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出資した地元VC2人に聞いた、カード型チャットツール「postalk」の可能性【ゲスト寄稿】

本稿は、posttalk のオウンドメディア「postalk park」に掲載予定のコンテンツを、BRIDGE が独自に編集したものです。写真はいずれも、越智達也氏による撮影。記事構成の都合上、編集部で一部トリミングしました。 外部の方をお招きして、お話を伺う postalk park のインタビューシリーズ、今回は、ドーガン・ベータ取締役パートナー渡辺麗斗さんと、FGN ABBALab 室井信人…

本稿は、posttalk のオウンドメディア「postalk park」に掲載予定のコンテンツを、BRIDGE が独自に編集したものです。写真はいずれも、越智達也氏による撮影。記事構成の都合上、編集部で一部トリミングしました。

工事中の「Fukuoka Growth Next(旧大名小学校)」前で。
左から:FGN ABBALab ファンド担当の室井信人氏、postalk 代表取締役 川野洋平氏、ドーガン・ベータ取締役パートナー渡辺麗斗氏

外部の方をお招きして、お話を伺う postalk park のインタビューシリーズ、今回は、ドーガン・ベータ取締役パートナー渡辺麗斗さんと、FGN ABBALab 室井信人さんです。

postalk は先ごろ、ドーガン・ベータ、FGN ABBALab から合計2,250万円のご出資をいただきました。この数カ月、postalk のリニューアルや新たな機能開発に取り組んできた弊社ですが、投資家視点で postalk はどのように見えているのでしょうか。

渡辺さんと室井さんは、年齢が近いということもあり、普段から親しい間柄です。いろいろなアドバイスをいただくのですが、親しい分、なかなか本音で語り合うという機会はありませんでした。

今回は、自然と本音でお互いのことについて話せた貴重な鼎談になりました。一緒に頑張っていく仲間として心強いです。ぜひ、よかったら読んでみてください。


postalk への投資に踏み切ろうと思った理由

川野:

後々いろんな方向に話を広げていきたいのですが、まずは、なぜ postalk に出資を決めてくれたのかというところからお聞きしましょう。

室井

postalk のアナログ版というか原形というか、模造紙に付箋を貼ってアイデアを昇華させていく手法って、ずっと昔からありますよね。postalk はそれをクラウド上でやるわけだから、当然今の時代の流れとは一致しているわけで、こういった知的生産の取り組みが消えることはないだろうと思いました。

つまり、postalk にはプロダクトとしての可能性があると思った。

あとは、川野くんが「THE 起業家」という感じで、イズムと安心感があったかな。建築やアート、テックまで幅広く研究していて、広い範囲の特定のものに対しての探究心がある人だなと思っていて、「この人は絶対ものづくりができる人だな」という確信めいたものもありました。

美学を持った起業家には安心して投資ができると思うんですよ。

川野

そんな風に見てもらっていたなんてとてもうれしい。

渡辺

うちの社内は、議論になりましたよ。「postalk、本当に大丈夫なの?」って(笑)。

僕自身は、川野さんから社会に対してどういう活動や貢献をしていきたいのかっていう展望についてずっと聞いていたし、その点は問題ないかなとは思っていました。ただやっぱり投資をするとなると良い会社に成長できそうかという点はシビアに見ていて。

ちゃんと利益を出して、自走できる会社になるか、売り上げを立てていけるのかと。

室井さんが言う経営者のマインドも魅力の1つだったけど、やっぱりプロダクトの魅力が大きいのが決め手でした。実際、社内でも postalk を使っていたのでサービスの良さは重々わかっていたんですよね。

だったらこれからの成長は自分たちも株主として関わりながら手伝っていけばいいじゃんと。

FGN ABBALab ファンド担当の室井信人氏

資金調達が必要だと感じたきっかけ

渡辺

逆に、これまで postalk は長年出資を受けない方向で来たような印象があるけど、どうして今回は資金調達に踏み切ったんですか?

川野

僕は以前に会社を1度売却した経験があって、それはそれで良い判断だったとは思っているけど、社会に与える影響についてずっと考えてきたんですよ。売却から5年経って、「本当に正しい経営って何だろう」「ユーザにとって何か良い功績を残せたのか」「社会に影響を与えられたのか」みたいなことを悶々と。

それで、以前は投資を受ける必要なんてないと思っていたけど、postalk のリニューアルをしたあたりから少しずつ変わってきたんだと思う。postalk で勝負すべきだって腹が決まったというか。

あるあるかもしれないけど、受託の仕事である程度まわっていれば、資金調達をしてまで大きな挑戦をする必要はないんですよね。日々の生活には困らず、サービスを運用できるなと。

だけど、アングラからメジャーに行きたいっていう感覚になってきたんだと思う。

渡辺

なるほど、アングラからメジャーに。

正直、以前は少し焦りがあるなと感じてました。良いツールなのは間違いないけど、ややもすると「好きな人が好きなだけ」という製品になる可能性もあったわけで。僕も最初の頃は投資対象としては見ていなかったし、実際、ドネーションウェアとしてやっていく選択肢もありましたよね。もちろん、そういうツールとなることが悪いわけではないし、良いプロダクトでもあまり多くの人に使われていないツールもありますから。

だけど、最近の postalk には、多くの人に使われるものだという思想が出てきたなと感じていた。

室井

なんでそんな風に心構えが変わったんだろうね。

川野

資金調達の話をしていく数カ月前ぐらいから「考えていることとやりたいことが違うのかも」みたいな自分の本心に気づきはじめたのかもしれない。

ユーザのフィードバックをもらって少しずつ意識が変わってきたり、何より平間さんが父親になったっていうのも大きかったかな。保険証の発行手続きとかしているうちに、事業も子どもも育てていかなくちゃみたいな自覚が芽生えて。

丸くなったのかな(笑)。より自分たちの仕事にきちんと責任を持ちたいって思えたんだと思う。

渡辺

それめちゃくちゃ良い話じゃん。

ドーガン・ベータ取締役パートナー渡辺麗斗氏

投資家は起業家のストーリーを見ている

川野

2人が投資家として、投資を決めるポイントって、どんなところ?

