インタビュー

アメリカから見たウェルビーイング、ESGトレンド——Amber Bridge Partners 奥本直子さん Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 昨年くらいから、スタートアップや投資の世界でも、ウェルビーイングや ESG といった言葉を目にすることが多くなりました。資本主義の世界に生きていると、とかく利潤の追求に焦点を合わせがちですが、人の幸福があってこその事業であり、経済であるとの考えから、これらは2020年代の社会を象徴するキーワードに数え…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

昨年くらいから、スタートアップや投資の世界でも、ウェルビーイングや ESG といった言葉を目にすることが多くなりました。資本主義の世界に生きていると、とかく利潤の追求に焦点を合わせがちですが、人の幸福があってこその事業であり、経済であるとの考えから、これらは2020年代の社会を象徴するキーワードに数えられることになりそうです。大企業にとっても、スタートアップにとっても、一見すると利潤の追求に結びつかなさそうなウェルビーイングや ESG の概念を事業にどう取り入れるかは大きな課題です。今回はこれまでテック大手やVCなどで経営に携われたキャリアを持ち、大手企業へのアドバイスやスタートアップ投資なども手掛けられる Amber Bridge Partners(アンバー・ブリッジ・パートナーズ) 奥本直子さんに話を伺いました。

(文中太字の質問は全てMUGENLABO Magazine 編集部、回答は奥本氏、文中敬称略)

Amber Bridge Partners が目指すもの

Amber Bridge Partners を立ち上げられたいきさつ、立ち上げの背景、どういう活動をされているかをお話しいただけますか?

奥本:子供のころから一貫して日米のビジネスの橋渡しをしたいと思っていました。ロータリー財団の奨学金で米国の大学院で学んだのもコミュニケーションです。この Amber Bridge Partners は「ブリッジ」と付く通り、人と人、会社と会社、国と国を繋いでいきたいという思いを会社の名前にし、2017年に設立しました。

会社を設立したところ、2人の方から連絡をいただきました。ひとりは孫泰藏さんです。泰藏さんはMistletoe(ミスルトゥ)というグローバルなインパクト・コミュニティを運営していらっしゃいます。このコミュニティは、テクノロジーを通して社会の課題を解決したいという強い思いをもった人々の集まりで、起業家、ビジョナリー、事業家、アカデミアなど、様々な分野でご活躍される方々から成ります。Mistletoeの活動の一環として、テクノロジーで世界をより良くするというミッションをもった起業家やファンドに投資活動をしています。米国でも事業展開を手伝って欲しいとお声がけいただき、米国市場のマネージング・ディレクターとしてスタートアップに投資をしたり、ファンド投資をしたり、プロジェクトを立ち上げたりしていました。

ふたり目は、ヤフー・ジャパンの元CEOの宮坂学さんです(現在は東京都副知事)。宮坂さんがCEOを退任されるにあたり、次世代が誇りに思えるような未来を創るというミッションのもと、イノベーションにフォーカスしたファンド、Zコーポレーションを立ち上げられました。宮坂さんから「いっしょに仕事しない?」とお声がけいただき、ブロックチェーン・仮想通貨に大きな可能性を感じていた私は喜んでお引き受けしました。

ZコーポレーションはPEファンド的な立ち位置で、ソフトバンクがヤフーに投資をしてヤフー・ジャパンを立ち上げ成功したように、ブロックチェーンやモビリティの分野ですばらしいテクノロジーを持つ会社と日本でジョイントベンチャーを立ち上げ、0→1のところと1→10のところをオペーレーションの経験豊富なチームで成長を支えていくというスキームで活動していました。

Amber Bridge Partners 奥本直子さん

ESG 関連のスタートアップにも関わっておられますね。

奥本:米国スタートアップの日本市場進出のサポートをしていますが、そのひとつがFiscalNote社です。FiscalNote社は、アジア系米国人の20代の若者二人によって設立されたPre-IPOのスタートアップです。世界中の政府の立法・法規制情報を収集し、AIを通して政府やグローバル企業にタイムリーに情報を提供しています。米国政府やグローバル企業5200社をクライアントに持ち急成長中です。世界各国の立法・法規制やESGの動きをタイムリーに理解することにより、それに基づいた戦略を策定したり、ロビーイングやコンプライアンス対策を講じるなど、政府やグローバル企業にとっては欠かせないサービスとなっています。

近年、世界中で成長傾向にあるESG投資が、コロナ禍で更に急増しました。機関投資家が投資の判断をするにあたり、ESGに配慮した投資を重視するようになったからです。この背景には、社会全体への影響を包括的に勘案しなければ、経済成長や投資利益は得られないという認識が常識になりつつあることがあげられます。FiscalNote社のESGサービスは、カーボンニュートラル(脱炭素)に対する各企業の取り組みを世界標準に対して可視化することにより、企業の脱酸素に対する戦略作成をサポートします。また、ダイバーシティ&インクルージョンに関しても、グローバル企業における女性やマイノリティーを含む社員比率、取締役会の男女構成比率をリアルタイムで把握することにより対策を立てることが可能になります。

ESGへの取り組みは世界標準になりつつあることから、日本市場におけるESGサービスを立ち上げることにより、日本企業のグローバル進出の援護射撃が出来ればと思っています。

FiscalNote の画面(Image credit: FiscalNote)

2019年12月からは、データやコンテンツに特化した S4 Capital の社外取締役も務めていらっしゃいます。

奥本:世界最大級の広告代理店兼マーケティング会社、WPPを創業、30年以上舵取りをした英国人のマーティン・ソレル卿が、2018 年に創業したのがデジタル・マーケティング・ソリューションの会社 S4 Capitalです。この会社は、英国株式市場に上場しており、33カ国に5500人の従業員を擁するグルーバル企業です。社外取締役を務める米国スタートアップのCEOが、ソレル卿に私のことを推薦してくれ、半年ものインタビュー期間を経てオファーをいただきました。四半期毎に実施される取締役会は7時間から8時間に及$mm$10M x 1% といとい$100Kにその他にも頻繁に臨時取締役会が招集されます。さまざまなイシューを話し合いますが、その過程でソレル卿を始めとするグルーバル・エクゼクティブからから多くの学びがある素晴らしい機会となっています。

ウェルビーイングにも注力されていると伺いました。

奥本:3年前にシリコンバレーで開催されたトランスフォーマティブ・テック主催のカンファレンスにて、主催者のニコル・ブラッドフォードと出会ったことがきっかけです。彼女は、ゲーム会社のエグゼクティブでしたが、7年前に米国シリコンバレーを拠点とするトランスフォーマティブ・テックという非営利団体(NPO)を立ち上げました。この団体は、ウェルビーイング・テクノロジーの世界最大のエコシステムに成長し、現在、72か国、450都市に、スタートアップ、投資家、アカデミア、コーポレートから成る9,000人のメンバーを抱えています。

ニコルは、スタンフォード大学やSingularity Universityで講師を務め、学術論文に3,800回以上引用されるほどウェルビーイング・テクノロジーの中心的な人物です。ニコルと初めて会ってから1週間後に、”I have to see you”と連絡がありました。「あなたと会わなければいけないの」と言われたら、会わないわけにはいきません(笑)。自宅まで訪ねてきてくれた彼女と、お茶をし、手作りの夕食でもてなし、そのままワインを飲みながら深夜まで語り合ったのがきっかけで、とても親しくなりました。

その頃、私自身も「ヒューマン・セントリック(人間中心)なテクノロジーにフォーカスしていきたい」という思いを強くしていたところでした。このニコルとの出会いがきっかけとなり「テクノロジーを通して、誰もが健康で、幸せで、自分の可能性を最大に活かせるようなウェルビーイングな世界を実現していきたい」という思いがどんどん強くなりました。

現在、ニコルと共に、ウェルビーイングに特化したファンド「NIREMIA Collective」を立ち上げる準備をしています。ベンチャー投資を通して、テクノロジーでウェルビーイングな世の中を実現しようとする起業家をサポートし、誰もが健康で幸せで、「最高バージョンの自分」になれるような世の中を共創していければとと思います。

Nichol Bradford 氏(Singularity Universty の Web サイトから)

コロナ禍が火をつけた、ウェルビーイングとESG

奥本さんがよくnoteに書かれているウェルビーイングやESGという言葉ですが、日本では今ひとつ遠い存在という印象を持っている人が多いようにと思います。日本とアメリカで、一番ギャップを感じたこと、日本の人にもっと知ってもらいたいことはありますか?

奥本:弊社は「ウェルビーイング・マーケット・インテリジェンス・プログラム」を大手企業にご提供し、クライアント企業のプロダクトやサービスに関するコンサルティングをしています。このプログラムを通して、大企業の幹部や中間管理職の方々とお話すると、さまざまなジレンマにぶち当たってらっしゃるなと感じます。

ひとつは、プロダクトやビジネスを立案する際に、ウェルビーイングなものを作りたいという思いはある一方で、マネタイズを考慮すると、「これではお金が取れないよね」、「nice to have」だけど「must have」じゃないよね、という結論になってしまうことです。例えば、リモートワークのためのソリューションを考えたときに、直ちにニーズがあってマネタイズ出来るもの、例えば、オンラインで出勤退勤を確認するとか、従業員のブラウザをモニターするなど、会社側が従業員を管理するためのソリューションを考えてしまいがちです。

ただ、ウェルビーイング的な観点からみると、「成功して幸せになる」のではなく「幸せだから成功できる」のであり、社員の働く満足度を高めることが会社の成功に直結しているのではないかと思います。社員の幸福度や前向きさを増進するためには、個々の特性を生かした仕事に就く、自分の仕事が意義があることだと誇りに思える、上司、同僚、部下との繋がりを感じる、感謝される・認められるなどを通してモチベーションを高くもつなどが大切な要素になります。従業員を管理するのではなく、従業員の幸福度が生産性に繋がるという観点からプロダクトを開発することこそ、ウェルビーイングの時代に大切だと思います。

コロナ禍になって、仕事の状況管理や生産性向上のツールは多く生まれていますが、モチベーションを上げたり、気持ちよく仕事したりしてもらうための工夫はまだ少ないですよね。

奥本:コロナ禍で働き方が大きく変化しました。リモートワークが一般的になり、ビデオ会議によってミーティングがよりアジェンダドリブンになるなど、社員は慣れないリモートとwithコロナ時代の仕事の仕方にストレスを抱えています。コロナ禍以前は、会議後の移動時とか水飲み場などで交わしていた何気ないコミュニケーションが激減し、孤独を感じたり、生産性が落ちたり、鬱になったりする社員が急増しています。シリコンバレーでは、このような問題を解決すべく、様々なソリューションが生まれてきています。

例えば、Slack上に水飲み場的な場所をバーチャルに提供したり、社員間のメンタリングのマッチングを提供したり、趣味や興味別にランチミーティングを企画出来るソリューションなどがあります。会社に所属する目的は、稼ぐことだけではなく、人と繋がることや、自分の思いを実現すること、学び成長することでもあります。ただ、そういったソリューションは「nice to have」だと思われがちで、まだまだ軽視されているのが事実です。

