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Interview

新・企業共創時代:変化の時代、その理由 – KDDI 中馬和彦 Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 5年後や10年後、日本における大きな経済のターニングポイントがこの「2020年にあった」と振り返る人が多くなる、そんな予感がしています。国内におけるGDPの頭打ち感や少子化、グローバル環境におけるGAFA・BATなどテック巨人の台頭や米中間摩擦。そして何より、向こう数年は抜け出せそうにないと言われる感…

中馬和彦氏・KDDI 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部長/KDDI ∞ Labo長

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載

5年後や10年後、日本における大きな経済のターニングポイントがこの「2020年にあった」と振り返る人が多くなる、そんな予感がしています。国内におけるGDPの頭打ち感や少子化、グローバル環境におけるGAFA・BATなどテック巨人の台頭や米中間摩擦。そして何より、向こう数年は抜け出せそうにないと言われる感染症拡大問題。不透明感が強まる中にあって企業や行政が熱視線を送る方法、それが「共創(オープンイノベーション)」です。

私たちKDDIでは「KDDI ∞ Labo」として、2011年にインキュベーションプログラムを発足し、その後、約10年近くに渡りこの共創・オープンイノベーションの取り組みを国内に合った形に最適化させてきました。取り組みは現在、50近くの企業ネットワークを中心とする、スタートアップたちと様々なトライアルアンドエラーを繰り広げるステージに発展しています。

大きなゴールーー。それは新たな産業構造をこれら企業と一緒になって創造することです。一方、これらの手法には正解がなく、情報も散逸しているという課題もありました。今、ノウハウの共有が必要とされているのです。

そこでこの連載では、国内で巻き起こる共創のキーとなる人物にスポットを当て、彼らがどのような視点で新たな構造を生み出そうとしているのか、その理由、チャレンジ、そして理念を紐解くこととしました。

初回となる本稿は現在、KDDIにてこの共創の仕組みを牽引する人物からのスタートとさせていただきます。(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、回答はKDDIビジネスインキュベーション推進部長 中馬和彦、文中敬称略)

変化の時代、その理由

なぜ日本企業にこれまでと異なる共創の考え方が必要になったのか、そのあたりからはじめさせてください

中馬:産業のイノベーションについて最近よく講演でもお話しているんですけど、蒸気機関の登場で第一次産業革命が起きて繊維産業の機械化が進み、それから電気が生まれ、自動化からその次にインターネットが登場してきた。これまで起きていることを振り返るとすべて「足し算の歴史」だと思ってるんですね。つまり繊維産業の後に蒸気機関や電気が出てきたといっても産業そのものはディスラプトされていない。インターネットが登場した今もまだ繊維産業はあるし、製造業だって自動車産業だって未だに健在です。

ただ、次に来ると言われている第四次、第五次の革命って、もう何か新しいものは生まれないんじゃないのかなと。つまりインターネットが第一次産業とか二次産業などの模様を変える、もしくは混ざる。農業と工業が混ざるとか、水産業がオートメーション化されるとかそういう社会になるんじゃないかと思っています。

産業革命のそれぞれの要素が「ガラガラポン」されるタイミング

中馬:はい、今までオープンイノベーションや新規事業っていうと、僕らは別に一次産業だし関係ないという人がいらっしゃいました。確かにインターネットまでは関係なかったかもしれません。別にECやらなくても生きていけたから。だけど今回は違ってるんです。天候や気候変動も激しいし、AIやドローンを活用して自動化を進めなければ一次産業も厳しくなっていく。そういったことも考えてテクノロジーに取り組まざるを得ないようになってしまった。

感染症拡大も影響した、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)へのシフトですね

中馬:すべての産業が一様に影響を大きく受ける、これが世の中で言われてるDXの本質だと思うわけです。一見すると(KDDI ∞ Laboのような活動は)通信会社がやってるインターネットっぽい話だし、製造業でもエレクトロニクスぐらいまでで素材とかやっている人たちは関係ないよねとか、一次産業は関係ないよねっていうことではもうないんです。この「関係ないと思っている人」こそが次の主役だということ、ここに大きな変化があるんです。

新しいプラットフォーマーの時代と役割

10年前、テクノロジーにおける大きなパラダイムシフトは「モバイル・インターネット」によってもたらされました。特に2007年に生まれたiPhoneはエポックメイキングなデバイスとして世界を席巻し、続くAndroidとの激しい鍔迫り合いによって私たちの生活は一変します。一方、2020年に発生した感染症拡大は、強制的に「ソーシャルディスタンス」を発生させ、移動を制限し、空間における私たちの行動変革を促すことになりました。

—-イノベーションの母とも呼ぶべき「課題」が全産業で一気に噴出したのです。巻き起こる数々の課題、これは言い換えれば事業のチャンスです。会話は、複雑な課題を解決するための共創エコシステムづくりに進みます。

イノベーションのプロセスが、前回のモバイルインターネット、スマートフォンシフトの時と比べて大きく変化しています。あの時はiPhoneが強かった

中馬:スタープロダクトで変化を起こせない時代になったことの裏返しだと思います。確かに宇宙とかはちょっと話が違うかもしれません。例えばイーロン・マスク氏のようなカリスマが一人で大きく変えるのかもしれませんが、あくまでホワイトスペースの話です。多くの場合、ここまで成熟した社会においては、宗教を含めて、また地政学的な問題も起きている中で、誰か一人のカリスマによって世界が平和になるとかはないと思うんですね。

この複雑な社会課題を複数の知恵やリソースで解決するのがプラットフォームの役割ですよね。エコシステムをどう回すか、その思想を問われています

中馬:最近のプラットフォーマー理論で集約されているのって、一言でいうと「顧客接点」だと思うんです。ユーザーベースがあるところに、知とアイデアと色んなものが集まるという構造なので、たまたま僕らが近いことをやれているのは、かなりのユーザー規模、四千万人というユーザーベースを抱えてることはまず一番大きいと思います。

例えば何かやるにあたってスタートアップを応援するにしても、一番手っ取り早いのが送客です。お客さんを紹介するというのは営業の基本ですし、特にエンタープライズだと数に限りがあるのでテレアポイントで何とかなると思うんですけど、個人はそうはいかない。やっぱりお客様を持ってるところがどこまでアクセラレートできるかがすごく大きい。

つまり、プラットフォーマーの要素の多くはそういったお客様・顧客ベースだと思うんです。その上でたまたま僕らは通信ということを媒介しながら、決済も持っています。つまり営業の要素と一緒で、お客さんにモノやサービスを提供して代金を回収する。

これまでのアプリ経済圏であれば、例えばモバイル・インターネットの中でサービスを提供し課金・回収できればよかったですが、現在、巻き起こっている、これから発生する課題は「リアル世界」なんですよね

