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Interview

IVS、今日から初のオンライン開催——名実ともに運営責任者となった島川氏に聞いた舞台裏と意気込み

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本稿は、Infinity Ventures Summit 2020 の取材の一部である。 Infinity Ventures Summit(IVS)は7月30日と31日、新型コロナウイルス感染対策として、同イベントをオンラインで開催する。2004年に始まった ILS の前身とされる New Industry Leaders Summit(NILS、当時は CNET Japan などの主催)からカウ…

島川敏明氏
Image credit: Infinity Ventures Summit

本稿は、Infinity Ventures Summit 2020 の取材の一部である。

Infinity Ventures Summit(IVS)は7月30日と31日、新型コロナウイルス感染対策として、同イベントをオンラインで開催する。2004年に始まった ILS の前身とされる New Industry Leaders Summit(NILS、当時は CNET Japan などの主催)からカウントすると、同イベント16年に及ぶ歴史上、初のオンライン開催だ。

IVS はその名の通り、長きにわたりベンチャーキャピタルである Infinity Venture Partners(IVP)が主催する年2回のイベントとして運営されてきたが、昨年7月に神戸で開催された Infinity Ventures Summit 2019 Summer から運営が IVP の若手チームにバトンタッチされ、今年2月には新会社インフィニティベンチャーズサミットが設立され運営が引き継がれた。

今回開催される IVS は、運営チームにとって名実共に IVP から独立して初めての回となるが、図らずして新型コロナウイルスの影響からオンライン開催を余儀なくされ、準備を進める上で、以前のリアル開催の頃の体験、または、それ以上の体験を参加者にどのように届けるかは、新チームにとって大きな苦悩と挑戦の連続となった。

新会社の代表取締役であり、イベントの運営責任者を務める島川敏明氏に、今回の IVS の舞台裏と意気込みを聞いた。

テックカンファレンスの変遷と代替わり

2017年冬、金沢県立音楽堂で開催された IVS。冒頭のパイプオルガンの演奏が幻想的だった。
Image credit: Masaru Ikeda

世界中のテックカンファレンスに目をやると、その多くは TechCrunch Disrupt のようなメディアが運営するものや、WebSummit のような独立系のカンファレンス運営会社によるものが多い。IVS や B Dash Camp のように VC がカンファレンスを運営しているケースは稀だと、海外のスタートアップ関係者から言われたのを思い出す。

もっとも海外でも、VC が自社のプレゼンス向上や投資先スタートアップ(ポートフォリオ)の露出を意図してプロモーションイベントやデモデイを開くことはよくあるが、前出の IVS や B Dash Camp などは、それぞれ IVP や B Dash Ventures 以外の VC や投資先以外のスタートアップも登壇したり、ピッチへの参加を招聘されたりする点で、もはや VC イベントという領域を超えたと言える。

そういう点で IVS が新会社による運営に移行したことにも大きな意味がある。もはや VC 一社のイベントではなく、スタートアップエコシステムを構成する一要素として独立した存在となったからだ。それと同時に、イベント運営にも完全なる独立採算が求められる。新体制の IVS は、新型コロナという痛手を伴う船出を余儀なくされた。

昨年の夏の神戸の回では、Infinity Venture Partners のプリンシパルの立場で運営に参加した。登壇者も、若手の起業家に話してもらうことにフォーカスした。「新しい風が吹いて良かった」という反響を多くもらえたのはありがたい。

しかし、運営を任されたのが開催の直前だったこともあり、チームメンバーも足りておらず、正直なところ、やりきれなかったこともいろいろあった。それらを改善し、いろいろ整えて次へ繋げようと準備を進めている矢先だった。(島川氏)

今夏の IVS はもともと京都市内のホテルで開催される予定で、メイン会場やパーティー会場などの準備も着々と進められていた。しかし、今年3月くらいになって、新型コロナ感染拡大で大規模イベントの開催が難しくなり、IVS にも決断が迫られた。会場との延期交渉やキャンセルフィーの発生、イベントの演出スタッフへの補償など、新会社にとっては初回開始前から財務面だけでもマイナスを強いられたわけだ。

しかし、悪いことばかりではない。新しくなった IVS にはメリットも多く期待できると島川氏は言う。

まず、IVS を新会社運営にしたのは、(赤字にならずに)ケツを持って回していけるほど、いいコンテンツを作っていきますよ、という我々の決意の表れ。そして、独立して法人化した組織でやった方が自由度が高いこともわかった。これは会社を登記した時に意図していたことではないが、実際に新体制で動いてみて感じられるようになったことだ。(島川氏)

改めて見直される IVS の価値と意義

昨年7月に神戸で開催された Infinity Ventures Summit 2019 Summer の「LAUNCHPAD」
Image credit: Masaru Ikeda

IVS がオンライン開催となるのは今回だけでなく、新型コロナが収束しなければ、次回以降もリアルでの開催は難しいかもしれない。IVS が完全にオンライン化してしまう可能性も考えられる。島川氏はこの状況に際し、IVS が提供できる価値と意義とは何かを改めて見直す好機となったという。

IVS とは、質の担保された発見、質の担保された出会い、質の担保された学びを提供する場。こういった価値や意義は、オンラインでも届けられるのではないか。オンラインに振り切るとすれば、IVS はイベントというよりもオンラインサロンに近い存在になるだろう。そのコミュニティを作っていくことにも注力していきたい。

大きなカンファレンスでは、ある回が開催されて、次の回が開催されるまでは参加者同士が疎遠になってしまいがち。でも、オンラインサロンを中・小規模で開き続ければ、そこで常に皆が繋がりディスカッションが生まれる状態を作り出せる。そうして学んだ結果を持ち寄って、年に2回大きめのカンファレンスをオンライン開催する、という形も考えられる。(島川氏)

リアルカンファレンスのオンラインサロン化が吉と出るか凶と出るかは、世界の事例を見てもまだ参考になる答えが無い。カンファレンスのコンテンツの一形態であるパネルディスカッションやスピーチ、スタートアップイベント特有のピッチセッションなどはオンラインでの代替は比較的容易だが、他方、筆者も拙稿で頻繁に述べている「偶然の出会い」、いわゆるセレンディピティを創出するのがオンラインでは難しい。

島川氏によれば、IVS ではこの課題を解決するために3つの方法を準備しているという。

  1. 部屋ごとにファシリテータとテーマを設定。「○○の部屋」のような名前で、複数の Zoom 飲み会を複数(しかも数多く)用意する。
  2. ビデオ会議ツール「Remo」を使ったオープンネットワーキングを実施。Remo のファウンダーが IVS に協力してくれているそう。Remo では最大800人まで同時に入室できるが、その場合、参加者の混乱を防ぐために部屋のもう一つ上層に「フロア」という概念が必要になる。フロア毎に意味を持たせることを検討中。例えば、あるフロアは投資家や VC が集まる資金調達の話を聞くフロアとし、テーブル毎に VC に集まってもらい、資金調達中のスタートアップが訪れるイメージ。また、自身のセッションが終わった登壇者が Remo のテーブルに移動し、聴衆とフランクに話ができるような体験も提供する(30日には、Remo の CEO Ho Yin Cheung 氏が登壇するセッションもある)。
  3. Slack を導入し、IVS 専用のワークスペースを設定。Slack の全面サポートのもと、各セッション毎に語り会える部屋を設定する(30日には、Slack Japan 事業開発ディレクター水嶋ディノ氏が登壇するセッションもある)。

スタートアップがピッチ登壇する「LAUNCHPAD」も IVS の見所の一つだが、評価の高かったチームだけが登壇を許されるため狭き門でもある。今回はオンライン開催であるため、より多くのスタートアップを応援するスキームを用意するという観点から、IVS に協力する VC 各社から推薦を受けたスタートアップも多数 IVS に無料招待しているとのこと。例えば、AI スタートアップ5社に、AI のビジネスでイグジットを果たした先輩経営者からメンタリングを受けられるような機会を計画しているそうだ。

オンラインならではの同時多発セッション開催

参加者宅に届けられた「IVS ケアパッケージ」。オンラインでもリアルの体験ができるよう、ネットワーキングの際に使えるビールやおつまみなどもセットされている。快適な体験を届けるため、登壇者にはリングライトも進呈されるらしい。
Image credit: Masaru Ikeda

リアルのカンファレンスであれば、会場のキャパシティの制約から同時に開催できるセッションの数は限られる。IVS がこれまでに開催してきたセッション数は、昨年の神戸で開催された Infinity Ventures Summit 2019 Summer での28セッションが最大だったが、オンラインでは物理的な制約が無くなるため、これを60セッションまで拡大する。登壇者も総勢250人以上に達した。参加者は会場の移動に伴う煩わしさが無いので、気になるセッションをハシゴすることもできるし、端末環境次第で複数セッションに同時参加することも可能だろう。

現在、日本では新型コロナ感染抑止の観点から外国人の入国は制限されているが、オンラインであればそういった制約も受けないため、海外からの参加者も普段より多く集まることが期待できる。リアルの場合、遠方すぎて参加を断念していた人、他のイベントとスケジュールが重なり参加を断念していた人にもハードルが下がることになる。

事実上おそらく初めてに近い、日本での大型カンファレンスのオンライン開催。何かと不便を強いられる「ニューノーマル(新常態)」を味方につけようとする島川氏らの挑戦は、スタートアップコミュニティにとって吉と出るか凶と出るか。今日から始まるスタートアップカンファレンスの新たなスタンダード体験を楽しみにしている。

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井口尊仁氏インタビュー:オーディオソーシャル参入から4年、さらに進化を遂げた「Dabel」はユーザ10万人達成を目指し爆走中

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井口尊仁氏が手掛けてきたプロダクトやサービスは、すでに終了したものも含めるとかなりの数になるため、それらを最初から遡ることはしないが、この4年間、彼は声を使ったサービス、オーディオソーシャルという領域にフォーカスしてきた。2016年の「baby(ベイビー)」を皮切りに、翌年にはそれの進化系「Ball(ボール)」が誕生。さらにピボットを重ね、アメリカで「Dabel(ダベル)」をローンチしたのは昨年1…

井口尊仁氏。井口氏自宅近くの京都・法然院にて。
Image credit: Masaru Ikeda

井口尊仁氏が手掛けてきたプロダクトやサービスは、すでに終了したものも含めるとかなりの数になるため、それらを最初から遡ることはしないが、この4年間、彼は声を使ったサービス、オーディオソーシャルという領域にフォーカスしてきた。2016年の「baby(ベイビー)」を皮切りに、翌年にはそれの進化系「Ball(ボール)」が誕生。さらにピボットを重ね、アメリカで「Dabel(ダベル)」をローンチしたのは昨年1月末のことだ(当初の名前は「ear.ly(イアーリー)」。