矢野和男先生(日立製作所フェロー、ハピネスプラネット代表取締役)によると、人と人とのフラットなつながり、社員間で交わされる「どう思う?」とか「それいい!」とかのちょっとした会話、すべての社員が平等に発言権を持つことは、社員の幸福度に大きく影響するという研究結果を発表されていらっしゃいます。社員のモチベーションや幸福度は、ちょっとしたところに隠れていて、それをちゃんと拾ってソリューションを提供することにより、企業の生産性に繋がります。不確実な時代だからこそ、企業は「管理するためのソリューション」ではなく、「組織の心の状態を健全に保つ」ための投資をするべきではないのでしょうか。

(後半につづく)

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10年起業家:全ては自責から始まる/土屋・福島氏対談

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(前回からのつづき)これまで2回に渡り、創業からおよそ10年を迎えた土屋尚史氏と福島良典氏の軌跡を振り返った。最終回となる今回はお二人との対談で、経営者に必要な課題解決、意思決定の変化を語っていいただく。(文中の太字の質問は筆者、敬称は略させていただいてます) 自分と向き合う ーー10年の振り返りありがとうございました。福島さんは2回目の起業になるわけですが、経営における前回からの気付き、学びを改…

土屋尚史氏

(前回からのつづき)これまで2回に渡り、創業からおよそ10年を迎えた土屋尚史氏と福島良典氏の軌跡を振り返った。最終回となる今回はお二人との対談で、経営者に必要な課題解決、意思決定の変化を語っていいただく。(文中の太字の質問は筆者、敬称は略させていただいてます)

自分と向き合う

ーー10年の振り返りありがとうございました。福島さんは2回目の起業になるわけですが、経営における前回からの気付き、学びを改めて

福島:前回から学んだことがひとつあって、僕ら、上場後に一度、完全に組織崩壊を経験してるんです。四半期ごとに数字を追ってそれにプレッシャーを与えるというマネージメントをしていたんですね。土屋さんと同じで、自分たちもまずそれがダメだってことを認めたんです。

その上で、改めてビジョンとかどういう人と働きたいのかとか、どういう世界を作りたいのかとか、そういうことをめちゃくちゃ頑張って社員に伝えたんです。それによって起こった変化で辞めていった人ももちろんいます。今さらそんなこと言われても、と。その時の強烈な経験は本当に今でも凄く覚えています。今振り返るともっとあの時こうしていれば、事前にこうしていればという思いがあって、そういった部分は今のLayerXに生かしたいなと常々思ってます。

ーー土屋さんもまずは自分と向き合うことから始めましたよね

土屋:経営上の課題が起こった時は、先ほどの話の中でもお伝えした通り、一旦、全てはまず、経営者の責任だと認めることからスタートなのかなと。けど、これって難しくてやっぱり認めたくない、認められないというケースは散見されます。

結局、何かが起こった時に社員のせいだとかビジネス環境が悪かったとか、外部環境のせいにしてしまいたくなるんです。でもこれを一旦、外部環境の変化に対応できなかった自分の責任というものを認めることができたらそこが出発点です。

ーー自責して一旦リセットする。その後は

土屋:本当に抽象的な言葉ではあるんですが、泥水を啜るってあるじゃないですか。本当に課題を少しずつ改善し、続けるしかないというか。結局自分たちも組織の問題から解決までに2年半かかったわけです。もしこれをやり方は分からないですが、例えば短期間にバッサリといってその時の社員の感情とかそういうものを殺してまでやる方法もあったかもしれません。

でもね、やっぱり解決って段階的で、問題が何かを見つけるフェーズ、社員の感情が閉ざされていて、それをゆっくりと溶かしていくフェーズ、そしてそこから膝を突き合わせて『やるしかない』って行動するフェーズがあるんです。組織の空気やマーケットの空気をしっかりと読んだ上で、アクセル踏んだり、メッセージを出したりする。

組織に問題を抱えた時、周囲からも随分と心配されました。けれど最終的には諦めさえしなかったら結局、解決はするんです。

ーー組織だけじゃなく、課題との向き合い方でカルチャーの重要性はここ数年、スタートアップの間にも浸透し始めてます

福島:数字の奴隷じゃないですが、売上が全ての傷を癒す、みたいな格言がベンチャー界隈に漂ってるじゃないですか。それは単に経営者が麻痺させてるだけです。大事なのはミッションや行動指針といったカルチャーであり、例えば採用にしてもスキルだけを見るのではなくカルチャーを見ようとか、その辺りは徹底的にやってますね。今のところ大きな失敗は起こっていないと思ってますし、根本的な意味でブレることはないだろうと思ってます。

土屋:数字に神が宿ると言ってた福島さんとは別人だね(笑。

福島:確かに。当時の理想はインスタグラムで、少人数組織のプロダクト・レッド・グロース(製品による自律成長)でしたからね(笑。ただ、数字はファクトベースでの意思決定の上にあるもので、技法とかスキルの話なんです。

それよりも結局お前らの組織どこに向かってんの?っていうのを数字が支えられないのは、数字が独り歩きして暴走した結果なんですよね。でも物事の出発点って定量じゃなくて定性的なものじゃないですか。やっぱりそれをなぜやりたいかというものに対して数値目標を置いたとしても、そこの数字を動かすのは感情の力なんですよ。

ーーところで、福島さんはLayerXとして改めて組織づくりされていますが、これまでの経験を活かして次はどのような組織を目指してますか

福島:そうですね、もう一つ高いレベルでいくと、いい組織ってある人がそのビジネスにおける市場価値を100として、その組織に入ることで150になる、そういう組織なんだと思うんです。だからウチで働く意味があるよね、という。そしてそこで働くことで150の走り方を学び、覚えた後はやはりその人は高い市場価値になるので、どこでも働けるようになる。

こういう育成の部分ってあまりベンチャーは投資してこなかったところだと思うんです。LayerXではあと5年で3、400人を採用するつもりで、おそらくそういう勝負のビジネスなんですが、じゃあそういった人を中途市場で取ってこようとしてもその考え方自体がやはりナンセンスです。この会社には育成の仕組みがありますとかこういう研修が受けられます、ではなく、本当に働いていたら自然と力が身につく、そういうことですね。

サッカーと同じです。下部組織まで作ってあそこでプレーしたらあの人と一緒にやれるとか、あの方法が身につくとか。そういう意識で組織作りについてはもう一段上の世界で挑戦したいと思ってます。

それと僕もGunosyで最大、150人ぐらいまでしか見てないんですよね。4000人の会社を率いたことがないわけで、早くそのフェーズに行きたい。でね、やっぱり失敗するんですよ。多分。手酷い失敗をすると思うんですけど、その時にそれを受け止めて学びたいですね。

プロダクトを当てにいく

福島良典氏

ーところでお二人のお話伺って、やはり課題との向き合いが印象に残りました。よい起業家は課題発見が上手い、と言われますがどのようにして課題を見つけていますか?

福島:今までやってみたことのなかったことを色々試してみましたね。例えばコンサルタント。これまでやったことなかったですけど、色々試す中で、結局、自分が得意じゃないことをちゃんと理解できたというか。それが最近の気付きなんですよね。

インボイスのプロダクトもそうなんですが、明らかにお客さんの反応が違ってたんです。最初は本当に小さいですよ。反応してくれるのは10人とか100人とかなんですけど、明らかに何かが起こっている。起業した当時は気づけなかったことに今は明確に気付くことができる。

土屋:以前福島さんが今のLayerX インボイスがプロダクトにも全然なってなかった時期にグッドパッチの管理部にこういうものを考えているんだけどと持ち込んだんですよね。その時、僕も同席してみてたんだけど正直、あの時点では何が引っかかるのか分からなかった。それでも福島さんが直接やってきてインタビューしてるわけです。

最初の起業のスタートアップであればまだしも、シリアルの起業家が顧客の最前線に立って自分で営業してるっていうのはやはり凄いなと。ただあの時点では、導入するイメージが全く湧いてこなかったし、そもそもこれ、プロダクトになるの?って感じだったんだけど、結局、半年後ぐらいには現場が導入していましたね。

福島:強烈なアハ体験というか、私はやはりこれが理想じゃない?という体験やプロダクトを作ることが起業家として一番得意なんです。だから課題の見つけ方も多分そうなんです。課題って多分、教科書に書いてある課題なんですよ。例えば温室効果ガスが増えるから地球温暖化をなくそう、とか。本当に普通の話です。

ーー普遍的な問題から始める

福島:今の起業家の方ってやはりピッチコンテストとかで、君の会社は何が違うの?とかグーグルがやってきたらどうするの?とかそういう質問を浴びせ続けられてるので、何かトリッキーな課題を見つけないといけないような、そういう錯覚を持っていると思うんです。そんなものより、ごく普通の課題を狙って、決めたら徹底的にユーザーを観察してその背後に何が起こっているのかを見つける。

そうしたら大量にマーケティング施策を打つじゃないですけど、あの感覚をやっぱり私は覚えているので、伸びるんですよね。なんだかそこを見つけることが大事なんじゃないのかなと。その先にあるプロダクトのアハ体験というか、ユーザーが熱狂しているところも、最初はやっぱり10人とか100人の熱狂なわけで。

みなさん凄い数字に慣れちゃってるじゃないですか。フリマアプリの流通額が月間で数百億円超えましたとか、創業数年のスタートアップが数十億円を調達しました、とか。ああいう数字に慣れるとたった10人が熱狂していることに対して『凄いものを見つけました』とか『ウチの会社いけてます』っていう自信を持てないんじゃないかな、と思うわけです。

ーーなるほど、課題そのものよりもそれを抱える人々から解法を導く。土屋さんは?