室井

最初の頃は、事業計画を見て決めようとしていたけど、途中から変わってきたかな。今は、会って話してみて言語化できないような人柄に触れて投資したいと思えるかどうか、感覚を大事にしているかも。数字の積み重ねで動くこともあるにはあるんだけど、シード投資の場面では、数値計画はあまり意味がないと思える例もあるから。

投資家って、コンサルみたいに話を聞いてあげることもあるし、同行営業もするし、「会計士さんを誰に任せる?」みたいな相談をされて紹介をすることもあるし、事務所の引っ越しを手伝ったりとか、いろんなことをするんだよね。

いわばパートナーになるのと同義。だから、数字だけでなく、経営者の考え方やストーリーに共感できるかどうかって大事だと思う。

渡辺

僕がこの世界に入った頃は、グループ会社の一部だったこともあって再生投資もベンチャー投資も同じテーブルで議論をしていたんですよね。

良い会社を見つけたと思って社内でプレゼンしても、満場一致じゃないとダメで、「投資先の社長が逃げたら、代わりに社長になる覚悟はあるのか」と問われたりとか。僕らは起業家を信じているから逃げるなんて想定していないけど、「やります」と答えたりしてました。

実際にそうなったケースはないんだけど、「自分がもし社長をするとしても投資できるか?」という思考実験はすごく大事だったなと振り返って感じてます。

最近、ナラティブなんて言葉もよく聞くようになったけど、起業家自身がどんな景色が見たいのか、今こういう課題を抱えている市場が今後こうなったら良いよねみたいな市場への眼差しがある起業家を応援したいなと思うかな。

そして、そういう経営者ってなかなか出会えないから、投資の実行は年に数件ぐらいになっちゃいますね。2021年上半期の新規投資は postalk を含めて3件だけど、全部旧知の人でした。やっぱり人となりを知って、その人がどう歩んできたか、目標がぶれていないかとかがわかるまでには時間がかかるなと。それと、個人的な思いとして、この人たちがいずれ福岡や九州のために投資してくれるようになるだろうかという視点でも見ていたり。

10年を振り返ると、常に社外と仲良くなって、社内で戦うという感じでしたね。

室井

社内の調整に時間がかかるのもすごくわかります。

与信や現時点のマーケットとかのファクトを見て判断する銀行と比べて、ベンチャーキャピタルは、そもそもマーケットがなかったり、同じようなことをやっている企業も見当たらないようなところにも投資をするから、ファクトの分析よりも先を見通す想像力が大切だったりしますよね。

簡単ではないけど、これから誕生する、あるいは伸びていくマーケットで一番手を取りに行けるポテンシャルがある会社に投資できるのがベンチャーキャピタル、特にシード投資の醍醐味だとは思う。

初期にリスクをとって投資することが許されるなら、3年後ぐらいに動き始めるようなところに投資をしてもいい。postalk も4〜5年後にはマーケットが追いついて来ているんじゃないかなという気がしています。

川野

ドーガン・ベータの考える金融の地産地消と、FGN の創業支援は近い考えなのかもしれないね。

室井

今の課題点でいうと、そこにあと少し足りていないのがエンジェル投資家の数かもしれないけど、FGN が地産地消の拠点になれたら良いですね。理想としては、起業経験と EXIT 経験の両方があって、EXIT で資金を得た人がまた若手に投資をするような創業支援の輪をつくっていきたいんですよね。

渡辺

新しい産業が生まれたり、生まれた富からまた新しい産業を生み出せるのが理想ですよね。

今はまだ思いがある人達によってスタートアップの世界がまわっている状況で、お金であったり人材であったりが自然と次の世代に循環していかないと自律的なエコシステムとしては厳しい。

室井

自然にまわっていくようなガソリンがないと本当キツいですよね。

特に地方では、まだスタートアップ投資が一定のリターンを見込めるアセットクラスとして認知されておらず、CSR(Corporate Social Responsibility)の一環とか、地域貢献という目的でスタートアップへの投資を始める企業が多い印象ですね。こういった「思いのあるお金」でまわっているのはありがたい話ではあるけど、「これをやれば回収できる」っていうトラックレコード(過去の実績)を僕らがつくっていかないと、今の感覚じゃリスクマネーがまわっていくのは難しいはず。

投資家視点で期待するこれからの postalk

渡辺

ずいぶん話が広がってしまったけど、postalk の今後には期待をしています。

まずはツールとしての可能性を突き詰めていってほしい。最近は、プライシングについてボードをバラ売りするプランを打ち出したよね。

川野

そうそう、あれは渡辺くんと話している時にアドバイスをもらって実践した(笑)。

渡辺

まさか、本当にやると思っていなかったから結構びっくりした(笑)。

いきなり売上が伸びるプロダクトにならない可能性もあるけど、それも postalk らしさかなって気も。急激には広がらないかもしれないけど、熱量が高まるような仕組みをつくっていきたいよね。愛されるツールになっていかないと。

川野

渡辺くんに言われて、1カ月ぐらい考えた。どのくらい売らないといけないなとか、ユーザはこれぐらい必要だなとか。

でも最後は、おもしろそうということで決めました。postalk は文房具のメタファーを度々用いるのですが、まさにモノに値段が付いている感じがしますから、コンセプトにもあっている。そして、プライシングとサービスの向上って影響し合うから、挑戦する価値ありだなと。

室井

今後、SaaS は定額サブスクから従量課金へって流れもあるから、2〜3年後に世の中がついてくるんじゃないかと思う。

渡辺

こういう意見、貴重だよね。SaaS の次のビジネスモデルなんかも、投資家の方がくわしかったりするからうまく助言をもらいながら良いビジネスモデルに育てていきたいね。

川野

定額にしちゃった方が月の売り上げが見通せるとか組織体系によってはメリットはあるけど、大学なんかだと1度に100人ぐらいの人が使ってくれていたりするから、使いづらそうだったんだよね。

室井

月額1,000円を学生100人に払わせるの?って話になるもんね。

川野

そうそう、本当に広がるプロダクトって、入り口が入りやすくないとみんなが豊かにならないと思う。もちろん、安売りしているつもりはなくて、ちゃんとペイするように考えているし、組織やシチューエーションに合わせた提案をしていけば良いなと考えています。

なかなか投資家の皆さんにここまで深くお話を聞ける機会もないから、とっても貴重な時間でした。お2人ともありがとう! これからもよろしくお願いします!