中馬:そうなんです。例えばモノの場合だとデリバリーがどうしても必要になるので、インターネット以降、リアルと混じり始めた「ラストワンマイル」を僕らは実は持ってないっていう。

プラットフォーマーの連携が必要になりますね

中馬:全産業がインターネットで溶け込み合って、また新しいものが生まれる時代になると、プラットフォーマー同士の掛け算も必要になります。ネットは強いけどリアルの橋を持ってない人たち、逆にデリバリー事業者の方々はリアルはあっても必ずしもオンラインでの顧客ベースが不足していたり、といったケースもあるわけです。

例えば「宅配の不在票」みたいな問題が発生しても、モバイルインターネットとデリバリーのプラットフォームが有機的に連携していれば、それらを解決するソリューションが一気に垂直立ち上げできる、そんなイメージが湧きます。一方、そもそもプラットフォームとは欲張りなものじゃないですか。独占と連携は矛盾する部分もあるのでは

中馬:タイミングなのかなと。例えば数千万人までお客さんが集まるまでは囲い込まず、連携なりオープンに広げる。

恐らく、それまでに囲い込むとただのサービスになると思うんですよ。百万人のユーザーベースで、MAUが十万人とか二十万人とかのサービスで、すごくヒットしたサービスですね、で終わってしまう。一方、LINEのようにいつの間にか日本人の過半数の人がアプリ落としているってことになると、プラットフォームになってきますよね。

LINEも気がついたらスーパーアプリとして自分たちの経済圏で囲い込みのビジネスを展開しています。この規模になれば、確かに次の市場は一つ上の視点で作らないと満足できるものにならない

中馬:ここに関してはマネタイズ云々よりも普及を優先したらこうなる訳です。プラットフォームって言われるところまで認知されるまでは、やっぱり何か胆力が必要なんですよね。でもそこから次に行こう、という風になった時に初めて手を取り合えるようになるのではないでしょうか。(次回につづく)

共創で実現した「手数料無料化」、クラウドファンディングCAMPFIREはどう動いた Vol.1

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 コロナ禍にあって多数の人たちの助けとなった共創がひとつある。クラウドファンディングだ。 この未曽有の災害は小さな事業者たちを直撃した。政府による支援で一時的な補填は実現したものの、継続的な支援となると別の方法を模索しなければいつかは財源が底を尽きてしまう。 この課題に立ち向かった仕組み、それがクラウド…

CAMPFIRE代表取締役、家入一真氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載

コロナ禍にあって多数の人たちの助けとなった共創がひとつある。クラウドファンディングだ。

この未曽有の災害は小さな事業者たちを直撃した。政府による支援で一時的な補填は実現したものの、継続的な支援となると別の方法を模索しなければいつかは財源が底を尽きてしまう。

この課題に立ち向かった仕組み、それがクラウドファンディングだった。小さな支援の輪をインターネットで広げ、困っている人たちの助けとなる。2月28日から開始されたコロナウィルスサポートプログラムは幾度かの終了・再開を経て、現在までに約4,000件の事業者をサポートした。結果、支援の輪に加わった人たちは延べ77万人、金額にして89億円もの資金を困っている事業者の手元へと送ることに成功している。

現在なお進行中のこの事態に企業は何ができるのか。CAMPFIRE代表取締役の家入氏を直撃した。

どうしても必要な「手数料」という葛藤

手数料を無料にするコロナウィルスサポートプログラムは、感染症拡大が顕著になった2月末から実施しました。イベントの中止や自粛が増えてきて、アーティストやイベント事業者は悲鳴を上げていました。予約キャンセルの声も多くなって、飲食店や宿泊施設の経営に大きな支障が出始めた頃です(CAMPFIRE代表取締役、家入一真氏)。

クラウドファンディング「CAMPFIRE」を展開する家入一真氏は当時の様子をこう振り返る。年始から勃発した感染症拡大は2月末にイベントの中止または規模縮小の要請へと発展。3月にWHOがパンデミックであると公表してから約1カ月後の4月7日、49日間にも渡る全国的な緊急事態宣言へと繋がっていった。

困っている人を助けたい、けれどもこの状況でビジネスをやっていると勘違いされたくもない。一方で、自分たちにも体力の限界がある。ーー支援側に回ることのできる仕組みを持った多くのスタートアップ、事業者は同じような葛藤を抱えたのではないだろうか。

家入氏たちCAMPFIREのチームもその葛藤を抱えたひとつだった。そもそも家入氏はクラウドファンディングで手数料の高さを伝えてきた経緯がある。支援する人と支援を受ける人が直接繋がれば無駄がない。今回のサポートプログラムで彼らはまず、最初に自分たちが手にするはずの手数料12%をカットした。

問題は決済手数料だ。これは彼らにとっても持ち出しとなってしまう。結果、2月28日に開始した第一弾のサポートプログラムでは、クラウドファンディングを利用した起案者はこの決済手数料を負担しなければならなかった。平均して230万円ほどの支援金が集まったというから、5%とは言え、12万円ほどの手数料が必要になってしまう。決済インフラを維持するための必要なコストであることは理解しつつも、1円でも多く手渡したい側からするとなんとかならないかという思いも出てくる。

当時は完全に無料というわけではなく、サービス手数料の12%を免除する形でどうしても決済手数料の5%は負担をお願いしないといけなかったんです。そんな時、KDDIとして何かできることはないかというお話があって。決済手数料をKDDI側で負担してもらえれば完全に無料で直接、支援者と困ってる人が繋がることができます(CAMPFIRE、家入氏)。

取り組みの反響は予想を遥かに超えていた。2月末に開始したサポートプログラムは期間延長を発表した4月24日時点で10万人が利用、10億円を送金するまでに拡大していた。4月単月の流通総額も昨年同月の4倍となる22億円に跳ね上がった。全て、声を上げた人たちとそれを助けたいと考えた人たちの行動の結果だった。

「77万人と数字で言うとそうなんですが、これってひとつひとつのプロジェクトで困っている人たちの集まりなんですよね。飲食店や宿泊施設、一軒一軒は金額はそこまで多くないです。10万円とか30万円の悲痛な叫びの積み上げなんです」ーー家入氏はこう振り返る。

そして7月、KDDIとCAMPFIRE両社の準備が整い、サポートプログラムの手数料は完全な無料化が発表された。KDDIが決済手数料分の5%を負担することで「支援者と困った人が直接繋がる」仕組みが完成したのだ。10月9日にこのプログラムは再開が決定され、今も両社の支援活動は継続している。