土屋:福島さんと僕は割と経営の感覚というのかな、考え方が近いと思っていて、あるパターンの中から解法を持ってくる、というのはあると思ってます。福島さんって情報のインプット量や見てる範囲が広範囲だし、それなりに深いところまで考えてると思うんです。

結局、この範囲の中にある事象をカテゴリとして考えた時、最終的にはそれを総合的に俯瞰しながらここだ、という決め方をしてるんじゃないかなと。福島さんは勉強熱心だし、インターネット上の情報だけじゃなく生のユーザーの課題もそう、過去の凄い起業家の方々との経験がパターンになっていて、その認知力がズバ抜けてるんですよね。だからパターン化できる。それは特に思ってますね。

ーーちなみに観察ってどの程度までやるんですか

福島:めちゃくちゃ観察しますよ。例えばプロダクトを出すとするじゃないですか?『これいかがですか?』って聞いたら『いいですね』って答えるに決まってるんですよ。じゃなくて、いいって言ったけどあの人本当に翌日にアクセスしてるのかなとか、本当にいいって思ってたらまた使ってくれるはずなんです。おすすめしてくれるはずなんです。じゃあ、今、この瞬間に誰かにおすすめしてくれますか?って聞いて『いや、ちょっと』となれば全然刺さってない。いいですね、今から誰それに紹介しますよとなっていれば多分ヒットしてる。

その最初のところにいかに感度を高く持てるかどうかですね。自信を持てるかどうか。そこがあると回り出す。プロダクトを広げるとどうしても全然合わないユーザーとかが出てくるんですが、本質的に感じている課題は一緒なのです。とにかくプロダクトを改善するとまた新たな課題に気付ける、そういうフィードバックループみたいなものってあるんですよね。だから実は自分は課題を探しにはいってないんですよ。プロダクトを当てにいってるんです。

お時間になりました。今回は興味深いお話どうもありがとうございました。

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業界トッププレーヤーに聞いた、東南アジアのゲームスタートアップ最新トレンド

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Golden Gate Ventures の最新レポートによると、今後10年間で、メディアとエンターテインメントは、東南アジアの投資先として最も魅力的な分野の一つになるという。それは、この地域におけるスタートアップのイグジットの数からもすでに明らかだ。Crunchbase によると、これまでに行われた合計80件のイグジットのうち、メディアとエンターテインメントは4番目に多いイグジットを記録している…

CC0: Dewang Mhatre via Pixahive

Golden Gate Ventures の最新レポートによると、今後10年間で、メディアとエンターテインメントは、東南アジアの投資先として最も魅力的な分野の一つになるという。それは、この地域におけるスタートアップのイグジットの数からもすでに明らかだ。Crunchbase によると、これまでに行われた合計80件のイグジットのうち、メディアとエンターテインメントは4番目に多いイグジットを記録している。

エンターテインメントの中でも、ゲームは世界的に最も規模が大きく、最も広がりのある産業だ。2021年の時点で、ゲームプレーヤーの数は30億人という驚異的な数字になり、これは世界人口の約40%に相当する。Newzoo の予測では、今年の世界のゲーム市場は1,758億米ドルの収益が見込まれている。Research And Markets の調査によると、東南アジアに関しては、市場は年平均8.5%の成長が見込まれている。

ゲーム業界はどこに向かっているのか、そしてこの活況を呈している業界の主要なトレンドは何なのか。

e27 では、地域で最も急成長しているメディアパブリッシャー SHAREit、シンガポールのソーシャルメディアユニコーン BIGO、NFT を採用した人気ゲーム「Axie Infinity」を所有するベトナムのブロックチェーンゲームデベロッパー Sky Mavis など、いくつかの市場プレーヤーに話を聞いた。

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パンデミックに煽られた行動変化:モバイル、e スポーツ、ライブストリーミング

2019年の世界成長率で1位となったこの地域のモバイルゲームは、スマートフォンの高い普及率を背景に、その存在感を示した。この勢いは、新型コロナウイルスによって引き起こされたロックダウンの延長により、近年さらに加速している。モバイルゲームは、家に閉じこもっている人たちにとって最も現実的な娯楽として注目されている。

モバイルコンサルタント会社 App Annie によると、2021年第1四半期に世界中のユーザーがダウンロードしたゲームの数は、2019年第4四半期と比較して30%増加した。また、モバイルゲームへの支出は、2021年第1四半期に1週間あたり17億米ドルを記録し、パンデミック前の水準から40%増加した。

さらに、ベトナムやフィリピンなどの新興市場では、モバイルゲームへの消費者支出が50%以上の伸びを示している

SHAREit Group のパートナー兼グローバルバイスプレジデント Karam Malhotra 氏は、次のように述べている。

一時は、ゲームは社会的に孤立するものと考えられていたが、監禁されている世界中の人々が、画面の向こう側にコミュニティのつながりを求める手段としてゲームに目を向けた。

SHAREit Group のパートナー兼グローバルバイスプレジデント Karam Malhotra 氏
Image credit: SHAREIt Group

このように、ソーシャルゲームは、e スポーツの爆発的な成長を後押しする注目すべきトレンドとして浮上している。

東南アジアのゲーマーは、コミュニティプレイを好む傾向が強く、有利な環境や政府の政策も相まって、この地域での e スポーツの盛り上がりに貢献している。(Malhotra 氏)

Research And Markets に掲載された調査結果によると、人々は現実のスポーツをスタジアムに行って見ることができないため、アジアにおける e スポーツの視聴者数は2020年には6億1,840万人となり、2019年に比べて21%増加している。

e スポーツが主流になったのは、シンガポールを拠点とするライブストリーミングプラットフォーム「BIGO」が、パキスタンの情報放送省や Garena と協定を結び、若いゲーマーの業界参入を支援・促進するためのイニシアチブを立ち上げたことによる。

ゲーマーたちは、Bigo Live のようなグローバルなライブストリーミングプラットフォームを利用して、リアルタイムのゲームストリーミングを観察し、紹介し、つながり、コンテンツを作成している。Bigo Live で最もバイラルなゲームとしては、Bang Bang(MLBB)、PlayerUnknown’s Battleground(PUBG)、Free Fire、Fortnite、Call of Duty、Valorant などがある。

Bigo バイスプレジデントの Mike Ong 氏は、次のように述べている。

ライブストリーミングは、ゲーマーが e スポーツを観戦したり参加したりするための人気フォーマットとして登場しただけでなく、ゲーマーがコミュニティを構築してつながりを持つための重要なプラットフォームでもある。

Bigo バイスプレジデントの Mike Ong 氏
Image credit: Bigo

Ong 氏は、ロックダウン・ブルースの影響で、より多くの人々がデジタルプラットフォームを利用し、ゲームのライブストリームを見るようになったと付け加えた。ゲームのライブストリーミングを楽しむユーザの数は、2019年から2020年にかけて、世界的に11.7%以上の増加が見られた。

ユーザは、コンテンツ制作者に有利なライブストリーミングのようなビデオファーストのソーシャル体験にシフトしている。ユーザは、プロダクションが制作した伝統的なコンテンツではなく、コンテンツ制作者を直接認識するモデルに移行し始めており、本物の体験へのシフトに気づいている。(Ong 氏)

Bigo によると、ゲームのライブストリーミングでは、インドネシア、ベトナム、タイが上位にランクインしている。

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VC を魅了するブロックチェーンゲーム

こうしたユーザー行動の変化は、テクノロジーを駆使したゲーム体験のニーズも高めた。特に、近年のブロックチェーン技術の進歩は、ブロックチェーンゲームのポジティブなモメンタムを育んできた。

2018年にリリースされたベトナムのスタートアップ Sky Mavis が開発したブロックチェーンゲーム「Axie Infinity」は、東南アジアで開発された初の NFT を採用したゲームとなった。8月にスタートアップは、このゲームが7月に過去最高の80万人のデイリーアクティブユーザを獲得し、まもなく100万人の大台に乗ると発表した。

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NFT を採用したゲーム「Axie Infinity」
Sky Mavis

それ以来、ゲームとブロックチェーン技術の組み合わせは、ゲーマーがゲーム内の真のアイテム所有権を利用することで、より人気を集め、投資を集めている。

今年初めには、ベトナムのスタジオ Topebox が開発したゲーム「My DeFi Pet」も、Axia8 Ventures、OKEx Blockdream Ventures、OKEx から100万米ドルの投資を受けた。このゲームは、DeFi(分散型金融)と非ファンジブル・トークン(NFT(非代替トークン)の機能を持ち、プレイヤーはプレイ中にトークンを獲得したり、イベントに参加して報酬を得たり、ゲーム内のキャラクターを取引して利益を得たりすることができる。

先月、仮想競馬プラットフォーム「Zed Run」を所有する Virtually Human Studio は、メディアとテクノロジーに特化した投資会社 TCG Capital Management がリードするシリーズ A ラウンドで2,000万米ドルを調達したばかりだ。このラウンドには、Andreessen Horowitz と Red Beard Ventures も参加した。

これらの取引は、エンターテインメント、ゲーム、NFT の分野で活躍する企業に対する投資家の関心の高さを示している。

しかし、このような投資は、従来の VC や CVC だけに限られたものではあらない。個人の仮想通貨投資家も、ゲームのガバナンス・トークンに賭けて、その発展を後押ししている。Axie Infinity のトークンは、1ヶ月前には1トークンあたり3~4米ドルだったものが、現在では約70米ドルの価値がある。

ゲームデザインと経済デザイン

ブロックチェーンは、モバイルゲームのマネタイズと仕組みを変えている。それは、従来のゲームとは異なり、プレイヤーが自分のゲーム体験を NFT でマネタイズすることを可能にし、機会領域を形成している。(SHAREit の Malhotra 氏)

Sky Mavis CEO の Trung Nguyen 氏は、成功例として、Axie Infinity はゲームデザインと経済デザインの両方を兼ね備えていると述べている。「Play-to-earn」モデルにより、ゲーマーはデジタル資産の所有権を確認し、仮想アイテムのためのトークンでデジタル価値を創造し、それを現地通貨に交換したり売買したりすることができる。

とはいえ、ブロックチェーンゲームと従来のゲームのデザインには、いくつかの矛盾点がある。従来のゲームは開発者への一方的な収益を最大化することを目的としているが、ブロックチェーンゲームの分散型プラットフォームは真の経済として機能し、アプリ内取引とユーザの創造価値の合計を最大化することで、エコシステムが拡大する。(Nguyen 氏)

同氏の見解では、魅力的なゲームプレイをデザインし、健全なゲーム内経済を確保することで、これらの相反する要素のバランスをとることが、ユーザベースの確保と拡大につながるとのことだ。

また、ブロックチェーンゲームは、金銭的な利益や貯蓄を得るための代替的で容易なアプローチとなっている。ゲームは、テクノロジーを普及させ、「ファイナンシャル・インクルージョンを高める」ための「アブストラクタ」として機能する。

これは、パブリッシャーに以前よりも幅広い視聴者にリーチするための直接的な手段を提供するプラットフォームとしてのモバイルの台頭と相まって、開発者にはジャンル、フォーマット、マネタイズモデルにおいて創造性を発揮する力を与えている。

例えば、ゲーム内の没入型広告はより洗練されたものになっており、ゲーム技術と視聴者を深く理解する必要がある。広告は、デジタルの世界にシームレスに存在し、決して邪魔にならないものでなければならない。

また、この2年間で、すべての地域の開発者が、広告のみの収益化戦略からアプリ内課金を含めた収益化戦略へとシフトしてくる。

広告をクリエイティブに統合したパブリッシャーは、解約率が低く、ライフタイムバリューとリテンションが高くなる。(Malhotra 氏)

また、ゲームのストリーミング配信の場合は、視聴者からのギフトやアプリ内通貨によって、クリエイターの仕事ぶりを評価することができる。

当社のユーザは、お気に入りの配信者にさまざまな形のバーチャルギフトを贈り、受け取った配信者はそれを現金に換えることができる。これは、配信者への恩返しの気持ちを育み、クリエイター経済の最前線に立つための継続的な取り組みの一環だ。(Bigo の Ong 氏)

より広い意味で、人々のゲーム体験の民主化は、今後数年間のこの分野の成長を後押しする最も重要なトレンドとなっている。

我々は、カジュアルゲーマー、ソーシャルゲーマー、ミッドコアゲーマー、ハードコアゲーマー、プロゲーマーなど、ミレニアル世代のモバイルゲーム体験を民主化している。(Malhotra 氏)

【via e27】 @E27co

【原文】

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モンスター起業家を育てる/Thirdverse 國光×本間対談(3/3)

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Thirdverseという新しいスタートラインに立った起業家と投資家。話の終盤、投資家は8年前に自身が語った「モンスター起業家」について口を開く。世界で突き抜ける名だたるアントレプレナーは何が違うのか。起業家のプライベート結果も語った対談の最終回。(聞き手は筆者、お話はThirdverse代表取締役の國光宏尚氏、インキュベイトファンドの本間真彦氏、敬称は略させていただきました) オールインでも届か…

Thirdverseという新しいスタートラインに立った起業家と投資家。話の終盤、投資家は8年前に自身が語った「モンスター起業家」について口を開く。世界で突き抜ける名だたるアントレプレナーは何が違うのか。起業家のプライベート結果も語った対談の最終回。(聞き手は筆者、お話はThirdverse代表取締役の國光宏尚氏、インキュベイトファンドの本間真彦氏、敬称は略させていただきました)

モンスター起業家

平野:そろそろ終盤ですが、前回の対談で本間さんは「起業家を育てるっていうより、モンスターを育てる感覚」と言われてました。國光さんは・・モンスターですか?