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福岡生まれのカード型チャットツール「postalk」、ドーガン・ベータとFGN ABBALabからプレシード調達

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福岡を拠点にカード型チャットツール「postalk」を開発・運営する postalk は18日、プレシードラウンドで2,250万円を調達していたことが明らかになった。このラウンドに参加したのは、ドーガン・ベータと FGN ABBALab。 postalk は2018年5月の創業。postalk を立ち上げたのは、以前サーバのバックエンド処理を自動化する API「Milkcocoa」を運営していた …

postalk 代表取締役の川野洋平氏
Photogarphy by 越智達也

福岡を拠点にカード型チャットツール「postalk」を開発・運営する postalk は18日、プレシードラウンドで2,250万円を調達していたことが明らかになった。このラウンドに参加したのは、ドーガン・ベータと FGN ABBALab。

postalk は2018年5月の創業。postalk を立ち上げたのは、以前サーバのバックエンド処理を自動化する API「Milkcocoa」を運営していた Technical Rockstars 共同創業者である川野洋平氏と、同社で開発に従事していた平間清彦(へいま・きよひこ)氏だ。なお、Technical Rockstars は2016年にクラウド関連のウフルに事業譲渡され、Milkcocoa はサービスを終了している。

postalk は、Technical Rockstars 時代の川野氏らの経験から生まれたサービスだ。当時、チームは福岡と東京に分かれていて、Google Hangout や Google Docs など Web アプリケーションは存在していたが、リモートワークを進める上での環境づくりに悩んだという。ホワイトボードに付箋を貼り付ける感覚で、課題や To Do を共有できる postalk のアイデアが生まれた。

リモートワークが常態化する中でさまざまな SaaS が生まれているが、自身もテックギークである川野氏は、ウフルでのキーマンクローズを過ぎて福岡のスタートアップコミュニティ「FGN(Fukuoka Growth Next)」でスタッフを務める機会を得て、この時、スタートアップコミュニティが必ずしもテックギークな人々だけで構成されていないことを痛感することになる。

「postalk」の画面
Image credit: postalk

渋谷とかにいると、Zoom や Slack は使えて、ひょっとしたら GitHub さえも使えて当たり前みたいな風潮がある。でも、福岡に戻ってきて、だいぶ違うことがわかった。ギークなものが好きな人だけで盛り上がっているのは良くないし、既存のツールだけだと、ギークではない人と一緒に仕事するのは大変。道具の方がもっと開かれていないといけないと痛感した。(川野氏)

川野氏によれば、世の中にはテックギークを前提にした SaaS が多く、例えば、ドローイングツールやカンバン形式のタスク管理ツールなどは、IT に縁が職種の人にとってはまだまだわかりにくいという。postalk ではカードを貼って並べるだけでよく、URL があれば OGP も表示されるため、大学などでイベント中の意見集めや企画出しのコミュニケーションなどで多用されているという。

postalk は、共有するホワイトボードのサイズで料金が決まるという興味深い従量課金モデルを再現している。企業などで積極的に導入してもらうためには、まだいくつかの課題が考えられるとのことで、今後は、スマホからも容易に操作できるようにモバイルアプリの開発、Zoom や Slack との連携、会議やテレカンの内容を音声入力できるような機能の追加を検討している。

川野氏に加え、このラウンドに参加したドーガン・ベータのパートナー渡辺麗斗氏、FGN ABBALab でファンド運営を担当する室井信人氏を交えた鼎談記事を寄稿いただいたので、ここに掲載した。また、川野氏は19日(火)深夜/20日(水)未明放映の「オケハザマってなんですか?~弐ノ陣・版図拡大~(RKB 毎日放送)」に出演予定。福岡で今週開催される B Dash Camp にも参加する。

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衣料ロスに悩むファストファッション各社が注目、身体完全フィットのジーンズをオンデマンド縫製する「Unspun」

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世界的にフードロス問題が注目を集めている。その念頭には数十年後にやってくるかもしれない食料問題があって、恒常的に供給量の1割以上を廃棄してしまっている日本にとっては改善が急がれる社会課題の一つだ。そして、もう一つの由々しき問題が衣料ロス問題である。統計にもよるが、世界の出荷供給量の約半分が廃棄に回されてしまっているとのデータさえある。 流行の影響を受けやすい衣料分野では、あらかじめ多めに商品が生産…

Unspun 3人の共同創業者:左から、CEO  Walden Lam 氏、CPO Beth Esponnette 氏、CTO Kevin Martin 氏
Image credit: Unspun

世界的にフードロス問題が注目を集めている。その念頭には数十年後にやってくるかもしれない食料問題があって、恒常的に供給量の1割以上を廃棄してしまっている日本にとっては改善が急がれる社会課題の一つだ。そして、もう一つの由々しき問題が衣料ロス問題である。統計にもよるが、世界の出荷供給量の約半分が廃棄に回されてしまっているとのデータさえある。

流行の影響を受けやすい衣料分野では、あらかじめ多めに商品が生産・供給され、シーズンを過ぎればブランドは値崩れを懸念して二次流通に載せることこともなく、多くの商品は末路を迎える。衣料のアップサイクルやリサイクルのスタートアップも生まれているが、最初に商品が生まれる製造プロセスの現場には、まだまだイノベーションが必要かもしれない。

香港のファッションスタートアップハブ「The Mills Fabrica(南豊作坊)」で生まれ、現在は香港とサンフランシスコの2都市に活動拠点を置く Unspun は、3D スキャンとデジタルファブリケーションで、この問題の幾分かを解決しようしている。Unspun のスマートフォンアプリを使って10秒間のボディスキャンをするだけで、独自開発のアルゴリズムにより、身体に完全フィットするジーンズを自動製造して届けてくれるのだ。

ファッションをオンラインで売るビジネスには、ユーザが購入前試着できないという大きな欠点がある。ファッションコマース各社は、この欠点を補うために購入後にも返品を自由に受け付ける態勢を取っているが、特定のユーザにカスタムフィットやテーラーメイドで作られた衣料は、返品されてもその商品を他の人に売れないため、返品は受け付けていないことが多い。