いつかやってくる未来

BASEも分かりやすい成長をしたんですが、これっていつかやってくる未来だったんじゃないかなと思うんです。まさか感染症拡大という形で来るとは思っていなかったけど、日本中の飲食店さんや宿泊施設さん、お土産屋さん、作家さんと言った方々の、これまでオンライン化されてなかった物語や魅力が、一気にデジタル化されてしまった。そもそもスタートアップって構造を変えて、行動・態度変容を起こそうっていうものじゃないですか。でもやっぱり大きな出来事がないと変化は起こせないんじゃないかっていう反省もあります(CAMPFIRE、家入氏)。

CAMPFIREにとって忘れられない出来事がある。

2011年3月の東日本大震災だ。実は彼らのデビューはその直後の6月だった。海外で広がるクラウドファンディングという仕組みをいち早く日本に持ってこよう、そう考えた若かりし頃の家入氏ら数名がこのサービスを立ち上げた。震災のインパクトはあらゆるものの価値観を変えた。日本にもし寄付や互助の文化、デジタル化が始まった起点を示せというならば、間違いなくこの年が選ばれるだろう。しかし、当時のCAMPFIREはまだ無力だった。

いつか必ず互助を必要とする時代がやってくる。実際、その後に国内で発生する自然災害や地域の問題、子供たちの未来、こういった社会課題にクラウドファンディングは活躍してきた。そして今回の感染症拡大だ。家入氏はあの日から約10年の時をかけてこのプラットフォームをどう成長させたかったのか。

大きな視点では、金融包摂を実現する、ということを言い続けています。包摂、つまり包み込む。落ちこぼれさせない。実はKDDIさんから出資をいただく際、最初のアイデアって共に新しい奨学金の仕組みを作ろうというものだったんです。学生や声を上げることが難しい、そういう人たちのために何かできることはないか、と。今回はKDDIさんが大きな支援をしてくれて無料化が実現しました。けど、本当に必要なのは持続可能な仕組みの方です。一部の人がお金をばら撒いても続かないじゃないですか。

クラウドファンディングって新しい再分配の仕組みなんだと思ってるんです。これまでは社会全体が右肩上がりで出版もそう、芸能もそう、例えばヒットした楽曲があって、その垂直に吸い上げたお金を使って新たなタマゴを育成したり、周辺でサポートする方々を支えることができた。各業界でそれぞれ再分配の仕組みができていたんです。けど、少子高齢化による人口減少などで経済が小さくならざるを得ない中で、この再分配の仕組みが崩壊しはじめている。結果的に、従来の金融システムからこぼれ落ちる人がたくさんではじめているんです(CAMPFIRE、家入氏)。

家入氏はそのためにも、CAMPFIREは新しい役割を見つける必要があると語っていた。インタビューの続き、次回はKDDIと共創して渋谷を舞台に展開したクラウドファンディングの話題をお届けする。

関連リンク:MUGENLABO Magazine

コロナ後、会議はどうかわる:在宅とオフィス勤務をハイブリッドにする「ホテリング」(1/2)

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(前回からのつづき)Microsoftのイベント「Ignite2020」に関連して、会議や働き方の近未来についてACALL、⻑沼⻫寿氏のショート・インタビューをお送りしている。後半では実際のケーススタディについてだ。在宅とオフィス勤務を混在させる場合、何から手をつけたらよいのだろうか。働き方とセットともなると右往左往してしまうかもしれない。(太字の質問は全て筆者、回答は長沼氏) 在宅とオフィス勤務…

在宅とオフィス混在で、会議室はどうなる(画像提供:ACALL)

(前回からのつづき)Microsoftのイベント「Ignite2020」に関連して、会議や働き方の近未来についてACALL、⻑沼⻫寿氏のショート・インタビューをお送りしている。後半では実際のケーススタディについてだ。在宅とオフィス勤務を混在させる場合、何から手をつけたらよいのだろうか。働き方とセットともなると右往左往してしまうかもしれない。(太字の質問は全て筆者、回答は長沼氏)

在宅とオフィス勤務をハイブリッドにする場合、各社どういう課題を抱えているケースが多いですか

長沼:(自分たちのケーススタディの範囲で)生産性向上の観点で在宅勤務とオフィス勤務のバランスをどう設計すればいいのか、まだ各社手探りの状況です。オフィス出社率の計画とその可視化、改善に課題を抱えています。ワーカーとワークスペースを最適に割当てるための計画と実績をうまくマネジメントする仕組みがないため、恣意的な判断になりやすいのが現状の課題かもしれません。また、在宅勤務時の社員のケアを効果的に行う方法が確立されておらず苦心するケースがあります。

Microsoftの提唱した「リモート通勤」の必要性、という調査結果は面白いものだった。人は通勤時間に今日やるべきこと、やったことの振り返りをすることでリフレッシュし、次の仕事に備えることができる、というものだ。メンタルヘルスの問題は以前から伝えられていたが、通勤時間がなくなって働きすぎになる、という課題もある。

Teamsでは働きすぎ問題が提示されていました。この件についてどのように思われますか

長沼:商談を中心にオンライン主体のスケジュールが可能になったことで、生産性は上がっているように思えます。一方で、スケジュールを詰め込みやすくなったことで、働き過ぎの問題は顕在化しています。また、リモートワーク主体の働き方は「孤独感」を誘発しやすいため、メンタル面でのケアも考えていく必要があります。

たとえば、個人単位、チーム単位であらかじめ時間割のような予定を作成共有して、合間には必ず休憩を挟むようにプログラムし、一定の「余白」を促す仕組みや、チームメンバーがオフィスに集まる予定を自動的にシステムが理解して、次の日はオフィスへの出社をレコメンドするような仕組みがあると良いかもしれません。リモートワークとはセルフマネジメントを高めていく取り組みではありますが、組織としてエンパワーメントする仕組みの構築が早期に望まれていると思います。

いずれにせよ今は各社、新たな課題と向き合う時間になっているようだ。話を物理的なオフィスに戻そう。

話を戻します。在宅とオフィスを混在させることで、話し声問題やプライバシー、機密情報の扱いなど場所に起因する課題が増えていますよね

長沼:在宅勤務の増加によって未稼働のオフィススペースを最適化する動きがあります。具体的には、社員一人一人に割当てていた固定席をなくして予約制のフリーアドレス席や個室ブースを設けるというものです。一方、フリーアドレス型のワークスタイルはオンライン会議におけるハウリングの問題やソーシャルディスタンスを考慮した場合の最適なスペース確保が難しい課題としてあります。

新しいワークスタイルを支えるうえで、個室ブースや少人数のプライベートブースをうまく組み合わせることで、フリーアドレスのデメリットを解決していく必要があります。

またリモートワークで社員一人一人のつながりが見えづらくなっている中で、物理的なオフィスに帰属意識や仲間意識といった情緒的な価値を求める動きもあります。オンライン空間だけでは困難なカルチャー、ビジョン共有といった組織内の暗黙知を内面化していく「場づくり」の取り組みは、物理的なオフィスの方が適しているため、各社のカルチャーやビジョンをオフィスレイアウトや内装などに反映するケースが増えていくのではと思います。