以前からサンフランシスコと京都の2つの都市を拠点に活動するデュアラーである井口氏だが、新型コロナウイルスの拡大以降は海外渡航の手段が閉ざされ、ほぼ京都に留まっての活動を余儀なくされている。ただ、それが Dabel にとって向かい風かと思いきや、むしろ成長は堅調の様子。ローンチから1年半を経て、現在、100日以内にユーザ数10万人達成キャンペーンの真っ最中だ。Dabel の何がそんなに人を惹きつけるのか。先週、大阪に帰省していた筆者は、井口氏を京都に訪ね話を聞いた。

新しい友人(ニューフレンド)を発見するツールとしてのオーディオソーシャル

「Dabel」
Image credit: Doki Doki

Dabel を形容するのに最適な言葉を見つけるのは難しい。言うまでもなく、そのアプリ名は日本語の「駄弁る」という言葉に由来するが、井口氏自身は「井戸端会議のためのアプリ」と紹介していて、筆者にとっては誰もが「DJ になって、AM ラジオのトーク番組ができるアプリ」といった印象を受ける。「Voicy」や「Radiotalk」や「stand.fm」に一見似ているが、番組ホストが承認すればリスナーがトークに参加し掛け合いができる。

アメリカで人気に火がつき始めたのは、昨年5月くらいから。視覚障害者用コミュニティサイト「AppleVis」が取り上げてくれたのがきっかけだ。そこで6月くらいからボイスオーバー機能(視覚障害者用のアシスト機能で、iOS アプリ内のメニューやボタン、画面上のテキストなどをタップすると読み上げてくれる機能)に力を入れたところ、彼らがニューフレンドを見つけるためのツールとして積極的に使ってくれるようになった。

日本では今年3月に入り、MIKKE の井上拓美氏が始めた「オ茶(お茶に誘う感覚で実際お茶しながら語り合うオンラインミートアップ)」や、アパレルメーカー「オールユアーズ」の木村昌史氏といった人たちが使い始めてくれて、そこから流行り始めた。日本人ユーザに特徴的なのは、多動的でとんがった人が多いこと。エネルギーがあって発散する場所を求めてきた人たちなので、コンテンツが面白い。タイムシフトでも聴けるが、リスナーの9割はライブで参加している。(井口氏)

そして、これこそがオーディオソーシャルの最大のメリットだろうが、Dabel は話すホスト側も、聴くリスナー側も AirPods を使うことが推奨されているが、そうすることで、ほぼ場所を選ばずに番組を配信・聴取することができる。YouTuber のように映像を撮るためにスマホを三脚にセットしたり、自撮り棒を構えたりする必要も無い。実際に筆者の友人は、Dabel を使って物理的に異なる場所から女友達3人で午後のティートークを繰り広げ、別の機会には寿司屋のカウンターから握りを食べながら番組を放送していた。

個人的な意見ではあるが、音質がよく臨場感に富んでいるのは Dabel の特徴の一つだと思う。前出の彼女が板前とやりとりしている音声は、あたかもリスナーである自分も寿司屋のカウンターに同席しているような錯覚さえ覚えた。さほど大きな声を出さなくていいので周囲に迷惑もかけにくいし、音声のディレイが最小化されていることから、ホストがリスナーの参加を許可した際の音声による掛け合いもストレスなく楽しむことができる。

新型コロナウイルスが明らかにした残酷な真実

筆者が最近好んで話すことの一つに、「新型コロナウイルスで失われたものは、セレンディピティかもしれない」というくだりがある。テックカンファレンスの多くがオンライン化されるなか、話したい相手を特定してコミュニケーションするのとは対照的に、たまたまパーティーで出会った誰かと親密な関係を築くことになるかもしれない「偶然の出会い」はオンラインでの再現が難しい。我々の現在の人間関係の多くは偶然の賜物であり、テックコミュニティの醸成にそうした不確実さが不可欠であることは、Paul Graham 氏も説いている。

しかし、ここで新たな気付きが得られる。Dabel はそんな現在の世の中に一筋の光明を与えてくれるかもしれない。

Dabel をやっていて、世界中でパンデミックが起きて、そうして明らかになった残酷な真実がある。

パンデミック以前、我々は知り合い、家族、友人、パートナーとよく雑談していた。でも、パンデミックで会えなくなった。そして、人々は Dabel を使ってニューフレンドを見つけるようになった。ここでわかったことは「結局、雑談の相手は誰でもよかった」ということ。(井口氏)

元来、コミュニティは人が自分が身を置く物理的環境に依存していることが多かった。インターネットやモバイルの出現により、この物理的制約はある程度取り除かれていたが、新型コロナの感染拡大により移動の自由が奪われたことが拍車をかけ、人々は自分が話したいと思う相手と話をし始めたのだ。その相手は会ったことがない人かもしれないし、地球の真裏に住んでいる人かもしれない。物理的環境や既存の人間関係に依存せず、共通の関心事を頼りに語りあう体験は、5月にβローンチした「Talkstand」にも似ている。

世界が追いついてきた「オーディオソーシャル」のトレンドと課題

今年2月、京都 MTRL で開催された「Ten Thousand Eight Hundred Forty One」ローンチイベントで話す井口氏
Image credit: Masahiro Noguchi

今年5月、シリコンバレーに本拠を置きオーディオソーシャルアプリを開発するスタートアップ Clubhouse は、創業から2ヶ月にして1億米ドルのバリュエーションをつけ、シリーズ A ラウンドで Andreesen Horowitz から1,000万米ドルを調達した。Clubhouse は今、シリコンバレーで最も勢いのあるスタートアップと言える。この出来事はオーディオソーシャルが一定の評価を市場から得た快挙と言え、おそらく遠くない将来、資金調達を実施する Doki Doki(Dabel を運営する井口氏のスタートアップ)にとっても追い風になるだろう(ちなみに、Doki Doki は2016年初め、Skyland Ventures、サイバーエージェント・ベンチャーズ、梅田スタートアップファンドから4,000万円、2017年2月、プレシードラウンドで京都大学イノベーションキャピタルから5,000万円を調達)。

もっとも、オーディオソーシャルは新しい分野だけに良いことづくめではない。先頃アメリカでは、ベンチャーキャピタリストらが Clubhouse 上で交わしたクローズドな議論で「シリコンバレーのジャーナリストらが力を持ち過ぎている」と批判した内容が外部流出し波紋を呼んでいる。部屋の隅っこでのヒソヒソ話が、テクノロジーを介したことで公衆の面前に晒されるリスクは常に付きまとう。くだんの応酬は女性差別や人種問題などにも及んでおり、先行きは不透明だ。井口氏もまた、Clubhouse での一件を〝他山の石〟と捉えている。

オーディオソーシャルは、intimate な(親密性の高い)メディア形態。エモーションとかパッションとかを載せやすい反面、俗人的な情報など共有するとセンシティブな内容を含みやすいことも事実。これは諸刃の刃で、Clubhouse の今回のケースは、悪い方のパターンが出てしまったケースだ。

Dabel では、ban console(規約違反を冒したユーザの排除管理)なども機能改善しているが、それでも今後、炎上案件は出てくる可能性はある。でも、一概に悪いことばかりではない。新しいメディアだから炎上するリスクは常にあるけれど、Dabel は安全安心なプラットフォームを目指して攻めに転じ、ここからスケールアウトしたい。(井口氏)

現在4万人いる Dabel ユーザのうち女性は約3割、また全体の67%をアメリカ人、10%を日本人が占めているなど、日本のスタートアップが作り上げたサービスとしてはダイバーシティに富んだデモグラフィックを誇る。アプリ上で会話に参加した人ののべ参加回数は55万回、また、アプリでの1回あたりの平均滞留時間も57分程度と Facebook のそれよりもはるかに長い。

ユーザエンゲージメント力の高さから注目を集めるオーディオソーシャル。井口氏は、この新しい分野をグローバルに席巻したいと意気込みに力を込めた。

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働き方に地域という概念をなくすーーGMOペパボに「出戻った」ある社員さんのお話

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Twitterを見ていたらある投稿に目が止まった。投稿主はGMOペパボ(以下、ペパボ)の代表取締役、佐藤健太郎さんだ。なにやら地元に戻った元社員の方の再雇用が決まったようなお話で、さらに言えば、今のコロナ禍でGMOインターネットグループはいち早く働き方の改革を進めている。 どういうことが起こっているのだろうか? 新しい採用基準になったことで卒業した仲間が再びジョインしてくれました。一緒に最高のサー…

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リモート前提の働き方になったGMOペパボのオフィス(写真提供:GMOペパボ)

Twitterを見ていたらある投稿に目が止まった。投稿主はGMOペパボ(以下、ペパボ)の代表取締役、佐藤健太郎さんだ。なにやら地元に戻った元社員の方の再雇用が決まったようなお話で、さらに言えば、今のコロナ禍でGMOインターネットグループはいち早く働き方の改革を進めている。

どういうことが起こっているのだろうか?

ということで、早速健太郎さんにチャットで経緯を聞いてみた。

ーーTwitter拝見しました。現在、GMOインターネットグループは全体としても働き方の変革を実施されようとしていますが、その一環で何かよいことが起こったのでしょうか?

健太郎さん:昨年、鹿児島にオフィス作ったのですがそこはエンジニアの採用しかしてなくて、それとは別の動きとしてペパボがリモート前提になり採用基準から地域を撤廃しました。今回再入社された方は、5年ほど前にご家族の都合で鹿児島に帰られて離職されたのですが、リモートワークで働けるということで再度応募してくれたというのが経緯です。

ーー地域という概念をなくす、いいですね。GMOインターネットグループとして新しい働き方の指針が出ていますが、ペパボとしての取り組み概要ってどのようなものなのですか

健太郎さん:GMOペパボでは6月1日より、パートナー(社員)が自身のライフスタイルに合わせてQOL(生活の質)を高めながら自律的かつ生産性高く働くことを目的として、自宅などでの勤務が可能なリモートワークを基本とした体制に変更しました。業務内容など、必要に応じて各拠点のオフィスに出社することも可能としています。

また、従来のオフィス(東京、福岡、鹿児島)は、業務を行う場としてだけでなく、社内イベント開催などによるパートナー同士のコミュニケーションや、他企業・地域とのコラボレーションなど、同じ空間で時間を共有することで生まれる体験価値をこれまで以上に提供できる「場」として活用していきたいと考えています。

ーーなるほど、じゃあ今回の件もそもそも鹿児島には支社はあるが、そこに再就職したいわゆる「I・Uターン」の話題とはやはり違っていたのですね。

健太郎さん:はい、リモートワークを原則としたことで、採用における居住地の条件がなくなりました。また、これまではご家庭の事情などで居住地が変わってしまうために退職を選択せざるを得なかったパートナーも、リモートワーク体制になったことによって勤務を継続することが可能となりました。

(今回のTwitterでやりとりしていた件は)先日、ご家族のご事情で実家に帰省するため、5年前に卒業(退職)したパートナーが再入社しました。これは、今回の体制変更により毎日の「通勤」が勤務条件から撤廃されたことで実現したことで、私たちも非常に嬉しく思っています。今後は、スキルや専門性はもちろん、GMOペパボの企業理念への共感や文化とのマッチングをより重視した基準で採用活動をしていきたいと考えています。

ーーすごくいい話。一方、リモートやオフィスのそれぞれの機能や働き方が急速に検討されることによって、一般的にリモートワークは成果主義的な傾向が強くなり、特定の職種に限定されがち、という指摘が出るようになりました。こういった課題にはどのように対応をされるのでしょうか?