本間:これホントにホントにやらなきゃダメだなって強く思いました。っていうのはさっきの40倍、80倍の勝負はマグニチュードの勝負だって話をしたと思うんですけど、結局、やることとか題材とかタイミングとかって僕も國光さんもみんなそんなに間違ってないはずで、ただ、やる深さとか飛ぶ飛距離が違うんですよね。

そうするとやっぱり大谷翔平さんみたいなもんじゃないの?と。1人、ああいう人が生まれればやり方が概念的に全然違うのかも?と思うんですよ。日本の社会って、大谷さんみたいに何か大きな事例がドーンと出てきた時にみんなの意見がガラリと変わる気がします

1個の理想の実例をみて、あ、そうかも!って思うこと、よくあるじゃないですか。となると、法制度とか手法ももちろんあるんだけど、事例が1コだけあればいいのかなって。その事例の飛距離がまだ足りないっていうことなんだけど、そういうことをやれそうな人間がまさにモンスターなんだと思う。

國光さんと今回まだやらせてもらうのも、やっぱりシリアルはその可能性は常に高いから。

で、8年前と思ってることは変わんないんだけど、お前この8年間、本気で世界で勝てるようなモンスターの支援をやったんか?って言われると、頑張ってたけどまだまだだなって(苦笑。

國光:反省で言うとね、この8年間で思ったようなところまで行けなかった結果、日本が内向き、内向きに向かってほとんどが国内でしか勝負しない。VCもそこにしか投資しない。

本間:内向き感は若干、強まったかもしれないね。

國光:最初からグローバルで勝つことを前提にした体制やスタートアップを作らないと勝てない。ユニコーンが限界。向こうはそれこそユニコーンがポニー化してる。

本間:今年の前半で150匹生まれてる。

國光:VR FundとCryptosは投資先が向こうじゃない?ユニコーン、数えたら10匹いるのよ。

平野:すごい。

國光:VR FundもCryptosもシード・アーリー・ステージなんですね。それで出資先に俺が先輩起業家として偉そうに言うわけ「これはこうした方がいいよ」とか。海外の方も似たような感じで接してるのね。で、気づけばユニコーン、デカコーンに(笑。

今はもう、アドバイスするのが恥ずかしいよね・・・。

本間:出資先にどうやったらユニコーンになれるのって逆に聞いてみたら?

起業家のプライベート

國光:投資してて思うのが、起業家とかチームとか含めてそんなに差がない。差がないけど、でも気づいたら向こうの方はユニコーンとかデカコーンになってるじゃない?それはマーケットが世界で勝負するから。

世界で勝ち切るためには重要なのってタイミング。あとは最初から世界で勝ち切るための採用だったりとか組織、体制。あとはプラットフォームとの距離感。やっぱりね、最初から日本だけでやってると絶対世界では勝てない。

本間:そこがやっぱ難しかったっていうのがこの8年の学びだね。VC業界もむちゃくちゃ変化しているからね。LPの構成なんて10年前とガラっと変わってる。同じ仕事やってても。今は海外の機関投資家とも話すことが当たり前になっている。

だからスタートアップも、マネジメントが多様化すると、外国人とか始めからDay1にいたりすると、集められる投資家の層が東京だけから一気に広がるんだよね。プライベートとパブリックをクロスオーバーで動く投資家も増えてきているから、将来的に上場後に買うような投資家のプライベートの部門がスタートアップの投資を検討していたりして。

するとパブリックとプライベートの垣根も低くなってきてるし国内外の投資家ももっと機動的に集められるようになってきてるから、日本のスタートアップの作り方の多様性は前より全然ダイナミズムが増してる。

平野:じゃあ今度はNasdaqの方で上場考えるとかあるんですか?

國光:それは全然ありえるよね。

平野:海外の機関投資家クラスが国内案件に直接投資するケースも増えてきましたけど、そこまでは広がらないですよね。

國光:何の差なんだろうね?

本間:これはもうマーケットの差。例えば、向こうもインキュベイトファンドや投資先をダメだと見てるわけじゃなくて、成長しているインド市場なら、インキュベイトファンドの投資先に一緒に投資するわけ。

國光:なんでこっちに直接投資しないんだろうね?

本間:日本というマーケットになかなかイエスと言ってくれない。例えば、日本のスタートアップだけど実は北米の売上が8割あるんだよねって言ったら、もっと投資する可能性はあがると思う。

國光:プラットフォームというかエコシステムがグローバルでのエコシステムの中に入っていかないと、そこは次の課題ですね。

本間:海外の機関投資家やVCの期待値は、まさにアニメとかゲームとか宇宙とか、日本は技術があったりするので、日本特有の技術とかコンテンツも含めたサービスがもっとまだまだあるでしょうと。だって、なんだか分かんないけどアニメがこんなにいろいろ出てくるのって日本だけだし、ゲーム会社がこんなにあるのも日本だけだし、国の規模とは関係なく、産業やビジネスの機会としてそういうことをちゃんと作れる人がいるということは認識されてるよね。

日本の技術やスタートアップを放っとくとなかなかグローバルに出てこないもんだから、彼らもそれを探しにきています

平野:さて、対談も終わりの時間です。國光さん8年間を振り返って一言お願いします。

國光:起業家のプライベートについて、最後に。前回の時から、僕も、本間さんとこも山田さんも結婚して幸せな家庭を持つことができました (笑。

本間:よかったね(笑。

國光:なんだかんだで、起業と家庭は両立する。

平野:

國光:ということで8年前の俺に。國光家も本間家も山田家も、みんな幸せになりました。

一同:よかった(一同拍手)

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世界と戦うチーム/Thirdverse 國光×本間対談(2/3)

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Thirdverseという新しいスタートラインに立った起業家と投資家。8年前に対談した内容を振り返りつつ、二人はそこに何が足りなかったのかを語り合った。(聞き手は筆者、お話はThirdverse代表取締役の國光宏尚氏、インキュベイトファンドの本間真彦氏、敬称は略させていただきました) オールインでも届かなかった世界戦/Thirdverse 國光×本間対談(1/3) 世界と戦うチーム/Thirdve…

Thirdverseという新しいスタートラインに立った起業家と投資家。8年前に対談した内容を振り返りつつ、二人はそこに何が足りなかったのかを語り合った。(聞き手は筆者、お話はThirdverse代表取締役の國光宏尚氏、インキュベイトファンドの本間真彦氏、敬称は略させていただきました)

世界で勝てなかった理由

本間:オールインって、世界中、起業家がやってることってそんなに変わんないんだよね、みんな。ロケット飛ばしてるしクリプトもやってるし、ゲームもVRもやってるわけ。違うのは、事業の大きさのマグニチュードだけであって、そこが一番モヤモヤとするところだよね。お互い年齢も離れてない。

彼らは偉人ではあるけど、歴史上の人でもなく現世を生きていて。内容もみんなスマホ、クラウド、AIとか同じことをやってて。ただその結果が50倍100倍違うと言われちゃうと、なんかね・・・なんなんでしょうね?

國光:シンプルにグローバルで勝てるか勝てないかっていうのがデカいんだけど、なんで届かなかったのか。

当時からgumiの戦略ってシンプルで、一つめは日本で作って日本でヒットさせる。二つめは日本で作ったコンテンツを世界にいる「日本好き」に届ける。三つめが地産地消。海外で作って海外で売る。

最初の二つはそれなりに成果が残こせたんですけど、最後が全滅なんですね。なぜ海外で勝ちきれなかったのかと考えたときに、大きな理由が三つあると思う。一つめは、スマホシフトが遅れた。当時、グリーやモバゲーの売り上げがめちゃくちゃ多かったから、ネイティブに移行するのが遅れた。一時期、僕はHTML5の貴公子って呼ばれてましたからね。

本間:ザッカーバーグも10年前はHTML5が来るとカンファレンスで言ってたよ(笑。

國光:ザッカーバーグと俺だけがそう言ってた(笑。

本間:10年たっても、まだ来てないけどね!いつ貴公子の時代が来るの?