この問題を解決するために、Unspun では AI プラットフォームを使ってパターンを作成し、そのパターンが出来上がったら、ユーザのアバターに着せて、どういう見栄えになるかを事前に確認できるようにしている。(共同創業者で CEO の Walden Lam 氏)

Unspun のポップアップストア
Image credit: Unspun

試着とまではいかないものの、ユーザはこの見栄えをアプリで確認したら、型紙やパターンデータが、トルコや中国にある世界の4つの製造拠点に送られ、ロボット縫製機によりジーンズが製造され、注文したユーザの手元にジーンズが届く仕組みだ。かくして、Unspun は在庫を全く持たず、ユーザの身体に完全フィットしたジーンズを、衣料ロスへの関心の高い欧米の消費者に安価に届けることを実現している。

Unspun のムダを出さない技術とビジネスモデルは、特にファストファッションブランドから注目を集めているようだ。同社は2017年にH&M とデニム部門と提携し、昨年には 元 Levi’s のデザイン責任者 Jonathan Cheung 氏をのアドバイザーに迎えた。先月、創業6年目で実施したプレシリーズ A ラウンドでは、Product Hunt の CEO Josh Buckley 氏のファンドのリードで750万米ドルを調達した。

現在はシリコンバレーのテックコミュニティ、それにヨーロッパのサステナビリティに関心を持つ人々からの関心が高い。今後、アメリカにも製造拠点を作る計画だ。(Lam 氏)

Unspun はこれまでに、アメリカ、香港、ロンドン、アムステルダムでポップアップストアを通じ、潜在顧客とのリアルなタッチポイントでマーケティングを図ってきた。近年は特に、新進気鋭のファッションブランドやデザイナーと提携した事業拡大に力を入れており、リテール各社とも話を進めてきたという。来年には、日本への本格進出も目指しているようだ。

Unspun は、ヨガウェアブランドのルルレモンでアジア太平洋地域の事業戦略責任者だった Walden Lam 氏、オレゴン大学で助教授を勤めた Beth Esponnette 氏、コロラド大学ボルダー校で機械工学の学位を取得した Kevin Martin 氏らにより共同創業。その後、ハードウェアアクセラレータ HAX に採択された。Martin 氏は今年、米 Forbes 誌による「30歳以下の30人」の一人に選ばれた。

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私がノートよりもエクイティでの出資を好む理由【ゲスト寄稿】

本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。本稿は Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿) This…

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。彼は、日本で Shizen Capital(旧 Tachi.ai Ventures)のマネージングディレクターを務める。本稿は Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。英語によるオリジナル原稿は、BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Mark Bivens. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist. He is the Managing Partner of Shizen Capital (formerly known as Tachi.ai Ventures) in Japan. The original English article is available here on Bridge English edition.

Modified from a Pixabay image

私が過去に行った10件の投資のうち、2件を除いてすべてストレートエクイティの形をとっている。さらに、過去2年間に Shizen Capital がリードインベスターを務めた案件も、すべてエクイティラウンドに関するものだった。この記事では、私がアーリーステージのベンチャー投資において、コンバーチブルノートや SAFE ノートよりもエクイティラウンドを好む理由を説明する。

ここでは話わかりやすくするために、一定の条件に基づいて将来的にスタートアップの株式に転換可能な、あらゆる種類の非株式金融商品を包括する一般的な「ノート」という用語を使用する。これには、従来のコンバーチブルノートに加え、SAFE ノートや J-KISS ノートも含まれる(SAFE ノートや J-KISS ノートは、一般的に金利や満期がないという点で、負債というよりもワラントに近い挙動をする)。

私は、Shizen Capital が創業者とパートナーシップを組む際に大切にしている2つの原則、すなわち「整合性」と「透明性」に基づいて、ノートではなく株式での投資を希望している。

まず、なぜノートが株式投資よりも魅力的に見えるのか、その理由を再確認しよう。

  1. 法的な観点から見て、コストがかからず、実行しやすい。
  2. バリュエーションに関する難しい交渉を避けることができる
  3. 内部ラウンドの間、投資家の利益相反を回避できる。
  4. 資金調達において、投資家にオプション権と優先権を与えることができる。

では、これらの特徴を一つずつ説明していこう。

ノート契約は、投資家(ノートホルダー)とスタートアップという2つの当事者間の契約だ。将来のある時点で、契約書に定められた条件に基づいて、ノートが株式に変換されるか、または償還される。

ノートファイナンスでは株式が発行されないため、会社の手続きや法的届出は不要だ。定款の更新、株主間契約書の作成、正式な届出などは必要無い。投資家は、このような取引のために弁護士を雇う必要がないため、手数料を節約することができる(創業者も同様にこれを行うことができるが、個人的には創業者には少なくとも最低限の法律顧問を求めることをお勧めする)。しかし、将来的に希望するエクイティラウンドが実現すれば、前述の法的手続きがすべて必要になる。

SAFE ノートはスピード感があるが、それは投資家の動きが速い場合に限られる

理論的には、ノートを使った取引(ここでも SAFE や J-KISS の取引を含む)は、エクイティラウンドよりも迅速に実施できる。理論上は。手際よく処理すれば、簡単な株式投資は数週間で実行できる。対照的に、ノートは数日で実施することができる(特に SAFE や J-KISS は標準的なテンプレートに基づいているため早く進められる)。しかし、ノートを使った資金調達が数週間から数カ月も長引いていると嘆く創業者の声を聞くと、私は歯がゆい思いをする。科学的な分析をしたわけではないが、私の観察によれば、シリコンバレー以外の多くの地域では、数週間から数ヶ月に及ぶノートによる話し合いは珍しくないようだ。

気まずい会話の先送り

バリュエーションに関する難しい交渉を回避できることも、ノートによる資金調達の魅力だ。ノートによる資金調達では、取引時に会社の株式に価格を付けない。資金調達時に創業者と投資家が評価額で合意できない場合、ノートは価格に関する不快な会話を先送りしてくれる。