健太郎さん:実は私たちは数年前からいずれ訪れるであろう「新しい働き方に備える」というテーマのもと、様々な人事施策を行ってきた経緯があります。その中の一つに評価制度の刷新があるんです。会社とパートナーが持続的に成長していくことを目的に育成方針を定め、評価制度全体を1月に改定しました。

具体的には、全職種共通の等級要件を新設し、これまでの目標達成評価から等級要件をベースにした評価に変更しました。自己評価時には「なぜこの点数にふさわしいのか」について言語化することを求めており、資料は全社公開としています。

評価資料に限らず、弊社では情報のオープン化や業務の非属人化を重視しており、リモートワーク体制ではよりその重要性を感じています。社内ツールを活用し、オンラインでもしっかりとコミュニケーションをとり、情報をオープンにすることで直接的にオフィスで同じ場所と時間を共有せずとも、協働していくことができると考えています。

ーーなるほど、与える影響(離職率の低下やQOLの向上等)はどのようなものでしたか

健太郎さん:6月に実施した社内アンケートでは、リモートワーク体制について満足しているとの回答が89%、また、QOLについては85%以上のパートナーが満足しているとの回答でした。中でも、通勤時間がなくなったことにより、家族との時間や自由に使える時間が増えたという声が多く見られました。

現状は概ね満足度の高い状況ではありますが、今後も、チーム内でのコミュニケーション量が十分か、わずかな変化にも気づける体制となっているかなどマネジメント側の見直しを行っていくほか、人事でも気軽に相談などを受け付ける窓口など、引き続き取り組んでいきます。

ーーありがとうございます。参考になりました。

いかがだっただろうか。

ペパボでの取り組みで特筆すべきはやはり地域や移動の縛りがなくなったこと、そしてそれに見合った評価制度をかねてから準備してきたことがこういった結果に繋がったのだろう。件の社員の方はご家庭の事情でやむなく地元に帰ったケースだったが、地域と通勤の問題がなくなることで復職することができた。

一連の働き方の変化に対する記事でも書いたが、大切なのは働く人々の人生と仕事のバランスだ。これまではやや仕事の側の理屈で移動や場所が制限されてきた。結果、プライベートと仕事の二者択一という苦しい選択を強いる場面が多く発生していたのではないだろうか。インターネットはこの問題を解決できたはずなのだが、社会構造までは変えることができなかった。

感染症拡大がその最後の一押しになったことは悲しいきっかけかもしれないが、それでもこうやって笑顔になって仕事と人生をバランスさせる例が出てきたことは、やはり素直によいことなのだと思う。

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3600社利用、オフィスとリモートを融合させるACALLが5億円調達ーーその手法を聞いた

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ニュースサマリ:ワークスペース管理サービスを提供するACALLは6月29日、第三者割当増資の実施を公表する。ラウンドはシリーズAで、引き受けたのはジャフコとDBJキャピタル。増資した資金は5億円で、これまでにジェネシア・ベンチャーズとみずほキャピタルが出資した2018年4月のラウンドでの調達額(1億円)と合わせ、累計で7億円を調達している。 同社の創業は2010年。オフィスへの来客対応を管理する「…

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Image Credit : ACALL

ュースサマリ:ワークスペース管理サービスを提供するACALLは6月29日、第三者割当増資の実施を公表する。ラウンドはシリーズAで、引き受けたのはジャフコとDBJキャピタル。増資した資金は5億円で、これまでにジェネシア・ベンチャーズとみずほキャピタルが出資した2018年4月のラウンドでの調達額(1億円)と合わせ、累計で7億円を調達している。

同社の創業は2010年。オフィスへの来客対応を管理する「ACALL」を2016年に公開し、2018年3末時点で630社が導入。その後に改良を続け、会議室や入退室のチェックインと連動した総合的なワークスペース・マネジメントサービスとして拡大し、現在、エンタープライズや不動産事業者など3600社が導入している。

また、同社では新たにリモートワークでのチェックインにも対応した「ACALL WORK(β版)」の提供開始も伝えている。在宅で働く人が業務開始と終了時にチェックイン・チェックアウトできるアプリで、業務に関する情報を集めた情報基盤「WorkstyleOS」と合わせることで在宅勤務を含めた従業員の業務管理ができる。また、感染症拡大の状況をふまえ、当面の間は同サービスについては無償提供とする。

話題のポイント:国内における企業のチェックイン(受付管理)クラウドサービスは「RECEPTIONIST」と「ACALL」がここ数年成長著しいものになっています。両社共に3000社を超える導入実績があり、サービス開始も2016年からと同時期です。

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ACALLが提供するワークスペース管理ソリューション

ACALL代表取締役の⻑沼⻫寿さんの話によると、グローバルでのこの領域はワークスペースのデータをカバーするソフトウェアとして、IWMS(Integrated Workplace Management System)という市場があるそうです。プレーヤーもIBM、Oracle、SAPなどの欧米のエンタープライズ巨人が中心で、2019年では2,400億円規模の市場が、2024年には5,000億円になると予測されているというお話(※)でした。※Markets and Markets社の調査レポートより

これらは「オフィス」が前提のサービスではあるのですが、ACALLでは早くからフルリモート・フルフレックスを推進するなど、働く場所についての概念を自ら実践して拡張してきた経緯があります。

感染症拡大に伴って需要が一気に顕在化してきた「在宅」の扱い方はどうすべきなのか、サービス提供者として、また、実践してきたチームとして⻑沼さんに課題や考え方などを伺いました(太字の質問は全て筆者、回答は長沼さん)。

感染症拡大対策として企業がリモートワーク推奨にするなどの施策を公表していますが、長沼さんが感じる課題は

オフィスワークとリモートワークそれぞれの有効性について客観的な視点で評価し、それぞれの企業、個人にとって最適なワークスタイルを合理的に見出しづらい状況にあることではないでしょうか。

Zoom等のおかげで、想定よりビデオ会議を円滑に運用できることがわかり、オフィスワーカーを中心にテクノロジーの価値を享受できています。企業によっては思い切ってオフィスを閉鎖し、完全フルリモートでフレキシブルな体制を構築しているところも出てきてますよね。

一方、個人の目線では「オフィスに行く意味が見いだせないが、会社から出社を要求されている」とか、「自宅に書斎がないので集中できない。以前のようにオフィス主体で仕事をしたい」、「近隣のシェアオフィスをオフィス代わりに利用したい」といったそれぞれの意見が出ています。また企業にも迷いがあって、オフィスを完全に閉鎖してもいいのか、オフィスはどの程度縮小するのが適切なのか、ソーシャルディスタンスのためにむしろオフィス増床が必要ではないのか、など頭を悩ませている状況を耳にしています。

確かにこういった議論するコストが高すぎる、という意見もあるようです

ワークスペースの多様化によって起こるこれらの不透明感は、場所に関連づけられたワークデータの蓄積が乏しいことが要因です。そのスペースではたらくことがワーカーにとっても企業にとっても最適なのかどうか客観的な評価が難しいのですね。

例えば場所に関連付けられた広範なデータを取得できれば「あの場所はこういう仕事をするときは向いている」といったチーム間でのシェアも可能となり、働くことをより積極的で楽しいものに体験価値として高めていくことも可能になります。

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ACALL代表取締役の⻑沼⻫寿さん(筆者撮影・2018年4月)

では企業は何から取り組むべきでしょうか

完全に新型コロナが終息するためには、ワクチンの普及期間を考慮すると18カ月程度のスパンを見ておく必要があると言われています。私たちはこの期間を社会全体にとって次の新しいワークスタイルに移行するための実証実験期間と捉えたいと考えていますが、実証実験のためには、その試みが有意であるかどうかを検証するためのデータが必要になります。

新しいワークスタイルを考える上で、まず検証すべきデータは生産性です。

生産性の定義は、「インプット量(人数×時間)に対するアウトプット成果」を指します。どこでも働ける場を実現するためには、その場がどのように貢献しているのか、場所×時間×成果の軸で測定していく必要があります。

これらの測定データをもとに、その時間はどの場所で働くことが最も合理的なのか判断することができれば、個人はより多様なワークスタイルを積極的にデザインするでしょうし、生産性という共通言語をもとに、企業としてもワーカーが自由にはたらく世界を後押しする立場として、ベクトルを合わせる動機になります。

確かにこの職種であれば在宅でも十分に生産性が上がる、ということが定量化されれば、経営者としては判断しやすいです。一方で変数が多すぎてどこから手を付けるべきか難しいポイントです。最近ではSlackのコミュニケーションを分析する人も増えていますがそれだけで全体像はわからないですよね

はい、既存のソフトウェアサービスを活用することで生産性の可視化に対応できればそれに越したことはありません。例えば、グループウェアならびに勤怠管理アプリケーションやビジネスコミュニケーションプラットフォームは新しいワークスタイルを支える情報基盤として確立されている重要なインフラです。ただ、これらは物理的なワークスペースを変数として保持することを目的に作られているわけではなく、リアルの空間とインターネット空間のデータがつながっていることが重要なポイントになると思います。

つまり、既存のオンラインインフラと物理的なオフィスを繋ぐことが必要

更に言えば、ワークスペース対象はオフィスに限らず、シェアオフィスやサテライトオフィスなどの中間オフィス、自宅などのプライベートスペースもあります。また、オフィスに焦点を当てると、執務室、会議室、空調、照明、デスク、チェア、コピー機などさまざまな要素がありますが、これらは基本的にデータ化されていません。こういった要素を横断的に共有していくことで、あたかも仮想的なオフィス空間が展開されているかのように考えることが必要なのです。

一方でこういった過度のデータ化、可視化は成果主義への偏りに繋がるという懸念もあります

私たちはこれらの取り組みを「ワークスペース体験価値を高めるための手段」として位置づけていて、監視や単なる管理目的で利用することに明確に反対の立場を取っています。ワーカー個人も企業も生産性を高めていくことを前提としながらも、ワーカーが自由にワークスタイルをデザインすることができる仕組みとして使うと生産性が高まり、企業にとっても大きなメリットをもたらすと信じています。