國光:ザックも俺も、間違いから学ぶのが早い。ザックはあの時ヤバいと思ってインスタを買ったじゃないですか。うちはエイリムを買った。ほぼ一緒。

本間:あぁ、なるほど。戦略が一緒。

國光:二つめに、すごく感じたのがやっぱりプラットフォーマーとの関係性が遠い。

本間:これはあるね。日本勢がキツいのは、デジタルのプラットフォームが全部アメリカの会社に変わっちゃって、非常にやりにくくなってるよね。

國光:プラットフォームとの距離感はけっこう大きな課題。三つめは、採用はめっちゃがんばったけど、本当の意味でS級人材を採用できなかった。この三つが大きな課題。Thirdverseではこの辺を大きく変えてみたいなと。

平野:今回はプラットフォーム自体も自分たちの近いところにいるし、海外も人材がいるし、絶対勝てる、と。

國光:6年間助走しましたからね!準備運動ももう万端、かなり温まってる。

コロナ禍で進んだ自律分散型のチームづくり

國光:世界に届こうと思うと「ここ」ってタイミングで参入せえへんかったらチャンスもないから。投資先の(NFTマーケットプレイスの)OpenSeaとかすごいよ。

だって日本がようやくちらほらと「NFTマーケットプレイス」と言ってる段階で、2月に20億円調達して今回さらに100億円追加調達。評価額は1600億円。こんなの日本が「今からやります」とか言っても、ね。しかも去年の10月まで従業員4人よ。

本間:グローバルとか世界ってなんだって話になったときに、これからのスタートアップは、従業員、マーケット、ユーザーはどこにいるか、投資家はどこにいるかって、幅広く柔軟に考える必要がある。組織設計に必要な要素を日本だけにこだわり始めるとその後の伸ばし方がよく分かんなくなるんで、今後ゼロベースで作る設計ってそういう組織が伸びていく可能性はある。

東京からスタートしても経営陣に外国人はぜんぜんいたほうがいいし、投資家も日本からばっかり集めるんじゃなくて海外から集めてもいいかもしんない。Thirdverseは確かに日本人は多いけど、構成員も初めからいわゆるスタートアップっぽい人材ばかりじゃない。作り方がだいぶ変わってるし、今後、もっと変わると思いますね。

コロナでリモートが発展するんで。うちのUSのファンドの責任者から見せてもらったんですけど、a16z(※Andreessen Horowitz)の投資先のアンケートで、今スタートアップを作るとしたら過半数の人がリモートベースでやるって言ってるんですね。

サンフランシスコやシリコンバレーでやるとエンジニアの給料が30万ドルとか40万ドルとかする。無理でしょって話になる。リモートで働く組織だったら別にアイルランドの優秀な人でもインド人でもいいわけ。そうすると採用能力も格段に上がる。

マネージメントにインド人がいれば、アメリカからだけじゃなくてインドの投資家も集められるし。「World Is Flat」って言ってたけど、まあ、それが出てから20年ぐらい経ってようやく本当にフラットな考え方が現実的になってきてる。

國光:Thirdverseも東京チームに加え、海外チームは、ビズデブ&マーケティングはサンフランシスコ。開発はLAとウクライナ。

平野:gumiはけっこう早い段階から海外に開発拠点をいろいろ作ってたじゃないですか。失敗も成功も含めて、そこから得た学びを次のThirdverseにどう生かします?

VRゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』

國光:トップクラスの人材を取れたかっていうとそうではなかったと思う。gumiが海外展開したときは既にけっこうデカかったから、たぶんメルカリとかも苦労してると思うんだけど、トップクラスの人材を海外で採用しようと思うと、ストックオプションを含めた「魅力」がすごく重要になる。評価額が上がってからだとSOの魅力が落ちる。

二つめは『ソード・オブ・ガルガンチュア』の次のゲームを開発中だけど、ここで大ヒットを出せるかがけっこう勝負。サービス自体が大ヒットしてると「あのサービス作ってるところなんだ」って感じで一気に人が来るから、初期で大ヒットを出すっていうのがすごく重要。

本間:日本で当たっちゃったが故に、日本で当たったものをどういうふうに海外へ展開するかみたいな発想になるケースもあるけど、『ソード・オブ・ガルガンチュア』はアメリカでの売り上げの方が多いわけだし、僕がやってても、これ日本人向けのゲームとはとても思えない。テイストから何からしてもね。

Day1から本当に世界市場、北米市場を狙ってるっていうところは、昔からのスタートアップの考え方とは確かに違う。特にソフトウェアやインターネット関連のスタートアップの中ではそれをまともにやったケースが日本ではまだ少ないの。

國光:やっぱり日本っぽさ、日本「臭」がどうしても入っちゃう。

本間:これがなかなか。さっきのBTSじゃないけどそういう「匂い」は消してきてるというか、そういうグローバル化する強い意志があるじゃない?

國光:日本で成功してから海外へとなると、スピードも遅くなる。テイストも世界では通用しなくなってきちゃう。

平野:コロナ禍で海外人材や遠方の人材を取りやすくなってるっていうのはこれまでとは変わったじゃないですか。その辺は追い風を感じてますか?

國光:すごく追い風。海外メンバーは誰も直接会ってないからね。全部オンラインで面談してで出来てる感じやから。

平野:一方でNetflixみたいに完全にオフィスに戻れ!って、特にクリエイティブの人たちはけっこう戻るじゃないですか?その辺は難しさを感じてませんか?

國光:表現は難しいけど、メンバーのプロフェッショナリズムの高さが高ければオンラインだけで成立するし、そうじゃなかったりするとリアルっていうのは必要になる。

本間:8年後に向けての大胆予想ですが、今のNetflixとかのやり方ってロジック的には正しいと思うんですけど、でも、Appleみたいにでっかいキャンパスみたいなオフィス作って、っていうような会社は、古くなってるんじゃないかなと思う。

今、Day1で次のGAFA作ろうって人は全く違うアングルで勝負しに行かなきゃいけないから、本当にどこにあるか分からないみたいな会社かもしれないし、それが比較的自律分散的に動いてる可能性もゼロじゃないですよね。

そしたら人材だって全部アメリカから取る必要もないし、っていう状態になっていれば、オフィス代もCAPEX(設備投資)も低くなるし、人材のプールもグローバルから採用できる会社の方がイケてるかもしれない。

國光:特にスタートアップであればあるほど初期のメンバー集めって大変やから、最初からリモートベースの方が強いよね。本間:朝から晩まで一緒に過ごすスタートアップの熱量 vs 色んな組織設計の可能性があるリモートワークってところはあるよね。10年後どうなってるのかなというのは気になる。

國光:ま、アメリカとか海外勢の方が、やっぱ慣れてるよね。

本間:そう!僕もそこがけっこう怖くて、アメリカや海外勢がそういうことが当たり前にできちゃって同じパフォーマンス出されたら、東京でしか採用できない会社なんて絶対に世界で勝ち様がない。

次につづく:モンスター起業家を育てる/Thirdverse 國光×本間対談(3/3)

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オールインでも届かなかった世界戦/Thirdverse 國光×本間対談(1/3)

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8年前、私はある起業家と投資家の対談を収録させてもらった。シード期における両者の関係は興味深く、単なる出資者と事業執行者「以上」の関わりが生まれるのではと考えたからだ。 そしてそれは実際にそうだった。ーーその二人、國光宏尚氏と本間真彦氏は創業から倒産の危機、ヒット作、そして念願だった株式公開までの時間を共にすることになった。8年前の対談で二人がずっと口にしていた言葉がある。世界戦だ。あの時の二人は…

写真左から:國光宏尚氏と本間真彦氏

8年前、私はある起業家と投資家の対談を収録させてもらった。シード期における両者の関係は興味深く、単なる出資者と事業執行者「以上」の関わりが生まれるのではと考えたからだ。

そしてそれは実際にそうだった。ーーその二人、國光宏尚氏と本間真彦氏は創業から倒産の危機、ヒット作、そして念願だった株式公開までの時間を共にすることになった。8年前の対談で二人がずっと口にしていた言葉がある。世界戦だ。あの時の二人はオールインを何度も繰り返せば必ず勝てる、絶対に勝ちきると語っていた。

しかし現実は厳しかったようだ。

そして今、彼らはまた新しいスタートラインに立とうとしている。今日、本誌でもお伝えした通り、國光宏尚氏は創業したgumiを後に、新たにThirdverseの代表として次の世界戦に向かうことを公表した。パートナーは8年前、世界制覇を約束したインキュベイト・ファンドの本間氏だ。

新たな船出の詳細はこちらの記事に譲るとして、本稿では8年ぶりの対談を3回に渡りお送りしたい。オールインを繰り返した結果、何が起こり、何が足りなかったのか。

二人はまず、8年前の振り返りから話を始めた。

全部注ぎ込んだけど届かなかった世界戦

平野:今日はスペシャル対談です。テーマは「オールイン3回やったら世界に届いたのか?」ですね。前回記事はこちらです。上場の直前ですね。

國光:ようやくネイティブシフトが多少できてきて、こっから世界を獲るぜっていうので、調子がよかったタイミングやね。

平野:ものすっごい滑舌よかったです(笑。

本間:夢があったよね、あの頃。

國光:でもオールインはこれで終わると思ってたんだろうね、8年前の彼は・・・。この後で東証一部に直接行くっていうね。

平野:マザーズ選択が多い中、東証一部への上場は衝撃的でした。

本間:当時のネイティブゲームは、そのくらいの気概を持てる状況ではあったと思います。結果はああなってしまったけれど、チャレンジとしてはよかったと思いますよ。

平野:一部に行くと國光さんから聞いたときの心境は?

本間:当時直接その話はしていないんだけども、株主も納得しないといけないわけなんで、皆そのシナリオに乗ったっていうことだと思うんですよね。

平野:で、オールイン3回やって世界に届いたんですか?

國光:世界に届いたかって話になると、あの頃はピュアにオールインを3回やったら世界に届くかなって思ってたよ。僕が退任するに当たってgumiの管理部が創業から過去の歴史をまとめてくれてたんだけど、5回つぶれかけてたね。資金ショートが5回くらい。そういう意味で、あの頃の僕たちはまぁまぁ若かった(笑。

本間:そんなに若くもない(笑。

國光:8年前の自分に贈る言葉があるとすると「宣言通りがっつりとオールインを繰り返しました」と。「とはいえ、まったく世界には届かなかったです」と。ただ、僕も山田進太郎(メルカリ創業者)も幸せな家庭を持てた(笑。これが「8年前の君へ」という手紙です。

・・ただ実際はやっぱり届かなかったね。

平野:國光さんはどういう基準で「世界」を考えてます?

國光:理想でいくと、時価総額で世界一位が分かりやすいけど。少なくともZyngaは世界一になったと思うの。「世界行ったな」って感じってあるじゃない?少なくとも、自分らが作ったサービスとか自分らが作ったなんたらっていうのを、世界の多くの人が知ってる。FlickrとかDeliciousって買収金額で話したら小さいけど、でもあれは届いているよね?

平野:確かに。

國光:そういう感じ。世界の中でみんなが知ってるような会社だったり、サービスを作れるっていうイメージかな。

平野:本間さん的にはどうですか?