ここでは、コンバーチブルノートと SAFE ノートの違いが関係してくる。コンバーチブルノートでは評価額についての言及がないことが多いのだが、SAFE ノートではその構造上、評価額の上限が設定されているのが一般的だ。この評価額上限は、その時点での会社の評価を表すものではないが、当事者間の交渉による合意が必要であり、また、市場に対する将来のシグナリングの基礎となるものでもある。

透明性

さらに、ここで透明性の原則が登場する。不快なバリュエーションの会話を先延ばしにすることは、単に問題を先送りすることになる。最終的には、この会話は行われなければならず、将来は今日よりもはるかに高いリスクを伴うことになるだろう。さらに、このような方法では、多くの予期せぬ結果が生じる可能性がある。私は長年にわたり、多くの企業でこのような状況を目の当たりにしたが、多くの場合、創業者に不利益をもたらしてきたため、透明性の精神に基づき、私が目撃したことを創業者に警告する義務があると考えている(注:この問題については、以前書いた記事で詳細に警鐘を鳴らしている)。

内部ラウンド

ほとんどのプロの VC ファンドにとって、内部ラウンドは適切に行われなければコンプライアンス上の問題を引き起こす可能性がある。誤解のないように言っておくと、内部ラウンドとは、外部の重要な関係者が投資していないスタートアップの将来の資金調達ラウンドを意味する。外部の市場参加者がいない既存の投資先企業の1社をリファイナンスする VC ファンドは、新しいラウンドが株式で価格設定された場合、その後の評価を正当化する必要があり、本質的な利益相反を反映している。コンバーチブルノート(このような場合、コンバーチブルブリッジローンとして構成されることが多い)を採用することで、この問題を克服することができる。

ミスアライメントのリスク

最後に、ノートによる資金調達は、当然ながら投資家に追加のオプション権を与え、資金調達における優先権をもたせる可能性がある。

まず、優先権の概念から始めよう(この仕組みは、SAFE や J-KISS ノートよりもコンバーチブルノートの方が顕著だ)。投資家の観点からすると、投資先企業の全株主よりも上位に位置することで、両方のメリットを享受することができる。そのメリットとは、うまくいった場合には転換してアップサイドを享受し、うまくいかなかった場合には、企業が財務的に窮地に陥ったとしても、償還してお金と利息を得ることができるというものだ。したがって、コンバーチブルノートの契約条件は重要だ。コンバーチブルノートを発行する前に、その内容を確認する必要がある。

オプション権という概念は、もう少し微妙なものだ。ベンチャーキャピタリストとして、私はオプション権を歓迎しており、実際、健全なポートフォリオ管理のために積極的にオプション権を求めている。しかし、私が投資した創業者には、ノートの意味を十分に理解してもらいたいと思っている。

例えば、VC がシードラウンドで5,000万円を20%の割引と4億円のバリュエーションキャップを含む SAFE ノートで投資する場合を考えてみよう。シリーズ A の時期になると、投資家と創業者のそれぞれの利益は、わずかなずれのために発散する。創業者の直近のインセンティブは、シリーズ A の評価額を高くすることであり、できれば割引を相殺するのに十分な高さ、つまり5億円以上にしたいと考えている。

一方、投資家のインセンティブは、シリーズ A の評価額が低ければ低いほど、投資家のノートが転換される株式数が多くなるため、評価額を低くすることにある。もし、シードラウンドがノートではなく、評価額が確定したエクイティラウンドとして調達されていたら、創業者と投資家の両者は、将来のシリーズ A で直面する希薄化問題にについて意見を一致していただろう。

私はノートで投資することにイデオロギー的に反対しているわけではない。Shizen Capital では、すべての有望な投資を長期的な関係としてとらえている。したがって、私たちが支援する創業者とインセンティブを調整し、透明性を持って行動することができれば、両者間の共同パートナーシップはより健全で実りあるものになると信じている。

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韓国ファッションEC「BRANDI」、日本でβサービスをローンチ

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<ピックアップ> 커머스 플랫폼 ‘브랜디’, 일본 베타 서비스 론칭 2016年のローンチから、毎年200%超の急成長を続けてきた「BRANDI(브랜디)」が海外市場攻略に乗り出し、今月初め、日本向けの βサービスをローンチした。韓国ファッションを象徴する街・ソウル東大門(トンデムン)発のファッション EC モールとして知られる同社は「HELPI(헬피)」という仕組みで、商品の仕入れ、配送、カ…

Image credit: Brandi

<ピックアップ> 커머스 플랫폼 ‘브랜디’, 일본 베타 서비스 론칭

2016年のローンチから、毎年200%超の急成長を続けてきた「BRANDI(브랜디)」が海外市場攻略に乗り出し、今月初め、日本向けの βサービスをローンチした。韓国ファッションを象徴する街・ソウル東大門(トンデムン)発のファッション EC モールとして知られる同社は「HELPI(헬피)」という仕組みで、商品の仕入れ、配送、カスタマーサクセスを一連機能を実現している。

BRANDI は日本市場展開にあたり、ローカライズした HELPI を導入しており、日本や韓国のインフルエンサーは、自らがアピール・販売したい商品を選択することが可能になる。BRANDI では今回の β ローンチに先立ち、すでに韓国のインフルエンサー100人、日本のインフルエンサー100人を確保しており、積極的な市場浸透とマーケティング展開を狙う。

同社は、女性ファッションアプリ「BRANDI(브랜디)」、男性ファッションアプリ「HIVER.(하이버)」、子供ファッションアプリ「MAMI(마미)」を展開。細分化されたターゲットへの最適化戦略が成功し、モバイルショッピング市場を急速に成長させた。8月に NAVER から新たに200億ウォン(約19.1億円)を調達、ヤフーや LINE を通じて日本の消費者にリーチする計画が明らかになっている。

via Platum(플래텀)

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上場スタートアップ3社の営業を牽引したプロが構築、予実管理SaaS「GRAPH」が2,000万円をシード調達

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<15日午後2時更新> 最終段落で DIGGLE に関する記述を訂正、追記(赤字部)。 営業予実管理 SaaS「GRAPH」を開発・運営するグラフは15日、シードラウンドで Coral Capital から2,000万円を調達したことを明らかにした。調達額には日本政策金融公庫からのデットが含まれる。なお、同社は先月、GRAPH を正式ローンチしている。調達した金額は、GRAPH の新機能開発および…