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ACALLは働き方の仕組みをOSに置き換えて考える

今回、リモートワークに対応するソリューションを公表しています。どこまでが実現できる範囲なのでしょうか

多様なワークスペースを横断的に共有する基盤として「WorkstyleOS」という概念を持っていて、ここで生産性のデータを分析し、効率的なワークスタイルをレコメンドすることを考えています。現時点のサービス対象は、場所と時間に限定したデータとなっていますが、今回リリースするリモートワークチェックインアプリによって、ワーカーの成果も蓄積し、2021年にはワーカーごとに最適なワークスタイルを提案する機能をリリースする予定です。

また、オフィスにあるものをIoT化し、WorkstyleOSでデータ化していくスマートオフィスの取り組みも引き続き進めていきます。これはオフィス内に限定しても、まだ生産性を高めるための伸びしろが十分にあるからです。この点については、オフィス最適化ソリューションを提供する多くの事業パートナー様とともに推進力を高めていく予定です。

ありがとうございました。

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マンガの自動翻訳が救う「経済損失」、海外市場に挑戦するMantraの可能性

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最近の自動翻訳への不満は一昔前と比べると格段に減ったように思います。私は海外記事の引用をすることが多いため自動翻訳を頻繁に使いますが、意味の理解にストレスを感じることはありません。テキストデータであればGoogle翻訳、DeepL。音声であればYoutubeの音声自動翻訳とネットを通した言語の壁はなくなりつつあります。 ただし、画像データは例外です。一般的な記事には多くありませんが、企業のリサーチ…

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『Mantra Engine』による高速なマンガ翻訳 ©︎朽鷹みつき

最近の自動翻訳への不満は一昔前と比べると格段に減ったように思います。私は海外記事の引用をすることが多いため自動翻訳を頻繁に使いますが、意味の理解にストレスを感じることはありません。テキストデータであればGoogle翻訳、DeepL。音声であればYoutubeの音声自動翻訳とネットを通した言語の壁はなくなりつつあります。

ただし、画像データは例外です。一般的な記事には多くありませんが、企業のリサーチをしていると構造化された図と文字がセットのJPEGがHPに張られているケースが少なくありません。英語であれば多少教養があるので読めますし、最悪Google翻訳に手で入力できるので問題はありませんが、中国語やスペイン語、フランス語で書かれていてはお手上げです。

紙であれば光学的文字認識(OCR)が広く活用されていますが、わざわざ印刷して読み取るのは手間であるのに加えて、リーズナブルに精度の良いOCRを利用することは難しいのが現状です。私が抱えるこの小さな課題は「画像データの自動翻訳」という視点で見えると、まさに大きな課題となっている業界が存在します。

それがマンガです。

日本文化の一つとして世界中に知られるようになったマンガ。私がホームステイした時も、所属していた研究室の留学生とも、最初のコミュニケーションはマンガ・アニメについてでした。文化的な橋渡しの役割を担うマンガが海外に出るときには当然のことながら翻訳されます。

紙に描く場合はもちろんですが、PCで描く場合でもエンコードせずにセリフ・効果音のレイヤーだけを別にして扱うのは不便であるため、自動翻訳するには画像データからテキストだけを読み取って翻訳することが求められます。しかし、これが難しい。

名刺や資料のようにある程度フォーマットが決まっていれば文字認識のルール作りは大変ではあるものの困難ではありません。フォント、場所、誰のセリフなのか、吹き出しの中の読む順番、マンガを正しく翻訳するために必要な情報は複雑です。

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右上:山中武氏、左上:CTO日並遼太氏、右下:関野遼平氏、左下:CEO石渡祥之佑氏
Image Credit:Mantra

そこで今回は、マンガ特化の自動翻訳を実現する「Mantra」創業者の石渡祥之佑氏に海外のマンガ市場と、マンガ特化の自動翻訳とは一体どんな技術なのかについてオンライン取材を実施しました(太字の質問はすべて筆者、回答は石渡氏)。

同社は6月8日にディープコア(DEEPCORE)、合同会社DMM.com(DMM VENTURES)、レジェンド・パートナーズ、およびエンジェル投資家らを引受先とする第三者割当増資により、合計約8,000万円の資金調達を実施しています。

マンガの海外市場について教えてください

アメリカの場合でいうと、漫画にお金を払っている人は日本の1/3程度です。人口が日本の約3倍いるので結構少ないですが、マンガファンが少ないわけではありません。海賊版で読んでいる人が多い状況です。

海外における日本マンガの売り上げは1380億円だと伺いました。かなり小さい印象です。

そうなんです。ただし海外の売り上げは伸び続けています。国内はシュリンクしてて、電子も合わせるとトントンといった感じなので、出ていかないといけない、という思いはあるにはある状況です。

海外ではマンガは紙と電子、どちらが売れているんですか

熱狂的なファンが紙で出ているものを買うケースが多いです。日本だと電子が増えきて半々くらいですが、海外での日本漫画の電子版の売り上げは少ないです。

日本の出版社が製本までのフローを開拓しているんですか、それともライセンスを運用する形ですか

今までは後者が多かったらしいです。日本の出版社の中に海外ランセンス部門があって、海外の出版社からの問い合わせに対して、契約を取り付ける。翻訳、印刷、出版は向こうの出版社がメインでやる形です。紙の場合、海外の出版社が版の開拓、在庫のコストなどリスクを負っている分、日本の出版社の取り分は8%だと言われています。

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Image Credit:Mantra

 

さらに取り分の8%から出版社と作家さんに分けるとなると、単価が安いマンガでは作家さんの海外に出るメリットが薄い状況と言えそうです

本当にそうだと思います。海外で出版された作家さん達にヒアリングしましたが、別に儲かったりしないと聞くことが多かったです。

この状況が変わりつつあると

全体的な流れとしては、電子版をきっかけに日本の出版社が主体となって出版するようになってきています。「MANGA+」が集英社が主体となって英語版を出しているのは良い例です。電子版だけしか出さないのならば販路の問題もなくなる。当然、ピンハネされていた部分がなくなるので、もし売れるんだったら作家さんも出版社も嬉しいですよね。最近その流れが始まりつつあると思っています。

それにMantraはどのように関わってくるのでしょうか

国内のプレイヤーが自分たちで出していきたいとなった時、今までやらなかった工数をやる必要が出てきます。例えば翻訳です。外注してクオリティーチェックするのは大変なので、それをサポートするのがMantraの技術です。

週刊連載を英語版を出そうと思うと、かなりの速度で作業をすることが求められます。翻訳会社とのデータのやり取り、スケジュール調整、修正箇所の訂正。Mantraは一週間以内にできるのを目指すワークツールも含んだプロダクトで、オペレーションが大変になるところをお手伝いしたいと考えています。

ここで気になることがあります。なぜ、Mantraは「一週間以内にできる」ことを明言するほど速度にこだわるのでしょうか?

これには海賊版サイトという大きな問題が絡んでいます。

2018年「漫画村」「Anitube」「Miomio」の3つの海賊版サイトが閉鎖されました。国の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策」で悪質サイトとして実名を挙げられ、サイトブロッキング政策の対象となった結果です。昨年「漫画村」の運営者が逮捕されたのも記憶に新しいと思います。

特に「漫画村」は大きなサイトで、2018年3月時点の月間ユニークユーザ662.1万人、出版物流通額ベースの被害額は約3,000億円と推計されていました。ほとんどが日本国内からのアクセスであったため、国主導のサイトブロッキングで被害の大部分を防げたのは喜ばしいことです。しかし言い変われば、日本国外の被害は全く防げていないということでもあります。

当然、日本のコンテンツを扱うオンライン海賊版は世界中に存在します。経産省の報告によると、特に被害の大きいアメリカでは1.3兆円、その内マネタイズ可能と期待できるのは40%の5,369億円になるとのこと。次いで中国、フランス、韓国と日本文化への関心に比例して被害額が大きくなるのは皮肉なものです。

ここで厄介のは、海外サーバと回線を伝って消費される海賊版サイトは日本の意向だけで動かせるものではないという点です。上記3サイトの閉鎖は、権利者からの申し立て、捜査当局の調査、国会および官僚関係者間での議論の末に法制化に向けて動き出し、NTTグループがこれに応じてアクセス遮断を実施したことで実現されました。

日本でサイト摘発を行う場合でもこれだけ大掛かりであることを踏まえると、各国で実施することの難しさは想像に容易いでしょう。日本の経済的機会損失を一意に解決できないところに海賊版問題の難しさがあります。

 

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Image Credit:Mantra

他方、海賊版サイト利用者の声には面白いヒントがあると石渡氏は言います。

海外のユーザに海賊版を使う理由をヒアリングしたところ、「自分が読みたいものが出版されない」「正規版の更新が遅い」が1、2番で、その次に「無料で読みたい 」という理由でした。他にも「進撃の巨人の最新話が自分の言語で読めるなら金は払うよ」と言われたことがあります。海賊版が強いのは事実ですが、海賊版がユーザの核心をついているのかと言われればそうではない。

特に重要なのが速度なんです。僕たちだって熱狂的に好きな作品なら100円で一日早く読めるなら出しますもんね。

Photonic System Solutionsが実施した調査によると、今の海賊版サイトは日本で出版される前よりも早く違法アップロードが確認されるとのことです。店舗に並ぶまでのどこかで流出している可能性が高いわけですが、更に電子版が普及すればそのリスクも減ります。正規版が最初に登場するのが保証されていて、かつ多言語ならば、正規版への誘導が叶って市場の正常化が達成される可能性は十分にあるでしょう。

ただし「漫画村」の事例を踏まえると、正規版の世界同時配給が海賊版を完全に撲滅することは難しいと言えます。オフェンスとディフェンスのように配給体制とサイトブロッキング体制の両輪が海賊版サイトによる被害を最小にするために必要になると石渡氏は語ってくれました。

さて、ここからは話少し変えて、マンガ特化の自動翻訳とは一体どんな技術なのかについて聞いていこうと思います。

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Image Credit:Mantra

マンガ特有の自動翻訳の難しさとは一体どこでしょうか

マンガは線で書かれた絵の上に、線で描かれた文字がランダムにあちこちに配置されています。読む順番もルール化できません。(同じ吹き出し内にも順番を把握して読まないといけないセリフがある)さらに、多種多様なフォントがあり、手書きで書かれているケースも多いです。マンガ専用の文字認識が必要なのはこれが理由です。

具体的にはどのようなものを作ったんですか

「文字認識」「機械翻訳」「自動写植」の3つです。読んで、翻訳して、書く。

読むことに関しては、マンガ特有のフォント変形に対応。翻訳に関しては、マンガの文脈を考慮しながら翻訳。自動写植に関しては、吹き出しにきれいに収まるようにフォントのサイズ、テキストに位置を認識しながら写植する技術です。