本間:投資家的にはもっと冷徹にみるとまさに時価総額で比べられるか。この8年で、僕らのファンドだけでもサイズが当時の10倍くらいになってます。ただ、GAFAとかのテックジャイアント企業の伸びがそれ以上に大きいから、よくVCの投資額が日米で40倍、50倍違うよねって言われるけど、当然作られている時価総額もトップ同士だと40倍、50倍違ってて、そこは比較的差がつきやすい状況になっているというのもある。

國光:8年前に名前出してた孫(正義)さんもそうやし、イーロン・マスクもジャック・ドーシーも、追いつくどころかビックリするほど差が開いちゃって・・・やばいよねぇ。

ポニーになったユニコーン

本間:2021年の半年間で、アメリカのユニコーンがどれだけ生まれてるか知ってます?250社ですよ。

2年前って、1年間で60とか70だったんだよ。だからこの2年でも、まぁユニコーン生成合戦じゃないとしても5、6倍になってるんだよね、このペースで行くと。動くスピードが物理的に、特に資金面ではもっと早すぎて、それを吸収できるようなGAFA予備軍みたいな会社が、SaaSも含めてバンバン金を使って成長していっちゃう。

國光:ユニコーンって伝説の生き物やったのに、その辺のポニーみたいになってる(笑。

平野:今の時点で900社以上です。ユニコーンが。

本間:だからアメリカの一部では、1,000億円(10億ドル)なんかそれこそポニーだから、5,000億円(50億ドル)くらいからをユニコーンと呼んだほうがいいんじゃないかって議論があるんだって。

これもVC起業家の間の議論でよくあるんだけど、最近確かにVCのエコシステムはすごくよくなってきてる。この頃よりも、ましてや國光さんが創業した頃に比べて100倍ぐらい環境がいいと思うんだけど、海外の機関投資家が日本に投資してるケースもあるし、資金調達のラウンドのサイズも上がってる。

でも本質的に議論が行き着いちゃっているところは、北米のVCやスタートアップが期待できる時価総額のアップサイドが結局、AppleやGoogle、Facebook、Microsoftって見れば、スタートアップから押し上げる時価総額のサイズも、一応届くかどうかは別として、ここまでは上がれるよねっていうところで、時価総額自体がもうすごく高くなってる。

國光:Appleが200兆円とか?日本でいうたらソフトバンクグループで11〜12兆円。その下で行くと、Zホールディングスで4〜5兆円。楽天が2兆円でメルカリが1兆円弱。

本間:東南アジアのSea(Garena)とかでも、(時価総額が)16兆円あるんだよね。

國光:Seaで16 兆円!?まじで?

本間:そうだよ。だから・・・何がおかしいんだろうね。

國光:シンプルにグローバルで勝てるか。

本間:時価総額の中で、グロースっていうところの評価が非常に高い。実績の評価とグロースの評価があったときに、グロースのウエイトが非常に高くなっているってことなんだと思う。

敗戦で内向きになった国内

平野:國光さんは最初からグローバルに行くのか、日本の市場から攻めるのかどういう風に考えてますか。

國光:たぶん同時にやらなくちゃいけないと思ってて、Thirdverseは東京に40人、海外拠点が合計で30人って感じやから、基本、日本で勝ってから世界で挑戦というのでは絶対遅いし、とはいえ、いきなり全部海外でいくのもって部分もあるから、結局は同時にやってくしかないと思う。

結局日本と海外の絶望的に開いた差の一番の原因って、やっぱりグローバルで日本の会社が全く勝てなかった。ゲーム業界ってね、グリーもDeNAも我々も、みんな凄まじくチャレンジしたけど一回討ち死にしてるのよね・・・。結果、グローバルを攻めない方がいいという空気感に。。。

本間:攻めた結果、一旦みな内向きになっちゃった気がする。

國光:その「内向き」が行ききった結果がB2B SaaS系のビジネスだけに起業家もVCも集中している現状があるじゃない。日本の時価総額が低いのも世界で勝った、世界で成功したという例がないから。

本間:すごい変化があるのは、BTSとピッコマ。韓国の会社のエンタメの会社の方が時価総額が高くなってきている。確かに韓国で成功して日本に来てアメリカに行けたっていうのが今までつながらなかったんだよね。

ここは日本のテック側もちょっと学ぶことがありそうというか、こんなことは、一朝一夕にはできないし、韓国のスタートアップも相当討ち死にしてると思うんだけど、(BTSとピッコマという)事例ができたことによる自信はけっこうあるんじゃないかな。

國光:野球でもサッカーでもそうだし、韓流とかもそうやろうけど、1コ成功が出れば、こうやりゃいいのかって感じで後が続いてくるから。

投資家としての顔

平野:ファンド(VR Fundとgumi Cryptos)はすごくいいパフォーマンスを発揮してるわけじゃないですか。グローバルに通用する成功事例としてVRとブロックチェーンに投資したことはどう評価してます?

國光:本当に大きな成功をしようと思うと、パラダイムが変わるタイミングにそこにいなきゃダメだと思うのね。僕らが起業した2007年は、ずっと言い続けてるんだけどすさまじく大きな年で、2007年にiPhoneが出て、そっからTwitterやFacebookが伸びてAWSが出た。スマホ・ソーシャル・クラウドっていう、それ以降の10数年間を牽引するパラダイムが生まれたのが2007年だったと思うの。

GAFAMの時価総額を見ても、すさまじく伸び始めたのは2010年くらいからなんだよね。スマホ・ソーシャル・クラウドの戦いに日本勢がボロ負けした。次の大きな波というと、デバイスは当然VR/AR。データはソーシャルからブロックチェーンになってくる。データをどう活用するかは、クラウドからAIになる。ここから次の10数年間の大きなウェーブは間違いなくXR、ブロックチェーン、AIだと思うからそこに全振していきたい。

平野:本間さん、投資家としての國光さんはいかがですか。

本間:國光さんはテーマを決めるのはけっこう投資家っぽい。起業家なんだけどなんか変なマクロの事業テーマを設定するところがもうVC(笑。仮説は当たってるところがありますよね。次に大きく世の中が動くのはここじゃないの、みたいな。

大局を見るところは得意かなと思う。どう実装するがを時間軸を考えて作っていくのは起業家だけど、投資家は張っていけばいいわけだから。そういう意味では実際これだけ当たってるわけだからいいんじゃないですかね。

平野:國光さんってちょっと早すぎ・・・(以下略

本間:だから投資家っぽいんですよ(笑。起業家はもうちょっと参入のタイミングを読むと思う。

國光:僕は気づいたんですよ。タイミングとかは重要じゃない。

成功するためには。たとえばそのタイミングって、遅すぎても早すぎても厳しいじゃないですか。っていうのでいくと、やっぱり一番いいのは勝つまでやる。要するに遅すぎるより早すぎる方がよくて、早く始めてくるまでやる。これが必勝法(笑。

だからVRも2015年から始めて16、17、18、19、20年と6年連続VR元年が続きそして7年目にしてついにVR2年目に突入した。6年間の助走期間はラッキーと考える。

本間:僕はそれ、ずっと見てるからね(笑。

國光:まあ、流石に6年連続VR元年は長かったけど(笑。

一同:

本間:ただ確かに、イーロン・マスクの助走期間、今回のブルー・オリジンとかヴァージン・ギャラクティックとかも、みんなけっこう長いんですよね(※)。急に打ち上がったわけでもなく、15年ぐらい一つのオポチュニティーを追いつづけるっていうのが、六本木とか赤坂界隈にいるとなかなか難しい。

※補足:イーロン・マスク氏のスペースXは2002年、テスラが2003年、ジェフ・ベゾス氏のブルー・オリジンは2000年、リチャード・ブランソン氏のヴァージン・ギャラクティックは2004年創業

平野:國光さん、ずっと打席でバットを振りつづけられる元気はどこから?

國光:前回の対談を振り返ってという感じだけど・・・どうだろうね?まだ「21世紀、俺」は達成できてないからね。イーロンにしても孫さんにしてもジャックにしてもね・・・ただ背中は見えてます(笑。

本間:見えてるの?だいぶ目がいい(笑!

國光:いやいや、ぜんぜん背中は見えてます!

本間:僕も陸上競技、長いことやってるけど、周回遅れじゃないよね?

國光:最近、老眼が入ってきて近くは見えにくくなってきてるんやけど、遠くはよく見える(笑。完璧に背中は見えてる。そこ、っていう目標がまだね。そこに向けて行きたいというね。そこ自体は変わってないかな。

平野:悔しいとかそういう気持ちって薄れてきてます?幸せになって。

國光:本当に真面目な話、背中は見えてるんだよ。悔しいというよりどうやったら勝てるか?だよね。具体的な戦略の方が大きい感じがする。

イーロンは別格やからちょっと置いとくけど、ジャックもマーク(・ザッカーバーグ氏)も、まあ、波に乗っただけなのね。スマホ・ソーシャル・クラウドの波に乗っかっただけの話なの。あの時代に波を自ら生み出したのは、(スティーブ・)ジョブスだけなの。

ひょっとしたらgumiがFacebookになった可能性もあるもんね。

本間:実際、志としては狙ってたからね!

國光:何かが変わったらワンチャンあったかもしれないからね・・・(遠い目

次につづく:世界と戦うチーム/Thirdverse 國光×本間対談(2/3)

※本文中の敬称は略させていただきました。

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「ARR1億ドル→3億ドル」の成長過程で何を考えたーーZuora創業者、ティエン・ツォ氏に聞く成長の鍵

本稿はベンチャーキャピタル、ALL STAR SAAS FUNDが運営するサイトに掲載された記事からの一部を転載したもの。全文書き起こしはこちらから読める。同社のメルマガ「ALL STAR SAAS NEWSLETTER」と出資先のスタートアップ転職に関するキャリア相談も受付中 サブスクリプション・サービスの管理業務を支える業界リーダー、Zuora。 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のス…

本稿はベンチャーキャピタル、ALL STAR SAAS FUNDが運営するサイトに掲載された記事からの一部を転載したもの。全文書き起こしはこちらから読める。同社のメルマガ「ALL STAR SAAS NEWSLETTER」出資先のスタートアップ転職に関するキャリア相談も受付中

サブスクリプション・サービスの管理業務を支える業界リーダー、Zuora。

新興企業から大企業まで、世界中のあらゆる業界で、21世紀の初めに花開いたサブスクリプション・ビジネス。その収益化を支えるSaaSとして、世界13カ国の事業拠点から、150カ国以上へビジネスを展開するグローバル企業へ成長しました。現在は1200名を超える従業員を有し、“サブスクリプション・エコノミー”を支援しています。

ARR1億ドルを突破した後も、持続的に成長し続けていくために、必要なこととは何なのでしょうか? 成長過程における戦略の極意について、ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロがZuora創業者CEOのTien Tzuo(ティエン・ツォ)にインタビュー。

2021年6月9日に配信されたウェビナーより、内容を翻訳した後、抜粋・再構成して記事化しました。

ARRは山登りだ。スイッチバックで進む「7つのフェーズ」

前田:以前にお話したのは2年前の東京でしたね。ZuoraはARR1億ドルから3億ドルへ成長している最中でした。このフェーズを振り返ると、3億までは滞りなく成長できましたか?