グラフの皆さん。左から:インサイドセールス担当 西宮莉来氏、COO 飯塚航己氏、CEO 藤田健太氏、カスタマーサクセス担当 島田彩氏、CTO 中本康太郎氏
Image credit: Graph

<15日午後2時更新> 最終段落で DIGGLE に関する記述を訂正、追記(赤字部)。

営業予実管理 SaaS「GRAPH」を開発・運営するグラフは15日、シードラウンドで Coral Capital から2,000万円を調達したことを明らかにした。調達額には日本政策金融公庫からのデットが含まれる。なお、同社は先月、GRAPH を正式ローンチしている。調達した金額は、GRAPH の新機能開発および人材採用に使われる見込みだ。

営業の予実管理に主眼を置いたツールは複数存在する。その代表的なものが SFA(セールスフォース・オートメーション)だが、ある調査によると、SFA 導入社のうち82%が導入によって課題を解決できていない、と回答したという。日常のデータ入力が煩雑であったり、また、分析された結果を閲覧するまでのプロセスが複雑だったりするためだ。

ダイエットであれば、まずは毎日体重計に載って、現在の体重を把握し追いかけてるところが、全ての始まりとなるように、営業活動、とりわけ、トランザクションセールスにおいても、毎日数字を追い続けることが目標達成に向けた営業の予実管理の原点だ。GRAPH は、直感的にわかり安い UI/UX を構築し、通常のツールなら数時間かかる分析を数分でできるように工夫している。

「GRAPH」
Image credit: Graph

グラフを昨年11月に設立した藤田健太氏(現在、代表取締役)は IPO したスタートアップ各社で、営業組織の立ち上げ統括や執行役員を歴任した経験から、適切な予実管理の実現が営業組織 DX の肝であると痛感し GRAPH を開発した。あらゆる営業の現場に導入可能だが、藤田氏は自身の経験を生かし、全国展開する自由診療クリニック、多店舗展開する士業事務所から導入を広げる計画だ。

こうしたリアルな B2B や B2C などでも営業手法はオンラインのそれと似ていて、新規の顧客流入は Web マーケティングから得て、診療や業務委託を提供する中で、治療やコンサルティングの提案を行い、売上を向上させていく。そういった活動の元になる足元の情報を、GRAPH は現場担当者(クリニックならコンシェルジュや士業を営む人に伝える役割を持つ。

GRAPH は、あくまで営業の現状をわかりやすくするためのもの。目標達成を支援するツールではない。(藤田氏)

GRAPH は現時点ではスタンドアローンで動作するが、年内にも Salesforce やキントーンなどの CRM や SFA ツールと API 連携させる予定。また、CRM や SFA の導入にまでは至っていないユーザをターゲットとして、営業活動の未来の〝ヨミ〟の管理に特化したツールを近日中にリリースする計画だ。

この分野には、経営管理業務効率化ツール「Loglass」を運営するログラスなど複数のスタートアップが存在する。今回 GRAPH に出資した Coral Capital は、500 Startups Japan の時代に 予算管理 SaaS「DIGGLE」を開発・提供する DIGGLE に出資しているが、DIGGLE は経営企画部や経理向けのツールであるのに対し、GRAPH は営業現場向けのツールであるため、互いに競合しないとの見解を明らかにしている。

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コロナ禍が追い風、日本のオンライン診療はどう変わるか?【業界解説・MICIN 原聖吾氏】(後半)

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載 ニュースレターの購読 注目すべき記事、世界のスタートアップシーンの話題、BRIDGE 主催のイベントに関する情報をお届けします! Sign Up 全産業デジタル化の流れが不可避と認識される中、大きな構造の変化がいろいろな場所で発生しています。MUGENLABO Magazine編集部では業界のダイナミ…

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

全産業デジタル化の流れが不可避と認識される中、大きな構造の変化がいろいろな場所で発生しています。MUGENLABO Magazine編集部では業界のダイナミックな変化をゲームチェンジャーたちの解説と共に紐解くシリーズを開始しています。

前回に引き続き、MICIN 代表取締役の 原聖吾さんに登場いただき、広がりゆくオンライン診療の最前線についてお話を伺います。

編集長
前回はサンドボックス制度に(※)エントリーし、感染リスクのあるインフルエンザ診療の現場にオンライン診療の活用を促した事例を紹介いただきました。そう考えると、新型コロナの感染拡大は MICIN の事業に追い風になっているのではないですか?

※革新的技術・サービスを事業化する目的で、地域限定や期間限定で現行法の規制を一時的に停止する制度。

はい、大きな変化のきっかけになりました。新型コロナウイルス感染症が広まってくると、患者さん側は持病があると、「今は医療機関に行くと感染リスクがあるから行きたくないよね」と思い、医療従事者側は診察時に感染リスクを負うのは望ましくないだろうということで、急速にオンライン診療が活用される兆しが出てきました。

ここで、いくつかの厳しい制限が緩和されることになりました。オンライン診療の対象疾患の制限がなくなり、診療報酬点数が増やされ、初診もオンラインでいいですよということで、オンライン診療が進みました。全国にある医療機関10万軒のうち、当社の「クロン」はコロナ前は2,000施設に満たなかったのが、現在では5,000施設超にまで導入が進んできました。

当初、制度緩和は特例的な措置とされていて、コロナが落ち着いたらどう恒久的な形にするかは決まっていませんでしたが、いくつかのポイントで引き続き制度が緩和された形がとられるようです。オンライン診療で初診ができるようになるというところが出てきていたり、他にもいくつか、もともと制度上の制約になっているところは緩和されるようになってきています。

編集長
オンライン診療にとって、ハードルのひとつだった規制緩和は、新型コロナが追い風になって進んでいることがわかりました。他にはどんな課題がありますか?
まだまだ患者さんの認知が必ずしも大きくない。医師側は認知も進んで、導入する医療機関も増えてきていますが、患者さん側がこれをやってみるというところにまだあまり至っていないのが現状です。そのため、オンライン診療を知ってはいるんだけど、やった結果どういう利点があるのか、どういう医療機関で受けられるのか、それを伝える取り組みを進めています。