長沼氏はこういった場所にまつわる課題について、新たなアイデアとなるホテリングの考え方を教えてくれた。

ホテリングについてもう少し詳しくおしえてください

長沼:ワーカーに対してワークスペースを最適に割当てる仕組みのことです。飛行機や新幹線の座席予約のようにオフィスのワークスペースをモバイル等から事前予約し、チェックインして利用するというものです。このコンセプトをワークスペース内のソーシャルディスタンス、ビデオ会議時のハウリングを防ぐための座席の割り振りなどの共通ルールを反映させる方法として、執務室、会議室などのワークスペース全体に取り入れる動きが広がっています。

固定席でもフリーアドレスでもない第3のワークスペースマネジメントのあり方として注目されています。特にリモートワークの広がりによって、ワークスペースの選択肢が広がったことで、ワークスペース利用の流動的な変化をとらえることができるホテリングのコンセプトは、新しいワークスタイルによって直面する各種の課題解決に貢献すると考えられています。

ワークスペースを改善するにあたり、どういった費用を考えなければならいのでしょうか

長沼:個室ブースを導入する費用に加えて、ワークスペースとワーカーを最適に割当てるためのルールをシステム化するための費用、またオンライン会議をストレスフリーに行うためのネットワーク環境の見直しも必要となります。執務室や会議室にはオンラインワーカーとオフラインワーカーをつなぐ接点として、大型モニターやロボットアバターを活用する費用も見ておくといいかもしれません。

これらのデバイスを組み合わせることによって、オンラインとオフラインの継ぎ目をなくすワークスペース体験が得られそうです。すでに顧客の中には複数の拠点とリモートワークを組み合わせて、オフィス分散型のワークスタイルを実現されているところがありますが、オンラインとオフライン空間の接点として会議室をうまく活用しており、各拠点の状況を集約表示する大型モニターなどの設備投資にも積極的です。

Teamsの発表でもあったが大型のSurface Hub 2Sのように、デバイスとソフトウェア、そしてオフィススペース・在宅スペースというのは地続きになる必要があるのだろう。上で働く人々の変動要素が多くなる分、下を支えるインフラが一緒になって動くと混乱が激しくなる。

今回は会議というテーマでその場所となるオフィス、働き方の変化について長沼氏の話を元に辿ってみた。感染症拡大を一過性のものと考えるのは、かつてガラケー時代にスマートフォンなんてこないと決めてかかった考え方に近いかもしれない。ここでどのような想像力を働かせ、情報収集をし、具体的にアクションするかを各社求められているように思う。

ロボットとモビリティ:移動機能こそがキラーアプリを生み出す(2/2)

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(前回からの続き) VentureBeat:病院がSpotに着目したこと以外に、何かパンデミック以降驚いた出来事はありましたか? Playter:正直、全く顧客として想定していなかった病院機関が私たちに着目したことはかなり大きな驚きがありました。私たちがアーリー・アダプタープログラムを開始した際は、オイルやガス現場や建設現場などを想定して活動していました。実際に取り組む中で、Spotは原子力発電・…

(前回からの続き)

VentureBeat:病院がSpotに着目したこと以外に、何かパンデミック以降驚いた出来事はありましたか?

Playter:正直、全く顧客として想定していなかった病院機関が私たちに着目したことはかなり大きな驚きがありました。私たちがアーリー・アダプタープログラムを開始した際は、オイルやガス現場や建設現場などを想定して活動していました。実際に取り組む中で、Spotは原子力発電・電力会社の管理のみでなく、Spotを中心とした包括的なソリューション提供ができるのではないかということです。つまり、アーリー・アダプタープログラムを通し、Spotの単的なソリューション提供ではなく、さらに絞り込んだ事業展開が可能だということを学びました。

VentureBeat:議論の中で見逃した、もしくはメディアが見逃しているのではと思うことは

Playter:モビリティーはロボットにとって重要な機能ですが、今までそうしたロボットは存在してきませんでした。もちろん、車輪付きのロボットは存在していましたが、移動可能な場所を必然的に限定していたのです。つまり、私たちが提供するようなロボット+真のモビリティーはとても革新的なものであるといえます。特にSpotのような移動型ロボットは、センサーやアームを活用しており、また、遠隔地からでもカメラを通してロボットの視覚情報を手にすることができます。

こうした機動性重視のロボットが世界に点在すれば、よりロボットの価値が高まるのは間違いありません。ある意味では、ロボットは人がこれまで入れなかった場所へ導いてくれる超能力のようなものであると言えるでしょう。今まで行きにくいと感じていた場所、危険とされていた場所、3日移動にかかるとされている場所であっても、ロボットであれば瞬時に移動することが可能です。モビリティーがロボットの付加価値として載ることで、私たちが享受できる価値が増えることは間違いなく、これはあらゆる産業で共通していることだと思います。

VentureBeat:個人的には業界は「静的」なロボットに焦点を当て続けていたと感じています。これは、モバイル型が長い期間実現できていなかったからで、例えば工場にロボットアームがあれば実現可能なことが多く増えます。仮にモビリティーが備わったとしても、価格制を考慮するとそれがあらゆるシーンで利用されることは想定しずらい実情がありました。ただその問題が、徐々に解消され始めていると感じており、特にSpotはその最前線に立っていると思います。ロボットの一般化を進めるうえで今後、どういった分野を中心に投資を進めていくことを考えているのでしょうか?

Playter:おっしゃる通りで、私たちはSpotの最大価値を引き出せるアプリケーションを見つけていくことが求められていると考えています。プラットフォームにフォーカスし、できるだけ数多くの利用者にSpotを利用してもらって、実用性を確かめていくのか、それとも十分な価値を引き出せると考える業界に投資して挑戦するのか、私たちは常に議論を続けています。

ただ、実際のところ私たちは両者共に選択する必要があると感じています。Spotを成功に導くためには、数千台以上の規模で運用することが求められますが、それには特定業界に絞った形でのスケーリングが必要です。しかし、未だ私たちが想定していないようなユースケースが生まれる可能性も大いにあります。そのため、プラットフォームを開放することも重要な施策であると考えるのです。

VentureBeat:なるほど、バランスを取る必要がありそうですね。ただ一つ確かなのは、できるだけ多くの生産を維持することなのだと思います。そして、最初からモジュール化をすることであらゆる可能性を考慮した対策が求められていますね

Playter:その通りです。

VentureBeat:ありがとうございました

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

ロボットとモビリティ:パンデミックで遠隔医療に向かったSpot(1/2)