マンガの文字を正しく読む「文字認識」ではどこを作り込んだのでしょうか

文字認識エンジンが背景の上にある文字をたくさんみて学習すれば対応できるようになります。ただし、そのような学習データは存在しません。学習データには絵とテキストのペアが必要になるので、このペアを人工的に作りました。学習データを人工的に自動的に作る技術が肝になっています。

※上記内容は論文査読中。

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Image Credit:Mantra

「機械翻訳」では文脈を理解するのに自然言語処理を活用するんですか

画像処理と自然言語処理の両方を使用します。例えば自然言語処理でわかる文脈はテキストだけです。マンガの場合は、絵とテキストが両方混ざっています。このセリフを言っているのは誰なのか、吹き出しの順番はどうなっているのか、画像的な情報も考慮しながらじゃないと上手に翻訳できません。両方を組み合わせて初めて文脈を捉えることができます。

マンガでのセリフは言い回しが独特だったりします。そのようなものにも対応できるでしょうか

マンガの訓練データがないとマンガの翻訳が精度良くできません。マンガの英語版と日本語版を買ってきて、読み込ませると吹き出しを認識して自動で対訳テキストの集合を取り出してくる技術を作りました。これがマンガドメインの翻訳エンジンを作るためのベースとなっています。

※上記内容は国際特許出願中

日本語版と英語版を対応させること自体は複雑そうではなさそうですが、学習データ自体は参入障壁になりそうです

意外とだるいんですよね。2枚の画像を重ね合わせて取ってくるだけだと簡単なんですけど、変形されていたり、英語版だとページごと抜かれていることがあります。それをいい感じに抜き出してくる技術が翻訳エンジンを作る上では必要不可欠でした。

「自動写植」にも機械学習を活用しているのは意外でした

一般的な翻訳はテキストからテキストに変換する作業なので、普段フォントサイズは意識しません。しかしマンガでは絵から絵に変換することを求められます。フォントサイズ、どこに配置するのか、テキストボックスの縦横幅を考慮した写植する技術が必要です。そのため翻訳したテキストを組版するというのは機械学習を活用できるタスクの一つになります

AIの種を作るための技術作りから始まって、End-to-Endの翻訳エンジンを完成させたMantra。さらには人間によるクオリティーチェック体制を簡単に構築するためのウェブのインターフェイスも自社で持つため、「マンガの翻訳」というタスクが一箇所に収納される形を取れています。

もちろん、法人向けには一度導入したらなくてはならないツールになるでしょう。しかしこれからのマンガ市場を左右するのは今だ「素人」の人たちの爆発力なのではないかと感じます。SNSで話題となり単行本化、アニメ化。小説投稿サイトからデビューといった話は今では珍しくありません。

“ 世間 ”に自分の作品の良し悪しを問いかけることが自由になったのならば、” 世界 “に問いかけるのだって自由になった方が良い。Mantraの技術を見ていて一番に感じたのはSNSが登場したときに感じた感情に少し似ていました。

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Image Credit:Mantra

最後に、このことについて聞いてみると「新しいクリエーター支援という形で、いつかサポートしたい」と力強く語ってくれました。

本当にやりたいのは、マンガの流通から言語の壁を取り払うことです。我々が読めないだけで、韓国の面白い作品だってたくさんあるでしょう。

法人を通して出てくる作品だけではなく、Webマンガでも面白い作品はたくさんあります。いつか個人向け作品のサポートをやりたい気持ちは強いです。

石渡さん、お話聞かせていただきありがとうございました。

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人員整理にブリッジファイナンスーー緊急事態宣言、その時支援先はどう動いた【Podcast:YJC・堀新一郎さん】

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スタートアップメディア「BRIDGE」のPodcast、共同シニアエディターの平野です。私が担当する記念すべき第一回目のゲストとして、YJキャピタル代表取締役社長の堀新一郎さんにお越しいただきました。 新しいスタートアップ本を出版されるなど精力的に活動されていますが、今回は堀さんに気になる新型コロナウィルスの影響について、支援先との連携のお話をお伺いしました。本稿では配信する音声コンテンツで特に印…

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スタートアップメディア「BRIDGE」のPodcast、共同シニアエディターの平野です。私が担当する記念すべき第一回目のゲストとして、YJキャピタル代表取締役社長の堀新一郎さんにお越しいただきました。

新しいスタートアップ本を出版されるなど精力的に活動されていますが、今回は堀さんに気になる新型コロナウィルスの影響について、支援先との連携のお話をお伺いしました。本稿では配信する音声コンテンツで特に印象に残った言葉をまとめてみました。

緊急事態宣言、その時支援先はどう動いた

アクションがめちゃくちゃ早かった人と、なんか緊急事態宣言が出て2週間ぐらいの4月末から動き始めた人とではやっぱり明らかに違ってましたよね。オフィスの解約でもね、やっぱりパッと動いた人となんかまあちょっと来週ぐらいに不動産会社とやってみます、みたいな人では本当に分かれました。

厳しい経営判断

何十人もいる会社さんですけど、絶対に残って欲しい人、できれば残って欲しい人、またその次があって…ある(一定水準を下回る)ランクの人には休職してもらって、この状況が何月何日まで続いたら、という人事のリストラプランを本当に4月の上旬とかに持ってきた人がいましたね。基本的に支援先の企業の考えることは応援する立場で反対などはしなかったです。ぶっちゃけ、ここ数年は資金調達の額が二桁億円がものすごく増えたじゃないですか。

これで何が起きたかというと、採用に効くからということでかっこいいオフィス作ったりしたわけです。これに冷や水じゃないけど、よく考えたら別にこれって必要なんだったっけ?という。もちろんこの状況で苦しんでいる方もいらっしゃいますけど、ベンチャー企業の経営という観点で言えば、冷静に見返してみると(今回の件で)組織の見直しが健全に行われるようになったんじゃないかなと。

4月は「ブリッジファイナンス」で過去最多の投資件数に

4月はとにかく支援先の資金ショートがもう目の前に見えている会社に対するブリッジファイナンスばっかりやってましたね。次の資金調達がいつ正確に実施されるかわからないような状況だったので、本来であればコンパーチブルノート(※株式への転換が可能な社債方式)を発行して次のラウンドの15%や20%のディスカウントという形式なんですが、それすら読めないので、もう前回ラウンドのフラットバリュエーション、場合によってはダウンラウンドで投資を実施してました。

その他、堀さんとのエピソードはPodcast本編でぜひお聞きください。なお、現在堀さんは今月末に発売予定の書籍「STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか」(著: 堀新一郎、琴坂将広、井上大智)に関するオンライントークイベントを開催予定です。書籍に登場する起業家や個人投資家のみなさんと対談される予定ですので、ご興味ある方はこちらをチェックしてみてください。

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技術至上主義の覇権争いが続く中、米中がAI分野で先手を狙う本当の理由〜英スローニュース団体主催「Tortoise Global AI Summit」から

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米中間で緊張と技術的な対立が激化する中、AI がその中心的な役割を果たしている。BBC の前ニュースディレクターらが立ち上げたスローニュース(調査報道)系ジャーナリズムネットワーク「Tortoise」は15日、「Tortoise Global AI Summit」をオンライン開催した。世界の超大国アメリカと中国の関係がますます険悪になっていることについて、トランプ大統領が貿易戦争を開始する前から、…

Image credit: Wallpaper Flare

米中間で緊張と技術的な対立が激化する中、AI がその中心的な役割を果たしている。BBC の前ニュースディレクターらが立ち上げたスローニュース(調査報道)系ジャーナリズムネットワーク「Tortoise」は15日、「Tortoise Global AI Summit」をオンライン開催した。世界の超大国アメリカと中国の関係がますます険悪になっていることについて、トランプ大統領が貿易戦争を開始する前から、両国の競合関係に苦言を呈してきたパネリストらが議論した。

二国間の競争は幅広い技術に及んでいるが、多くの人が今後数十年の間に AI が果たすであろう本質的な役割のおかげで、AI がますます注目されるようになってきていることについて、パネリストの3人は同意している。そして、AI の覇権争いが中国とアメリカだけでなく、他のすべての国がこの技術競争の中で自らの立ち位置を見直さざるを得なくなっている。

世界の二大国の関係が悪化している中で、技術競争を目の当たりにしている。この2つの国はほぼ同規模の経済規模を持ち、世界を支配するための影響力を誇示するための手段として、その経済基盤を利用している。技術競争が広範になる中で、AI は中心的な位置付けを占めている。(イギリスの諜報機関 MI6 の元トップ John Sawers 氏)

Sawers 氏と共にパネルディスカッションに参加したのは、イギリスの新興半導体メーカー Graphcore CEO の Nigel Toon 氏と、イギリス政府 AI 庁(Office for AI)長官の Sana Khareghani 氏。

中国とアメリカに関しては、彼らは非常に長い間、対立の中心に AI を置いてきたと思う。それはリーダーになるための経済競争であり、テクノロジーはそこに投げ込まれたようなものだった。(Khareghani 氏)

パネリストらは、アメリカでの AI の取り組みは企業が主導しているのに対し、中国では政府の政策によってイノベーションが推進されているという従来の常識について議論したが、Toon 氏はその見解に反論した。彼は中国政府がアメリカよりも大きな役割を果たしていることを認めながらも、中国での AI 開発の多くは Alibaba(阿里巴巴)や Huawei(華為)のようなテック大手が主導していて、彼らは Google や Facebook と同じモチベーションを持っている、と述べた。

そういった大手は、外から見れば無敵に見えるかもしれない、と同氏は言う。しかし、彼らは優れた AI プロダクトを作り出す競合への恐れに駆られている。

イギリスの新興半導体メーカー Graphcore CEO の Nigel Toon 氏

テック大手の立場から見てみれば、AI は彼ら自身の存亡に関わるテクノロジーだ。もし他の誰かが Google よりも早く最先端の AI を開発したら………Google はそれを心配している。だからこそ、彼らはこの分野に大金を投資している。Facebook が AI に大金を投資しているのもそのためだ。Google が DeepMind を買収した理由もまさにそれ。こうしたテック大手にとって、AI は自らの存亡に関わるものでしかない。Alibaba にとっても、Tencent(騰訊)にとっても。(Toon 氏)

中国が大きく違うのは、政府がテック企業とより緊密で協力的な関係を築いていることだと Toon 氏は付け加えた。さらに、中国のプライバシーやデータに関する政策や文化は、中国に優位性を与えている。