たとえば、KDDIさんとは「auウェルネス」というアプリと連携させていただき、オンライン診療につなぐサービスを展開しています。我々としては「toC」の広がりをここで広めることで、消費者が最初にオンライン診療に触れてみるというタッチポイントを作り出したいと考えています。一度始めた方は、だいたい、7割ぐらいオンライン診療を継続していると思います。

編集長
医療は、お医者様に診察してもらって終わりではないですよね? その後のフォローについては、サービスを提供されているのでしょうか?
はい、その部分についても「クロン」ではサポートしています。薬局向けのサービスとして「curonお薬サポート」というのがあり、大手薬局チェーンから個店の薬局さんまで、現在2,500以上の薬局店舗に導入いただいています。診療後に薬局でオンラインにて服薬指導をしてもらい、患者さんは薬を自宅で受け取れるようにするサービスを薬局向けに提供しています。

また、将来的にはオンライン診療や薬局向けのサービスを通じて、ビジョンに掲げている「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界」の実現を目指しています。医療へのアクセスを高めるのに加えて、さまざまな医療データが蓄積されることで、病気になる前にアプローチをする価値を提供していきたいと考えています。

KDDI とMICIN、ホワイトヘルスケアとの協業により、「auウェルネス」 ではオンライン診察後のオンライン服薬指導も実現
編集長
高齢化社会になっていく時代、MICIN の需要はますます高まっていくと思います。6年に及んだ苦節を経て、医療側、患者さん側の双方が受け入れるようになってきたオンライン診療の可能性をぜひ応援していきたいと思います。ありがとうございました。

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トランスミット、プレシリーズAで1.24億円を資金調達——トヨタの地元から製造業向け生産管理SaaSを世界へ

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<15日7時更新> KUSABI の出資として、 TRiCERA  への出資ラウンドを訂正。 名古屋を拠点に、製造業向け生産管理 SaaS「monit(モニット)」を開発・運営するトランスミットは14日、シードラウンドで1.24億円を調達したことを明らかにした。このラウンドは KUSABI がリードインベスターを務め、Gazelle Capital が参加した。ラウンドステージはプレシリーズ A …

トランスミットのメンバー。中央が創業者で代表取締役の実川大海氏。
Image credit: Transmit

<15日7時更新> KUSABI の出資として、 TRiCERA  への出資ラウンドを訂正。

名古屋を拠点に、製造業向け生産管理 SaaS「monit(モニット)」を開発・運営するトランスミットは14日、シードラウンドで1.24億円を調達したことを明らかにした。このラウンドは KUSABI がリードインベスターを務め、Gazelle Capital が参加した。ラウンドステージはプレシリーズ A ラウンドと見られる。調達額には、名古屋銀行と日本政策金融公庫からのデットが含まれる。これは、トランスミットが昨年、Gazelle Capital から資金調達したのに続くものだ(当時、Gazelle Capital にとっては、初号案件だった)。

リードインベスターを務めた KUSABI は、ニッセイ・キャピタル出身の永井研行氏。JAFCO 出身の吉田淳也氏、グロービス・キャピタル・パートナーズ出身の渡邉佑規氏が立ち上げたファンド。ラウンド、チケットサイズ、バーティカルはいずれもフルライン対象だが、事実上アーリーラウンドへの出資が多い。これまでに、グローバルアートマーケットプレイス運営の TRiCERA  のシリーズ A ラウンド、ユーザーヒアリングプラットフォーム「Zerone」運営のトリピアのシードラウンドへの出資参加が明らかになっている。

トランスミットは、2018年7月にシリアルアントレプレナーの実川大海氏により設立(設立時の社名は SWIMMER)。実川氏は、2015年にローンチした美容系 YouTuber 事業とコミュニティメディア展開の MAKEY(メイキー)の創業メンバーの一人だった。MAKEY は同年、Open Network Lab 第10期に採択され、Incuabte Camp 8th で優勝。その後、一部株式をデジタルガレージ(東証:4819)が買収し、4年後には、エイベックスグループ(東証:7860)が買収したことが明らかになっている。

「monit」
Image credit: Transmit

トランスミットは、共同創業者の浅井俊行氏の家業が自動車部品製造販売工場だったことから、生産管理の効率化にフォーカスするところから事業に着手した。monit を使うと、中小製造工場の受注から出荷におけるデータ・案件管理ができ、案件管理に紐づく生産工程管理と、実績に基づく経営分析を行うことができる。以前はスプレッドシートなどを使って納期管理されていたものを SaaS 化することで、現場担当者でなくても事務担当者などが簡単に状況把握でき、現場担当者は品質管理などにより多くの時間を注ぐことができる。

製造業は主に量産系と、量産体制に載せる製品を開発する試作系に大別されるが、トランスミットは当初、量産系から始めるという。愛知県は言わずとしれたトヨタ自動車(東証:7203)の地元であり、県内には世界の他の地域には例を見ない、自動車部品製造に関わるサプライチェーンが構築されている。同社は愛知県の認定を受け、同県認定のスタートアップが入居する施設「PRE-STATION Ai」に入居。愛知県で実証できたモデルを、全国や清華大学のネットワークを使った中国市場展開など、世界へと順次サービスを拡大したいとしている。

製造業の効率向上支援はホットな SaaS 分野の一つだ。昨年から今年にかけ、IoT を使った製造業向け原価管理自動化 SaaS「GenKan(ゲンカン)」、重工業の製造現場向け SaaS「Proceed クラウド」がそれぞれ正式ローンチした。資金調達では共に今年8月、現場向け遠隔支援コミュニケーションツール「SynQ Remote(シンク・リモート)」を開発するクアンドがプレシリーズ A ラウンドで1.2億円、製造業の受発注プラットフォーム「CADDi(キャディ)」を運営するキャディがシリーズ B ラウンドで80.3億円をそれぞれ調達した。

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注目クラブトークン:SOLTILO Bright Stars FCがJICAウガンダとシーズンオフィシャルパートナー契約締結ほか