Tien:以あれは収益ゼロからARR10億ドルまで、成長を続けるスタートアップ企業向けのモデルを作成した頃でした。スタートアップは大企業より成長が速いですから、ARRゼロから1億、1億から3億といったように、それぞれの転換点がかなりの速度でやって来ます。

それを登山に例えたのですよね。

前田:ARR0ドル〜100万ドルを「アイデアの証明」、1億ドル〜3億ドルは「業界の証明」といったように、7つの証明をしながら登る「The Climb」モデルを紹介してくれました(※モデルについては以前に前田ヒロがブログでまとめています)。

Tien:富士山に登る時だって、僕らは直線的に登ったりしません。行ったり来たりを繰り返して、スイッチバックで進む。Zuoraも同じです。ARR3000万ドルから1億ドルまでのマイルストーンはかなり順調でした……でも、1億から3億への成長は、やや困難でしたね。

実際、いくつかの問題がありました。まずは、上場企業であったこと。私たちは十分に準備ができているものと思っていましたが、やるべきことがわかった段階で、上場会社としてそれを達成するのは、より困難だとわかったのです。株価を見ていただくと、まさに「1歩進むために2歩下がる」必要があったと、おわかりいただけると思います。

新しいマネジメントチームの導入も必須でした。私が戦略を考えるだけでは不十分で、もっと幅広い人員に戦略を共有しなくてはならなかったのです。経営の詳細を把握し、組織的に戦略を実行する必要がありましたから。

「私ではなく、チームから戦略を打ち出す」という方針への転換は容易ではなかったのですが、ようやく軌道に乗ったと感じています。

データを信頼できる運営システムが必要になる

前田:マネジメントで新たに加わった人たちにはどんな特徴がありましたか。

Tien:スケールさせたい時に重要なのは「一貫性」です。私たちが現場から遠ざかるにつれ、マネージャーは実際の仕事に携わる社員を力づけられる存在でなければなりません。そのためには戦略などに対して、より明確な理解が必要になります。「明確性」は重要です。明確性とメッセージこそ、新たな社員が求めているものだから。

前田:「マネジメントの変化が必要だ」と考えさせられる出来事があったのですか?

Tien:1億ドルから2億ドルへ成長するには、セールスなど「売る」ことがうまくいけば大きな力をつけられることがわかりました。しかし、3億から10億への成長となると話は変わります。システムへの依存度が非常に高くなり、スケールアップする必要が出てきました。私はそれまでのシステムでも対応できると思っていたのですが、間違いでした。

私たちは「月曜日の朝」「月初」「四半期の初日」といったタイミングで、セールスレポートや一連の数字を見ながら、どこか言葉遊びのようですが、「構築したシステムが機能していること」を理解できるようなシステムを構築することが重要でした。

一つ、例をあげて説明しましょう。

以前までは、現場へ出る社員に多くのコーチングを施していました。彼らは実際の取引に関わるからです。同じように、第一線で活躍するプロフェッショナルサービス担当ならクライアントと、エンジニアリングのマネージャーならプログラミングに関わります。

現場の状況が把握できていれば、現実的に「何が起こっているのか」はわかるのですが、企業が次のレベルへ移行すると、そうはいかなくなります。「取引に直接関わっているセールス担当者」を管理するためのセールスマネージャーを、私たちは管理する立場になります。

すべての取引に直接関わることができなくなった場合、取引が成功しているかどうか、いったい何で知ればよいのでしょう。この成否に使える“リトマス紙”は何なのでしょう。つまり、層が一つ増えたのだと考えてみてください。階層が増えるたびに、自分のところまで上がってくる情報が正しいかどうかを知るためのシステムを構築する必要が出てきます。

今の私たちはデータを信頼できるような運営システムを持っています。ビジネス全体をまわすための運営の仕組みともいえますね。現場で仕事をする営業からインサイドセールス、マーケ、CSM、サポートに至るまで、KPIと判断基準を把握しやすく、それに向けたデータの取り方も進化しています。

そして、毎週、毎月、毎四半期と定期的に利用しているオペレーション・ケイデンスがあります。大規模な事業を展開している人たちならば、「Zuoraは必要なものを手に入れたな」と直感的にわかるでしょう。

最近では、四半期の予測を立てるようにしています。目前の四半期だけではなく、それに続く時期のものも合わせて、1年を通じての予測です。ですから、必要なのも「1年後に何が起こるのか」を見極められるようなシステムであり、そのための機能を持ち合わせていなくてはなりません。機能の構築、増収、管理コスト……どれについても、それが言えます。

前田:今後2〜3年の間に直面するであろう課題、克服しなければならない課題は?

Tien:この記事を目にする多くの人が、SaaS企業の創設者や経営陣だと思います。そうした立場の方々にとって、「常に生じる変化」はやり甲斐であり、困難な点ですね。

だからこそ、ARRの成長を登山に例えたのです。各フェーズで会社が変わらなければいけないし、経営者自身も変わっていかなければなりません。つまり、白紙の状態に戻って考えることに慣れなければいけないのです。それまでの経験や学習はすべて役立てながらも、その状態から仕事の内容を書き直した経験はありますか?

そういうことを、常にやらなければいけないんですよ。チームが整い、安定し、計画が整った今、私も実際に進めているところです。

BRIDGE編集部註:前田ヒロさんとTienさんの対談はこの後、ARRの落とし穴、顧客との向き合い、アップセルへと続きます。続きはこちらから。

ーーー

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黎明期のオンライン診療「ピル処方」スマルナはどう立ち上がったーーネクイノ・石井健一さん×ANOBAKA・萩谷聡さん【Monthly Pitch ポッドキャスト】

本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイトに掲載された記事からの転載 起業家と投資家の関係はこの10年で随分と変化しました。スマートフォンシフトといったトレンドの変化、Y Combinatorなどの登場でシード投資のハードルが一気に下がり、投資サイド・起業家サイド共に大きく数が増えたことが大きな要因です。特にシード期から志を共にするような場合、その関係は十数年に及…

本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイトに掲載された記事からの転載

起業家と投資家の関係はこの10年で随分と変化しました。スマートフォンシフトといったトレンドの変化、Y Combinatorなどの登場でシード投資のハードルが一気に下がり、投資サイド・起業家サイド共に大きく数が増えたことが大きな要因です。特にシード期から志を共にするような場合、その関係は十数年に及ぶこともあります。事業における最愛のパートナーたちはどのようにして出会い、成長し、そしてその後の関係はどのようなものになるのでしょうか。

シード投資を長年に渡って手がけてきたサイバーエージェント・キャピタル(CAC)では、この「投資家と起業家」の関係に注目した連載を開始します。毎月開催される「Monthly Pitch」にこれまで参加してくれたキャピタリストと創業者のお二人をお招きし、出会いのきっかけや乗り越えたハードル、関係構築のポイントなど、ここだけでしか聞けない裏話を語っていただきます。

最終回となる今回、登場いただくのは2018年6月にリリースされたオンライン診療でピルを処方するアプリ「スマルナ」を提供するネクイノ代表取締役の石井健一さんと、創業期から二人三脚で事業成長を見守ったANOBAKAの萩谷聡さんです。ご自身も薬剤師である石井さんは医療におけるコミュニケーションをテクノロジーで改善し、医療空間と体験を変えるべく2016年にネクイノ(旧社名はネクストイノベーション)を創業します。

ビジネスコンテストをきっかけに萩谷さんたち投資家と出会い、オンライン診療黎明期の市場で果敢にチャレンジを繰り返します。本命と考えていたスマルナがリリースされる前後は、会社が持つかどうかギリギリの状況でしたが、この状況を見事乗り越え現在、若い世代を中心にピル処方のスタンダード・ソリューションに成長しています。立ち上がり期の市場をどう乗り越えたのか、お二人にお話を伺いました。(ポッドキャスト収録の一部をお送りします。太字の質問はMonthly Pitch編集部)

ースマルナが大きく躍進した時のこと少し振り返っていただいてもよろしいですか?

石井:ビジネスモデルが分かりづらい、業界が分かりづらい、勝ち筋が分かりづらいという状態でしょう?かつシード期で自信満々で入った花粉症のトラクションが上がらないという状態だったので、2018年の夏に入って下さった投資家の方々には、シード期の方々と同じように、「よくぞ会ってくださいました!」っていうのが正直なところですね。ただ、これってスマルナが動いていた直後なんですよ。そのスマルナの手応えがとてつもなく良くて、もう絶対にこれは何とかなるなと思って動かしていたのを覚えています。

ー萩谷さんにとって、その信頼度は全く揺るがないものだったんですか?

萩谷:そうです。花粉症や他の疾患についても、なかなかな刺さり具合だなと思ってるタイミングで、「スマルナ」という女性向けサービスを出した瞬間の足元のニーズが凄くて。もう、これは本当にPMFというか、ツイッターでもいい口コミがいきなりガーンと流れているし、やっぱり違うなと。でも、その時トラクションとしてはまだまだだったんですけど、ここに絞れば行けるかなと、僕らもフォロー投資して、他の投資家も紹介しやすくなったという感じでしたね。

ー企業家のギリギリのストーリーってよく聞きますけれど、通帳残高50万円はなかなかしびれますね

石井:そんな中、5月に3人採用してるんですけどね(笑)。その内の一人が出てるので、皆様、ぜひネクイノのウォンテッドリーを覗いていただければと思います。開発の柱になっているメンバーがその時期に入ってくれています。

ー社員数はいま何人ですか?

石井:全員で90人ぐらいですね。

ー2018年8月は奇跡のステージだったと思います。そこからスマルナはダウンロード数を積み上げていって、その翌々年には20万ダウンロードとなり、昨年12月には累計調達額20億円。ここまでの道のりで成長痛などありませんでしたか?

石井:毎日が成長痛ですかね。一つ言えるのは、僕、あちこちでよく喋らせていただくんですけど、やっぱり仕事するのって何をするかじゃなく、誰とするかのほうが大事だと思ってるんですよ。ネクイノを作る前に一緒に仕事をしていたり、知り合いだったメンバーがネクイノの1周目のメンバーなんですよ。彼らのほとんどが今も会社に残ってくれていて、今まさに役員として柱となってくれているんです。よく、スタートアップのシリーズA前後で、さぁ右腕どうする?左腕どうする?みたいな議論ってあるじゃないですか。そこは完全にパスで来ました。

ーそれはいいですね

石井:ただ、これ、一方で最初はめちゃくちゃバーンが高いんですよ。バーンが高いので、よくぞ萩谷さんが飲んでくれたと思っています。

萩谷:起業家みたいな方が最初からチームメンバーにいて、切れ者の方も多かったので、その辺りは任せられるっていう感じでしたね。一発目のラウンドもすごく少額という感じではなく、ニッセイとうちで7,500万ぐらいの出資だったので、しっかり集められたというところが良かったかもしれないですね。

ーーーポッドキャストではそのほかのエピソードも語っていただいています。シード期の起業家が投資家とどのようにコミュニケーションしたのか、ぜひお聞きください。

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口コミを店舗改善に活かせる「口コミコム」運営、Coralなどから3.3億円を調達

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ユーザーレビューをマーケティングに活かせる「口コミコム」などを展開するmovは7月16日、Coral CapitalおよびSMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資の実施を公表している。調達した資金は3億3,000万円でCoral Capitalが3億円を出資する。 Coral Capital にとって初回出資額としては最大となる。払込日や株価などの詳細は非公開。また、7月1日から弁…

ユーザーレビューをマーケティングに活かせる「口コミコム」などを展開するmovは7月16日、Coral CapitalおよびSMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資の実施を公表している。調達した資金は3億3,000万円でCoral Capitalが3億円を出資する。