(中国では)データの収集や利用に何の制約も無い。欧米では、自由な社会の一部として個人のプライバシーに誇りを持っている……中国は大都市の内部に監視システムを設置しているが、これは非常に強力で、(秘密警察の支配を背景とした恐怖政治を行った)スターリンが死んでもおかしくないような制御メカニズムだ。これは中国政府にとって、この分野でアドンバンテージをもたらす。なぜなら、AI と機械学習はデータの大量収集に非常に大きく依存し、そのデータを咀嚼・操作することができるからだ。(Sawer 氏)

この二者択一の図式は、必然的にヨーロッパがその図式の中の、どこにどのように収まるのかという問題につながった。欧州連合(EU)は近年、AI の開発を政治的にも、経済的にも優先させている。この地域は研究やスタートアップに多額の投資を行っているが、米中よりも倫理的なアプローチで AI に取り組むことで、独自のアイデンティティを確立しようとしている。

Khareghani 氏は、大きなリードを持つ米中のベンチャーキャピタルが示す数字は、ヨーロッパの強さを過小評価する傾向があると述べた。

AI にどれだけの投資をしているかという点では、米中が特定の方法でリードしていることを考慮する価値があると思う。しかし、集中、貢献、思考のリーダーシップという点では、カナダ、ドイツ、フランスなどの国と並んで、イギリスが上位に位置している。つまり、判断材料には、資金をどれだけ調達しているかだけでなく、それ以上のものを考慮すべきだと思う。(Khareghani 氏)

イギリス政府 AI 庁(Office for AI)長官の Sana Khareghani 氏

しかし、ヨーロッパにはいくつかの深刻な限界がある。例えば、ヨーロッパはディープテック関連の多くの分野で目覚ましい進歩を遂げているが、高度なコンピューティングの開発に必要な基本コンポーネントの多くを他国に大きく依存していると Toon 氏は指摘している。

コアとなる基礎技術の一部については、供給量が非常に限られている。半導体を例に挙げてみよう。半導体の最先端で製造できる企業は地球上に3社しかない。我々は台湾に拠点を置く TSMC(台積電)と協力している。ヨーロッパの我々がこういった最先端の半導体技術を開発できるとは信じがたい、あるいは不可能だと思う。(Toon 氏)

では、ヨーロッパはどのように対応すべきなのだろうか。Toon 氏は、データや AI の利用に関する規制強化は、国民の信頼と信頼を促進することを目的としているものの、地域企業の活動を阻害することで裏目に出てしまうのではないかと懸念している。

こういった最先端技術へのアクセスができないために、ヨーロッパが競争に参加できなくなるような政策を実施しないよう注意する必要がある。(Toon 氏)

これまでヨーロッパは、米中と協力してその地位を利用しようとしてきた。しかし、最近の出来事はそれを難しくしている。米中が貿易障壁を作り、技術の独立性を主張するようになれば、ヨーロッパは両者との関係を見直さなければならなくなるだろう。

イギリスの諜報機関 MI6 の元トップ John Sawers 氏

長い間、ヨーロッパは、どうにかして両方の世界のベストを手に入れることができると感じていたと思う。そうすれば、アメリカとの政治的・防衛的な同盟関係を維持しつつ、中国を対等な経済パートナーとして扱うことができる。多くのヨーロッパ人にとっては、新型コロナウイルスをきっかけに、現在の中国政権の本質について目から鱗が落ちたと思う……中国ははるかに自己主張が強くなった。我々は、中国が香港で、そして、南シナ海で、何をしているかを見ている。サイバーセキュリティの分野で何をしているかを見ている。中国がどれだけ抑圧的であるかを見ている。(Sawers 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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50のプロダクトを開発、たどり着いたのは「常時接続のRemotehour」ーーシリコンバレーのアクセラレータで1位を獲るまでの軌跡

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withコロナ時代になり、「オフィスワーク」に代わる考えとして「常時接続」という言葉が頻繁に使われるようになった。在宅ワークであっても会社のオフィスにいるかのように社員同士が話ができるオンライン環境を作るのが常時接続サービスの特徴。オンラインマークが表示されているユーザーに、その場で動画や音声を通じて話しかけられるのが一般的な仕様となっている。 ここ数カ月で急速に注目されるようになった常時接続サー…

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Remotehour創業者の山田俊輔氏

withコロナ時代になり、「オフィスワーク」に代わる考えとして「常時接続」という言葉が頻繁に使われるようになった。在宅ワークであっても会社のオフィスにいるかのように社員同士が話ができるオンライン環境を作るのが常時接続サービスの特徴。オンラインマークが表示されているユーザーに、その場で動画や音声を通じて話しかけられるのが一般的な仕様となっている。

ここ数カ月で急速に注目されるようになった常時接続サービス領域で頭角を現しつつあるのが、サンフランシスコ拠点の「Remotehour」である。今回は創業者の山田俊輔氏に自社サービスについてと、米国オンライン・ワークツール事情についてオンライン取材を実施した。

Remotehourは日本人起業家の山田俊輔氏によって2020年3月に創業されたスタートアップ。ホストユーザーは自分のルームを持つことができ、訪問ユーザーは発行されたURLをクリックするだけで、そのユーザーにライブ動画を通じて話しかけることができるサービスとなっている。

ホストが離席中や他の電話を受けている間などは、部屋のステータスを自由に変更可能。主な用途はコワーキング(常時接続)。Zoomと異なり、事前に話し相手とのスケジューリングをする必要がなく、相手が話したい時に、すぐ話しかけられるのが特徴となっており、リモートチームのスピーディなコミュニケーションを可能にする。

アクティブユーザーのリテンション率は80%程度を維持。主にフリーランスや大学教授のような複数のクライアントを抱えているユーザーが好んで利用していて、「Remotehourがなくなると困るか」という質問に対しては約30%が「とても困る」と回答しているそうだ。

開発は1月から始まり、3月にはリモートスタートアップ特化のオンライン・アクセラレータ「Pioneer」に採択されている。同アクセラレータはYCombinatorの元パートナー、Daniel Gross氏によって設立され、マーク・アンドリーセン氏やStripeから支援を受け、シリコンバレー以外では触れる機会がなかった資金調達の流れや人材ネットワークへのアクセスを提供するプログラムとなっている。ちなみにGross氏は、GitHub、Figma、Uber、Gusto、Notion、Opendoor、Cruise Automation、Coinbaseなどのエンジェル投資のポートフォリオを持っている。

Pionnerは参加スタートアップに1%のエクイティ提供を求める。対価として、現金は支給されないが、創業者の法人設立、専門家ネットワークを介したメンタリング支援を行う。RemotehourもPionner負担で登記プロセスを完了している。

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さて、Remotehourが参入するオンラインワークツール領域は競争が熾烈だ。なかでもAndreessen Horowitzが出資する750万ドル調達済みの「Tandem」や、日本でも認知されつつあるバーチャルワークステーション「Remo」など、名前を上げればきりがない。どの点を競合差別要素として置いているのだろうか。

Tandemのようにチームで利用されてる方もいるのですが、ここは私たちの得意としている領域ではありません。主なユースケースは、大学教授がその学生たちに向けてオフィスアワーを展開、フリーランスがそのクライアントたちに向けて常駐環境を提供するような場です。一人に対して子要素が複数あるようなケースを想定しています。

動画系オンラインワークツールは大きく2つに分けられる。ZoomやSkypeのように事前に予定を組んで決まった時間に電話をする「スケジュール型」と、TandemやRemotehourのようにいつでも気軽にコミュニケーションを取れる「常時接続型」だ。

Remotehourはそのサービス価値からいえば一見Tandemとは競合するが、ユースケースはチームではなく個人だ。個人間でやり取りする常時接続型サービスとして価値訴求している。スケジュール型にはない常時性と、Tandemが取りこぼしているプライベート通話の領域での成長を目指す。

また、カレンダーサービスの「Calendly」や「Meetingbird」を使っていたユーザー習慣を、オープンドア・ポリシーによって代替しようとしているのがRemotehourだという。これは個人間でスケジュールを決め、ZoomやSkypeで話すユーザーフローにも同じことが言えるはずだ。こうした従来のUXを最発明し、ショートカットするのが強みとなっているのだろう。

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それでは米国における常時接続事情は実際はどのようなものであるのか。次のようなユースケースを答えてくれた。

全米でもリモートワークが余儀なくされている状況です。現在、私はシェアハウスに住んでいるのですが、メンバーのうち一人はGAPに毎日出社していたのがフルリモートとなり、もう一人はパン屋で働いてたのですが失業してしまい国へ帰っていきました。身近なところで、リモートできる職種とそうでない職種が大きく分かれ、それが死活問題となっています。

GAPに働く知人は、ほぼ日中テレビ通話が繋ぎっぱなしになっており、元々リモートではなかった会社の方が常時接続が導入されやすいのかなとも感じました。おそらく、社内でのリモートワークに関するルールが定まっていないのと、全員同じエリアに住んでいて時差も関係ないため、常時接続の方がかえって楽なのかなと思います。

サービスユースケースが創業者の近くにあるのは成長するスタートアップの鉄則だ。この点、世界的な在宅ワーク事情はRemotehourの追い風になっていることが体験談から伺える。

回答ではGAPの事例が挙げられているが、前述した通り、チームでの利用はRemotehourのコアユースケースではない。そこで注目しているのが教育市場だという。大学教授が自身のオフィスアワーで利用しており、かつ同じ大学の先生にサービスを紹介するリファーラルによる成長が発生しているとのことだ。こうして同じ大学のメールアドレスを持ったユーザーが増えており、教育機関を丸ごと囲い込むシチュエーションが起きている。

学生ユーザー層はSnapchatの影響もあり、動画でのコミュニケーションに慣れているらしい。チャットの代わりに5〜10秒程度録画して友人に送って若い世代同士でコミュニケーションを取るのが米国では一般的。最近では「Houseparty」の影響もあり、動画を付けっ放しにする習慣も根付き始めている。こうした世代にとってはRemotehourの使い方は自然に受け入れられる可能性が高い。

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写真は山田氏が渡米約1年後に運営していたYouTubeチャンネル

筆者が山田氏と会ったのは2015年のサンフランシスコだったと記憶している。同じシェアハウスに同居していて、彼が初渡米したタイミングであり、3か月間の旅行で訪れていた。当時は開発の技術も全くなかったが、会わない間の5年で50のプロダクトを開発していると聞いた。元々ソフトバンクの営業をしており、プログラミングの知識0から始め、現在のRemotehourにたどり着いた挑戦心はものすごいものだ。

Remotehourは欧米の市場トレンドに乗っているが、山田氏自身の働き方もトレンドを体現している。

法人を立てずに個人事業主として新しいアイデアを小さなプロダクトに落とし込んでいく動きは、「Maker Movement」として米国で認知されている。いくつものプロダクトを作り、企業に気に入ってもらったものは小さく売却して次のプロダクト開発へ動く、フリーランスエンジニアが台頭したならではの働き方だ。同氏はこうした中で開発力と失敗・ローンチを繰り返しながらも先に進む忍耐力を培っている。