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クラブトークン注目ニュースではFiNANCiE(フィナンシェ)で取引される注目のスポーツクラブ発行トークンの動向をお伝えします。【見方:チーム名<トークン価格(前日比動向)>】※編集部独自の注目度で、価格動向などを示すものではありません。情報はプレスリリースなどから 注目ニュース:SOLTILO Bright Stars FC <3.9033(+15%)> はJICAウガンダと2021-2022シ…

クラブトークン注目ニュースではFiNANCiE(フィナンシェ)で取引される注目のスポーツクラブ発行トークンの動向をお伝えします。【見方:チーム名<トークン価格(前日比動向)>】※編集部独自の注目度で、価格動向などを示すものではありません。情報はプレスリリースなどから

注目ニュース:SOLTILO Bright Stars FC <3.9033(+15%)> はJICAウガンダと2021-2022シーズンオフィシャルパートナー契約締結。SHIBUYA CITY FC<4.8560(0%)> は高知大学所属の渡邉大生選手が2022シーズン新加入内定と発表。

クラブトークンニュース

  • 鎌倉インターナショナルFC<19.6061(+5%)> は鳩スタのオープンを記念し、10月13日までに40トークン以上を購入した方、期間内にゴールドラウンジに入会している方を対象に「好きな背番号と名前入りの鎌倉インテルオリジナルスマホ壁紙」をプレゼント。
  • アビスパ福岡<9.2285(+1%)> は11月3日開催<明治安田生命J1リーグ第34節>大分トリニータ戦・11月7日開催<明治安田生命J1リーグ第35節>横浜FC戦での「ピッチサイド練習見学参加権」を販売する。普段入ることのできないエリアで、選手を間近に見ることができる。
  • 湘南ベルマーレ<17.8606(0%)> はサッカースクールで幼児、1・2年生を対象に「親子であつまーれ!湘南ベルマーレ秋の親子サッカーin 秦野」を10月31日に開催。参加者募集中。
  • 仙台89ERS<4.7713(-1%)> は、仙台89ERS仕様にラッピングした「ナイナーズバス」が完成。選手が遠方での試合の際に利用するほか、一般のお客様向けの県内旅行などでも乗車することが可能。
  • Y.S.C.C.<4.8646(-1%)> はSNSを中心に活動しているインフルエンサー「マーフィー波奈」さんがY.S.C.C.の公認マネージャーに就任。
  • クリアソン新宿<9.3910(-2%)> はFiNANCiEトークンホルダー限定で、【クリアソンライブラリー展示テーマ投票企画】を開催。3つのテーマから投票によって決定したテーマに沿って、選手がオススメの本を選定。新宿区立下落合図書館のクリアソン新宿ブースに展示する。
  • COEDO KAWAGOE F.C<7.5690(0%)> は川越の農の豊かさを伝え、美味しい珈琲とお米の農カフェである「8+8cafe(ハチジュウハチカフェ)」とブロンズパートナー契約締結を発表。

[発行日:2021年10月14日]

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デライト・ベンチャーズがベンチャービルダーを外部にも公開、起業家輩出をさらに加速へ

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デライト・ベンチャーズは2019年、DeNA 創業者で代表取締役会長の南場智子氏を中心に立ち上げられ、主に DeNA グループ内外の人々と共に新規事業を立ち上げる「Venture Builder」、DeNA 社員や社外の人材の独立起業をサポートする「Springboard」、100億円規模のファンドをコアとした「スタートアップ投資」の3つの事業を運営してきた。 このうち、ベンチャービルダー(または…

Image credit: Delight Ventures

デライト・ベンチャーズは2019年、DeNA 創業者で代表取締役会長の南場智子氏を中心に立ち上げられ、主に DeNA グループ内外の人々と共に新規事業を立ち上げる「Venture Builder」、DeNA 社員や社外の人材の独立起業をサポートする「Springboard」、100億円規模のファンドをコアとした「スタートアップ投資」の3つの事業を運営してきた。

このうち、ベンチャービルダー(または、スタートアップスタジオとも呼ばれる)とは、新規事業のアイデア発掘から立ち上げまでを支援する活動だ。コーディングはできるがビジネス開発は難しいとか、ビジネスアイデアはあるが、それを具現化する人員が身近にいないといった場合に、ベンチャービルダーが必要な支援を提供し、最終的には創業者にスピンアウトして独立してもらう。

デライト・ベンチャーズはこれまで、このベンチャービルダーを主に DeNA グループ内外の人々向けに提供してきた。ここから輩出されたスタートアップとしては、今年6月にサービスを β ローンチした事業計画 SaaS 開発の projection-ai などがある。デライト・ベンチャーズは今秋から、このベンチャービルダーの募集枠を一般にも開放すること明らかにした。

一般公開されたプログラム「ベンチャー・ビルダー・チャレンジ(通称:V チャレ)」は今日から第一回の募集が開始され、エントリの締切は11月8日の正午。インキュベータやアクセラレータではないので、起業アイデアやビジネス開発・技術開発のスキルの有無は問われないが、プログラムへの採択後4ヶ月間の参加に加え、新規事業立ち上げにオーナーシップを持って関わった経験などが求められる。

当初の1ヶ月をサービスの企画開発に充て、その後、3ヶ月間をかけてユーザ検証やプロダクト検証。検証結果を受けて、プロダクト開発に向けた開発を始める。プロダクト開発に当たっては、最大5,000万円相当の支援をデライト・ベンチャーズから受けることができる(拠出金額は、スピンアウトした際に設立された法人株式のデライト・ベンチャーズ出資額の一部に引き当てる)。

デライト・ベンチャーズでこのプログラムを担当する坂東龍氏と加古静香氏によれば、採択する起業家(または潜在起業家)の数について、概ね、最初の企画フェーズで20名前後を想定しているそうだ。

また、募集対象とするバーティカルについても制限はないが、デライト・ベンチャーズが投資フォーカスとする「情報の非対称性を解消するビジネス」「社会生産性を劇的に改善するビジネス」「社会の持続性(サステイナビリティ)に直接貢献するビジネス」「社会の持続性(サステイナビリティ)に直接貢献するビジネス」とのことだった。

この分野では、日本国内ではサラリーマンが副業的に起業を準備できる仕組みとして(一般的なアクセラレータの定義とは異なるが)として、三井不動産とプロトスターが「Swing-by」というプログラムを展開している

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