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今週(9月第3週)私たちは、Boston DynamicsのCEOであるRobert Playter氏のインタビュー記事を掲載した(編集部注:日本語翻訳版はこちらから)。そこでは彼がCEOとして初めて過ごした1年間や、約30年が経って同社の収益目標はどう変わったか(Boston Dynamicsは1992年設立)や、「Spot」、「Pick」、「Handle」、「Atlas」についてや、次のロボッ…

春に遠隔医療現場で活躍したSpot(Image Credit : Boston Dynamics)

今週(9月第3週)私たちは、Boston DynamicsのCEOであるRobert Playter氏のインタビュー記事を掲載した(編集部注:日本語翻訳版はこちらから)。そこでは彼がCEOとして初めて過ごした1年間や、約30年が経って同社の収益目標はどう変わったか(Boston Dynamicsは1992年設立)や、「Spot」、「Pick」、「Handle」、「Atlas」についてや、次のロボットも含め同社の幅広いロードマップについて話を聞いた。

インタビューの直前、Boston Dynamicsは四足歩行ロボット「Spot」を7万4,500ドルで発売することを公表した。9月第2週、同社は同じ小売価格でSpotの販売をカナダ、EU、イギリスに拡大した。Playter氏は当初の販売数を明かし、Spotには来年ロボット部門ができると断言した。同社の物流ロボットの計画について語り合った後、話は2020年に移った。Boston Dynamicsのロボットにおいて最も重要な特徴とは何か。そのインタビューの模様を紹介する。

VentureBeat: 日々の業務にパンデミックはどんな影響を与えていますか?

Playter: 思っていたよりも早く順応できたと思います。しかも、建設的に。マシーンの性質上、どうしてもそばにいなければならない場面もあるので、100%の生産性はありえません。しかしSpotに関しては、パンデミックが実際に発生した時点ですでに製造を準備し、稼働させていたのは良かったですし、私たちはすべての従業員を在宅勤務にしました。

さらに、エンジニアの大部分がロボットを持ち帰り、基本的には自宅で作業を続けています。これは実に異例のことでした。現時点では、いくつかの物流ロボットに関してはそうすることができません。従って開発が遅れている部分もあるのは確かです。私たちはシミュレーションの作業量を増やしました。どうしてもロボットを使って実験を行う必要のある社員のみ、制限を設けて管理を行った上で施設へのアクセスを許可しました。

全体的に、従業員がリモートでも実に生産的になれるということを心から嬉しく思っています。長い目で見れば失うものもあると思います。統制のとれる方法を見つけ、再び一緒に時を過ごせるようになることを願っています。また、ロボットのそばにいるというだけでも、本質的に刺激的でやる気が起きるものです。思うにエネルギーレベルを高く保つためには、ロボットのそばにいる必要があります。しかし、実際には驚くほどうまく行っていると思っています。

VentureBeat: 企業としてフォーカスするべきものやロードマップ、大局的な使命について影響はありますか?

Playter: これらの製品を開発・発表することに関しては、特に変化はないと思っています。しいて言えば市場の緊迫感でしょうか。3月と4月の売上は落ちませんでしたが、伸びもしませんでした。多少不振ではありましたが、それは顧客たちも外出を控えたせいだと考えています。誰もが世の中で起こっていることに順応していたのです。

現在、私たちは順応を早め、急速に開発を行っています。Dr. Spotの趣旨は遠隔医療ロボットです。「このパンデミックにダイレクトに対処できることは何だろう?まさにロボットが関与すべき事態だろうと。突如として誰かと一緒にいることが危険となってしまった今、役立つ応用方法はないだろうか?」と考えた結果生まれたものです。私たちはリモート学習のようなものを検討しました。ロボットをリモートで実験したりプログラムしたりできれば面白いかもしれませんが、それは追求しないことに決めました。

主に患者の摂取量をモニタリングするためにロボットを使用することについて、いくつかのインバウンドの問い合わせがありました。医療関係者が患者から離れた場所にいることを可能にし、保護具を交換する必要がないため保護具不足を解消できます。患者はウイルスを持っているかもしれない患者を診察した人と接触せずに済むので安心感を得られます。

リモートでバイタルサインセンシングを行うのは、これまでは難しい課題でした。リモートでバイタルサイン測定をするためのピースをすべてつなぎ合わせた人は誰もいませんでした。そこで、MITおよびブリガム・アンド・ウィメンズ病院と協力して迅速に開発を進めました。Spotがプラットフォームであり、最初から新しいセンサーや新しいペイロードを扱えるように設計されているため、非常に急速に進めることができました。そして実用的なプロトタイプを作成することができ、すでにテストが完了して今では複数の顧客がいます。

しかし、最終的に巨大な市場になることはないでしょう。これがロボットのキラーアプリだとは思いません。

急いで調査を行い、消毒ロボットなどいくつかの研究も行いました。しかし、最終的にはSpotの普及を支える直接的なアプリケーションの1つにはならないだろうと思います。当初から重要だと思っていた通り、それは複雑な工業用地、公益事業、石油・ガス用地、建設用地、製造用地の管理などではないでしょうか。顧客を呼び戻すことができるのは、そういったものだと思います。

これらは急に必要不可欠なサービスとなったので、いささか緊迫感があると思います。電気をつけ続ける。製造ラインを稼働させ続ける。倉庫を稼働させ続ける。その上で人々がお互いに過度に接触することを避けるためには、ロボット工学の役割が少し重要性を増したと思います。(次につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Boston Dynamicsとロボット近未来:なんでもできる家庭用ロボの可能性(4/4)

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※編集部注:本稿はVentureBeat編集部によるBoston Dynamicsトップ・インタビューのつづき(前回はこちらから) 次のロボット Boston Dynamicsの当面の焦点は、Spot、Pick、Handleの販売拡大だ。しかし、長期的にはさらに多くのロボットを投入する余地がある。 「私たちの野望は、軽量で移動性の高い操縦機体をいかにして開発するか、という点において何十年にもわたっ…

Image Credit : Boston Dynamics

※編集部注:本稿はVentureBeat編集部によるBoston Dynamicsトップ・インタビューのつづき(前回はこちらから

次のロボット

Boston Dynamicsの当面の焦点は、Spot、Pick、Handleの販売拡大だ。しかし、長期的にはさらに多くのロボットを投入する余地がある。

「私たちの野望は、軽量で移動性の高い操縦機体をいかにして開発するか、という点において何十年にもわたって研究開発に取り組んできた経験を異なる産業に応用することです。Spotを成功した製品として完全に定着させた後は、チームの一部を次の製品の開発に進めることができると考えています。他にも特注のロボットを作ることができる可能性のあるアプリケーションはたくさんあります。このようなロボットを何台も作ってみたいと思っています」(Playter氏)。