プロダクトを出したり閉じたりしているうちに、プロダクトは上手くいかないのが前提であり、何度でもローンチすればよいと開き直れました。ローンチ量が多いと、どれくらいのクオリティまで作り上げれば人が評価してくれるのかも何となく分かるようになりました。

Remotehourにプロダクトを絞ってからは、これと同じことを機能リリースで行なっています。ユーザーと話していて思いついたアイデアは、次週にはリリースしてみる。ダメなら機能を閉じる。すでに、閉じた機能もたくさんあります。中には、あんまり更新が多いとユーザーが去ってしまうという意見もありますが、私はユーザーに対してあまり怯えません。

機能が出来たなら週に何度でも更新メールを送るし、ダメだと思ったら勝手に閉じます。それくらいで去ってしまうユーザーであれば、おそらく使い続けてもらうのは難しいと分かったからです。本当に付いてきてくれるユーザーは、ある程度の失敗は配慮してくれるし、逆にリクエストも沢山してくれます。

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山田氏の開発力はPionner採択にも活きている。

Pioneerは他のアクセラレーターと異なる審査基準を設けている。YCombinatorのような一般的なアクセラレーターが面接採用であるならば、Pioneerはインターン採用である。その時の受け答えではなく、週次での進捗や成長率によって評価される。そのため、山田氏は2月にPioneerに登録して、実際に選ばれたのは3月後半。1か月以上審査に時間を費やしている。

英語が不得意な日本人で、チームも一人であったため、そこまでパッ見の印象は良くなかったという。だが、毎週機能を幾つも追加したり、とにかく改善しようという気持ちと実際に行動へ移してきたことは他の応募者に負けていなかったとのことだ。こうして最終的にはPioneerが開催した起業家トーナメントに参加し、全参加者の中で首位を獲得している。

元YCombinatorパートナーであり、GitHub、Figma、Uber、Gusto、Notionへの投資実績を持つGross氏のお墨付きをもらった唯一のスタートアップとして認知された。渡米から5年、多くの難題を超えてきてようやく形になったRemotehour。最後に今後の戦略について聞いた。

Remotehourはプロダクト単体で勝負していくつもりです。今後、有料プランも用意していくつもりなのですが、マーケティングや営業には最低限のリソースしか割くつもりはなく、開発とUXの向上に全身全霊をかけていきます。通話アプリなので、一人のユーザーが使い出せば、それに応じて、何名かにも知ってもらうことにはなります。したがって、良いプロダクトさえ作り続けていれば、それだけ伸びると信じています。

年内には公開APIを発行し、多くの業態にアレンジして利用いただけるような準備を進めていければと思っています。ターゲットセグメントはチーム利用以外でのフリーランス、士業、教育、医療のような場面を想定しており、いわゆるリモートワークと聞いて、まだ疎い業態の方に利用していただけるような分かりやすさを盛り込んでいければと考えています。

シリコンバレーで活躍する日本人起業家に新たに加わったRemotehour/山田 俊輔氏にこれから注目だ。

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AI自身をサイバー攻撃から守れーーAIセキュリティ「ChillStack」にDEEPCOREが出資

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ニュースサマリ:AIでセキュリティを進化させる「ChillStack」は3月31日、第三者割当増資の実施を公表した。引受先となったのはAI特化インキュベータのDEEPCORE。シードラウンドで、調達した資金は3,000万円。本調達資金を使ってシステムの開発・改良、ビジネスサイドやバックオフィスを担える人材の採用を進める。 ChillStackの創業は2018年11月。現在はAIを用いた不正ユーザー…

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写真左から:取締役の茶山祐亮氏、代表取締役の伊東道明氏、取締役の新井颯人氏、谷洋樹氏

ニュースサマリ:AIでセキュリティを進化させる「ChillStack」は3月31日、第三者割当増資の実施を公表した。引受先となったのはAI特化インキュベータのDEEPCORE。シードラウンドで、調達した資金は3,000万円。本調達資金を使ってシステムの開発・改良、ビジネスサイドやバックオフィスを担える人材の採用を進める。

ChillStackの創業は2018年11月。現在はAIを用いた不正ユーザー検知システム「Stena」の開発・提供をしている。

また、これにあわせて「AIを守る」ための事業を開始することを発表。近年、AIは多くの製品やサービスに急速に普及しているが、AI自身もサイバー攻撃の標的となる危険性が指摘されている。この課題を解決するAI×セキュリティを理解できる人材の育成をハンズオン・トレーニング事業となる予定だ。3月19日プレスリリースした三井物産セキュアディレクションとの共同研究の成果が活かされる形だ。

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話題のポイント:AIの技術は幸か不幸か隠されたものではありません。「薬人を殺さず薬師人を殺す」の通り、AIも使い手次第で薬にも毒にもなり得ます。

昨今、未知のサイバー攻撃は世界規模で激増しています。高度化や標的型化が進む中で、全く前例のない手法も出てきており、ここに今後AIが絡んでくることは想像に容易い状況です。既存攻撃の対策が基本であるセキュリティが変化しなければ、後手に回り甚大な被害を受けるケースが多発するでしょう。

そんな問題に取り組むのがChillStackです。同社の共同創業者4人は今年の3月に大学院を卒業、代表取締役の伊東道明氏が研究してきた内容を元に「AI×セキュリティ」の事業を展開しています。本誌では伊東氏に今回のプレスにあたりインタビューを実施しました。(太字の質問はすべて筆者、回答は伊東道明氏)

研究からの発展で創業されていますが、元々はどのような研究をされていたんですか

Webアプリの通信をAIを使って監視して、攻撃されているかどうか、何が攻撃されているかを自動で見つける研究をしていました。この内容でIEEE CSPA 2018のBest paper Awardを頂いています。

それは凄い!

論文を見た複数の会社から作ってくれないかという提案があって、そのことに驚きました。これを製品化して世の中に還元した方が良いのではないかと考えたのが起業のきっかけです。

いつ頃からセキュリティに興味を持ったのですか

セキュリティを始めたきっかけは、大学2年生の時に先輩から「セキュリティ・キャンプ」に誘われて4泊5日の合宿に参加したことです。そこでどっぷりハマりました。
※セキュリティ・キャンプ:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の事業の一つ

研究室に所属する前からセキュリティに取り組んでいたんですね。ただ、研究室はAIを中心とした研究をしているところですよね

実は思惑がありました。セキュリティをやっていると、通信やマルウェアの大量のデータを見る機会があります。そもそも大量にあるデータから悪いものを見つけるのがセキュリティなんです。

その作業を繰り返すうちに統計とか機械学習の技術って使えそうだなとぼんやり頭に浮かべていました。しかし当時はAIが氷河期を乗り越えるぐらいの時期で、書籍などの情報が多くはありませんでした。そこで、AIの研究室の先生に相談してみたところ「行けるかもね」と良いディスカッションできたのが決め手となりました。

共同創業者は同じ研究室で別な研究をされていた方々ですよね

論文を発表した後にハッカソンに参加したんですけど、その時のメンバーです。ハッカソンでは顔認証決済の自動販売機を作って最優秀賞をいただけたことに加えて、お互いの長所を出し合って開発サイクルをガンガン回せたのでこのメンバーでやりたいと考えたんです。

ハッカソンに一緒に参加したのは大きな経験ですよね。信頼できるという意味で。

研究室では一緒に何かをやるということがあまりありません。お互いのスキルやモチベーションって意外と分からないものです。ハッカソンで初めて相手の出来ることを把握しました。

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話を少し変えます。研究を製品にする上で壁があったと思いますが、どうでしたか

研究と製品は目的が違うんですよね。研究は精度とか先行研究の改善に焦点をあてて突き進みます。一方、製品は顧客の課題解決が一番です。

例えば、研究用のデータセットに対して異常検知をして検知率99%できました!となれば研究では評価されますが、10,000件データがあれば100件見落とすわけです。顧客目線から見ると実運用で攻撃を100件も見落とすってダメじゃない?となるわけです。

100件を見落とした理由や如何にフォローするか、研究では言及されないニーズを満たすための開発と手法の見直しに苦労しました。

AIの可読性など現状解決が困難なものも含まれているようですが

最初は無理じゃない?と思いました。AIってそういうものだし。

ただ、古典的な統計の手法は人間の目で見て分かるものに近いと分かり、そういう直感的にわかる手法を最新の技術と顧客ニーズの間に埋めることで解決しています。

「AIで守る」という文脈で不正ユーザー検知システム「Stena」を提供していますが、最初にゲームをターゲットにしたのはなぜですか

守るという作業に人材をかけづらいところだったからです。エンターテイメントは金融などと比べると必需品ではありません。本腰を入れている会社は非常に少ないです。

たしかにゲームの質を維持するのには欠かせない要素ですが、着手できないのは予算の問題も大きそうです

予算が理由で契約に結びつかないケースもかなり発生しています。被害出てるけど、売れてるんだからセキュリティにコスト割かなくてもいいよねという考え方ですね。値段設定のバランスは非常に難しいですね。

ただニーズがあることは間違いありません。中小規模の会社さんは守りたいけど、予算を割けなかったりするのでそこには寄り添っていきたいなと思っています。

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「stena」ユーザの行動解析専門の高精度AIがゲームやアプリのチートやBOTなど利用ログから自動検知する

さらに先日、三井物産セキュアディレクションと共同で「AIを守る」という2つ目の事業を発表しました

AIを作れない人が、AIを守れるわけがないというのがあります。最終的には「AIを守るAIを作れば良いじゃない」というのがあります。つまり「AIで守る」「AIを守る」この2つの事業の向かうところは一緒だと捉えています。

今後どのような会社にしていきたいですか

AIを安心して提供できる社会の基盤を作るのが仕事だと思っています。そこに向けてやれることは全部やっていきます。年商や従業員の指標は特にはないですね。研究や実務でも、セキュリティで崩れかけている社会を目の当たりにしているので、立て直したいと想いが一番強いです。

では最後に、伊東さん個人として、今後の目指す方向性や、どうありたいかについてお話を聞かせてください

起業も研究も、面白いことがしたいというのが原動力です。私は他の人のためになるものが面白いと感じます。誰かが何かをやるときに、私が支え、躓かないようにしてあげたい。すごい選手になるより、100人すごい選手を育てられるように今後もチャレンジしていきたいです。

ありがとうございました。

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「スポーツ選手が持続可能な生き方を選べる社会に」ーーU25「起業・新基準」/スポーツテック企業「TENTIAL」代表、中西さん

