OpenAI、開発者支援「Academy」設立——低・中所得国の開発者にクレジット100万米ドル分提供

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これは学校ではないが、アカデミーは地元の開発者のスキルやキャリアを向上させるために設計されている。

もちろん、23日に発表された新たな取り組み「OpenAI Academy」のことだ。この AI ユニコーン企業が発表したのは、低・中所得国の開発者に総額100万米ドル相当の API クレジットを授与するというものだ。

目的は? 医療、農業、教育、金融などの分野で経済成長とイノベーションを促進し、「AI の変革的な可能性が世界中の多様なコミュニティに届き、利益をもたらすことを確実にする」ことだ。発表では次のように述べている。

多くの国には、才能ある開発者や革新的な組織が集まる急成長中の技術セクターが存在していますが、高度なトレーニングや技術リソースへのアクセスは依然として大きな障壁です。地元の AI 人材の育成に投資することは、多くの産業にわたって変革的な影響を与える可能性があります。

皮肉屋や懐疑論者は、この取り組みを「新たな技術的植民地主義」と捉えるかもしれない。アメリカに本拠を置く OpenAI が世界中に影響力を広げ、自社技術への依存度を高めようとしていると見るのだ。

しかし、クレジットを受け取る開発者たちにとっては、自分たちが選ばれたことを祝わずにはいられないだろうし、OpenAI のモデルを使って新しいアプリを作成し、それが成功したビジネスに成長することに大きな期待を抱くのは自然なことだ。

もちろん、OpenAI は、新興の開発者たちが新しいスタートアップを立ち上げる中で、自社の地位をさらに強固にすることで利益を得るだろう。しかし、この発表の中には、これらの開発者たちが他の AI モデルを同時に使用してはいけないとか、将来的に他の競合 API プロバイダに切り替えることができないという文言は見当たらない。開発者と OpenAI の双方にとって、これは win-win の状況だと私は思う。

どの国が参加対象になるのか?

OpenAI の発表では、「低・中所得国」に含まれる国々が具体的に示されていないが、これらは世界銀行が使用しているカテゴリでもあり、国民一人当たりの国民総所得(GNI)に基づいている。

実際、世界銀行は経済を4つの所得グループに分けている。低所得国、下位中所得国、上位中所得国、そして高所得国だ。

アメリカや多くの欧州諸国は高所得国に分類され、サハラ以南のアフリカや南アジアの多くの国々が低所得国や下位中所得国に分類される。これらの国々では、GNI が低いため、AI のような最先端技術にアクセスすることが依然として大きな障壁となっている。

例えば、アフガニスタン、バングラデシュ、アンゴラなどが低所得国や下位中所得国に該当する。

実際、全世界の国々の63%は低・中所得国(LMIC)とみなされており、その数は137カ国にも上る

これだけの数の国々すべてを OpenAI が一度に対象とすることは考えにくいため、まずどの地域に焦点を当て、どのような理由で選定するのか注目される。

地元の人材を支援して世界的な影響を与える

もちろん、OpenAI が開発者にこのプログラムへの応募を促すために提供するのは、API クレジットだけではない。同社はインキュベータやコンテストの開催、さらには「AI を活用する開発者やミッション主導の組織に専門家を提供する」ことを約束している。

Academy の重点は、世界中の開発者のネットワークを構築し、さまざまな地域間でのコラボレーションや知識共有を促進することにある。

参加者同士をつなぐことで、OpenAI は技術革新を集団で推進し、地域ごとの課題に取り組む強力なコミュニティを形成することを目指している。

この取り組みでは、コミュニティの最前線で活動する組織に対し、フィランソロピストと提携して対象を絞った投資を提供するコンテストやインキュベータも開催される予定だ。

例えば、最近 OpenAI 賞を受賞した「The Tools Competition」の受賞者である KOBI は、ディスレクシア(読み書き障害)を持つ学生が読書を学ぶのを支援する AI を使用している。また、もう一つの受益者である I-Stem は、インドの視覚障害者や弱視コミュニティが有意義な雇用機会を見つけられるよう、コンテンツへのアクセスを向上させるために AI を利用している。

AI リソースへのアクセス拡大

開発者への直接支援に加えて、OpenAI は Massive Multitask Language Understanding(MMLU)ベンチマークをアラビア語、ベンガル語、スワヒリ語など 14 言語に翻訳するための資金を提供した。

この取り組みは、AI 教育を非英語圏のコミュニティにとってよりアクセスしやすく、また地域のニーズに文化的・言語的に適合させることを目的としている。

OpenAI Academy は、開発者や組織のエンパワーメントを目指す OpenAI の継続的な取り組みの大規模な拡大を意味している。

OpenAI は、Academy のリソースへのアクセス方法に関するさらなる詳細も提供する予定だ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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