Spotも組み立て品と言えるかもしれないが、これにも限界がある。だからこそHandleは存在している。Playter氏は、Boston Dynamics は最終的には様々な規格でより多くのロボットを作る必要があると考えている。

「例えば建設業界では、大きくて重いものを固定しなければならないことがたくさんあります。二人での持ち上げ作業が多く、ロボットが荷重の一部を運ぶのを手伝ったり、そのような作業をすれば、一人での持ち上げ作業で済んでしまうかもしれません。

これらは限られたスペースです。大きくて重いものもあります。乾式壁かもしれませんし、HVAC機器かもしれませんし、ダクトかもしれません。一般的に固定された位置にあるロボットは大きくて重いので、今の環境ではロボット工学を使うことはできません。しかし、建設現場で移動できるほど軽量でありながら、乾式壁の一部を拾い上げて、誰かがネジを締めたり、全体の工程を管理したりしている間に、それを支えることができるようなロボットを作ることができたらどうでしょうか?それは私が思い描いているシーンですが、Spotはそれをしないでしょうし、Handleもそうではありません。もっと大きなロボットが必要なのです」(Playter氏)。

家の中のロボット

6月にはRaibert氏が 「いつか 」自宅用のSpotを売りたいと明かしている。そこで新CEOにその考え方を聞いた。

「私たちがビジネス向けのアプリケーションから始めたのは、個人の消費者にとってロボットはまだ高価なモノだと思っていたからです。Spotが持っている機能を持つロボットを自律型掃除機のような価格で作ることはできません。消費者が考える価格を超える必要があることは明らかで、だから法人向けから開始した、というわけです。一方、ビジネスにおけるロボットの価値というのは明確で、投資収益率の観点からも理にかなうものなのです」(Playter氏)。

大きな課題は製造、サービス、サポートを含めた規模のロボットをいかにして確実に構築するかということだったそうだ。そのためには、いかにコストを下げ続けるかを考えなければならない。

「最終的に家庭用のロボットを持つというビジョンはまだ強く持っています。なぜなら、コストについて言えば数千ドル単位の個人消費者向けのものと同じでなければならないと思うからです。そして今は明らかに数万ドルの規模になっています。機械の能力や生産、サポートの面で私たちが学ぶことはすべて、最終的には消費者レベルで何かをするための基盤を提供しなければならないのです」(Playter氏)。

価格と価値の提案

どのような消費者向け製品でもそうだが、価格が鍵を握っている。Playter氏に家庭用ロボットの目標価格を聞いてみた。

「まあ、確かに1万ドル以下です。1,000ドルのロボット掃除機を見てみましょう。しかし、その価格帯に到達するのは簡単なことではありません。Spotを1,000ドルにするのは難しいかもしれませんが、数千ドルなら十分な規模で実現可能かもしれません」(Playter氏)。

人間を楽しませることから、人間を助けることまで「何でもアリ」の価値提案をしてくれるロボットというのは、依然として未解決の問題である。

「正直、その可能性についてはまだわかりませんし、そこにあまり集中していません。まだ先のことだと思います。私は今持っているロボットの産業用アプリケーションと、物流用に作っている他のロボットに集中しています。ただ、私たちの一部ではこのような変革的なロボットを作りたいとも考えています。人々が自宅に置きたいと思うような安価なバージョンを作ることを想像するのは素晴らしいビジョンだと思いますが、正直なところ、それは私たちにとっては地平線を少し超えたところにあるのです」(Playter氏)。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Boston Dynamicsとロボット近未来:「バク宙」できるAtlas(アトラス)は未来のロボット(3/4)

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※編集部注:本稿はVentureBeat編集部によるBoston Dynamicsトップ・インタビューのつづき(前回はこちらから) Atlas(アトラス)はやはり未来のロボット やはり最も話題になったロボットはBoston DynamicsのAtlasだろう。彼らはアイデアを試すという役割を果たしている。ここで何かの技術が実証されると、既存のロボットに搭載されたり、全く別のロボットに生まれ変わった…

Image Credit: Boston Dynamics

※編集部注:本稿はVentureBeat編集部によるBoston Dynamicsトップ・インタビューのつづき(前回はこちらから

Atlas(アトラス)はやはり未来のロボット

やはり最も話題になったロボットはBoston DynamicsのAtlasだろう。彼らはアイデアを試すという役割を果たしている。ここで何かの技術が実証されると、既存のロボットに搭載されたり、全く別のロボットに生まれ変わったりする。

Atlasは2本の足を持つ人型ロボットで、一方のHandleには車輪があり、この上半身の動きとバランスを取る技術はAtlasが開発した機能を反映させたものになる。このチームは、Atlasのすべての油圧装置のために、独自のバルブと高性能制御システムも開発している。このノウハウは現在市販されているものの性能を上回る、新たなHandle用の空気圧式グリッパーの開発に使われたりしている。

一方、Playter氏はこのAtlas「そのもの」の商業化について現状をこう語る。

「Atlasまだ商業化を想定していません。ソフトウェアとハードウェアの設計の両方において、最先端の技術を進歩させる意欲的なロボットであり続けています。なのでAtlasはまだ数台しかないのです。研究開発のモチベーションを高めるためにこのロボットを使っており、人々は明らかにヒューマノイドに注目していますから、それが面白さにつながっているのだと思います。Atlasは複雑なロボットですし、従来の技術にはない、あらゆる自由度に対応する技術を開発しなければなりません」(Playter氏)。

Atlasのチームは最近、ビヘイビアソフトウェアのオーサリングをより迅速に実施するための作業をしたらしい。これによって今まで6カ月かかっていたコーディングが、高度な最適化ツールのおかげで数日でできるようになったそうだ。

「これらのツールはすべてのマシンで利用できるようになります。なので開発のモチベーションを高めるためにAtlasを利用しています。しかしアトラスは高価で複雑すぎてすぐの商品化は無理でしょうね」(Playter氏)。

分担されたチーム

Boston Dynamicsの内部では多くのことが実施されている。では、どこに力を入れているのだろうか。Playter氏は、チームの規模という観点からこう回答している。

「Spotチームは100~110人程度。Handleチームは約7割、Atlasチームは約2割の規模でやっています。Atlasは実は小さな研究チームであり、興味深い行動やパフォーマンスを生み出すために必要なクリティカルマスのようなものです。Handleは製品の発売準備をしているので急速に成長しています。Spotと似たような軌跡をたどっていますね」(Playter氏)。

Boston Dynamicsはロボットの試作に20~30人程度の人員を必要とする。Playter氏はHandleチームが向こう2年程度でSpotチームと同じくらいの規模に 成長すると見ているようだ。その段階で「収益性を達成できるかどうかは、その製品がスケールアップできるかどうかにかかっている」とPlayter氏は言う。