Coral Capital にとって初回出資額としては最大となる。払込日や株価などの詳細は非公開。また、7月1日から弁護士ドットコムで取締役を務めた渡邊陽介氏が社外取締役に就任したfことも伝えている。

mov は2015年9月、シリアルアントレプレナーの渡邊誠氏らにより創業。渡邊氏は以前、BRIDGE で取り上げた Open Network Lab 第5期に、パートの異なる音楽演奏者がオンラインでジャムセッションが行えるサービス「Mashroom.fm」で採択された人物だ。

mov は当初、外国人集客を狙う事業者向けに、インバウンド対応ソリューションを提供可能なベンダーを紹介するマッチングサイトや、それに付随するコンサルティング業務を提供していたが、コロナ禍でインバウンド需要が減少。現在は、複数の口コミサイトに投稿された情報をまとめて管理できる「口コミコム」を事業の柱にしている。

サーチエンジンの検索結果を最適化する SEO(Search Engine Optimization)、Google Maps など地図アプリの検索結果を最適化する MEO(Map Engine Optimization)などはよく耳にするが、口コミサイトに掲載した店舗情報を一括管理したり、レビュー投稿された内容を店舗の運営が包括的に閲覧したりすることができるサービスはこれまで存在しなかった。

口コミコムに店舗が情報を登録すると、Googleマップなどの地図アプリに表示されるほか、営業時間の変更や不適切なユーザー投稿写真の削除対応、口コミへの返信などが一括でできる。また、オンライン投稿された顧客の生の声を、リアル店舗における店員の接客や環境の改善に活かすことができる、〝O2O のミステリーショッパー〟的な役割を担わせることもできるようだ。

mov の主要メンバー。左から2人目が創業者で代表取締役の渡邊誠氏
Image credit: mov

チェーンの飲食店では、1店舗につき3個くらい URL があることもしばしば。コロナ禍で営業時間の表示を変更しないといけないが、本部で一括管理しようにもものすごい数になるので、あきらめてきたところも多い。しかし、口コミサイトに掲載された情報を信じた客が店に向かい、営業していなかったらクレームになってしまう。そうして情報更新のニーズから、口コミコムの導入店舗は大幅に増えた。

いずれ情報更新の需要はおさまり、むしろ、複数のサイトで常に正しい情報が表示できていることを担保する需要、そして、客からの声や反応を口コミサイトを通じて継続的に見ていくことで、業務改善に繋げられる、という需要がふくらんでくると思う。電話での問い合わせ、店頭での各社独自のアンケート回答なども合わせ、QSCA を上げるためのツールとして受け入れられ始めている。(渡邊氏)

ここで渡邊氏が言った QSCAとは、Quality(クオリティ)、Service(サービス)、Cleanliness(クレンリネス)、Atmosphere(アトモスフィア)の4つの言葉の頭文字をとった飲食業界で使われる専門用語だ。レストラン業・外食産業の経営指針として多くの企業が採用している。

大規模なチェーン店舗でも、効率的に客の生の声を吸い上げられるツールとしての価値が認められ、口コミコムは今後、大手企業への導入や提携に関する発表が今後、月に数社以上のペースで見込まれているという。

渡邊氏は SEO や MEO が叫ばれ出した頃に、これらを(エンジンを騙したり、アルゴリズムを使ったりして)ハックしようという業者が増えたことを批判し、口コミコムでは、より本質的なこと、つまり、お店の評判を根本的に上げていくための手助けとなる仕組みを提供したいと語った。

口コミコムはサービス開始から半年で1万店舗が利用。サブウェイやピザハットなどのチェーンや小売、自治体などが利用している。今回調達した資金はマーケティング、営業、開発、カスタマーサクセスの体制強化に充てられる。

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生活を変えるスマートホーム、HOMMAの戦略と挑戦

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コロナ禍において大きく考え方が変わったもののひとつに暮らし方、働き方があると思います。企業も敏感にその流れを受け止めていて、例えばJR東日本とKDDIは、品川駅を中心に地方へサテライト拠点をつくる分散型のまちづくり事業をスタートさせています。また、生活用品大手、無印良品では2015年から地域のくらしにフォーカスした情報発信活動「ローカルニッポン」を開始していますが、このライフスタイルの変化により二…

HOMMA創業者・CEOの本間毅氏

コロナ禍において大きく考え方が変わったもののひとつに暮らし方、働き方があると思います。企業も敏感にその流れを受け止めていて、例えばJR東日本とKDDIは、品川駅を中心に地方へサテライト拠点をつくる分散型のまちづくり事業をスタートさせています。また、生活用品大手、無印良品では2015年から地域のくらしにフォーカスした情報発信活動「ローカルニッポン」を開始していますが、このライフスタイルの変化により二拠点生活やワーケーションといった「別の視点」がより強く加わることになりました。地域の魅力発見だけでなく「自分ゴト」として考える人も増えたのではないでしょうか。

ライフスタイルの変化で最も大きな割合を占めるのが衣食住の中の「住」です。

雨風を凌ぐものであり、家族というコミュニティを育む場所であり、そして資産としての側面もあります。さまざまな機能を兼ね備えた「住」ですが、スマートデバイスの数々や車におけるTeslaのようなダイナミックなイノベーションはまだ起こっていない領域で、特に国内における戸建て住宅の市場は新規着工の住宅数が43万戸(2019年・建築着工統計調査)で横ばい、事業社についても2013年の飯田グループHD(住宅系6社が統合)や2020年のPLT(パナソニック系とトヨタ系が統合)が誕生するなど「熟成」が進みつつある市場とも言えます。

大きな転換点にあってやや停滞した巨大市場に対し、ダイナミックな変化を仕掛けようというのがHOMMAです。シリコンバレーを拠点に、日本人の連続起業家である本間毅氏がスタートアップさせたこの取り組みは何度か本誌でも取り上げさせていただきました。

同社は今年5月にシリーズAラウンドのファーストクローズを終え、800万ドルの調達に成功しています。出資したのは既存投資家のB Dash Ventures、Mistletoe、D4V、Convertible Note(転換社債)でレモンガス、城東テクノ、野原ホールディングス、Goldengate Investment Clubがフォローオンとして参加しています。

また、新規の投資家としてNTTドコモ・ベンチャーズ、コクヨ、プロパティーエージェント、アクアクララ、サニーサイドアップ、個人投資家として杉原章郎氏、大前創希氏、藤野英人氏、藤森義明氏、石塚亮氏らも参加しています。同社のこれまでの累計調達額(株式のみ)は約2,600万ドルに到達しており、これら調達した資金でHOMMAの住宅およびスマートホーム技術の開発強化を進めるとしています。

HOMMA HAUSの体験

HOMMA HAUS Mount Tabor

HOMMAが開発する「HOMMA HAUS」は独自に開発した「Cornerstone AI」というスマートホームプラットフォームをビルトインした住宅です。複数のIoT機器やセンサーを住宅に組み込むことで、住んでいる人に合わせて家が動く、そういった体験を提供しようとしています。実際に住んでいる本間さんにどのようなものになっているのか尋ねたところ「感じないぐらいに自然」な体験を実現できているとお話してくれました。

例えば生活の中で何度もやっている照明の操作は、自分たちでも気が付かないほど当たり前の行動になっています。しかし、HOMMA  HAUSでは人が入ることで明かりが灯り、仕事の時間には自動的に調光して青い光を、リラックスしたい時には温かい光に変更してくれるなど、自分のライフスタイルに家が合わせて動いてくれる、と表現されていました。

空調についても、センサーが家に組み込まれているので、人の動きを感知して家が操作してくれるといった具合です。キーレス、エアコンレスといったコントロールを必要としない(※念のためマニュアル操作のパネルはあるそうです)生活は、一度慣れてしまうと元に戻れないスムーズな体験になるのだとか。これらの機能はネットを通じてアップデートがかかります。

※修正:操作パネルではなく操作が可能なアプリでした。修正させていただきます。

また、家単体ではなく、コミュニティとしてのHOMMA HAUSも魅力のひとつです。

HOMMAは住宅という大掛かりな仕組みをアップデートするため、ステップバイステップの戦略を組んできました。テストモデルのHOMMA ZEROは現在、同社のオフィスとしても活躍しており、その次のHOMMA ONE(一戸建て)はすぐに買い手がつきました。これらの建築・分譲ステップを踏みながら、本間さんたちは開発ノウハウと分譲販売のファイナンシャルモデルを設計したそうです。

HOMMA HAUS Mount Tabor

現在、HOMMAでは昨年11月から18戸のHOMMA HAUSが立ち並ぶ分譲戸建ての HOMMA HAUS Mount Taborを建築中です。特にお話を伺っていて興味深かったのがコミュニティだからこそできるサービスの可能性です。HOMMA HAUSにはスマートロックやセキュリティが家自体にインストールされているため、例えば掃除や宅配、メンテナンスといった外部サービスを自宅にいることなく受けることが考えられます。この際にも事業社としては一定の数がまとまっている方が当然、スケールメリットを見出しやすくなります。

本間さんは自分たちだけで建てるプロジェクトをステップ2と称しており、今後の可能性としてHOMMA独自のスマートホーム・プラットフォームのテクノロジーをライセンスするという考え方も示してくれました。

前述した通り、特に国内の戸建て住宅市場は横ばいが続いており、空き家についても2033年には1955万戸(2018年は846万戸・住宅土地統計調べ)に拡大するという試算があります。スタートアップが単独で街を作るという考え方はやや時間軸に問題があるかもしれませんが、例えばこういった空き家の課題を既存プレーヤーと一緒にアップデートしたり、大手ホームビルダーが差別化要因として彼らのプラットフォームを採用するなどすれば、ダイナミックな動きが期待できるかもしれません。

実際に自分たちがホームビルダーとして建てたからこそ分かるペインポイントも強みだとお話されていました。

サステナビリティへの取り組み

スマートホームで売却1号となったHOMMA ONE

インタビューの終わり、本間さんは家づくりをした経験から持続可能な社会への取り組みについても考え方を教えてくれました。そもそもスマート化することでの節電や環境負荷の低い建材を使うなど、見える形の行動をされているそうなのですが、それ以上に印象的だったのが地域社会とのつながりについてでした。

冒頭に書いた地域分散の考え方はコロナ禍で一気に大きな転換点を迎えたと思いますが、やはり都会の生活に慣れた人が突然、生活環境を大きく変えるというのは心理的な負荷がかかります。しかし、もし、その街に従来使っていたものと同様のスマートなインフラが整っていたらどうでしょう。

現在はまだ頭の中の話、としつつ、本間さんは地域にHOMMAのプラットフォームをインストールしたコミュニティを創るアイデアを教えてくれました。この方法は既存のホームビルダーと連携して実施する考え方で、実現すれば、意外と早くにワークフロムローカルが現実のものとして目の前に現れるかもしれません。

コロナ禍によってライフスタイルに発生した大きな変化は私たちの生き方や働き方、家族との向き合い方に大きな影響を与えました。元に戻すことが難しくなった今、パラダイムの扉は大きく開きます。そこにどのような体験を用意するのか、テクノロジー・スタートアップの役割が問われることになりそうです。

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