまった厨房に、煮付けのオーダーが全国から続々と入り活気が戻った。自分たちを求めてくれるお客さまがいることにスタッフみんなが勇気づけられ、いつか泊まりにきたいとメッセージをくださるお客さまのためにも、みんなで踏ん張らないといけないとネット販売をしてみてあらためて感じた」

私たちができることは、大きな災害を前にして小さなものですが、とはいえ、このように大変な状況にある方々の希望や活力の源になれるかもしれないと再認識しました。 今回の資金調達とクービックのグループ化を通じて、コロナウイルスの感染拡大と事業者のみなさまの営業自粛にまつわる課題を解決するためにリリースしてきた、売上金の早期出金やオンラインストア開設サポート、ビデオ会議サービス「Zoom」との連携によるオンラインレッスン予約の簡易化などのニューノーマルに対応した個人、中小事業者向け機能の展開をより加速していきます。

hey とクービックの仲間、そして、今後入社する仲間と共に、単なる利益と規模の追求だけでなく、こだわりや情熱、たのしみによって駆動される経済に支えられた社会となることに貢献していきたいと思います(ヘイ公式発表より)。

引受先となるのは米投資会社のBain Capital、香港投資会社のAnatole、ゴールドマン・サックス、PayPal、YJキャピタル、既存投資家としてWiLが参加する。シリーズE全体で調達した資金は非公開だが、同社の説明によるとBain Capital単体での出資額だけで70億円が投じられる模様。また、一部報道にもあった通り、これまでの既存株主からの買取もこの中に含まれる。増資に合わせ、開発などの体制を現在の200名から倍増の400名にまで引き上げる計画。

hey_002
ヘイが運営するサービス

また、これに合わせて集客・予約システムのクービックの発行済み全株式を取得し、グループ化する。運営するCoubicは先日、Google検索などでで店やサービスを見つけ、そこから予約までをGoogle上で完結できる「Googleで予約」の本運用を開始したと発表したばかり。

また、新型コロナウイルスへの対応などから、先日発表された Zoom 連携の実装を優先させるなど、新しい環境下でのお店予約のあり方を推進してきた。

クービックは2013年10月、グーグルの検索プロダクトマネージャーなどを歴任した倉岡寛氏(現在、クービック代表取締役)により設立された企業で、月間利用ユーザは250万人、180を超える業種に対応しており、8万社以上(個人事業者を含む)が利用している。

本件については追加の情報が届いたら追記する。なお、参考記事としてheyに関する情報をこちらにまとめた

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11億円調達「TANP」が見出した、ギフトEC市場デジタル化のチャンス

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ニュースサマリ:ギフトショップ「TANP」を運営するGraciaは7月29日、第三者割当増資の実施を公表した。投資ラウンドはシリーズCで、増資を引き受けたのは既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、 ユナイテッド、個人投資家として有安伸宏氏(出資額は7000万円)。新規株主としてYJキャピタルが今回のラウンドから新たに参加している。 調達した資金は11億円で…

tanp.png
8月移転予定の倉庫にて/Gracia代表取締役の斎藤拓泰氏(素材提供:Gracia)

ニュースサマリ:ギフトショップ「TANP」を運営するGraciaは7月29日、第三者割当増資の実施を公表した。投資ラウンドはシリーズCで、増資を引き受けたのは既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、 ユナイテッド、個人投資家として有安伸宏氏(出資額は7000万円)。新規株主としてYJキャピタルが今回のラウンドから新たに参加している。

調達した資金は11億円で、今回の増資で累計の調達額は17億円となった。株価などの詳細は非公開。前回ラウンドは2019年8月で5億円の増資を実施しており、人員体制の強化やロジスティクスの管理システムを改善した結果、1日あたりのギフト発送可能件数を1200件から2300件まで伸ばすことに成功している。今年6月の売上成長率は前年同月比で3倍になっている。

調達した資金で自社契約の倉庫を拡大(記事冒頭の写真)し、基幹業務システムの開発もさらに進めるための人材投資を中心に実施する。

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TANPウェブサイト

話題のポイント:ギフトECのTANP運営が1年で順調に成長してラウンドを次に進めました。前回の取材でも代表の斎藤さんにお聞きしていますが、気になるのはギフト市場におけるTANPのポジショニング、ビジネス戦略です。物理的なモノを発送するというフィジカルな限界点や、ビジネス的なスケールの方向性など、いくつかポイントを斎藤さんにお聞きしました。