「そこに大きなチャンスがあり、そのロボットの販売の成長にもつながると思います。私は、そこに到達するまでに2つの製品を成功させることができると期待しています。うまくいけば、ご質問のあった3つ目の製品を作り始めることができるでしょう」(Playter氏)。

(次につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

ラクスルはペライチをどう評価したーーノーコードとスモールビジネス、その課題(2/2)

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(前回からのつづき)サポーター制度の中心となる「ペラナビ」はユニークで、パッと見た感じだとビザスクやココナラのようなクラウドコンサルプラットフォームのような形式を取っていて、相談を受ける側は直接、相談相手に掲載されている費用を払ってレクチャーを受けることができる。 サイトのコンサルから一見すると関係なさそうなZoom講座まで様々で、基本的に彼らが対象するユーザーのお困りごとを支援している内容であれ…

ペラナビはスモールビジネスの課題を教え合う互助の仕組み

(前回からのつづき)サポーター制度の中心となる「ペラナビ」はユニークで、パッと見た感じだとビザスクやココナラのようなクラウドコンサルプラットフォームのような形式を取っていて、相談を受ける側は直接、相談相手に掲載されている費用を払ってレクチャーを受けることができる。

サイトのコンサルから一見すると関係なさそうなZoom講座まで様々で、基本的に彼らが対象するユーザーのお困りごとを支援している内容であればOKで、現時点でペライチはここで手数料などの徴収はしていない。

中小企業で360万、彼らが対象にする個人事業なども含めると桁がまた一つ上がる。こういった方々の細かい課題解決は確かにコミュニティモデルでなければ対応は難しい。

ノーコードであっても操作というよりデジタルマーケティングに対する知識や考え方、こういったサポートがなければ生きた施策にならない。この点でもうひとつ課題になるのが「予算」だろう。小さな飲食店であればこれを使うことでいくら儲かるのか、そのことを考えるはずだ。

中小企業ではマーケティングなどの知識・経験も乏しく、予算をうまく立てられないケースもあると思います。費用対効果をどう考えるか、また、用途によってバラバラの中、どのようにして価格を決めましたか

橋田:まずはウェブサイトを作るという点であれば、個人・中小の価格でも払っていただきやすいような価格感(1000〜2000円程度)と考えていました。その後、機能の増加に伴い用途がバラバラの中でも、基本的なウェブサイトを作って集客するなどのマーケティング行動は最大公約数的な共通項があるとは思っています。

これまではノーコードでウェブサイトを作れる、という価値提供が主だったと想像しています。価格の件にも関係していきますが、この先、ペライチはどのような提供価値を考え、ノーコードサービスのポジションをどこに置こうと考えていますか

橋田:ペライチでは作れるのその先へ、というビジョンを掲げておりその先、具体的にはユーザーさんに成果を出していただく部分、例えば決済や申し込み、予約といった箇所に力を入れていこうと思っています。

例えば同じくノーコードでアプリを作ることができるYappliは創業当初、価格を安く抑えて多くの企業が利用できる戦略を持っていた。しかし、実態は企業がプラットフォームを使って自由自在にアプリを作れる、とはならず、価格を大きく引き揚げてサポートを手厚くする戦略に切り替えて大躍進を果たしている。

橋田氏の話では今後、10名以内のスモールビジネス事業者という基本的なユーザー像は変えないものの、上位プランとなる価格設定や、前述の決済などのオプションで次の展開を作っていくということだった。

確かに数年前と違って競合も多い分野だが、ペライチの展開を見ていると、とにかくスモールビジネスの事業者にターゲットを絞り込んで、ユーザーサポートに正面から取り組んでいる様子がわかる。ノーコードの部分では使いやすさ等ももちろんあるが、それ以上にこれらユーザーの経営課題にどこまで寄り添えるか、そこが拡大の鍵になりそうだ。

ラクスルはペライチをどう評価したーーノーコードとスモールビジネス、その課題(1/2)

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コロナ禍によってスモールビジネス、特に飲食や観光といった分野が大きな転換点を迎えている。 日本の中小企業は 約360万社と言われるのだが、 感染症拡大の問題で大きく動いたのがデジタル化の波だ。コマースプラットフォーム「BASE」では、GMVが前年同四半期比で196%増(2020年第2四半期)と大きく跳ね上がるなど、急な売上の落ち込みをECでカバーしようとした結果は如実に数字として現れるようになった…

ペライチチームとラクスル取締役CFO、永見世央氏(上段中央)・写真提供:ペライチ

コロナ禍によってスモールビジネス、特に飲食や観光といった分野が大きな転換点を迎えている。

日本の中小企業は 約360万社と言われるのだが、 感染症拡大の問題で大きく動いたのがデジタル化の波だ。コマースプラットフォーム「BASE」では、GMVが前年同四半期比で196%増(2020年第2四半期)と大きく跳ね上がるなど、急な売上の落ち込みをECでカバーしようとした結果は如実に数字として現れるようになった。

一気に動き始めたデジタル化の波だが、10年前であればもしかしたらここまでスピーディーにコトは進まなかったかもしれない。なぜか。開発が必要だったからだ。ホームページひとつ作るにも要件を決め、受託できる開発会社に依頼し、馬鹿高い費用に怯えながら仕上がりを待つ、なんてことは日常茶飯事だった。

この状況をゆっくりと、しかし確実に変えていった概念がある。それがノーコードだ。コロナ禍における業務効率化、リモート環境へのスムーズな移行の救世主として数多くのサービスが今、注目を浴びることになった。本誌でも特集として話題をまとめている。

ペライチも国内ノーコードサービスのひとつだ。極めて小規模の事業者が開発なしに手軽にホームページを簡単に持てる体験が支持され、2015年のリリース以降、40代から50代のユーザーを中心に中小企業や個人事業主が利用しており、現時点で会員登録数は26万件となっている。そして先月10日にはラクスルとの資本業務提携を発表し、49%の株式と引き換えとする4億9,000万円の増資を公表した。ペライチによれば無事、このディールは成立したそうだ。

ラクスルはペライチをどう評価したのか。同社代表取締役の橋田一秀氏にその裏側を聞いた。(太字の質問は全て筆者、回答は橋田氏)

創業から約6年ほど、中小企業向けのウェブサービス(ノーコード系)は増えました。中でもペライチが中小企業に支持されて、またラクスルが他のサービスと違って御社を評価した点はどこにありますか

橋田:やはりページ公開までの手数が早いこととサポーター制度などで、ユーザーさんが躓くところを一緒に解消してきたからではないでしょうか?ラクスルさんの評価でいうと、具体的なユーザー像が近かったことや、ペライチに足りないマーケティングやプロダクトの両面が見えていて、そこを補完できるチーム体制のイメージがあったということだと思います。