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20代起業家を対象に、彼らが考える新しいスタートアップのあり方を聞き出すインタビューシリーズ、前回登場の「b-monster」代表取締役社長の塚田眞琴さんに続いては、インソールD2Cが好評のTENTIAL代表取締役、中西裕太郎さんに登場いただきます。 今回もUpstart Ventures、上杉修平さんにインタビュワーとして参加してもらい、お話をうかがってきました(太字の質問は全て上杉氏。執筆・編…

TENTIAL代表取締役の中西裕太郎さん

20代起業家を対象に、彼らが考える新しいスタートアップのあり方を聞き出すインタビューシリーズ、前回登場の「b-monster」代表取締役社長の塚田眞琴さんに続いては、インソールD2Cが好評のTENTIAL代表取締役、中西裕太郎さんに登場いただきます。

今回もUpstart Ventures、上杉修平さんにインタビュワーとして参加してもらい、お話をうかがってきました(太字の質問は全て上杉氏。執筆・編集:平野武士)。

中西裕太郎さん:1994年生まれ。高校時代はサッカーでインターハイに出場。心疾患のためにプロを断念し、プログラミング学習サービス「WEBCAMP」を手掛けるインフラトップの創業メンバーとして参加。その後、リクルートキャリアを経て2018年2月にTENTIAL(旧社名:Aspole)を創業。代表取締役に就任。

シューズインソールの生産・直販(D2C)モデルはなかなかニッチなテーマですが、どのような経緯でここから手掛けることになったんですか

中西:最初はアスリートの人材サービスをやろうとしていたんです。けど、リクルート在籍時にこのあたりの事業の解像度が高くなり、これはマーケットもないし結構難しいぞと。かといって、スポーツはずらしたくないと思っていたので、スポーツの中で大きいナイキやアディダスをベンチマークにした事業を考えるようになったんです。

ウェルネスアイテムの方に動いたんですね

中西:ただ、いきなり物を作るのは難しいと思ったのでメディアコマースをやろうと思い、スポーツメディアから始めました。それで当時、ヘルスケアの中でも腰痛とか肩こり、足の悩みに関するクエリがとても伸びていたんですね。

なるほどそれでインソールに

中西:いえ、本当は靴づくりをしようとしていたのですが、シューズってロット数も大きく、サイズの変数も多いので作りにくいんです。それでインソールから始めました。

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販売中のインソール・ウェブサイトから

メディアからD2Cへと展開、オペレーションは結構異なると思うのですが、例えば協業先のBMZ社などとはどうやってつながっていったんですか

中西:ビザスクを使ってひたすらにアポを取っていました(笑。

ビザスクのサイトにも取り上げられてましたね(笑。

中西:商社とかでものを作っていた人たちや、工場のネットワークを持っている人たちに会いに行くことしか頭になかったですね。

元々はサッカー選手だったんですよね

中西:インターハイ出場までいきました。ただ、17歳で心臓疾患を患って断念したんです。遺書まで書きました。サッカーで評価されてきた自分が何者でもなくなる経験が原点ですね。

その後、プログラミングを学ばれた

中西:サッカー以外に熱量を向けられる先を探していたところ、YouTubeで当時のオバマ大統領が国民に対してプログラミングをした方がいいと言っている動画を見つけたんです。これから米国の未来を背負っていく若者には、ゲームをやるのではなく作る側に回って欲しいと。この動画がプログラミングにのめり込むきっかけでした。

そこからインフラトップ(プログラミング学習の「DMM WEB CAMP」運営企業)に入社されるんですよね

中西:19歳の時です。大島(礼頌氏)さんが創業するというので参加しました。ビジョンに共感したのが大きいですね。プログラミングによって人生を変えることができるし、それを世の中に還元することができるのって素晴らしいじゃないですか。

サッカー選手から一転、ネット関連企業の社員。最初はどのようなことをされていたんですか

中西:当時はまだWEB CAMPがなかった時代で、大島さんが人集めやファイナンス周りに注力して、僕がカリキュラムを任せられていました。自分がそこまでコーディングができたわけではなかったので、調べたり、ヒアリングしたり、リクルーティングしたり。営業もするし、コースも増やすし、ということを2年程度ずっとやってましたね。

そしてそこからのリクルートへと転職をされるわけですが、これはどういう経緯があったのですか

中西:やはりスポーツ領域の事業で起業したかった、というのが大きいです。先程もお話したように、元々は人材事業を考えていました。なのでリクルートだったんです。

ただ、人材の起業は難しいよという意見が多く、またインフラトップに初期から入っていたとはいえ自分が代表ではなかったですし、また、当時は学生も多かったのでこれは流石に一旦修行した方がいいな、と。大きい会社で事業開発を学んだ方が絶対いいと思って選んだのがリクルートでした。

ただ、リクルートの中途入社ってそんなに簡単じゃないですよね

中西:そうですね(笑。大学新卒でも厳しいのに、当時21歳で学歴自体は高卒ですから。でも中途の事業開発部が一番成長できると思っていたので、役員に片っ端からメッセしたんです。

メッセ(笑

中西:そしたら一人返信を下さった方がいて。当時リクルートはリクナビで取りきれない層向けのサービスを作ろうとしていた時期で、若手でベンチャーにずっといたのを評価してもらえた感じでした。ただ、最初の3カ月とかは本当に仕事についていくのが精一杯で結構辛かったです(笑。

具体的にどういうお仕事をされていたんですか

中西:事業企画でメディアプロデューサーという役職でした。キャリグルというサービスの立ち上げとグロースを担当していました。

リクルート出身の起業家の方って多いですよね

中西:リクルートでは起案というプロセスがあって、役員に企画をプレゼンして通さないといけないのですが、こういう経験で仕事の基礎は徹底的に鍛えられたと思います。本当に当時の私は働き詰めで、同期や周りの人たちとの差も感じなくなりましたし、どんどん信頼も獲得できたのは本当によかったですね。ただ、やっぱり自分の思ったことができるようになったタイミングで事業やりたいと思うようになって。

独立してから現在のD2Cモデルに至るまでしばらく時間があり、コストもある程度かかるとは思うのですが、創業の資金などはどのように調達したんですか

中西:デット(※借入)ですね。創業してすぐには調達はせず、リクルートが仕事をくれたのもあったので、その売上をもとに政策金融公庫から借入しました。

すごく堅実ですね。すぐに貸してくれたんですか

中西:当時23歳だし、リクルートに入ったけど1年しかいなかったので、公庫の担当者からは頑張っても500万円しか無理って言われてました。けど、その仕事のおかげで1500万円を引っ張ってくることができたので、初期はそれで事業を回しました。

さらにいい話ですね。そこからいわゆるエクイティを調達するという流れに。どういうふうに調達されたのですか

中西:インキュベイトキャンプに参加したことです。その後、元々の知り合いだった白川さん(※)とインキュベイトファンドから8月に調達をしました。

※アプリコット・ベンチャーズの代表取締役、白川智樹氏

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元プロサッカー選手の播戸竜二さんが昨年10月に同社CSOに就任(プレスリリースより)

さらにアカツキからも出資を受けてます

中西:私たちの強みはやはりアスリートのネットワークです。ここに興味がある事業会社にアプローチしていく中で、アカツキさんと繋がりました。

スポーツ経験者や元アスリートの方などをかなり積極的に採用している印象があります

中西:そうですね。スポーツではある程度結果を残したのに、何かしらの挫折を経験してエネルギーが有り余っている若手で勝ちたいっていうのが実体験からあります。自分の中でこういった、若くてギラギラしてる人たちでチームを作って、IPOまで行きたいなと。

あと、スポーツで上まで行った人もビジネスの世界とは無縁なのではなく、ちゃんと資本主義の中でも勝てるっていうストーリーを作りたいという思いもあります。

自分が病気になってプログラミングを始めて、本当に辛かった経験もめげずに頑張ったら、ちゃんと活躍できる。結果を残せるって伝えたいし、逆に途中で腐ってしまう人たちはもったいないという感覚がとても強いです。

ただ、異なる業界の人たちを「スタートアップ」という枠の中で組織するのは難しい点もあるんじゃないでしょうか

中西:AspoleからTENTIALに社名を変更したタイミングで、ミッション・ビジョン・バリューの制定をしたんです。例えばミーティングの前に再確認したり、各個人がそれを実践するために今月することを紙に書いて、オフィスに貼るような活動をしたり。こういった地味な活動で意識はやはり変わりますよ。

事業運営や組織に関してロールモデルあったりしますか

中西:組織作りについてはラクスルさんを参考にしていて、河合聡一郎さんにはよく相談させてもらっています。また、事業作りに関しては、リクルートやサイバーエージェントや北の達人など、組織を拡大させながらもちゃんと利益を出し続け、なおかつ入った人がちゃんと挑戦して活躍できる組織がイメージにありますね。

共通しているのはビジネスの再現性をきちんと理解している人たちが上にいて、それをしっかり組織に落とし込めていることだと思っているので、そこを目指したいと思っています。

TENTIALのビジョンに「共同体」というキーワードが入っているのが個人的には好きです

中西:世の中をちゃんと動かすためには組織を作らなければいけないし、共同体を作らないとと思っています。大きい事業を作っていくためには、ロジカルな人たちだけで再現性だけを追求していっても難しく、やっぱり昔からいるステークホルダーをきちんと大切にしたり、共同体的な価値観がとても重要になってくると思ってます。

メンターのような方っていらっしゃるんですか

中西:ドワンゴの専務の横澤大輔さんとLIDDELL代表の福田晃一さんが運営する「JIGAMUGA」という経営者コミュニティがあるんです。Graciaの斎藤(拓泰)さん、ZEALS清水(正大)さん、ラブグラフ駒下(純兵)さんなどが在籍しているのですが、ここのコミュニティからはかなり学ぶことが大きいと思っています。

事業の話は一切せず、社会学のような再現性や人類の構造、世の中の仕組みや原理原則に関して議論する場はとても良かったです。

最後に、事業として、また個人としてどのような成長を目指しているか教えて下さい

中西:グローバルでは「ルルレモン」のようなモデル、日本だと予防医療のところを結構見ています。高齢化とブルーカラーが多い構造が医療費高騰に繋がっており、そこを改善するためにスポーツ庁ができたり、スポーツを持続可能なものにしようという政策になっていると思います。ここで、スポーツの技術を使ったり、インソールなどの製品を通して課題を解決していきたいと思っています。

個人としては、自分が死んだ後に何を残せるのだろうっていうのを本気で考えたときに、自分が持っているフィロソフィーを組織に落とし込んで、それがずっと続く会社を作りたいというのがありますね。

スポーツ選手が消費されずに持続可能な生き方をできるように、それを実現させるための事業ないし会社をずっと残せるようにしたいなと考えています。

ありがとうございました!

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