まず、彼らがひとつ打ち出した方向性として、ギフト配送システムの将来的なビジネス向けOEMがあります。ギフトにはラッピングなどのオプション対応といった、通常のECサプライチェーンとは異なる点があります。EC市場の伸びしろを考えると事業者がこのオプションを求める可能性は大いにあり、Graciaとしてそこにビジネスチャンスを見出そうとしているというわけです。

これら倉庫管理のテクノロジー市場は「Warehouse Management System(WMS)」と呼ばれ、米調査会社のリサーチによると2020年時点での市場規模は24億ドル相当で、これが2025年には51億ドル規模にまで成長するという試算も発表しています。

WMSは複雑な倉庫や物流ネットワークの効率的な処理、拡張、生成される大量のデータを迅速に処理するテクノロジーを提供します。これを導入することで事業者は在庫ストックや従業員の効率化に関する意思決定がやりやすくなり、さらにTANPはここに自社サービスで培ったギフトラッピングなどのオプションノウハウを追加し、他社にOEM展開することを見込んでいるのです。

では、ポイントとなるギフトオプションはどのような難しさがあるのでしょうか。ここからは斎藤さんの回答を交えて説明したいと思います(太字の質問は全て筆者)。

ーーギフト加工部分の難易度が高い、ということでしたが、主に注目している工程の課題と解決方法についてTANPの取り組みを教えてください

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資料提供:Gracia

ギフト加工とGraciaで呼んでいる作業は、一般的な倉庫業の中では「流通加工」と呼ばれる業務の一つです。ギフト以外の例で行きますと「値札つけ」、「輸入製品のタグの張り替え」などもこれに当てはまります。いわゆる3PL(サードパーティーロジスティクス)などの倉庫委託業社でもこれらのギフトラッピングは一部請け負っているところはありますが、対応している業者が未だ少ない、対応していたとしても少量多品種だと対応不可という課題があります。

ーー具体的にどこが難しい?

ギフト対応を実現するためにはユーザーインターフェイス側と基幹業務システム側を一気通貫して設計をしないといけない、という背景があります。当社ではECパッケージなどを使わずにこれらのシステムをフルスクラッチで開発してきましたので、少量多品種で豊富なギフトラッピングをスケーラブルに実現ができました。

ーー既存のWMSに独自に付け足すというよりは、ギフト対応用にイチから全て作らないとスケールに問題がでる

ただ弊社のシステムもまだ未完成でありますので、よりお客様へのサービス価値を上げながら、商品点数を増大し、スケーラビリティを担保することが今後の最大の課題です。今後は根本的なデータベースの見直し、IoT機器の倉庫への導入を含め解決に向けて地道に取り組んでまいります。

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資料提供:Gracia

ーー話を変えてギフト市場について。前回に引き続いての質問ですが、1年事業を継続してみて掴んだ世界観を教えてください

ギフト市場は全体で10兆円の市場と言われております。当社はその中で「ギフト×EC」というドメインが主戦場です。その中で他の主なプレイヤーとしては総合ECのギフト部門、百貨店のEC部門などが当社の競合にあたります。現状日本のEC化率というものが2019年時点でおよそ7%だと仮定すると、現状でおよそ7000億円の市場、ここから10年以上かけて20%ほどになると仮定するとおよそ2兆円の市場になると考えております。

ーーこの中でのWMSに関連する領域を攻める、というわけですね

この市場において、ことECにおいてはギフト対応が各社まちまちとなっております。実店舗においては店員さんが個別のマニュアルに従って対応できますが、ECでは画一的に、効率的に対応することが求められます。ここの物流におけるDXが進んでいないこと、当社がギフトに特化したロジスティクスを構築できつつあることに鑑みて、将来的に他社ECでのギフト対応の出荷機能を請け負うことも視野に入れております。

ありがとうございました。

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国内電子商取引市場規模(BtoC及びBtoB)・経済産業省

2019年における国内のEC市場は約20兆円で前年比で7.6%の成長、EC化率についても消費者向けで約6.8%、ビジネス向けで約32%とまだまだ伸びる市場です。さらに言えば、感染症拡大の問題で人々のオンライン化は加速することになりました。

TANP自体の成長もそうですが、そこで得たノウハウを元に全てのEC事業者のギフトプラットフォームとして次のスケールを狙うというGraciaの戦略は正しいもののように思えます。

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