ラクスルの永見世央氏と橋田氏は数年前に出会い、ラクスルの得意とするローカルビジネスにおける「印刷」というリアルなマーケティング手法と、ペライチが目指すウェブ・デジタルマーケティングはターゲット層が近く、ただ、山の登り方が異なるという認識を持っていたそうだ。当時から出資の話はあったものの、ラクスルは上場したばかりということもあり、企業としては出資できなかったが、変わりに永見氏が個人としてエンジェル投資することになった。これが一昨年の話だ。

具体的なシナジーに向けての取り組みについてはまだ検討中ということだったが、例えばユーザー基盤を共通させることで、双方の顧客に適切なアナログ・デジタル両面のマーケティング施策を提案することができるようになる。

可能性が広がる一方、彼らがターゲットとする小さな事業者は常にリテラシの課題を抱える。橋田氏は現状としてまだまだ問題がなくなる様子はないものの、解決方法としてコミュニティを活用する方向性を考えているという。

特に非情報系の中小企業が問題とするリテラシ問題は、この10年でスマートフォンの進化と浸透により改善されたケースをよく聞くようになりました。ペライチが提供する中小企業の現場でこの問題はどのように乗り越えようとしていますか

橋田:リテラシの問題はいつでもついて回りますが、ペライチではサポーター制度で解決しています。これはペライチに詳しい方にサポーターになって頂き、直接対面で支援する方法です。現在26万人の方々にご利用いただいていますが、これをマス層に広げようとすると、チャットやコールなどのサポートでは不足します。ひとり一人に向き合おうとすると、SEOどうしたらよいかといった一般的なものならまだしも、渋谷で10人ほどの飲食店をやっているけどどうしたらよいか、というような個別案件の相談はやはり難しいです。

(次につづく)

はじまる「シン・副業」:副業収入以上に重要なもの(4/5・後半)

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報酬よりも大事なものとは (前回からのつづき)キャリア形成における副業の役割はどう考えますか 岩崎:育成観点では、流行りの言葉で言うなら、「会社が育成してくれる」というメンバーシップ型の時代から、個人の専門性が問われるジョブ型の時代に変わる過渡期において、副業をはじめとした「仕事の実践」が成長・育成の手段になることは必然だと考えています。 今までは、研修やジョブローテーションがその役割を担っていま…

報酬よりも大事なものとは

(前回からのつづき)キャリア形成における副業の役割はどう考えますか

岩崎:育成観点では、流行りの言葉で言うなら、「会社が育成してくれる」というメンバーシップ型の時代から、個人の専門性が問われるジョブ型の時代に変わる過渡期において、副業をはじめとした「仕事の実践」が成長・育成の手段になることは必然だと考えています。

今までは、研修やジョブローテーションがその役割を担っていました。しかし、企業は即戦力を、求職者は実践経験が欲しいとなると、どうにも足りない。YOUTRUSTも、副業を探している人には、「1ランクアップの役割 or 斜めの職種/スキル」にチャレンジしてみること、企業側にもそのように少し足りない部分がありそうな人も積極的に声をかけてみるように勧めています。

実戦投入による成長というのはOJTの比ではないですからね

岩崎:ちょっと背伸びすることで、その分本気度も高まりますし、きちんと成果が出ればプロフィールに書ける実績になるし、自信にもつながる。また、企業としても自社でかけられない人材育成のコストを削減できるので、メリットは大いにあります。また新しい経験・スキルをもつ副業者がチームに加わることで、既存チーム(≒社員)への育成効果も期待できます。弊社でも新しいサービスの開発に当たって、エンジニアが新言語を学ぶ動機付けになったり、営業トレーニングの実践を行って磨き込みがなされていたりします。

すごい副業、面白い企画ですよね。これはなぜ始まったのですか?

岩崎:背景は、至ってシンプルで「より多くの人に『副業』を知ってほしい」ということがきっかけです。8月に ユーザー向けに調査 をしたところ、副業未経験者が副業をしない理由の第1位が「副業の探し方が分からない」というものでした。本業での禁止や税金面での不安を上回る結果だったので驚きました。

だったら、皆がやってみたくなる副業を募集すれば、話題性も相まってまだ副業をしたことがない人や、探し方が分からないという人にも届くのではないかという思いでこの企画を始めたんです。

また、せっかくやるのであれば募集する方にもメリットがあるように、という観点で、各企画毎に詳細をご本人とすり合わせて決めています。正社員を見据えての副業の時もあれば、今回の南場さん企画のように、本人の「今必要としていること」に合わせた副業の時もあります。ちなみに「すごい副業」の企画も、YOUTRUSTの副業社員がメインで進めています。

副業を通じて経験するとキャリアに繋がるケース:画像提供:YOUTRUST

これまで副業はどちらかというと内職的なおこづかい稼ぎのイメージが強かったですが、向こう10年でこの領域はどのようなポジション変化を起こすとお考えですか

岩崎:収入獲得以上に、自分のキャリアを形作る上で欠かせない経験になります。

10年後には、「本業/副業」という概念はなくなり、雇用ステータスに縛られないキャリア形成が進んでいくと思います。正社員も業務委託もアルバイトも契約社員も雇用ステータスは自分の好きなように選べるし、正直あまり重要なことではなくなります。緩やかにつながったコミュニティのなかで、プロジェクトベースで人が集まったり、解散したりする、そんな未来になると確信しています。

履歴書や面接を必要とする「転職活動」はなくなり、代わりに必要になるのが「信頼」と「スキル」です。信頼とスキルを積んでおかないと、噂はすぐ広まり、声がかからなくなります。

今現在でも、ベースラインが満たされている優秀な人は、副業やフリーランスで数社手伝った後、その中で1番エキサイティングな職場を次の職場に選ぶという転職活動をしている方が増えてきているのを実感します。この動きが(キャリアを考える人にとっては)当たり前になっている未来が早く来るのを、期待していますし、その波を先導するサービスでありたいです。

ありがとうございました。

ーー筆者も長らくフリーランスという働き方を続け、媒体の立ち上げをきっかけに、PR TIMESという組織と、個人を中心としたユニットの両方を行ったり来たりするようになった。ここで重要なのはやはりスキルだ。技術があるからこそ依頼があるし、プロジェクトの中にポジションを見つけることができる。

一方、組織として動く場合にはカルチャーへの参加も重要なポイントになる。

副業には必ず「本業」がある。特に企業で働く人は、その企業のルール、カルチャーに促した行動を求められるはずだ。一方、同じ「ムラの中」で過ごす時間が長くなると、どうしてもスキルの幅が広がらなくなる危険性が伴う。副業を育成のチャンスと捉えるならば、この「スキル」にフォーカスした活動を考えるのがよいと思う。岩崎氏の話を聞きながらそう改めて思った。

次回は副業をきっかけに事業を始めた人のストーリーをお届けする。(次につづく)