女性医療のvivola、不妊治療の実態調査を実施【MUGENLABO Café・推しスタ】

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

子宮・卵巣の疾患を持つ患者は、不妊治療時に医師から十分な説明を受けられていないかもしれない。そのような調査結果が公表されました。

この調査を実施したのは、女性医療とAIを軸にサービスを展開するvivola。2月に実施したアンケートでは、子宮・卵巣の疾患にかかったことがあり、かつ不妊治療を実施した方50名を対象に「子宮・卵巣の疾患における不妊治療の実態調査」を実施しました。

調査の結果、子宮・卵巣に関する疾患では「子宮内膜症」が最多の34%を占め、治療方法は「手術」が72%と最多だったそうです。しかしその一方、不妊治療を行う前の子宮・卵巣疾患治療において、医師から「妊娠のしやすさ」への十分な説明があったと回答した割合は約50%にとどまっています。

この調査は子宮内膜症など疾患を抱える患者の不妊治療に焦点を当てたものです。この件について調査を実施したvivola代表取締役CEOの角田夕香里さんは、婦人科と生殖医療という専門性の異なる診療科の連携不足から、適切な治療が受けられていない可能性を指摘していました。

子宮・卵巣の疾患における不妊治療の実態調査

アンケートは子宮に疾患を持っている人たちが不妊治療しているときに「正しい治療」ができているのかを対象にしたものです。なぜかというと、内膜症が今、若い女性に増えていて、そのまま放置しておくと不妊になりやすい病気にまで進行することがあるのです。でも、内膜症で受診した婦人科の先生と生殖の先生が別々である事が多いのです。(角田氏)

例えば内膜症を診ている先生は妊娠性について深く検討せず、卵巣を切るという処置を勧めるケースもあります。しかし、これでは妊娠性は悪化してしまうため、疾患の診断だけでなく、患者のライフステージも考慮した治療選択が求められるとのことです。

実体験を元に、AIとビッグデータで不妊治療に立ち向かう

今回、調査にあたった代表取締役CEOの角田さんもまた、自身の不妊治療患者としての経験から、患者視点での課題解決を目指した消費者向けのアプリ開発から事業をスタートしました。この治療データ分析アプリ「cocoromi」で集まったデータをきっかけに、現在は医療機関向けに、不妊治療の個別化医療解析ツール「vivola-Analytics」を主力サービスとして提供しています。

vivola-Analyticsは、患者ごとに最適な治療プロトコルを解析できるツールです。現在、医療の現場では徐々にビッグデータとそれを解析するためのAI活用が進んでいますが、vivolaが挑戦する不妊治療の現場でも同様で、角田さんによると「不妊治療は採卵から培養・移植まで、1,000項目規模の押さえておくべきデータ項目がある」そうです。

つまり、これらのデータを分析することで、妊娠率向上のための因子を特定できるようになるというわけです。しかし、不妊治療を含む生殖医療の多くは自費診療のため、まだまだ医療機関におけるこれらデータ管理の重要性は十分とは言えない状況だそうです。現在さまざまな現場で活用が進むAI分析について角田さんは次のように現状を語ります。

不妊治療におけるAIの活用はもう少し先だと思っていて、まずはデータを見える化する段階です。妊娠率を予測するのはもちろんですが、それに至るまでも中間のアウトカムが沢山あるので、何を予測すべきかも議論しなくてはいけないです。

最終的には、ビッグデータとAIによって不妊治療が進む世界を描きたいと思っていますが、まだまだ臨床の現場は、普段の治療データを適切に記録、管理することが難しい「フェーズゼロ」みたいな段階なのです。

こういう解析をしたいという医療機関の希望を聞いて我々も解析するために、いざデータをもらうと「取っていませんでした」となることも少なくないんです。(角田氏)

こうした課題に対して、同社では医療機関向けの情報提供サイト「vivola-Insights」や、地域の産科医療機関と不妊治療専門クリニックをつなぐ「vivola KARTE」なども展開し、不妊治療に関する情報流通・分析がスムーズに進む、そうしたインフラを整備しているというお話でした。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する